春のグラッパ合宿、東部編、おまけ2
旅からはとっくに戻っているのに、あまりの暑さに溶けそうになっていて、どうしてもパソコンを開けるのが苦痛…。というわけで、またこんなお休み状態になっています。 家を買ったとき、改装業者に、将来のためにクーラー用の穴をあけておくかと聞かれ、きっぱり「いらない」、と即答したオレ。毎夏、後悔。
というわけで、もうすっ飛ばそうと思ったけど、涼しい思い出ということで、グラッパ合宿で触れたアルトアディジェの田舎町について、書いておこうと思います。
今回止まったのは、メラノからも近いラーナという町。
Hotel Pension Rebgut Brandisweg 3, Lana (BZ)
建物は古いけれど、清潔感があり、家族経営の良さがにじみ出ているホテルでした。出迎えに来たおやじは、アルトアディジェのおやじ全員がつけてるんじゃないか、という例の青いエプロンを付けて、控えめで、いかにも山のお爺さんっていうか、絶対嘘とかつけないタイプっていうか、微笑ましい方でした。
言葉少なですが、Lanaの町の情報誌などをきちんと手渡してくださり、行き届いているのも、さすがにアルトアディジェ、イタリアじゃないよなぁ、という雰囲気満載です。
合宿、特にこの山の方だと、夕ご飯も結構早めになる傾向が強く、解散後、夜が長かったりするんですよ。なんせ、昼間したたかにアルコールを摂取していますから、夕食でだらだら飲みとかできないっていう事情もありますね。 そのため、部屋に引き上げてから、この情報誌を熟読しちゃったんです。そのおかげで、蒸留所にも出会えましたが、楽しいお散歩もできたんです。
夜が早い、ということは、どうしても朝も早くに起きてしまうわけです。 その上、最近の私はウォーキングにはまっているもので、よし!となるわけです。 ホテルが、山の中ではなく、町はずれだったのもよかったです。
到着翌日、快晴の早朝。
まずは、町にある二つの教会を訪ねることとしました。 上は、ホテルから至近の、墓地を兼ねた教会です。
遠目に見ても、自分の好きなロマネスクではないことは明らかなのです。実際、奉納されたのは15世紀、ゴシック後期の教会でした。 でも、前日に横を通過したとき、ロマネスク的なものを目の端でとらえていたんですよ。 それがこれ。
現代的なマリアの彫刻の台座が、明らかにロマネスク~! 塔の下部に張り付いていたのですが、きっと他にもあるに違いないと、期待していたわけです。でも、残念ながら、他にはもう一つだけ、もっと溶けちゃって、意味不明になっているものしか見当たりませんでした。
目を皿のようにして、なめるように塔の表面を眺めまわしましたが、他には、転用と思われる十字のついた切石があったくらいでした。 ま、本当の目的はもう一つなので、これだけでも、得した気分でしたけど。
もう一つの教会は、ちょっとだけ山の方に入り込んだ場所にあるようでした。早朝の美しい道をのんびりと歩いていくと、坂を上った先に見えてきました。
サンタ・マルガレータ教会Chiesa di Santa Margareta
13世紀初頭のものですが、アルトアディジェは、辺境だったり経済的に恵まれていなかったりするせいで、他の地域に比べると、ずいぶんと遅くまでロマネスク様式が残ったので、言ってみれば、この地域ではロマネスク全盛な頃の建築かもしれません。
小さな礼拝堂規模です。 後陣がよいのですが、裏は畑になっている上に塀があるために、全景を撮影できません。 相当無理な姿勢をしても、これが精いっぱい。
すべて小ぶりながら、三つの後陣なんですよ。こんな小さな建物なのに、内部はどうなっているんだろう。
畑のあぜ道の方から、上部だけ、何とか。 こんな感じです。まさか内部は三身廊ってことはないだろうよね。
残念ながら、ここがオープンするのは、毎週水曜日だけ。 この辺りのマイナー教会は、大体そういうシステムですね。しかし、あちこちで、週に1回では、1週間滞在しないとみられないということになります。多分、実際にそういう滞在客が多いから、ということなんでしょうけれど。
実は、内部には、教会創建と同時代、つまり1215年のフレスコ画が残されているのですよ。せめて鍵穴でもあればね。残念ながら、そういうものもなく、堅牢に守られている様子でした。 南壁には、三連窓が二つ。
どちらも再建。というか、外部はすべて漆喰ぬりぬりですもんね。 でも、なんとなく往時の雰囲気は残そうという努力は感じられましたけど…。
寂しいですが、仕方ない再建ですね。窓も新しくて、内部もフレスコ以外は真っ白なんでしょうね。そのせいで、フレスコ画も残った可能性大です。
ここから、山の方に入る道があります。この教会は、町と山の境目の場所です。 ちょっとした高台となっているので、最初に見た教会も、下の方に。
帰り道に出会ったウサギさん放し飼いのお庭。
可愛いなぁ、としばらく見ていましたが、はっ…、もしや食料として飼ってる?と気付き、哀れな気持ちに変わりました。ペットではなく家畜。本当のところはわかりませんけれど、不思議はないですよね。
この後、ホテルの近くから入る軽い散歩道を発見したので、翌日はそちらを歩いてみることにしました。続く。
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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2017/07/11(火) 02:28:27 |
チロル・ロマネスク
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冒険とランチで、すっかり終わったようなチロルの旅ですが、一応最後の目的地、 シルミアーノSirmianoのサンタポッロニア教会Chiesa di S.Apollonia、紹介しておきましょう。
下にあるのが、おいしいランチをいただいたレストラン、そして上の方にあるのが、目的地、サンタッポロニア教会です。
ランチの後、レストランの人に鍵を求めたところ、既に訪ねている人がいるから、上っていけば行き会うでしょう、ということで、空手で上り始めました。
これが、写真で見てもわかるとおり、結構な急坂です。
とはいえ、ランチでエネルギー充填した後ですから、全然問題なく上り、鍵を持っている人たちと行き会いました。
教会は、少なくとも外観はずいぶん新しくなっていて、およそロマネスクとは縁のない感じ。と思いつつ、ボンジョルノボンジョルノと挨拶して鍵をもらって、一応中にも入りました。
中に入ったら、漆喰で真っ白!かなり予想通りの姿です。
後からよくガイドを見たら、教会自体が1300年の建造ですから、多くを期待できないのは当然です。
それでも、中世の遺構はないのかなぁ、と思ってうろうろして見つけたのが、こういう壁のニッチだったり。
これも、おそらく結構後代のものでしょうが、それでもモチーフ的には結構中世で。小さなニッチの扉なんですが、それを閉ざしている鍵の仕組みがとてもわかりにくくて、これはまさに中世でした。
帰り道もあるので、さっさと降り、レストランに鍵を返しに行ったときに、帰り道について、倒木の事情も話して、ベターな道を尋ねてみました。 さすがに地元の家族がやっている店だけあって、道に着いてはとても詳しかったものの、おそらく前夜に起こったであろう倒木のことは知らず、それは大変だったね、と同情されました。つまり、あのような道を歩いてくるお客さんはいないということでしょう。 で、その倒木越えを避ける道はないかというのが眼目だったのですが、ないことはないけれど、「300メートル下って200メートル登る道で、時間的には倍はかかるだろうね」と言われ、そりゃやってられんわ、と結局また来たときと同じ倒木越えをすることになりました。 ただ、二度目ですし、その後の道がどうなっているかもわかっているので、倒木さえ越えてしまえばこっちのもの。案ずるより生むがやすしで、意外と簡単にできたんです。
後はすらすらと、来た道を引き返す感じで、とってもらくちんな山歩きでした。 サン・ジャコモが見えてきます。
車までもうすぐ。
行きの雨模様がうそのように、気持ちのよい天気です。風景もきれい。
出発の駐車場に付いたとき、すごい満足感がありました。車に乗る前に、野うさぎが駐車場になっている草原を横切ったりして、最後まで自然のおおらかさを感じることもできました。
しかしこの後、本来簡単と思っていた高速に出るまでの道が、「いろは坂」それも超激しいバージョン、だったのが、かなり意外でした。運転は自分がしたので、勘弁してくれよ~、とつぶやきながら、何とか乗り切りました。運転の経験地、かなり上がったかな、と思いますけれど、これがまた、意外にも何の経験地にもならないんですよねえ!
ま、何はともあれ、無事ミラノ到着。 長いチロルの旅、お付き合いありがとうございました。この地域のフレスコ画については、勉強する価値が大いにありそうです。いつかサイトにまとめる日を楽しみにしていてくださいね!
2012/12/09(日) 06:45:34 |
チロル・ロマネスク
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冒険の続きです。
前回訪ねたグリッシアーノGrissianoのサン・ジャコモ教会Chiesa di San Giacomoから、歩きで、シルミアーノSirmianoという村のサンタポッロニア教会Chiesa di S.Apolloniaへ行くというのが、この日の眼目、山歩きです。 この、シルミアーノという村は、20万分の1の地図にも出ていないような土地。車だと、グリッシアーノへと入り込む山道の基点となるプリッシアーノPrissianoまで戻り、そこからまたくねくねとした山道を登る、ということになるはずなのですが、歩きだと、高度のあるグリッシアーノから、同じような高度のシルミアーノへと、横にいけるはずなのです。観光局でもらったガイドによれば、45分。 山歩きをしょっちゅうしている同行者、普段ジョギングもしているし、歩くことには抵抗のない私、そういう二人にとって、45分のほとんど高低差のない山歩きは、軽いハイキングのはず。時間的には、ちょうどお昼の時間に目的地に着きそうだし、ランチが楽しみだね、と気軽な気持ちで歩き始めました。
木々の生い茂る、完全な山道です。最初はお気楽に、おしゃべりをしながら快調な山歩きだったのですが、30分弱たったころでしょうか、徐々に掻き曇ってきた空から、とうとう雨が落ち始めました。45分の道のり、という頭があるので、戻るには半端だし、悩みながらも、結局先に進みました。 これ、一人だったら、そもそも歩かなかったと思うし、雨の時点で、迷いなく引き返していたと思いますが、二人だと、お互いなんとなく依存して、大丈夫なような気がするんですね。大げさな山ではないので、大げさな事故が起きるはずもないので、別によかったとは思うのですが、これが若干大げさな場合は、複数だと誰がどう今後を決めるのか、というのは、重大な問題になるんだろうなぁ、とふと思ったりしながら。
しかし、雨は、意外としつこく続きます。 その上、もうとっくに45分すぎているのに、まだぜんぜん教会があるような土地には出会わず、ひたすら山道が続くばかり。 その上、多分こっちだよね、と進んだ道の途中が、倒木でふさがれていました。かなり激しくふさがれていたので、仕方なくちょっと引き返し、別の道を進むと、やっと開けた土地に出ました。
かなりの急斜面でしたが、牧草地のようで、原生花園状態に自然の花が咲き乱れていて、美しい草原でした。でも上りは相当きつかったです。まだ雨も落ちていたし、もう暑いんだか寒いんだかもわからないような有様。
で、やっと道にたどり着き、倒木がなければこうだったんだから、多分こう行けばいいはず、という車道に出たのです。
それにしても激しい雨で、しばらく建物の軒下で雨宿りを余儀なくされました。
中央右よりにある建物がわかるでしょうか。車道をちょっと行くと、この家の裏手に出ました。この、撮影している位置に教会がありますので、そこからもばっちり見えて、進むべき方向がわかったのです。
後から思えば、たとえ遠回りでも、その車道を進んでいたら、上の写真で言えば、建物沿いに左の方を大きく回りこんで、左下にある建物にたどり着いて、それでOKだったのですが、その時点では、全体を把握できなかったんですよね。
建物から、斜面を下る道があるのがわかったのですが、なんと、やたらとほえる犬が放し飼いにされていて、建物に近づくこともできないのです。同行者ともども、犬が苦手なもので、本当に怖かったです。家には人がいるだろうに、誰も出てきてくれないし。
で、結局、後戻りして、さっきの倒木を、無理やり越えるしかないだろう、という結論に達しました。
しかし、怖い犬がうろうろしているので、戻るのすらどきどき。私は手に水のペットボトルを持ち、何かあったらそれで威嚇しようという腹でした。
なんせ、昔チュニジアで野犬に襲われた経験がありますから、犬の怖さは知っているし、一応対応を学習しております。
幸い、犬も飽きたのか出てくることもなく、元の道に戻ることはできました。 で、倒木を無理やり超えて、急斜面を降りて、やっと目的地近くにたどり着きましたとさ。
サンタポッロニア、そうそう、あれ?教会ではなく、レストラン・カフェですか?
山の中のまたちょっとした高台に小さな礼拝堂があるんですが、鍵の管理は、その麓にあるレストラン。
ここに到着した時点で、ちょうどランチの時間ですし、雨やら犬やら倒木で疲れきっていたわれわれは、もう教会どころではなく、この看板に導かれるままにレストランになだれ込みました。
これが。 この山の中になぜこんなお洒落な店が? それも満員? というレストランでした。すぐわかったのですが、車道があるので、車でアクセスするのは簡単なんですね。歩きでたどり着いたのは、多分われわれだけ。汗みどろで、登山靴の足元もどろどろ状態、という姿なのもわれわれだけで、ちょっと変な空気をまとって目立っていたかもしれません。地元では、ちょっといいレストラン、というカテゴリーに入るお店のようでした。
実際このレストラン・サンタポッロニア、サービスも素晴らしかったし、本当にお勧めできるレストランです。 まずは、この後運転があるとはいえ、車まではまた山歩きで戻るわけですからアルコールなんてあっという間に吹っ飛ぶはず、同行者にお許しを得て、ビール! そして、山のきのこソースのクヌーデル。
ソースが濃厚で、疲れた身体にいきわたる栄養、という感じで、おいしくいただきました。普段だったら、ちょっと重いとか塩辛いと文句をつけるところだったかもしれませんが、このときは本当にベストな味でした。
これとサラダだけで、かなりおなか一杯でしたが、他の人の注文を見ていて、どうしても頼まないわけにはいかない、と思って頼んだのが、デザート。
木苺尽くしの三種盛り。フランスで言うところのカフェ・グルモンみたいな感じのお皿で、もう絶品でした。木苺も、自分の畑で取れたものだということでした。ムース、ジェラート、そしてフレッシュの木苺。
甘党でない私にも、おいしく賞味できる優しい甘さで、幸せでした~。見た目が既に幸せですよね。
そんなわけで、とりあえず、山歩き=>ランチ、というコースで十分満足。危うく、なぜこんな苦労して山を歩いてきたのかを忘れて引き返すところでした。
次回、チロル最終回です。
2012/12/07(金) 07:01:18 |
チロル・ロマネスク
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今回の旅も、そろそろ終わりに近づいています。最後の方は、中世めぐりというよりも、山歩きメインになりました。 ミラノに帰る日なので、帰り道方向にある場所、そして、その日開いていそうな場所、ということで、前夜に行き先を決定しました。 メラノからボルツァーノに向かう道の途中に位置していて、帰りの高速に乗るのが簡単そうだし、山歩きも存分に楽しめそうなスケジュールです。 しかし、これが思わぬ冒険の一日になってしまったのです。
最初のターゲットは、グリッシアーノGrissianoのサン・ジャコモ教会Chiesa di San Giacomo。
国道の出口がわからず、何度も行ったり来たり、と最初からつまづきます。二往復ほどしてやっとわかったのは、上りと下りでは、出口が違うということでした。どういうことかというと、普通高速では、上り下りのどちらを走っていても、出口は同じ場所で両側にありますよね。しかしここの国道では、上り側の出口と下り側の出口が交互になっている場所があり、上りでは出口があっても下り側にはない、という事態になっているのです。それが、カーナビにもちゃんと出ていなかったので、狐につままれたような状態でした。
気を取り直し、ナッレスNallesという土地から、まずプリッシアーノPrissianoを目指します。山道が苦手で怖い私としては、この村に車を置いて、歩いてグリッシアーノを目指すつもりでいたのですが、プリッシアーノは住宅が密集した小さな村で、駐車する場所など目に付かず、また路肩に余裕もなく、どうしようどうしようとあわあわしているうちに通り過ぎてしまいました。 そして、道は徐々に山道臭が強くなり、緑が濃くなってきて、私の不安は極度に高まり、つい路肩に停止してしまったのでした。一度停めると、坂道発進が難しいのですが、そこは同行の友人に頼めばいいや、と気軽な気持ちで。
とはいえ、道を聞く人もいない路肩で停まってどうするんだ、私?! ということで、やはり後戻りしましょう、ということになりましたが、もちろん私の技術では坂道発進できない、結構急な坂道。同行者に頼みました。 ところが、彼女は、普段自分の車しか運転しない人で、自分の車なら問題ない坂道発進が、私の車では難しい…。確かに私の車はクラッチのつながる場所が若干深かったり、ローのギアが入りにくいという嫌な性格があるんですけど、それにしても、彼女が思いっきりふかしたら、焦げるようなにおいがしてきたのには参りました。
私がギアを入れなおしたり、誘導したり、もう大変な思いをして、やっと発進して、坂道のとっつきの家の庭に人がいるのを発見し、迷わず飛び込みました。 汗だくで道を尋ねる不審な東洋人二人、向こうにとってはある意味、気持ち悪かったかもしれませんが、とても親切なご夫婦で、丁寧に道を教えてくださいました。 「うちに車を置いてもいいけど、グリッシアーノまでは相当あるから、やはり車で行った方がいい」といいます。
はぁ、と気持ちも重く車に戻る私。 仕方なく、改めて発進。とにかくどんな状況でも、途中停車だけはすまい、と固く決意して、坂道をのろのろと登っていきました。 そうしたら、意外とあっという間に道が開け、グリッシアーノに到着。でも、車を停める場所なんか、ここにもないし~! あわあわしていたら、親切なご夫婦が教えてくれた消防署の建物が目に付きました。そこに停められると思う、という話だったのですが、消防署前の平らな土地は各種車でぎっしり、その上、テントがびっしりと立っているじゃないですか~! 仕方ないので、無理やり入り込み、何かの準備中の人たちに、駐車のことを聞いてみると、ここは無理なので、もう少し先に行くと路肩に停められるから、というのです。翌日に、ビール祭りかなんかをやるということで、準備に余念のない様子でした。
参ったなぁ、とうんざりしながら先に進むも、やっぱり平らな場所なんてないんです。 途中、家を建てている現場があり、作業中の人がいました。尋ねてみようとすると、その作業中の場所に「P」という簡単な手書き看板が立っています。 話を伺うと、ちょうど平らな土地がある場所なので、翌日のイベントの駐車スペースに使うんだということ。今日は不要だから、駐車してもいいよ、と、私にしてみれば涙の出るようなお言葉!ありがたかったです。 で、そこに車を停めて、やっと最初のターゲットを目指すことができることと相成りました。これが第一の冒険。
では、こんなに苦労してたどり着いたサン・ジャコモ教会。
緑滴る中、小さな丘の天辺にちょこんと建っています。ロケーションは素晴らしい。もともと中世の巡礼路沿いにあったということらしいのです。奉納されたのが1142年と、起源は大変古い小さな聖堂です。
南側にある入り口。とにかく狭い土地に無理やり建てられたような状態で、後陣側は建物からすぐ崖状態です。
この地域にありがちな、割と普通のなんでもない聖堂ですが、中にはフレスコ画がかなり美しく残されています。13世紀およびそれ以降の作品なので、ちょっと新しいですが、13世紀は、この地域ではまたロマネスク時代だったはずです。
この、半円後陣と勝利のアーチの部分のフレスコ画が、その13世紀のもの。
後陣には、アーモンドの中に座る祝福のキリスト像と、周囲には四福音書家のシンボルなど、おなじみのモチーフです。確かにちょっと時代下る感がありますが、色がきれいで、全体にはまぁまぁ受け入れられるかな、というぎりぎりのところ。構図もちょっとすっきりしすぎかも。
右端に、洗礼者ヨハネらしい人物。このところあちこちでたまたま目にすることが多かったのですが、この人、らくだの皮か何かを羽織っているスタイルで描かれるのですね。そしてその皮が、妙に派手な色合いだったりするんですが、なぜでしょうか。意味があるはずなんだけど。
勝利のアーチの方は物語風の絵が描かれています。 これは、カインとアベルの、アベルっぽいです。
確かに!反対側にはカインがいました。
この、カインとアベルの絵は、割と好きです。
後陣向かって右側、カインのいる側は、おそらく後代に塔が建てられて、その下部が入り込んでしまっているので、このカインのフレスコ画も薄暗い場所に追いやられてしまい、後陣部分全体のバランスが悪くなっています。
側壁も全体にフレスコ画で覆われていますが、14世紀以降の作品で、保存状態もいまひとつでした。
全体には、本当に好きなタイプの絵ではなかったけれども、苦労してたどり着いて、開いていて入ることができた、ということが心底嬉しかったです。
ここから、歩きで、次のターゲットに向かいます。まさかまたもや冒険が始まるとは思いもせず…。
2012/12/05(水) 06:28:48 |
チロル・ロマネスク
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モンテ・マリア修道院Abbazia di Monte Maria (marienberg)の続きです。いよいよ、ロマネスクのフレスコ画に遭遇できるクリプタに入りますよ。
しかし、ミサの時間となっている17時半になっても、動きなし。明らかにミサを待っている人が結構いるので、ミサがない、という事態はないとは思いながら、まさかここへ来て、イタリア時間になるとは、と少々びっくりしました。
一度、建物内部から神父様が出てきたときには、待機している観光客全員が、いざ!という感じで腰を浮かせたのですが、なんと神父様は友人グループに近づき、穏やかに談笑を始めたのでした。なんだかすべてイタリア的になってきました。
予定時間から10分以上経過した時点で、案内役の神父様が登場。今度は本物。彼が何か言ったのかどうかも不明ですが、教会に向かう彼に、みながさり気についていきます。なんだかもうちょっと全体に、はっきりしろよ!という感あり。 ストレートに地下に向かいました。
思ったよりも小さくて背の低いクリプタ。 いきなり、天井のフレスコ画に圧倒されました。
クリプタは撮影禁止なので、これは現地で求めたガイドブックからの写真です。
とにかく、青が圧倒的に美しく、そして天井が低い分、手を伸ばせば届きそうなそういう距離感が、とてつもない実感を感じさせてくれるクリプタです。
そのときのミサの参加者は20名くらいだったでしょうか。後陣に向かって並べられた長椅子にみなが腰を下ろすと、神父様が、歴史的なガイドを簡単にしてくださいました。 クリプタに入った時点から、フレスコ画に釘付けで、隙あらば内緒で撮影しようという不遜な思いで一杯の私は、ほとんど気もそぞろだったのですが、確かイタリア語だったような気がします。 本当に簡単な短時間の説明の後、他の方々も入ってきて、総勢8/9名になったでしょうか、後陣の部分に半円に腰掛けられて、真剣なミサが始まりました。
事前情報で、「ヴェスプリのミサ時のみ、拝観可能」とあったのですが、それが、ミサに参加することを意味するという実感がなかったので、実は少々びっくりしました。
聖書の朗読、聖歌の合唱。荘厳な空気があたりを支配します。
隠し撮りをしようなどという不遜な思いは、一気にしぼみ、場の雰囲気に浸りました。
しかし、クリプタだけあって涼しい。というより、真剣に寒いので、もっていた上着をごそごそ着たりしていると、集中力が途切れます。われわれ以外は、明らかにクリスチャンで、ミサに場慣れしている感じもあり、整然と立ったり座ったり、ついていっている中で、どうも私は浮いている感がありました。
ま、そのついで、と思って、後半は、手持ちのメモ帳に、フレスコ画の模写をして過ごしました。
ちょうど自分の座っていた場所の上にあった天使たちをひたすら観察しました。
翼が二重なんだなぁ、とか、天使の着衣のイメージっていうのはどこから発想を得たのかなぁ、とか、足の角度が微妙だなぁ、巨大な鍵を抱えたピエトロが妙に素朴でかわいいなぁ、とかそういうどうでもいいことを考えながら。
絵を描くという行為は、ただ漠然と見ているよりも、そういう細かいことに気持ちが向いて、観察力が増すので、お勧めです。そういう見方をしないと、なかなか足の角度までは気付きませんからね~。
ミサは、結構続きましたが、そんなわけで飽きることなく天使たちの観察ができました。いや、これは面白かった。大満足です。
時間的に厳しいし、車でないとアクセスが難しい場所ですが、フレスコ画の美しさも含め、ここは、数多い南チロルのロマネスク・フレスコ画のなかでも、他をおいても訪ねる価値のある場所だと思います。
2012/12/03(月) 06:47:48 |
チロル・ロマネスク
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