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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

後陣まで行列とはびっくり、花の聖母寺

夏休み旅その18、フィレンツェその3




フィレンツェには、わたしの好きなロマネスク時代のものはほとんどないので、ここからは、普通の観光旅行。時間を気にしたり、撮影に没頭したりする必要もないので、ある意味実に気楽。何にも捉われる必要のないこういう旅っていうのも、たまにはいいなぁ。

そして、これだけ何度も訪れているフィレンツェで、最も著名な観光地のひとつでもあるこちら、実は今回初めて訪ねることとなりました。

メディチ家礼拝堂、今は博物館になっているので、メディチ家礼拝堂博物館Museo delle Cappelle Medicee。




別に計算した見学ではなく、人の少ない早朝にドゥオモを訪ねるつもりで歩いていたところ、途上にあったのと、行列もなかったので、とりあえず入っとく?みたいな気軽な感じで入場したのです。

既に中世脳で、ルネサンス以降が苦手になっている身に、入ってすぐこれ。




若干辛い~!
とは言え、なんか、この色とりどりの石壁見ると、しみじみメディチの財産とか感じちゃいますわ。すべての装飾が、わたしにとってはただのゴテゴテだけど、でもある時期のメディチの人たちは、確実に芸術を理解して投資したわけだから、やっぱり歴史を実際に感じるためには、とても重要な場所ではあるわけですけどね。

目的は、勿論こちら、ミケランジェロの作品がある祭具室。




美術の教科書に出てきた彫刻だよ~!今更本物に面会する日がこようとはね~!っていうか、散々フィレンツェに来ていたシエナ時代、なぜ一度も来てないかね、ミケランジェロは好きなのに。
皆さんご存知かと思いますが、ジュリアーノ・デ・メディチの墓所。昼(男性)と夜(女性)を、擬人化したものですね~。
女性の胸が異常なのが、さすがにミケランジェロというか、この人、ヌードの女性、ほとんどだめです。バチカンの着衣のマリアは美しいですが、アレは若い時代だったこともあるのかな。
向かいにはロレンツォ・デ・メディチの墓所で、やはり男女のフィギュアで、夜明けと夕暮れが現されています。




でも仕事が遅くて、結局石棺は間に合わなかったんだそうですね。いくらよいものを作ってもねぇ、ミケランジェロ。それでも、こうしてきちんと今に残っているんだから、作らせた甲斐はありましたっていうところでしょうか。

美少年には力が入っています。




ジュリアーノって、こんな美しかった?知らないけども、確実に美化してますよねぇ。

同じ祭具室の一角に、こんなものも展示されていました。




なんだろうと思ったら、これ、屋根の天辺の飾り。こんなもんまでミケランジェロ作。なんか、普通に十字架を支えの上に置く形がいやだったんだろうな。で、十字架の下の球体、60もの三角面からなるんだそうな。底辺が五角形となるような12のピラミッド型が出来ることで、太陽光を反射して、よりキラキラするような構造になっているとか何とか。
作ったのは勿論職人さんで、ミケランジェロが設計したらしい。もしかして、レオナルドの影響があったか?とか、つい考えてしまいますね。
ミケランジェロが、こういう作品まで残していること、知りませんでしたわ。

実際どうかと言うと。




今置かれている方が、勿論レプリカですけどね。ズームアップ!




そりゃ、ただの球体や四角や三角よりは、確実に光を反射して、輝くよね。この日は大要強すぎて、乱反射も何も、何もなくてもぎらぎらだから、効果があまり分かりませんでした。

暑くても、さすがフィレンツェの旧市街で、この辺りは、団体客がそこかしこ。何も持たなくても、断片的にガイドを聞くことが出来ますね。この、左の建物は、ストロッツィ宮とかでしたか?いずれにしろルネサンス期の大金持ちのお館。




通りすがりに耳に入ったガイドさんの説明だと、一般人に目のつく下部は、あまり手を加えず華美な装飾もせず、上階だけをきれいにするのが、庶民の反感を買わないようにする知恵でしたとか何とか。
ええ~?それって逆に反感買わないか?庶民、馬鹿にしてますよねぇ。びっくり。

そして、やっとドゥオモに到着。




既に11時半。そして、既に長蛇の列。
ただ、入るだけなのに、列。ウフィッツィすら行列などしたことのない20数年昔、ドゥオモに入るために行列する日が来るなんて、誰が想像したでしょうか。




後陣を取り巻くように行列が出来ています。この辺りは、クーポラに登るための入り口もあり、そちらの行列もあるので、かなりカオス。
あまりこんでいなければ、二重数年ぶりにクーポラ登山もいいな、とちょっと思っていたのですが、即断念です。でも、前回時間切れでドゥオモに入れなかった姉を、本堂にはどうしても連れて行かねばならないので、長蛇の列の最後尾に着きました。




遠そうに見えた道のりですが、所詮は教会に入るだけの列なので、結構スムーズに進んでくれました。それでも20分ほど並んだようです。
そして、これだけの行列で入るわけですから、内部も大混雑で、教会の敬虔なムードゼロ。まぁこれは昔からそうでしたが。
がっかりなのは、通路が出来ていて、そこしか歩くことが出来ず、後陣は、かなり手前に柵が立てられて、奥の方には近寄ることも出来なかったことです。
パッツィ家の陰謀の舞台、祭具室などに近寄ってみたかったですけれども、かないませんでした。




ロレンツォが逃げ込んだ祭具室は、ここかと。ロッビアの陶器装飾で、リュネッタが飾られているようですね。




なんか、でかいけど、無愛想だし、サン・ミニアートの静謐と人間らしいサイズが恋しくなります。
唯一よかったといえるのは、お土産屋さんでしょうか。地下のサンタ・レパラータ教会入場口の隣に新設されていて、結構充実していました。お勧め。

というわけで、並んだ割にはさっさと見学終了。
やはりここは、外からの眺めがベターです。




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  1. 2015/10/30(金) 06:47:54|
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見えなかったものが見えてくる、みたいな?興味は持つべし、みたいな?

夏休み旅その17、フィレンツェその2

サン・ミニアート・アル・モンテ教会San Miniato al Monte続きです。

今回、この教会の印象がいつも以上に強かったのは、訪問の最中にオルガンが演奏されていたこともあります。




祭壇に向かって左手の方に、立派なパイプ・オルガンがあり、どうやら練習をしていたようです。




素晴らしい音で、しばらくうっとりと楽しみました。
柵があるので近づけませんが、ミサや演奏会の最中であれば、これほど身近に演奏風景を見ることはできないので、興味深々で見てしまいました。演奏者はいやだったかもな~。

この近くの壁に、古いフレスコ画がありますが、わたし好み。




確か12世紀頃のものだと思いますが、これほど古いのは、この部分だけ。かつては、もっと広い範囲が、フレスコで飾られていたのでしょう。
色は褪せていますが、褪せ具合が渋くてよろしいですね。

必見ポイントが尽きないサン・ミニアート、クリプタもそのひとつです。




ロケーションも、ファサードも、本堂も、常に多くの観光客がいるのですが、意外とクリプタにまでは降りてこないもんです。そしてこのクリプタ、そういう教会にありながら、常に薄暗くて、祈りの場所であることが、ひしひしと感じられる空気が、いつも張り詰めている気がします。

本堂に戻り、説教壇のライオン君に挨拶。




目が合うと、ちょっと怖いやつですが、かすかににっこりしている様子もありますね。
外に出ると、ファサードにも、やっぱりかわいいやつがいますよ。




舌をペロッと出しているの、分かりますか。




ファサード、よく観察したら、上の方に、本堂床面のはめ込みと同じペア・モチーフのはめ込みが並んでいました。




ルッカのサン・ミケーレとかドゥオモに通じる面白さがあります。そう、ルッカ系列ですね。




見ていれば見ているほど発見があって、飽きない教会ですが、いつまでもここにいるわけには行かないので、町に戻ることとしました。のぼりはバスで着ましたが、戻りはぶらぶらと歩くことにしました。
坂道を下っていくと、中世の市壁。今でも、途切れながら、結構続いています。




旧市街に入り、アルノ川を右手にしながら、散歩しました。18世紀以降の町並みがほとんどとなっているミラノとは異なる、中世の雰囲気を残した都会の町並みは、お散歩していると、やはり楽しい。重厚な石積みや、何のためにこれほど小さいのか、というような扉、古い呼び鈴。歩いてこそ目に付くものがたくさんあります。

フィレンツェを訪ねても、めったに行くことのないサント・スピリト地区を歩いていたら、なんと、中世に遭遇。




サン・イアコポ・ソプラルノ修道院Convento di San Iacopo Soprarno、11世紀の修道院教会でした。残念ながら閉まっていましたが、ファサードの軒下に、しっかりこんなものを発見。




人の頭に食らいついている姿なので、かなり怖いんですが、でも、あ、見つかっちゃったぁ?と無邪気なフリをして首をかしげている様子が、愛らしい~!
白と深緑の石は、サン・ミニアートと同じで、幾何学モチーフの装飾となっていますので、同じ頃の建築なんでしょうね。

ポンテ・ヴェッキオからのアルノ川。




いつも同様すごい人ごみで、橋のちょうど中央辺り、建物が途切れた撮影スポットは、ごった返していますが、探すのが習い性になっているので、中世から古代もの、つい見つけてしまいます。




だからなんだよ、って代物ですけど。それも、レプリカの可能性も高いですけど。




何の碑文か不明ですが、冒頭の「1000年」は判読できました。意味ないけど!でも、ということは中世の碑文。
本当にだからなんだよ、なんですが、こういうの見つけると、嬉しくなっちゃうんですよね。特に、フィレンツェのように、ルネサンス中心の町なんかでね。ローマで中世に出会うのが嬉しいように、いかにも、じゃない場所でなじみに出会うと、ほっとするような嬉しさがあるんですよ。
それも、このように、既に何度来たか分からない場所で、何か見つけちゃうとね。きっと、過去にも見ていると思うんですが、特に気にも留めなかったに違いないんです。興味によって、そこにあるものが、まったく違って見えるというのは、なんというか、感動的なことだと思うんですよねぇ。なんか哲学的でもあるし。大げさか。

橋をわたりきって、シニョリア広場。




本格的観光モード、入ります。

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  1. 2015/10/29(木) 06:56:23|
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サン・ミニアートで愛でる石の白黒レース

夏休み旅その16、フィレンツェその1

フィレンツェ、姉の希望で再訪です。




前回訪ねたときは、希望を盛り込みすぎて、周囲の町村を移動しすぎ、フィレンツェの町そのものをあまり堪能できなかったので、今回はフィレンツェにどっぷり。
まずは、まさに前回訪ねることができず、残念だったミケランジェロ広場から。

やはり、フィレンツェの赤い屋根の眺めは美しいです。わたしにとっては、どうしても映画「眺めのいい部屋」を想起してしまう眺めです。

この場所のダヴィデも久しぶり。




やっぱり、いいケツ…。下品ですみません。

ここ、立派なレストランがあり、高額なのは分かっていましたが、トイレ休憩としゃれ込みました。超観光客ですからね、たまにはそうゆうのもあり。




エスプレッソが、4ユーロとか5ユーロとか、びっくりするお値段だけど、それでもミラノのビットリオ・エマヌエレ・ガッレリアのカフェよりは安いかも。高い分、カントゥッチと水が、漏れなくついてくるようです。
カントゥッチは、スパイスや木の実が練りこまれたかちかちのビスケットで、この辺の甘い食後酒ヴィン・サントに浸していただくもの。味はおいしいんですけれど、唾をすべて持っていかれるこのようなお菓子なので、真夏の高湿度な暑さの中では、おいしくいただくのはかなり難しい代物です。
姉は、ティッシュに包んでお持ち帰りしましたが、そういえば、あれ、どうしたんだったかな。かばんの中で粉々になったんじゃないだろうか。

さて、わざわざミケランジェロ広場まで来たのは、姉のリクエストではありますが、わたしとしては、フィレンツェで数少ないロマネスクの名残を再訪したい気持ちも当然あります。大好きなサン・ミニアート教会。




この階段も、結構辛いものがありますが、がんばって登る価値大ですね、この教会は。なんだかんだ言っても、街中よりは、観光客も少ないし。広場までは皆さんいらっしゃいますが、ここまで足を伸ばす団体客はいませんから。

ファサードからして、装飾性が激しくて、ちょっと足が引ける気持ちになるんですが、細部見ていくと、面白いんですよね、ここ。時代はいろいろ混ざっていますが、様々な装飾的工芸の粋が見られるんです。




特に、石のはめ込み細工って言うのか、モザイクと似ていますが、床面上ではより絵画的なこの工芸については、すごいものがあります。




特に床面のはめ込みは、すごいです。




細かいんですよね、びっくりするくらい。そして、どの幾何学モチーフも独創性がすごい。




こういうのは、後代のデザイナーさんや職人さんたちに、相当影響を与えているんだろうなぁ、と想像します。デザイン的にも技術的にも、すごいですよね。そもそもどうやって製作するのか、想像もつかない。
中央身廊の、今は閉ざされている正面の扉から後陣へ伸びる、結婚式だったらヴァージン・ロードとなる通廊部分の床面は、実にすごいです。以前来た時にも撮影しているのですが、今回ほどきちんとはチェックしていなかったと思います。今回、隅々まできっちり見学してきました。




ペアの、多分ライオンなんだと思うんですが、同じモチーフの円が一杯。同じモチーフを中央に置いた版もあったんですね。




同じモチーフがずらずらしているパターンでは、獣フィギュアの口とかしっかり赤色が刺されていて、さらに繰り返しの面白さが強調されてるように思うんですが、大きいモチーフは、白黒のみ。
ペアのバリエーションは、ドラゴンとか、




鳩も。




もっと大きいデザインだと、ペアやつる草中心に、繊細さがさらに激しく。




このレース状態は、すごいです。

いや、サン・ミニアートは、やはりいいですねぇ。
もいっかい、続きます。

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グラッパ合宿、2015年秋、ピエモンテ編イントロダクション




トリュフの季節は、葡萄のお酒を仕込む季節でもあり、それゆえに、恒例のグラッパ合宿の季節!
今回も、昨年に引き続き、ピエモンテ合宿を敢行しました。結果は、上の写真の通り。




いつものように、金曜日から日曜の二泊三日で、都合、9軒の蒸留所と、2軒のワイン販売所を回りました。そして、毎度、セーブしようと思って出かけるにもかかわらず、結局15本のグラッパと、2本の赤ワインを購入。

お酒に加えて、勿論ピエモンテのご飯も堪能しました。
好きだけど、わざわざミラノで食べようとは思わない生肉系前菜とか、ビテッロ・トンナートVitello Tonnatoは、毎年この合宿で食すのみとなり、また、それで十分って感じになっています。本場もん、おいしいからね。




今年は、夏の暑さの反動か、寒さの訪れが早く、葡萄の収穫も、昨年よりは全体に早めだったようです。同時に、いつもはさほど目に留まらない紅葉が美しかったのは、思わぬ目の保養となりました。




赤や黄色に色づいた葡萄畑、実に美しかったです。
熟した果実にも、あちこちで目がひきつけられました。




大きさ的にはさほどの樹でもないのに、びっくりするほどたわわに実っていた梨。数え切れないほどが地面に落ちていて、虫たちが大宴会。レストランの庭だったので、なぜ収穫しないのか尋ねたら、獲っても獲っても出来ちゃうのよ、ということでした。

他の場所では、ザクロがぱっくり。




何も尋ねませんでしたが、ここでも、きっと同じ答えが返ってきそう。
果物もいいですが、この季節、美しさを誇るこちらも、忘れてはいけませんね。




バラは、葡萄畑によく植えられています。ツルバラなど、野生種系のものが多いと思うのですが、その素朴なスタイルが、逆に新鮮で自然っぽくて好きです。

今回もまた、生産者さん、グラッパともに、新たな素敵な出会いがありました。再会もありました。
同じメンバーで、グラッパに特化した合宿をするようになって、ピエモンテは3年目。蒸留所によっては、3回とも律儀に訪ねているわけで、そうすると、先方も、なんとなく覚えていてくれるようになるんです。こちらの訪問を喜んでもらえる再会は、やっぱり嬉しいものです。
そんな蒸留所では、セーブすることなど吹っ飛んで、つい購入してしまうのが、問題といえば問題ですが…。

こんな、度肝を抜かれるような演出をする蒸留所にも出会ってしまいました。




既に訪問していた蒸留所ですが、見学をさせてもらったのは初めてでした。まさか、こんなことになっているとはねぇ。
というわけで、グラッパ・ファンはあまりいないとは思いますが、しばらく後にレポート開始しますので、お付き合いいただけると嬉しいです。

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  1. 2015/10/27(火) 06:42:01|
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サルダーナ風、踊る四季の神様

夏休み旅その15、ラベンナ13

次に訪ねたのは、現地でチラシをもらって、初めて知った場所です。サンテウフェミアという18世紀の教会の地下に隠された、6世紀の床モザイク、床モザイクの邸宅Domus dei Tappeti di pietraです。




いただいたパンフによれば、オープンしたのは2002年10月30日とありました。直近で訪ねたときには、既に開いていたはずですが、滞在時間が短かったので、知る暇もなく、その前に訪ねたときには、まだ整備中とかそういう状態だったのでしょう。
土地が土地だけに、何かの工事とか、修復とか、そういう機会に、結構ざくざくと見つかってしまうのだと思います。




今では、地面から3メートルも地下という状態ですが、もともとは、ビザンチン時代の貴族のお屋敷の床装飾のようです。
発掘されただけでも相当の広いスペースに渡っていますので、さぞや羽振りのよいご一家の邸宅だったのでしょう。

よき羊飼いの図。




ハイソックス状の編み上げ靴が、とっても愛らしいのです。ビザンチン・モザイクなので、図像的にも表現的にも、ローマとは異なっているということで、そういえば、よき羊飼いって、普通羊を抱え込んだり肩車したりしていますね。この人は、羊飼いって言うより、なんかポーズしちゃっているし。

モザイクのほとんどは、幾何学モチーフや植物モチーフ。




その中に、上の羊飼いさんと、そしてもうひとつ具象の目玉として、こちら。




”輪になって踊っている季節の神々”。

全体が見えにくいので、縦置きのレプリカ。




と思ったら、実は床に置かれているのがレプリカで、縦置きが本物でした。床の方が、色あせた感じなのですが、それは、修復も相当入っている、周囲のモザイクにあわせた色なのかな。

こうやって輪になって踊っている図、絵的にはマチスを想起しつつ、現実的にはカタルーニャのサルダーナを思い出しました。今でも、みんなで踊っていますよね、本当にこういう感じで。これは神様たちだけど、きっと当時、こうやって踊っていたんだろうな、と想像できるし、庶民がしていることを、神様に置き換えちゃうところが、なんかいいなぁ、と。

季節の神々ということは、一人ひとりが四季を表しているんでしょうねぇ。一人かけちゃっているのが残念ですが、なんとも言えずかわいい。両性具有的でもあり、普通の人々風でもあり。
頭が虫みたいになってる人が、やはり冬ですかねぇ。寒さ対策的マントだし?

4ユーロ、高いなぁ、と思いましたが、でも、これだけの発掘して、こういう施設作ったら、お金かかりますから、仕方ないかも。普通のモザイク・ルートにはのっていないので、観光客は大変少ない上に、4ユーロで、引き換えしちゃう人もいました。気持ちは分かります。

さて、最後の訪問地は、福音書家サン・ジョバンニ教会Basilica di San Giovanni Evangelista。四福音書家の一人、ヨハネに捧げられていますが、ラベンナで最も古いビザンチン時代の教会で、ガッラ・プラチディアが創設したと言われているそうです。




とても立派な教会ですが、何というか、縁のない教会だったみたいです。

まず、立地が、宿泊していたホテルから徒歩3分程度という近さで、他への観光のために、何度も脇を通っていました。その上、訪ねるべき教会、として、事前にチェックしていたのにもかかわらず、それがこの教会であると、最初は認識していませんでした。
ローマ風の立派なバジリカで、修復も激しくなされているため、後陣側など、かなり新しい教会風になっていたのも原因とは言え、われながら情けないことです。

一日の終わりに、最後にここを見ていこう、と立ち寄ったのですが、教会に近づくと、スピーカーからミサのお説教が流れています。まさか、と思い覗き込むと、まさにお説教中。
参加者は、3人ほど。すっごい広い本堂ですから、スカスカです。司祭様は立派なご衣装で、立派なミサっぽかったですが、寂しさはありましたねぇ。

15分ほど、門の外で一服して時間をつぶしましたが、スピーカーからのミサは、終わりそうにもありません。あきらめました。

翌日、ラベンナを立ち去るにあたって、なんせホテルから3分ですから、出発前に行ってみたところ、なんと!またもやスピーカーからお説教が!

司祭様には申し訳ありませんが、爆笑してしまいました。我々の運のなさ、というか、もしかしたらミサに参加しろと強要されているような状態に。
信者さんは、またもや3人ほどでしたので、なんか、やるせないって言うか。

この教会も、実は後陣のモザイクは、16世紀に失われてしまっています。




こんなのがあったらしい。でもそんなことはまったく知らないし、ないものを探しに来たわけではなく、壁モザイクはない代わりに、床モザイクがたくさん展示されている、というのに、興味があったのです。それも、結構好きな白黒での様々なモチーフで、写真で見ると、かわいいのがたっくさん。
残念でしたが、今回、これ以外は、見たいものすべてクリアしたと思いますので、もしかすると次回のために、一つくらいは、残すべきということだったのかもしれません。

スピーカーから流れてくる、時々咳き混じりのお説教を聞きながら、中世の名残を探しました。そしたら、やっぱり何かしらはあるんですねぇ。

教会前にある門のリュネッタ。ゴシック時代のもののようですが。




もうちょっとわたし好みの時代のものは、その脇の上部にありました。




普通足元にいるライオンが、ここでは上にいました。ライオンは写実的で怖いんですが、子羊、かわいい…。
よく見ると、門柱にラベンナ風の透かし彫りがありました。




ビザンチンではなく、それ風なんだと思いますけれどもね。

というわけで、最後はちょっと地味なレポートですが、ラベンナ編、終了です。
フィレンツェに移動しつつ、お食事話題などは次回。

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濃紺の雪の結晶にうっとり。

夏休み旅その14、ラベンナ12




サン・ヴィターレと同じ敷地内にある、ガラ・プラチディアの霊廟Mausoleo di Galla Placidiaに移動です。
ここはもう、なんだかこのたたずまいだけで泣けるくらいに、清純で無垢なプラチディアそのものって感じがするよね。
入ってすぐの天井部分に広がる、この雪の結晶モザイク!




初めて訪ねたときと同じ驚きって無理だけど、それでも、やっぱり同じように美しいなって、そういう感動はあります。
初めてラベンナに来たときって、何が自分を待っているか知らないことが多かったし、ここなんて、本当にびっくりしたかすかな記憶があるな~。初めての出会いっていいよねぇ。




写真を含めて、多くの情報をネットで簡単に入手できるって言うのは、とても便利だし、訪ねたくても訪ねることができない人にとっては、素晴らしいことでもあるのだろうけれど、でも、そういう手段がない時代に生きる時間が持てて、しあわせだったような気はする。

建物は、ラテン十字型で、雪の結晶のアーチをくぐって中に入ると、中央部のクーポラの下に出ます。




正面のくぼみ部分に、ガッラ・プラチディアの石棺と言われている石棺がドカンと置かれていますが、彼女は、ここには眠っていないはず。ずっとローマで過ごしていたような。そういえば、バチカン博物館にも、彼女の石棺があったような?

とにかく、この霊廟は、小さいけれども、建物内側の半分から上は、すべて、隙間なくモザイクで覆われています。これだけ見事に往時の様子を残している建物は、他にありません。
解説によれば、シンボリズムでいっぱいということらしいですよ。ここは、ゆっくりと解説を読みたいところですが、それは、今度、「ロマネスクのおと」更新の際にでも…。
今は、美しいモザイクを堪能したいです。

先に進むと、中央部になり、天井のクーポラ部分には、星空が広がります。




ちょっと前に紹介した、博物館内にあるサンタンドレア礼拝堂の小さな後陣と同じモチーフ。あちらは、金銀が混ざっていましたが、こちらは金色だけで、キラキラ輝いています。四隅には、有翼のフィギュアに姿を変えた四福音書家の姿が描かれています。
縁取りが、渋い赤を背景としたリボン模様というのも、とてもオリジナリティが高くて、ラベンナですねぇ。

クーポラのさがってきた壁部分まで入れると、こういう状態です。




窓には、オリジナルではないでしょうが、アラバスターの板がはめ込まれているので、外光の入り方がかなり穏やか。それでも真夏だったので、薄ぼんやりとしたいい感じの光が入ってきます。
それぞれ、窓の下に、同じ杯から水を飲むペアの鳩がおり、両側には、使徒が、やはりペアで立っています。

さらに下、十字の腕の奥の方の半円には、もっと物語的な絵があり、よき羊飼いとか。




こちらは、拷問というか殉教の絵。網で焼かれて殺されちゃうのは、サン・ロレンツォでしたか?




怖い~!

そしてこちらはキラキラの中に鹿のペア。




やはり仲良く水を飲む図なのですが、水は生命の象徴なのだそうです。全体に対比的に、死を想起させる図像となっているとか。

ここでも色がすごいですね。氾濫していますが、いやらしく派手にならない色使いが、すごいです。




モチーフにしても、ここの壁と、アーチの下と、つながっている場所なのに、それも、かなりハデハデな縁取りでつながっているというのに、全体としてはまったく違和感なく、しっくりしちゃってる。




なんだろう?モザイク・マジック的な?

外観から想像つくように、本当に小さい建物です。そして、すぐお隣のサン・ヴィターレには観光客がわんさか。でも、その割には、意外と大丈夫。というのも、モザイクが上部だけだからかな。実は、かなりの人がいたりします。
春、修学旅行とかが多い時期が最も混むようで、その一時期は予約必至とありましたが、それ以外はフリーで大丈夫です。
入り口に、「狭いので、10分程度で出てください」、みたいな注意書きがありましたが、ほとんどの人は、そんなに滞在しません。だから、結構ちゃんと流れるみたいです。
結構長くいたように思っていましたが、今、写真でみると、貪欲な我々ですら、せいぜい15分程度過ごしただけだったようです。
やはり狭いので、どうしようもなくなっちゃうんですね。

そして、写真も意外と撮っていませんでした。どうしても、見てしまって、写真を忘れるというか、自分の腕では撮りきれないので、あきらめてしまうというか、ちょっとそういう感じ。
それでいて、今改めて写真を見直していると、どのモザイクも、見れば見るほど美しくて、もっと撮影してくればよかった、などと思ってしまいます。




ここもまた、後ろ髪を引かれる思いで後にしました。




この、いかにも初期キリスト教的な、単純で美しい建築スタイルを見ながら、しばしモザイクを反芻し、そしてサン・ヴィターレとこの霊廟の美しすぎるモザイクにあてられてしまった気分を立て直して、次に出発。
ラベンナ・モザイク・ツアーは、ほんとに、果てしなく、どこまでもモザイクです。

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お楽しみは、壁のみならず。

夏休み旅その13、ラベンナ11

サン・ヴィターレ教会Basilica di San Vitale、続きです。

本堂に入ると、どうしたって、まずは壁や天井モザイクに目が行ってしまいますが、それら以外にも、しっかりチェックすべき素晴らしい芸術が、ここには、たっくさんあります。
たとえば、同じモザイクとしては、かなり地味ですが、やはりレベルの高い床モザイク。




時代が、いろいろだと思うのですが、たとえば、この上のは、比較的新しいように思いますが、それでも、いずれも素晴らしいことには違いなし。
作品としても素晴らしいし、保存状態も文句なし。




これは、かなり中世っぽいタイプ。
床モザイクも、やはりテッセラが細かくて、デザイン的なモチーフでも、びっくりするほど繊細なイメージが描き出されています。
壁モザイクとも呼応しているような。




実は、床モザイクについては、過去にきちんと見た記憶がないのですが、おそらく十数年前は、今のように、立ち入り禁止などにはなってなかったんじゃないかと思います。だから、逆に、注目することもなく、何の気なしに踏みしめていたんじゃないか、と。




または、きちんと修復されていない状態であったかもしれません。今は、メインのモザイク・スペースは、柵で囲まれて、踏みしめることが出来なくなっていますが、その代わり、注目しますので、きちんと意識して、鑑賞できるようになったわけです。




やはり、オリジナリティ、高いです。テッセラがここまで細かくなくてもいいんじゃないのか、というくらい小さいのですが、一片一片が小さいからこそ、繊細な図像が描き出せるのでしょうね。

その他、柱頭にも注目です。




この、透かし彫り風、レース風の柱頭こそ、ビザンチン起源で、イタリアでは、ビザンチンのラベンナやベネチアでしか見られなかったタイプなのだと思います。

副柱頭も、同じ時代かどうか不明ですが、透かしのバックに、赤とか色が入っているんですよね。本当にレースみたい。




マットな彩色は、フランス・ロマネスクで今でも見ることが出来ますけれど、ロマネスクでもオリジナルでは彩色されていたというのは、こういうところに起源があるのかな、と思わされます。




完璧なレース。
上の壁モザイクの派手な彩色との対比がすごく印象的。







というわけで、サン・ヴィターレ、やはりすごいです。見ても見ても、なかなか堪能した気分になれず、何度も同じところを行ったり来たり、ぐるぐる。

時代とともに、かなり手が入っている様子も分かり、そんな中で、ビザンチンのいろいろなものが、よくこれだけ残ったな、と感心しつつ。

だって、建物構造や要素はそのままながら、今ある装飾の大半は、バロックですよ、こんな。




おそらく、柱頭も、黄金に塗りたくられた時代など、あったのかもしれません。いっそ、表面的な装飾が剥げ落ちちゃっている場所の方が、ほっとしたりもします。




そういうもろもろも含めて、本当に素晴らしい。
いつまで見ていても、やはり名残惜しいけれど、次に行くべき場所があるので、そろそろ移動します。




次訪ねるのはいつになるか、また次があるのかどうかも分かりませんが、そのとき、何を覚えているのか、楽しみです。

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名前フェチって、ありでしょうか。

夏休み旅その12、ラベンナ10

いよいよ、メインエベント、的な、サン・ヴィターレ教会Basilica di San Vitaleです。久しぶり~。近所の雰囲気も忘れているし、こんな入り口だったことも、まったく記憶にありませんでした。




教会そのものの姿は記憶になりましたが、周囲にあるラベンナ特有の円筒形の塔とか、石棺等は、まったく記憶になし、といういつものパターン。




この教会一帯は、鉄柵で囲まれて、公園のようになっていますが、石棺、ざくざくと並んでいました。多分、気にしたことなかった…。幸いというかなんというか、見るべき装飾のある石棺は、ほとんどなかったんですけどね。

そんな、過去の訪問との対話を脳内で繰り広げつつ、サン・ヴィターレ、入場です!




しゅごい~!
と言っても、ここも、完璧に往時のモザイクが残っているのは、今となっては、教会一部のみ。おそらくですが、もっと広い範囲にあった可能性を思うと、ますます開いた口がふさがらないというか、あ、これ、多分、間違った日本語って感じ。

とにかく、まずはこれ、これをしっかりと見なければ!




ビザンチンのテオドラ妃。目一杯着飾っているのに、マントは地味(実は裏とか裾にしっかり装飾があるという江戸の粋的お洒落満載)なのが、たまりませんね。

テオドラって、一瞬ロンゴバルドのテオドリンダと混ざってしまいました。
ちょっと名前フェチなところがあって、特にお伽話的なロンゴバルド起源の名前は、それだけで何かをかきたてられてしまうものが多いのですが、そういう中では、テオドリンダは、かなり普通の、かきたてられにくい名前。
テオドラ、テオドリンダって、似ていますし、起源は一緒なのかな、とか思ったんですが、そこが、LとRの区別できない日本人の悲しさ。TeodoraとTeodolinda、似ているようで似ていないかも。
でも、似ているかも、というところで、「テオ」起源に、フェチの血がちょっと騒ぐかも。




宝石満艦飾です。さぞや重かったのではないでしょうか。頭もイヤリングもすべて宝石、それも本物。ポニーテールにしただけで、頭痛がしてくるわたしには、想像もつかない…。
眉毛がつながっているのが、ビザンチンって感じします。
それにしても、並んでいる侍女たちの衣装も、どれも大変豪華な感じが出ています。

対面にあるのは、皇帝。こちらのモザイクも有名ですね。




皇帝だけをクローズアップするのでなく、従者を一緒の縮尺で横並びに表すところが、逆に皇帝の自信を強調するような、そんな図像です。
絵の縁取りのモザイクにも注目してほしいです。なんと装飾的で、そして、なんと独創的な色使いをしていることか。

黄金の背景も素晴らしいのですが、キリストのシンボルの入った楯の、このターコイズ・ブルー的な青が、大変好きです。




楯は勿論として、縁取りも宝石満載ですね。モザイクなのに、宝石と同じくらいの輝きを放つというか、宝石と同じような美しさを感じてしまいます。

とにかく素晴らしいモザイクがびっしり。でも、この皇帝と皇妃のモザイクと、それ以外の、聖書エピソードなどを描くモザイクでは、人の顔の表現などがかなり違うので、複数のマエストロがかかわっているものだと思われます。

あちこちでおなじみの緑を基調としたモザイク。ね、絶対に違う人の絵が元になっていますよね。




それにしても、あまりのすごさに目移りしちゃって、アワアワ状態。




目が留まる、すべてのモザイクが、とにかく美しくて素晴らしいんですから。
これもいいでしょう。
濃紺の背景で、二人の天使が支えるキリストの印。




その青が、さっきの青とも微妙に違う夕暮れ時の青にも近い色で。うっとりしますねぇ。その下は、やさしい緑の背景だし。

ふと、目をそらすと、アーチに沿って描かれた、聖人や預言者の肖像画。




この細かいテッセラでのモザイク、すごい技術なんでしょうねぇ。
細かいからこそ、びっくりするくらい繊細なモチーフや色使いが出来るということですから。肖像画の縁取りや、アーチそのものの縁取りのモチーフの多色はすごいですよね。
そして、キリストの顔は怖いけど、各肖像を支えるモチーフの愛らしさには、ついにんまりとしてしまいませんか。




お魚モチーフなのは、やはりキリストのシンボルだからかしらん。それにしてもこのお魚、深海魚風なのが、なんともいえません。尻尾はイソギンチャクみたいだし。
そして、絡まりお魚ペアの下には、鳥のペア。どこまでラベンナなんだか!

細部をみていけばきりがないのですが、鳥・魚シリーズでは、こういったものも。




余白的な場所に表された装飾的モザイクも、聖書エピソードや、歴史上の有名人物などに引けをとらない豪華さでなされていて、ラベンナの面白さは、こういうところにあるかと思うのです。パレルモやローマに残されたモザイクは、そういうモザイクが少ないので、実に貴重です。

ここでも、四大天使がキリストを支える図像があります。




どひゃ~、なんと装飾的な!
中心の神の子羊は、きらきらの装飾的な植物リングで囲まれているし、各四大天使も、背景がキラキラ!サンタンドレアや、ローマのサンタ・プラッセーデなんて、ふん!って鼻で笑われてしまいそうな豪華さですね。
個人的には、こうなるともう、ちょっと、ですけれど。

続きます。

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鳥づくしモザイクと、両性具有的四大天使(美形)!

夏休み旅その11、ラベンナ9




ネオニアーノ洗礼堂のすぐ近くに、博物館があり、ここも、ラベンナ総合チケットの一連の見学場所のひとつとなっています。
この総合チケットは、たったの9.5ユーロで、7日間有効。ラベンナの主要な観光地を見学できてしまうという大変お得なチケットです。見学できるのは、以下。

サンタポリナーレ・ヌオボ教会 Basilica di Sant'Apollinare
司教座博物館 Museo e Capella Arcivesovile
ネオニアーノ洗礼堂 Battistero Neoniano
サン・ヴィターレ教会 Basilica di San Vitale
ガッラ・プラチディア霊廟 Mausoleo di Galla Pracidia

前に訪ねたサンタポッリナーレ・イン・クラッセ教会などは、もうひとつの総合チケットの中に組み込まれていて、組み合わせが難しいのですが、こちらのチケットの見学場所の方が、より、みるべき度が高く、訪ねやすい場所となっているかと思います。

さて、それで訪ねたのが、司教座博物館です。
ここ、過去には、いつも時間切れで、訪ねたことがなかったような気がします。

博物館と言っても、目的は、建物内に隠された、サンタンドレア礼拝堂Cappella di Sant'Andreaにあるモザイクです。

展示は、いくつか細かい部屋に、石棺とか浮き彫りなどが並べられていますが、その間を縫って、礼拝堂への前室のようになっている狭くて短い廊下の天井が!




これはすごい!よくパンフレットなどに使われているかわいらしい鳥のモザイクは、ここに隠されていたんですねぇ!
黄金を背景に、鳥を並べてしまうって、なんて、素敵。これ、ラベンナならではの感覚です。だから、ラベンナのモザイクは、いいんだな~!




野鳥の会の人だったら、きっとどの鳥の名前も分かるんじゃないのかな。残念ながら、わたしはさっぱりなんだけど、思わずそういうことを思うほど、鳥の種類が豊富だし、また特徴を捉えているっていう描かれ方なんですよ。
そして、何より、めちゃくちゃかわいい。




あ~!そして、間抜けなことに、まさに今気付いたけど、鳥の並べ方が、ちゃんと規則的になってる~!
すべて違う種類じゃないのは分かるんだけど、実際に見ているときは、この規則性は、気付かなかったです。それも、向きをひっくり返したり、色違いだったり、これ、すごく考えていますね。

天井を見上げる無理な姿勢に、首と背中が悲鳴を上げるくらい堪能したあと、いざ礼拝堂へ。




おお~!
叫びたくなりますよ~、あんまり素敵で。色の氾濫!モチーフの氾濫!なんと表現したらいいのか、この狭いスペースにぎっしりのモザイクは、ローマのサンタ・プラッセーデの礼拝堂と、大変似た雰囲気です。
この天井のこれ、四人の大天使(ミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエル)が、キリストのシンボルを持ち上げている図。黄金をバックに、中心が美しい青。




ちなみに、サンタ・プラッセーデBasilica di Santa Prassedeの、サン・ゼノーネ礼拝堂Cappella di San Zenoneの天井モザイクは、こんな感じです(今、インスタグラムでローマ特集やっているので、ご興味の向きには、どうぞ、下記リンクから訪ねてみてくださいね)。




サンタンドレアの方は、天使の間に、四福音書家の有翼のフィギュアがあるんですね。テッセラがより細かくて、技術の高さが伺われます。
でも、ローマの方が、デザイン的で、インパクトがあるかもしれない。
いずれにしても、どっちも素敵~!
どっちも、特に青が美しいです。

この、半円後陣部分にぎっしりとはめ込まれたモザイクの星もまた、とてもラベンナっぽいものです。




アップにしても、モザイクとは分からないくらいの細かさ。それにしても、紺と、星の輝く色が、憎らしいくらいにマッチしていて、十字架も含めて、きらきらと輝いていますよねぇ。うっとりしてしまいます。




また、手前のアーチに描かれた若きキリストらしきお姿の、なんと美しいこと。




ちなみに、四天使たちも、なかなかの美形揃い~!




当時のラベンナの人たちと趣味合いそう~。いや、そういう意図で美形としているわけでもないかな。でも、手も繊細で、実に天使の雰囲気満載な両性具有的表現ですよね。

こんなわけで、狭い博物館なんだけど、この礼拝堂を出たり入ったり、落ち着きなく過ごす羽目になりました。博物館に置かれていた中世や初期キリスト教の彫り物なども、大変好きなものばかりでした。




ここも鳥モチーフだった。鳥好きのグループって言うのがあったのかね。鳥モチーフの意味を、ちょっと考えてみたいな。

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ラベンナを勉強しなければいけない、と思っていたのに。

夏休み旅その10、ラベンナ8

寄り道続きで、間が開いてしまいましたが、夏休みの旅に戻ります。ラベンナRavenna、続きです。
ここもまた懐かしい、ネオニアーノ洗礼堂Battistero Neoniano。




記憶の中では、石畳の町並みの中にあったけど、こんなに緑の中にあったんですね。街中なのは確間違いなかったけれど。記憶が当てにならないこと、本当に多いです。再訪の場合は、あまりにも覚えていないことが多くて、毎度びっくりしています。
記憶力が甘いので、読んだ端から、同じ本を何度でも楽しめたり、訪ねた場所も細部は忘れちゃうから、毎回楽しめるというのは、お得感もありますが、年とともに、もしかしてやばい?という不安も喚起されちゃいますね~。
そういう中で、ロマネスク系の記憶は、結構持続することが多いので、逆にその点に驚くことも多かったのですが、これだけあちこち訪ねた記憶が重なってきたら、さすがにそこもだめになってきた感強し、です。

というわけで、ここも、記憶の中に鮮明にあるのは、どこよりも濃い紺を背景とした植物モチーフのモザイク位でした。全体に紺のイメージ。




幸い、その記憶に間違いはなく、背景の多くが、美しい紺となっていました。アリアーニ洗礼堂の、明るい緑を基調としたものとは、雰囲気がずいぶんと変わりますよね。




すごく細かくて、描き方が、ビザンチンというよりローマっぽいウマさって言うのかな。他と同時代とは思えない感じ。
洗礼堂なので、天井中央は、やはり洗礼の図。




ヨハネさんのらくだの衣が、いつもの変なのじゃなくて、普通の衣だ。あ、洗礼の図のときは、変ならくだ服は着てないんでしたかね。
それにしてもキリスト、超写実で、情けない表情。「水、苦手なんで、目つぶっちゃいますし、ちょっとにしてね、ちょっと…」って、「聖お兄さん」かよっ!

記憶の中の紺のイメージが強かったのは、この辺。




一部再建で、若干新しい部分もあるようなんですが、それにしても、発色はいいし、幾何学モチーフや植物モチーフのオリジナリティ、高いです。色の組み合わせもね、ラベンナならでは、です。古代の色彩感覚って、一様に派手ですよね。黄金にしても、はっきりした色というのが高価だっただろうから、そういう意図もあるのかなと思います。

それにしても、手の届く場所にあると、触れてみたくなりますね。
とは言え、ここは、街中ということもあり、超観光スポットで、実は訪ねたときも、狭い洗礼堂の内部はごった返していました。触れるどころか、写真を撮るのも大変な有様です。監視も結構きちんとしたいたと思います。正しいですが、混みすぎ。




洗礼堂ですから、中央には洗礼の桶。古い時代なので、全身で浸かるタイプの大きなものです。その外壁に、こんなかわいらしい浅浮き彫り。




素朴でかわいらしい子羊~。十字架の下ににょろっといるのは、やはり蛇なんでしょうかね。他の面にも、何かしら装飾的な浮き彫りがあったのだと思いますが、今残っているのは、残念ながら、この子だけ。

かわいらしいといえば、壁の、アーチの根元にも、なんか愛らしい、いろんな種のペアがずらりと並んでいました。




ユニコーンとグリフィンのキメラみたいな子たちとか、仲良く水を飲む鳥のカップルとか。




これは、ちょっと痛そうな…。




以前着たときには、モザイクだけに目を奪われて、こういう小さいものは、まったく見てなかったような気がします。まぁ、これも記憶違いかもしれないけれどね。




でも、建物の半分から上、ほとんどモザイクで覆われている状態ですから、モザイクに目を奪われるのも当たり前。




色の種類が多いのと、テッセラ(一つ一つの切片)の細かさが、半端なくすごいですからね。特にこの洗礼堂はすごいな。




でも、実は、人が多すぎるのも気に食わず、色がありすぎるのも散漫な感じがして、個人的には、同じ洗礼堂なら、ネオニアーノのすっきりした方が好きかも。



とは言いながらも、やっぱりすごいよね。良くぞここまで残ったという驚きは、どのモザイクを見ても感心します。特に、こういう大規模な洗礼堂って、おそらく、使われなくなってしまった時代が必ずあるはずだし、放置されて荒廃、というのが当たり前だったりもするケースが多いわけですから。勿論、近年の修復の賜物、という部分が大きいとは言え、たとえばリグリアのアルベンガだったかな。残されたモザイクは、ひとつの窓の上部だけ、とか、そんな風なのが割りと普通だったりするわけで。
ラベンナって、すごい。

ローマ、ロンゴバルド、ビザンチン、それぞれの時代にそれぞれのあり方をしていた、ラベンナの歴史的変遷を、いつかちゃんと勉強しなければ、と、以前中世の会の講演会で話を聞きかじったときに思ったことを、今、思い出しました。勉強しなくちゃ。いつかね。

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  1. 2015/10/15(木) 05:59:50|
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