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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

チロルのロマネスク その2

まず最初に訪ねたのは、ナトゥルノNaturnoの、サン・プロコロ教会Chiesa di San Procoloです。



りんご畑の中の小さな教会。
畑の一角が区切られているのですが、本当に小さな建物なので、りんごに埋もれていて、まるで絵本に出てくるような、そんな風景です。

なんて、実はこれは一通り見学を終えたあとに、周囲を見渡して思ったことで、たどり着いたときは、午前中のオープン時間ぎりぎりだったので、あたふたと入場したのでした。
ちなみに、このあたりの教会は、もはや現役というよりは観光地化しており、ここも、しっかり入場料を徴収されます。

こんなに小さな教会が有名なのは、その中に、大変保存状態がよい上に、モチーフが面白い中世のフレスコ画を持っているからです。



開放された入り口からも、既によく見えます。これまであまりにも何度も、図版で目にしているので、新鮮さはないかも、でも…、とまるでブラインド・デートのようなそういう気持ちになりながら、入場!
わぁ…。



これですね~、ブランコ聖人!
これは、サン・プロコロがヴェローナを脱出する際の姿とされているようですが、なぜブランコなのか、逃げているのに、なぜ、そこはかとなく楽しそうなのかとか、まったく不明なんですね。してやったり、という風なイメージなんでしょうか。風になびいている前髪が、光背の前に描かれたりして、妙に細部にも凝っているのが楽しい。

こちらも見たかったもの。



動物たちも、とっても嬉しそうな笑顔なんですよね。深刻な雰囲気が一切なくて、なんだか不思議な世界が広がっています。
逃げていくサン・プロコロを脇から見ている人たちも、がんばれよ、みたいな暖かさに包まれています。



これらのフレスコ画は、あちこちに中世時代のフレスコ画の残るこのアルト・アディジェの中でも最も古いもので、8/9世紀にロンゴバルドの時代を引きずった画家によって描かれたものとされています。
上段には、ゴシック時代のフレスコ画があり、おそらく一部は、この古い部分に重ねて描かれていたのではないでしょうか。もしかしたら、それで、保存状態よく残ったのかもしれませんね。

後陣と本堂部分を結ぶ、いわゆる勝利のアーチ部分にも面白い画があります。



翼があるので、天使なんですけれど、変にもたもたした格好の悪い天使。全体にぐるぐるしている描き方が独特で面白いのです。何でも、コンパスを使って、円を基本に描いたらしいということです。
お、こうやって描くと面白いぞ、なんて発見して、思わず次々同じ手法で描いてみた、という感じもしますね。こんな画はどこでも見たことない。
それにしても、足がずいぶんと下の方にあったのですね。現場では、上半身ばかりに目が行っていて、足まで描かれていることに気付きませんでした。でかすぎ。それに、十頭身くらいある感じで、バランスが変だし…。それにしても、なるほど、全身コンパスぐるぐるですね。

アーチの内側には、やっぱりコンパス使用の絵。



グリーンマン状が、アーチに沿ってたくさん。
このアーチの絵は、サン・プロコロや動物たちのフレスコとは、色使いも、表情も、まったく異なるので、違う人の作品でしょうね。時代も結構違うのかもしれません。それにしても面白い画です。見ることに一生懸命になって、あまり写真を撮っていないのが、ちょっと残念です。

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  1. 2012/08/31(金) 04:43:58|
  2. チロル・ロマネスク
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チロルのロマネスク その1

ゆるゆると、チロルの旅の記録もアップしていくことにします。
三泊四日、ミラノから車の旅。とりあえず絶対に訪ねたい場所だけをピックアップして、プラス・アルファで山歩きもできればいいな、という全体にかなりいい加減な計画で出発しました。
まずは旅の概要です。



一日目。ミラノ出発のあと、一気にナトゥルノ。午前中のオープン時間ぎりぎりに滑り込みで到着して、プロコロ教会と、併設の地域博物館を見学。ナトゥルノの町でランチ。
その後、チロル城見学。風が強くて、寒いんだか暑いんだか、という陽気でした。



二日目。朝一番でアッピアーノ(エッパン)へ。といっても、結構のんびりしてしまい、到着時には既にお日様カンカン照り。車をかなり手前のミッシアーノという村に停めて、トレッキング。思わぬ急坂の連続にぜえぜえしながらアッピアーノ城へ到着。場内にある小さな礼拝堂サンタ・カテリーナのガイド・ツアー。
違う道を戻ることにして、山歩き継続で、まずは、ボイモント城。そこの野外レストランでランチ。そして、コルバ城(今は古城ホテル)を回って、出発点ミッシアーノ。
車をピックアップして、テルマーノへ。サン・ジャコモ教会見学。



三日目。ベノスタ谷をトゥーブレまで一気に走り、サン・ジョバンニ教会見学。その後、国境を越えて、スイスのミュスタイアへ行き、修道院および併設の博物館見学。
すぐにイタリアに戻り、ブルグジオ、サン・ニコロ教会見学。その後ランチ。
すぐそばのサンタ・マリア修道院のクリプタ見学にはちょっと早いので、いったん戻る形で、マッレスのサン・ベネデット教会見学。
見学時間に合わせて、サンタ・マリア修道院。17時半、ヴェスプリのミサのときだけ入ることができるクリプタで、ミサにあずかる。



四日目。ミラノへの帰り道に寄れる場所、ということで、プリッシアーノのサン・ジャコモ教会、そしてシルミアーノのサンタポロニア教会見学。車を手前の村はずれに停めて、また山歩き。



こういう緑の風景の連続。そしておいしいご飯の連続。よく歩き、でもその分しっかり食べて、おいしい森の空気をすって、とっても健康で、いつもの修行状態の旅とは違うものとなりました。たまには連れがいるのもよいものです。

詳細は次回以降、お楽しみに。

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  1. 2012/08/30(木) 04:49:02|
  2. チロル・ロマネスク
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ブルゴーニュ その35

ブリオネ25
ボワ・サント・マリーBois St.Marie、続きです。北側脇の扉から、中に入ります。



ブリオネを、追い立てられるように駆けずり回った一日の終わりに近く、いい加減疲労も激しかったけれど、ほぉおぉ、と、石の美しさにため息が出ました。
シンプルだけど、すべてが程よい雰囲気で、もちろん独り占めで、わざわざ来てみてよかったなぁ~、としみじみとしてしまいました。

おなじみの周回廊、三連の円柱に囲まれていて、円柱が是が低くて、ずんぐりむっくりしているのに、とっても美しい。



外に開いた後陣の窓、そこから差し込む光を、本堂に取り込む前にワンクッション和らげるような円柱の林立。円柱と円柱の間の空間と、外に開いた窓、すべての開口部が、なんともいえないバランスと感じられました。周回廊が、好きになってきました。

そして、もちろん、ここには興味深い柱頭がたくさんあります。



二股じゃない人魚。思いっきり「誘惑」なんでしょうかね。それにしても、やけにでかい手に、意味があるような気がします。まさに誘惑しているのかしら。



これは?猫科っぽいライオンでしょうか。角っこには人の顔。ライオン君は口から蔓が出ているので、グリーンマンの動物版。蔓が扇のように広がっているのが、装飾的で面白い。



思いっきり悩んじゃっている人たち。罰を受けている罪びとかな~。苦悩していますよ、足を思いっきりがにまた状にして座り込んで、厳しい姿勢です。



そしてこちらでは、鬼にミルクを飲ませてもらっているわけではなくて、巨大ペンチで下を抜かれているフィギュアですね。痛そう。右側の鬼が、頭をしっかりと押さえ込んでいるのがすごい。相当嘘をついちゃったんでしょうねぇ、この方。
こういう戒めてきな柱頭彫刻は、石工によって表現がとっても異なるので、聖書のエピソードを描いたものより、面白かったりします。

以上で、ブリオネの項、終了です。
それにしても、狭い地域にぎっしりとロマネスクの教会が立て込んでいて、事前にある程度は調べていたけれど、実際はそれ以上に立て込んでいたので、本当にびっくりしました。どれも、いい加減な建物じゃないし、柱頭にしろ、扉周りにしろ、それなりに装飾もあるんですからすごいもんです。
近くに、有力な町や教会があるわけじゃなく、唯一、巨大と言えるのは、パレ・ル・モニアルくらいでしょうか。この地域の歴史や芸術史を紐解いていけば、なぜこういうことになっているのかがわかるとは思いますけれど、こうやって実際に回ってみて思うのは、きっと、「隣町にあるみたいな教会がわしらもほしいよねぇ」的なそんな感じで、次々建っちゃったとか、実はそういう感じかもしれない…。
大局的な視点ではリヨンとパリを結ぶ線上にあるわけで、より広い地域を知っている人々が通過している場所であることは間違いなく、つまり、情報はたくさnん入ってくるということ。「渡りの石工」みたいな人たちもいたかもですねぇ。面白いです。
この夏に回ったシャランテも、同じような土地で、教会の事情も同じような感じなので、成り立ちが似ているのかもしれないと思っています。

そういうことも含めて、いつかまとめてみたいですが、さて、いつになるでしょうね。

次回はクリュニー地域に移動です。

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  1. 2012/08/29(水) 04:35:32|
  2. ブルゴーニュ・ロマネスク
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ブルゴーニュ その34

ブリオネ24
まだ続きます、ブルゴーニュのロマネスク。時々、イタリアのロマネスクも入れながら、継続していきたいと思います。
ブリオネ地域、最後に立ち寄ったのが、このボワ・サント・マリーBois St.Marieです(相変わらず発音がわからないので、間違っていたらごめんなさい)。もう打ち止めの時間も近く、基本的にはホテルに帰る時間だったのですが、もうひとつだけ、と欲張って訪ねた場所。でも、本当に欲張ってよかったです。ここは、最後に気合が入ったせいもあるのかもですが、同時に教会の印象も強くて、記憶もとっても鮮明です。



上って下りて、を幾たびか繰り返して、村にたどり着いたように思います。小さな村の、まさに中心に位置する教会。村全体が、中世当時の姿をそのまま保っているような、そういうたたずまいなんですよ。夕方で、結構忙しい時間帯、とも思われるような時間なのに、人がいなくて、なんだか、ありえない空間に入り込んでしまったような不思議な気持ちになりました。
教会全体が、上に持ち上げられたような状態になっています。



ファサードは地味です。入り口は、北側の扉でした。



後陣。こういうロマネスクの丸い後陣、このあたりでは残されているのが少ないので、ほっとします。やっぱりこれ、好きなんですね、わたし。丸い後陣、付け柱、盲アーチ。つまりロンバルディア風。
フランスの場合は、周回廊があるので、メインの後陣が、半円ではなくて、楕円形の細長いものになりますね。楕円形の後陣と言うのは、イタリアでは決してないので、妙に気になります。



後陣につけられた付け柱の柱頭。ふるふるおどおどしているような天使がいらっしゃいましたよ。



一方で、この方たちは何でしょうか。鎖で縛られているようです。これも後陣柱頭です。何か物語る装飾がたくさんあって、ちょっと無理したけど、ああ、来てよかったな、って心底思ってしまいました。

しばらく休んでいたせいか、どうも調子が悪いですね。本来のリズムを取り戻すまで、しばし我慢してくださいね。
続きます。

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  1. 2012/08/27(月) 04:59:21|
  2. ブルゴーニュ・ロマネスク
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夏休み、終了…。涙。

2週間の夏休みが、いよいよ終わります。月曜から仕事かと思うと、うんざり、というより信じられない気持ち…。
今回は、既に頭出しした7月のチロルに加えて、日本から来た姉のアテンドで日本人的なお休み1週間、そして、再びのフランス・ロマネスクめぐりのお休み1週間、とこれまでになく盛り沢山だったせいもあるのか、たったの2週間とは思えぬ充実振りというのか、非現実性というのか、まさにバカンス三昧。
長けりゃよい、というものでもないけれど、日常から完全に離れて、普段の生活を忘れる時間をとるのが、バカンスの王道と思います。バカンスのために一年働く、というと、ちょっと馬鹿みたいな感じもありますけれど、それでもやっぱり、そういう非日常をすごすために日々の生活がんばれるというのは、真実だったりすると思っています。

どっから始めるか迷うところ。チロル、ベネチア、ポワトー・シャランテ。
いやいや、まずは、夏休み前から残っているブルゴーニュ・ロマネスクの紹介を完了しないといけないですね。

今回のフランス、ポワトー・シャランテ地域では、前回のブルゴーニュよりはのんびり、ちゃんと朝昼晩とご飯もいただいたし、出発ものんびりだったけれど、それでも800キロほど走りましたし、写真も1600枚ほど撮影してしまいました。
写真の整理もかねて、ブログは、よい記憶の反芻の場所となります。
それにしても、フランスだけで1600枚。チロルとか、実はその間にもぶらぶらしている場所の紹介も考えると、夏の記録だけで、冬まで行っちゃいそうですねぇ。まぁ、気長にお付き合い願います。

ちなみに、多くの方にご心配をかけ、懸念していた腰痛ですが、休暇前に連日のお風呂や湿布でずいぶんと改善した上、もともとが冷えによる腰痛なので、ぎっくり腰と違って痛みが長引くこともなく、旅は問題なく終えられました。今回は、総走行距離800キロのドライブといっても、最も長い連続ドライブは、帰り道空港までの250キロだけで、あとはせいぜい100キロ超程度でしたので、それもラッキーでした。

ラッキーといえば、フランス北西部。湿度がないために朝晩は寒くて布団生活、という土地に滞在したのも、かなりラッキーだったと思います。なんせその前の数日、ミラノは猛暑で連日熱帯夜でしたからね~。フランスでも日中は暑かったですけれど、夜はふかふかの布団生活。いやはや。
ちなみに、ミラノは今夜も三十度超の熱帯夜です~。

では、あちこちの中世の風景、お楽しみに願います。

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  1. 2012/08/26(日) 05:23:49|
  2. ミラノ徒然
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徒然…、お休みのお知らせ。

最近、アップデートもないし、挨拶もなしに夏休みかよ!と思われていたかもしれませんが、実は腰痛に悩んでいました。
日曜日の夜の扇風機が原因と思うのですが、月曜日、軽い腰痛で、「昨夜飲みすぎたかな」くらいに思っていたら、火曜日になったらもうどうしようもない腰痛になっていて、水曜日は会社を休むしかない状態に…。
実はすごく若い頃に、いわゆる、ぎっくり腰、というのをやったことがありまして、腰痛は、毎日のおなじみではないとはいえ、それなりのお付き合いがあるんですよね。ある意味そのために、今回なぜ、腰痛?と悩み、ネット検索して、どうやら、扇風機とかクーラーの冷風が、腰痛を触発することがあるらしいということがわかったわけです。
そういえば、日曜日、昼間から飲んだくれて、夜帰宅したときには暑くて、普段より近い位置で扇風機を当てていたかもしれない、とか、そういえば、普段は割りときちんと寝巻きを着るのに、酔っ払っていたせいで、あの夜はきちんとしてなかったかもしれない、とか、いろいろ思い出すと、やっぱり原因は扇風機らしいということになりました。

この夏は、日本でも節電とかで結構扇風機の出番も多いようですが、そういうわけで、皆様、是非、気をつけてくださいね。

話を戻すと、というような理由で、ブログのアップどころじゃなかったんです。
本当は、がんばって、せめてブルゴーニュ・ロマネスクを完了したかったのですけれどねぇ。本当の夏休みが始まってしまうので、だめになってしまいました。

明日から、というか、今夜から本当の夏休み。
明日から1週間は日本から来る家族のアテンド、そのあとは、イースターに続いてフランス・ロマネスク三昧の予定です。
まず第一弾として、予期せぬ腰痛に見舞われて、どうなることやら、状態でしたが、実はこれ以外にもいろいろ…。ほんとにどうなっちゃうんだろう、の休暇ですが、ま、なんといっても休暇なので、楽しいことは間違いなし!
2週間ほど、お休みしますが、休暇明けをお楽しみに。

それにしても!
若干調子もいいし、と今夜はワインを解禁したのですが、腰痛はどこに?という滑らかさ。というか、アルコールって身体によかったんだ!とか思っています。多分これって、すごく間違っているはず…。

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  1. 2012/08/11(土) 05:17:09|
  2. ミラノ徒然
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ブルゴーニュ その33

ブリオネ23
長い一日も終わりつつある時間、行けるとは思っていなかった場所を回ることになりました。サン・ジェルマン・エン・ブリオネSt.Germain en Brionnaisの、サン・ジェルマン・エ・サン・ベノワ教会Eglise de St.Germain et St.Benoit。



ぜえぜえとたどり着いたように思いますが、本当に記憶が飛んでいます。情けないな~。メモも、「花がきれいだった」、なんて、ロマネスクに関係のないことばかりで。こんなに忘れるとは夢にも思ってなかったんでしょうねぇ。
確かに花はきれいだったんです。ほら。



装飾がすごく少ない教会ですが、注目すべきは、内部のすっきりと妥協のない石の存在感でしょうか。



こういうのを立て続けに見ていると、フランスのロマネスク教会の、内陣の構造のお約束というのが、わかってきますね。イタリアの教会とはやっぱり違う。
イタリアでは、それよりもずいぶん前の時代になくなった周回廊が、フランスではずっと生きているんですよね。あ、このあたりは、勉強しないとなんとも言えないのですが(なので、読み流してほしいところですが)、ローマの初期キリスト教の教会で見られる周回廊、イタリアのロマネスクで見られるところは、とても少ない。そういえば、その数少ない例の一つに違いないトスカーナのサンタンティモは、フランス、それもまさにブルゴーニュの影響を受けていませんでしたか?
どういうところで点と線がつながるんでしょうね。多分、たった一人の修道士のせいだったりもするのでしょうけれど、面白いですね。



地味ながら、柱頭装飾もありました。残念ながら、ほとんど撮影に失敗です。
これは、本当にシンプルですが、結構好きな表現です。



いろいろ忘れちゃったんですが、このステンドグラスを通した光の美しさは、よく覚えています。これは本当にきれいでした。ステンドグラスそのものがどういうんものだったかも覚えてないんですけれど、この、光の輝きは、しっかりと。
ステンドグラスが普及した理由が、実感としてわかりますよ、こういう情景に出会うと。こういうのが、現場主義のよさですね。多分。
っていうか、こんなに忘れるのは、今までにないことで、いかに許容範囲を超えて、見すぎていたかということで。次回フランスは、気をつけなくては!

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  1. 2012/08/05(日) 05:50:00|
  2. ブルゴーニュ・ロマネスク
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ブルゴーニュ その32

ブリオネ22
シャトーヌフChateauneufのサン・ポール教会Eglise St-Paul続きです。
注目すべきは、南側の扉アーキトレーブの地蔵さんたちですが、同じ扉装飾の、側柱の柱頭も、とってもかわいいのですよ。



アーキトレーブと同じ手で、何かストーリーが彫られているようですよ、左右とも。
変な動物とか、顔とか、なかなか幅広いレパートリーで、ここは本当に楽しい装飾。アーキトレーブの上、今ではのっぺらぼうの漆喰塗りになっているタンパンのリュネッタ部分にも、かつては確実にレリーフがあったのでしょうねぇ。いつどうやって失われたのか、もしかしたら勉強不足で、どこかに保存されているのか、いずれにしても、ここがのっぺらぼうというのは、とても残念なことです。

一方で、今では入り口としても使われていないファサードの方は、地味ですけれど、一応側柱柱頭に、若干の装飾が見られます。



上部の装飾的モチーフは、南入り口とも通じるものがあるようですが、人物フィギュアは、摩滅していても、明らかに違う手ですよね。なんか、南側の方が、残っているからというだけでなく、優れているようにも思えるのが不思議。正面ファサードなのに。

せっかく開いているので、入ってみます。



背が高いこと!
でも、石の感じといい、装飾の感じといい、いやな感じはなく、むしろ親しみも湧くような空気がありました。壮大な中にも、こういう好ましい浮き彫りがあるから、かな。



あんまり高いところにあるので、撮影はほとんど失敗しているのですが、植物モチーフが様々なヴァリエーションで彫り込まれているのが、面白かったです。



植物というと、多くの場合はアーカンサスのバリエーションなんですけれど、これなんて、何でしょうね。ぎざぎざしているし、アーカンサスではないでしょ?
そういえば、植物モチーフのバリエーションも、全体的に、普段見慣れているイタリアよりはバリエーションが多様なのかもしれないですね。
いろんな意味で、やはり他を見ることで知ることがたくさんあるし、フランス、行ったことは、大変勉強になります。

そうそう、車に乗り込むときに、後陣軒送りに注目。なんと、「塗り壁」発見!


軒送りの装飾浮き彫りは、全体にゴシック風でしたけどね、この仮面塗り壁は、素通りできませんですよ。


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  1. 2012/08/04(土) 06:12:01|
  2. ブルゴーニュ・ロマネスク
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ブルゴーニュ その31

ブリオネ21
次は、シャトーヌフChateauneufのサン・ポール教会Eglise St-Paul。多くの方が行かれている、ブリオネの中ではかなりメジャー教会ですが、とっても小さな村なんですね。
昨日も書いたように、時間に追い立てられるようにばたばた回っていたために、どうも多くの場所の記憶があやふやになっているのですが、ここの記憶は、すごくよく残っています。
というのも、村は丘の斜面に張り付いているような状態で、教会はその端っこ、グイン!と、すごい勢いで坂道を登った場所にあるんです。村に入ったとたんに、まぁこのあたりは傾向としてどこでもそうなんですが、全体に上り坂。表示もあったことだし、この細道を登ればいいんだろうという道がすぐにわかったのですが、あまりに急だし、あまりに狭い道だし、躊躇して、ちょうど道端の家から出てきた人に尋ねてみたのです。そしたら思ったとおりで「ここ登ったらすぐだよ。車で行けるよ」。
普通なら、なるべく坂道を避けて駐車する場所を探して、のんびりと歩いていくのですが、不運にも、駐車する場所など見当たらない狭い道なので、思い切って、ぐぐぐ、と登ったのでした。
対向車が来なかったのは、本当に幸いでした。というのも、訪ねた時間のせいもあるのか、三々五々と観光客が来ていたからです。
さて。いかにも高台にある、というファサードのたたずまい。



車は、後陣側に停めることができました。半円の後陣に、ゴシックのテイストが加わって、とてもフランスっぽい建築、のように思います。



15世紀後半に大きく手が入ったのが、近代の修復で、中世の姿が取り戻されたということらしいです。

この教会を訪ねた目的は、南側にある小さな門のアーキトレーブ装飾を見るためです。これ。遠目には、いかにも地味ですよね~。



でもこれが、本当にかわいらしくて。十二使徒が横並びになっているのですけれど、その変に秩序だっていて律儀な表現が、なんとも愛らしくないですか。一人ずつが区切られている様子もいいし、人物表現がちょっと道祖神っぽいんですよ。



でも、やっぱりすごく計算して彫っているんだろうな、とは写真を見ると思います。





一人ひとり、ちゃんと顔も違えば、ポーズも違う。鍵を抱えているピエトロは、どこでもかわいいですね~。っていうか、いつまでたってもピエトロとパオロくらいしかわからない私も、問題です。
手の表現なんかも細かい。みんなちゃんと五本指まで彫りこまれています。洋服のひだも細かいし、すそが横に一直線、みんな同じ長さに合わせてあります。12人もフィギュアを彫りこむとごちゃごちゃしがちですが、このアーキトレーブは、全体がすっきりで、シンプルで、その分印象的だったりする気がします。
やはり、多くの人が訪ねる有名スポットは、見るべきものがあるんだな、と改めて思うのでしたよ。坂道にめげないでよかった。
続きます。

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  1. 2012/08/03(金) 05:24:10|
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ブルゴーニュ その30

ブリオネ20
次に訪ねたのは、フレウリー・ラ・モンターニュFleury-La-Montagneの聖バーテルミュ教会Eglise St.Barthelemyです。
このあたりは、本当に急ぎすぎた気がします。といっても、非常に近い距離に次々と並んでいるので、気持ちがハイになってしまって止まることができない、という状況だったので、仕方ないんですけれどね。同じ場所に、二回、三回と訪ねれば、おそらく、いつかは余裕のある旅もできるのかな、と思いますけれど、それまでは、結局こういうばたばた、あわあわになるのでしょう。

さて、ここは、残念ながらクローズだったのですが、重要なのは、西側ファサードの扉上タンパンですので、問題なし。
ファサード。地味です。



後陣側は、若干味が残っていますけれど、塔が新しく、シンデレラ城みたいで、ちょっとだめです。



件のタンパン。残念なことに、かなり傷んでいるんです。このブリオネに多いマテリアルですね。黄色で、ここはピンク部分がありませんが、おそらく同じタイプの石なのでしょうね。



上段には、アーモンドの中の玉座に座った、祝福するキリスト。両脇にいる二人は、翼が見えないので、天使ではなさそうです。アーモンドの縁取りや、タンパン上部のアーチが、シンプルながら粒粒で装飾されていますし、フィギュアそれぞれの洋服の表現も、よく見ると、かなり細かいのですね。傷んでいるのが残念。
拡大するとこんなです。



他で見たタンパンと比べると、表現力的には少々劣っているというのかヘタウマ系というのか、手がかなり違うようです。
下部は、マギの祝福。



これを見ると、かなり装飾的な様子がわかります。フィギュアそれぞれのディテールに加えて、背景もずいぶんと考えて彫り込まれているようです。

側柱の柱頭も、ちょっと面白いんです。



右側は、変な怪物と戦っている人物フィギュア、でしょうか。一方左側は、チターを奏でるヤギとハープを操るロバ、となっています。音楽を奏でる動物というのは、8月に訪ねようとしているシャランテ・ポワトのどこかにあったように記憶していますが、イタリアでは見たことがないように思います。そういえば、この前に訪ねているボジBaugyでも、何かいました。



現地で、あまりにもばしゃばしゃと写真ばかり撮っていると、「はっ、写真だけじゃなくて、ちゃんと見なくては!撮りすぎだろう!」と思うことが多々あるのですが、こうして後から整理すると、何で、ここを撮らなかったのか、この角度だけなのか、と不満が噴出します。反省なんかしないでもっととりまくれよ、自分!と思います。
本当は、写真なんか撮るよりも、一箇所に時間をかけて、じっくりと本物を自分の目に焼き付ける方が印象が強いはずなんですけどね、そうはいっても、自分の乏しい記憶力を知っているので、やはり写真なんですよね。で、結局半端になる。あーあ。

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  1. 2012/08/02(木) 05:57:27|
  2. ブルゴーニュ・ロマネスク
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