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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

18万個の鍵!

ベネチア・ビエンナーレ2015その2

まずは、メイン会場であるジャルディーニです。




半端な形の彫像が、ずらりと並んでいました。インドのグループの作品で、ファイバーグラス製の像。入り口のオブジェって言うのは、小粒でも、それなりにわくわく感を高めてほしいものなんですが、このスタイルが、ちょっと陳腐って言うか、古臭いっていうか、え~、こんな感じ~?もしかして、今回だめかも~?と、わくわく感とは正反対の感覚を抱いてしまいました。

そんな感覚を抱きつつ、取り急ぎ、とっつきにあるスイス館から。




あれ?なんかきれいだし、いつもとちょっと違う感じ?




これ、わかんないでしょうねぇ。かなり大きなスペースに、なんと液体が満たされているんです。ゆらゆらプカプカっていう雰囲気。

Pamela Rosenkranz - Our Product

「我々の製品」って言われても、なんのこっちゃなんですけどね~。

スイス館は、会場のとっつきにあるので、大体いつも最初に立ち寄って、そして、大体いつも、インパクトがなかったりします。でも、これは意外と面白くて、説明フライヤーをもらったんですが、読むの、めんどくさ!
現代美術って、シンボリズムとか、深遠な意味とか、本人だったりキュレーターだったり、批評家だったりが多く語っちゃったりすることが多いですが、どうもそういうの、苦手。主に、人工的で人に何らかの作用を及ぼすような物質を通して語る作者が、パビリオンへの訪問者をそういったものそのものの中に取り込む的なことが、ずらずらと書かれておりまして、しゃらくせーって感じ。

わたしは、批評家でもなく批評をするつもりもないので、面白いかどうか、がすべてで、面白いものを見るために、毎年せっせと通っているわけで、面白ければ、それでよし。
という基準で見て、これは結構面白かったんです。
意外と狭い緑の通路の突き当たりに、ひたひたのプールっていう予想外の展開もよかった(どっちも、好きなアイテムというか状況です、自分でも変だと思うけど)。
狭い場所から覗き込むというスタイルは、数年前に訪ねたエトルリアの地下墳墓を髣髴とさせられて、自分の中での経験が結びつく面白さを味わいました。
ひたひたの水っていうのは、たとえば数年前のフランスの田舎の運河とか、ミラノ郊外の運河とか、ベネチアの運河もそうですが、人工的な縁に水がぎりぎりひたひたという状況、自分にとってはひどく魅力的でゾクゾクするんですよね~。
こういう作品は、実際にその場で見ないと、絶対に分からないっていうのも、どうでもいいんだけど、ちょっと得した気分、みたいな。

ロシア館。




こんな色でしたかね?白と渋い青、ロシアっぽくて素敵。ここは、割と面白いことが多いので、期待して、まずは地上階の入り口から入りますが、あれ?
真っ暗で、周囲には、様々な映像。そして、天井の一部がガラス張りで、上階を歩く人が見えます。




何だろう。意味不明。
では、上階の入り口に。入って、びっくり。




巨大ガスマスクで、ちゃんと人が入っています。
映像で、動いているんで、度肝抜かれました。だって、大きいんですよ、これ。でも縮尺をものともせず、人が!と思ってしまうその落差がね、人の視覚って言うのも面白いもんだと思いました。

下の階にあったガラスの床のある部屋は真っ暗で、その先はいきなりこんな部屋。




目がつぶれそうにサイケで派手な色で、早々に退散。ここは、フライヤーも何もなく、意味不明。何だろう、ロシアって分かりやすいときと、分かりにくいときの落差が激しい~。

そして、今回ちょっと期待の日本館へ。




赤い~!鮮やか~!なんか知らんが、超インパクト!




床に古いボートが二艘。それぞれのボートから天井まで、赤い糸です。そして、無数にぶら下がっているのは。




鍵!それも古いタイプの鍵ばかり。そういえば鍵がテーマだったわ。

Chiharu Shiota - The Key in the Hand(掌の鍵)

ベルリン在住の若いアーティストの作品。鍵は、個人の財産を守るもの。家を出るときはいつも手にしているもので、常に身に着けているもので、人の記憶ともつながっているもの、とか何とか。ほぉほぉ。

赤い糸が、印象的。わたしは、手まりが思い浮かび、やっぱりちょっと伝統的日本風味なのかと思ったり。もっと斬新に、日本風からはずれた方が、もっと面白かったのでは、という意味で…。

それにしても、鍵、18万個とか。




どれも相当古び感を出しているし、そもそも形も古いんですが、わざわざ作った?それとも、鍵集めプロジェクトでもやった?




もうひとつ、建物地下の部分で、ビデオを流していました。




幼稚園とかで、子供たちに、記憶を語らせているのです。先を急ぐので、5分ほど見ただけですが、これ、面白かった!生まれたときどんなだったか、語るんだけど、ぐるぐるしてね、ぱっと明るくなってね、みたいな具体的な話を、確信的にしてる、3,4歳の子供たち。そういえば、産道を通って生れ落ちたときの記憶があるという話をしている作家さんがいたような。
もしかして、人って、本当にそのときの記憶が、どこかにしまいこまれているのかしらね。普段、忘れちゃっているけど、何かのきっかけで、ふふふっと記憶がよみがえったりするのかしらん。

このビデオも含めて、テーマに沿っているのかな。でも、未来というより、過去の感じ。

日本館のすぐお隣の韓国館は、ビデオ作品でした。




大型スクリーン二つで、同じ時間軸の同じストーリーを角度を変えて撮影しているというシチュエーション。ぱっと見、なんていうか、これ、ミラノ・サローネのサムソン展示?と見まごうような、そういう雰囲気なんです。
白い女の子が、頭にアンテナ立てて、超未来的な家で、一人引きこもりの未来生活しているらしい様子を延々と撮っているの。




ちょっと前の近未来映画的な映像ばっかりで、やっぱりサムソン系。
アートと全然関係なく、これほしい!と思ったのが、ランニングマシン。ハムスター用の回転するわっか、アレを人間サイズにして、回転枠の内側は森林設定とかで、まるで外で走っているようなんです。で、距離だったり、平均時速だったり、心拍数だったりも表示される。




あ~、やっぱりサムソン。作りそうでしょ、こういうの。
とか何とか考えながら、つい引き込まれて、結構しっかりと見ちゃったです、このビデオ。

この辺りで、入り口でもらったパンフレットを、初めてちゃんと見て、今回のテーマ、All the World's Futureというのを知りました。
そんなことも知らずに見てたけど、実は、この辺りまでは、テーマはともかくとして、面白くて、普段はアルセナーレのインパクトに負ける各国パビリオンが、今回は勝ち?と思っていました。日本も韓国も、わたし的には高得点。スイスもまぁまぁ。

続きます。

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  1. 2015/09/29(火) 05:55:15|
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何度でも迷う、サン・マルコ発ベネチア・サンタ・ルチア駅徒歩。

ベネチア・ビエンナーレ2015その1




毎年のビエンナーレ詣で。
ビエンナーレ=二年ごと、という意味ですから、文が既におかしいんですが、美術と建築がそれぞれ二年ごとでやっているので、建築ビエンナーレにも行くようになって以来、毎年詣でとなってしまったのです。

今回は、ミラノからの日帰り旅で、ベネチア滞在は、9時45分より18時20分まで。会場までは、時間節約のため、列車駅より水上バスで直行します。
大型クルーズ客船や、帆船が停泊しているのを横目に、甲板に立って、一年ぶりのベネチアの空気を堪能。




水上バスVaporettoのチケットは、このところ毎年値上がりしているように思います。今年は、シングル・チケットが7.50ユーロにもなっていました。おそらく、世界で最も高い、公共交通のチケットではないのでしょうか。
とは言え、乗るだけで観光バス気分と思えば、仕方ないとも思いますが、それにしても高い。貧乏なわたしとしては、毎度、行きに利用するだけで、後はひたすら徒歩です。だから、ビエンナーレの日は、多分3万歩くらい歩くんじゃないでしょうかね。もっとかな。
ちなみに、居住者には、他の町のバス・チケット(ミラノだったら1.50ユーロ)と変わらない金額が適用されていると思います。




日帰りだと、常に時間に追われてしまうので、この、行きの水上バスの時間だけが、ベネチアの美しさをのんびりと堪能できる時間。何度目にしても、やはりその独特の美しさには感動させられます。

今回、帰り道で、大型客船が走っているのを目にしました。




サン・マルコにも比較的近い岸壁に横付けされているのは見たことがありますが、走っている姿全体を見るのは、おそらく初めて。




そんな人が多いのでしょう。道行く人々は、みんな目が立ち止まって、撮影していました。
それにしても巨大です。旅客のほとんどが、屋上に出て接岸を待っていたようなのですが、その数にもびっくり。船のキャパって、半端ないですね。
数年前、イタリア沿岸で沈没した客船も、おそらくこの規模だったと思うと、そりゃ恐ろしいことだったろうと、改めて思いました。

帰り道には、必ずサン・マルコ広場を通ることにしています。目的は、サン・マルコを一目拝むことでもありますが、超方向音痴のわたしにとっては、サン・マルコからなら駅までの道が、かなりしっかりと指示されているからでもあります。他を行くと、必ず迷う上に、今回地図を忘れてしまったので、切実でした。

今回もそういうわけで、人ごみに閉口しながらもサン・マルコ広場に足を踏み入れました。そして通りがけに、ドゥカーレ宮殿側のサン・マルコ寺院の装飾に、ふと目が留まりました。




ラベンナ風柱頭。というより、ビザンチンということなのでしょうね。
これまでにも、きっと何度も撮影している柱頭なのだとは思いますけれど、今回目に留まったのは、この夏訪ねたラベンナの写真を、最近、ブログで整理しているところだからだと思います。

改めて、ラベンナ風の透かし彫り柱頭が、ビザンチンのものなんだ、ということに気付かされました。




これなんかも、ちょっとオリエント風で、やっぱりビザンチン風装飾なのかな。再建っぽいけれど、オリジナルのモチーフもきっとこんなだったのでしょう。
サン・マルコは、特に外側は、後代に相当手が入っていて、時代が混ざっているので、柱頭なんかもいろいろなんですが、ざっと眺めて、いくつか、ビザンチン風が見つかりました。




どこに行っても、ついつい探してしまいます。ま、それはおいといて。

2015ビエンナーレです。




今回のテーマは、「ALL THE WORLD'S FUTURES全世界の未来」。なんだか大上段に出ましたね。キュレーターは、勉強不足で、見たことも聞いたこともない、オクウィ・エンヴェゾーさん、Okwui Enwezor。ナイジェリア出身の方だそうです。

では、次回より、お楽しみに。

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古けりゃいいってもんでもないけれど。

夏休み旅その9、ラベンナ7

次に向かったのは、サンタガタ・マッジョーレ教会Basilica di Sant'Agata Maggiore。ここは、前回来たときに入れなかったので、気になっていた教会のひとつです。




背の低い円筒形の鐘楼が、教会前面に建っています。そういえば、サンタッポリナーレ・ヌオボ教会でも、同じような位置に鐘楼があります。鐘楼の位置というのも、いろいろです。
他の土地で見た、同じような位置関係の鐘楼も、別に地形の都合というようなこともなかったと思うので、何か宗教的な都合があるのではないか等と想像すると、ちょっと面白いですね。今後は、忘れず気にしてみようと思います。

ちなみにこの鐘楼は、16世紀頃の再建のようです。

さて、この教会。今回は、無事中に入ることが出来ました。




小ぶりのバジリカ様式で、建てられた当時の雰囲気は残っているものの、漆喰塗りが残念です。そして、正面の後陣部分にあったはずはモザイクは、残念ながら、見事に失われてしまったということが、分かりました。




後陣は、こんな感じのモザイクで、覆われていたようなんですよ。
教会守らしいおじさんがいたので、お話を聞いたのですが、17世紀後半にあった地震で崩れたということでした。ラベンナでは、その地震で、他でも失われたモザイクがありましたので、結構な規模だったと思われます。
イタリア中部は、最近地震が続いていますので、地震周期が300年から350年程ということなんでしょうかねぇ。怖いな。

なぜ、絵で再現できているかというと、17世紀という時代ですから、当時の絵画などに、様子が残されていたようです。記録はありがたいものですね。そして、本当にわずかですが、証拠も残っています。




窓枠の部分に、一部、彩色も美しい幾何学モチーフの装飾的なモザイクが見られました。
本当に残念なことですが、人災ではないのが救われます。

後陣の下のほうには、おそらくロマネスク時代頃のフレスコ画の後が見られます。




これは、人災的に失われたものと思います。

教会建物は、幸い、構造はそのまま、柱や柱頭は、しっかりと古い時代のものが残されています。




ローマ時代のマテリアル再利用の様子です。




古いものは、やはり美しいと思います。漆喰の塗られてしまった壁の寂しいこと。

とは言え、明らかに古そうながら、若干胡散臭いと思いつつ、一応撮影しといたこちら。




大きな柱をぶった切って、説教壇ぽい感じにしつらえた?とか勝手に考えていたのですが、そうではなくて、ちゃんと6世紀頃の説教壇だったらしいんです。
なんか、教会全体が新しい雰囲気になっているのに惑わされて、置かれているものに正当な評価が出来なかったかも。
あとから図面を見ていたら、他にもチェックすべきものを発見して、反省しました。

ちょっとね、この子が気になっちゃって…。




まるで、作り物のようにじっとしていたのに、いきなり動いたからびっくりの猫ちゃん。どうやら教会守のおじさんの子だったみたいなんですが、教会内部で猫がいるのは初めてだったかも。持込が許されているのがすごいですね。タマ駅長のような存在なのか?

教会前には、大型の石棺がごろごろ。




多分土地柄、やたら出てきちゃったでしょうから、数に合わせて、普通にごろごろしていますね。石棺を研究している人には、天国みたいな町かも。

ラベンナでは、モザイク的にマイナーな教会をもうひとつ。
サンタ・マリア・マッジョーレ教会Basilica di Santa Maria Maggiore。




超観光スポットであるサン・ヴィターレ教会の脇にあって、観光客からはあまり相手にされていない教会ですが、見た感じは、まさに古いバジリカ様式だし、鐘楼も典型的なので、ちょっとだけ立ち寄りました。




中はバジリカ様式だったけど、実は、再建でした。6世紀の教会の上に、16世紀頃、今の教会が建てられてもので、鐘楼だけが9世紀から10世紀頃の古いものということで、上に紹介したサンタガタと反対の状況でした。
6世紀の教会には、間違いなくモザイクがあったのでしょう。

現存するモザイクだけでも、かなりの数であり、そして質はすごいものです。地震等の天災、破壊などの人災がなく、オリジナルのモザイクがすべて残っていたとしたら、一体どれだけのものがあったことでしょう。
これまでは、観光的に有名なモザイクだけをなぞる旅だったので、失われたモザイクのことまで考えたこともなかったし、モザイクがなくても現存している教会を訪ねたことすらありませんでした。往時のラベンナ、ひいてはローマ帝国を想像するためには、こういう場所をも訪ねる必要があるように思いました。

そして、こういう教会でも、ちゃんと開いているべき時間に開いている、というのが、観光都市としての素晴らしさ。教会を訪ねる旅で、これほどスムーズにすべての扉が開かれているということはめったにないと思います。

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金魚の泳ぐモザイクのクリプタ

夏休み旅その8、ラベンナ6

ラベンナ、今更ですが、モザイクにかかわる建造物が、この規模の町にこれだけぎっしりつまっているというのは、まさに奇跡。おそらく、発展しすぎることもなく、かといって極端に衰退することもなく、現代まで、常にそこそこの規模を保ってきた町だったことが、幸いしているのでしょうねぇ。

次に訪ねた教会については、これまで、まったく気付いていなかった場所。今回、直前に慌てて、最低限訪ねるべき場所を調べていて、これは絶対に行かねば、とチェックを入れた教会です。
サン・フランチェスコ教会Basilica di San Francesco。




サン・フランチェスコが世に出たのは13世紀になってから。ということは、サン・フランチェスコに捧げられた教会というのは、当然さらに後の時代のものとなりますから、どうしてもわたしの興味の対象より、ずいぶんとあとの歴史になってしまうのです。
そのため、サン・フランチェスコに捧げられた教会は、とりあえずすっ飛ばすことが多いのですが、中には、ここラベンナのサン・フランチェスコのように、もっと古い時代の神殿や教会の上に、あとから建てられた教会や、後代にサン・フランチェスコに捧げられるようになった教会も多いので、なかなか難しいものです。

それにしても、1285年ごろ生まれたというのに、そして遊び人をやっていたというのに、宗教にのめりこんだら一直線で、あれよあれよという間に、教皇にも一目置かれる存在となってしまって、13世紀には、既に各地の教会が捧げられたというわけですから、フランチェスコとは、まったくもってすごい人ではありますね。
彼に盲目的に従ったキアラとともに、映画になったりするくらい、その壮絶な人生というか、あまりにもドラマな人生が、いつの時代にも人々の胸を打つ何かがあるというのは、今更、心に留まりました。

話がそれました。
さて、ラベンナのサン・フランチェスコ教会ですが、今ある教会建物外観は、修復も激しく、かなり新しい雰囲気となっている中、鐘楼だけが、古い時代の名残をそのまま残しているもの。
その鐘楼は、ラベンナ特有の円筒ではなく、ローマ風の、辺が大きいどっしりとした四角形です。今ある建物のどっしり感と、調和していますが、10世紀頃の古いものです。




後陣側からアクセスしましたが、後陣もすっかり新しいレンガになっていて、周囲の近代的な建物と並んで、妙にしっくりとなじんでいました。

さて、この教会で気になっていたのは、古い時代の教会後陣が、クリプタとして残っていて、床面モザイクのあるそのクリプタが、金魚の泳ぐ池になっているというからです。

後陣脇の入り口から本堂に入り、内陣付近に誰もいないことを目にするや、一直線に突進しました。




これです、これこれ!事前に写真で見ていましたが、どういう構造になっているのか、いまひとつ分からなかったんですが、なるほど!

ちょいと説明しますと、これが、ファサード側から見た後陣方向。




かなり大き目のバジリカ様式で、壁は漆喰で真っ白。木製の天井が、かろうじて当時の雰囲気を残している感じで、風情はなくなっています。
正面の内陣部分が、かなり持ち上がっているのが分かるでしょうか。




祭壇の前が、両脇から降りる階段になっています。そして、その階段の下に、小窓が開けられていて、そこから、今の後陣部分の真下になるクリプタの様子が見えるようになっているのです。




結構小さな窓なので、人が多かったら大変なことになります。
窓の脇に、有料の明かりがあり、小銭を入れて点灯するシステム。それがないと、ほとんど暗闇です。

先に書いたように、誰もいなかったので、突進して、すぐに明かりをつけたわけです。
最初は、ただ興奮して、全体の雰囲気を捉えることに捉われてしまいましたが、しばらくして、透明な水の下のモザイクが目に入ってきました。




文字は、ギリシャ語とラテン語があるそうです。上の写真は、小窓の正面にありますが、左にはずれた方に、別の文字が。




この辺りから、我々に気付いて、やってくる人々がいました。それも子供連れ…。遠慮がちな人々でしたが、子供にはかなわず、前に出てくるよう譲らざるを得ない雰囲気となり…。
それでも、明かりが、結構いつまでも続くので、貧乏根性で、完全に立ち去ることが出来ないわたし。




子供と一緒になって、金魚に喜んだり、しつこく堪能しました。




それにしても、美しいクリプタ。水の効果も素晴らしいです。ただ、柱頭とアーチも素晴らしく魅力的なので、実際に足を踏み入れることが出来たら、また違った見え方がするだろうし、やはり上から眺めるよりは、柱頭の間を歩いてみたい気持ちの方が強いです。
でも、踏みしめ可能だったら、もしかすると、モザイクは、これほど美しく保たれていなかったかも知れないです。この水がいつからあるか分からないのですが、こういう構造になっている以上、そしてその構造が、さほど新しいとは思えない以上、結構な昔からこうなってしまったのでしょう。
クリプタはそもそも地下ですから、水が入り込んじゃうケースというのは、割とあるのですが、それで訪問不可能な場所もあることを考えると、ここは、珍しくも、それが幸いした稀有なケースなのかもしれません。

正面入り口に向かいながら、本堂も見学。
柱も柱頭も、おそらくローマのものの再利用と見受けました。




入り口近くの片隅には、ローマっぽい石棺なども置かれていました。




憎いほどのハイ・レベルな浮き彫り。ローマの技術は、しみじみすごいものがありますね。
でも、わたしの好みは、こっちの方かな。




中世の浮き彫りが、いくつか壁にかけられていました。

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犬掻き(?)で逃げる豚3匹…。

夏休み旅その7、ラベンナ5

サンタッポリナーレ・ヌオヴォ教会Basilica di Sant'Apollinare Nuovo続きです。

ここでは、イケメン含め、本当に美しいモザイクとともに、びっくりするくらいかわいらしい独創的な作品も見つけることが出来ます。
いや、当時は教会装飾ですから、かわいいとか美しいという見方は、本来的外れだと思うのですが、でも、そうなんだから仕方ないですね。

聖書エピソードが並んだ、最上段、各エピソードの間には、同じ装飾的なモチーフが挿入されています。




これ。天辺に十字架があって、両脇に鳩がカップルで描かれています。
そして、各エピソードの下にも、鳥のカップルが。こちらの鳥は、色も形も、実にいろんな種類。




ラベンナのモザイクの中には、そういえば、動物や植物が、ふんだんに使われています。それにしても、ここの鳥たちは、今まで注目してなかったと思うんです。かわいいし、種類がすごいのにびっくりします。




最後の方に、気付いたので、あまりちゃんと写真が撮れませんでしたが(なんせ、遠い上に小さい…)、でも、結構写実的できちんと描かれているのが分かると思います。野鳥の会の人だったら、種類が分かるくらい、多分。




周囲の帯模様も、とてもきれいです。




これらモザイクに目を奪われて、そのほかの装飾に気付かないということも多いと思うのですが、それはもったいないことです。この教会でも、必ず内陣部分に注目してほしいです。

全体の造りは、ちょっと、どうかなって感じもあるんですが、チボリオの名残。




蛇紋岩とか斑岩とか、そういう石ですかねぇ、ワインカラーの柱に乗っかっている柱頭が、とてもラベンナ的なレース・モチーフなんです。




こういうすかしっぽい柱頭は、ビザンチンなんでしょうか。他ではここまで透かし風は、あまり見ないモチーフです。




そして、内陣の障壁。




内陣と本堂を分割する壁構造は、ロンゴバルト辺りまでの古い教会で見られるもので、その壁装飾も、わたしはロンゴバルド風の浮き彫りが好みですが、ここのは、柱頭の流れというか、本物の透かしになっているから、びっくりです。おっされ~!




最後に、細かくかわいかったシリーズ。




さて、どこにあるでしょう。




犬のようなしぐさの羊。

次は、これ、なんだろう?と思ったら、キリストが悪魔つきの男性を救った場面で、悪魔に飼われていた豚が逃げ出すとかそういったエピソードらしいんです。豚。湖に逃げ込んで、必至に犬掻きしている犬にしか見えないんですけどね。ちょっと情けない顔してるのが、面白い。




ラベンナへ行く際は、必ずオペラグラスや望遠鏡持参のこと。
旅行者情報としては、中庭に立ち寄り、回廊を前景とした美しい鐘楼と堪能するとともに、おトイレを借りるとよいですよ。




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イケメン探しも楽しめます。

夏休み旅その6、ラベンナ4

テオドリコ宮殿と同じ並びにあるサンタッポリナーレ・ヌオヴォ教会Basilica di Sant'Apollinare Nuovo。




ラベンナ特有の、円形の鐘楼が、とても印象的。円形でも、窓の並べ方は四角い場合と同様で、一連窓から、二連、三連、と上に行くほど、区切りの数が増え、区切りの小円柱がほっそりして、縦長に、優美に見えるような工夫がされています。

この教会も、ラベンナの他のもの同様、外観は、地味。ファサード前にナルテックスがおかれて、古いイメージは共通しています。
しかし、ここも、この地味な外観からは想像できない、すごいモザイクがあります。

ここのモザイクは、中央身廊と側廊を区切る壁上部にびっしり。左。




そして、右。




一番下に、女性と男性がずらりと並び、窓のある場所は、聖人か預言者、一番上部、一番小さいスペースに、聖書エピソードが並んでいるという構成です。今回、時間もたっぷりあったので、細部までゆっくりじっくりと堪能できました。

何度もしつこいようですが、ここも、基本的には背景に金を使っているんです。それもふんだんに。でも、全体としてみたときに、目に入ってくるのは、金色というよりも、もっとずっと落ち着いた淡い色彩。ラベンナ、なんですよねぇ、これが。

近寄ると、でも確かに金です。




この教会のイメージとして、おそらく最も有名なマギ。




いい色使いですよね。発色のよい派手な色を使うのですが、組み合わせがよいというのか、ぎらぎらしたいやらしさが一切ないんです。背景も、緑がふんだんに入っているから、金が抑えられているんですね。

とても細かいガラス片を使っているので、相当のアップでも、崩れることがありません。




ほっぺたに、ちょん、と赤を入れたりする技術が憎いっていうか。こういう小さなポイントが、遠めで見たときに、きっと生きるんだろうなと思います。

あまりにもたくさんの人物が描かれているので、ちょっとイケメン探しなどもして見ました。
大天使の一人。




そしてこちらは、ちょっとオリエント入っているような。




やはりビザンチンだから、入っているんでしょうかね。目はパッチリ大きいけど、全体には結構あっさりしてるし、頭が、後光あるけど、ちょっと仏陀系の感じもあって、面白い。

女性の方も、なんかちょっと東洋的な雰囲気あります。




東洋のバタ臭い女、みたいな。
はっ。バタ臭い、なんて、もしかすると、死語?

多分、これまではあまりちゃんと見てこなかった、最上段の小さな絵を、一生懸命撮影してきました。現場で、オペラグラスでも見たんですが、やはり写真の方が見やすい。とにかく、信じられない細かさ。




その上、色がやっぱりびっくりするくらい美しい。




ラザロかな~。包帯ぐるぐる巻き。
この下のも、よくアップで使われる一枚。




すっごく斬新。青と赤って、激しいけど、こんな小さいから、強すぎない。




キリストも、ちゃんと年をとってる。若い頃のエピソードでは、かわいらしい好青年。だんだん渋いオヤジに。




ユダっち。右は聖職者、左は俗人ということで、色もきっと考えてたんだろうなぁ、と思わされます。




最後の晩餐。この構図は、面白い。ぎちぎちで、小さなお魚集団、めざし的な。中央にはお魚だしね。
次回は、かわいいものをフューチャーしたいと思います。

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ラベンナの穴場で、床モザイク三昧

夏休み旅その5、ラベンナ3

アリアーニ洗礼堂の係員に、是非と勧められて、訪ねたのが、こちら、テオドリコの宮殿、Palazzo detto di Teodoricoと言われている建物です。




わたしのいい加減な記憶なんて、まったくあてにはならないものの、ここは来たこともないし、存在すら気づいてなかったような気もします。そもそも、以前ラベンナに来たときは、どのときも、中世にはまっていたからではなく、ただ、モザイクが見たかったのが理由ですから。

テオドリコは、西ゴートの王様で、ラベンナを5世紀終わりに支配した人ですが、その時代、ラベンナはローマ帝国首都だったわけですよね。今はただの地方都市である現実を考えると、歴史って、面白いなぁ、と、しみじみ考えさせられる町でもあります、ここは。




さて、この建物、テオドリコの宮殿、と言われてはいますが、本当は、そんなことはなく、8世紀から9世紀頃に建てられた教会サン・サルバトーレのナルテックス部分だったと、研究者には考えられているようです。
ただ、その教会の壁が、実際にテオドリコの宮殿と接していたのでは、ということらしい。

同じ通りの並びに、このあと訪ねるサンタッポリナーレ・ヌオボ教会があるのですが、その教会の起源はテオドリコの宮殿の礼拝所ということらしいので、どうやら、この辺り一帯に、宮殿があったものということらしいのです。で、その宮殿の床面が、モザイクで覆われていたらしい。考古学の発掘で、その多くが発見されて、今、この建物に展示されているというわけです。




時代や成り行きを考えると、ビザンチンよりはローマ系統のモザイクということになるのでしょうか。いずれにしても、白黒のシンプルなモザイク、大好きです。




こういうデザイン性の高い白黒床モザイクは、ローマ遺跡で目にすることが多いので、やはりローマ系ですね。中世になると、色石系が増えるし、床モザイクは、これほど細かくないですね。
それにしても、素敵。こんな床で生活していたなんて、うらやましい。

色が入っても、デザイン性は健在。




オレンジが、もっとずっと鮮やかだったのかもしれないです。上の方のは、波っぽくて、海に近い土地を感じさせるモチーフ(ラベンナは海からすぐですよ)。




食堂だったり、寝室だったり、書斎だったり、きっと部屋の目的によって、モチーフもそれぞれ考えられていたのではないかと。




人の顔や動物を描くより、こういうデザイン系のものは、より職人さんのセンスが問われます。当時、具象の人と、抽象の人が別れていたのか、優れた職人さんは何でも出来たのか。興味深い点です。




この建物、その後、ロンゴバルドの時代まで、現役で使われたということなので、長生きしたようです。これだけのモザイクで飾られていたら、やはり簡単に壊せないし、使いたくなりますよね。無駄がないです。

展示は、こんな感じ。




発掘で一部が出てきているだけなので、さすがに床面において、踏みしめることが出来るようにはなっていません。

そういえば、以前は、多くの遺跡や教会で、床面モザイクは平気で踏みしめられるところがほとんどでしたが、近年は、立ち入り禁止にしている場所も多くなりました。
踏めば磨り減るのは確かですが、踏みしめたいところですよね、本音は。踏みしめるように作られたものなんだし。

建物は、石積みが美しいですが、ほぼ無装飾。道に面した部分に、わずか彫り物が見られます。




中世ラバーとしては、ところどころ開けられている二連窓の、こんな繊細な小円柱にうっとりしていました。




町の中心部のモザイクには、観光客が群がっていますが、ここに来る人は非常に少ないので、人ごみに疲れた方にお勧めの場所かも。

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1500年間積もったチリ?を目の当たりにするチャンス

夏休み旅その4、ラベンナ2

ラベンナを、初めて訪ねたのは、今を去ること、えーっと、覚えてないくらい昔ですが、当時はただの田舎の小都市で、観光的には、まったく充実していませんでした。すごいものを持っているのに、正しく評価されておらず、観光都市としての顔が、非常に希薄だったんです。
だから、モザイクの素晴らしい教会も無料で、自由に入れたと記憶しています。間違っているかもしれないけれど。少なくとも、いくつかの教会を組み合わせた共通チケットのようなものはなく、ホテルも数少なく、観光的な観点からは、よそ者に対して、かなりよそよそしい町でした。

2回目に訪ねたときは、ユネスコの世界遺産になったばかりの年で(間違ってなければ1995年)、その頃には既にかなり様子が変わっていたものの(共通チケットが出来て、教会めぐりがしやすいようなシステムが整っていました)、やはり観光的ファシリティはいまひとつ充実しておりませんでした。

さらにその後、ラベンナ出身の人と結婚した友人を訪ねたのが、おそらく、今回の旅の前に、ラベンナの町を訪ねた最後ですが、もはや観光地化が激しく、恐ろしい数のホテルやレストランが林立し、大型の観光バスで到着した団体が町をうろついているために、お土産を売る店まで出来ていて、心底びっくりしました。

このわたしの訪問にかかる時間的スパンは、25年強。確かに短くない期間ではありますが、それにしても、その変貌振りには、目を見張るものがあるかと思います。
前回記事にしたクラッセの教会も、昔は、何もない場所だったのに、今はホテルやレストランが脇を固め、立派な駐車場ができている訳ですから、ほんと、時代とはすごいものです。

今回は、駅前の古い旅館に宿泊して、ゆっくり徒歩で観光。夜も、心行くまで飲めるスケジュールとして、まず訪ねた場所は、駅からも程近い、こちらの洗礼堂アリアーニBattistero degli Ariani。




住宅街に埋もれるようにして、こじんまりと佇むお堂です。

外観は、超地味です。ラベンナの建造物は、起源が古かったりするために、得てして外観が地味なのですが、中に隠されたモザイクとの落差が激しく、それがまた感動や驚きをもたらします。
この洗礼堂も、まさにそういった場所。

ここは、中に入っても、あら、地味じゃん、という一瞬があり。




でも、ちょっと見上げると。




丸いクーポラ全部を覆うように、緑基調の、優しくも美しいモザイクが、我々を見下ろしているのです。
洗礼堂だけあって、中央は、洗礼を受けるキリストの図、ですね。




らくだの皮の洗礼者ヨハネの、らくだの衣。図像では、いつも変な感じですが、ここでも例外ではなく、らくだとは思えない質感(らくだの皮がどういう感じか、知らないとはいえ)。ちょっと間抜けな表情の、頭上の鳩がかわいらしい。
ラベンナらしく、植物モチーフの帯とか、小物まで神経が行き届いていて、アップに耐えます。




絵の中の宝石が、背景の金色よりも、燦然とした様子なのが、やはりラベンナ。図像が勝つんです。

聖人の中で、いつも唯一わたしにも分かりやすいサン・ピエトロ。




オリジナルのモザイクは、勿論、壁一面を覆っていたようです。壁一面に、このレベルのモザイクがあったとしたら、どれだけ光輝いていたことでしょう。このあとに訪ねるもうひとつの洗礼堂は、ここより広い範囲でモザイクが残っているので、ちょっと想像することは出来るのですが、ただし、ここアリアーニ洗礼堂のよさも、逆に感じられたりします。
壁が、修復や再建も含め、すっきりした石積みで、天井だけ華やかなモザイクという状態なので、とても落ち着いた空気で、淡白なよさがあるのです。

その上、ここは、一連のモザイク関連施設と離れていて、無料で入れたのも、びっくりでした。

洗礼堂があるということは、当然、教会があるわけです。それがお隣のこちら、スピリト・サント、つまり聖霊教会Chiesa di Spirito Santo。




今はギリシャ正教の教会になっていると言っていたように記憶します。残念ながら、特別のミサのときしかオープンしないということで、中には入れませんが、モザイクはなくなってしまっているようです。そう、勿論、こちらにもモザイクはバリバリあったはず。オリジナルは5~6世紀ですから、まさにビザンチンの時代。
教会と洗礼堂の間のスペースにある、この古そうな壁も、おそらく当時の建物の一部なのでは、と思われます。




洗礼堂と教会が、ひとつの区切られたスペースに置かれていたのでしょう。教会前の白いナルテックスは、後代の付け足しと思われます。
今は、ちょうどこの一角が、ちょっとした広場になっていて、車も入らない落ち着いた感じのよいスペース。
我々が訪ねたときは、昼も夜もやっていませんでしたが、こんな場所で、夕食をいただきたかったですね~。

夜景、こんなですもん。




5世紀当時の夜は、真っ暗だったでしょうけれど、建物の姿は、ほぼ当時のままと思うと、なんだか、ボーっとしてしまいます。

ちなみに、15世紀分を視覚化しているのが、洗礼堂の周囲。




古い建物を訪ねると、大体今の地面が上がっているのが分かりますが、ここは、さすがに15世紀分ほどの長さだけあって、地面の差がかなり激しいですね。1.5メートルほどはあったような。つまりそれだけの期間に、チリも積もれば、で、これだけ地面が積みあがったということなんですね。

一個見ると、次々見たくなります。すぐにも次のモザイク、と思ったのですが、係員の人が親切にも、この施設は、午前中しか開いてないから、興味があったら行くといいわよ、と教えてくれた場所に向かうことにしました。
続く。

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金色モザイク的に、ラベンナ > パレルモ

夏休み旅その3、ラベンナ1

今回のラベンナ、最初に訪ねたモザイクは、郊外クラッセにあるこちら。




サンタポッリナーレ・イン・クラッセ教会Basilica di Sant'Apollinare in Classe。
ここは、比較的最近訪ねた場所なので、駐車場とかのシステムもばっちり学習済みで、スムーズにアクセスできました。
ファサードは、超つまらないんですが、モザイクの美しさは、何度見ても、見るたびに、毎度同じようにうっとり出来ます。




バジリカ式のがらんとしたスペースの奥、正面から入ったら、当然ながら、まっすぐに目に入る大伽藍の緑のモザイク。
今は残念ながら、正面扉は閉ざされて、北側の入り口から入るので、この後陣まで一呼吸入ってしまうのが、大変惜しいことだと思います。

わくわくしながら、モザイクに少しずつ近づいていく時の嬉しさ。これは、本当にいつも同じわくわく。




何があるか分かっていても、この美しさの前では、新鮮な気持ちになれます。
どのモザイクも、スペースを考慮したモチーフやデザイン性が感じられて、そのすべてのオリジナリティが、異常に高い。




ビザンチンのモザイクは、イスタンブールでちょっと見たことがあるだけで、他を知らないのですが、そういうわたしの経験値から言えば、ラベンナのモザイクは、総合的な面白さで、イタリア半島で見られるビザンチン起源のモザイクの中で、圧倒的に群を抜いています。




金色を背景にするのでも、全部何でもかんでも、というのではなく、ここでも、後陣を見たとき、最初に印象付けられるのは、黄緑系のとても明るい緑で、上の方が、こんなに金色というのは、近づくまで目に入ってこないと思うんです。
金色という、派手でプレステージも高い色彩が、他の色と、完全に調和して、浮き上がっていないという感じが、多分好きなのかな。

勝利のアーチ部分には、中央に祝福するキリスト、そして両脇に、四福音書家が、有翼のフィギュアで表されています。




この部分の背景色、紺色地にオレンジや黄色を使う組み合わせは、ローマのサンティ・コジモ・エ・ダミアーノとか、サンタ・チェチリアでもおなじみの組み合わせですね。図像学的に色彩にも意味があるのか、単に流行った配色なのか、ちょっと面白いです。

同じ金色を強調するにしても、シチリアでは、普通のエピソードの背景色に、何でもかんでも金色を使い、ベネチアでは、聖母を強調するために、ただ金色だけの背景を使い、そして、ラベンナでは、他との色合いで使っています。ローマは、系統としてはラベンナ系だと思っているんですけど、どうでしょうね。

真ん中にいるキリスト。




憎いんだよな~、この配色の妙。
薄いピンクのような色が後光的な効果をあげていて、アップでも、あっ、という感じだし、遠めでも、キリストが浮き上がって見えるんですよね。金色を使うよりも、絶対に効果的なんです。
ラベンナには、すっごく色彩感覚に優れた職人さんがいたに違いないと思います。ガラスは、光などの要素も大きく影響するという意味で、他の素材とは大いに違うでしょうから、普通の感覚では、完成図って描きにくいと思うし。

モザイク以外にも、ここには、7世紀とか8世紀頃の遺構がたくさんあって、今回もいちいち、ちゃんと確認。ほぼ、指差し確認状態です。
古いチボリオ。




浅浮き彫りも、ぐるぐるの彫りこまれた円柱も、とってもよいのです。今は、隅っこに置かれているのが、ちょっと寂しいですが。

そして、時代をまたいだ石棺がたくさん並んでいて、どの腹にも、楽しくなっちゃうような彫り物が多数。これまた、しっかり全部確認。




結局、いつも忘れちゃうしね。




こういう風に彫りこまれた昔の文字って、実に味があります。

実は、この教会、本堂外観には見るべきものがないのですが、ラベンナ特有の円筒の鐘楼は、見て楽しいものなんです。でも、訪れた夕暮れ時、今にも雨が落ちてきそうな様相だったのと、モザイクを堪能してしまったことで、すっかり忘れてしまいました。

それなのに、教会前の草原にあった、こんなものは、しっかり撮影していました。




水牛?かなり大型で、本当の水牛くらいありそうなサイズ。唐突に並んでいたんですが、前回来たときは、まったく気付かなかったか、ホンの最近おかれたものなのか。草原に合っていないことはないですが、でも唐突。

というわけで、ソフト・ランディング、ラベンナ・モザイク、一個目。眼福。

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パルマにて、まさかのお仕事オファー

夏休み旅その2、パルマ2

パルマのカテドラル、雨にも負けず、後陣の方へ回ります。
観光客はちらほら来ていますが、後陣まで、わざわざ来る人は、誰もいませんでした。




後代の建物に埋もれつつも、中央後陣と、左右翼廊の先にある後陣円筒が、しっかりと残されているんですねぇ。と言っても、実は内部構造をよく覚えていないのですが、この写真で見る限り、そういう形なのであろうと思います。
上が、南側の後陣。
そして、これが中央後陣。




そして、北側。




中央後陣の両脇には、身廊の後陣があるはずですが、そこは後代の建物で覆われてしまったようです。そこまでしてスペースを設ける必要があったのかどうか知りませんが、本来美しかったはずの後姿が、残念なことになってしまいましたね。

幸いにも、当時の楽しい装飾彫り物はたくさん残っています。と言っても、装飾が残されているのは、相当高い場所なので、肉眼ではよく見えないんですが。




上の方、偽の回廊様式で、小円柱が並び、それぞれの柱頭には彫り物が見られます。また、回廊の下の段も、偽の窓が置かれて、美しい装飾が施されています。




せっかく残されても、こうやって隠されているような姿は、ちょっと忍びないですねぇ。華やかな装飾なんだけどな。
こんな細かい寓話的な彫り物を、狭い窓の上のアーチ似合わせて彫ったりして、その技術は勿論デザイン性もすごいし、出来上がりも上々なんですが、こんな高い場所では、当時だって、よく見えなかったと思うんですよねぇ。




それはよく思うことだけど、飾るというのは、信仰のため、ということになるんでしょうねぇ。信者に見せるためというよりも。




それにしても、レンガ積みだったり、レンガと石をチェッカーにしたり、全体に面白い装飾効果が出ているんですよ、ここ。彫り物も、動物満載、ケンタウロスとか想像上のフィギュアも満載。宝探しの楽しみがある後陣。




特に、レンガと石の市松模様の壁装飾は、すごく気に入りました。




こういう色の違いを利用して、はめ込み細工みたいに壁で遊ぶというのは、ボローニャのサント・ステファノの壁とか、ポンポーザとか、思い出しますが、こうやって、ただ壁を市松で覆うという感じは、思いつかないなぁ。いいですよねぇ。壁のホンの一部ですが、試しにやってみたのか、面倒でやめたのか、なんだろう。




三つ頭のドラゴンがいるかと思えば、わたしとしては見逃せないサムソン!ラブ!




短時間でしたが、カテドラル後陣、すっかり堪能しました。オリジナルのまま残っていたら、もっともっとたくさんの楽しい彫り物があったのでしょうね。

さて、このあと、近くのレストランでランチしたのですが、ちょっと面白かったです。
入り口に比べると、奥に深いレストランで、一番奥の部屋に案内されたのですが、先客は、10人以上でテーブルを囲む東洋人。
団体がいると、料理に時間がかかったりするので、いやな予感がしましたが、引き返すわけにもいかず。仕方ないので、とにかく少しでも早く注文してしまおう、と、早口で一気に頼んだところ、注文取りの女将さん、「…あなた、どこに住んでいるの?」。
あまりに場違いで唐突な質問にびっくり。「ミラノですけど…?」「ああ、それじゃだめねぇ…」。
女将さん、件の東洋人のテーブルに眼をやり、「最近ね、中国人に困っているの。あの人たちって、お客さんだから来てくださってありがたいのだけど、言葉は通じないし、料理も通じないのよねぇ。誰か、言葉の分かる人がいたら、手伝ってほしいのよねぇ。」とひどく困った様子で愚痴り始めたんです。

わたしは日本人だから、いずれにしても役に立ちませんわ、というと、ああ、日本人はね、本当にいいの。料理を分かってくれるしねぇ、と。
彼女によれば、中国人の方々は、イタリア料理にあまり興味もなさそうだし、どうやってオーダーするのかも分からないみたいだし、だから店としても、どうやって対応していいのか分からないことが多いんだそうです。

実際、その団体さんたちを見るともなく見ていると、まず、誰一人、イタリア語も英語も出来ないようで、あとから入ってきたガイドらしき人がいなければ、どうにも仕方ない状態でした。ガイドの人は、そそくさと注文を集めて、店に伝え、ぼくは他に用事があるから、あとで戻ってくるといって消えてしまいました。
何を注文したのか見ていると、とにかくばらばら。パスタが来る、ピザが来る、ステーキが来る、ティラミスが来る…。みんな一緒に、ですよ。
ピザを食べながらティラミスをつつく女の子たち。
それも、誰一人として、お皿を見て歓声を上げるとか、食べていて楽しい様子を見せない。
うーん。これは辛い。

考えたら、中国人の団体旅行って、つい最近までは、どこに行っても中華料理店で食事してたんですよね。結局彼らのほとんどは、中華が世界で一番と思っているんでしょうし、他の料理には興味がなかったんでしょうね(イタリア人とほぼ同じ)。
もしかしたら、最近は、現地料理を食べるのがはやっているのかもしれないけれど、きっと、イタリア料理なんて食べたことのない人も一杯いるのかもしれない。昔の日本人が、アル・デンテなんて知らなかったように。
70年代頃、農協ツアーとかはやった頃の日本人が、こういう感じだったかもしれないし、日本人は勤勉で外国好きだから、当時からそれなりにお行儀がよかったのか分からないけれど、いずれにしても、現地の人からは、困られていたかもしれないですよね。

我々の料理は、中国人の注文がのろのろしていたおかげか、結構早く出てきて、なかなかおいしかったです。最後には、リモンチェッロもサービスしてくれました。

ミラノでは、いまや飲食店の多くが、中国人オーナーになっていますし、ミラノ以外の都市でも、その傾向が強まるばかり。パルマ辺りは、まだそうじゃないということなんでしょうが、きっとこのレストランなども、数年後に行ったら、オーナーが中国人に変わってた、なんてこともありそうな気がしました。
まぁ、あの女将さんががんばっているうちは、それはないでしょうけど。

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  1. 2015/09/13(日) 00:36:15|
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