フレジュスFrejus
カンヌに泊まった翌日、朝一番の列車で、フレジュスに出かけました。目的は、カテドラルです。
ノートル・ダムとサンテティエンヌ・カテドラルCathedrale de Notre-Dome et de St Etienne。
フレジュスは、南仏の幹線にあるし、比較的大きな町かと思っていたら、かなり小さな田舎町でした。鉄道駅の周りには何もなく、徒歩5分ほどでカテドラルのある小さな広場に到着。クリスマス時期だったので、大きなクリスマス・ツリーが立てられ、ちょっとしたクリスマス市らしい屋台がいくつか出ていました。早朝なのに、もうお店を開けているのには、ちょっとびっくり。
早速カテドラル見学、と思ったら、続々と信者が始まり、まさにミサが始まらんとしている時間で、とても中に入って見学できる状況ではありません。まずは本堂入り口と向かい合った場所にある洗礼堂を見学。
5世紀、初期キリスト教時代の建物で、現在の本堂よりはずいぶんと古いものとなります。
どこか他に入り口があるのかと思ったのですが、結局ガラス張りでの見学ができるだけで、中に入ることはできないようになっていました。相当きれいに修復しているし、境界に来る人々がしょっちゅう通り過ぎる場所で悪さもしにくいはずだし、公開してくれてもいいものではないかという気がしましたが…。柱頭の美しい様子が伺えるだけに、かなり残念な気持ちになりました。
というのも、実はガラスが相当汚れていて、余りよく見えなかったんです。写真の方がよほどよく見えているという状況です。
本堂前に、お金をせがむジプシー風のおばさんが座り込んでいてうるさいし、気を取り直して、回廊の方に回ります。
本堂前のスペース。右側が教会入り口、左側が洗礼堂のガラス、そして正面の階段を上ると回廊に出られるようになっていますが、この階段は閉鎖されています。この構造だと、本堂からも、階段を上がって回廊に出るようになっているはずで、ちょっと不思議。回廊は、教会と同時代の建設、とあるのですが。
現在の回廊入り口は、教会併設のブック・ショップから入るようになっていて、有料です(5ユーロくらい)。
お金を支払うと「これを持っていって」と渡されたのが、これ。
余りに唐突だったので、すごくびっくりしていたら、天井の方に、古い板絵があるけれど、自然光では見えにくい場所があるから、これでよく見てね、ということらしいのです。そもそも、今回の旅、時間がなくて事前の勉強がかなり甘いので、そういう板絵のことも全然調べていないのでした。
さて、入ります。
美しく繊細な回廊。時代は、ロマネスクとゴシックの過渡期、というところでしょうか。柱頭の装飾は画一的ですが、全体としての調和が素敵。
で、問題の、板絵ですが、これが、予想外に面白かったのです。
なんと、全部で1200枚もの絵があるんだそうです。宗教的なもの、それ以外、様々なモチーフがあります。これも、回廊と同時で、13世紀のものらしく、ロマネスクを引きずりつつゴシック、という感じです。
人と動物が混じったり、壷などのものと動物が混じっていたり、激しいハイブリットなものたちが、この何百年もの間、ずっと暗闇にひそんでいたんだ~、と思ったら楽しくて、強力ライトで照らして、いつまでも堪能してしまいました。
誰も来なかったので、すべての空間独り占めで、本当によい訪問となりました。
ブック・ショップを物色した後、本堂に戻り、一応教会内部も見学。
長期間にわたって、拡張で建設されているようで、右側がゴシック時代の建物、左に、ほんのわずかロマネスク時代の遺構が残ります。今は、右側の身廊の方を、本堂として使用しているようです。古い方の側は広々とした通路。確かに壁の一部が相当古いようでしたが、言われてみればそうだね、という程度で、見られなくても問題はなかったです。ただ、回廊に通じる場所を確認するべきだったな、と今更ちょっと後悔しています。
フレジュスはローマ起源の町で、旧市街のはずれに、大規模な発掘現場がありました。
掘れば、何か出てきてしまう土地なのでしょうねぇ。ローマ時代の町の復元図を見ると、もしかして今よりも立派だったのではないか、と思ってしまう規模で、びっくりです。
- 2013/02/08(金) 06:00:21|
- プロヴァンス・ロマネスク
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ベッド・カバーの後、ちくちく始めたソファ・カバーのパッチワーク。完成いたしました。
メモを見たら、最初が、なんとちょうど三年前の、2010年2月初頭。まったく、我ながら、気の長い話です。
ベッドは、新居に引っ越してから購入したソファ・ベッド。畳のないこちらの家では、お客様用ベッドは必需品ですが、客室がないため、ソファ・ベッドにせざるを得ません。
しかし、ソファ・ベッドって、座り心地は悪いし、見た目もダサいし、もちろん、お金に糸目をつけなければ、それなりに納得できる品もあるのでしょうが、お金に糸目をつけないでよい人は、おそらくソファ・ベッドなど使う必要のない、広い家を持っているわけで、だから、基本的にソファ・ベッドはダサい。
スペースとコストを考慮して、何とか自分なりに納得できたのが、この青い布のソファ。
横幅が、こちらで言うところのフランス風ベッド(1.5人用)、ちょっと短いサイズ。これも、狭い我が家では重要なポイントでした。
それにしても、ダサい。その上、ベッドになる構造のため、背もたれの後ろが棚のようになっていて、どうしてもほこりがたまりやすい。生地の感触は、好ましいタイプなのですが、夏など、どうしてもちくちくする。お尻の下になるクッションと背もたれの間にすきまができやすくて、クッションなどで隠さないと見られたもんじゃない。
等など、様々な理由があり、やはりここはカバーを、ということで、大好きなちくちく大物第二弾、となったわけです。
で、これ。
う、うるさいですよねぇ…。
前にも書いたと思いますが、私のパッチワークは基本に忠実。テクニックが、ではなくて、余り布や、古い布や、廃品回収的であるということが。これにも、古くなったシーツとかブラウスの生地、使っています。後は、時々なんとなく買っておいた生地を無理やり組み合わせて…。だから、どうしてもちょっとうるさくなりがち。
ベッド・カバーは、全体が白いベッド・ルームだったので、うるさくてもそれなりのアクセントになっていますけれど、居間は、色彩的にはさほど統一感がないので、やっぱりちょっとうるさい。
一応リバーシブルなんですけど、裏地も、どこかで安かったから買った生地で、なんというか、これはこれでうるさい…。
着物っぽい柄で、ちょっと面白い布なんですけどね。でもサイズが足りなかったので、はぎはぎで、それでも足りなくて、四隅に、表で使っている紫をちょっと。ああ、うるさい!
でもま、仕方ないです。作っちゃったしね。
もしかしたら、これはこれでしばらく使って、改めてちくちくをやって、新しいのが出来次第、もはや相当古くなってしまった寝室の床敷きに転用してもいいかもしれない。
床にパッチワーク?と思われそうですが、じゅうたんは重いし、洗濯も大変だし、薄いパッチワークの敷物は、結構便利なんです。台所の水場の前にも、そういうのを使っています。下に、ゴムみたいな滑り止めを敷けば、滑らないしね。
ということで、仕方ないので、とりあえず、かけてみました。
こうしようかな、と思ったり、こっちの方がいいかな、と置きなおしたり。
当面、これですかね。
クッションもうるさいんだな~。クッション・カバーを一色に統一したら、いいかもしれないですね。
自分が座ってしまえば、目に入る部分も少ないのでしょうが、実はこのソファ、座り心地が悪いし、ベッドにすれば快適ですが、ソファのままだと寝転がっても気持ちよくないので、普段は、物置棚に成り下がっています。多分、徐々に本やら地図やらいろいろなものが積み重なって、結局うるさいモチーフは早々に姿を消すかもしれません。意味ないな~。
でも、カバーがあると、ベッド・カバーとしても役に立つしね。
この次は、テーブルカバーと、ランチョン・マッドが、ちくちく発進を待っています。先日、イケアでとてもよい布を安く買えたので。
それにしても、何でこんなにちくちくが好きなんだろうなぁ。老後の指先訓練にはいいかもしれないけども~。
- 2013/02/06(水) 05:33:55|
- インテリア、小物
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ヴェンティミリア7
この、小さな旧市外には、実はもうひとつ、ロマネスクの遺構があります。あまりにも小さな旧市外なので、中世の教会が二つもあるなんて、びっくりですけれども。
サン・ミケーレ教会Chiesa di San Michele。
現在の旧市街の中心は、カテドラルの方にありますが、実は、古い時代には、現在では、旧市街のはずれになる、このサン・ミケーレが中心にあったようなんですよ。
これは、鉄道駅から川を渡る橋の上からの一枚。橋の正面に、斜面に張り付いた旧市街の家々、そしてそのトップにカテドラルの鐘楼が見える、右側です。要は、斜面の鳥羽口なので、もともとはこのあたりから、居住地が広がったということなのかもしれません。
この教会、残念ながら、訪ねたときにはクローズでした。7/8月は、午前と午後、開いているようですが、それ以外の季節は、日曜日の午前中、10時半から12時という非常に限定的な時間しかオープンしていないようです。古代ローマ時代の遺構の上に建てられた初期ロマネスクのクリプタがあるということで、かなり興味深いと思っていたので残念ですが、仕方ありません。
ファサードの扉装飾に、それでも、荷物を引きずってまで来てよかったと思わせる装飾がありました。側柱の柱頭装飾。
最初は、あんまりきれいなので、これは変でしょ、と思いました。確かに、このきれいな浮き彫りは再建のようで、右側の方にあるのがオリジナル。でも、モチーフの変な感じは、オリジナルに健在なんですよね。
手を上に上げた、子供のようなモチーフ。天使なのか、手を上げているのがペンテコステなのか。なんだか怪しいスタイルなんですよねぇ。
反対側も、やっぱりこんな感じ。
まぐさ石のところにも、これはオリジナルっぽいですが、やっぱりこういうの。
こ、これは、めちゃくちゃかわいい!
ファサード全般は、後代にきれいにされたもので、ほとんど面白くないのですが、この柱頭たち、よく残ってくれました、という感じです。これらを見ると、クリプタ、いつか訪ねてみたいと思います。
実際、ファサードはつるつるにお化粧直しされちゃいましたが、脇に回ると、中世の香りぷんぷんのまま、壁が残されている部分もあるので、ちょっと内部にも期待できるかも、と思わされます。
いつになるかはわからないけれど、是非再訪を期したいと思います。
ヴェンティミリア、長くなりましたが、おしまい。
次回から、やっと記事タイトルに忠実に、南仏に移動します。
- 2013/02/05(火) 06:31:22|
- リグリア・ロマネスク
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ヴェンティミリア6
長くなっちゃってますが、カテドラルCattedrale d'Assuntaの続きです。
ファサードのちょっとした装飾も、内部の地下世界も素晴らしくて、ボーっとしちゃいそうなカテドラルですが、でも、帰る前に、忘れずに後ろに回ってください。
ここの、外から見る後陣は、わざわざじっくりと鑑賞する価値大です。この姿だけでも、なんだかとっても雰囲気あるでしょ。この時点で、うわ~、うわ~、と荷物を引くのももどかしいわたくしでした。
写真が小さくて見えにくいかも、ですが、手前にある鉄柵から、ぐっと下に落ち込んでいて、階段で降りるようになっています。
当時の地面が低かった上に、この立地が、そもそも斜面なんですね。
で、そこを降りると、洗礼堂の全貌を見ることができます。
今は、周囲に住宅が密接してしまっているのですが、きっとオリジナルの教会が建った頃には、緩やかな斜面が広がっているような土地だったのだろうなぁ、と思われます。
それにしても、手前に植えられている青々としたやしの木?さすが温暖なリグリアですねぇ。
この右手が、カテドラル正面の左側、坂道で落ち込んだ場所になりまして、オリジナルの入り口とかがあります。
きれいな洗礼堂。アルベンガやノバラ、やはり古い時代の洗礼堂を髣髴とさせる姿です。
洗礼堂の側から、教会後陣側。こっちから見ると上り坂。階段の感じから、かなりの急勾配をわかっていただけるでしょうか。
左側は、すぐに民家で、このときも、そこにお住まいの方が買い物から戻られたところで、こっちを不審そうに見ておりましたが、私も思わず、あの荷物で、車も入れないこういう場所に住むのは大変だろうなぁ、と見返してしまいました。
後陣部分の装飾もいい感じです。
チェッカー模様のアーチ装飾のある小さな窓の小円柱、その柱頭、大好きな付け柱がひっそりあって、そして軒送りに、いろいろな浮き彫り装飾が見られます。
牛とか、いろいろの頭部。
低く下がっている後陣のおかげで、今の道の高さからだと、この軒送り部分が、かなり身近に見えるので、嬉しくなってしまいました。こういう彫刻装飾って、通常はとても高い遠いところにあって、肉眼では見えにくかったりしますからね。
しかし、こういうとき、牛の頭部って、よくありますよね。こういう双子の頭部も。軒送り彫刻に意味って総体として考えたことがないですが、そういえば、多くに共通のモチーフがあるように思われます。これは、勉強の価値がありますね。
例によって、ですが、いつかわからないけれど、ちゃんと調べてみたいと思います。多分、既に答えは出ているか、または、「不明」ということなのでしょうけども。
カテドラル、これにておしまい。ちょっと長くなってしまいました。
- 2013/02/04(月) 06:15:42|
- リグリア・ロマネスク
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ヴェンティミリア5
カテドラルCattedrale d'Assuntaの続きです。
地下にあるもうひとつの見所、洗礼堂。
11世紀から12世紀にかけて作られた八角形の建物で、今は地面が、教会の地下、クリプタよりもちょっと低い位置にある感じです。
後ほど、外観の写真を載せると、もう少しわかりやすいかと思うのですが、このカテドラル、ファサード側から後陣に向かって、地面がかなり落ち込んでいます。古い建物だと、当時の地面より今の地面が上がるので、オリジナルの床面が、現在の地面より低い場所になることはよくありますが、ここは、そういうことではなく、もともとの地形が斜面だった場所に、複層的に建物が建てられていった感じです。
洗礼堂へは、後陣に向かって左奥にある小さな螺旋階段を降りていきますが、こちらもクリプタ同様、階段の入り口に明かりがあり、自分で点灯して下りると、贅沢にも煌々とした明かりの中で見学ができるようになっています(最初は気付かず、真っ暗闇に降りていって、しばし呆然。しかし、クリプタのように、絶対明かりがあるはず、としばらく探し回りました)。
スペースの真ん中に、全身浸かることのできるタイプの洗礼浴槽が置かれています。
これは13世紀のもので、オリジナルは、今、壁のニッチ部分に置かれている、もっと小さなものだったようです。そちらには1100という印があるようです。
初期キリスト教当時は、全身浸かるタイプだったはずなので、本当のオリジナルには、そういうものがあって、ロマネスク時代に、小さなものになって、なぜかまた大きなものが置かれた、という複雑な歴史があるようですね。
建物も、ロマネスク以降ルネサンスの時代の建物が複雑に交じり合った結果のようで、場所以外は、本当のオリジナルは見られないようです。
壁の隠れた部分に、きれいなフレスコ画。これはルネサンス期っぽいものでした。
なんだか、ディテールに気をとられて、全体がかなり新しいことに気付いていなかったのですが、実際、かなり新しいですね。
なぜディテールに気をとられたかといえば、ここでも、おそらく発掘で出てきたのであろう、いかにも、の愛らしいものが、たくさん展示されていたからです。
こういうの。
柱頭ですが、一方に妙に不思議な愛らしさのある馬がいて、一方には、変な形のウサギ。
予想以上に素晴らしいお宝にめぐり合って、ここは去るのが、心底名残惜しかったです。誰も来ないのも嬉しくて、誰かが来るまでいついちゃおうかと思ったくらい。明かりがきちんとあったり、本当にきれいに整備されているのもとても嬉しい気持ちになりました。
すっごくいい街じゃん、ヴェンティミリア。
フランスからの帰りに何度か通過して、フランスのこ洒落たコート・ダジュールの街から来ると、どうにも「ださ!」くて、観光しようとしたこともなかったんですが、大反省です。ロマネスクにはまったおかげですね。
- 2013/02/02(土) 06:38:52|
- リグリア・ロマネスク
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ヴェンティミリア4
カテドラルCattedrale d'Assuntaの続きです。
この教会、急坂を荷物を引きずってでも行きたい、と思った理由が、地下にある遺構です。
まずは、クリプタ。
20世紀半ばの大規模な修復の際に、現在の後陣地下部分に、どうやら相当古い時代の遺構があることがわかったのです。その当時、その部分は、すっかり埋まっていたんだそうです。その中から、多くの浮き彫りの破片なども見つかったとか。
それが、7/8世紀のロンゴバルドの遺構だったんです。
うわ~、なんて素晴らしい発掘を行ったのでしょう。
この中世初期のクリプタは、ロマネスク時代直前まで使用されていて、それまで教会が捧げられていたサン・セコンドの遺骸が葬られていたようです。
クリプタが使用されていた時代の教会は、一身廊で、クリプタの両脇から階段で降りるような構造だったということです。
今は、内陣左側の階段で降りるようになっていますが、発掘されてからのものなので、階段は跡付けの新しいもので、当時の様子とは当然ながら違うものとなっています。
階段を降りる場所に、自分で点灯できる電灯も備え付けで、大変素晴らしいシステムになっています。こんなに人が来ないのに、こんなに至れり尽くせりでいいのだろうか、というほど、観光的にきちんとしていて、びっくりしました。
おそらく祭壇の位置は、昔のままですが、どうなっていたかはわからないはずです。今は、発掘時に見つかった浮き彫りの石が、使われて、愛らしい祭壇が作られています。
天使が、祝福のポーズをとっています。ビザンチン風のモチーフ、ということになるのでしょうか。でもロンゴバルドらしい。顔がなくなっちゃっているのが、残念です。
これもよく見られるモチーフ。風車、または扇風機文様(?)。愛らしいです。
それにしても地味な絵ばかり。タイトルで訪問されると、怒られそうな内容です。
- 2013/02/01(金) 05:58:34|
- リグリア・ロマネスク
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