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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

ウンブリアその10-アメリア

ルニャーノからナルニに戻る途中、ここアメリアの町でバスを乗り換える必要がありました。ナルニ行き最終バスまでは時間があるし、バスの営業所で荷物も預かってくれるというので、アメリアまでのバスの運転手さんに勧められて、せっかくだから観光していこうと立ち寄りました。すごく疲れているのに、こんなとこ二度と来ないのではないか、と思うと、どうしても欲張ってしまいます。
アメリアは、とても古い町で、ぐるりと3世紀起源の壁に取り囲まれています。壁の周りに新市街が広がっていますが、今でも壁は完璧に近くのこっているようです。
町は、丘に張り付いている感じで、最も高いところに、ロマネスクの塔があります。思いっきり疲れているし、あんなとこまで絶対行かないもんね!と思いながら、壁の中に入り、ぶらぶらしていると、「いや、二度と来ないんだし。あの塔がすごく美しかったら絶対後悔するし。」とむくむく貧乏性が出てきて、結局坂道をウンショウンショと塔に向かうわたしがいるのでした。
正直、すごい坂と急階段の連続なので、大後悔しましたけど、途中でやめるのは悔しさ倍増ですもんね。いやいやがんばりました。ロマネスクのためとは言え、楽しいバカンスで、何でこんなに修行状態の日々が続くんだろうって感じですよ。
ちょっと迷いながらも、息を切らせながら、到着。ゼエゼエ。


塔は一人(?)で建っているわけではなく、カテドラルの脇にあるのですが、カテドラル(後方に見えるクーポラ)は、後代に完全に改築されていて、ロマネスクのかけらもないきらきらの建物になってしまっています。塔は、カオルレのもののように、もともと教会とつながっていなかったのでしょうね。カテドラルの脇に、唐突にドスン!と建っています。八角系で、ロマネスク特有の盲アーチで装飾され、所々に古い大理石のレリーフがはめ込まれていたりします。
それにしても、塔を写真に収めるのは、とても難しいです。というのも、これ、無骨に見えると思うのですが、本当は優美さの方が目立つんですよね。実物を見ていただくしかないんですよね~。
というわけで、疲れた身体に鞭打って、汗だくになりましたが、まぁまぁ登ってきた甲斐はあったかも。


塔の向かいの建物は、元司祭館だったようですが、その入り口に、古い碑文が飾られていました。ローマ時代のもの、または中世のもの。もう解読する気力なく、写真だけ撮った次第。
写真を撮りながら、ふと見上げて気付いたのが、別の碑文。


あのコルベ神父がここに。といっても、名前を知ってる程度。この碑文によると、1918年夏、コルベさんはこの家に滞在していたらしいです。その後1941年、アウシュビッツで、他の人を救うために、自分の命を犠牲にしたと。
インターネットで調べてみたら、ポーランド出身の聖職者で、戦争中にアウシュビッツに収容されてました。そこで脱走者が出たときに、無作為に選ばれた10人が連帯責任で処刑(餓死)されることになり、選ばれた一人が、わたしには妻子がいるんだ!と叫んだことから、コルベ神父が「自分は独身だから」と身代わりを名乗り出て、餓死したということでした。法王ヨハネ・パウロによって、すでに聖人に叙されているんですね。
で、なんでアメリアかというと、学生時代にローマに留学したと。ここアメリアはローマから結構近いので、それで夏にバカンスも兼ねて滞在していたのでしょうか。彼の幸福な時代に、アメリアでのひと夏があったのですね。シーンとした気分になります。

中世に加えて近代史にも触れて、がんばって登ってきた甲斐があったよ、と満足です。
さて、帰路は、来た道と同じ道を引き返すのはつまらないので、違う道に足を踏み入れました。方向音痴の癖に、ついチャレンジャー精神を出すのが、わたしのいけないところです、多分。
そして勿論迷いました。もうそれは思いっきり迷いまして、途中からほとんどパニックになりました。あまり人が歩いていないし、道が狭くて見通しがきかないし、歩いていると町を取り囲む壁に阻まれて後戻りするしかないことも多々あり、ああ、一生ここから出られないのではないか、ともうあせることと言ったら。ナルニ行きのバスの時間は迫る一方ですし。
結局ほとんど後戻りしたところでであった人に出口を聞いたら、あら、そこ?すぐじゃんよ!わたしは、スタート地点から、すでに全く逆の方向に進んでいたのです。それも確信を持って。いやですね~、この、確信を持って間違ってしまう方向音痴。肉体的に疲労の極致だっただけに、心底情けなかったです。
おかげさまで、無事バス停に戻り、荷物を引き取って、バスにも間に合いましたとさ。なんて長い一日だったんでしょう。こんなに長く書きましたが、テルニを出たフェレンティッロから引き続いての一日の話です。
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  1. 2008/11/29(土) 06:56:21|
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ウンブリアその9-ルニャーノ・イン・テヴェリーナ

珍道中が続きます。
テルニからナルニに移動しました。ここは、町そのものにも興味があったし、ルニャーノ・イン・テヴェリーナの教会への拠点でもあるので、2泊予定していました。
しかしここで問題勃発です。テルニからの移動のバスの中で、はっ、明日は日曜日だ!と気付いたのです。毎日日記代わりのメモをつけているのに、なぜ今気づくんだ、わたし…。何が問題かというと、ただでさえ便数の少ない田舎のバスは、常識として、日曜祝日は、ほとんどサービス自体がなくなってしまうことが多いのです。特に、ナルニ発周辺部行きのバスは、事前にインターネットで調べた限りでは、まさにそういうタイプのタイムテーブルだったんですよねぇ。
印刷しておいた時刻表をあわてて調べたところ、ナルニに着いてすぐホテルにチェックインして、鞄だけ放り出して、すぐにバス停に戻れば、何とかルニャーノまで行って、教会を見学した上、ナルニまで戻ってくるバスにも間に合いそうな時間でした。幸い乗っているバスは、ナルニの旧市街まで行ってくれます。
ナルニの旧市街は、鉄道駅からグルグルの登り坂を上った丘の中腹にあり、結構遠いのです。とりあえず、旧市街に到着しました。旧市街唯一のホテルに向かいますが、何かバイクの催しをしていて、旧市街中に、Ducatiの赤いバイクがブルンブルンとエンジンをふかして並んでいます。


ええ、何かイベント?と一瞬目を輝かしたわたしですが、今回は、バイクよりロマネスク優先ですので、いやいや、のんびりしている暇はない、とバイクの間を縫って、急坂を登ってホテルにたどりつきます。
細い横道に入り口があり、とても雰囲気のあるホテル。こんにちは~、2泊おねがいしま~す!「2泊?今夜はもう満員ですけど。」「え!」絶句のわたし。
もう夏休みも終わった時期なので、どこでもホテルの問題なかったし、このホテルが旧市街唯一というのは昨日あたりに気付いたんだけど、まさか満員とは思いもよらず。なんてついてない!と思いつつ、とりあえず翌日の1泊をお願いして、いやだけど、駅前ならあるだろうし、ルニャーノ行きのバスも駅前からつかまえればいいわ!とあわててバス停に引き返して、駅前行きのバスに乗ります。しかし!なんと駅前に行くだけのほんの10分ほどの距離のバスも、土曜日だから極端に少なく、30分以上待つ必要がありました。ひえ~、時間はますます厳しくなっていきます。でもナルニのバス切符売り場で確認したら、やはり明日は、他の町に行くバスはほとんどないので、絶対今日行かないと!
あせっても仕方ないので、空き時間を利用して、バス停近くのバールでサンドイッチと白ワインの遅いランチ。なんかびっくりするほど安い。そういえばこの町では、他の店のランチでも、パスタ3ユーロとか、ミラノの2分のい1から3分の1のお値段設定でびっくりでしたねぇ。ウンブリアでも最も安かったような。それもおいしいんですから、もううれしいびっくりです。
さてさて、やっと来たバスに乗りますが、なかなか出発しません。隣に座っていたおねえちゃんが地元の人だというので、駅前ホテルのことを聞いてみます。「駅前に一つあるし、少しはなれて2つあるから、絶対どこかはあいているわよ。でも時間的には駅前のホテル・ナルニがあいてないと、他のホテルに行っている時間はなさそうねぇ。でも大丈夫、きっとあいてるよ。」駅前からかばんをごろごろ引いて、急ぎ足でホテル・ナルニへ。しかし「あら、今日は満員なのよ。」ときっぱり。何でもバイクのイベントに加えて、漫画の展覧会をやっているんだそうで、この週末はいつになく混んでいるとか。絶望するわたし。「無理だと思うけど、荷物だけ預かってもらうわけには行きませんか?」「悪いけど、それはできないのよ」はぁぁ。鉄道駅も無人駅だから無理。それに今夜の宿はどうする?ルニャーノなんかに行った日にゃ、日曜日に身動き取れないし。
とぼとぼと駅前に戻りながら、疲れた頭であわててどうするか考えた挙句、そうか、遠くのホテルに電話で聞いてみりゃいいんじゃん、と電話。幸い部屋はゲットです。でもバスが来るまであと5分ほどで、駅から1キロほども離れているというホテルに行く時間はありません。
で、荷物を持って観光する羽目になりました。うへ~。

さて、やっと落ち着いてルニャーノです。
ナルニからのバスは、町の麓の幹線道路沿いに止まります。ハイ、ここも丘の上の町。荷物もちのわたしにはきっつ~。でも仕方ありません。運転手さんによれば、緩やかな坂で町の麓まで行き、そのあとは、車道もあるけど、だらだら長いので、一直線に階段で登った方が早いよ、たいした距離じゃないから、荷物があっても大丈夫だよ、と勧められたので、階段を探しました。確かにたいした距離ではなく、建物でいえば、せいぜい3階に上ったくらい?でも、やはり荷物を抱えての階段はきびし~。
汗をかきかき、のろのろと最後の急坂を登っていくと、広場に出ました。
そこにあるのが、ここでの目的地、サンタ・マリア・アッスンタ参事会教会。



ここは、柱頭の石彫り彫刻が有名みたいなのですが、そして実際とてもかわいらしいモチーフがいっぱいあるのですが、わたしが最も引かれたのは、美しいモザイクでした。決して天邪鬼というわけじゃないんですけどね~、ちょっとマージナルなものに目が行く傾向はありますね。



この地域、床や壁の幾何学モザイクが、あちこちで見られるのですが、わたしにはここがはじめて。ローマで活躍したモザイク職人コジモ一家の人たちが広めた技術で、コジモ風モザイクとして有名らしいです。様々な色石、多様な幾何学模様。ビザンチンやローマとは明らかに違うタイプのモザイクですが、本来モザイク好きのわたしには、やっぱりよいものでした。床モザイクは、その磨り減って古びた感じもまた雰囲気がよいものです。
美しいクリプタも堪能です。大体1時間ほど出たり入ったりしていたと思いますが、その間来たのは二組だけで、さっと来てさっと出て行ってしまいますから、ほとんど独占状態。美しい空間にゆったりと一人でいられるというのは、よいものですねぇ。
ナルニに帰るバスまでは時間がありましたので、ちょうど教会の側面を見られる場所にある近所のバールでお茶をして、やっと疲れを癒すことができました。早めにバス停に向かう途中、植木の受け皿をねぐらにしている素敵な猫がおり、人の気配など気にする風もなくぐうぐうと眠っていました。



バス停の近くにサッカー場があり、地元チームが試合をしているのを、15分くらいもぼんやりと見ていたでしょうか。木陰で、とても気持ちのよい夕べで、はるばるこんなとこまで来ちゃったなぁ、としみじみしました。
ナルニに向かう帰りのバスでは、またもや運転手とわたしだけという状態でしたので、四方山話をしながら、楽しい道中となりました。でも、ナルニのホテルは、駅から結構遠い上に、かなり車どおりの激しい道を歩く必要があり、再び苦しい道中でした。きれいで安いホテルなので、車の人はよいけど、そうじゃなくてナルニに泊まる方は、事前に旧市街唯一のホテルDei Prioriに予約しましょう!
  1. 2008/11/23(日) 06:50:54|
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不動産の話続き

へこんでます。
やっぱり一筋縄ではいかないというか、いろいろあるなっていうか。
イタリアでは、ヨーロッパの中では珍しく、日本同様に退職金制度があり、自分の住まいとなるおうちを買う際(別荘とかはだめ)、その前払いをお願いできる制度があります。ですから、今回当然それを見込んで、前払いでもらえるお金を織り込んで、頭金払ったり、その後必要になる改装費や家具、公証人費用などの算段を考えていました。見込み額は1万ユーロほどだったので、かなり重要性が高いものでした。
前もって人事に書式をお願いしてあり、仮契約の書類が整った時点で、書式に記入して、仮契約書を添付して送付しました。
そしたら「前払いの資格を満たしていないので、残念ながら手続き不可」、という無慈悲なEメールが…。
今週は仕事が忙しくて、ばたばたとしているのですが、一瞬呆然としたあと、こりゃ仕事どころじゃないわい!とすぐ担当者に電話をして、説明を求めました。どうも数年前に退職金の取り扱い方法が法律的に変わったせいで、本来わたしにはあったはずの資格がなくなったということです。2年後には、申請できますよ、ってあっさり言われてしまいました。2年後じゃどうしようもないんです~!
この人のせいじゃないし、言っても無駄、と思いながらも、どうしても納得できず、半分涙声になりつつ、でもでも、これがないと、すべての計算が狂っちゃうし、マジで困るんですぅ、なんて訴えてしまいましたが、勿論どうなるものでもありません。
ローンの話もどんどん進んでいますから、いまさら増額をお願いするのは難しいし、それに、最後の最後で、頭金を増やしてしまったのもあって、それでローンの金額を増やすのもばかばかしすぎます。もう少し早く教えてくれていたら…、と悔しい気持ちでいっぱい。
もともと、家具を購入する予算は、かなり減っていたのですが、これでますます目減りです。当面、みかん箱生活?うへ~。
改築も、思いっきりやろうと思っていたのに、これじゃ最低限しかできそうもなく、憧れの全床フローリングよ、さよ~なら~って感じです。
ま、仕方ないですね。
ひとしきりお金の計算をして、まぁ飢え死にすることはないし!と安心したあとは、かえってやる気が出てきて、先延ばしにしていた改築業者へのコンタクトを取ったり、不動産屋に事務連絡をしたり、と前向きになれました。
ローンの件で連絡があり、20年だとちょっと厳しいから、すんなり査定を通すためにも25年にしたらどうかという連絡を、この前に受けていて、了解していたのも、結果的にはラッキーです。25年だと、月々の支払金額は、まさに今の家賃並みなので、家具代くらい、すぐに貯まるでしょう!そう考えると、色々のことが、いつも結果的には吉となるので、やっぱりついているのかも!と無理やり言い聞かせるわたし。あまり考えたくないので、今日は早く寝ます。

  1. 2008/11/19(水) 06:26:51|
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ウンブリアその8-サン・ピエトロ・イン・ヴァッレ

さぁ!朝から田舎に行きます。ここでも思いっきり、一人珍道中。そんなのばっかりな旅ですねぇ。
テルニからバスで、サン・ピエトロ・イン・ヴァッレというかつての修道院へ。ここは、ガイドブックで写真を見て以来、今回絶対行きたい場所のひとつだったのですが、車がないとちょっと難しそうな感じだったので、ほとんどあきらめていたのです。でも、便数は極端に少ないとは言え、山の麓まで行くバスがありました。修道院は山を少し登ったところにあるので、バスを幹線道路で降りたあとは、徒歩で登る必要があります。サッソヴィーヴォ同様のロケーションですが、あちらよりはずいぶんと距離は短いし、迷うのは難しそうな感じです。
テルニ発のバスは、修道院の最寄のはずのフェレンティッロよりもずいぶん先のSchegginoという村行きです。乗り込んだのは、わたしと他約一名。運転手に、「フェレンティッロ、行きますよね?」と確かめながら、一番前の席に座りました。
テルニを出てすぐ、マルモレの滝の脇を通りましたが、早朝のためか、まだ水量はちょろちょろでした(人工的に水量調節していて、常に水がどばどば出ているわけではないらしい)。
そして、実に美しい風景が、ずっ~と続き、ドライブに超お勧めの土地です。次々と丘の上にしがみついたような町村が姿を現し、その間は美しい緑が広がり、ただうっとりするような眺めです。昔の、ヨーロッパの風景におぼこ(?)だった頃だったら、ばしゃばしゃと写真を取り捲っていたことでしょうが、さすがに最近のわたしはちょっと冷静で、心の中で美しさをかみしめながら、ただ車窓風景を楽しみました。
テルニにずいぶん近いところで他の乗客は降り、残るはわたし一人。そして、バスは快調に走ります。
ちょっと大きな町を通り抜けながら、「あれ?この風景は、どっかで見たような?ここどこだろう?フェレンティッロって聞いたよね?運転手、忘れてないよね?こんな路線バスに乗る観光客の行き先は、あの修道院しかないよね?」とドキドキしてきました。そこでガイドブックを引っ張り出して、周辺地図をチェックしだした矢先、車窓に、Macenanoの表示が!
マチェナーノは、テルニからみると、フェレンティッロの次の町。ということは、やっぱりさっきの大きな町がフェレンティッロじゃん!どっかでみた風景って、ガイドブックの写真じゃん!
運転手さんに「今、マチェナーノってあったけど、わたしフェレンティッロで降りなきゃいけなかったんだけど~。」と話しかけると、「あ、そうだった?どこ行くの?」「修道院ですけど…。」「そうかぁ。それだったらマチェナーノの入り口でおりればいいけど、でももう通り過ぎちゃったなぁ(といいながらも、どんどん走る)。」「うう…。」「そしたら、このまま終点のスケッジーノという町までいって、そこからテルニまで折り返し運転だから、そこまで行こう!帰りに降りていけばいいでしょ。まだ早いし。」と提案されました。
実際、時間が早くて、順調に行ったところで、修道院はまだ開いてない時間だったので、ま、仕方ない、とまた車窓を楽しむ人となりました。そこからは山道で、ますます緑が濃くて、美しく、運転手さんとぽつぽつとおしゃべりしながら、こんなドライブをするチャンスもらって、かえってラッキーだったのかもしれません。
そして終点スケッジーノ。これが、川向こうの斜面に張り付いた小さなかわいらしい町です。


こんなことがなければ、おそらく一生来ることもない土地。折り返すまで5分くらいあるというので、バスを降りて、写真を撮ったり、山の麗しい空気を胸いっぱいに吸って、リゾート気分になりました。
そして、テルニに向かって出発。今度は、運転手さんとも顔見知りの地元民のおばさんが乗ってきて、わたしも時々おしゃべりに混ざりながらの、楽しい旅です。それで気付いたのですが、バスはおニューで、その日が初運転だったのです。おばさんが、「これが例の新車ね!いいじゃな~い!」運転手、満足そうです。そうか、きっとこのせいで、彼は普通以上に運転に集中して、乗客のことなんか目に入ってなかったのかもね。
そして、やっとこさマチェナーノに戻ってきました。ここからひたすら登っていけば、修道院だから、という場所で停めてくれました。
マチェナーノは、小さな小さな村。かなり急な斜面に張り付いて石造りの家が建て込んでいます。一体何をやっている人が住んでいるのか、どの家もこぎれいで、道も美しいのが、ちょっと驚きでした。


村の人たちに結構出会いましたが、ニコニコして穏やかな空気でした。外人がこんなところに!という緊張感はゼロ。この村を通り抜けて修道院に行く人は、そう多くないと思うし、この村を目指す観光客もいなそうなんですけどね。
全部が急坂の村を通り抜けて、あとは平坦な田舎道をのんびりと歩いていくと、先の方の谷に、やっと目指す修道院の姿が。サン・ピエトロ・イン・ヴァッレ(谷にあるピエトロ教会)とは、まさにぴったりの名前ですね。ぽっかりと広がった谷にちょこんと埋もれた感じです。


実はここ、かつての僧房部分が、今はちょいと豪華なホテルになっています。で、そっち側は入れません。ホテルというのは本来、公共の性質もあるはずなのに、入り口に、"宿泊客以外の入場、お断り"とあり、感じ悪いです。教会が開く10時までまだ時間があり、退屈なので、バールでもあればカフェの一杯も飲みたいものだ、とお断り承知で入り込み、レセプションの女性にバールの有無を尋ねると、悪いけど、お客様にしか開放してないの、とにべもないお答え。はあ、そうですか、とすごすご教会の前に行き、のんびりと一服することにしました。
ちなみに、ホテルとしては、そんなに高いわけではないので、車で動いている方には、宿泊するのもありかと思いました。
教会は、ロマネスクのフレスコにおおわれていて、保存状態もなかなかよろしいです。でもわたしが最も引かれたのは、このロンゴバルドの浮き彫り。宇宙人みたいなフィギュア、幾何学模様、このヘタウマの感じがたまらなくわたし好みです。


写真撮影禁止、と大きく書いてあるのですが、鍵を開けに来た管理人の若者は、教会前の広場の、ファサードからかなり離れたところに置かれた椅子に腰掛けて、のんびり新聞など読んでいます。わたしの後から見学に来た二人連れもあっという間に立ち去ってしまい、誰の目もない場所では、撮影の誘惑に勝てませんでした。へへ、勿論フラッシュなしで、ドキドキしながら、盗み撮り状態にすばやく撮りましたけど。そして、帰りに、一部写真が挿入されているガイドブックを、撮影料と思って購入しましたけど。これほしいんだけど~!と管理人に声をかけたけど、う~ん、代金はその辺に置いといて~、と側に来ようともしませんでした。
帰りは、車道を下りました。どうせ近い時間にバスはないので、フェレンティッロまで歩くつもりでした。幹線道路で、車がかなりのスピードで飛ばしていくので、ハイキングするのに楽しい道ではありません。で、歩き出して10分ほどで大後悔です。本当だったらマチェナーノに戻る方が早いのですが、次のバスはフェレンティッロ発となっていたので、仕方ありません。結局最後の方はかなりの急ぎ足で35分間歩き続けて、ぎりぎりでバスの時間に間に合いました。35分間を急ぎ足ですから、3キロくらいあったんじゃないでしょうかねぇ。もう全身汗みずく、身体はくたくたでした。
最終的には、教会を見に行ったんだか、車道を3キロ歩くという冒険に行ったんだか、どっちよ?って感じ。でもこのがんばりのおかげで、このあとに余裕ができたのがよかったですけどね。
この時点では、まだ知るよしもないのですが、このまま午後もまた、さらに過酷なロマネスク探訪が継続してしまうのです。
そして、これだけ運動したのに、旅から戻ったら体重が2キロほど増えていたんですけど、謎ですねぇ。
  1. 2008/11/17(月) 06:20:00|
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不動産の話続き

やった~!
仮契約、サインしてきました!
もう後戻りなし。っていうか、後戻りするには、頭金の倍の違約金を払う必要があるので、絶対無理。売主がするならありだけど、できれば、それもないことを祈るのみです。だって、こんなに気に入るおうちに出会うのは、容易なことじゃないのがすでに分かってますからね。
なんか昨日の夜からドキドキしだして、朝も目覚まし時計より先に目が覚めちゃうし、うわ~どうしよう~、といても立ってもいられずに、早すぎる時間に家を出てしまう有様でした。
準備は万端かというと、実は必要な現金の計算を間違えて、朝引き出しに行くというアワアワ状態。こんなんで契約書にサインって大丈夫なのかな~。
でも運転してたら落ち着いたし、ちょっと早すぎるので、当のおうちに立ち寄ってみました。長雨のあと、久しぶりの晴天。これもなんかうれしくなる偶然です。そして、家の前に広がる公園をゆるゆると歩きながら、あそこかぁ、おうちを眺めました。やっぱり、すごく好き。考えたら、こんなにゆっくり眺めたのは初めてで、あ、屋根が古いな、外壁も数年後には塗りなおしが必要になるのかな、とか欠点も目に付いたのですが、それでもなおかつ大好きで、よかった、と満足して事務所に向かいました。ここで、え?こんなの?って感じちゃったら悲劇ですよね。
事務所にはすでに売主が来ていて、仮契約の書類もすべてサインをするばかりになっていました。頭金の小切手を切り、サインをして、不動産屋のコミッションを払って、今日やることはお仕舞い。あとは10日後に登記して、ローンの最終承認を待つばかりです。時間があったので、その足でローン担当者を訪ねました。ローンそのものが組めるというのは、すでに確認されていたので、後は、わたしの希望する20年でいけるか、または25年とか30年とかいわれるかどうかです。何とか年内に査定が終わるとよいのですけれど。
気になっていた内装工事の話も、登記のときに業者とアポを取ってもらえることになりました。
ああ、買ってしまったんですね、わたし!
帰宅して友人に電話して、サインしてきたよ!と話しているうちに気持ちが盛り上がって、喜びのおたけび!やった!とうとうおうち持ち!完全なるユーフォリア状態です。ま、10分くらい。
ローンはどうだろう、内装の工事はどうなるだろう、と悶々としていた先週の気分に比べると、ユーフォリアが冷めても、クヨクヨは来ていません。話が具体的に回りだしたからでしょうね。そして、改めてみたおうちが、やはり大好きだと確信できたからでもありそうです。
明日は、イケアでも行こうかな。来週は別の家具屋さんに行く予定だし。普段のお買い物に比べると、ゼロが三つほど余計についている金額がバンバン出て行って、一瞬不安になるけど、でも金額的にあまりにも日常的でないので、実感もなく、小切手ばんばん切っています。ただ、今月末の口座残高見たらびびりそうです。ああ、会社で退職金の前払い、急いで手続きしないと!
ルンルン。早く鍵を入手したいものです。

  1. 2008/11/15(土) 22:13:28|
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不動産の話さらに

ああ、思わぬ伏兵が…!
まさかローンを組むのに問題勃発とは、予想外でした。家を見始めたかなり最初の頃、ある不動産屋でいきなりファイナンシャル・コンサルタントまで紹介されて、彼が、大体こんな感じかな、とわたしの所得額からローン金額を計算してくれたことがあります。それで、なるほど、思ったよりは借りられるのだな、と思ったのが、今おもえば失敗の元。それで、金額とかローンの限度とか、そういうことはすっかり抜け落ちて、「思ったより借りられるみたいだ」という印象だけが先行して、その後、多少予算を上げても大丈夫、と思い込んでしまったのですから。
買うのを決めたおうちは、エレベーターもないし、内部を全面的に改装する必要があるため、それまで見たどの家よりも、不動産価格そのものは安いのです。でも、内装にかなりお金がかかるので、考えていた頭金の一部は、現金で持っている必要があり、必然的に、借りるお金が大きくなります。本来は、できる限り頭金を払って、ローンは少しでも減らす、という方針を立てていたので、大きな方向転換です。それでも、不動産そのものの値段が低いので、いずれにしても、ここまでは借りられそうだ、と思った金額よりは、若干低い金額で済みそうでした。
で、早速ローンの話を聞きに、自分の口座のある金融機関に行ったのです。
そしたら、大体月給の30%が限度なんですけど、といわれて、まずガーン。だって、最初のファイナンシャル・コンサルタントは、40から45%って言ってたし!そんでもって、わたしの月給と年収の明細を見て、このくらいなら、まぁ何とかぎりぎり20年でいけるか、場合によっては25年にすれば、楽勝だね、って言ってたし!
しかし、話を聞いていると、25年でも何でも、どう転んでも無理じゃん、という感じなんです。
イタリアのお給料は、業界ごとでシステムが決まっていて、わたしの場合、多くのサービス業界同様、月給x14が年収となります。12ヶ月に加えて、年に2回、月給と同額のボーナスがあり、これは日本のボーナスのように変動するものではありません。その上わたしの場合、会社の社内的な方針で、これ以外にもボーナス的な一時金があり、こちらも固定で、増えることはあっても減ることはないのですが、ただ、ローンを組むなどの場合、残念ながら、そういう一時金的性質のお金は、カウントしてくれないようです。
そういうわけで、わたしの月給は、実際の所得から言えば、低めに設定されているわけで、当然ローンの金額も、そこから計算されてしまうので、リミットも低くなるわけです。
がーん。
とりあえず査定にはまわすから、早く必要書類を調えてね、といわれたものの、どうやら査定に1ヶ月くらいかかるようです。その結果、だめ、といわれたら、そこからまた他のローンを探す暇があるのかな?時間的リミットは1月半ば。うわ~、あせります。仮契約を済ませてしまえば、後戻りは絶対できないし、1月半ばまでにローンが組めないと、契約違反となり、仮契約時に払う頭金の倍額返しの上、契約破棄となるらしいです。うわ~、どうしたらいいんだろう!?
あの不安むくむくは、結構本能的にこういう可能性を予測していたせいだったのかな。
さてさて、どうなることやら!

  1. 2008/11/11(火) 06:34:07|
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ウンブリアその7-テルニTerni

テルニには申し訳ないのですが、ここに来た一番の目的は、近郊にあるロマネスクの修道院への拠点とすることでした。ですから最も重要なことは、そこへの行き方を知ることで、テルニそのものの観光は二の次(すみましぇ~ん)。
さて、情報収集のためには観光案内所に行くのが一番。で、ガイドブックの情報を頼りに、町中にある案内所を目指しました。
しかし、その住所には、それらしいものは見当たりません。もう一つ地方の観光案内所みたいのが記されているので、ではそちらへ、と方向を変えます。その近くには、ロマネスクの小さな教会があるはずなので、まずそちらを見学することにしました。



小さな教会サン・サルバトーレ。感じのよい外観ですが、当然、という佇まいでしまっていました。でもなぜか、扉前に郵便物が置かれていたので、死んだ教会というわけではないようです。
それにしても、この教会は、町外れなのかそこそこ町中といっていいのか、よく分からないロケーションで、この町のつくりは理解しにくいです。

観光案内所に向かう前に、もう一つ気になる教会があるので、そこにも行ってみました。


サンタロー教会。サンタローってなんか日本語的で変ですが、イタリア語で表記すれば、Sant'Alo'となります。とてもかわいらしい小ささで、住宅地の中に埋もれたようにあります。今はギリシャ正教会だかなんだかの本部に使われていて、日曜日のミサのときだけオープンする旨、扉に記されていました。でも、中には12世紀のフレスコ画や柱頭彫刻があるらしいので、あきらめきれず、教会に隣接した建物のベルを鳴らしてみました。というのも、そちらは住居という感じではありますが、扉にロマネスクっぽいレリーフがはめ込まれていたりして、歴史的建造物なのは間違いないし、教会関係者または鍵の保管者がいるかもしれないじゃん!と勝手に思ったのです(この建物は13世紀のもので、かつてマルタ騎士団に所有されていたものらしいです)。
そしたら上から声が降ってきました。見上げると、これまた素敵な石のバルコニーに、品のよいおばあさんがいらっしゃって、いぶかしそうにこちらを見ているのでした。すみませんが、隣の教会の鍵を保管なさってはいないでしょうか、と尋ねると、残念ながらもってないわ、誰が持っているのかしらねぇ。教会の裏に関連の学生寮があるから、そこで聞いてみたらどうでしょうか、ととてもやさしく対応してくれました。このように美しい家に住んでいる人は、やはり物腰も美しくなるのだろうか、と妙に感心しつつ、お礼を言って、今度はその寮のベルを鳴らします。
ビンボーそうな若者が出てきて、教会?知らないな。鍵?ないよ、そんなもの。ここには学生しかいないし、そんなの誰も知らない、とにべもない答え。醜い寮に住んでいると、物腰も醜く…、いやいや、まぁ仕方ないことですね。さすがにあきらめました。

そして、観光ついでだ!とカテドラルに行きます。


外側はすっかり後代のもので、わずか扉の周りの装飾に、上のような中世をしのばせる彫刻が残されています(12世紀のもの)。ベネチアで見たライオンを思い出します。確かトルチェッロの教会で見た、すごく古いレリーフ。5世紀起源の建物の上に今の教会が建てられているので、地下にも11世紀頃の古いクリプタがあります。で、入場。
ロマネスク好きには目を背けたくなるような(は、言い過ぎ?)16世紀のきらきらした装飾です。写真を撮る気にもなりません。さて、クリプタへはどこから降りればいいのかな?とうろうろしていたら、掃除をしていたおじさんがいたので、尋ねてみました。ちょっと待て、あけるから、と掃除用具を片付けに行きがけたとき、観光客がフラッシュをたいて写真を撮りました。オヤジ、いきなり「写真はだめ!」とすごい勢いで怒鳴りました。どき~。「全く近頃の観光客は、写真を撮っていいかどうか尋ねもせずに、ぶつぶつ」と文句を言いながら、戻ってきました。そして、地下へと続く階段の柵を開けてくれ、一緒に下りて、灯りをつけるともに、ガイドをしてくれました。とても親切な人で、また教会に愛着を強く持っている人でした。クリプタはとても素敵で、ああ、写真が撮りたい…、と心の中では渇望していましたが、つい先ほどの光景の直後では、とても口に出す勇気はなく、その分、しっかりと説明を聞いて、じっくりと見てきました。
行かれる方は、外観があまりにあたらしいので、入らずに帰ってしまう人もいるかもしれませんが、是非入場して、オヤジにクリプタを案内してもらってください。

さて、当初の話に戻ります。観光案内所。このカテドラルの近くにあることになっているので、ガイドブックの地図を頼りにたどりつきました。しかし、やはりありません。通りすがりの人に尋ねると、うーん、ないね。住所は?確かにここだな。うーん。としばし悩んだあと、あ、ここには、やはり市の運営する施設があって、それは他の場所に移転したんだよ、おそらく観光案内所も一緒に移転したんじゃないか?とその住所を教えてくれました。親切です。
汗をだらだらかきながら、その住所にたどりつくと、確かに立派な建物です。レセプションがあったので、尋ねてみると、「誰がそんなこと言ったの、ここじゃないよ。観光案内所は、ずいぶん前から駅の方の○○とおりだよ。緑の門を入って云々」。親切なんです、やっぱり。でもびみょ~に説明に誤りがあったりするんですねぇ。
もうやめようかな、とちょっと弱気になりつつ、でも修道院に行くため!と気を取り直して指示された場所に行き、緑の門を入ると、「あ、ここじゃなくて、出て左に曲がって云々。」はいはい、左に曲がって…、看板も出てないけど、ここ?と半信半疑で扉を押すと、確かにそこは観光案内所なのでした!やれやれ。
入るなり「お願いだから、案内の看板だしてよ~!」と叫んだわたしです。案内所のお兄ちゃんは一瞬きょとんとしたものの、すぐ、ああ、ごめんね~、ほんとここわかりにくいよね~。と笑いながら、状況を分かってくれたようでした。その後観光のことを置いといて、テルニの町の観光に対する姿勢について、延々と意見を述べ立てるわたし…。こういうとこ、すっかりイタリア人とゆーか、昔々のおとなしい人見知りの自分を知っているだけに、びっくりしちゃいますね。
お兄ちゃんは、かなり親切で、持っている情報をすべて放出してくれ、修道院への行き方もばっちりです。苦労はしたけど、結果的に見るべきものすべて見て(というか、上の三つだけですが)、情報も収集して、めでたしめでたしです。

ちなみに、テルニには、ローマの劇場跡があったり、近郊に水量豊富で迫力のあるマルモレの滝というのがあり、それはかなり有名です。バスで近郊に行くと、ちょうど滝の脇を通りますので、一瞬ながら拝むことができたのですが、確かになかなかのものでした。
  1. 2008/11/10(月) 06:48:51|
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ウンブリアその6-スペッロSpello

スペッロは、その昔、春先の花祭りで訪れたことがあります。色とりどりの花びらを使って、地面に絵を描くアレです。そのときは、小路いっぱいに花びらの絵で、地味な色合いの石の建物と、派手派手な花の鮮やかさがすごい印象強い風景を作っていました。で、町そのものは、あまり視野に入ってなかった気がします。
確かに坂はすごく激しかったと記憶にはあるけれど、十数年余計に年取っているせいもあるとは言え、ここまですごいとは思いませんでした。上りか下りか、とにかく全部坂といっても過言ではない町のありようです。ロマネスク的には、これ、という見所があるわけではないので、とりあえず歩いてみるか、と町の中心広場、町の中で唯一平衡感覚が保てる場所から、登り方向に向かいました。
とにかく登り道。そして両側はびっしりと石の家が続きます。やっとそれが途切れると、あらまぁ、すばらしいわぁ、といきなり田舎のおばさんになっちゃいますが、ゼエゼエしながら眺める、そのウンブリアの緑の美しいこと!


ほぼ天辺かな、と思われるあたりに、教会?それとも民家?よく分からない建物があり、近づくと、一応教会で、12世紀のサン・セヴェリーノと看板が立っていました。でも勿論閉ざされていて、外観はそれなりにきれいに保たれているものの、日常的に利用されている様子はありませんでした。この教会の前に水のみ場があり、ペットボトルに汲んでいる他の観光客のまねをして、手持ちのボトルにいただいてみました。無味無臭の、冷たい水でした。坂道を登ってきた身には、甘露。


登りはともかく、下り道で目に付いたのは、売り家の張り紙。あっちにもこっちにも。そして美しく手入れされている家々の間に、すでに長年人が住んでいないのが明らかな家も多く目に付きます。こういう不便な村にはありがちな現状ではあるのですが、実際目の当たりにするのはさびしい現実です。
なんとなく面白くなくて、村を一周したところで、次のバスで帰りましょ、と思い、バスを待ちつつガイドブックを開いたら、あら、ロマネスクの名残があるらしいじゃん!
とあわてて、道を引き返してみました。さっき通りすがりに中をのぞいて、あ、だめ、これは趣味じゃない、と思った教会の入り口に、かすかにロマネスクの時代の名残がありました。


ロマネスク特有の、飾り十字と木のモチーフ。ムラノにも似たようなモチーフの石版が、埋め込まれていたな。こういう断片から、時間のつながり、歴史の変遷を追っていけるんですね、きっと。
フォリーニョに帰るバスは、なんだかえらい遠回りの路線バスで、来たときの倍くらいの時間がかかって、何じゃこれ?と少々不安になりましたが、でもおかげで田舎のドライブが楽しめました。
  1. 2008/11/05(水) 06:28:42|
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不動産の話その後

ふふふ、決まった!
太陽の出ている時間に見たい、とできれば週末に再訪したい旨お願いしたところ、なんとこの前の土曜日は祝日であるにもかかわらず、すぐ売主に電話して、正午くらいならいいよ!とアポを取ってくれたのです。そして、訪問のあと、事務所で契約の話をしましょうということになりました。
どうもそのときは祝日であることをあまり認識していなくて、もう一度見られることに安堵して帰宅したものの、あれ?祝日に売主はともかく、不動産屋は働くの?と疑問が…。それに、普通は前日とか当日にアポ確認の電話が入るのに、今回はありません。あれ、やっぱり見せるだけで、契約の話は来週になるのかな、と半信半疑ながら、でも念の為、あわてて小切手を用意しました(普段使わないもので、持ってなかったんです)。
見たいという友人一人連れて、現場へ。営業の男の子と、不動産屋の経営者のオヤジが、売主と立ち話をして待っていました。太陽の下で見ると、改めて、「かわいいじゃん!」と思ってしまう建物です。同行の友人も、いきなり、「これ?いいよ、これはいいよ!」と興奮気味。
そして中に入り、階段を登りますが、その階段も手すりも、レトロな感じで、かわいい!さて、アパートです。
中は、公園に面した大きな居間、ちょっと小さいけど、ダブル・ベッドと箪笥、もしかしたら机も置けそうな寝室、そして小さい小さい台所と風呂場。でも台所は思ったよりスペースがあったし、あとは工夫で何とかなりそうです。同行者は、もうすっかり気に入ってしまって、わたしもすっかり背中を押された状態です。
実は、前日に、最後のアパートになるかも、と思いつつ、これまで熱心に営業を続けてくれた近所の不動産屋の紹介してくれたアパートを見に行きました。熱心すぎて、ちょっと辟易、という不動産屋だったんですが、今回の物件はなかなかよくて、正直、初めて、わたしの譲れない条件ほとんどすべてを満たしている物件でした。でも、感じるものがなかった。間取り図とか描いてみたり、いろいろ考えたのですが、やはり感じるものがない、という部分で、迷いは吹っ切れました(でもこの不動産屋にはちょっと悪い気もします、ちょっとだけ)。
その上、友人が背中を押してくれたので、もう迷いはなく、アパートのあと、近所の事務所に行き、手付けの書類を作成し、手付金の小切手を切りました。とりあえずは5千ユーロなので、まぁわたしの実感できる範囲だし、買い物的には、過去にもっと高い金額の車を買っているので、まだまだ、と思いますが、契約が成立すれば、1万ユーロ単位でお金が出て行きます。そして20年ローン…!

さて、そして週明け、こっちからのオファーに対して、売主は、もうちょっと色をつけてよ、ということで、ほんのちょっとだけ、こっちの出した金額より高い金額を言ってきました。不動産屋にしても、これ以上は譲れないよ、ということだし、実際、これだけ好きになれる物件は今後でなそうだから、受けてきました。金銭感覚、麻痺しつつある気がします。だって、ほんのちょっとだけ、とか言ってますが、冷静に考えると…。いや、多分ここはあまり冷静になると、ことが運ばないようにも思います。
2週間後に仮契約、その後ローンを組んで、本契約となります。うまく行けば、何とか年内に話がまとまりそうです。
こんな大きな買い物、人生初めてのことなので、実は決めた直後から、喜びより不安がむくむく…。
まだまだレポート、リアル・タイムで続きます。

  1. 2008/11/04(火) 06:44:11|
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ミラノの不動産の話

長年賃貸暮らしをしてきたけど、いよいよ慣れ親しんだアパートを追い出されることになりました。で、いまさら改めて賃貸もないだろう、とこの一ヶ月ほど、売り家を見て回っています。
1990年代の後半から、不動産価格は上昇の一途をたどり、ユーロへの通貨統合後は、物価全般がそれまでの二倍になるというインフレ状態で、この数年、ミラノ市内の不動産価格は、異常な高騰を遂げ、とても独り者の会社員の手が出せるレベルではありませんでした。
今思えば、ユーロになる前は、高いといっても今の半額以下。ああ、あの時無理してでも買っておけば、と思うことしきりですが、まさに後の祭り。たとえば、我が家のお隣は、かなり小さくて、あんなとこ無理!と10年ほど前売りに出たとき、近所の人に勧められたのに見向きもしなかったのですが、今となって思えば、あの値段では、いまやガレージしか買えない、逆にいえば、ガレージ程度のお値段で、自分の家が持てたんです~。
そういう時代に、まぁ頭金もないし、収入も低かったのは確かとは言え、まず不動産を買う気が無かったんですよね。バカバカ、大馬鹿ヤロウです。
ま、その不動産バブルも去年くらいからちょっと落ち着きを見せて、高値安定、という時期に入りました。高額物件は、じりじりと価格を下げています。不動産を買うタイミングとしては、決して悪くないのですが、でも、アメリカのサブプライム問題やリーマン破綻で、いきなり金融不安ですから、もう少し先延ばしした方がベターなのかなとも思います。でも買いたいと思ったときが買いどき、と思い、先行きどうなろうが気にせず、探している毎日なんです。
基本的に近所の不動産屋を回って、大体条件に合う物件を紹介してもらい、毎週3~4件見ています。でも全然よいのがなくて、落ち込みます。2階以上、エレベーターあり、最低二部屋、バスルームには浴槽(シャワーだけ、というのはだめ)、温水器はガス(電気のは、高い上にお湯量のリミットがあって、のんびりお風呂につかれない。といっても、直近で風呂に入ったのは2年前とかですが)、小さくてもいいからバルコニー付、目の前に他の建物がない(眺めのよい部屋、とまでは言わないまでも、すぐ前が他の家、というのはちょっと)、入居前の改築が最低限ですむ(中古物件なので、壁塗り程度は必至ですが、あまり大きな修復はしたくない)、できれば駐車場付、だめでも近所に路上駐車が楽にできる、といったところがわたしの必須条件ですが、これまで15件以上見て、それすべてを満たす物件には出会えていません。
勿論100%完璧な物件に出会えるとは思っていません。気に入る家に会えれば、これは条件クリアしてないけど、でも譲れる、という部分が出てくるのだと思います。
ま、いずれにしても難しいのは確かで、見ても見てもぴぴっと感じる物件に会えず、少々めげてきた頃、全く期待せずに見に行ったお家が、意外にもすごくよくて、ほとんどすべての条件をクリアしていました。唯一つ、どうしても譲れない点がクリアできてないので、やっぱりだめなんですが、でも全く期待していなかっただけにインパクト大きく、あ、探せばやっぱりあるんだ!といきなり気分が元気になってきました。
譲れない点とは、窓の開いている方向が建物の中庭で、中庭はぐるりと建物で囲まれている上に、そのアパートは1階なので、まるで井戸の底にいるような状態なのです。この閉塞感は絶対だめ。もともとのアパートのつくりがかわいらしい上に、引渡しの前に全部きれいにするから、新築同様の中身になるらしいし、さらにお値段もとてもリーズナブルなので、悔しいことこの上なし。
そして、同じ不動産屋が、その近所の物件を紹介してくれました。そこは実は、以前ぶらぶらと歩いたときにチェックしていた家でした。建物はすごくかわいらしくて、目の前が公園なので、眺めの問題はなし。ただ2階だけどエレベーターがないのが明らかだったので、こちらから問い合わせはしていなかったのです。だめもと、と思って見に行きました。
ところが、これが来ちゃったんですね。あ、いいじゃん、と。
階段はやはりエレベーターに比べたら面倒だししんどいですが、でもたかが2階(日本では3階)。居間に小さいけど石造りのかわいらしいバルコニーが付いていて、目の前の公園を全体に見晴らす感じです。
中は相当古びていて、実際この数年人は住んでいない状態ということ、納得。暖房設備もないので、かなり大掛かりな改装工事が必要となります。
でも不動産屋も心得たものというか、すでに改装全般の見積もりをやっていて、おおよその経費を教えてくれました。その分、売主は多分言い値を下げるから、というアドバイスとともに。
そう、ここは不動産屋もなかなか感じがよくて、これもポイント高かったのです。
この週末、日のあるうちにもう一度見て、まずは売値がちょっと高いので、こっちのオファーを出す運びとなります。どうなることやら!

  1. 2008/11/01(土) 07:28:44|
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