この週末、たまたまパリ旅行をしていました。金曜日に出張があったので、土日をバカンスをしたのですが、まさかの…。
なぜか縁がなくて、二十年以上ご無沙汰のパリ訪問ですから、まずは仕事とはいえ、かなり浮かれていました。美術館も、教会も、見るべきはチェックして、地図をゲットして、いろいろ計画していました。
しかし、シャルル・ド・ゴール空港で、いきなりテレビニュースの画面が、目に飛び込んできました。画面下にMIYAGIとあります。え、もしかして地震?とは思ったものの、アポの時間に遅れていたので、横目で見ながらも小走りでした。
まさか、こんなことになっているなんて、思いもしません。
その後、遅れたたどり着いたオフィスで、いかにひどいことになっているか、少しわかって、仕事の後、東京の実家に電話して…。だんだんと重大さがわかってきましたけれど、なんせフランス語は全然だめなので、ニュースを見ても、わかるのは映像だけです。
映像だけでも、もちろんとんでもないことはわかりましたが、細かいことはわからず、まったく歯がゆい二日間でした。
町を歩いていたら、忘れる。日本人らしい旅行者とすれ違っても、みんな楽しそうに笑顔で歩いているし、私自身も旅行者になれる。
でも、たとえば、ランチのためにはいったブラッセリーで、たまたまテレビのニュースが延々と津波の映像を流していたりするんです。で、涙がボロボロッ。それって、本当にどうしようもないだけのボロボロだったと思います。店の人も、あ、困ったな、という顔をしていましたけれども。
そうなると、道を歩いていても、あの人は大丈夫かな、この人はどうなんだろう、と考えてしまうわけです。そして、なぜ、こんなときに、わたしはこんなところでこんなことしてるんだろう、となってしまうわけです。
仕方ないのにね。
そう、できることはない。だから、ボロボロしながらも、わたしのバカンスを思いっきり邁進しました。
例によって、歩きすぎて足を引きずるような状態で、見たいものを見られるだけ見てきました。
20年以上訪ねていなかったパリは、ずいぶんと変わっていて、そしてやはり美しく、素晴らしい町でした。
ブラッセリーで、ホテルで、空港で、見ず知らずの人に、「日本人か?家族は大丈夫か?」等々、声をかけられることも数知れず。本当に暖かい気持ちになりました。
みんなが、日本人は、がんばれる人たちだって知っていて、だから、大丈夫だよね、ってそういうスタンスで。
今日も、職場で、次々に同僚がやってきて、家族の安否を気にしてくれました。暖かいです。当たり前だと思うけど、やっぱりうれしい気持ちになります。
何もかも失った方々も、きっとたくさんいると思うのです。かける言葉もありませんけれど、きっと、明日は来る。
何もできないわたしが、何を言ったっておこがましいけど、明日は絶対来る。がんばろうね。
何もできないけれど、毎日ニュースを見て、そして、明日もがんばろうねって思います。
- 2011/03/15(火) 06:15:13|
- ミラノ徒然
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カルネヴァーレを訪ねたベネチアですが、実は展覧会情報もいくつかかかえていきました。でも結局、あまりの仮面・衣装の素晴らしさに、展覧会どころではない!ということとなり、実際に訪ねたのは、たった一つ。ボッシュ。
ベネチアには、ちょいとくつろげる広場がたくさんあります。たいていベンチが置かれているし、運河沿いにちょっと腰掛けることのできる石段があったりします。そういう広場の中でも、比較的広くて、鉄道駅とサン・マルコ広場を結ぶ道の途中にある広場のひとつが、ピアッツァ・サンタ・マリア・フォルモーザ。その一角に、ボッシュの会場になっているグリマーニ宮があります。
ボッシュはとても好きな画家の一人。
マドリッドなど各地の美術館で少しずつ見ていて、見るたびにディテールが面白くてますます好きになる、という画家。
この、展覧会のポスターにもなっている絵は、立花隆さんの「臨死体験」という本の表紙に使われていたことから、わたしにはとてもおなじみの絵だったのですが、実際に見たことはないな、と思っていたものです。
そんなわけで、カルネヴァーレも気にしつつ、これだけは見たいと思って訪ねたのでした。
しかし!かなり衝撃でしたね、この展覧会。
この展覧会場になっているグリマーニ宮は、普段から、建物とそれに付随するフレスコ画や所蔵する絵画を見せるという、建物そのものが美術品で、それに加えて、今回のボッシュ展のような企画展が行われるということらしいのです。
9ユーロの入場料は、そういうわけで、もともとの建物の鑑賞料プラス企画展見学料。
しかし!
なんと、ボッシュの絵は3点…。
え?これだけですか?と予想もしない状態に、思わず振り出しに戻って、もう一度すべての絵(といっても、たったの3点ですが)を、改めて見直しました。
ああ、こういうわけのわからないもののけ達の姿。変なものの配置の妙。こんなのがたまらないのですねぇ。こういうのって、ロマネスクの変なものの系譜につながるのかもしれない、とか思ったり。
で、じっくりと見直しているときに、はっと思ったこと。そういえば、ボッシュの絵を、ガラス越しでなく、素通しで、まさにそのまま触れることができる状態で見たことはなかったのではないか、ということでした。
この3点は、ベネチアにある絵なんですね。だからといって、なぜ、ガラス越しじゃないのかわからないのですが、触れることのできる展示なんですよ。それでいて、監視の人もほとんどいないし、古い建物だからカメラとかもありそうもなくって。元気のいい子供が二人入ってきたときは、他人ながら思わずどきどきしちゃうほどでした。だって、彼らがふざけて、絵に倒れこんだらどーすんだ?
実際、そう思うくらいにさりげない展示だったんですよ。
というわけで、たった3点かよ、一枚3ユーロかよ!と一瞬ふてくされたわたしだったのですが、一枚3ユーロで、これほど見せてくれていいのか!と出るときには感動してしまったのでした。
ご興味ある方は、まだやってますので、是非。
Bosch
Palazzo Grimani - Venezia
until 20/03/2011
- 2011/03/11(金) 06:01:55|
- アートの旅
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この辺で、こういう人たちもいますよ、ということで、ちょっと色物系。
これって誰でしたっけ。アニメとかのキャラクターですよね。動物のきぐるみは時々いるのですが、こういうのはベネチアではほとんどないので、逆に新鮮で、結構目立っていました。
ほら、きぐるみ。
カップルかと思ったら、若い娘さんのペア。石段に寄り添って腰掛けて、サンドイッチなどほおばる姿が、妙にかわいらしかったですねぇ。きぐるみでも仮装でも、やっぱり複数、っていうのがポイントかな。
この子達もかわいかった~。
一瞬ロビンフッドかと思ったら、ピーターパンとティンカーベルでした。
おお、ピッツァ!
お布団みたいで、寒さ対策は万全(経験者は語るって感じ?)、というスタイルです。楽しそうだけど、思いっきり顔出して、ちょっと恥ずかしいかも。
色物で、もっとも強烈だったのが、この方。
写真が下手で申し訳ないのですが、カタツムリ。緑の上にどっしり。で、頭は出てる。ゆらゆらと歩いていて、一度見たら忘れられない。この方の写真、他のブログでもお見かけしたので、結構何度も練り歩いている様子だし、地元の人なんでしょうかねぇ。なんでカタツムリなんだか、まったくわからないのです。
しかし色物でも、これだけ凝ると、悪くないです。って言うか、やはりこのくらい凝ってこそ、ベネチア、って感じかな。ストレートに赤頭巾ちゃんとか、ただのきぐるみは、ちょっとね~、ベネチアではね~。
とはいえ、時々ぬっと姿を現す大人サイズのウサギやアヒルのきぐるみは、それだけでほほえましくて受けてしまうのも事実ですけども。
- 2011/03/10(木) 05:16:08|
- 旅歩き
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歴史に忠実っぽい衣装の方々の紹介、続きますよ。ペア特集かな。
あえて、白と黒ですっきり。カップルでのコンビネーションもばっちりで、地味ながらインパクトがある衣装です。しかし、このカップルも、相当の年…。それも外国人(イタリア人以外)。歴史系衣装の人はかなり高い比率でドイツ人だったように思います。
これまたすごいカップル。
でも、こうなるとちょっと品がないって言うか、見ていて引けます。ペアとしてのメリットも生かしてないですよね。かすかに、女性の衣装と、男性の羽のピンクくらいで。また、女性の衣装は美しいんですが、やっぱり品に尽きるんですかね。こういうのは、つい、ふーん、と軽く流しちゃいますね。
この人たちの酔いっぷりはすごかった。
サン・マルコ広場のバールにて。女性はあえてテーブルに腰掛けて、とにかく見てよ見てよ状態です。完全に酔ってましたね、自分たちの姿に。それも、男性も女性も仮面なしですから、さらにすごいというか、傲岸というか、それは違うだろう、と心の中で突っ込みながら、つい3枚も撮影しちゃうわたしでしたね。やっぱりかっこよかった。濃い茶色とからし色。縁取りの渋り緑と、帽子が共通なんですね。心憎いコンビネーション。
オリエント風のペア。
どちらもメガネ着用なのが、ほほえましい?やはり結構な高齢カップル。
こういう正統派オリエント風は意外と少なくて、結構目立っていたし、高齢の癖にデコルテ全開よりは、目にも優しい…。
わ~、この人たちもある意味目立ってたな。男性が、当時のようにしっかりと白塗り化粧までしてるのがすごい!
全身金色。それ以外は白。すっきり。この金色って、意外と地味だったりします。
この人たちも仮面なし。昔よりさらに、自意識過剰タイプが増えたような気がしないでもないですね。みんなの「見せたい!」オーラが怖いほどです。
- 2011/03/09(水) 06:07:34|
- 旅歩き
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ボローニャ、モデナ、ノナントラ編、やっとアップしました!
いやはや、なんとも時間がかかりましたねぇ。最近は、イタリア語環境のパソコンの不具合のために、アップロードにも思わぬ時間がかかるので、状況は悪化の一途です。
でも、何とかできたということで、お知らせいたします。
今回は、資料が多かったし、イタリア・ロマネスク的にはかなり重要度の高い教会があったりで、予想以上の時間がかかってしまったのです。資料は、読めば読むほど、それなりに面白いものですしね。
おかげで、改めて聖書、特に旧約のエピソードなど、大変お勉強になりました。そしてまた、写真を見直したりしていると、肉眼で実際に見ているのとは違うものが見えてきたりもするし、歴史とあわせて見ていると、違う風景が見えたり、なんだか、そんなこんなで、とにかく時間がたってしまいました。2月中に楽勝と思っていたのに、ひな祭りもとっくに終わって、もうすぐ夏時間にならんかという時期になってしまいましたから、驚きです。
イタリア・ロマネスクとしては、特にモデナのカテドラルは実に見所豊富で、是非訪ねてほしい場所のひとつです。わたしのように、本来山の中にぽつんとあるような小さな聖堂が好きな人間にも、ここにある数々の彫刻装飾には、何か訴えてくる力を感じます。南仏にもスタイルが通じるものがあるようなので、フランス・ロマネスク好きにもお勧めです(多分、ですが)。
しかし、そんなに資料を読んだのに、これかよ?!等々言われてしまいそうな予感も。所詮素人の付け焼刃的な覚書なので、多くは期待しないでください。でも、もしご一緒できる機会があれば、ちょっとしたガイドさんよりは、ロマネスク的なお話ができるような気がしています。今のところ、限定ですけど。だって、多分すぐ忘れちゃいますからね。
- 2011/03/08(火) 06:03:58|
- ロマネスク全般
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まずはやはり「歴史再現派(勝手に命名)」でしょうか。これはもう風景とマッチしすぎちゃって、違和感ゼロ。こんな風に溶け込んじゃいます。
上は、男性の集団ですが、メインは男女のカップル。
すっごくないですか、これとか。
衣装のレベルもセンスも、さまざまです。クラシカルに時代考証したスタンダードなものから、ちょっと仮面や頭に凝ったり、小物に凝ったり。いずれにしても、トップ・レベルの人々は、もう頭の先からつま先まで、金と手間隙をかけまくり、それは見事なものです。そして、カップルの衣装のコンビネーションも、重要なポイント。この人たち、一見すると同じじゃないけれど、色合いを微妙な使い方であわせていて、頭の羽も同色をちょっと入れて、お互いの衣装も計算した、まさにトータル・ファッション。いや、トータル仮装!すごいです。後姿も完璧でしたよ。
そしてこのおじさん。
かなりメタボ体系で、普通の洋服着たらおなか出っぷりで、決して見栄えのよくないことが想像されるのですが、この美しいピンクの衣装は、見事に似合っていました。おなかでっぷりが逆に貴族っぽかったりして。
ふふ、こういう格好の人が、あちこちうろついていて、こういうバールなんかにちょっと入っていたりするのが、またカーニバルの楽しさです。スナックの定番サン・カルロのポテチですよ。それにしてもこの方、芸が細かいです。これを是非。
こんな素敵な靴、どこで調達するんでしょうか。やはりオーダーメイドで頼むんでしょうかねぇ。うっとりしてしまいました。靴の先に、杖の先っぽが写っているのですが、これまたピンクに宝石つきの凝ったもので、脱帽です。靴だけでなく、衣装もやはりオーダーメイドとしか思えませんけど、布の重厚感もすごいし、どこで作るんでしょう。
この方々も、妙に存在感のあるグループでした。
ただ、このカテゴリーは、どうもじいさんばあさんが多くて、その上、仮面をつけていない人も多くて、ちょっと本来の意図とは外れているでしょって言うか。やはり仮面をつけてこそ、と思うんですよね。それに「じいさんばあさん」とわかってしまうのはちょっとねぇ。まぁ、この白テンのケープの人は、じいさんであってしかるべきというキャラクターだから、それはそれなんですけど。法王?誰?
イタリア・ファッションは、女性よりもメンズがすごいと思っていますが、やはり歴史的な理由があるっていうか、昔からイタリア人はお洒落だったんですかねぇ。仮装でも、この歴史的衣装については、結構メンズに目が行ってしまいました。あ、もしかしたら年寄りが多かったわりに、がばっとデコルテむき出しという衣装が多くて、そういう女性にちょっと辟易とするものがあったかもしれませんが。
改めて写真でうっとり楽しんでいます。続きます。
- 2011/03/07(月) 05:50:26|
- 旅歩き
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なんとなんと、20数年ぶりに、ベネチアのカーニバルに行ってきました!
毎年のように、また行きたいものだなぁ、と思いながらも、なかなか実行できないでいたのですが、今年は、しっかりと事前に列車のチケットも取って、例によっての早朝出発日帰り強行軍です。
ああ、しかし!すばらしいですよ~、やっぱり。これは他では見られないものだし、味わえない興奮です~。
ベネチアに行って、サン・マルコ広場だけでこんな長時間滞在することはないし、そもそも、サン・マルコ寺院に一瞥もくれない状態というのはありえないわけで。だって、次々に仮装の方が現れて、もう収拾つかない状態です。あ、あそこに羽根が!あ、あそこにきらきらするものが!と、何か新しいものが目に付くたびに駆けずり回ってしまいました。実際、本当に美しい仮装が多くて、さすがなんですよ。
実は、20数年前、わたしも友人二人と、結構しっかりと仮装をしたんですよ。初めてのカーニヴァルで、思いっきり仮装して、本当に楽しい数日を過ごしたんです(このシリーズの中で、写真を公開しますよ!)。そういう思い出があるために、逆にこの長い年月の間、いけなかったというのもあります。
そして今回思ったのは、
「仮装してこそ!」
また、仮装して参加したい!それも、するからには、半端なものじゃなくて、マジ、いれこんで!
昔の仲間よ、どうでしょうか?
なんと一日の滞在なのに500枚以上も写真を撮ってしまったので、少しずつ紹介していきます。だって、本当にすばらしいんですから。そもそもベネチアのカーニヴァルの美しさって、実はあまり具体的には知られていないような気もするし!
お楽しみに!ちょっと興奮してます。しすぎか?
- 2011/03/06(日) 07:07:12|
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クリプタです。
ここの柱頭はすごいです。本当にすごいことになってる、って感じで、そんな必要もないのに、なんだか一人で焦ってしまうくらいです。
今回、多くの柱頭の写真入のガイド本を購入してきたので、じっくりと勉強しながら、改めて味わうのが今から楽しみ。
彫刻のモチーフは、多岐を極めていますよ。
取り急ぎ、どんなもんかを、こちらでちょっと出し。
まずは西側から。
真ん中にいるのは、鼻の形状から、もしかするといのししとか豚さんにも見えてしまうんですが、実はライオンです。鹿を倒している図なんですが、ここでのライオンは復活のシンボルで、鹿は生命の樹のシンボルなんだそうですよ。
細いとはいえ、二本の柱の上にある柱頭ですから、こうやって全体で使うと、結構なスペースなんですよね。
こちらは、ノアのお話の柱頭で、箱舟から降りるところから始まるんですけれど、ここでは、葡萄を搾って飲んで酔っ払うという部分。小さい柱頭の各部をうまく使って、こんなお話全部をちゃんと彫りこんでしまうって、すごいですねぇ。
聖書のエピソードがあるかと思えば、普通の道徳的なテーマとか、象徴的な図柄とか、次々と出てくるので、意図がよくわからなかったり。
これは、子供が乱暴な牛をしつけている図。
知性が野蛮な力を支配するっていう意味らしいですね。
今度のものまた、象徴的な図柄。
ユニバースの存在を人のフィギュアであらわしたとか言う壮大な柱頭です。それぞれの人のフィギュアが、アーカンサスのとげとげした上に立ったり座ったりという姿なのは、天国へと行く前の煉獄で、魂が苦しんでいることを表しているんだとか。そういえば、人々の顔が、みんな思いつめたような苦しそうな感じで、見ていると息が詰まります。
どうでしょう、面白くないですか?
わざわざ二度もモンレアーレに行った価値があるように、わたしには思えたんですけど。
せっかくなので、じっくりと記事にしますよ~。
- 2011/03/05(土) 05:12:02|
- シチリアの中世
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大聖堂の本堂のお隣にある、クリプタの紹介に移ります。
本堂を訪れた日、クリプタはクローズ。そんなことはどこにも書いてなかったんですけれども、やられた!という感じでした。
一番の目的は、本堂のモザイクでしたから、あきらめようかとも思ったのですが、ブックショップで求めた本を見ていたら、ここまで来てこれを見ないで帰るわけには行かない、と思い、結局翌日、朝一番で再訪しました。
朝一番だし、独り占めで、そしてもちろんクリプタそのものはすばらしくて、本当に改めて訪ねた甲斐がありました。
本堂の入場は無料ですが、クリプタは有料。それに本堂から直接入れず、入り口がちょっと離れたところにあるせいもあるのか、教会には来ても、クリプタを訪れる人はほんのわずかで、大変もったいないような気がしました。モンレアーレを訪れる方があれば、本堂を出た後で、忘れずにクリプタにも寄ってくださいね。
では。
各辺が47メートルの四角形で、なんと228本もの円柱があるんですよ。
近付くと、こんな感じ。
優美なほっそりとした柱は二本一組になっています。多くの柱に、黄金をベースにしたモザイクがはめ込まれていて、豪奢ですねぇ。
アーチの幅が狭くて、表側には、アラブっぽい幾何学模様が施されています。
後陣の装飾とおそろいという感じで、なんともかわいらしいし、アラブ・テイスト爆発です。後陣もそうですけれど、このベースの土色がなんとも。
そしてまた、これだけの数の柱とアーチが生み出すリズムというのが、どんな片隅までも、これでもか、と装飾を施さずにはおれないアラブ芸術が体現されているようにも思われます。
構造として面白いのが、キオストロの中に、さらに入れ子のように、小さなキオストロがあるというところ。キオストリーノ(小さなキオストロ)と呼ばれているようです。
四辺の大きさが違うだけで、柱やアーチのサイズは同じなので、中にはいると、ちょっとうるさいくらい装飾が激しく目に入ってきます。特に、この部分の装飾は、他よりもさらに激しいみたいで。
他は、せいぜいモザイクはめ込みなのに、柱なんかこれですよ。
あ~、うるさい!って感じでしょ。
実際はもちろん、とってもきれいだし、蔓の間に挿入された人や動物のフィギュアは、見ていて飽きないんですけどね。
いやはや、じっくり見ていたら、一日あっても足りないようなおもちゃ箱ですよ、ここは。
思いっきり続きます。
ロマネスクはこちらでどうぞ。
気づいたら、モデナ周辺ページ・アップの目標にしていた2月が終わってしまいました。楽勝のつもりだったのにねぇ。でも、いよいよ佳境にはいってきましたので、本当にもう少しです。多分。きっと。
ロマネスクのおと
- 2011/03/03(木) 05:16:50|
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モンレアーレのカテドラル見学でも、もしかしたらこれはかなりマイナー部分かなと思いつつ、でも面白かったし、サイトでは絶対に紹介できないので、えいっ、やっぱり紹介しちゃえ。
昔行ったとき、あったのかなぁ。行った記憶がないので、その後に整備してできた見学コースかもしれませんね。
右側身廊の入り口部分に入場口があり、なんと、本堂の秘密通路みたいなところを見学できるようになっているんです。
狭い狭い階段を登って、たどり着くのは、身廊の上の方の細い細い通路です。
人二人が通り過ぎるのもやっとという通路。ちょっと太っている人がいたら、もうお手上げという狭さ。時々、のぞき穴があって、本堂の様子がのぞけます。すごく上の方で、びっくりしてしまう高さです。
しばらくすると、表に出ます。屋根の脇の方っていう感じですかね。
そして、このカテドラルの、本堂のモザイクの他にもうひとつとっても重要なキオストロを、上から見下ろすことができるんです。
実は、モンレアーレを訪ねた日、キオストロはクローズでした。結局、ここだけはどうしても見なければ、と思って、翌朝もう一度訪ねたのですが、この時点では、「せっかくここまで来たのに見られないのか」という思いが強くて、そのせいもあるのか、もともと美しいキオストロの姿が、何百倍も美しいものとなって目に入ってきました。
わたしに興味があるのは、柱頭彫刻なわけで、それは、当然、こんな高さからは見分けられないわけで。でも、あそこに美しいものがあるというだけで、人の目は、同じ風景であっても、その見えない美しさをちゃんと計算してみてしまうんですねぇ、きっと。
冷静に見れば、かなりだだっ広いけど、ちょっと殺風景と言ってもいいようなキオストロなのに、このときのわたしには、本当に美しく見えたんですよ。
さて、見学順路を進むと、後陣の上に出ます。
後陣の美しい装飾が、すぐ間近に見られます。
ついわれを忘れて身を乗り出して撮影。
右に見えるのは、地面の石畳です。これ、実はかなり身を乗り出しているので、はっと気づいて、怖かったです。高いですもんねぇ。歩いている人があんなに小さい…。
これだけ高いですから、当然パノラマも楽しめます。パレルモ方向の海。
これは万人にお勧めの、中世とか関係なく楽しめるアトラクション。なかなかやるじゃんね、モンレアーレ。
とはいえ、これだけのものを作るということのすごさが、妙に感じられる見学路であるのも確かなんですよね。だって、今でも楽しめる高さなんですから、千年も昔のことを思えば、ちょっと想像もつかないすごさです。もちろん当時は、職人さんしかアクセスできない場所だったと思うのですけれど。そういう風に考えると、一般庶民にとって、こういう建造物の与えたインパクトのすごさっていうのが、ちょっとわかるような気もするんです。
どうですか?
- 2011/03/02(水) 06:06:39|
- シチリアの中世
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