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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

ポワトー/シャランテ、5

シャランテその1、サン・シモン(サン・シジスモン教会)

数あるフランス・ロマネスクの集積地の中では、かなりマイナーな地域が、このシャランテ。それも、アンギュレームとコニャックの間の丘と谷の広がる地域は、サン・チャゴ・ディ・コンポステーラに向かう巡礼の道に両側をはさまれる格好で、これ以上訪ねにくい場所はない、というようなロケーションです。だって、同じ訪ねるなら、やはり王道を行って巡礼路を目指しますよねぇ。ある意味、天邪鬼なわたしにはぴったりな地域なのかもしれません。
この地域の情報は、ミシュラン緑本からいただいたのですが、実は、シャランテでどの辺が、より重要度が高いかというのがよくわからず、集積度から訪ねたんです。本当にずいぶん地味で、やはり巡礼路にある完成度の高い教会とは違ったかもしれません。それでも、葡萄畑の続く土地の美しさ、人の少なさ、訪ねる価値のある地域とは思いました。

まず訪ねたのが、宿泊した村に最も近かったサン・シモンの村にある教会サン・シジスモンSaint Sigismond。




実は、この際を目指していて、マイナーな中にもマイナーなこのサン・シモンの村は無視する予定だったのですが、村を通り過ぎるとき、道沿いに教会の姿が見えたもので、せっかくだから、と思い、つい立ち寄った次第。

脇に説明版があり、こんなにマイナーな教会なのに、かなり親切な説明が、それも英文も含めてあったのにはびっくりしました。村では、おそらくとっても大切にされているんでしょうね。



残念ながらクローズ。早朝だったからかも知れません。
全体にとにかく地味です。
ファサードの傾斜屋根の天辺の部分に、やっぱりここでも、石の十字架が見られますね。
ここのは、特にケルトっぽくはないですけれど。

地味な入り口。




この側柱の柱頭に見られるかすかな彫り物と、そして、入り口扉の上方にある、今はステンドグラスがはめ込まれた細長い窓の上を飾るアーチヴォルトの装飾帯が、唯一の装飾といえます。




なんかないのかなぁ、とこういう時ってつい意地になって、じっくりしつこく見回してしまうのですが、後ろの方に、不思議なものが。




修復工事で、壁も白くきれいになっていて、その脇に、このようなウス状のものが。どう見ても洗礼盤系のものではないかと思われますが、教会の外にあるのも変だし、???

どこをどう見ても、とにかく地味で、美術的には面白くなかったので、一日の最初としては、ちょっと不服。ま、でも長い旅が待っていますし、こういうこともありますね。気を取り直して出発です。

それにしても、この教会が捧げられているシジスモンドという人は、5世紀後半に、ブルゴーニュの王様だったらしいのですが、そういう人が聖人というのは、ちょっと珍しい感じがしますね。

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  1. 2013/03/11(月) 05:50:43|
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ポワトー/シャランテ、4

アンギュレームAngoulemeその4
このアンギュレーム、現世的には、漫画フューチャーが最も重要で、中世なんて、今修復真っ最中のカテドラルでもう十分だろう、というのが本当のところではありますが、伝統的な中世修行者としては、このサンタンドレ教会も、無視するわけにはいかず、結構探し回りました。
Eglise Saint Andre




オリジナルは11世紀に建てられた教会で、その名残も見えないこともないのですが、今見られるほとんどの部分はルネサンス以降の名残。

今は、入り口を探すのも大変なくらいに、住宅地に溶け込んでしまっています。つまり、ファサードにも、当時の面影は一切ないということです。




内部外部をうろうろして、中世当時の面影を見られる場所がないか、相当前向きに探したのですが、難しかったです。




それよりも現在の漫画に特化した風景が広がるばっかり。




いやはや。
まぁある意味、現代に生きるためには、中世から離れるしかないし,教会としてのスペースを確保しているだけでもよしとするしかない的な、そういうものもあるんですかね。確かに、変にネオ・ロマネスクとかゴシックとかバロックとかに変容しているよりは、変わってんだか変わってないんだか、よくわからないし、程度のいい加減な方がよかったり、というのも、現実にはありかもしれないですけれど。
この、壁の漫画的なだまし絵も、かなり美しくてよかったんですけども、正直。

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  1. 2013/03/10(日) 07:54:53|
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ポワトー/シャランテ、3

マイナーなフランス・ロマネスク、お楽しみにされていた方、お待たせしました。
と言いながら、さりげなく再開しますが、余りに時間が空いてしまって、自分でもどこまで紹介したものやら。とりあえず、前2回と重なる部分があったらすみません、ということで、アンギュレームの3回目からです。

アンギュレームAngoulemeその3
サン・ピエトロ・カテドラルCattedrale di St-Pierre続きです。
この教会のすごさは、なんといってもファサードにあります。全体像がこれ。



教会前は、一応開けた場所になっているのですが、広場ではなく、車の行きかう場所なので、なかなか落ち着いて全体を眺められるポイントというのに欠けるのが、残念なロケーションです。
そして、訪ねたときは、午後もかなり遅くなっていたので、西日ががんがん。隅々まで見えるはずなんですが、実は日差しが激しすぎてまぶしすぎる上に暑くて、車の通過とあいまって、もうわけがわからなくなってしまうような状況でした。

実物は、かなりごちゃごちゃ、激しく装飾過多、という印象だったのですが、こうして写真で見ると、意外とすっきり感があります。おそらく、一番下の扉のある部分のアーチの上部に、何もないスペースがあるからですね。ここは、もともと何もなかったのか、何かあったのが取り去られたのか、装飾される予定だったものが取りやめになったのか、今のところわかりませんが、そして、全体から言えば、「何でここだけ空白スペースなんだろう」と思わずを得ないような不思議感が前面に出ますが、それでも、ある意味余裕ができてよかったのかも。
このごちゃごちゃ感は、やはり細部からきているのでしょう。




地上からでは、ほとんど判別できない位置にある一番天辺の傾斜屋根の部分の飾りもこの通り。まるでアラブの影響を受けたような、アラベスク風のモチーフがぎっしり、それにわたしの好きな市松模様が、スペースを区切っています。市松モチーフは、何もないところにあると結構スタイリッシュな感じですが、こうなると、なんというか、激しい装飾に巻き込まれて、その存在意義がわからないって言うか。

それにしても、傾斜のトップの十字架は、ケルト十字のような。フランスでは、この位置にある十字、よくこういうタイプが見られます。イタリアでは絶対にないタイプですが、やはりケルト系のものなんでしょうか。

その下には、おなじみ、アーモンドの中のキリスト。周囲には福音書家のシンボルがあり、数え切れない天使が取り巻いています。




アーチ上の天使の感じが、やっぱり東洋風に思えます。キリストの、すーっとした姿も、ほとけ様風と言うか、天平風って言うか、アジアチック。でもお顔は思いっきり彫りの深い西洋風。
すべての天使の衣服のドレープや、翼の動き、ポーズがとっても躍動的です。




それぞれが、「おお!」とか「あちゃ~!」とか言っているような、臨場感があります。これ、写真を見て改めて思うことで、現地ではもちろん、そんな細部は見えないですけれども。
一方で、比較的低い位置にある作品は、もうほとんど浮き彫りではなく彫刻で、相当腕のある方の作品と見えます。




細かいし、馬もうまいし、ドラマチックな構成で、びっくり。これ、おそらく世紀を越えた、後の時代のものですよね、今のところ全然細かいところまでは調べていないんですけれど。
確かに、全体として、上部の方が古そうで、わたしの好みでもあります。
それにしても、すごい装飾。良くぞここまで。
鐘楼もかなり立派な大きさで、装飾もやっぱり立派です。




こちらもまた、肉眼ではなかなか細部まで確認できないのですが、この角っこにあった狛犬様の飛び出し彫刻、ちょっとかわいい。でもこれも、時代が結構下ってますよね。やっぱりちょっとオリエント風なテイストを感じます。

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  1. 2013/03/09(土) 06:26:02|
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ちょいとロンドン6-終了

美術館めぐりに加えて、ちょっとだけいつもの癖のお散歩もしてきました。
近くは通るものの、訪ねたことのないサン・ポール教会。




でっかいクーポラ、古典的スタイルの壮大なファサード。起源は古いようだけれども、およそわたしの趣味ではない教会ですが、旅となるとつい早起きして修行モードになるわたしなので、テート・モダン開館まで時間があったこともあって、訪ねてみたんです。

しかし、入場すると、なんだかとてつもなく高額な入場料徴収のブースがありまして、ぱっと見ても、内部もさらに興味を持てないような壮大さだったので、さっさと退却。それにしてもびっくりしたのが、これ。




教会の地下に、ブック・ショップはわかるとしても、なんとカフェとかレストランがあるんですねぇ。こういうのは、イタリアでは見たことがないので、たまげてしまいました。本来クリプタがある場所に、カフェ…。
もちろんのぞきましたよ。がらんとした広いスペースに、確かにカフェがありました。週末の早朝にもかかわらず、すっかりオープンして、休んでいるのか朝食を取っているのか、訪問者も結構おりました。ロンドンの美術館博物館は、比較的開館が遅いので、勤勉な観光客は、所在無く教会観光もしてしまうのかも。

驚くほど充実したブック・ショップで、これから一日歩かなければいけないというのに、薄いとはいえ本を二冊、購入してしまいました。一冊は音楽を勉強している友人へのプレゼントで、合唱曲のCDのついた教会音楽の歴史という本で、もう一冊は、こちら。




グリーンマンの歴史。あっという間に読み飛ばせる程度のとっても簡単な内容ですが、絵図が豊富で、体系的にわかっていないグリーンマンのことが、ちょっとわかるような気がしたので、資料として。英国で見られる特徴的なグリーンマンの紹介とかもあって、結構楽しい本です(その上安かったし)。

ちょっと満足して、ついでに清潔な無料トイレも拝借してさらに満足して、散歩に復帰。
サン・ポール寺院のすぐ脇にあるのが、テンプル・バー。




テンプル・バーといえば、アイルランドはダブリンの飲み屋街のことしか知らず、こういうものがあるとは。これ、現在に唯一残っているシティの門のひとつなんだそうです。
この前にあったオリジナルの門は、有名な、シティを襲った大火には耐えたものの、その後崩れ落ちて、その後17世紀後半に建てられたものだそうです。シティは本当に独立したスペースを持っていたんですね。今は、なぁなぁに、住宅街につながってしまっていますけれど。

そして、ミレニアム・ブリッジをわたって、テート・モダンに向かいました。テムズの川沿いの様子。




ロンドンでは、もう長い間、建設ラッシュが続いています。不況でも、なお次々と新しいビルが建てられていて、工事のない風景はないくらいに、あちこちにクレーンが林立しています。新しいビルは、どれもこれも独特なスタイルで、どれもがランドマークになるような。川沿いは特に激しく変貌しています。




個人的には、歴史を刻んだレンガ造りの古いビルに、いかにもロンドンらしさを感じるし、好きなので、どんどん工事で街が変わっていくのもどうかと思いますが、ロンドンらしさというのは、そういうところにもきっとあるのでしょうね。




というわけで、今年のロンドン散歩もおしまい。また次回が楽しみ。仕事は嫌だけど、毎年一回同じ場所に行っては、毎回新しい場所に出会うというのも、結構楽しい習慣かも知れないです。

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  1. 2013/03/07(木) 06:45:26|
  2. 旅歩き
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ちょいとロンドン5

今回、どの美術館に行こうかと情報収集しているときに引っかかったひとつが、ホワイトチャペル・ギャラリーです。
正直、全っ然知らなかった!
展覧会の検索で出てきたんですが、手持ちの小さなシティ・ガイド(本)を見ると、ちゃんと出ているじゃないですか。結構有名な美術館なんですね。あらま~、ごめんなさいって感じ。
どうも、美術館と思うと、Museumで見てしまうんですが、絵画関係は、Galleryなんですね。なんていうことを、いまさら知った次第。Museumは、正確には博物館なんですよね。

で、ホワイトチャペル・ギャラリー。
Whitechapel Gallery
77-82 Whitechapel High Street
Tube: Aldgate East, Liverpool Street




地下鉄で向かったのですが、地上に出て、すぐに歩き出してしまい、実はどんどん美術館から遠ざかっていました。この美術館、地下鉄の Aldgate East駅の真上にありますから、地上に出たら、その場所から移動しちゃいけないんです。
多分、それなりに由緒正しい邸宅を、美術館に転用しているものだと思います。美術館としてはとっても小さいけれど、そのコンパクトさが親しみを感じさせます。
建物上の方には、金色の葉っぱモチーフが飾られていて、これもきっと誰かの作品と思われます。




昔、すごくほしかったドリアデのコート掛けのモチーフにも似ていて、なんだか好きでした。

さて、展覧会です。
まずは、イタリア人作家の、具象だけど抽象みたいな、不思議な作品。
Giuseppe Penone
Spazio di Luce (Space of Light)
until 01 Sep 2013




かなり大きなスペースに、嘘ものの(ブロンズ製)巨大な木が、横に置かれています。ちょっと見、馬鹿みたいなんですけどね。でも、これが結構面白くて。
木の端っこは、切れ目頃に開いていて、空洞が見えるようになっています。端っこから見ると、とても不思議な景色が。




すっごくきれいで、印象的でした。
もらったパンフレット(無料なのに、パンフレット類はやたらに充実しています)に、作品の意図とか、いろいろたくさんごちゃごちゃを記されていますが、そのあたりは無視。現代ものは、見たそのままの感触を楽しみたいです。

次はビデオ作品。

Gerard Byrne
A state of neutral pleasure




ビデオ作品って、わたしは基本的には余り興味がないのですけれどもね。
大きなスペースに、5台くらいビデオが置いてあって、それぞれちょっとしたビデオ作品が流れていて、二人ずつヘッドフォンで視聴できるようになっていましたが、ちょうど席が埋まるくらいの見学者がいて、すべてが程よい感じ。とっても心地よい空間になっていました。
この美術館もまた、ロンドンに多くある入場料無料の空間ですから、住んでいて暇だったら、おそらく定期的に通ってしまうであろう場所だろうなと思いました。近所の行きつけの美術館、というポジションが、とっても心地いい。そういうのが、ロンドンのいいところかな。

今回、本当はここではなくて、コートルード美術館に行こうと思っていたんです。そこもこれまで行ったことがないし、近現代中心の常設展に加えて、今ピカソ関連の展覧会をやっていたから。ところが、その日、その美術館最寄の地下鉄のある路線が、なぜか全面運休。他の路線の駅からでも歩ける距離ではありましたが、余りに疲労が激しく、とても無理と思い、急遽、プランBに変更して、こちらに来たという次第。
いずれにしても、このホワイトチャペルもはじめての場所で発見でしたし、よかったと思います。毎回全部見ることはできないから、徐々に知っていくのも楽しみですよね。

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  1. 2013/03/05(火) 06:25:14|
  2. アートの旅
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ちょいとロンドン4

なんとなく、近代の基本に戻ろうと思い、今回は、何年ぶりかで、テート・ブリティッシュを訪ねました。
テート・モダンができる前は、このテート美術館が、近現代をカバーする美術館で、だから昔は、ロンドンに行くたびに、必ず訪ねていた場所ですが、モダンができて以降は、行ったことがなかったんです。




これだけ長い間訪ねないと、場所も忘れます。場所も外観もすべて、完全に忘却の彼方でした。わたしが最もロンドンをよく訪ねたのは、イングランドの田舎で英語学校に通っていた短期間で、その頃は、田舎から上京する状態だったので、ヴィクトリア駅周辺が、自分にとってのロンドンの入り口で、そういう意味で、ヴィクトリア駅から地下鉄ですぐのこのテート美術館は、おそらく訪ねやすい場所でもあったのでしょうね。
今、拡張工事とかいろいろやっていて、展示の形もいろいろ変わっているようですが、それにしても、これほどに覚えていないとは、って自分でもびっくりするくらいに、覚えていなかったです。

最初は、普通に展示を見ていたんですが、やっぱりそもそも特に興味のない英国の近代絵画を見ても、面白くもなんともない。で、今ではこのテートの目玉でもあり、存在意義でもあるターナー・コレクションに突進しました。




面白かったです。これはこれで、今回訪ねてよかった。
まずは、わたしの中でのターナーが、コローと完全にシンクロしちゃっていて、コローのイメージを、ターナーに対して抱いていた勘違いを直すことができました。
コローは、英国のあるがままの自然を、誇張もせずにそのまま描いた人で、一方でターナーは、かなり作った絵が好きな人で、聖書のエピソードだったりを、実際に訪ねた自然を背景に描いた人だったんですね。
空や海の表現力は、びっくりするくらいに素晴らしいです。
でも、本来の技術力が、いまひとつで。




天井のライトが反射しちゃって、最悪の写真になってしまいましたが、これは、霧のベネチア。気持ちはわかります。印象派的な、あいまいな表現力、白に覆われたベネチア、意欲的とも言えますが、でも、だから?という結果なんです。

要は、宗教画的な伝統絵画の世界においては、それなりの革新派足りえたのかもしれないですが、美術的な面から行くと、どうでしょう、わたしには、伝統や因習から抜け出すことができなかった画家、と見えます。気持ちは、先に走っていたかもしれないけれど。

全体は面白いけれど、とにかく下手で。




全体の端っこに書き込まれた人々、顔も姿も、びっくりするくらいに下手でしょ?確かに、大きな号数の絵では、まずは全体が見られるから、ディテールは二の次になる感ってわからないでもないですが、それにしても、この時代の人々のデッサン力とか、基本がすごいレベルだったわけで、そういう中で、ターナーが名を残したということは、何でしょうね。




どれを見ても、やっぱり下手~!
で、同時に風景は、やっぱりすごくうまい!




求められるものが、それぞれ違ったんでしょうね、この時代。確かに、全体としては、決して邪魔にならない絵ばかり。英国的、といえるのかな。

うん、面白かった。わざわざ訪ねた甲斐は、十分にありました。なんといっても、ターナー・ギャラリーも含めて無料だし、ここのカフェでいただいた紅茶は、イギリスの紅茶は安物でもやっぱりおいしい、というよい例で、それだけでもね、価値はあります。
ただ残念だったのは、確かに昔この美術館で見て、今でもあると思っていた絵に、お目にかかれなかったこと。昔あそこにあった、ラファエロ前派系の絵は、今どこにあるんでしょうね。

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  1. 2013/03/04(月) 06:47:48|
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ひな祭り

ついこの間、大雪が降ったばかり。たったの2週間ほど前は、こんなお天気でした。




気付くと、起床の時間、今まで真っ暗の真夜中状態だった外が、既にうっすらと明るくなっているし、仕事を終えて会社を出る頃も、夕焼けの名残が残っていたり、と知らないうちに日が伸びているのですね。
そして、忙しさにまぎれているうちに、なんともう3月!
ついこの間、クリスマスの飾りを片付けたばかりだというのに、もう、雛人形を出す季節になっていました。




ひな祭りグッズは、当然ながら、こちらで調達できませんので、時々日本から持ってきたりいただいたりしたグッズを、ひたすら並べるのが我が家のひな祭り飾り。
明かりをつけるぼんぼりは、桜のろうそくだったり、布に描いてあるぼんぼりにすぎませんが、それでも、ごちゃごちゃと集まった桃色のものたちが、なんとなく春の気配を感じさせてくれます。

桃の枝を買いたかったのに、買い物の際、すっかり忘れてしまいました。我が家の近所には、気のきいたお花屋さんがないのが、ちょっと残念。

クリスマスのような華やかさはないにせよ、ひな祭りって、季節もよくて、気持ち的にはとっても幸せになります。いつも、大体ひな祭りの当日に会社で気付いて、あーあ、と思いながら雛人形を出すのに、今年は、久しぶりに事前に出すことに成功しました。雛たちも満足していることでしょう。

これは、先週のロンドン訪問もあずかっています。なぜかというと。




これ。
ロイヤル・アカデミー近くにある虎屋さんのショウウィンドウに、麗々しく飾られていた、素晴らしい雛壇。
きらきらとして雅で、思わず足を停めて見入ってしまいました。既にお店が閉まっていたので、ある意味よかったのですが、開いていたら、勢いで、和菓子を買い込んでいたかも。
この雅さには、ロンドンっ子も、大いに足を停めて見入っておりました。

ひな祭りには限りませんが、ちょうど週末でもありますし、一人宴会でワインで乾杯。おりしも、明日は日本人の友人とランチの予定。ひな祭りだから企画したわけではないですが、理由ができたので、ますますお酒をおいしくいただけそうです。
季節季節に、理由をつけて酒を飲む日本の文化。いやいや、酒を飲むのがメインではなく、季節を楽しもうという文化は、本当に素敵です。
イタリアでは、お祭りというのは宗教に結びついているばかりで、季節が関係する、こんな雅な感覚はないですからね。花見酒、貴重な感覚です。
いやいや、酒ではなくて…。

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  1. 2013/03/03(日) 06:23:11|
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ちょいとロンドン3

事前に調べたら、ロンドン、2月の20日あたりが切れ目になっていて、結構新たに始まった展覧会があります。中でひかれたのがこれ、リキテンスタイン回顧展。




Lichtenstein  - A Retrospective
21 Feb 2013-27 May 2013
Tate Modern

リキテンスタインは、その斬新さというか大胆さが、なんとなく好きっていう人だったんですが、ずいぶん昔に、ミラノPACでのこじんまりとした展覧会で、初めていくつかの作品を間近に見たときに、あ、やっぱりナマはすごいな、って思って感動した人で、だからといって、多くの作品を見る機会がなかったので、これはどうしても見とかないとな、と思ったんです。
でも、展覧会始まってすぐだし、自分の予定がどうなるかまったく不明だったので予約もできなかったし、混雑して無理かな、と思いつつ、10時からの開場にあわせて、会場のテート・モダンに向かいました。どうせテート・モダンはいつも行きたい場所だから、だめもと。

そうしたら、まさに開場と同時に入る時間に到着して、5分程度並んだだけでチケットをゲット。既に嬉しい気持ちでルンルンです。
とはいえ、会場に入ったら、予約をしていた人が、やはりたくさんいるんでしょうね、既にかなりの混雑状態ではありました(その混雑を利用して、少しですが、盗撮をしてしまいました!へへへ)。

このあたりは、実際には見たことのないタイプの絵ではあっても、かなり想定内。




びっくりしたのは、その後にきた白黒の時代。




うわ~、このノート、持ってたよ~!




これは、個人の手帳。書き込みもリアルで面白い~!
このラジオもかわいい~!下げる部分は、ちゃんとリアルな皮でできていて、シュールレアリズム系の影響を受けているのかな~って感じ。




この、白黒の世界は、ほとんど知らない世界で、でも、どの絵もかなり好きでした。
リキテンスタインが、例の、漫画の世界に来るのは、この後なんですね。




初期は、ドットも小さくて、かなり手作業でやっていたらしく、不ぞろいだったりするんですが、だんだんと便利で高機能な道具を開発して、ドットも大きくなり、不ぞろい感がなくなってくるんです。
以前見た展覧会で、間近に本物を見た、というのはこのあたりの、いかにも「リキテンスタイン」というドットが、すでに成熟した作品。成熟したといっても、近くで見ると、とっても手作業的な部分、印刷物のようでいて、実は構図も色もすべて考えつくされている(下書きが結構残っている)、ということが迫ってくる大型のナマの絵に、感動したのでした。
しかし今回、回顧展ということで、長い時間の端から端を一気に見て、これすらも、彼の作品の一部に過ぎなかったのだ、という当たり前のことを見ることができて、とっても面白かったです。

漫画的な作品も好きですが、こういう、いわゆる静物もいい。




これ、実に巨大な作品ですよ。本当に素敵。無機質だけど、なんともいえぬ存在感で、圧倒的です。自分でもなぜこういう絵が好きなのかは、よくわからないですが。

今回の発見は、過去の作家、作品へのオマージュもしかりでした。
ピカソとか、コクトーとか、マティスとか。






マティスの金魚は大好きなんだけど、まさかリキテンスタインが、こういう作品を作っているとはまったく知りませんでした。写真、小さな図版からなので、ぼけていて残念ですが、金魚の表情がとってもかはいい…。

さらにびっくりしたのが、最後の部屋に展示されていた、なんと中国の山水画。




これには、本当にびっくりしました。想像もしていなかった作品だったので。解説によれば、晩年、風景画に戻って、古い中国の風景画に、新しいドットの可能性を実験的に使ってみたとかそういう話。
70歳すぎた頃から、そういった新しい世界に入っていくエネルギー。アーティストって本当に生まれながらそういう人たちなんですね、きっと。
これらの山水画風は、にわかには好きにはなれなかったけど、これもまたリキテンスタインの何かを語る何かなんだろうなぁ、と思ったし、とにかくそのとどまるところを知らないエネルギー、常に進んでいく力というものが、きっと近現代の芸術家を好きな理由なのかもしれないです。

この回顧展、アメリカから巡回しているようです。ロンドン以外にも巡回するのかどうか不明ですが、リキテンスタインに興味のある方には、強力にお勧め。

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  1. 2013/03/02(土) 06:38:22|
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