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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

緑の中の美しい村たち(ランシャール、ラ・シャペル・スー・ブランシオン)

2018年8月、フランス中部(ブルゴーニュ、オーベルニュ+α)の旅その22

シャペイズChapaizeで、ぶっとい柱に感動した後は、とってもご近所の村へ向かいました。
お得意の思い込みプラス、フランス語の発音できなさで、実は、以前訪ねた他の教会だと思い込んでいて、到着して、まったく違う場所だったのでびっくり、でした。相変わらず間抜けです。

2018 france centre 298

ランシャールLancharreのノートルダム教会Ancienne Eglise Notre-Dameです。

そして、驚愕しました。大修復中だったんです。教会の周辺には、建築資材がたくさん置かれていましたが、外側は、とりあえず終わったのかな、という様子。しかし、中は、もう漆喰の白しか目に入ってこないぬりぬり進行中でした。

2018 france centre 299

修復が終了して、一旦落ち着いたら、こういうもんか、となるのかもしれませんが、いまだ修復中の中での見学ですから、あたかも、そこら中に漆喰の粉が待っているような雰囲気で、ここまで塗るか?!と驚愕しました。

再建中なのか、それとも修復中なのか、古そうな柱を大にして、柱頭らしきものが置かれていました。

2018 france centre 300

可愛い柱頭もあります。

2018 france centre 301

しかし、白さがフューチャーされてしまっていて、彫りの面白さが遠くに行ってしまっている感が…。

2018 france centre 302

こんな風に色付きもありますから、全面真っ白ということはなかったのではないかと思うんですが、フランスの修復は、ホワイト一色。

なんか期待していただけに、裏切られた気持ちでしたが、でもここ、なんか修道院だったんだろうな、修道院の寺町、というより、修道院だけだったんだろうな、という往時のイメージがわかりやすい様子のたたずまいの村で、それはよかったです。

2018 france centre 303

なんでかわからないんですが、かつては修道院だったことがわかるような形で残っている土地とか家並みの様子が、何とも好きなんです。こういうもんがあって、中に広がっている修道院のあり方っていうか。
多分、昔は、関係ない人は入れなかったりとか、いや、多分入ることもなかったりとかしたそういう歴史だったりに思いが行ったりして、なんとなく歴史の中にいるよ、オレ、みたいな感覚が好きなのかとも思うのですが。

教会や僧坊が中心だったりする中に、納屋みたいなところがあったり、畑があったりとか、そういうものが、琴線に触れます。変な趣味、笑。

2018 france centre 304

いずれにしても、いまいちだったな、と思いながら、次へ移動です。

2018 france centre 305

緑が美しい田舎道を15分ほど走ってたどり着いたのは、墓地教会です。

2018 france centre 306

ラ・シャペル・スー・ブランシオンLa Chapelle-sous-Brancionのノートルダム教会Eglise Notre-Dameです。観光地としても有名な、ブランシオンがある丘のふもとの村の中心にあります。墓地教会なのに、村の中心、というのが、いかにもの田舎度ですよね。美しい土地です。

後陣および立派な鐘楼がありますが、ファサード側は地味で、面白み、ほぼありません、笑。

2018 france centre 307

後陣に、フレスコ画があるのですが、説明版によれば、これは2001年の4月に発見されたばかりのようです。でも、それほど古いものではなさそうです。少なくとも、ロマネスク・ラバーが興奮するようなものではありません。

2018 france centre 308

下のほうのは、ちょっと古そうですが、でも、修復した挙句の保存状態がこれでは…。こういう風に傷んでしまうのは、それでも残念なことですね。
新しいもので言えば、こういう海洋堂フィギュア的な像が、結構気に入って、撮影してしまいました。

2018 france centre 309

戦う大天使ミカエルかとも思うんですが、翼がないですね。でも、かわいいです。

ここは、教会建築全体のたたずまいと、美しいロケーションを楽しむ場所だと思います。
こんなのどかで美しい墓地に一生、というのも変ですが、眠り続けるというのは、なんか幸せなような気がします。眠られているのは、ほとんど全員、土地の人でしょうしね。

2018 france centre 310

東京生まれで東京育ち、ミラノ生活が長い私は、こういう緑滴る美しい田舎の風景って、なんだか弱い。

2018 france centre 311

ついつい観光ツアーみたいになっちゃいました。あ、観光でもないか、見所ないし。でも、いわゆる「美しい村」ですよね、これは。人口が少なすぎて、実際の美しい村のタイトルはないかもしれませんが。
駐車だって、こんな場所なんですから。

2018 france centre 312

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  1. 2019/08/07(水) 05:58:15|
  2. ポワトー・シャランテ・ロマネスク
  3. | コメント:2

変な獣たちと、しばしのお別れ

ポワトー/シャランテ、55(最終回)
ポワティエ、最後に訪ねたのが、これまた町外れでほとんど人がいないサンティレール教会Eglise Saint-Hilaire。




確か住宅街の只中にぽっつりと建っている感じだったと思います。
そして、ここに来て初めて知ったのですが、このポワティエを含む、フランスにおけるサン・チャゴ・ディ・コンポステーラの巡礼路って、世界遺産だったんですね。1998年認定なので、比較的最近。イタリアで言えば、ラベンナ(確か1995年頃認定)より後なんですね。意外と遅い。
ということは、この住宅地の中の地味なサンティレールも世界遺産。いや、びっくり。




ファサード側は、修復も激しく、装飾が一切ない状態になっていたので(実際、ファサード側は、19世紀の建造のようです)、観察することもなく、すぐに入場しました。




おお、中もすっきり。こういう風に白くて新しくなってしまっている感の強い教会は、久しぶり。ポワティエの教会は、どこも薄暗くて、古色蒼然および後代になされた彩色で、不思議な雰囲気でしたが、ここはそういえば光もふんだんに入って、白がまぶしいくらいです。
周歩廊や縦長で背が高いのは、おなじみのスタイル。柱頭も少しはあるのですが、これまでの教会が余りにインパクト強かったので、ちょっと「なーんだ」的な…。

内陣部分に、11世紀の作とされるフレスコも多くあったのですが、かなり色あせていて、なかなか内容が判明しない状態。




色が程よくあせていてそれは好ましかったんですが、それでもオリジナルを想像すると、かなり派手に飾られていた教会だったのかと思います。

内部装飾的に一番気に入ったのは、実は、このモダンなステンドグラスかも。




これ、色使いといい、直線多様の人物像といい、とってもスタイリッシュで、わたし好みです~!

というわけで、15分くらいで内部見学終了。早っ!
実はこの教会の面白さは、後陣外部にあります。だから、もし中に入れなくても、全然がっかりすることないのです。

開けているスペースに建っていたら、さぞ素敵な後陣だったのではないかと思われる姿。




昔はきっと回りに何もなかったのではないでしょうか。地面も相当上がってしまっていて、今の道路より相当下にありますから、全体を見ることができなくなってしまっています。

この後陣の、軒送りや柱頭は、多種多様な彫り物の宝庫で、少々興奮してしまいました。












動物頭部フィギュア、アーチの装飾、植物モチーフ、碑文、戦う人と獣やら、グリーンマン動物バージョンとか、再建作品も含むようですが、本当に多様で、飽きることのない宝探しができます。

というわけで、旅からほぼ一年がかりとなってしまいましたが、本日でフランス、ポワトー・シャランテ編、無事終了です。長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。
時間がたちすぎて、町や教会のたたずまいや構造を多く忘れかけていたので、ブログに書くことで、かすかな記憶を救い上げるよすがになった気はしますが、このままほっておいたら、すっかり忘れそうです。かといって、サイトにまとめるほどの資料を集めるのは大変そうだし、やはり忘却の運命にあるのかも知れません。ま、フランスは、多くの人があちこちでまとめているから、それはそれです。
ただ、印象に残る場所はたくさんあったし、やはりここもまた、訪ねてよかったと思いますし、見残しもそれこそ五万とありますので、いつか再訪のチャンスもあろうかと思っています。
いつまでも、格安航空券で直行アクセスできますように…。イージージェット、経営破たんしないよう、がんばってくれたまへ~!

では、次回からは、久しぶりにイタリアに戻ります。

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  1. 2013/08/07(水) 05:17:35|
  2. ポワトー・シャランテ・ロマネスク
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中世を独り占め

ポワトー/シャランテ、54
サント・ラデゴンド教会Eglise Sainte-Radegonde続きです。
中に入ります。




一見すると、ゴシックになってしまっているのかな、という様子にも見えますが、ここは、全体がゴシック・テイストにはなっているものの、過去の遺構があちこちにしっかり残されていて、ロマネスク好きにも楽しめる教会です。
まずはなんといっても、お得意の周歩廊、そしてその内側にある巨大な円柱と柱頭に注目です。ここも激しく彩色されていて、エキゾチックというのかなんというのか。




なんか激しいですよねぇ。はではでしくて呆然としてしまいます。色彩がいい感じにあせているのもあって、決してひいてしまうような派手さではないんですけれど、それにしても、この感覚ってなんでしょう。何もないスペースが怖い、禅のま反対をいく西洋の美術ここにあり、みたいな?ここまで来ると、空間つぶしまくりのイスラム風でもありますし。

でも、柱頭はかわいらしいですよ。




上下になった獣に耳をかまれ足をかまれ。誘惑?または聞かざるの図かしらん。
こちらは受胎告知かな。




マリア、ボーっとしていてかわいい~。ライオンに足をなめられちゃってます。うーんと、なんだろう。やたらとライオンがいます。そういえばフランスはどこに行ってもライオンおよびそれ風獣が圧倒的に多いかも。

こちらはアダムとイブ。




彩色がなかったら、おそらくかなり印象の違う浮き彫りです。素朴だけど、人物フィギュアはシンボル化(っていうか、デザイン化)してないし、これはこれで特徴的な彫り物かも。

本堂の構造は、一身廊で、翼廊が突き出ている文字通り十字架型。身廊の壁には、ずっとアーチが並んでいて、上の方には軒送りに、面白い彫り物が並んでいるんです。これもちょっと珍しいスタイル。




軒送りの変なフィギュア。





後の方は、働く人かな。夢中になって怖い顔になってるのかしらん。ま、ちょっと時代が下っていますね。上の方にはステンドグラスの窓がはまっています。

そうそう、内陣部分が高くなっているので、気付いた方もいるかもですが、クリプタがあります。とても小さいスペース。




今もそのままなのかどうかわかりませんが、聖女が眠るためのスペースでしょう。一部はオリジナルの構造で、とっても古そうな石棺を取り巻く壁は、やはりアーチで円柱つきの素敵な装飾でした。こういう場所は、他に誰もいないと、怖いような気持ちになりますね。

ちょっと取り止めがない感じもあるんですけれど、ミスマッチが面白いともいえて、結構楽しめる教会でした。ポワティエは、ノートル・ダム周辺の旧市街中心地だけに人が集中しているので、それ以外の教会はほとんど人が来ず、静かに独占できるのも、中世をめぐる旅をしているわたしには嬉しいことです。

もう一箇所、行きますよ。

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  1. 2013/08/06(火) 05:26:42|
  2. ポワトー・シャランテ・ロマネスク
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時代の境目

ポワトー/シャランテ、53
次に向かったのは、サント・ラデゴンド教会Eglise Sainte-Radegonde。
ここはまた、一見ゴシックしかないような外観なんですが、意外とそうでもなくて。




入り口部分が塔になっていて、こういうタイプって、ちょっとロマネスクとしてはどうよ?という雰囲気なんですけれど、細部を見ると、過渡期的な装飾がたくさんあるのです。実際の訪問から時間がたってしまった分、実は、訪問時の印象をかなり忘却しているのですが、写真を見ながら、そういえば、ここは公園のお隣にあったなぁ、等と反芻しながら、自ら撮影した写真を懐かしく見ております。

この教会の構造は、長い時代の集積でして、かなり複雑なことになっています。




上の図で、黒い縁取りの部分が初期キリスト教時代のもの。6世紀くらいのもののようです。後陣部分と、前面の塔の基部ということになりましょうか。
今ある上もののかなりの部分は13世紀、ゴシックの時代のものとなりますが、ロマネスク時代の遺構が、よい感じに残されていて、多くの時代の遺構のマッチングが、面白い効果を生んでいるような、そういう教会です。

塔の上の方は、構造的なアーチ部分はともかくとしても、軒送りの彫り物などは、ほとんどゴシック時代です。




でも、窓周りのアーチを含む円柱やその柱頭等は、明らかにロマネスク時代。こういう風に、プロポーション的に高すぎるくらいに高い窓の感じは、フランスっぽいです。イタリアでは余り目にした事がないように思います。




後陣側は、完全にゴシックです。




でも、下部のアーチとか、上部の窓周囲の円柱と柱頭の組み合わせには、やはりロマネスクの遺構がしっかり残されているんです。




こういう風に、長い間、実際に祈りの場として使われた場所には、各時代の遺構が明らかに残されているケースが多いですが、その時々、実際の時代においては、どういう風になっていたんだろうなぁ、と思います。ローマ時代とかの基部があって、ロマネスク時代に、同じ基部の上に工事がされて、一部残しながらゴシック時代に天井部分が高くされたりして、そういう変更が加えられる度に、いっそ壊した方が、簡単なんじゃなかろうか、というような話があったのかもしれないし、壊そうとしながらも、もともとあったものを生かそうとする発想も常に出てきたのだろうし、きっとその時々の棟梁さんの見解というのも、場所ごとに違ったんだろうし。棟梁の仕事も、ただないもないところから作るよりも、大変だったんじゃなかろうか。
なんていうことを妄想すると、楽しくなってきますね。

この教会、内部もミスマッチの嵐で、楽しかったです。
今週は更新が遅くて、ポワトー地域最後の山場なのに、全然集中できなくてすみません。続きは次回。

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  1. 2013/08/03(土) 06:45:13|
  2. ポワトー・シャランテ・ロマネスク
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猫ちんのつぶやき?カテドラル

ポワトー/シャランテ、52

ポワティエの町は、どうやら中世当時から本気で栄えていたようで、結構広い地域に、満遍なく立派な教会が点在しています。一日かけても、全部回るのは大変なお仕事。といいながら、もらさずチェックしていますので、ロマネスク的な重要度に関係なく、訪ねないわけには行きません。
そういうわけで、ほとんどゴシックらしいと思いながらも、次に来たのが、サン・ピエール・カテドラルCathedrale de Saint-Pierre。




おお、どうみてもこれはロマネスクじゃない。でも、緑が多いお屋敷街みたいなロケーションで、写真的にはヨーロピアンかも。しかし、これでは…。




こりゃ完璧なゴシック。みるところはなさそうですが、ここまで来たら素通りはできませんので、入場。




だめですね。ここで最も重要なのは、13世紀作の、内陣に置かれた木製の椅子と、立派なステンドグラス。確かに細かい彫り物が施された木製の椅子は素晴らしいものですし、ステンドグラスも美しいのです。でも、わたしの求めるものではないし。




一部の柱頭は12世紀のアーカンサスモチーフのようなのですが、教会全体の中では、ロマネスクというよりはもうゴシックに取り込まれて安定しているような有様で、わざわざ詳細を観察する気力もなく、早々にお暇。
そしたら、多分側面の小さい扉だったと思うのですが、かすかにいらっしゃいました。




少々傷みがあるんですが、これは明らかにわたしの好む時代。
聖母子とか、エリザベツ後訪問とか、マギとか、どうやら聖書エピソードがテーマの柱頭のようです。特に左側は、二段にわたってぎっしりと彫られており、保存状態がよければ、結構面白いものだと思うのですけれど。






ここでは、見学時間10分で終わりました。最速。一度は訪ねないとわからないからね。でもちょっと寂しい。ゴシックだけ残っているのは、ある意味バロックになっているよりもっと寂しい感じ。
かわいらしい猫ちんが、「ま、そういうこともあるにゃん」とつぶやいたような。




そうね…。

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  1. 2013/07/29(月) 05:31:56|
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