ピエモンテ、田舎ドライブで、まず訪ねたのは、トルトーナ。結構な町で、目指す教会にたどりつくより何より駐車場が見つからず、あえなく敗退…。 目指した教会は、おそらくファサードに、ほんの少しロマネスクの名残が残っている程度で、特に期待もしていなかったので、帰り道に寄れれば寄ろう、とすぐ気持ちを切り替えて、次に向かいました。一応、鉄道駅のすぐ近くに、公共の駐車場がありましたので、旧市街は住人以外の車は進入禁止らしいことを考えると、次回行くとしたら、ここを目指すとよさそうです。
で、向かったのはクローネ谷ですが、まずは通り道ということで、ヴィグッツォロViguzzoloのサンタ・マリア・アッスンタ教会Pieve di Santa Maria Assunta。
ここは数年前、他の教会やら友人宅を訪ねる途中に立ち寄った場所で、すごく懐かしい。ほんの3年くらい前の話ですが、当時は、カーナビもなかったので、たどり着くまで相当苦労した記憶があります。今回は、実はこの先にある教会を目指していたのですが、通り道に出会いましたので、立ち寄った次第。
それにしても、かわいいですよね。珠玉の、という形容詞がありますが、まさにそういうたたずまいです。
ここ、以前訪ねたときは、ちょうど教会の中で展覧会をやっていたので、中に入ることができたんです。素敵なクリプタがあるんですよ。今回は、当然のごとく、クローズ。でもそのときの思い出があるので、全然問題ないです。
そのとき、展覧会の管理をやっているおじさんが、実は教会守の人だったようで、その素晴らしいクリプタをみせてくれたのでした。そして、そのときおじさんがうっとりと「後陣の上の方に十字架型の開口部があるだろう?朝日を受けて、あそこから光が入ると、本当に教会の中が荘厳で美しく照らし出されるんだよ。私は何度それに感動したことか。」というようなことを言っていたことが、忘れられないです。 そういうことを言いたくなるような、教会のたたずまいだったからかもしれません。
これまでよりも、変に要求の多い私。隅々までチェックをして、あ、こういうのは、以前はチェックしてなかったかもな、という小さな中世の名残を発見。
この、正面扉の両脇にある灰色の石。かなり摩滅激しいのですが、当時のものらしい浮き彫りがあるのでした。そしてまた、ファサード上部にも、ちょっとそういう当時の名残系の石がありました。ちょいと、化石探し状態ですね、これって。
渦巻き模様。なんだかね。こういうのに過剰に反応しちゃうんですよね~。
しかし、二度目の今回、最も感動したのは、教会の近くにあった大木かも。
この教会、今では町外れという場所に建っていて、町外れとはいえ、幹線道路の脇なので、一人さびしくたたずむ、というようなロケーションではないのですが、おそらく、かつては、何もない草原に一人建っていたものと思います。
大木は、教会の両脇に二本。どちらも、直径で言えば3メートル以上はありそう。とにかくすごく長く生きていそうなたたずまいのお二人だったのですよ。
教会がほぼ千年として、あなたたちはいつからここにいらっしゃるのでしょう、と尋ねました。心の中で。だって、千年杉、とか考えると、もしかすると、教会と同じような年齢なのかもしれないですよね。だとすると、この土地の歴史を、全部見てきたんですよねぇ。石の建築よりも、生きている樹木により歴史を感じます。だって、生き証人ですもんね。
いやはや、ここは本当に素敵な場所です。
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2012/03/31(土) 06:21:45 |
ピエモンテ・ロマネスク
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あんまりお天気がよいので、先週末、田舎をぶらぶらしてきました。勿論、目的はロマネスクなんですけれど、それにしても新緑、そして花が美しくて、春を味わうには、実によいタイミングだったと思います。
春の花は、やはり桜系です。こちらの桜系の花は、葉とともに咲くものも多いのですが、日本人的感覚からは、やはり緑のない愛想のない樹木に、花だけがびっしり、というのが好ましいですよね。
でも、これが果たして何の花なのかが、実は全然分からない。南ではこの時期アーモンドが花盛りで、そのアーモンドの花というのが、ちょっと桜系である、ということを最近知ったんですけれども、北でアーモンドはないと思うしな~。
でもやっぱり桜系ですよね。白と淡いピンクと、紅白でおめでたい。
この白い花は、葉っぱつき。花が白だと、多少緑があっても清々しいです。
ドライブは、ピエモンテの南東、ロンバルディアの南端と境を接するあたりに出かけました。トルトーナという町の先に、クローナ谷という広々とした谷が広がっていて、その間を駆け抜けて、ロマネスクを楽しんだのですが、低い丘の斜面のあちこちに、濃いピンクの絨毯を見ることができました。おそらく桃だと思うのですけれど、もううっとりするようなピンク。それも新緑の間にありますから、形容しがたい美しさなんですよ。
残念ながら対抗二車線の細い道が続くので、路肩に停まって写真を撮るのも難しく、なるべくゆっくりと走りながら、横目でちらちらと丘の斜面を眺めて我慢。 ほとんどすれ違う車にも出会わなかった本当の田舎道で、あんまり桃(らしい花)が美しかったので、路肩に寄せて、すばやく写真を撮ってみました。
そういうときに限って、それまで誰にも会わないのに、対向車!私の車の停め方がいい加減で、すれ違えないので、あわてて戻ったら、「クローネ谷はどっちでしょう?」と、どう見ても地元の田舎のオヤジ風の、その対向車運転手に聞かれてびっくり。
私はまさにその谷に向かっているけれど、反対ですよ、と言ったものの、どう見ても外人で土地の人じゃない私の言葉を聞いたのか聞く気にならなかったのか、トラックが近付いてきたので、彼もあわてて発進していきました。あっちじゃないのにな~、と思ったけれど、仕方ありません。
もっともっと美しい景色がたくさんあったのに、紹介できなくて残念。
予想外の観梅ならぬ観桃ツアーとなりました。
このドライブで出会ったかわいらしいロマネスクは、次回紹介します。お楽しみに。
2012/03/30(金) 04:54:40 |
ミラノ徒然
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ベサーナ・ブリアンツァの郊外、ブルゴラにあるサン・ピエトロ・エ・サン・パオロ教会Chiesa di SS Pietro e Paolo in Brugolaも、昔ぶらりと訪ねたことがあります。当時は、ロマネスク的に唯一重要なファサードにある扉周りが修復中でしたが、今回、すっかりと修復完了した姿を、拝むことができました。 11世紀、ベネディクト派の尼僧院が起源で、今も教会の右側と後ろ側には、当時の修道院の建物を基礎に使っているらしい老人ホームが見られます。
教会の建物は、ほとんど新しくなっています。鐘楼の一部は古いようなのですが、建物に囲まれてしまって、全体が見える場所が見当たりませんでした。
さて、扉周りの装飾。
右側柱の柱頭装飾。外側の四角には、本を持ったライオンと鷲っぽいので、福音書家のシンボルらしいですね。内側のひげの顔のフィギュアが不思議。目と口に赤い塗料が差されているのも、とっても不思議です。もともと色が塗られていたということ?おかしいですよね。
左側も対照的なモチーフになっていて、外側の四角はマッテオとルカなんでしょうか。内側の柱頭には、やっぱりひげの顔があって、口が赤い。なぜでしょうねぇ。
アーキヴォルトは、全体に磨耗が激しいのですが、でもブロックごとに浮き彫りが施されています。中央には、神の子羊ですかねえ。ちょっとよろよろと情けない感じもしますが。そのお隣には、やはりひげの顔。もしかしてケルト系?
確かここも、ロンバルディア・ロマネスクの本に取り上げられていたと思うので、読むとちょっとは歴史などが分かるかもしれません。
それにしても、これだけ全体の姿が変わってしまったのに、よく、この扉周りがのこったものだと感心します。
前回訪ねたときは、全体を捉えるほどの技量がなくて、修復工事の幕の隙間から、これらの浮き彫りフィギュアを覗き見て、満足していたのですが、最近はもうちょっと貪欲なので、お隣の老人ホームになっている修道院ものぞいてみました。
入り口は鉄扉で閉ざされていて受付になっていたので、写真を撮りたいのですが、と頼んだところ、にべもなく断られてしまいました。うーん。障碍のある方向けの老人ホームだし、プライバシー的に問題があるのかな、とも思いますが、中庭は別に人が出ている様子もないのにな~。って言うか、そこにいる人には、まったく興味がないんだけども~。ま、仕方ないですね。
この後、もう少しだけあちこち回る予定にしていたのですが、アリアーテからここに来るまで、迷いに迷って、どっと疲れが出てしまったので、今回はこれで引き上げることにしました。 このあたりは、丘と谷の連なる土地なので、結構高低差があるのですが、もしかしてわたしの使っている安物カーナビは、高低差が分からない?!という致命的な欠陥があるようなんですよ。というのも、指示に従って、こんな細道、ほんとかよ?と疑心暗鬼になりながら谷に下りていったら、いきなり「左に曲がれ」って、え?ここ川ですけど?橋、ありませんけど?それも、最近なくなったとかそういう形跡もなく、もともと絶対に橋はなかったはず、という地形。 で、上を見上げると、立派な橋が。これって、もしかしてあの橋を目指してたけど、高低差が読めないからこういうことになった? 実際、私が迷い込んだ道は、何もないところなのに、なぜか車が何台もやってきては、道がないので後戻る、という状態で、変な渋滞が生まれていたんですよね。ということは、多くの安物カーナビが同じ欠陥を持っているのかも…。
というわけで、途中からカーナビが信用できなくなり、道端の表示を追っかけて、やっと教会にたどり着きました。いざとなると、やはり人の感覚が一番なんですね。それにしても、昔の私は偉かったな~。
2012/03/27(火) 05:02:24 |
ロンバルディア・ロマネスク
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犬には襲われるし、どうもぱっとしない教会が続いたので、今回はパス、と思っていたアリアーテAgliate、寄り道しました。サンティ・ピエトロ・エ・パオロ教会Ss.Pietro e Paolo。
おお、懐かしいお姿!相変わらず楚々として美しいたたずまいです。
ここは、ロマネスクめぐりを始めた、かなり最初の頃に訪ねた思い出深い場所。ブリアンツァの山道を、ああでもないこうでもない、と迷い、もうたどり着くことはできないのじゃないか、と思い出した頃に、ふっと、着いたのでした。
それにしても、混んでいます。
町の入り口にある駐車場も満員でびっくり。ちょうど、日曜日のミサで、アリアーテは勿論、おそらく近郊の町村からも人々がやってきているようでした。
ちょうど震災から一年の日だったこともあり、わたしも珍しくミサに預かったのですが、超満員の素晴らしいミサでした。
オルガンなどはないので、ギター伴奏で、若者中心の男女混声合唱団が賛美歌を歌っていたのですが、賛美歌も新しくなっているんですね?なんかポップス風の楽曲が多くて、ちょっとびっくりしました。
アーチが低い部分まで下がっていて、様々なタイプの柱が使われています。おそらくローマ時代のものの再利用品も多いのではないでしょうか。
当時、まだ現地訪問の数も少なくて、どこを見たらいいのか分からない状態でした。拙サイト(ロマネスクのおと)に、多数の写真をアップしていますが、コメントもともに、いかにも素人くさい!過去ページは、いつか全面的に書き直したいものだと思います。いつか…。
両脇の後陣と身廊を分割する柵代わりの低い壁に見られる、大好きなロンゴバルド時代の浅浮き彫り。内部は小さな礼拝堂の体裁になっているのですが、祭壇の上にも、浅浮き彫りの施された十字架が置かれていました。
目に付きやすいフレスコ画などは、ちゃんと見ていますけれど、こういう部分は、当時はよく見逃していたようです。
クリプタがあるために一段高くなっている主祭壇の前にも、同じような浅浮き彫りの壁がありました。いやはや、昔訪ねた場所は、あらためて再訪しないとだめだなぁ、と思いました。
本堂の柱頭は、ほとんど装飾を失ってしまっていますが、小さなクリプタには、いくつか美しく修復された柱頭が見られます。
こじんまりとしたクリプタですが、本堂側にあけられた窓と、後陣側にあけられた外向きの窓から、ほんのりと光が入ってくるので、薄暗いとは言っても自然光で全体を見ることができます。
外に出ます。教会正面の右手には芝生が広がり、とても気持ちのよいスペースです。ここに、洗礼堂があります。
全体が実にバランスよく、うっとりする眺め。洗礼堂も、教会の後陣も、軒送り部分に、穴ぼこ装飾。チヴァーテとかもそうだったような気がしますが、時々見られますね。アーチの形状が、微妙に同じじゃないのが、愛らしいです。
2012/03/26(月) 04:52:58 |
ロンバルディア・ロマネスク
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これはもうあまりにびっくりしたので、書かずにおれない、というお話です。
日々の生活で、食料品はスーパーマーケットで買うわけですが、日本と同様、イタリアでも、スーパーごとに会員カードみたいのがあって、ポイントがたまると、現金還付とかプレゼント提供とかいろいろあるんです。私がお気に入りのスーパーは、北部イタリアで大規模に展開するエッセルンガで、そこのポイント・プレゼントが結構好きなんです。 というのも、なかなかステイタスの高いブランドの商品があるからなんですよね。わざわざ自分のお金では買わないけれど、プレゼントとしてもらえるなら嬉しい、というようなラインのものが多くて。 で、これまでも、おなべとかパン焼き器とか、家電中心にポイントでゲットしてきたんですが、今回ワイン・オープナーを選んでみました。 これが、すごい! で、あらためてブランドを確認したら、ル・クルーゼって、結構有名ブランド!
まずは、コルクを開ける前のフォイルカッター、これですでに感動!
このカバー部分を取り除くのって結構面倒な作業なんですが、この小さなカッターを載せてくりくりっと回すだけで、見事にきれいに余計なフォイルが取れるんです。
この四つの輪が、歯になっているんでしょうね。本当に力も要らずにするすると。
で、おもむろに、オープナーを装着。ワインの口をしっかりと握ります。
で、右側のレバーを左側まで戻すと、コルクにオープナーのぐるぐるした部分がすっと、ほとんど何の抵抗も感じさせないまま刺さり、
同じレバーを、元のように戻すと、またもや、何の抵抗もないままにコルクがすっと抜けてきます。
あんまりすごいんで、思わずネットで検索して、ル・クルーゼって、結構なブランドなんだと知りました。このワイン・オープナーの命は、やはりコルクに突き刺さる部分らしいのですが、2000回が目安で、それを越えたら、交換するように、ということでした。え?たったの2000回?と、実は一瞬思ったのですが、毎週2,3本開けるとして、一年で、せいぜい100本超。あらまぁ、そりゃ一生もんかも。保証も十年ついてるしね。
ネットの情報によれば、早開け、というジャンルでは突出しているらしいです。 確かにね、ソムリエ・ナイフを使うようなかっこよさはないかもだけれど、最低の労力で最速であけられるって言うのは、すごい。本当に最低の労力ですからね、びっくりするくらい。 いやはや、久しぶりに、職人技というか、道具にすごさに感心しました。
2012/03/24(土) 06:49:31 |
ミラノ徒然
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第二弾は、カルーゴCarugo、というよりも、その町外れの山の中にあるサン・マルティーノ教会Chiesa di San Martinoを目指しました。 ここ、すごかったです。
カルーゴの町は、街道沿いにちょっと広がっているような中心も何もない町で、どこに何があるのか皆目分からず、しばらく同じ道をぐるぐる。 で、大きな教会の姿が見えたので、新しそうだけど、もしかしたら中に何かあるのかと思い、車を停めました。 でも、まったく違う教会だし、サン・マルティーノの情報も見当たりません。 日曜の午前中、ほとんど人も歩いていない中、ちょっと離れた駐車場で、車に乗ろうとしているおじさんを発見したので、あわてて駆け寄って、尋ねてみました。 が、「僕地元じゃないからなぁ、これがそうじゃないなら、他には教会って思いつかないなぁ」、と首をひねりながら、ちょうど、前の道に停車した他のおじさんに、いきなり尋ねてくれました。ちょっとこわもての人だったのに、なんだかとっても親切。 今度の人は、地元の人で、「それは、こういってこういった場所の山の中だよ」、と教えてくれたのですが、私にはさっぱり。最初のおじさんが、「それなら僕の帰る道の途中だから、車で着いてくるなら途中まで先導するよ」、と言ってくれたので、あわてて車に乗ってきて、おじさんの先導についていったのでした。
どんどん町を外れて、立ちんぼの女性を二人くらい見かけた幹線道路の先に、ちょっとした山道が延びています。
手前の道は、とりあえず、その先住人以外進入禁止の私道。おじさんは、僕はこっちだけど、教会はこっちらしいよ、と言い残して去っていきました。
砂利の山道だし、どうしようかと迷ったものの、立ちんぼの人がいるような場所だから、歩いて登るのは憚られ、坂道発進のできない欠点を忘れないように、いけるところまでは行ってみよう、と山道を登り始めました。ジグザクを3回くらい折り返したところに、看板。
何でこんなに無理するかというと、この看板にあるように、ここには、11世紀のフレスコ画が残されているらしいんですよ。
看板の先の路肩に車を停めて、この看板まで戻って、階段を上ります。
え?ただの家?
こんな。右側の白い方が教会。
長年の間に、なんだかいろいろと使われまわされて、建物もこんなになっちゃったみたいです。フレスコ画は、サン・マルティーノの生涯とか創世記とかいろいろ、完全な姿ではないにしろ、のこっているらしい。
本(Jacaのロンバルディア・ロマネスク)の写真によれば、こんな感じ。
左側に開口部がちらりと見えますけれど、これも、フレスコ画が描かれている真ん中に、どっかりと開けられちゃって、絵がなくなってしまったということらしいんですよ。まったくもう、とんでもないことですね。
それにしても、建物はこんなだし、窓は開けられちゃうし、という逆境にもめげず、いくら修復したといっても、これだけの絵が残っているというのは、奇跡…。
だから、見たかったんですよねぇ。
この教会は、今は、裏側に農家?林業?をやっているらしい家と一体化しています。どう考えても、その家が鍵を預かっているだろうと思うじゃないですか。 しかし!教会に近付いた途端に、犬の激しいほえ声…。犬はもともと苦手な上に、チュニジアで襲われて以来、トラウマ。びくびくしましたが、一頭は鉄柵の中で姿も見えない、もう一頭は、高い場所にいて、柵はないけれど、そこから出てくる様子はない、で、ちょっと安心して、家の入り口の方に回ってみました。 中庭を取り囲んで建物があるというかつての農家のようなつくりの家で、奥の方で、炭焼きでもしているような煙、そして騒音が聞こえますので人はいそうです。中庭への入り口は、閉ざされてもいないので、ちょっと足を踏み入れたら、さっき高台からほえていた犬が、さらに激しくほえながら、闖入者、つまりわたし目指してまっしぐらに駆けてきました。 ひえ~、思わず門を後退しましたが、よく教育されているのか、庭からは一歩も出ないで、そこで吼えています。 テレビで、時々犬の教育番組を見るんですが、その影響か、これは犬が怖がっているんだな、と分かったので、戻って、境界線のあたりにしばらくたたずんでいたら、予想通り、そのうち静かになり、そこで横になってくつろぎだしました。 よし!と踏み込んだら、しかし、また飛び起きて、攻撃的に駆け寄ってきたので、転びそうになりながら後ずさりして、逃げざるを得ませんでした…。調教師のようには行かないよね、当然ながら。
しかし、これだけ犬が騒いでいても、誰も出てこないとは、いったいどういうこと?!確かに番犬としては優秀だけど、犬も報われなくて、かわいそうじゃん! いや、それにしても、久しぶりに怖かった。 そして、ここまでがんばったのに、最終的に鍵ももらえず、本当にがっかりでした。本にまで取り上げられているような教会なんだし、看板もしっかりしているのに、鍵のありかすら書いてないって、カルーゴ、ひどい。疲れました。
2012/03/22(木) 06:07:32 |
ロンバルディア・ロマネスク
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ミラノ北部に広がる、ブリアンツァ。ミラノとコモ湖の間、丘と谷の連続する起伏の激しい土地で、場所によってはかなりの山中という印象も受けるような土地です。 谷を縫って道があるので、やたらとくねくねしていて、方向音痴の私にとってはかなり厳しい土地。 とはいえ、この地域には、実にマイナーで知る人ぞ知る、というよりも、ほとんど誰も知らないようなロマネスクが点在しています。制覇するには、結構時間がかかりそうです。
今回第一弾は、マリアーノ・コメンセMariano Comense。 こんな町、初めて知りました。 カーナビのおかげで、旧市街の入り口まですいすいとたどり着き、びっくりするくらいに首尾よく路肩に駐車もできました。 日曜日の朝だというのに、やたらと人が歩いていますので、教会の場所を尋ねて、そちらに向かいます。 こっちからでもあっちからでも、同じ場所に出るよ、と言われたので、人の少ないこっち側を行くことにしました。
細い小路に面した住居は、どれもこぎれいに壁塗りなどしていてさほど古い印象はないのですが、この、大きくカーブする道は怪しい!過去に運河とかお堀とかがあったのではないかな~、と思われます。おそらく、町の起源は古くて、城壁に囲まれていた時代があったのではないでしょうか。
そう思って歩くと、こういう道は楽しいものです。あっという間に終わってしまいましたけれど。
たどり着いたのは、町の中心地。
どっかーん、と堂々と新しい教会が建っています。
すごい人出の向かう先は、この教会だったんです。ちょうど、あとしばらくでミサが始まるというタイミングだったのでしょう。とにかくびっくりするくらいにたくさんの人が、次々と足早に集まってくるのでした。
私の目的は、勿論こんなバロック様式の建物ではありません。洗礼堂があるはずなんですよ。手前にあるあれ?と近寄ってみたら、確かにそうらしい。 洗礼者サン・ジョバンニの洗礼堂。Battistero di San Giovanni Battista
でも上部は完全に再建で、古そうなのは、下の部分だけ。大きな石積みで、軒送りのアーチと付け柱がとってもよい感じです。でもこの部分すら、修復の後がかなり激しいですね。
多くの部分に漆喰が使われています。おそらく相当傷んでいたものを修復したのですね。何もそこまで、という感も抱きますが、なぜそこまでしたかといえば、この洗礼堂、起源は11世紀と古く、内部には建設と同時代の古い柱頭等が残されているそうなんですよ。その重要性のために、修復がされたのだと思うのですが、その割には説明版なども一切なく、写真をとりまくる私を、町の人々は不思議な顔をしてみていました。ほとんどの人が、そういうことは知らないんでしょうねぇ。
残念ながら、扉はクローズ。 ミサが始まりそうな時間では、教会の人にも頼めませんし、あっさりあきらめ、潔く引き上げました。 教会は思いっきり現役だし、お隣だし、いつかミサのない時間に行ってみようと思います。雰囲気としては、教会で簡単に鍵をもらえそうな気がするんですよ。 ところで今回、扉はかなり新しくて、そうなると、無用心な大きな鍵穴なんかもなくて、得意の鍵穴撮影もできませんでした。残念!
2012/03/20(火) 05:33:38 |
ロンバルディア・ロマネスク
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最近、展覧会めぐり、思いっきりサボっています。これって、行きだすと、資料も集まるし、そうするとあれもこれも見たいなって感じで弾みがついて、次々と行かないといけない気持ちになるのですが、行かなければ行かないで、まったく情報がなくなって、行かなくても全然平静、という風になるもんで。で、ずっと、そういう後者の気持ちでいたんですが、久しぶりに行ってきました。 クリムト展。
メトロの駅なんかにも大々的にポスターが貼ってあったりして、それにやっぱりクリムトだしね、無視はできない感じだったんですよね。クリムト、好きなんです。ウィーン派ということであれば、エゴン・シーレの方がもっと好きなんですけれど、クリムトはやっぱり。
というわけで、期待はせずに行ってきました。
ま、ありがちですけれど、期待なしだから、特にネガティブ・インパクトも普通で。
って言うのも、大々的に宣伝しているポスターは、このトップにおいたベートーベン・フリーズで、あたかもそれがあるようなイメージを作っていたんですけれど、これって本来建物の壁にくっついているもんだから、当然、展覧会だからってはがしてもってこられるわけがなく、展覧会は、このベートーベン・フリーズにかかわるデッサンが中心のものだったのです。
このフリーズの、おそらく原寸大の複製が置かれていて、それはなかなか迫力があったことは否めませんが、複製は複製ですからね。一応、昔、本物見ている身としては、それはいらんだろう、と思ってしまったわけですね。 それに、私はデッサンが大好き。だから、こんな複製を置く代わりに、もっと大量のデッサンを見たかった。
数少ないデッサンを見た限りでは、好みから言えば、やはりクリムトは油の人で、デッサンの魅力はあまりない。
うまいですよ。すっごく。でもエゴン・シーレが好きだと、多分彼のデッサンのシビアさというのがあって、それに比べると、クリムトは完成した油絵のすばらしさの方がやはりクリムトらしくて。
ただ、何がすごいって、鉛筆なのにこの表情。顔の捉え方が本当にすごい。
身体の部分は、意外と普通な感じっていうか、ふーん、ってな程度なのですけれど、表情、個的ににじみ出る何かが、圧倒的にすごい。肉、ではなくて、人格、的な。
ということで、フリーズの複製よりも、その同じスペースに並べることのできたであろう数十枚のデッサンを、私としては見たかったです。 なんかね、デッサン、というと、客が集まらない的な、そういうケースが多いのですが、デッサンって、とても画家の素の部分に迫れる面白いものだし、一般大衆は、そんなに完成品だけが見たいわけでもなく、ということが、意外とキュレーターの人は分かってないのではないか?とちょっと思ったです。
Gustav Klimt - disegni, intorno al fregio di Beethoven
Spazio Oberdan, Milano
until 06 May 2012
2012/03/19(月) 06:18:15 |
アートの旅
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庭ったって、勿論、例の猫額ベランダですけどもね、でもそんな庭にもちゃーんと春は来るんですよねぇ。
残念ながら、厳しい冬の間に枯れちゃった鉢なんかもあるんで、先日いつも利用している近所のメルカート行ってきました。とってもフレンドリーな兄ちゃんがいるし、お値段もとっても良心的なので、なるべくそこで買うようにしているんですが、まったく違う兄ちゃんでした。がっかりですが、花には関係ありません。
大好きなジェルソミーナ=ジャスミン。
買ってから1週間以上たつのですが、つぼみがすごい勢いで増えて、花もちらほらと咲き始めました。ジャスミンの匂い、大好き。以前に育てていた子は、ずいぶんと長くがんばってくれましたので、この子も、長生きしてくれるといいなぁ。
そして、多肉のニューフェース。
多肉も、冬の寒さに、やられてしまって、二つ枯れてしまいました。多肉って、内部に水分を多く持っている分、冷えると、全体が凍ってしまって、その解凍がうまく行かないので、だめになってしまうのですよね。凍る前に家に取り込めばよかったんですけどね~、ごめんなさい。
もひとつ。
ちょっと土に埋もれてしまいました。この子は、以前も飼ったことがあるかもしれないなぁ。多肉って、たまにとんでもなく育つことがあるけれど、ほとんどはその前にお亡くなりになることばかり。今春ニューフェースには、是非がんばって生きてほしいですね。たとえば、この子を見習って。
にら。このたび、久しぶりに種を里子にもらってくれる人が現れたので、あらためて育て方などをネット検索したんですけどね、それにしてもにらってすごいよ。機会があったら、是非、万人に家庭菜園で育ててほしい野菜のひとつかも。だって、今冬も激しい寒さ、雪に見舞われて、零下10度とかの寒さですよ!一度思いっきり全部枯れたというのに、春とともに、この新緑!にらって素晴らしい!種をお分けした方の畑にも、無事根付くとよいのですが。
春の庭で一番嬉しいのは、この子たちかも!
秋に植えた球根、芽が出てきました!
確か水仙?情けないことに、何を植えたか忘れている…。というのも、買ってからいい加減たって、そろそろ植えないとだめになる!というぎりぎりのときに、あわてて土を買って、とりあえず埋める、みたいな対応をしたもんで…。
去年は、アマリリスの球根を、地中深くに植えすぎて、二つくらいしか出てこなかったので、今回は、適当な深さにしたつもりですが、でも、半分くらいしか芽が出てきていないですね。
それでも、楽しみは変わらず。花までたどり着くといいなぁ。
2012/03/18(日) 06:34:05 |
植物、花
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先日訪ねたロッビオは、一応ロンバルディア州なんですが、ほとんどピエモンテとの州境で、行くにも帰るにも、ピエモンテとの州境と行ったり来たり、という土地でした。というわけで、ミラノへの帰り道に、これまで取りこぼしているピエモンテの超マイナー・ロマネスクを訪ねてみました。
まずは、ヴェスポラーテにある、洗礼者ヨハネ教会(Vespolate Chiesa di San Giovanni Battista)。
こうしてみれば、あれ、ちょっといい感じって思われるかもしれませんが、もうそれはそれは修復されまくりで、ロマネスク当時の香りなんて、一切ないですね~、ここ。
多分、これだと思うんですけれど、実は、教会の名前すら掲げられていないので、100%自信はないんですけども、でも、場所的には、これしかあるまい、という場所にありますので、多分これ。
内部には、一応中世以降のフレスコ画が残されているらしいのですが、外観は、ほとんど100%中世以降のもの。コンクリートで再現されたロマネスク様式なんて、こんな哀しい姿はありませんよ。
中世およびそれ以降のフレスコ画が残されているということだったので、後代に空けられたらしいファサードの窓部分から覗いて、写真は撮ってみました。
完全にルネッサンスの作品ですが、もしかすると、それなりに名のある人の描いた、見栄えのいい作品かもしれません(ちょいとクリヴェッリ風)。縮小したこの写真では、ほとんど分かりませんけれどもね。
でももっと哀しい気持ちになったのが、教会の構造そのものが、もうほとんど中世の名残なく、ファサードなどもコンクリートの味気のない姿になっているにもかかわらず、「盗難防止の設備があります」という警告的ノーティスがあったこと。現役でもなくて、おそらく外観的には誰も評価もしておらず、教会であることは確かとはいえ、ミサが行われることもない教会で、過去の、もしかしたらそれなりの遺産かもしれないとはいえ、デイリーベースでは、おそらく、誰も評価していないフレスコ画のために、盗難防止アラーム。さびしいです。
次に、道なりに向かったのは、ソッツァーゴのサン・シルヴァーノ教会(Sozzago, chiesa di san silvano)。
これもびっくりしました。町の入り口にあったので、すぐに教会前に車を停めたのですが、どう見ても中世の雰囲気がないので、これは違う、と思って先に進んで、でも結局あそこらしい、と、あらためて引き返したのですけどね。
それにしても、もう全然何もなくて。
確かに事前に調べた範囲でも、「翼廊の一部だけが中世の名残をとどめている」とはあったのですが、でも、ここまで現代化しているとは、ちょっと想像していなかったので、にわかには信じられず。唯一好感がもてるとすれば、日曜日のミサに、人々が三々五々集まっていた事実でしょうか。
やはり同じ地域と思って向かった次は、チェラーノのサン・ピエトロ・アル・チミテロ(Cerano、Chiesa di San Pietro al Cimitero)。 チェラーノ?なんだか知っている気がするな~、と思いながら道を進み、途中から、かなり確実に、訪ねたことがある、あの場所だろうな、と思いながらたどり着きました。
アクセスの道は全然違ったので、最後まで、もしかしたら違うかも、とも思っていましたけれど、実際にたどり着いたら、やっぱり、あそこだろうと思っていた教会。昨年夏に、アメリカから友人が遊びに来た際に、田舎においしいご飯を食べに行こう!と出かけて、その帰りに、ちょっと寄ってみよう、とよった教会ですよ。
そのときですら、ああ、ここは修復激しいし、無理に来なくてもよかったわ、という場所だったのに、まさか再訪になるとはね。
ファサードに開けられた窓から中を覗いてみたら、中はレンガ造りで、ファサードの漆喰塗りこめ殻言えば、それなりにいい感じでした。そういえば、前回も閉ざされていたんです。それにしても、半年周期で戻ることになるなんて、なんだか。
ロッビオは、それなりに楽しいロマネスクめぐりだったのですが、ついでに周ったピエモンテは、これまででも最悪といえるくらいに、収穫の少ない旅となってしまいました。是非、近々リベンジしたいと思います。
2012/03/17(土) 07:44:46 |
ピエモンテ・ロマネスク
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