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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

押してももダメなら、引いてみないとね(サント・リゼーニェ36)

2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その19(ベリー)

ブログを書きながら、日々、消えかかっている記憶を手繰り寄せる作業をしています。今回の教会は、当時の日記を読むとすごく面白いのに、なかなか記憶が浮上してこず、いよいよダメかと思っていたところ、グーグルで教会の場所を探していたら、フワフワ~と立ち上ってきました、笑。
よし!まだ大丈夫!と思ったものの、結構印象的な経験しているのにこんなにきれいさっぱり忘れかけるなんて、若干不安にはなりますよねぇ、ふぅ。

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サント・リゼーニェSainte-Lizaigneのロマネスク教会Ancienne Eglise Romaneです(カギはメリーの管理で、平日午前中のみとなるようです。グーグルで調べたところ、1 Rue de l'Egliseあたりを目指すとよさそうです)。

いきなり一人珍道中です。同じ間違いをしてしまう人もいるかもしれませんので、情報としても…。ご興味ない方は、この辺すっ飛ばして、先の方へお進みください~。

教会の住所が分からなかったため、町の名前をナビに入力したところ、到着したのは、とっても新しそうな教会の真ん前でした。でもさ、ファサードは新しくても、後陣だけ古いとかあるから、一応確認したけど、どう見ても、どこもかしこも新しかったんです。

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なんだろね。ゴシックとロマネスクが変な融合してて、気持ち悪いっていうか、意味不明。

で、そこらでお掃除していた母娘に聞いてみたのですが、結構高齢な母親は、古い教会?そんなん知らん!と断言。娘の方が、しばらく考えていて、「あ、きっとあれだ!この道をちょっと先に行ったところにあるわよ、近いわよ」と教えてくれたのでした。お母さんは、もう記憶が曖昧になっているのかもしれませんけども、若い時は通っていたんじゃないのかなぁ。寂しいよねぇ。

指示に従って進み、5分程度で、無事到着したのですが、またもやクローズ…涙。先ほどの教会近くにメリーがあったので、引き返して鍵をお願いしたら、英語が超流ちょうなおっさんが貸してくださいました。
で、教会に戻るも、開かない…。

散々手こずった挙句、扉を押すのではなく引くことが分かり…。

自分の間抜けさにあきれて、笑っちゃうよね。こういう時、同行者がいたら、まさに珍道中みたいな感じで、それなりに楽しめるかもしれないけど、一人だと、イライラしたり自分に腹が立ったり、いろんな気持ちに翻弄されます。最後は大体笑っちゃうんだけども。あとから思い出し笑いまでしちゃったりして。

ということで、結構な時間をかけて、やっと入場できました。

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この教会、外側は、ほとんど何もないので、入場できないと結構寂しんです。それに、立て続けに入れない教会が続いたので、そろそろメンタルがね。

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このファサード側の長い部分は、付け足しじゃないかという気もします。もともとは田舎の、小さな教会、いや、今でも小さいのですが、もっと小さな礼拝堂規模のものであったのではないかと思います。村は今でも小さいので、想像は難しくないのですが、おそらくかつては農民がパラパラっと暮らす程度の村って感じですからねぇ。

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上の、右側部分だけかなって、そういう印象です。

後陣や壁に、軒持ち送りがありますが、特筆すべきものはなしです。ここはやはり入場しないと駄目な教会です。
中には、かなり傷みが激しくて残念な状態ではあるのですが、フレスコ画があります。

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これは後陣に置かれた栄光のキリスト像。12世紀の絵の上に、13世紀終わりから14世紀初めごろの加筆が認められているようです。確かに時代的にはそっちかなっていうイメージですよね。

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元の絵はこういう感じと。ちょっと変形ですが、アーモンドの中のキリストが、四福音書家のシンボルに囲まれていて、この図像がおそらく12世紀にあったもので、その周りのお花と、その上で祈りを捧げる二人の天使の図像は、13世紀後半から14世紀始めに、テンペラで描かれたものだそうです。

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上の後陣と対面になる勝利のアーチの後陣側です。
12世紀のもので、最後の審判となります。

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言われればそれっぽいね、と思う程度の残り方で、説明がなければ理解は難しそうです。

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後陣の開口部のところの絵は、かなり状態が良いです。18世紀頃に窓が閉ざされたり、前に祭壇関連の家具が置かれたりで、おそらく閉ざされた状況に置かれたことが、その理由となっているそうです。13世紀の第一四半期のもの。
これはLa Synagogueとなっており、同じ窓の反対側には、L’Egliseとされているこちらの絵が。

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教会とシナゴーグを対比するような図像、面白いですね。なぜそのようなものが描かれているのでしょうか。

その他にもいくつかあるのですが、とにかく薄い。それでも、きちんと解説を置いてくれているのは、有難いです。てか、解説ないと、見つけるのも困難なやつもあります。

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このように、全体のつくりは、かなり愛想のない四角い箱状態です。
内陣に、いくつか柱頭もありました。

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前述したように、かなりの田舎教会だったと思うのですが、絵師はどこの方だったのか、僅かに残る浮彫も、どこの誰が彫ったのか、逆に興味が湧きます。
ベリーは、狭い地域に、かなりのロマネスク教会がひしめいていますから、教会建築にかかわる各種職人さんの数も多かったでしょうし、流しの職人さんなどもきっと沢山いたんだろうと想像します。

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包丁一本、じゃないですが、仕事道具を担いで、旅暮らしをしていた職人さんとか、勝手に考えてますが、ロマンだわ…。

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  1. 2023/06/07(水) 18:11:37|
  2. サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
  3. | コメント:0

林ができているかも(ルイイ36)

2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その18(ベリー)

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ルイイReuillyのサン・ドニ教会Eglise Saint-Denisです。

町中にある教会で、気付かずに通過してしまい、先の方にある市役所広場で、このままでは町を出てしまう、と、慌てて停車して、徒歩で戻りました。
相変わらず、勘の鈍い、というか、町中で急停車とか駐車する技術がない…涙。

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町中ですが、ファサードのこんな様子は、なんだか山奥の修道院のたたずまいといってもよさげな…。でも、この左側は、町のメインストリートなんですよ。
このファサード、ほとんどそそられませんよね。そして激地味…。近寄ったら何かあるかという期待も、あっさりと裏切られます、笑。

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アーチの上に、一つポツンと人の頭部が置かれていますね。それにしても、ずれた場所にポツン、どういうことなのだろう。
扉全体の地味さと、ワンパンマン以上にすっきり線描きのお顔の地味さは、マッチしているとはいえ…。

ベリーのサイトでは、「ファサードは、2 列の狭いキーストーンを備えた美しいアーチ型のポータルで飾られています」とあったので、何かしら見るべき彫り物などもあるものと勝手に想像して、見るべきは扉口、と記しておいたので、正直拍子抜けでした、涙。

でも、内部は、石の質感も感じよくて、様子は好みでした。

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まず、壁にこんな写真が掲げられていたので、え、と思いました。事前に資料をちゃんと読んでいれば、書いてあったんですけど、いつものようにいい加減な調べをしているもんで、気付いていませんでした。

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どうやら、現在ある上物は、11世紀の建築のようですが、地下には、それよりもずいぶん前、9世紀カロリング時代のクリプトがある、となっています。解説では、さらに昔のメロヴィング時代とありましたが…。
いずれにしても、今ある教会以前にあった施設に付属していたクリプトということは間違いないようです。

実は、教会に来る前、市役所から出てきた女性に、教会のことを尋ねたのです。その方、すっごく感じの良い方で、すごい勢いで話を始めて、ちょっとあっけにとられたんですけどね、笑。私がポカン、とした様子だったのに気付いたのか、「わたしったら、早口でしゃべり過ぎよね、あっはっは!」みたいな感じで、まるでイタリア人みたいな方だったんです。
その時に、クリプトもあるわよ、とおっしゃられたと思います。でも、残念ながら閉まっている、ともおっしゃっていました。あの頃は、今よりフランス語力、あったかもね。

いずれにしても、クリプトがあることは間違いないな、と思ったところ、これ。

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内陣前の床面に、木製の蓋。まさかこんな場所に床下収納はなかろうし、クリプトの入り口に違いない、と踏んで、ミサの準備をしていたおばさんに、とてもシンプルに「クリプトですか?」と尋ねたのですよ。
そしたら、信じられないくらい面倒くさそうな様子で、「お墓しかないから」という答えが返ってきました。

おしゃべりなおばさんに、マダムなんちゃらが大変詳しいから、教会にいる可能性が高いし、色々聞いてみるといいわよ、とアドヴァイスがあったので、もしやこの方が、という期待もあったんですが、けんもほろろな対応でした。

おしゃべりなおばさんは、「わざわざこんな町まで、来てくださったのね、ありがとう」とまで言ってくださったので、そういう暖かさのあとだけに、普段ならすでに慣れているおフランス人の冷たさと感じの悪さが堪えました。

十字の交差部分。

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この上部に、八角形のキューポラが置かれているようです。
装飾的なアイテムはないですが、全体の雰囲気は良いですよね。

この十字の奥、つまり内陣部分となりますが、奥行きがあります。

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地下のクリプトと同じ奥行きと書いてありました。
つまり、クリプトもなかなか広いということですね。

北側に、修道院が隣接していたらしい記述もあったのですが、この北側壁に残っているアーチ構造は、もしかすると、こちら側には身廊があったということなのかな。

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色々聞いてみたかったですが、おばさんは取りつく島ないし、さらに、準備に余念がない様子で、うろうろしているのも嫌なのかもしれないとこっちが感じさせるようなオーラも漂っていて、早々に退出。
こんな地味な教会のために、わざわざ来る人はそういないと思うし、自分が大切にしている教会を見てもらいたくないのかしら。
こういう人に会うと、なんだかわけがわからなくなります。

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後陣にアクセスしてみたかったのですが、無理でした。
軒持ち送り、ちょっとありますね。でも、とても地味。

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後ろ側のスペースだったんですかねぇ、ちょっとよく覚えていないのですが、なぜかリンゴとか洋ナシの木が植わっていて。

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町の小学校の記念植樹みたいなプレートが置かれていました。2018年とあるから、私が訪ねた前年度の卒業記念とかなのかな。ちょっと寂しい様子だけど、もしかしたら、新しい試みで、毎年増やして林にするとかね。あれから4年だから、もしかして、今はもっとたくさんの木が植えられているかもしれません。

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  1. 2023/06/05(月) 18:22:39|
  2. サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
  3. | コメント:0

意外な伏兵に邂逅(メアン・シュル・イェーヴル18)

2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その17(ベリー)

二日目は、7時40分という早朝にホテルを後にしたのですが、この時の気温11度。
8月真っただ中というのに、フランスのロマネスク巡りでは結構あるあるな気温だったりします。
さて、早立ちしたのは、8時から開いているという情報を得ていたAllouisの教会を訪ねるつもりだったからなんですが、8時15分に到着したものの、がっちりと扉は閉ざされておりました…。

すぐ近くに市庁舎があったので、近付いてみると、人がいる気配は全くないのに、なんと窓が全開でした。

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さすがど田舎…。
周囲をうろつくと、美しいトイレがあって、そこは開いていたため、有難く使わせていただきました。
アルイの思い出がこれで終わったらやだなーと思いましたが、後日、無事リベンジできましたので、教会は先の方で、時系列に沿ってまとめたいと思います。

気を取り直して、次の目的地へ移動。

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メアン・シュル・イェーヴルMefun-sur-Yevreのノートルダム参事会教会Eglise Collegiale Notre-Dameです。

ここは、幹線道路から奥まった場所に教会があり、旧市街を通り抜ける必要があるため、幹線道路沿いにある駐車場に止めて、5分強のお散歩でアクセスするのがお勧めです。
目に留まった駐車場に止めて、通りすがりの住人らしき男性に尋ねたところ、道も含めて大変丁寧に教えてくださいました。
そもそも私が訪ねた2019年夏は、町のどこもかしこも工事中という状態で、クルマなどいずれにしても入れるはずもない状態だったので、良い選択をしたものです。

しかしながら、この教会も、本来9時に開いているはずだったのに、がっちりクローズでした。9時にミサ、とも書いてあったんですけれど、がっかりです。

トップの写真にも一部写っていますが、教会周囲も工事されていたので、その関係かもしれないです。

現地にあった簡単な解説を参照しようと思います。

「11世紀に建てられた教会。内陣には、馬蹄上の形で周歩廊があり、そこに一連の礼拝堂が置かれている。
13世紀には、ポルティコと一体化した鐘楼が建てられた。
イェーブルの谷を一望するかのような街の高台に建つ。」

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内部には、後代に、拡大された礼拝堂などもあり、内一つには、現代ガラス作家の人のステンドグラスの作品が置かれていたりもするようです。

色々手が入っちゃっている系の教会ではありますが、外側にも多少の遺構は認められます。
ポルティコの脇の方に、大きな変わり十字の彫り物。

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残念ながら、かなり傷んでしまっていますが、十字の腕の透かし彫りのような組紐浮彫から考察するに、なかなかの技術の石工さんの作品ですよね。中央は神の子羊でしょうか。円の部分にも、つる草模様などが彫られていた感じです。
こういった彫り物があるということは、これだけ、というのは考えにくいので、おそらく他にもあったはずですよね。内部に、何かしら保管されていたり、また内部にも色々彫り物があるのかなぁ。

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ポルティコの中にある正面の扉は、ほぼ無装飾といった愛想のない様子です。両脇の柱頭にわずかに彫り物が見られるだけです。

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その他、装飾的なものは、後陣や側壁に置かれた軒持ち送りでしょうか。

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オーヴェルニュ風に、鉋屑に色々乗っかっている感じ。
残念ながら、傷みが激しく、あるな、程度の反応しかできません。

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とはいえ、実はこの町、かなり印象的で、町の様子、今でもくっきりと思い出せます。なぜなら、作りが面白かったのと、もう一つの中世の遺構の強烈なイメージがあるからです。
クルマを停めた幹線道路の方から旧市街というより、正確には新市街となるんでしょうが、商店の並ぶ通りを進むと、その先で、お城のような扉に出迎えられることとなります。

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この門、時計の塔La Porte de l'Horlogeと呼ばれているもので、現地の解説では、以下のように書かれていました。
「1219年、当地の女王とその夫Courtenayの王が、メウンの町の境界を決めた。それは、現在時計の門がある場所にあったメインの扉である二番目の壁と同じでなければならなかった。蝶番は、まだその場所にあり、同様に、撲殺用の武器や落とし格子戸のある通路もそのままだった。
三種類のタイプの屋根に注目しなければならない。
塔には木製のこけら板、建物の本体にはタイル、尖塔にはスレートが使用されている。尖塔部分には 1399 年に鋳造された鐘が今でも保管されている。」

つまり、この門の内側が、本来の旧市街となるわけですね。
でも、新市街となっている場所も、ちょっとレトロな雰囲気で、すでに様子がよい町なんです。
ストリートビューを見ると、今ではもちろん工事が終了していて、教会近くに無料の広い駐車場もできているようです。まさに、そこが工事中だったんですけどね。でも、旧市街歩く価値があるかなって思います。

で、その駐車場になっている教会後陣につながる広場は、テラスのようになっていて、先の方にいきなり、すごい廃墟があるんです。

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立派なお城の廃墟で、谷底から建っているような状況になっていて、今は遊歩道もある緑地公園みたいになってるようでしたが、それにしても廃墟の様子がすごくかっこよくて。

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中世の教会がある町に、お城がセットのようにあることは結構あるあるですが、ほとんどの場合は、見える範囲で見るだけで済ますんですが、ここは、公園を散歩しました。あんまりかっこよかったんで。
例によって、現場の解説は以下。

「この場所は XI 以来文献で知られています。
考古学研究により、地域で、互いに関係する11の城が特定されています。
12 世紀後半の天守閣が最もよく表現されている木と石の防御は、豪華な邸宅に引き継がれました。その発注者であるベリー公ジャン・ド・フランスは、数え切れないほど多くの建物を作りました。その後、城は比類のない芸術の中心地となります。
シャルル 5 世は 15 世紀にここで宮廷を開き、特定の建物を改修しました。」

ちょっと違和感ありますが、グーグル翻訳で、フランス語を日本語に訳して、手を入れてみました。普段はイタリア語に訳すのですが、日本語も、まぁまぁざっくりと意味が分かるくらいの翻訳ができるようになってきているみたいですね。専門用語的なものが入ると厳しいですが。

お城のガイドツアーなどもあるようでしたが、それは午後だけの営業で、私が訪ねた早朝は、ただの公園でした。

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ここは、帰り道のリベンジもかなわなかったので、再訪候補地の一つです。

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  1. 2023/06/03(土) 15:50:15|
  2. サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
  3. | コメント:0

石工ジローさん(ブールジュ18、その2)

2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その16(ベリー)

ブールジュBourges、続きです。と言っても、カテドラルではなくて、別のロマネスクです。

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サン・ウルサンの扉Portail Saint Ursinです。
ここ、こうやって普通の何でもない道に、扉部分だけが残っているやつで、それも本当に地味な様子なんで、うっかりすると、探していても見逃したりしそうなやつです。

カテドラルの、南扉すぐ近くに、ツーリスト・インフォメーションがあったので、ちょっと立ち寄ったんですよ。一般の旅とは違って、基本的に、ツーリスト・インフォメーションを探して訪ねることはないのですが、目につけば、何らかの資料などがもらえる可能性がゼロではないので、立ち寄ることにしています。
この町では、特に聞くこともなかったので、一応、この扉の位置を聞いてみたところ、「なにそれ?」みたいな対応で、笑、慌ててネット検索しておりました。
で、「あ、これね、その教会は、扉しか残ってなくて、見るものはありませんよ」と断言されました~!
いや、あなた、私はその扉目的で来てますのよ、とは言いませんでしたが、この町は大聖堂自慢で、大聖堂サイトでも一応中世推しみたいな部分があるにも関わらず、ちょっと情けないっていうか、寂しいものでした。

昨今、ツーリスト・インフォメーションのレベルが、どこでも下がりまくりな気がします。経費削減なのか、紙資料は激減だし、誰もがネット検索でかなりの情報をゲットできてしまう中での、彼らの役割ってものが、全然確率できてないっていうか。特におフランスは、そもそも感じ悪い人が多いので、笑、さらに、何のためにいるんですか?と言いたくなること多し…。

というわけで、やってきました。

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それなりに交通量のある道沿いなので、黒いのは、主に排気ガスによる汚れと思われます。洗えばきれいになるでしょうし、カテドラル同様に、白っぽい石色でしょうよね。邪険にされてるなぁ。

ここは、現場に置かれていた説明版の解説を簡単にまとめてみます。非常に完結かつ必要十分な説明が書かれていて、こういうのどこでも置いてくれると、実に助かるんですけどね。

「元々は、Bourbonnouxとよばれた地域にあった参事会教会サン・ウルサンSaint-Ursinの遺構。教会は18世紀に消失。」

解説に沿って、まずは、側柱部分の装飾から。

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「ブドウ蔓模様と子熊Oursons(おそらく、教会創設者であるサン・ウルサンの名前を彷彿させる意図)」
子熊の発音は、ウルソンとなるみたいなので、言葉遊びみたいな発想なんですね。これは、解説なかったら分からないことで、こういうのは他にもありそうだけど、これまで気付いたことはなかった気がします。
それにしても、これ、子熊?確かにブドウ食ってるが、どう見ても肉食系動物…。

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いろんな動物がいる中に、子熊もいたのかもしれません。
どうも、一日の終わりだったので、撮影枚数が全体に少なく、気合が薄れている様子がうかがわれます…シュン。

次は、タンパンの一番下の真ん中部分です。やけに大胆な植物文様の上の部分になります。

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「彫刻家のサインGirauldus fecit istas portas(Giraudが作った)」
すごい俺様系だったんですね、ジローさんたら。その割に、字がいまいちなんだよな。確かに浮彫いいんだけども。

タンパンは、三段に分割されていて、その一番下の部分。

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これは、農業暦とでもいうんですかね、各月の仕事を、表したもので、中世にはよく扉口装飾に使われた図像となります。イタリアだと、中部に多いとされていますが、フランスでも、そういった地域性があるのか、または中世当時から、フランスは全土的に農業やってた感じで、特定地域に特有ということもないのかな。

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「左側の二月から始まる。農民が、火の前で温まっている。」

なぜ二月から? 三月は、鎌でも研いでますかね?

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五月、六月、いかにも仕事してる様子で、七月、収穫してるみたいで、ここは、アーチ二つ分を使って表されているので、見ろよ!ここだぜ!みたいな感じなんですかね。

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8月も頑張って働いて、9月はなりものを収穫している様子です。

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10月11月辺りは家畜ですね。そして、右端に一月がありました。オーブンで料理をしているようで、つまり収穫のあとをここに置きたかったから、ということなんですかね。

上から二段目。

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「シカとイノシシの狩。おそらく、古い時代の石棺に彫られた図像から着想を得たもの。」

確かに、こういうごちゃごちゃした浮彫って、ローマの石棺とかによくありますよね。石工が、オレうまいんだぜ!とやるのに、ある意味ピッタリはモチーフなのかもね。これだけの人やら何やらを奥行きも含めて彫るのは、確かに骨の折れる仕事だと思います。だけど、面白みや新鮮さないし、なんでって思っちゃうけども。すまん、ジローよ。

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仕事暦図はスタンダードだけど、こういった唐突な狩だったり、また一番上の図像は動物フューチャーの寓話で、これらは珍しいとあります。
何が珍しいって、こういう異なる内容の図像を、三段にしちゃったのが珍しいように感じます。
やっぱり、俺様発想ですかね、笑。

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「ロバの先生、狐ののどにくちばしを突っ込んでいるツル、クマと鶏に付き添われた、狐の嘘っこ葬式。」

捕食者と非捕食者の逆転みたいな図は、初期キリスト教から中世にはよく見られますね。初期キリスト教も含めて思うのは、結構床モザイクに、そういった図像が使われているように思い出されるからです。ベネチアとか、アクイレイアとか。

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ツルが、マジ怖い…。キツネ、完全にビビってますよね、しっぽまいてるし、笑。

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日頃馬鹿にされているうっぷんを晴らそう的な様子で、ヒールに徹しているロバと、つぶらな瞳でその先生を見つめるワンコ、これかなり好きです。

というわけで、ここは現場も、そして四年後も、しっかり楽しみました。いつか再訪したら、白くきれいになっていることを楽しみにします。


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  1. 2023/05/29(月) 18:37:44|
  2. サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
  3. | コメント:2

失礼なおばさんの思い出(ブールジュ18、その1)

2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その16(ベリー)

周辺に立ち寄りたい場所はいくつもあったのですが、そろそろ宿泊地に向かうこととして、初日最後は、この地域の大都会ブールジュとなります(駐車場はいくつかありますが、私が利用したのは、9 Rue de Seraucourtの無料駐車場)。

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サンテティエンヌ大聖堂Cathedrale Saint-Etienne(9:30-12:30 / 14-18)。見た目立派な割に、笑、情報量が少ないサイト:
https://www.bourges-cathedrale.fr/decouvrir/la-cathedrale-de-bourges

ゴシックというのは知ってたけど、もうさ、びっくりしちゃうレベルだよね、こうなると。おろおろしちゃうっていうかね。
これ、世界遺産ということで、そのプレートが誇らしげに飾られていました。ということは、ゴシック建築を代表するもの、という位置付けになるんでしょうかね。

その、ゴシックの隙間みたいな感じで、ちょっとだけ、ロマネスクの遺構があるんです。私が目的としたのは、南側にある扉口の彫り物装飾です。
おそらく、ファサード側も回りましたが、ほとんど通過するだけ状態で、ほぼ直行で目的地へ。
ロマネスクとゴシックって、歴史的にはつながっている時代なのに、なぜゴシックがこれほど苦手なんだろうか、と自分でも不思議に思います。

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ゴシック様式のポルティコの奥に、あるのが、その目的の扉です。
前回の記事で紹介した教会でも、よくもこんな一部分だけを残したよね、というような遺構でしたけれど、ここでも似たような様子です。

ロマネスクの遺構としては、この南側扉、内部にあるステンドグラスの一部、そしてクリプトとなるようです。ステンドグラスは、サイズの小さいロマネスク時代のものを、ゴシック時代の、より大きい開口部のために、再利用したということらしいので、分かるのですが、クリプタなどは、もっと大きなものを作りながらロマネスク時代のものを残したり、この南扉も、ポルティコまで手をかけて作りながら、扉周りは残したり。
そういう過去の遺構の残し方は、教会毎に異なるわけですが、全体の建築をここまで変えている、こういった巨大建築においては、その基準が、さらに不思議に思えるような気がします。

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まぁこの扉の場合は、全体のイメージとして、かなりゴシック・テイストが入っている様子もあるので、違和感がなかったというのはあるのかもしれないです。
つまり、あまり私の好みではないかと。

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タンパンの中央には、アーモンドの中のキリストが、四人の福音書家のシンボルに囲まれている図像。

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かなり写実が強くて、福音書家の誰もが、まったくかわいくないです、笑。いや、基準はかわいいとかかわいくないとかであるわけではないのですが、こうやってクローズアップで見ると、やはりゴシックっぽいですよね?
手とかも、デフォルメがなくてきれいすぎで…。

アーキボルトは、内側に天使、そして外側は預言者ですかね、びっしりと並んで置かれていて、保存状態もすごく良いのですが、やはり一つもかわいくないんです…。

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でも、預言者は結構扉をくぐる人を見てる様子が、すごいわ。
下の二人、アーキトボルトのトップで、完全にこっちに訴える様子だよね。こっち見ろよって様子がビンビンに…。

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彩色の跡が明らかなので、往時は極彩色だったのかな。きっとそうですよね。そしたらさらに派手派手な力強さで、目力に負けて、入りたくない人もいたかもしれない…。ちょっと、やばっ、みたいなことしちゃった人とかね、怖いよ。

アーキトレーブには、十二使徒が、一人ずつ区切られて、お行儀よく並んでいて、これまた大変良く残っています。

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どなたかの訪問記を見たんですが、北側にも扉があり、そちらはマリア・フューチャーの彫り物があったものの、1562年、宗教戦争の起こった際、プロテスタントによって、破壊された、とありました。その当時、この南側の扉は、近付くことが出来なかったために守られたということなんですが、閉ざされていたんですかね、ポルティコで。

北側、見てません…。ちゃんと調べていかないから、いつでも見逃し見残し多数です。

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十二使徒の浮彫、背景や、区切りの柱などもすごく細かくて、びっくりします。
でも、すごいけど、でも…っていうやつ。

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脇柱には預言者像がずらり。こうなると、完全に私の好みからは逸脱。

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ヘレニズム的な、なんか仏教の木彫りのお像との共通性も感じるような。
それにしても、ここにも彩色の跡がうっすらとあるんで、ちょっとびっくりしました。全体が彩色されていたんだろうけど、なんかこのサイズのお像もすべて色付きとなると、想像が難しいっていうか、現代だったら、東南アジアの仏教寺院とか、そういうところにしかない文化ですよねぇ。
中世は、一般的に色彩が氾濫してなかっただろうし、衣服にしても、庶民の服は自然の素材で染めていたんだろうから、派手な色に対するあこがれだったり、特別感があって、ということなんだろうけど、日常に色が氾濫している現代では、やはり想像しにくいですね。

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預言者たちの頭の上の方の柱頭にも、細やかな浮彫が施された柱頭があります。

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装飾過多、っていうのも、どうしても引けてしまう点かもね。

どうでもよいことですが、ここで撮影していると、いきなり「どいてください」と言われて、びっくりしました。三脚を立てて撮影しているおばさんが、苦々しげにこっちを見てるんです。
ここは公共の場で、彼女にそんなことを言う権利はないのに、プンプン。何人だったかは記憶にないのですが、東洋人蔑視的な態度も含めて、フランス人に違いない、笑。なにも言わずににらみつけ、しばらく撮影を続行しました、もちろん。でも、彼女のイライラが、後ろで色を付けて立ち上っているほどの殺気みたいのを感じたので、早々に立ち退きはしましたが…。

ちなみに、ファサード側はこういう感じ。卒倒しそうに執拗な装飾です。

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入場します。

france vari 203

壮大なゴチック建築。
この抜け感、外光、やはり衝撃だったろうな、と思います。好きじゃないけど、こういう方に技術が進んだのは、そりゃ当たり前だよね。暗闇だったんだからね。

ステンドグラスに関しては、確かに美しかったのですが、まさかロマネスク時代の古いものがあるなど知らなかったし、いずれにしても不勉強で、どういった違いがあるのかもよく分からないですから、たとえそうだと知っていたとしても、おそらく見分けがつかなかったのではないかと思います。

france vari 204

実は、クリプタ見学は、ガイドツアーとなっています。8ユーロで、宝物館とか色々回るようで、たずねた時間に丁度良いツアーがあったのですが、見学する内容を検討して、やめました。
この教会は、どう考えてもゴシック推しなわけですから、ツアーのほとんどを占めるのはゴシック、その上フランス語ときたら、相当の苦痛で、僅かな時間のロマネスク・クリプトのために我慢するのは、長い一日の終わりにはあまりにも辛い苦行だと思いました。

上に張った聖堂のサイトには、ロマネスクのクリプトの写真も掲載されていますので、ご興味があればどうぞ。

ブルージュの見所は、もう一つあり、実は私はそちらの方が楽しかったです。
続きます。


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  1. 2023/05/28(日) 18:03:50|
  2. サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
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