カタルーニャ・ロマネスクめぐり、その17
リュサLlucaの、サンタ・マリア修道院Monastir de Santa Maria、続きです。
いい加減、一人で見てしまった後で、「もうすぐ、英語が出来るガイドが来ますから」と言われ、なぜ今更?という感じだったのですが、それからしばらくして、実際にガイドさんがやってきました。
英語で書かれた、一枚ペラの簡単な解説をくれ、おもむろにガイドが始まりました。
回廊については、変形の理由とか。理由は不明なんだけど、多分、土地の地形に合わせたので、結果的にこうなってしまったということ。
この辺り、土台が岩山なので、相当削り取って平地を作っているものの、やっと出来たのがこの形、と。ふんふん。
柱頭は、ものによっては摩滅も激しいのですが、よくのこっているものもあります。現場では気付かなかったのですが、写真で改めてみると、一部色が残っています。オリジナルというよりは、どこかの時点で修復された名残かも知れないですが、こういう場所の柱頭でも、彩色されていた可能性が高いのですね。
回廊の柱頭が色つきって、想像しにくいです。
こういう無理な地形にこのような建物を建てるには、必ず、当時の、アラブの進んだ技術が活用されたはず、ということもおっしゃっていました。スペインのアラブの影響というのは、本当に半端ないようです。柱頭のモチーフも、キリスト教に関係するものは少なく、かなりアラブの影響があるとも。装飾的幾何学モチーフは、ちょっとアラベスク風といえないこともない?
ちなみに、ちょっとスペイン語が分かると言った途端に、ガイドはすべてスペイン語になってしまいました。
回廊からは、教会の反対側に出られるようになっています。
写真中央右奥が、回廊への扉です。
裏庭、とでもいった風情ですが、昔から、この場所は、岩山状態のスペースがあったようです。上の写真の右手は、谷底となっていますが、辺り一帯、ローマ時代からオリーブ畑となっていたということです。
今は平原となっている場所。
山の上が、ローマ軍の警備所、つまり物見所のような場所だったらしいです。
そして、今教会がある場所一帯は、古代から墓所として使われ(発掘で、複数の墓や埋葬品が見つかっているようで、それらの一部が回廊に並べられています)、またオリーブオイルを作っていた場所でもあったらしいのです。
今でも、当時オリーブオイルを溜めていた水槽のような場所があります。
もうちょっとさがった場所にも、地面に掘られたプールのような水槽がありますが、そちらは、水のため池だったようです。
金魚がたくさん泳いでいたので、もしかすると、わずかでも水が湧いているのかも知れませんね。修道院に水は付き物なので、なんとなく納得。
というわけで、わたしにしては、かなりゆっくり目の見学となり、歴史散歩的なお話になってしまいましたが、やはりガイドさんの話を聞くのは、楽しいですね。
一応1ユーロとかなっていましたが、いらない、と言われてしまいました。どこまでも良心的で親切な方々。
ちなみに、14世紀頃、教会はフレスコ画で飾られていたようで、その一部が、小部屋に展示されています。
ぽつぽつと見学者も来るようです。自分で行っていて、なんですが、こんな山奥まで、よくわざわざ来るなぁ、となんだか感心してしまいました。それに、どの程度くるのか分かりませんが、こうやってきちんと対応できる(遅いけど…)体制を整えている、というのもすごいことです。
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- 2015/03/30(月) 00:38:32|
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カタルーニャ・ロマネスクめぐり、その16
リュサLlucaの、サンタ・マリア修道院Monastir de Santa Mariaです。なだらかの丘が続く、山の中にぽつんとあります。
到着時、教会は開いていました。そして、入り口に、入場料1.50ユーロとか書いてあるわりに、人の気配ゼロ。
いかにもつまらないファサードですが、目的はファサードではないので、問題なし。
見たかったのは、たとえば、これ。
扉のこういう装飾、意外と好き。それに、こういうのが意外と教会創建当時のものだったりするんです。こういうものが千年から残っているっていう事実、石の建物が残っている以上に、感動したりします。
教会は、一室のみの小ささ。
スペースはオリジナルっぽいけれど、全体は修復が激しくて、ちょっときれい過ぎるし、いまひとつ感動なし。
でも、それもよし。だって、目的は他だから。
この修道院跡、こういう風になっています。
本来の目的は、教会右側、つまり南側にある小さな回廊です。
これ。
こんな簡単にアクセスできてしまっていいんだろうか、というくらいスムーズにたどり着
くことが出来て、びっくりです。
この回廊、実際はとても小さいです。写真では、スケール感が伝わりにくい、いい例だと思います。
それにしても、美しいスペース。真四角ではなく変形しているのも、雰囲気を面白くしています。柱頭も、それぞれ様々なモチーフの彫り物が施されていて、それも、背が低いので、すぐ目の前。
関係者の気配があるのに、誰も目に付かない不思議な感じで、一人うっとりと見学を続けます。どこでも、独り占め状態で、なんだかとってもお得感がありますねぇ。
- 2015/03/29(日) 05:38:01|
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カタルーニャ・ロマネスクめぐり、その15
レスタニーの次に目指すは、街道を挟んで、反対の山側にあるリュサLluca。
事前にグーグルで見ていたときから、行こうかどうしようか、迷っていました。というのも、ストリート・ビューで見る限り、完全に何もない山の中、というようなロケーションで、ということは、かなり山道=坂道(おなじみの苦手)なのではないか、という恐怖があったんです。
でも、ここまで来といて、行かないっていう選択肢もないし~、と思い直し、レスタニーの受付の、ファスナーを直してくれた親切なおばさまに、ちょっと聞いてみることにしました。
ちなみにこのオバサン、英語はだめでしたので、カタラン交じりのカスティーリア語(スペイン語)、わたしは、イタリア語交じりのなんちゃってスペイン語での会話です。
これは行け、ということだな、と納得したのは、リュサと言った途端に、丁寧に行き方を書いた紙の案内図(と言っても手書き)を見せながら、説明してくれたからです。そして、その上に、わたしの虎の巻ノートに、辿るべき道路や、村の名前を書いてくれたのです。
ここからリュサに行く人が多い、っていうことですよね。一般ルート、ってことは、やはり行くしかありません(ここに来るのが、そもそも一般ルートか、といえば、若干疑問ではありますが)。
ナビもあるし、多分大丈夫だと思うけどね、と言ったものの、今メモを見ると、結構しっかり真剣に話を聞いていたようです。
「迷ったら、この番号に電話して、ファンJuanという人に聞けばいいからね。」と、そこまで教えてくれました。なんて親切!このスペイン語能力では、電話しても、多分無駄、そして、携帯電話はローミングしてないから使えないし、公衆電話があるわけもないし、と思いながら、それでも、親切がありがたかったです。
車に乗る前に、美しい後陣を眺めながら、改めて地図と説明を反芻して、気合を入れました。
いざ、出発。
街道までは、一本道で、迷うはずもないので、のんびりと緑の林道をドライブ。山道ですが、前後に車さえいなければ、適度なカーブが連続する下り道のドライブは、結構楽しいものです。快調に進んでいくと、途中で、後続車に気付きました。
やだなぁ、と思っていると、どんどんと近づいてきた車は、なんとパトカー…!
これは嫌です。スピードを出したらまずいし、かといって、余りぐずぐずしているのも、なんだかとても嫌がられそうだし、かなり冷や汗でした。
どうせ、対向車も来ないんだから、抜いてくれたらいいのに、と思い、わざとスピードを落としても、なかなか抜いてくれません。かといって、停車するようなスペースがある道でもなく、停車の勇気もないまま、しばらくパトカーをブロックするような感じで走っていました。
それでも、さすがに途中で、スーッと抜いてくれたので、やれやれでした。
また、当初のように、林間をのんびりと走り、お、街道に出たな、というところで、なんと、件のパトカーが、街道に出る前で停まっています。
わたしは、当然そのうしろで停車するしかありません。
なにこれ?なにこれ?
と、また、冷や汗が出てきました。
わたしが停車すると同時に、パトカーから、警官が降り、こちらに来ます。
冷や汗、どーっ!
え?スピード出しすぎた?だって、パッシングしてきたのは、そっちだろ?そっちだよね?
走馬灯状態…。
運転席の窓を下げると、警官、にっこり。
「リュサに行くんだって?」
一瞬、展開が把握できませんでした。
話を聞くと、どうやらレスタニーの受付のオバサンに、あの東洋人が一人でリュサに行くらしくて、道を聞かれたのよ、みたいな話をされたらしいのです。そういえば、この人、受付でオバサンとおしゃべりしてたかもしれない…、とそのときになって思い出しました警官と言っても、別に警官らしい制服を着用しているわけではなく、山岳警備員みたいなスタイルだったので、まさか警官とは思わなかったのです。
要は、リュサへの道は、この街道を越えた先から分かりにくいし、途中まではぼくたちも行くから、後から付いて来い、という大変親切な申し出をしてくださったのです。
いやぁ、びっくりです。
わたし、ナビもつけていたし、警官もそれは見ているはずなんだけど、信用してないんですね。ナビもわたしの腕も方向感覚も。
このときは、ナビも自信ありげだったのですが、ありがたく、申し出を受けて、パトカーに先導されて、ドライブすることになりました。
運転のプロだけに、こちらへの気遣いは万全で、とてもゆっくりと分かりやすく走ってくれて、何とか付いていくことが出来ました。ナビと違う道を行ったのは一箇所だけだから、意外と難しい道ではなかったようですが、少なくとも、絶対に間違えることがない安心感はありました。
おばさんが記してくれた最後の道で停車して、「ここがぼくたちの警察署だから、お別れだけど、後は、ここを右にずっと、道なりに行けば大丈夫だよ」、というところまで、ゆっくりと連れて行ってくれました。
レスタニーからは、約1時間弱のドライブでしたから、結構な時間、お供していただいたことになると思います。親切ですよね~。
それにしても、パトカー先導なんて、後にも先にもないだろう経験をしてしまいました。ずいぶんと冷や汗もかきましたが、楽しい思い出です。
そんなスペクタクルなドライブの後、目的地リュサの、サンタ・マリア教会。
本当に何もない道沿いに、ぽつんとありますが、それなりに人は来るようでした。
目的は、ここもまた回廊です。
このカタルーニャの旅では、次々とびっくりするほどの回廊攻めでしたね~。
- 2015/03/27(金) 06:39:22|
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カタルーニャ・ロマネスクめぐり、その14
サンタ・マリア・デ・レスタニー教会Eglesia de Santa Maria de l'Estany、回廊Chiostro見学、続きです。
北面、もうちょっと続きます。
最後の晩餐。
どうしても、一面に表したかったのでしょうね。でもこれだけの数、一列じゃ無理だし、テーブルを取り囲む図も難しい、ということで、おそらく二列になってしまったようです(カナの婚礼場面も、二段で表されていますので、石工さんが四苦八苦して考え出した図案も)。
テーブルクロスの丁寧なドレープとかの仕事を見ていると、結構時代が下るのかという印象です。
そして、十字架磔図。
槍で突いている場面、痛々しいです。
そして、魂を計りに載せているところ。悪魔と大天使ミカエル。”聖お兄さん”的にはミカ坊。
それにしても、一人ではないと思うのですが、ここの回廊で悪魔を彫った石工さん、なかなかの表現力と思います。
そして、見学は、東面および南面に。
ここは、俗世の場面がいろいろあって、聖書エピソードとは違った楽しさがあります。
たとえばこんなの。
楽師が弦楽器を奏で、乙女が踊っているみたい。この表し方がまた、乙女な感じって言うか、イラスト風というか、愛らしくないですか。
お隣の動物フィギュアも、好み。
デザイン的ですよね。ロマネスク自体が、あるだけのスペースを目一杯使うという意味で、ある意味デザイン的だとは思うんですけれど。
そういう流れで行くと、これらの鳥モチーフも、とってもデザイン的です。
こちらはまた愛らしい庶民の姿。
一見、愚かな乙女(エピソードとしては好き)かと思ってしまったのですが、何のことはなくて、ただ髪をくしけずる乙女と、ラブラブ・カップル。これは珍しい柱頭ですね。
まとめてドン!
柱頭好きだと、興奮しませんか。
見ても見ても楽しいので、さらに一周してしまいました。きりがないってこのことです。
やっぱり、有名な場所、誰もが必ず訪れる場所は、それだけのものを持っているという当たり前のことを、改めて認識させられました。そしてまた、カタルーニャのロマネスクはわたしの原点でもあるわけですが、これまた改めて、その原点となりえた姿を、確認している感じ。
長居しましたが、やっと、先へ移動しますよ。
- 2015/03/24(火) 03:04:01|
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カタルーニャ・ロマネスクめぐり、その13
サンタ・マリア・デ・レスタニー教会Eglesia de Santa Maria de l'Estany、回廊Chiostro見学、続きです。
この回廊で、最も興味深い、北面です。
本来だったら、この面から始めるのが、正しい見学でした。
なぜ北面に、聖書のエピソード満載かというと、おそらく、この面が、本来教会と隣接しているからではないかと思います。上の写真の、一番奥に、教会とつながる扉があり、カタラン語の小冊子には、「ゴチック装飾が素晴らしい扉」とか何とか書いてあるようですが、見学中、一顧だにしていないわたくしです。そもそも、教会との関係すら考慮しないで、柱頭に気をとられていました。
そういう短慮な見学、われながら、ちょっと残念です。
ま、何はともあれ、柱頭です。
実は、ここでも逆行してしまって、いきなり磔図に遭遇してしまったのですが、やはり、時系列順で行きたいと思います。磔図ですから、新約聖書かと思うのですが、最初は、なぜか旧約に遡ります。
アダムからイブが生まれる場面から始まっています。
そして、りんご食べちゃうとこ。アワアワしているもんで、ひどい撮影で残念です。
そして、受胎告知。
ガブリエルは、まじめ一辺倒の表情で、マリアが「ヤダ~、なにこの人」みたいな表情で身をくねらしているのが、シモーネ・マルティニの絵を彷彿とさせませんか。こういう表現って、伝統的にあったんですね、きっと。
エリザベツ訪問。
どちらもお腹ぽっこり。手がきれいだな~、と思いきや、腕が、なんかネジみたいで変わってます。
柱頭は、少なくとも三面にモチーフが彫られているために、実は、撮影も大変なんです。場所によっては、どうしても光の関係で、わたしの安物カメラでは、うまく撮れず、結果、ぼけたものばかりになってしまいました。
あんまりひどい誕生シーンとか飛ばして、いきなりエジプトへの逃避場面に行きます。
で、さらに飛ばして、いきなり洗礼。
らくだ皮の衣を着たヨハネさん。ヨハネのらくだ皮、聖書にまったく無知な当時はもちろん知らなくて、なんかいつも変なものまとってるよなぁ、と思っていました。
大体、絵画でもこういう風に彫られることが多いですが、でも、らくだの皮って、決して模様とかないのに、なぜこうふさふさしたような感じで表されるのでしょうか。図像学的に、そうなってしまったのでしょうが、不思議。
キリストは、年相応なおっさん風ですが、やはり手がきれいです。
こちらは、悪魔君がいるので、誘惑かな。でも修行中には見えないけど。
今度は、エルサレム入場。
先日、Muraの教会の柱頭で、ロバが出てくる以上、エルサレム入場しか考えられない、けど、どうも変、と悩みましたが、こちらは、子ロバもちゃんといて、かなり分かりやすくなっていて、安心です。
こちらも、同じ柱頭のほかの面で、エルサレム入場。十二使徒がずらりと行列になっているということのようです。なんか、執拗に衣を彫ったね、というモチーフです。デザイン的に洗練されていると思います。
三面を使うと、エピソードを絵巻物のように表すことができるという例。なるほどね。
続きは次回。
- 2015/03/23(月) 01:12:33|
- カタルーニャ・ロマネスク
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わ~、びっくり。
今度は、ローマ編を一部アップデート。
とっても地味な教会、サン・ジョバンニ・イン・ヴェラブロのとこに、書き込んでます。
最初に訪ねたときは、結婚式で近寄れず、そしてネットでも余り情報が入手できなかったので、ほとんど何も書けなかったのですが、去年春に訪ねたときは、無事に入ることが出来、その上小冊子をゲットできたのです。
早くアップデートをしよう、と思い、その小冊子を、ずっと机周辺に置いてありました。約一年、置いてあったということで、片付かないわけだよ、と改めて、あきれ返ります(今も、そういう書籍や紙関係で、机の周りはこんもりしています)。
そういえば、去年も、こんなスタートを切ったような気がします。よし、このペースで、と思ったのも束の間、結局そのあとは、ずっと更新できないまま年末になってしまったような…。
今年は、ちょっと違いますよ。新しいパソコンを購入して、ウィルス対策のソフトも入れ替えて、流れが出来ています!
とは言え、新しいテキスト・エディタを使い出したら、どうもいろいろな設定が分からなくて、サイトの背景色とか文字色とか、望まない色になってしまっています。
とか何とか言いながら、現在、パレルモ編および、初めてのリグリア編を、鋭意準備中ですので、少なくとも昨年に比べれば、かなり意欲的…。
パレルモ編は、とっとと片付けちゃおうと快調だったのですが、ついつい関連本を発見してしまい、まず読まないと、ということで、若干不吉な遅れ感もありますが。
それにしても、研究書的な本が、読みやすいと、嬉しくなってしまいますね。
- 2015/03/22(日) 02:33:19|
- ロマネスク全般
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カタルーニャ・ロマネスクめぐり、その12
サンタ・マリア・デ・レスタニー教会Eglesia de Santa Maria de l'Estany、いよいよ、お楽しみの回廊Chiostroの見学です!
既に興奮状態で、アクセス。
いや、この回廊は、本当にすごいです。教会がすごく変容してしまったのに、こちらは、当時のままを、よくとどめています。
そういえば、修道院の場合、本体の建物は影も形もなくなっても、回廊だけ残されることが多いような気がします。建築として、美しいから?教会にくっついているから?
なぜでしょう。
中庭を取り巻く柱は、小さくて細い優美な二本組み。柱頭も一つ一つが小さいですが、どれひとつとして同じモチーフがありません。
どこからどう見たらいいのかも分からないけれど、とにかく歩き出します。この辺りで、例によって、相当アワアワしています。
今、同地で入手した簡単なパンフレットを見ると、わたしは、西側から歩き出し、北面、東面、南面、という順番で、鑑賞したようです。博物館との連絡口は南面となっています。
悪魔の図。
いかにもな感じが、愛らしいというか。
東面は、俗世っぽいモチーフが多くあります。悪魔の図とか、下の、狩の場面とか。
ウサギが飛び跳ねています。弓矢じゃなくて、斧で殺そうとしている、なんとなく冷酷な空気、恐ろしい狩。動物も、怪物っぽいので、寓意が入っている?
悪魔の図には、かなりボツボツと穴が開いているのですが、カニグー同様、光る石をはめる等がなされていたのかもしれないですね。この悪魔図は、夜見たら、ちょっと怖いのかも。
こちらも狩。同じ柱頭のものと思います。こちらは、鷹狩りみたいですね。
服装が猟師というよりは、貴族的な?
割と普通の感じの柱頭。動物に挟まれた一人の人間。
頭を抱えているのかと思ったら、動物の前足が頭に置かれているのでした。
これも、モチーフの発想は似ているけど、表現がかなり違うタイプ。
この、なんとも珍妙な生き物は、好み~。ルシヨンでも、見た気がします。この辺に、こういう変な物好きな石工さんがいたのね~。
帰りにブックショップで本を物色したのですが、お手ごろで、内容も簡単ながら、求めているものに近かった唯一の冊子が、当然のようにカタラン語オンリー。そりゃ、ルシヨン地方よりは、ここの方が「カタラン語だけ」という状況を納得はしやすい。現地語なのは間違いないし。でも、カタラン語って、フランス語よりも厳しいです。
ということで、ちょっとゆっくりペース。
- 2015/03/21(土) 01:06:41|
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カタルーニャ・ロマネスクめぐり、その11
サンタ・マリア・デ・レスタニー教会Eglesia de Santa Maria de l'Estany、続きです。有名な回廊に移動する前に、もう少し教会を。
全体に修復再建が激しくて、後陣側ももちろん同様なんですが、でも、ファサードに比べると、とても美しい姿なんです。真ん中の大きな後陣の円筒と鐘楼の姿が、フランスで見るものの雰囲気にも似ていて、すっきりと優美。
それに、教会裏側は、ちょっとした公園に整備されていて、真冬とは思えない日差しに、しばし日向ぼっこで、一服。なんだかとっても幸せなひと時でした。
再建の中にも、オリジナルのものも一部あるかと思います。地味ながら、ちょっとした彫り物が見つけられるんです。
小さい後陣。
かなり再建。多分全部。でも、がんばってます。
一方、こっちはオリジナルっぽい風格。
この市松模様って、何でこんなに好きなんだろう、と不思議ですが、好きですね、わたし。付け柱が好きなのと同じくらい、自分でも、特別に「好き」の理由がよくわかりません。
柱頭。
ライオンっぽい獣のフィギュアの尻尾が、キメラみたいになっていて、それが、ナスカの地上絵のような一筆書きのフィギュアになっています。なんでしょうね。いずれにしても、愛らしいです。
実は、有名な回廊は、直接教会とつながっていて、この辺りから入れるのかと思い込んでいたので、後陣、ぐるりと回って、覗き込んだりしていました。ロマネスク的にはこんなに有名なのに、教会には、回廊の場所の案内板とかおいてない。毎度のことですが。
ファサードの方に戻り、先に進んだところに、回廊のために作られた博物館があります。
ここで、またぞろ間抜けな事件。
到着したときに、コートを羽織ったものの、ちゃんとファスナーまで留めずに、アワアワと教会見学を開始してしまいました。何でこういつも、焦るんでしょうか。教会は消えるわけもなくそこにあるし、時間もたっぷりあるというのに。
回廊に移動するときに、寒かったので、歩きながら、改めてファスナーを閉めようとしたところ、ありがちなことですが、ファスナーが周囲の布地をかんでしまって、上にも下にも動かなくなってしまったのです。
歩きながら悪戦苦闘。博物館の受付にたどり着いた途端、挨拶もそこそこに、「セニョーラー、これが、ここが、動かないんです~」、とほとんど涙目で訴えるわたし。情けない。
受付のおばさまは、まったく驚かず慌てず、あらあら、とか言いながら出て来てくれて、ああでもないこうでもない、と一心不乱に問題に取り組んでくれました。もういいです、後で何とかします、と言っているのに、渾身の力をこめて、約5分後、見事に解決してくださいました。
なんて親切なのでしょう。そして、なんて間抜けで図々しいんでしょう、わたしと来たら。
開館して数分後の、その日一番のお客さんだし、オバサンも余裕があったのでしょうけれどね、でもこういうことは、フランスでは絶対に起こりえないと思います。っていうか、フランスではこういう態度を取れないですよね。
うーん、やっぱりスペインはいいな。
次回、お楽しみの回廊です。じっくり。
- 2015/03/20(金) 06:33:06|
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カタルーニャ・ロマネスクめぐり、その10
本来の目的地、レスタニーL'Estanyに向かいます。
結構アップダウンを繰り返す山道でしたが、事前に、グーグル・ストリート・ビューで、数メートルずつ画像を見るという、”坂道恐怖症”にしか出来ない、というより、そんなこと、普通の人は馬鹿馬鹿しくてやらない作業をしていますから、さほど怖い気持ちもなく、無事、見覚えのある風景にたどり着きました。10時をわずか過ぎた所。
町の広場に駐車します。
2月だというのに、見事な青空。
しかし、車を降りたら、意外と寒かったので、慌ててコートを着ました。
広場に面した建物の壁に、いきなり周辺地図。
14世紀におけるレスタニーの修道院管轄地域、ということらしく、わたしの目的には余り関係のないものでした。でも、ことさらに14世紀の状況を表すということは、おそらくレスタニー修道院が最も繁栄した時代ということなのでしょうね。
今はほんのちっぽけな村で、街道からずいぶんと中に入っていますから、人の往来というものも余りなさそうですが、当時は、修道士や巡礼の往来が激しくあった可能性もあります。
教会は、この広場に沿って、建ってます。サンタ・マリア・デ・レスタニー教会Eglesia de Santa Maria de l'Estany。
地味。というよりも、再建はなはだしく、余りそそられないファサードです。レスタニーって、すごく有名だけど、本当にこれ?と疑問を覚えつつ、とりあえず入場。
地味でした、やっぱり。無装飾は、それはそれでいいのだけど、修復感が強くて、余り感じられないのが悔しくて、一応、あちこち宝探し。
円柱の下に、怪しい彫り物。
下半身が火星人化して手を上げている人のフィギュアの脇には、でかい動物がごろごろしています。とっても稚拙な彫り物で、地元の石工さんが、ちょっと彫ってみようかな、とか何とかやってみたような感じ。
一方、柱頭の方は、プロの作品という感じでした。
残念ながら、傷んじゃっています。向かいにあるもうひとつの方は、もっと傷んでいました。
雰囲気がよかったのは、鐘楼の下に当たるクーポラ部分。
こういう一つ一つの石積みって、キュン、という気持ちになってしまいます。ここのは、形がちょっと変則。
もうひとつは、脇の小さい後陣。
大好きな市松の帯と、これ以上素朴になりようのない洗礼盤。これはロマネスク時代のものらしいです。
今更ながら、現地で撮影した説明版を見ていますが、カタラン語は、きびしい。かろうじて、15世紀の地震で、破損したということが分かりましたが…。
現地では、修道院の方の本しか入手できなかったので、今更確認したのですが、なぜかと言うと、ひとつ大きな疑問が。
この写真。クリプタに見えますが、どこでしたでしょう?
この教会の中なのは確実で、構造的には地下のように見えますが、まったく記憶なし。説明版の建物図にも、クリプタは見当たらず。ただの翼廊?
現地を訪ねて、様子を記憶していらっしゃる方がいたら、是非ご教示願いたいです。
いやはや、これまでは、時間がたっても、ことロマネスクに関しては、意外と覚えていられたのですが、このカタルーニャはたったの一年前のこと。記憶力、ますます当てにならなくなってきました。いろいろとスピードアップしないといけませんね。
- 2015/03/19(木) 01:26:42|
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カタルーニャ・ロマネスクめぐり、その9
スペインは、あらゆる意味で大好きな土地なのですが、唯一玉に瑕なのが、時間配分。朝が遅くて宵っ張りなんですよね、いろんなシーンで。
ロマネスク修行旅では、たいてい早起き勝負で駆けずり回るわたし。普段の生活では早起きが苦手なのに、修行旅となると、それが苦でなくなるどころか、早起きして駆けずり回らないと損した気分になる始末。
ところがスペインでは、早起きしたところで、教会が開いていない、ということになってしまいます。朝は、大抵が10時から。ホテルの朝食も、遅かったりするので、素直に合わせればいいものを、特に今回の旅のように短期だと、もったいない病で、つい早起きして、つい早く出発してしまいます。
そんなわけで、当初は、10時からオープンの教会を目指すため、ゆっくり目の出発を予定していたのに、開いてなくても外観が見られればよさそう、という教会を目指すこととしました。無理やり修行しちゃいます。
行き先は、サンタ・エウヘニア・デ・ベルガ村Santa Eugenia de Bergaのサンタ・エウヘニア教会Eglesia de Santa Eugeniaです。
文字通り、村の中心に建っています。後陣側からのアクセスとなりましたが、教会の建物にしては、ずんぐりした鐘楼の存在感と、三つの堂々とした後陣に、圧倒されました。
ファサード側の様子。
場所的に、修道院があったというようなことはないはずですが、右側には、かつて洗礼堂とか付属の建物があって、その跡地がこういうコンプレックスになっているのかな、という様子です。全体は、再建修復が激しくて、ちょっときれいにしすぎ感も漂いますが、村の清潔な雰囲気とマッチしていて、決して嫌味ではありません。
鐘楼のディテール。
本堂の上に聳え立ってしまっているので、三層というのか、二層というのか。定石どおり、天辺の層は三連窓、その下は二連窓。その効果があるのかどうかは分かりませんが、開口部が多く、ローマの鐘楼を髣髴をさせます。石が、黄色い凝灰岩っぽくて、雰囲気は異なりますが。
アーチ装飾のところは、レンガを使って、アクセントにしています。いずれにしても、相当部分、再建かな。
さて、到着したのは、9時くらい。鐘が鳴っていましたが、おそらく9時の鐘だったのでしょう。そして、本堂はもちろん固く閉ざされ、何一つ情報はありませんでした。村の雰囲気からして、9時とはいえ、スペイン的には、超早朝だと思い、鍵を求めて近所の家々を徘徊するのもはばかられますので、ここは、当初の予定通り、外観だけをチェックすることにしました。
ウワ~、言っちゃなんですが、まったく面白味のないファサードです。でも、扉周りには、ちょっとした装飾があります。
地味だけどね。でも、この激しい再建修復を見ると、よくここだけが残ったものだ、と思わされます。
どすこいスタイルの人物フィギュア柱頭。
正面に当たる角っこ以外のフィギュアは、壁に半身めり込んじゃっているというのが、哀しい。柱頭は、他のエレメントと切り離して、そこだけ彫り物して、後から乗っける、というイメージですが、こういう場所の柱頭は、この場で彫りこみしているんでしょうねぇ、やはり。だとすると、石工さんは、相当疲れる作業です。
アーカンサスの間に人の顔。つる草モチーフ。素朴ですが、意外としっかりした彫り物です。顔なんて、髭の一本一本が繊細に表されています。アーキボルトも、それぞれ繊細に装飾彫り物がぎっしりです。
一番内側の部分には、お干菓子状モチーフが適度な間隔で並んでいて、これはかわいらしいです。
一番凝ったアーキボルトの彫り物は、この層かな。
うまい彫り物ですよね。村の石工というよりは、ちゃんと修行した石工さんの仕事と見ました。この辺りは、本当に小さい地域に教会や修道院がひしめいているから、建築関連の職人さんも数多く活躍していたのだと思います。
地味な教会ですが、やはり見るべきものはあったし、すきま時間に訪ねたのはベストな選択でした。
- 2015/03/18(水) 07:32:02|
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