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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

失われて残念な絵巻(サン・ジャック・デ・ゲレ41、その2)

2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その67(ロワール・エ・シェール)

サン・ジャック・デ・ゲレSaint-Jacques-des-Gueretsサン・ジャック教会Eglise
Saint-Jacquesです
(毎日9時から18時)。

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続けてフレスコ画をみていきます。
後塵に向かって右手側壁の上の方です。

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「サン・ニコラスの奇跡。聖なる司教は3人の少女を売春から救うために3人の少女の父親に3枚の金貨を贈った。小屋の下で、父親は眠っている娘の近くに座っており、それぞれが丁寧に表現されたひだの毛布を持っています。右の方で、マリアが場面を見守っています。」

父親の背景には、結構長い文が書かれているんですが、もちろん肉眼では気付けませんし、写真で見ても読めません。他すべて、顔は消えてしまっているのに、父親だけはうっすらと線画状態で表情が残っていることから、もしかすると、文も含めて、後代の加筆かもね。

その下となります。

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「ラザロの復活。中央にあるストリギル(Sの形をした波モチーフで、主に石棺の装飾に使われたモチーフ。これは確かによくあります)で装飾された石棺は、ラザロの使用人の一人によって開けられ、座ったままのラザロはまだ包帯で囲まれています。キリストは彼に向かって手を差し伸べ、彼を生き返らせるよう招きます。右側で、ラザロの姉妹たちは、驚きに包まれています。左側では、二人の使徒が、場面を見守っています。」

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生気のないラザロ、そして祈るような表情で枯れの頭を支える姉妹。ここはよく残っています。手が面白い。

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ここのキリスト、光背の彩色から何から、よく残っています。

次は、右側壁の上部全体を占める記念碑的なシーンとされる大判の絵。

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「煉獄に降臨するキリスト。右側に、キリストは壮大な姿で天使たちを従え、アダムとイブを煉獄から解放し、楽園へと導きます。」

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「上には、天上の至福の中で並んで座る族長たち。」

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「中央、煉獄、待ちと苦しみの場所。」

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「下、地獄にて、有罪判決を受けた者は悪魔や茶色のまだらの毛並みをした獣によって拷問を受けます。」

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この、ちょっと激しい場面の対面には、お誕生です。

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「誕生。中央には編み籠に入った幼子イエスがロバと牛に見守られています。聖ヨゼフは右側に建っています。下には、マリアがよこたわっています。星と吊り下げられたランプは、シーンを隔離する小屋を伴います。」

色合いとか構図とか、対面のシーンを描いた人とは違う感じします。フレスコ画、12世紀と13世紀が混じっているから、当然職人さんもまちまちだろうし、これはちょっとなんていうか余白も多くて、面白い絵です。時代が下るのかな。下った上のヘタウマ系にも見えます。

血なまぐさいのは対面で、と思ったら、お誕生の上にもありました。

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「幼児虐殺が上部を覆っています。子どもたちを捕まえる兵士たち、地面にひれ伏し、殺された子どもたちの近くで懇願し泣き叫ぶ女性たち。」

左側壁は、お誕生からの場面がずらりだったのかもしれませんよねぇ
手前の方はほとんど断片しか残っていないのは残念です。

その他も、ちゃんと撮影できなかったものがいくつかあります。また窓のところにもいくつか。これは時代が下るやつっぽいです。

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「建物全体に規則的に配置された奉献の十字架がいくつかの場所で見られます。
軸方向の窓には、神の祝福の両側に、聖ジョルジュと聖オーギュスティンが描かれています(この教会は、聖オーギュスティンの規律に従ったサン・ジョルジュ・デ・ボワ修道院に属しています)。」

それにしても、これだけ内容が分かると、現場でももっと楽しいから、今が今、現地に行きたい!どこでもドア、切実に欲しいですねぇ。

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  1. 2023/09/17(日) 20:26:42|
  2. サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
  3. | コメント:2

ここも壁画満載(サン・ジャック・デ・ゲレ41、その1)

2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その66(ロワール・エ・シェール)

この日は、比較的時間に余裕があると思って回っていたのですが、さながらフレスコ三昧で、やっぱり押せ押せになっていました。今回もまた、素晴らしいフレスコ画に出会える教会です。

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サン・ジャック・デ・ゲレSaint-Jacques-des-Gueretsサン・ジャック教会Eglise Saint-Jacquesです(毎日9時から18時)。

ちょっと驚くのは、ここ、実に小さな村なんですね。

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改めて地図で確認すると、川向うにもうちょっと大きな町があるので、その町のはずれかと思ったんですが、ちゃんと独立した村で、教会の近くにメリーもあるようでした。とても小さな村の墓地にある教会です。
そういったたたずまいだし、見ての通りの地味な様子だし、訪ねたのは、確かに開いているはずの時間内ではあるものの、開いていたことにちょっと意外感も持ち、有難い気持ちになりました。だって、ほんとにすごい田舎なんですよ。ポツンぽつんと住宅が立ち並んでいるだけの。
小さい村だからこそ、というのもあるかもしれないですけどね。墓地も、清潔感漂い、美しく管理されている様子でしたし。

教会が捧げられているのはサン・ジャック、つまりサンチャゴさんです。ということは、川向うではなくて、ここに巡礼路があったということになるのかな。

今回も、現地でいただいたフライヤーの解説を読んでいきます。

「13世紀に創建されたシンプルな教会は、サン・ジョルジュ・デ・ボワ修道院に属するもの。壁画は、12から13世紀になされたもので、1890/91に発見されました。場面のバラエティーさ、そしてその豊かな色彩は、この地域でも、最も重要な作品の一つとなっています。ラピス・ラズリが、単独でも、また他の色との混合でも、赤や黄土色によって強調された青、エメラルド色、緑そして紫などの色を際立たせています。」

建築は、後代に手が入ったものなので、それに関しては割愛。ここではフレスコ画が目的となりますので、開いているときに訪ねなければ意味がありません。
中も、もはやフレスコ画だけのためにあるような、超絶シンプルな様子となっています。

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いやもう、感動、いや、感謝ですかね。
よくぞ残ってくれたものよ、と。
信者さんが教会を訪れるのとはまた違う、でも一種の信仰心というのか、愛他精神というのか、この趣味をやっていると、とても大きな何かに感謝する純粋な気持ちみたいなものを持つことが出来るのですよねぇ。その土地の歴史、人々の営みや生活、そういったすべての結果、千年からのものが残るということですから、”有難い!”と文字通り思うんです。

ウクライナに限らず、現代になっても戦争戦闘は絶えませんし、同時に避けることのできない天災もあります。昨今も、モロッコやリビアで、多くの命とともに、これまで生きながらえてきた多くの歴史遺産も失われたことと想像します。そういうことと思い合わせると、こうして訪ねて、出会えることが出来る喜びというのは、そういうものすべてを背景にしているということになるので、時々はっとさせられるんですよね。ちょっと大げさかな、笑。

おっと、余計な私見でした。
細長い一つだけの身廊で、余計な構造物は一切ないという潔さです。

さて、今回もきちんと撮影できているのか不安ですが、笑、解説とともに見ていきたいと思います。

私の撮影は、例によって思うままの順番超無視なので、後陣側から手間に向けてなされている解説に沿って、写真を探してみますね。

まずは、正面の右側です。

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「アーモンドの中の荘厳のキリストは、四人の福音書家のシンボルに囲まれている。多彩な色彩の衣装には、小さな模様が緻密に刺繍された生地が裏地に施されています。」

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ちょっとぼけてる写真ですが、衣の様子、拡大すると、確かに細かい装飾性が分かりますよね。
それにしても、正面に窓が開けられていて、その両脇に均等な大きさで絵が描かれていて、ちょっと不思議な様子です。と言って、窓はこの絵が描かれたときにはすでに開いていたのでしょう。
もしかして、今は木製で吹かれている天井部分、もっと壁があったのかなぁと思ったり、いや、荘厳のキリストが置かれているということは、そんなはずもないかと思ったり。解説にはないですが、さらに古い時代に建物があった可能性もゼロではないのかもね。

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「その下の方には、最後の晩餐。キリストとその使徒たちが、一堂に、テーブルを囲んで腰掛けています。テーブルの上には、パン、魚、皿、ピッチャー、そしてボールが明確に描かれています。」

大きなカギをこれ見よがしに担いで自己主張に余念のないピエトロさんが見所でしょうか、笑。

荘厳のキリストの向かって左。

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「磔刑。キリストは、両端が広がった形の十字架(Pattee)の上に描かれており、一部はエメラルド、一部は黒で、獣脂の雫のエメラルドで装飾されています。マリアとヨハネが両側にいます。上部には、空には雲が広がって、太陽と月が隠されています。」

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太陽と月は擬人化されていて、とても素敵。そして、各所に使われている青の色がとても良いですね。

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磔刑ではありますが、マリアとヨハネの配置は、ビザンチンのデイシスの影響があるでしょうか。

かなり傷んでいるのですが、ここでのマリア、とても素敵。

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ちょっとヒト的というか、合わせた手と、そして瞳がなくなっているんですけど表情が悲しみにあふれている様子で、改めて良い絵だと思います。

下の、天使の衣も美しい青です。

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「下の方には、死者の復活。ひだの多い青いマントを着ている天使が付き添っています。」

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「上の方に、12世紀のものですが、天国の様子が描かれ、サン・ペテロが選ばれた二人を護衛しています。」

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「下の方に、聖ジャックの殉教。3 人の登場人物 (ヘロデ王、死刑執行人、殉教者) が、致命的な行為の瞬間性に対する恐怖に捕らわれているかのように見える大きなシーン。一人の天使の頭部が、王の頭の右側に見えます。それは、かつてなされていた絵の名残のアイテムとなっています。」

建物については不明ですが、フレスコ画は、これ以前にもあったということですね。それはどういうものだったでしょうね。

ところで下世話なこと言いますが、脚線美ですよね、笑。
ヘロデ王なんかマントをはねのけて、ほっそりした長いふくらはぎをこれ見よがしに見せてます。死刑執行人も、黒のレギンスに覆われた素敵なおみ足。なぜ、男性の脚線美推しはなくなってしまったのでしょう。

ということで、写真が多くなったので、続きます。

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  1. 2023/09/16(土) 20:21:18|
  2. サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
  3. | コメント:0

三人三様(モントワール・シュル・ル・ロワール41、その2)

2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その65(ロワール・エ・シェール)

モントワール・シュル・ル・ロワールMontoire-sur-le-Loireのサン・ジル礼拝堂Chapelle Saint-Gilles、続きです。
見どころであるフレスコ画を見ていきます。まずは、解説総論から。

「壁画
内部の建築は非常に特徴的です。三つ葉の内陣があり、北と南の袋小路にある 2 つの礼拝堂がトランセプトの役割を果たしています。 中央の交差点は、目立たないペンダントが付いたドームで覆われています。迫り元の上の刳り型のない横断アーチ。
威厳のある三体の荘厳のキリストを観想するには、自分自身を中心に据えなければなりません。
発見の年である 1840 年以来、歴史家や学者は、一貫した図像プログラムを定義するために多くの仮説を立ててきました。なぜこんな小さな礼拝堂に三人ものキリストがいるのか?下部にあるの装飾が消えてしまっているため、研究は簡単ではありません。」

本当にその通りで、時代が違うから、最初から三つの後陣それぞれにキリストがいたのではないのかもしれないけれど、最後のキリストが描かれた時点で三人。それぞれの後陣が、その時代のそれなりの職人さんの作品で飾られてそろい踏みしてたわけで、そんなのって他にないですよねぇ。

前回も載せた全体図。

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図にはなぜか1が欠如していますが、後陣それぞれの半円ドームにフレスコ画があるのです。身廊の方も残っていれば、プロポーション的にも納得感あるし、見学するにも受け入れる準備を整えやすいと思いますが、ここ、今は身廊なしで、いきなり内陣状態ですから、結構あたふたしますよ、笑。なにをどう見たらよいのか、目が泳ぐっていうか。トップの解説にもありますが、三つを見ようとするには、真ん中に立って落ち着いて対応しないといけないんです。落ち着いて…、無理、笑。

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問題は、撮影の順番がちゃんとしているかどうか、ということ、笑。
せっかく解説がありますので、頑張って合致する写真を依りだしてみます。
まずは、正面、東側の絵です。

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「東側の礼拝堂
白塗りの背景に、二重の栄光に輝く威厳のあるキリスト(12世紀初頭)は、壮大なスタイルで描かれていますが、”一見”非常にシンプルです。彼は、福音書家のシンボルが挿入されたアーモンドを支える天使たちを伴っています。衣服が優雅に浮かび上がります。聖ルカの雄牛(右下)が消去されています。このキリストは書を持ち、右手で祝福を与えています。注意深く観察すると、花、コートの装飾された裏地、クッションの先端など、ほとんど消失していた細部が明らかになります。赤黄土色の大きな縦線は、芸術家が主題のバランスをとるために中心に印を付けることから作品を始めた様子を示しています。
1979年に歴史的建造物研究所が行った分析により、壁には単層の石灰漆喰が塗られており、それが作品を弱め、乾燥した塗料の一部が剥がれ、接着剤が剥がれてしまったことが判明した。下絵の準備エリアのみが残ります。ハイライト、仕上げレイヤー、細部が色あせています。
足(赤黄土色の単純な輪郭線)を見て、それを南のキリストの足と比較するのは興味深いことです。南のキリストは、生きている身体をよりよく表現するピンク黄土色のさまざまな色合いの塗り重ねで表現されています。」

ドームの手前のアーチ、図での2番は、以下となります。

「東の横断アーチ
中央には、メダリオンの中にある神の子羊が、6 つの大きな翼を持つ 2 つのセラフィムで囲まれています。そこでも顔や翼は作品の輪郭に過ぎません。頭とメダリオンの間にある”天の雲”(うねりの形)は、これらの天使が神の御座に最も近い場所にいることを思い出させます。」

キリストの周囲にいる天使たちのくねりや翼が、アルトアディジェの青天井の天使を彷彿とさせるのはなぜでしょうかね。おそらく、動きを感じさせるようなタッチだからかな。踊ってますよね、みんな。とてもシンプルな線画なのに躍動感って、うまい絵師ということになるよね。細部まで残っていたらどうだったろう。
12世紀初頭とありますが、そういうところも含め印象はもうちょっと後でもありでは、という感じ。
セラフィムは、すごく暑苦しい、笑。翼、着込みすぎだろ?としか見えないっていうか…。

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次は、南側、図の3となります。

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「南側のキリスト
13 世紀末のこのキリストは、「鍵を持つキリスト」または「聖ペテロに鍵を渡すキリスト」と呼ばれることがよくあります。様式的には、ロマネスク芸術の特徴である大きな V 字型のひだで装飾された豪華な装飾が施された衣服を着た、印象的に荘厳な人物です。かろうじて輪郭が描かれた白い線の並置は、非常に細かいプリーツのある生地の印象を与えます。あるいは、人物や装飾要素のあり方から、すべてを推測してみてください。
左側には 14 世紀のいくつかの場面がまだ残っています。グリルの上のサンローランとテーブルを囲む数人の客です。」

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「南側の横断アーチ(図の5番)
草の葉でつながった 2 匹の魚が黄道帯を思い出させます。」

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装飾性もすごいし、醸し出される荘厳さが感じられますよね。東側の絵とは200年近くの差があるのだと思うと、なるほど、と思わされますが、同時に、芸術というものの面白さを感じます。
デッサン力に優れているからよい、ということでもなく、作品を作るには技術は必要としても、表現力というのは技術だけでは作れないもの。時代を隔てた絵が並んでるって、すごい。

そして。北側。

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「北側のキリスト
右側の部分は非常に読みやすいままです。波打った装飾をされたアーモンドの中で、「アルファとオメガ」の間で、表情豊かな顔をしたキリストが腕を伸ばしています。ローブとマントは南礼拝堂と同じ特徴(プリーツと刺繍のドレープ)を持っています。左手の手のひらからは赤い糸が伸びており、これらの人物たちの後光がかかった頭の上を通っています。彼らのそれぞれの上には、なにかの破片が額に向かって曲がっています。他の 6 人の登場人物が向かい合っていたと想像できます。」

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このキリストが、一番イケメンで好みでしたけど、加筆っぽい様子も結構ありますね。色も鮮やかなので、印象が強い。それにしても赤い糸、面白い。

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西側の横断アーチ

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「中央では、栄光のキリストが両腕を伸ばし、12世紀の細長い盾をかぶった鎖帷子に身を包んだ二人の騎士の頭に冠をかぶせています。これは、悪徳と戦う美徳を表すサイコマチーPsychomachiaです(4世紀のプルーデンスPrudenceの詩より)。貞操 (Castitas) は欲望 (消滅) と闘います。 忍耐(Patientae)はIra(怒り)を突き刺します。下の方には血の筋や滴を、まだ見ることが出来ます。
柱の上には、美しい男性の頭が視線に身を差し出しています。線の正確さ、ハイライトの繊細さ、顔を浮き彫りにする光に感心することができます。」

それぞれに味わいがあり、興味は尽きない礼拝堂ですよね。

最後に、基本的なことも書かれていたので、せっかくだから載せておきます。

「使われた材料や技術
本物のフレスコ画(フレスコ画)は、新鮮な漆喰の上に描かれています。壁は最初のコーティング層(石灰と砂を混ぜたもの)で覆われ、次に石灰を大量に加えたより薄い層で覆われます。塗料がまだ乾燥していないため、アーティストはその日のうちに水性絵の具(砕いた土や石)を使って作品を制作します。化学反応(水酸化カルシウムと空気中の二酸化炭素 = 炭酸カルシウム)が起こり、顔料が固定され、フレスコ画の堅牢性が確保されます。しかし、多くの場合、芸術家はフレスコ画の下描きだけを実現し、糊絵の具を使用してセコまたはテンペラで作品を仕上げます。顔料は天然の土(黄土、緑の土)と膠、カゼインなどの有機材料を混合して構成されています。これらのペイントは耐久性が低く、剥がれたり、色褪せたりするため、シーンを読み取ることが困難になります。
17 世紀以降、時代遅れとみなされたこれらの塗装された装飾は石灰で覆われることが多くなりました。1832 年にSaint-Savin-sur-Gartempeの絵画が発見されると、関心が高まり、調査や研究が行われるようになります。」

イタリアやスペインでは、フレスコが主だと思っていたのですが、各地でセッコでも描かれていたのでしょうか。でも、フレスコでないとストラッポ技術で美術館に移築することは不可能ですから、例えばピレネーの絵画はフレスコ画ですよね。
フランスのサントル地域では、フレスコ画が非常に多くみられるのですが、セッコもあるというのが、ピレネーなどとの違いとなるのでしょうが、それは、フレスコの技術力が低かったのか、セッコでじっくり描くことを好む職人が多かったのか、どういったことになるのか、そういうことを妄想するのも楽しみです。
いずれにしても、フレスコ画の耐久性は分かっていたのでしょうが、そうはいっても千年持つとは夢にも思わなかったことでしょうねぇ。

ここは鍵をお借りして独り占めで堪能したこともあり、去りがたさ、半端なかったです。
これからもいつまでも公開してくださいますように。

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  1. 2023/09/15(金) 20:59:50|
  2. サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
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鍵を求めて行ったり来たり(モントワール・シュル・ル・ロワール41、その1)

2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その64(ロワール・エ・シェール)

次に訪ねた村は、前回の美しい村から、ほんの3キロほど北西に移動したところで、実際歩いてもいけそうな距離だったんですが、村に着いてから、鍵の手当てに歩き回ることとなりました。
どゆことかというと。

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印のあるのが目的の礼拝堂なんですが、鍵を借りる必要があるんです。その情報は、事前に得ていたので、まずは鍵を求めて、Place ClemenceauにあるCafe de la Paixというカフェに行かねばなりません。
事前情報を載せておくと、「祝日ではない木曜以外はカフェで、それ以外の日はカフェ隣のMagasin l’Escarpinで、鍵を借りることができる」となっています。

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私は、まずは礼拝堂に行ったものの、クローズ。現場に上記の情報が記されていたので、結局カフェのある広場に移動して、幸いその広場に駐車できたので、鍵を借りて、また礼拝堂まで戻った次第。礼拝堂周辺は狭い道ばかりで駐車しにくい気がしたので、広場に駐車したまま徒歩で往復しました。

ちなみに、鍵を借りるのは有料で、人数を聞かれ、一人だというと5.50ユーロ取られました。

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首尾よくカギをゲットして、ルンルンしながら礼拝堂に向かいます。鍵を借りたときは、いつもなんだかスキップ気分になりますね。同じ経験をしている人には分かってもらえると思いますけど。

細い路地を抜けて、先ほどの場所に戻ります。

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この、すでに住人がいなくなったような様子の、高い塀に囲まれた白い扉がそれです。ワクワク、鍵を開けます。

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モントワール・シュル・ル・ロワールMontoire-sur-le-Loireのサン・ジル礼拝堂Chapelle Saint-Gillesです

誰もいない場所に、一人でこっそりと侵入する感じが、もうわくわくドキドキです。
この礼拝堂については、ツーリスト・インフォメーションでもらったと思しきフライヤーがありましたので、そちらの解説を読んでみました。

「サン・ジル礼拝堂
11 世紀末に建てられたこの修道会礼拝堂は、サン カレーのベネディクト会修道院に属すものとして建てられました。隣接する家はかなり改装されているが、修道院長の住居でした。
施設全体は 18 世紀末に放棄され、1840 年から 1841 年の冬にロマネスク様式の絵画が発見されたにもかかわらず、建物は荒廃しました。1917 年以来、敷地の所有者であるジェラール家が維持管理し、一般に公開しています。
11 世紀には、地面の高さは 1.20 メートル低くなっていました。ロワール川沿いに工場が建設され、渓谷の沖積土が徐々に隆起していきました。
丸い後陣には、小さなビーズのコードで強調されたスラットが穴を開けられています。絵画的なモチーフを備えた数多くの軒持ち送りは、20 世紀に部分的に作り直されました。
北と南の礼拝堂は長方形の形をしており、後陣を調和して囲んでいます。身廊については部分的にだけ残っています。最初の柱間では、繰りぬかれた楕円形と半円形の南壁、そして葉の茂った柱頭のある小さな柱で囲まれたロマネスク様式の入り口のある西壁です。
毎年 9 月 1 日、サン ジルの祝日には、そこでミサが行われます。」

ざっくりとこんな感じです。長年放棄されていたというのに驚き、たまたま所有者となった方が一般公開されている、ということにも驚きました。マイ礼拝堂を所有するだけでも相当なもんなのに、それが11世紀起源で、ロマネスク絵画のマスターピースとまで言われているお宝を内包しているというのは、ちょっと一般の感覚ではねぇ。
鍵の管理をしているカフェも、もしかするとジェラール家ゆかりということなんでしょうかね。

という下世話な話は置いといて、見ていきましょう。
キモは内部の壁画ですが、まずは外側から。

塀の外からは、廃屋のような様子でしたが、塀の中は結構広いスペースとなっているのに驚きます。

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後陣と反対側の西側、こうなっています。建物前のスペースに関しての説明はなかったので、詳細は不明ながら、構造は古いようです。ポルティコというか、教会前に置かれた前庭みたいなスペースって、古い時代の教会にありますよね。そういう場所かな。アクセス口の様子からは古さが感じられます。

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上の解説で、11世紀の建設当時は、今より1.2メートル地面が下だったとありますが、つまり、この門はその当時の高さにあるということなのかな。ってことは、やはり創建当時の構造物ですね。

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入り口以外の場所は、現在の地面の高さになっていますから、発掘された部分のようです。

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フライヤーに平面図が載っていました。やはり往時の建造物だったのですね。つまり本堂だったということかな。現在は内陣部分だけが残っているということ。礼拝堂というので、なんかこれがすべて、みたいに思い込んでいましたが、ちゃんとした教会だったのですね。

メインの後陣。軒持ち送りがありますね。

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軒持ち送りは、近代に作り直されたともありますが、どれがそうなのか、再建もあるのか不明ですが、全体になかなかにチャーミングです。

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ワクワクがつのってきましたか?
次回、壁画を紹介します。


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  1. 2023/09/12(火) 20:10:18|
  2. サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
  3. | コメント:0

素敵なピクニック・エリアにも大満足(ラヴァルダン41 その2)

2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その63(ロワール・エ・シェール)

ラヴァルダンLavardinのサン・ジェネス教会Eglise Saint-Genest、続きです(毎日9時から18時)。

教会内部、フレスコ画以外にも気になるものがあります。

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柱頭です。身廊の方は、角柱が並んでいますが、装飾的には愛想のないたたずまいとなっています。一方、内陣の方には、すっごく古そうな、印象としては10世紀あたりじゃないか、とも思える巨大柱頭が。

この内陣の柱頭、背が低くて、162センチの私の目の高さ。

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そういえば!
これは純粋脱線ですが、夏休み前に、会社主催の人間ドッグなるものやってきたんですよ。色々あって、ちょっと困ったわの結果もあったりするんですがそれは置いておいて、なんと、身長が伸びていた…!
年取ると、縮むっていうのは聞いたことありますけど、伸びるってすごくない?
最後に慎重を計ったのがいつだったのか、思い出せないけど、長い人生、ずっと160センチと思ってきたのが、今回162センチって、2センチも高かった。
高校生くらいまでは、健康診断って学校でやってくれたとおもうけど、その後どうだったのか。体重は気軽に測れるけど、そういえば身長って測らないよね。だから、実は10代の頃すでに162センチあったのかもしれないよね。
いやはや、びっくりしました。
困ったのは、それによって、BMIの数字が悪化、痩せすぎ度がマシマシ。去年の事故入院で落ちた体重、なかなか戻らなくて困ったもんです。

と、誰にも興味のない話、失礼しました。
柱頭に戻ります。

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解説。
「最も幻想的で最も神秘的な装飾は、内陣の 2 本の円筒柱の柱頭の装飾です。巨大で粗野な外観を持ち、謎めいて未完成で切断されており、黄土色と青の痕跡があり、基部には円筒形をした玉縁文様があり、副柱頭の角には渦巻きがあります。」

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「南の柱頭には、長い尾を持つ 2 頭の向かい合った動物が彫刻されています(欲望?)。他の二匹の動物が隅にいます。」

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「北の柱頭は内陣に向かって修道院的な祝福を示している。聖ブノワだろうか?
身廊に向かって、この同じ柱頭は、幼子イエスを膝の上に抱えた非常に古い聖母の図像を表しています。」

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この幼子が、やけに細かい彫りになっていて表情までついててびっくりです。渦巻き模様にしろ、全体の彫りはかなり稚拙でプリミティブな様子だから、やはり古いものと考えられますけど、ちょっと不思議。

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後付けすげ替え疑惑、あるあるですね、笑。

いずれにしても、味わい深い、好物系柱頭です。

その他、随所に古典テイストを感じる彫り物を見ることが出来ます。

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主に教会創建後に派手に描かれたフレスコ画が、特に13世紀以降のものが目立ってしまう教会ですが、オリジナルの教会は、こういった素朴な彫り物装飾メインの教会だったのだろうと思います。フレスコ画のせいで、目がどうしてもフレスコ画に引き寄せられるのですが、浮彫チェックも忘れてはなりません。

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地味っぽいけど、彫り物、凝ってて、窓脇のなんか、ネジリン棒で上から下までびっしり。

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動物よりも人物が得意な石工さんだという印象です、笑。動物もうまいけど、なんの動物だろうっていうやつばっかり。ファンタジスタだったのかな。

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では、外に出て、外側をさらりと。

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全体にすっきりなんですが、やはり随所に欠かせないアイテムって感じの浮彫が施されていて、どれも好きなやつです。

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市松ものこぎり歯みたいなのもとても良いですね。

「東側後陣
鋸歯状のアーキボルトと柱頭のある小さな柱を備えた 3 つの美しいロマネスク様式の窓が建物を飾っています。」

この窓の右下に、このような浮彫がはめ込まれています。

franc vari 844

縮尺が変ですが、狩りっぽく見えますね。
他の窓の近くにも、やはり人物像の浮彫がありましたが、これは、ズームで撮影していないことから、現場では気付いていなかったようです。

franc vari 845

光と影の効果で、場所に寄っては肉眼では見えにくいものもあります。この浮彫は、傷みもあり、またかなり浅い様子でもあるので、壁面と一体化してしまったのでしょう。もしかすると、これが、解説にある「後陣の北には、アブラハムの犠牲を思い出させる 2 人の人物がいます。」かもしれませんが、よく分かりません。

外壁には、どうやら結構な数のこういった浮彫はめ込みがあるようで、いくつかは現場で気付けませんでした。例えば、ファサードの扉上にあるもの。

franc vari 846

分かりませんよね。よく見ると、うっすら見えました。

franc vari 847

他にあったのだから、もうちょっと目を皿にすべきでした。
これは解説では、「ポーチの上に5人の人物。五人の賢い処女とも考えられます。」とあります。確かに五人見えるけど、想像の決めてはそれくらいということなのでしょうね。

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「天使によって空を運ばれる人物。メインモチーフが欠けているようだ(昇天の図像?)」とあるやつなのかな。こういった浮彫は、唐突だから、他の場所にあったものがはめ込まれたということかと思うのだけど、それに関しては、どこから来たのでしょう、という疑問を投げかけているだけ、つまり、いまだに判明していないということなのでしょう。

franc vari 849

ここにきて思うのは、この教会って宝探し系なんです。でも、なまじ派手なフレスコ画があるから、ちょっと満足しちゃって、せっかくの宝探しが疎かになってしまうという残念なことになっているっていうか、まぁ、ロマネスク視点での残念なんですけども。
もしフレスコ画がなかったら、絶対もっとあるはず的な頑張りができたと思うんですよねぇ。って、そういういい加減なのは俺だけかな、笑。

それにしても、大満足でしたね。
その上、前回も記したとおり、実に美しい村でして、ちょうどお昼の時間にもなりましたから、村を流れる美しい川のほとりで持参サンドイッチ(ホテルの朝ご飯で作ったやつ、笑)でピクニックしました。

franc vari 850

ゴシック橋Pont Gothiqueの近くのピクニック・エリア、次々と地元の人たちもやってきて、実にのどかなランチ時間を過ごせました。サンドイッチ持っててよかったよ、ほんと。


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  1. 2023/09/11(月) 20:10:14|
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