fc2ブログ

イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

イタリアかぼちゃ、おいしくなりました。

グラッパ合宿、2015年秋、ピエモンテ編、その7

合宿最終日は、美しいブドウ畑の秋を楽しみつつ、帰り道から始まります。つまり、それぞれの住まいに向かう東向きの道程。
その道沿いで、時々、びっくりするように美しい紅葉に出会えました。




今年は、異常に暑かった夏の名残か、いつまでたっても寒さの来ない秋が続きました。この合宿に先立って、変に寒くなったんですけれど、それまでもそのあとも、変に暖かい日が続くという秋。だから、紅葉も、ちょっと変則的だったのでは、と思います。
本来だったら、この季節、ブドウ畑は、全体に紅葉しているはずですが、先の記事にも記したように、まだ青々としている畑も、結構あったのです。
でも、この、通りすがりの斜面一帯のブドウ畑は、実に美しい紅葉でした。




これ、もしかして、それなりに有名な撮影スポットかも。
すり鉢状に葡萄畑が広がって、紅葉関係なくても、素晴らしい風景が楽しめるんです。
美しかったです。

さて、朝っぱらから訪ねたのは、我々の合流地点にも近い、こちら、グアルコ蒸留所。




Distilleria Gualco Bartolomeo e Susanna di Giorgio e Marcella Soldatini Snc
Silvano d'Orba (AL)
www.distilleriagualco.it

村にある小さなエノテカの構えですが、裏にはちゃんと蒸留所があり、小さいながら独立自営の蒸留所。その上、重要なコンクールで賞を取っていたり、知る人ぞ知る的な、優秀蒸留所らしいのですよ。
とは言え、まずは、大変小さくて地味な門構えにびっくり。
その上、日曜日なのに、オープンしているというのにも、びっくりです。




こじんまりとした販売スペースで、試飲もさせてくれます。
味わいのあるグラッパ。薀蓄も、半端ありません。




でも~、試飲の量が、ぽっちり、というのは、ちょっと寂しかったですわ~。
試飲用のボトルそれぞれに、とってもかわいらしいメジャー(写真の、小さなフラスコみたいな部分。チェコ製とか言ってたように思います)がつけられているんですが、で、そのメジャーがすっごくかわいいんですが、そのメジャーの意味がないくらい、ぽっちりとしかグラスに注いでくれない。これはちょっと、どうよ~、という感じでした。

面白いものを作っているとは思いましたが、なんか、コンクールって、何をどう判断するのよ、と、改めて、まじめに製法や種類について、整理したいと思いました。

試飲中に、我々が、いろいろ聞いたせいか、見学したい?と嬉しい申し出があり、勿論、大歓迎で、見学させていただきました。

表側は、普通にお店なのに、裏柄には、結構なスペースがあり、いきなり普通の蒸留所状態です。




でも、器械部分とかは、やはり相当こじんまりしてた。




とは言え、こういう家内制手工業蒸留所の製品でも、ちゃんと賞を取れるんだから、いいよね。がんばれば、ご褒美のある世界なんだよ。
試飲の結果として、1本、購入しました。




そして、最後のランチへ。
今回は、ノーヴィ・リグレ郊外のアグリ・ツーリズモです。ノーヴィの町からすぐな割りに、結構山っぽいロケーションで、びっくりしました。




Cascina Degli Ulivi
Strada della Mazzoia 14, Novi Ligure (AL)




田舎の雰囲気満載で、かつ、清潔感もあり、雰囲気はナイスです。ちょっと田舎のお友達のうちに食べに来た、的な感じっていうか。

メニューは口頭で、お値段のイメージ、ゼロ。アグリツーリズモだから、とんでもないお値段ではないはず、という暗黙の了解で成り立つスタイル。
料理は、すっごくアグリツーリズモで、それも、野菜中心。




自家製のパンに、自家製の野菜がのった前菜。
普通の料理ですが、合宿中肉中心の食生活だったあとで、こういった自然野菜系は、それだけで、胃腸に優しい気が…。

次に出てきた、全然フォトジェニックじゃない、たまねぎスープ。




たまねぎ苦手な人には、地獄なメニューですが、甘くてやさしい味でした。難をいえば、ぬるい!猫舌イタリア人向けな温度設定なんでしょうけどね、これはちんちんでほしいところです。

猫で思いましたが、最近、日本の猫カフェ、世界に進出しているのを、日本の人は知らないでしょうねぇ。とうとう、この秋、ミラノにも上陸。近々行ってみたいと思っていたのですが、考えたら、アグリツーリズモは、そもそもそういう世界。
このアグリでも、猫がうろうろしていて、我々のテーブルにもべったり。猫好きのわたしは、つい、ちょっとあまりをあげてしまったりするので、ますますべったり、という状況でした。
お店の人は、時々、ごめんなさいねぇ、とか言いながら、猫を戸外に出すのですが、敵も去るもので、いつの間にか、また入ってきていたり。考えたら、思いっきり猫カフェ状態ですねぇ。こちらの猫は、甘やかされていませんから、肉を狙って虎視眈々で、余裕なく戦っている感じですけれど。笑。

かぼちゃのオーブン焼き。これね、おいしかった。




これに触発されたところもあるのか、この秋は、かぼちゃを買っています。
以前、こちらのかぼちゃはあまりにおいしくないので、二度と買わない、と思ったのですが、このかぼちゃのあと、つい、買ってしまって、そしたら、やっぱりおいしいんです。イタリアの品種改良は遅いですが、それでも、地味に進んでいたんですね。かぼちゃ、甘くて、水っぽさが少なくなって、実においしくなりました。今年、既に3回も買っていて、最初はかぼちゃプリン、二度目は大好きなかぼちゃスープ、3度目は、何を作ろうかと思案中です。

詰め物系パスタ、二種盛り。




そして、メイン。お肉と野菜のグリル。




どれもおいしかったんですけどね、そして、特に自家製野菜中心の、薄めの味、というのもとってもよかったですけどね、田舎の割りには、お値段、かなりです。
ワインからパンから自家製で、出てきた料理の食材の、確か9割以上は自家製、と言っていたと思うので、それはとっても賞賛すべき事実だと思うんですけれど、でも、高いわ。
ミラノ近郊だったら、わかるけれど、この地域でやっていけるというのはすごい。食に対する意識の高い人たちが多いゾーンなんでしょうねぇ。
いや、びっくりした。

でも、考えたら、胃腸が疲れちゃって、今回飲み合宿なのに、ワインをちゃんと飲む機会がなかった。ここで、始めて1本、ちゃんとからに出来ました。




自家製のワインが、15.50ユーロ。これは自家製としては、相当高めの値付けです。びっくり。おいしかったけどね。

というわけで、最後に健康的なお食事をして、今回の秋合宿も、無事終了。
帰宅して、この戦利品の眺めにうっとりした、ということです。




その後、毎日、過去グラッパ消費に励んでいます。

次回、春合宿まで、ごきげんよう。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
スポンサーサイト



  1. 2015/11/22(日) 08:12:29|
  2. グラッパ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

ここは、アメリカと決定~!

グラッパ合宿、2015年秋、ピエモンテ編、その6

午後一で訪ねたのは、超有名ベルタ。




Distilleria Berta Srl
Via Guasti 34/36, Fraz.Casalotto, Mombaruzzo
www.ditilleriaberta.it

一昨年は話にならず(相手にされず)、だったのだけど、昨年はよい人に当たって、しっかりと試飲をさせてもらえたので、二本ほど購入。有名だけあって、いいものを作っているし、なかなかのコスパ、と思わされたのですが、さて、今年はいかに。

上の写真の部分は、昨年工事中だった新築部分。すっかり完成している様子ですから、中を見るのが楽しみでした。




その、新しいスペースは、巨大な試飲ルーム、というか、イベント・スペースになっていました。
駐車場の反対側は谷底に向いているのですが、そちらにテラスが設けられ、美しい丘と谷の風景を眺められるようになっています。




そういえば、過日、ベルタのフェースブックで、何かのイベントの食事会が、このスペースで盛大に行われている写真がアップされていました。

折りよく、これから、ガイド・ツアーがあると誘われたので、参加することにしました。
グラッパ博物館めいた様々な器具の並ぶ、このスペースからツアー開始です。




グラッパ蒸留所は、どこでも意外とこじんまりとしていることに驚かされます。
このベルタでも、実際の製造現場は、かなりこじんまり。これでも量産しているんだから、グラッパ全体の量産レベルって、やはりかなり小さい。




裏の方に積まれていた、この青いドラム缶状のもの。中には葡萄粕がつまっていて、発酵を促すものなのだそうですが、他の蒸留所では、お目にかかったことがありません。普通は、むき出しで、または発酵を促すために布等で覆われて、屋外に積まれているだけ。
ただのプラスティックの容器みたいですが、意外とすごい新兵器なのかな。




ガイドは、ここでも若いお嬢さんで、立て板に水で説明はうまいのですが、プロのガイドみたいで、なんか違和感もあります。違う方向性の情熱というか。まぁ、この人の仕事は、このガイドをすることなんでしょうけれども。
大好きなベッカリスのキアラさんなどは、自分もグラッパが大好きだから、どうしても人にも勧めたいっていう人ですが、そういう人は本当に少ないですね。こうやって接客をしている方々、ちゃんと飲んでますか?と、時々正したくなります。




外に出ます。びっくり。




敷地が広大で、公園化しています。
まだすべての地域を、開発してはいないようなのですが、かなり壮大な計画を持って、徐々に実現しているようですよ。フランス的な戦略っていうか、呆然でした。

丘をちょっと降りたところにあるのは、ビスケット工場。




ベルタ蒸留所がある地域は、アマレットという独特のビスケット特産地。どの蒸留所でも、お茶請け、いや、グラッパ受けに用意しているのは、このアマレットなんです。
ミラノなどだと、アマレットというお菓子は、いわば蕎麦ぼおろ的なタイプのビスケットで、乾燥してカシャカシャした口当たりのものが主流なのではないかと思います。それ、好きじゃなかったので、わたしの中では、「アマレットは嫌い」でした。

ところが、この地の蒸留所を回る中でいただいたアマレットは、ソフトなタイプで、まったりとしながらしつこさがない上品なお菓子。すっかり好きになってしまいました。

特に、このモンバルッツォの町にあるアマレットは、包み紙もフェミニンですっごくかわいい上においしいので、ベルタで購入して以来、ファンです。が、ミラノでは見たことがありません。
その、お菓子工場らしいです。どうやら、わたしの好きなアマレットは、ベルタが出資している会社のもののようでした。だから、直売所でも、大袋でお安く提供しているんでしょう。

その先は、バラ満開の花壇つきの、見晴らしのよい公園となり、通り過ぎると、自動的にクラシック音楽が鳴り出すという演出つき。




こうなると、フランスというよりは、アメリカのナパ・ヴァレーとか、カリフォルニアの巨大大量生産ワイン農家のようなイメージ(噴水からワインが噴出している、的な)。
ここで録音された音楽を流す演出、必要ですかね?
そういうものが好きなのって、アメリカのお登りさんくらいじゃないのか?
なんだか、馬鹿にされているような気がしてきました。

さらに坂道を下っていくと、畑が。




時期が時期だけにさえない色合いですが、これ、ラベンダー。
南仏を意識してるのか?おいおいって感じのところで、ガイドさん、待ってましたとばかりに、スパ・ホテルを建設するという今後の計画を語ってくれましたよ。ラベンダーもアロマ・テラピーなんかに使おうっていうんですかね。
そりゃ、こういう斜面にラベンダーが咲く季節は、素晴らしくフォト・ジェニックな風景が広がりそうですが、やらせっていうか、なんていうか、こういうどこまでも人口的なオサレ感覚って、イタリアっぽくはないですな。

いよいよ熟成室に到着。またまた唖然としました。




なんなんだ?この色彩は?
照明の色が刻々と変わっていくんですよ。




ガイドさんいわく、「照明はLEDなので、温度等の問題はありません」。いや、そういうこと聞きたいわけじゃなく、なぜ照明がいるのか?
決定~!ここは、アメリカ・マーケティング村です。

さらに奥には、バリック(小樽)用の部屋。




色、氾濫。なぜここまで?




インパクトはありますが、見ていて、こっぱずかしいです、個人的には。温泉宿的なスペクタクル感、とでも言ったらいいのか。洗練されたオサレ感はなく、見た目のインパクトだけだし、時代遅れっていうか、アートにもなってない…。




薄闇に、ただ樽が並んでいるだけの方が、よほど訴えるものがあると思うんですけれどねぇ。

最後に案内された、2015年5月に落成した最新のスペースSOLOPERGIANも、ほぼ同様。




最近亡くなられたジャンさんの思い出のために作られたスペースということでしたが、なんか。

何だろう。
ガイド・ツアーって、普通は楽しいんですが、どっと疲れてしまいました。
このツアーのあとは、勿論楽しい試飲タイムのはずですが、そこのところは、まったく組織化されておらず、対応も最悪。何とか二種類くらい試飲できたのですが、接客も何もなしです。ガイド・ツアーに参加した人たちが、てんでんばらばらに、アレをこれを、というのに対応するのに、カウンターにいるたった二人のスタッフは精一杯で、一人ひとりに説明する状態でもないのはわかりますが、それもまた、訪問者を馬鹿にしているというのか。
ここまで来たんだから、試飲しなくたって何かしら買うんでしょ、どうせ、くらいに思っているのか、または試飲したって、どうせわかりゃしないでしょ、とか馬鹿にしているのか。
いずれにしても、気持ちのよい状況ではありません。

せっかく組織的なツアーをしたなら、そのまま、試飲も組織化して、ビアンコとリゼルバと、誰にも同じように2,3種をいっせいに飲ませれば済む話と思うんですけれどもね。

そうこうするうちに、別途団体がやってきて、その誰もが、信じられない勢いでボトルを何本も抱えてレジに並んでいます。
わたしは、せめてアマレットの大袋を購入したかったのですが、長蛇の列に並ぶ元気はなく、勿論グラッパ購入する気持ちもなく、我々グラッパ倶楽部、すごすごと退場。

ここのグラッパ、おいしいし、値段も悪くないですよ。でも、団体で訪ねるための対応しかとっていない、ということがわかりました。ベルタは、基本、多くの酒屋さんで購入することが出来ますから、もう行くことはないかな~。

このまま、宿に帰る気持ちにもなれず、ちょっと寄り道しました。




ブドウ畑の丘々の遠くに見える町、バルバレスコ。




村の中心にある元教会使用のエノテカ。毎度のことながら、雰囲気があります。




ここでも、グラッパを試飲。知らない製造者さんのものでした。




毎年来ていても、まだまだ知らない製造者さんがいると思うと、嬉しいものです。毎回必ず面白い出会いがあるしね。

市のスペースで、大好きなエマヌエレ・ルッツァーティさんの、小さな作品展が開かれていました。




初めて、イタリアに長期滞在で来て以来、好きな画家さん。あの頃、一枚でも買っておけば、と毎回何はなし、悔しい気持ちになります。当時も、既に有名な方でしたが、でも版画が多いし、なくなられた今では考えられないくらいの値段で、入手できたんだろうと思うんですよね。先見の明がないよ、オレ。

でもなんか、ルッツァーティさんの絵で、ベルタで疲れた気持ちが洗われたよ。

ということで、長くなりましたが、もう一回続きます。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2015/11/20(金) 07:24:07|
  2. グラッパ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

スコッチ樽とかポルト樽、リゼルバ祭り~!

グラッパ合宿、2015年秋、ピエモンテ編、その5

次に訪ねた蒸留所には、本当にびっくりさせられました。




Distilleria Dellavalle Srl
Via Tiglione 1, Vigliano d'Asti

事前に電話で、見学が可能かどうかを確認してから訪ねることにしたのですが、すごく歓迎!という感じでもなかったので、多くを期待しないで訪ねたのです。
電話で、これからアポがあるから、あとから来て頂戴ね、という時間より、若干遅く着いたのだったと思うのですが、タイミングがよくて、たどり着いたとき、ちょうど前のアポの相手らしき人たちが辞去するところでした。よかった~。

普通の家みたいな蒸留所を入ると、樽がドカン。




でも、いかにも家内手工業な蒸留所だよ、的な雰囲気も満載。




実際、通された試飲ルームは、台所つき、という家庭的なスペースでした。




最初、たった3人ばかりの訪問者に不満なのか、やる気のなさそうな様子だったご当主。




大変な仕事なんですよ、疲れるんですよ、と若干愚痴っぽい。
何が試飲したい?ビアンコ?じゃあ、一通り行きますか、という感じで、どんどんボトルを並べていきます。




一気にこれだけ、試飲させられてしまいました。それも、ご自分は、どっかりと腰掛けて、こちらを眺めながら、いろんな薀蓄を語ってくださる。試飲は我々の手酌というありえないスタイル…。
どれもとってもおいしいんですよ。
そして、一通り飲みながら、お話を聞いていると、興がのってきたのか、では、今度は本物のリゼルバだ!という感じで、立派なボトルが次々と出てきます。




どれも、ボトルも素敵ですが、中身もすっごく面白いんです。バリックしている樽が、マデイラ、ポルト、スコッチ等々。そして、それぞれ残り香がとても、何というか、面白いとしかいえない感じ。独特なんですよ。
スコッチ(のだったと思うんですが)など、バターの風味があったりとか、そういう感じ。

特に、このピコリットをいただいたときは、え!?と目がキラキラしちゃうような驚きの風味でした。




今、我が家にも一本ありますよ~!
ご当主放任状態の手酌なので、ちょっともうひと舐め、とか勝手放題の試飲を心行くまでさせてもらって、大堪能です。
その後、お値段をうかがって、またのけぞる驚きの価格(安い、ということです)。これは1本というわけにはいかん、と思い、もうひとつは、ポルトの樽で熟成したヤツをいただきました。




あまりお安いので、ビアンコも、デイリー用として、1本いただいてしまいました。デイリーって、正直、買わなくても、既に売るほどあるのにね。でも、スーパーで売っている大量生産の工業製品と同じレベルのお値段なんですもん。それでこれだけおいしくて、こだわって作っている生産者さんを知ったら、買わないわけにいかないです。
いや~、満足。
この蒸留所は、今回の大発見だったかも。

このあと、ご当主に教えてもらったレストランに行きました。




Ristorante della Stazione
Montegrosso d'Asti

駅前、というよりも、鉄道駅と一体化しているようなレストランで、そういうところは、ろくでもない、というイメージがありますが、ここ、なかなかよかったです。適当にお洒落で、ご飯も実質第一という感じで、コスパがよかったような。




わたしは、赤ワイン煮込み肉をいただきましたが、家庭的お皿でおいしかったです。でも、なぜか、パンしか撮影してませんでした。

ちなみに、ピエモンテでは、パンと一緒に、必ずフレッシュなグリッシーニ(細長いスナック状のパン)が出てきます。今回は、どのレストランでいただいたグリッシーニも、とても新鮮で、パリパリとおいしかったです。
ミラノなどだと、袋入りの工業製品がほとんどで、その日にパン屋さんで仕入れたようなグリッシーニを置く文化はあまりないです。ピエモンテのもんだから、そりゃそうなんですけどね。

このあと、大手蒸留所を訪ねますが、ちょっと長くなりそうなので、次回。小刻みですみません。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2015/11/19(木) 07:05:47|
  2. グラッパ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

情熱に魅せられて、ついつい。

グラッパ合宿、2015年秋、ピエモンテ編、その4

新しい一日の始まり。アルコール摂取に備え、たっぷり朝食をいただいて、出発です。
まずは、同行者が、何度かトライしたけれど、結局訪問がかなわなかったというお店屋さん兼生産者さんである、こちら。




Grapperia Artigianale Ali' di Poglio G. E A SNC
Viale Indipendenza 110/116, Canelli (AL)




普通の酒屋さん。
近所の蒸留所のグラッパをたくさん取り扱っています。手前に、ベルタの特徴的なボトルが見えます。
でも、お店の裏に工場があって、瓶詰めしています。
基本、よそから購入したグラッパを瓶詰めして、自分のブランドで売っているスタイル。今回の合宿の、トップバッターで訪ねたサン・トマソさんのようなグラッパ生産者から買っているということです。
ちゃんと試飲もさせていただきました。

オーナーさんご兄弟、とても気さくで、同行者とはサッカーの話題で超盛り上がっていました。そういうところも、ご近所の酒屋さんです。
自社ブランドのグラッパは、おいしいですよ。その上、お値段がかなりリーズナブル。また、店で販売している他生産者さんの品についても、納得値段でした。

近所の生産者さんで、親がなくなって、きょうだい間で相続問題が起こり、結局兄がブランドを引き継ぎ、妹は袂をわかって、別ブランドを立ち上げた一族の話とか、ワイドショー的なお話を聞かせてくれたり、そういうのも面白いもんです。遺産相続、貧乏人にはまったく関係ない話で、引き継ぐもののないきょうだいには、仲たがいする理由もなし、仲良しでよかった、と思いました、笑。

というわけで、ここでも二点、お持ち帰り。もはや、「買わない」自戒はどこへやら、です。




意匠が若干しつこいラベルで、棚にずらずら並んでいるとうるさい感じだったのですが、こうやって二本程度だと、ちょっとレトロな感じで、悪くないですね。
ネッビオーロの方は、正統派ドライなグラッパ。モスカートは、おなじみ。さわやかで香り高く、モスカートがおいしくないってことは、まずありません。樽で熟成させているタイプは、ほぼ必ずおいしくいただけるので、安ければありがたいっていうものです。

このお店の前にある駐車場で、面白いもの発見。
車道との柵なんですが、真ん中の写真。




アップにすると。




トリュフ様…。
カネッリですから、アルバにも近く、この辺りは、とにかくあちこちの町村でトリュフ祭りの真っ最中です、確かに。でも、この絵はないよねぇ。
他のは、教会とか歴史的建造物や観光がらみのイラストや写真で、いたってありがちな普通なものばかりなのに、トリュフの実物写真は、ちょっとフォトジェニックとはいい難く。
それだけ、気合が入っているということなんでしょうけどね、地元では。

でも、今年はトリュフがよくなくて、収穫も少ないし、香りもいまひとつだとか。実際、レストランで、お隣のテーブルで食べているのに、香りがほとんどしない、ということがあり、納得です。レストランでは、パスタなり目玉焼きなりのお皿に、トリュフ卸しを添えた状態で、適当な大きさのトリュフが供されるのですが、すりおろす前から香りが漂うし、すったら、ぶわ~っとトリュフまみれになるような香りとなるんです。
それが、全然。かえって不思議でした。

美しい車窓風景を楽しみながら、次の蒸留所に向かいます。




今回、一部紅葉も楽しめましたが、多くの土地で、まだ緑満載、という状態でした。急激に寒くなった週末ではありましたが、その前もあとも、気温は高めでしたからね~。
途中、バルベラ・ダスティBarbera d'Astiの共同販売所がありましたので、せっかくなので立ち寄り。




Cantina Sociale, Barbera dei Sei Castelli
Societa' Cooperativa Agricola
Reg.Opessina 41, Castelnuovo Calcea (AT)

10時半ごろですが、グラッパに続いて、こちらでは赤ワイン。試飲を頼んだら、なみなみとそぞいでくださいました。
不思議なもので、いや、不思議でもなんでもないですかね。アルコール度40度超のグラッパのあとでは、15度程度のワインは、するすると水のように飲めてしまうので、びっくりしました。危ない危ない!
数々の賞をとっているワインも、かなり安いお値段でしたので、何かの折のお遣い物として、二本購入。
もっと買ってもいいのですが、なんせ、小さい車に三人のりで移動しているので、スペースの問題もあるんです。その上我が家には、適切な保管場所がないので、買いすぎると困る事情もあるんですよね。残念でした。

ここは、まさに地元の酒屋さんですから、地元の方々は、量り売りで買うんじゃないでしょうか。




我々が訪ねたときも、大きなポリタンクで、リットル買いしている先客がいました。
いくらか忘れましたが、リットル2ユーロとか3ユーロだと思います。

さて、やってきたのは、大好きなベッカリスです。




Distilleria Beccaris Elio di Beccaris Carlo & C Snc
Piazza Cora 1, Fraz.Boglietto, Costigliole d'Asti
www.distilleriabeccaris.it

最初にここを訪ねたのは、本当の偶然でしたが、コスパがめちゃくちゃいいんです。すっごくおいしい。そして、昨年再訪したときに接客してくれた彼女、キアラさんの情熱で、さらにファンになりました。




我々のことを覚えていてくださり、それも相当飲むし、しっかり買う人たち、という記憶があったようで、すぐにビアンコから並べてくれます。
迷いなく、あてを用意してくれるところなども、超気が利いています。
蒸留酒には、チョコレートなど甘いものがぴったり。ということで、オレンジピールにブラックチョコをかけたもの、地元産ヘーゼルナッツ、他のタイプのチョコレート。こんなに気の利く蒸留所さん、他にないです。

上の、一番右側が、昨年彼女の勧めあって購入したアルネイスのグラッパ。
これ、今年の春にあけたとき、あまりのおいしさにびっくりしたのです。彼女に報告したら、大変喜んでくれました。ね、おいしかったでしょう!と。

ビアンコのあとも、リゼルバを数種類いただきました。




おしげなく、次々と飲ませてくれます。勿論、ちゃんと試飲用のグラスで、たっぷりとついでくれて。そして、押し付けでなく、わたしはこれのこういうところが好き、といった素直な自分の意見を言ってくれるのも、好感度高いです。
やはり、生産現場での、情熱に勝るものはないですよねぇ。
同じような年代の若い女性の案内でも、たとえば大手シボーナなどには、こういう情熱がまったく感じられなかったです。ベルタもだな~。そういうとこでは、こっちのテンションも下がってしまいます。

ここでは、買うまい、という気持ちは微塵もなく、結局以下、購入。




昨年同じシリーズの別の葡萄種を購入しましたが、今回は、新作というシャルドネを。試飲でおいしかったので。そして、なぜか今回は気になっているマルバジア。
香り系では、昨年はブラケットの年で、今回はマルバジア。不思議なもので、こちらの認識なのか、現地マーケットのトレンドなのか、年毎の主力葡萄種というのがあるみたいですね。
そして、もう一本はリゼルバ。




写真が暗いですね。真っ黒なほっそりボトルなのですが、スタイリッシュなデザインです。これも試飲でおいしかったやつ。
あけるのが楽しみだけど、おいしいのわかっているから、もったいなくて開けられない気分もあります。実際、最初の年に購入したリゼルバ、開けられてない。同行者が、最近開けたら、やっぱりびっくりするくらいおいしいよ、と言ってました。あれは、まだグラッパをほとんど知らない時代だったにもかかわらず、試飲でびっくりしたもんな~。

ということで、長くなってしまったので、続きは次回。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2015/11/17(火) 07:12:20|
  2. グラッパ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

マローロ、ご挨拶できただけでも、よし?

グラッパ合宿、2015年秋、ピエモンテ編、その3

シボーナのあと、訪ねたのは、おなじみのこちら。




なんだか、知り合いに会うようで、いや、実際そうなんですけれど、ほっとします。
マローロ蒸留所Distilleria Fratelli Marolo。

我々が到着した直後に、マイクロバスが到着。団体だ、やばい!と、足早に入場したところ、おそらくそのマイクロバスで到着した団体を待っていた跡継ぎ君が、入り口に下りました。去年は、外国出張中でお会い出来なかった、慶応ボーイでもある跡継ぎ君と、久しぶりにご挨拶。相変わらずのイケメン好青年ぶり。でもやっぱり、団体様御用達で、我々は、去年と同じ、スタッフ君のお世話になることとなりました。




でも、彼も、我々のことは、記憶にあるらしく、昨年よりさらに親密な接客をしてくれました。とにかく、びっくりするくらい、飲ませてくれた!
今回の目玉は、こちら。




アマローネのグラッパ!
わたしはFacebookで、こちらをフォローしているので、知っていましたが、ラベルにしても、FBでアップされたものと現実のものとは、ずいぶんイメージが違います。
味は、なんか、考えたら、高価なアマローネって、ワインの味を知らないし、判断できない…。ちょっと情けない。

ま、これはともかく、お兄ちゃんの勧めるままに、いろいろ試飲させていただきましたよ。
ここは、ラベルがかわいいからね、ジャケ買い的ラベル買いもありという前提で。




サルデーニャで多く作られるヴェルメンティーノ。イセエビ!
実は、今回、ビアンコで一番おいしいと思ったこちらを購入しました。

バルベラのラベル。ちょっとしつこい感じ?




ブルネッロのラベルは、妙に渋い。




それにしても、素敵な絵です。ラベルのために、すべてほしくなってしまうくらい。

記憶のために、ラベルの絵を描いて残すようになってから、少なくとも、自分で買って飲んだグラッパの記憶は、その絵で、若干マシに残るようになりました。やっぱり描くというのは、イコール見るということなんでね。
特にここのラベルは、絵も色も特徴的で素敵なだけに、自分で色まで模写すると、記憶に残りやすい。
上の写真のラベルはどちらも絵が鮮明で、味が蘇ってきます。




それにしても、いいもの作ってるなぁ。それでも、作ってるだけじゃだめで、販路を広げるために、跡継ぎさんは、世界中走り回ってマーケティングしています。

その結果というか、今回、派生商品も開発していました。




グラッパを使った甘いもの系。パネットーネとか、クネーゼとか。
クネーゼは、このあたりのチョコレート菓子ですが、マローロ調の包みがかわいらしかったので、購入しました。すっごくグラッパ臭が強くてびっくり。お酒に弱い人は、いただけないチョコレート菓子かも。

というところで、初日は終わり、宿へ。今回は、レストラン併設のアグリツーリズモ。




La Bossolasca
Via Robini 22, Santo Stefano Belbo (CN)
www.labossolasca.it

地上階がレストランとなっており、なかなか評判がいいようです。お部屋も、アグリとしてはとっても普通で、お値段とのバランスはよかったと思います。
夕食は、ここのレストランでいただきました。

前菜の盛り合わせ。




すごくおいしかったんですが、盛りがよすぎっていうか。
ビテッロ・トンナート、生肉、ファラオーナとなんか野菜のサラダ、ビーマンのチーズ詰め。どれもおいしい~。でも、これだけでお腹一杯になってしまいます。とにかく動物系プロテインが。
そして、我々は、日中、やたら、グラッパをいただいているので、アルコール摂取もきつくて、三人で、ワインのハーフ・ボトルを消費するのがやっと、という有様です。

で、二皿目は、ポルチーニきのこのフライを、友人とシェアしました。




シェアでも、お腹の方は相当きつかった。アルコールって、来ますね。日中、暴食はしてないんだけどね。
とかいいながら、デザートのブネ、無視できず、一皿とって、一口ずつ。




生肉同様、チョコレート菓子のブネも、ピエモンテ合宿でのみ味わうお皿となっている今日この頃。やはりおいちい。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2015/11/16(月) 07:36:53|
  2. グラッパ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4

ミラノ展覧会、巨大キーファーに圧倒される。

ミラノの町に出ることがめったになくなってしまった今日この頃、展覧会なども、ほとんど行ってませんが、唯一定期的に訪ねる美術館があります。
昨日、朝から用事で出かけた帰りに、しばらく訪ねていないことに気付き、立ち寄ることにしました。




ハンガー・ビコッカHanger Bicocca - Via Chiesa 2, Milano
なんせ、我が家からは車で5分強という近さ。その上、無料なんですよ、ここ。

多分以前にも紹介したことがあると思うのですが、大型の機械等の製造工場を改築した現代美術向きの容れ物で、ピレリ財団が運営しています。
ピレリは、ちょっと前に中国の資本が入ってしまいましたが、財団は独立組織として残ったようです。この美術館大好きなので、ほっとしたし、大変嬉しかったです。
それにしても、会社本体は身売りしたのに、この財団は、いまだに無料で美術館を解放しています。なんか知らんが、経済ってすごい。または、金持ちってすごい。ありがたい。

今回は、上の写真でHanger Bicoccaとある入り口棟からではなく、横の方から入るようになっていました。




こういう眺めも、産業遺産っぽくていいですよね。うまく再生したものだと思います。

この美術館、今のようにちゃんと美術館となる前、奥の方にある大きな建物だけがあり、わたしも経緯はよく知らないのですが、アンセルム・キーファーの超大型作品を展示することから始まったと思います。
その作品は、常設展示されているのですが、時々趣向を変えた展示を行うようで、これまで何度か、ちょっと異なるイメージを見てきました。
今回は、かなり趣向を凝らした展示です。

Anselm Kiefer - I Sette Palazzi Celesti 2004-2015




展示のメインは、勿論この巨大な七つの塔ですが、今回は、周囲の壁に、やはりキーファーの、巨大絵画が5枚、展示されていました。そして、これまでの展示では、塔のある部分には近づけないようになっていましたが、今回はまったくフリーになっていたのが驚きでした。
そして、音楽付き。
すべて効果的で、いきなりキーファーの世界に連れ込まれた感じ。塔の近くまでいけるのも、これまでとは違う臨場感を感じさせられます。

それで、思わず、説明のフライヤーをじっくりと読んでしまった次第。普段は、見て面白くて、それでよし、って言うタイプなんですけどね。あまりに引き込まれたので…。

この七つの塔、それぞれに、固有の物語、思い入れがあり、それが全体でまたひとつの思想を作り上げている上に、今回は絵画までコラボしている、というわけで、そういう意図的な迫力が伝わったということなんでしょうかね(音楽は、あとからお隣の展覧会のものだったとわかったのですが、ぴったりの音響効果がありました)。

縦長の広場に、七つの塔が不規則な感覚で建っていますが、おそらく、その並び方、距離感、そういったすべてに、アーチストの思想がこもっているものと思います。かなり緻密に計算されているな、と思うのは、七つを一望した写真を撮れない、という事実から。相当見ていますけれど、いまだに撮影可能なポイントがあるのかどうか不明です。

タイトルである「天の七つの建物」は、4/5世紀のヘブライの古文書に出てくる言葉に由来しているそうです。神に近づくための精神のイニシエーションのシンボリックな過程について書かれた書物だそうなんです。既に、難しい。




それぞれの塔は、鉄筋コンクリート製で、コンテナの形で整形されて積み上げられた90トンの重みのある建造です。塔のあちこちに、鉛製の楔石や書籍のフィギュアがはめ込まれていますが、これは、建物の安定性を助けるという実用的な目的と同時に、鉛という素材の意味があるということです。鉛って、憂鬱を表すマテリアルであることが、ポイント。そういわれれば、鉛って、そうかもしれないですね。
身体が鉛のように重いとか、鉛色の空とか、そういうイメージがあります。そういうことって、言われたらそうだけど、金属とその象徴する意味やイメージって、独立して考えてことなんてなかった。目からうろこ。

この作品で、キーファーが示唆しているのは、ヘブライの古代宗教の解釈、第二次世界大戦後、西側社会の廃墟、現在を認識するために見るべき可能な未来、などなど。アーチストってすごいなって、なんだか思います。

一つ目は、入り口から一番奥に位置する塔で、Sefiroth。
ちなみに、インターネットでセフィロスと検索したら、ファイナル・ファンタジーの登場人物の情報がずらずら~!と出てきて、びっくりしました。

全体の中では最も低い14メートル。天辺に鉛製の書籍一塊が置かれ、Sefirothのヘブライの10の名前がネオンでつけられています。




カバラ(ユダヤ教に基づく神秘論で、中世に、南仏やスペインのキリスト教思想家に影響を与えたもの)のヘブライの神秘主義において、神性の表現や手段を表すもので、Keter(至上の王冠)、Chochmah(賢明さ)、Binah(賢さ)、Chesed(愛)、Guvurah(権力)、Tiferet(美)、Netzach(忍耐、寛容)、Hod(威厳)、Yesod(世界の創造)、 Malkuth(王国)。

面白かったので、だらだらと解説を書きますが、多分、本物を見てない向きには、つまらないと思います。すみません。

二つ目の塔は、Melancholia。天辺に、多面体が置かれていますが、これは、アルブレヒト・デューラーが描いたエッチングに採用された多面体(4枚目の写真の左側の塔の天辺に、ちょこんと置かれているもの)。
そのデューラーのエッチングが、同じタイトルとなっていて、寓意的な小物が満載で、憂鬱を表しているとか。変に不安定な多面体の形状が、アンバランスなイメージなのかな。天辺への置かれ方も、落ちそうな落ちなそうな位置だし、明らかに意図的。

三つ目はArarat。これはわかりやすいですね、少なくとも名称は。ノアの箱舟が乗り上げたとされるアララット山。
天辺には、鉛で図案化された模型が置かれているようです。多分これ。




この右上の。よくわかりませんが、箱舟にインスパイアして、平和と救いを運ぶものをシンボル化、同時に、軍艦や戦車、荒廃なども含んだ模型。複雑~。

四つ目はLinea di Campo Magnetico。磁界ライン?なんだ、そりゃ?
これは、中でも最も巨大18メートルの高さを誇ります。
鉛で作られたフィルムのフィギュアが、全体を這っているのが特徴。床面から、内部にも、ドサドサとぶら下がっています。




こういうディテールは、やはり近くに寄ってみることが出来て、気付くことが出来ました。これまだと、見学場所は、一番近いところでも、塔からは数メートル離れているので、全体は見えても、塔の中までは見られなかったから。
塔の足元には、フィルムのリースとか撮影カメラも鉛で作られたものが置かれています。




ここでの鉛の意味は、鉛は発行に耐えられず、なんらのイメージも作れないというマテリアルだということ。それが、ヘブライ文化や少数文化を抹殺しようとしたナチから、ビザンチン時代~ルターの時代まで西側文化を定期的に襲う偶像破壊などの破壊思想まで、を、またキーファー自身が言うように、「すべての作品は、過去の作品を凌駕する」という考えまでを示唆すると。
深いなぁ。

5本目と6本目は、とても近い位置に仲良く建っていて、二本で一組。3枚目の写真の手前の二本です。
タイトルとしては、5本目がJH、6本目がWH。それぞれ、足元に、ナンバーのつけられた隕石がばら撒かれています。




この隕石も、鉛製。カバラに書かれた創造の伝説により、神が地上の人々と、ユダヤ人のパレスチナからの離散をもたらしながら、生命を吹き込んだつぼのかけらをシンボル化したもの、とありますが、ちょっとよくわからないんです。
写真ではわからないのですが、塔のトップに、イニシャルみたいにそれぞれ二つのアルファベットのネオンが置かれています。これを、ヘブライ語の音声学の規則に従って発音すれば、Jahwehという言葉になり、ユダヤの伝統では、決して口にしてはならない語彙となると。ヤハヴェ、つまり、エホバ。
モーセの十戒で、神のことはみだりに口にしてはいけないという戒から、聖書から削除されたということなんですね。ああ、わたしって本当に無知。
この辺りまでは、キリスト教の国の人だったら、漠然とでも、当然のように知っているのかなぁ。だとしたら、西洋美術を理解するというのは、やはり大変なことですね。
わたしは常日頃、ロマネスク美術を追っているので、それでもずいぶんと聖書には接するようになったものの、ベースがないので、苦労しています。しかし、現代美術でも、宗教が絡んでくるというのは、辛いなぁ。でも、文化のベースの一つだから、仕方ないんですねぇ。

七つ目の塔は、落ちた絵画の塔Torre dei Quadri Cadentiという名前。
時として割れたガラスがはまっているだけの額縁が、複数かけられています。額縁から人々が期待されるものが、何も与えられない空虚さ、その辺りがテーマらしい。ふむ。

そして、今回は、周囲に置かれた絵画が、インパクトありましたねぇ。最も気に入ったのが、これ。




ジャイプールというインドの都市の名がつけられた巨大油絵。
下部は夜景。建築物が描かれていて、それがさかさまのピラミッド構造になっています。上は、星空。これは、絵の丈夫に、他の画布がかぶせられているのです。
星座には、Nasaの分類システムに従ったコードが振られています。ピラミッドの方と合わせて、人々が神へ近づこうとする虚しい試みのシンボルということなんですけど、キーファー、ナサが好きらしいな。そして、信心深い。のか。

このでかさだけでも、飲み込まれそう。




渇いた大地。砂漠の風景。その上にひまわりの種が巻かれているの。この黒い点々がひまわり。ひまわりに、彼は生命力を強く感じてるみたい。

お隣には、立体の秤と組み合わせた絵がありますが、ここでも秤の片方にはひまわりの種が積まれているみたいです。




渋い乾いた大地にふってくる黄金のひまわり。なんかちょっと琳派的な。




このスペースの一番奥に置かれた絵は、どれよりも大きいもので、380x1100 cm、ドイツの救済とでもいったタイトルらしい。ドイツ語分からないし。Die Deutsche Heilslinie。




画面を横切る虹の上に、書き込みがあり、カール・マルクスの思想を受けたドイツ人哲学者の名前だということ。おお、ここでもマルクスに遭遇するとは。
何だろう。全体に暗いんだけど、虹のせいのみならず、希望を期待する的な思想を感じました。キーファーはドイツ人だけど、1993年くらいから南仏暮らしらしいけどね。

そうそう、キーファーは、南仏のBarjacという町にある、かつての絹織物工場を改装した住居兼アトリエに暮らしているとか。35万平米の住居で、多くの巨大作品を要する個人的な美術館のようでもあるとか。公開しているのかどうか知りませんが、行ってみたいなぁ。

実は、同時にもうひとつ展覧会があり、それがまたぶっ飛びの面白さだったので、それで記事にしとこうと思ったのですが、キーファーにもつい入れ込んでしまいました。ということで、続きます。

それにしても、長い。ここまで読んでくださる方は多くないと思いますが、たどり着いた方には、有難うございます。疲れるよね。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2015/11/16(月) 00:48:02|
  2. アートの旅
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6

超有名蒸留所にして、このリゼルバ、とは。

グラッパ合宿、2015年秋、ピエモンテ編、その2

ランチのあと、超大手の蒸留所を訪ねました。
イタリア中のスーパーマーケットで廉価なグラッパを売っているような、大量生産のメーカーさんです。
大量生産で、きっちりと儲けを出せる分、いいものを作るための投資も出来る可能性があるので、決して見下してはいけない、という考えで、今回のグラッパ倶楽部は、そういうところも、とりあえず行ってみることとしたのです。




マッツェッティ・ダルタヴィッラ蒸留所since 1846
Mazzetti d'Altavilla - Distilleria dal 1846
Viale Unita' d'Italia 2, Altavilla Monferrato (AL)

かつて修道院だった建物を再利用しているというお話でしたが、非常に立派な門構えで、地下に販売所を有する広々とした事務所棟。お庭も広大です。
実に整然とした地下の販売所。




グラッパ以外に、お菓子や塩辛い系の瓶詰めから、バルサミコなどまで販売していました。
樽で熟成したタイプもあり、相当いいお値段がついていました。




ざっと見回ったところ、スーパーで販売しているようなものはなく、全体に、普通の蒸留所のような値付け(20ユーロ超)で、安い感はまったくなし。何か、狐につままれたような気分です。
せっかくなので、試飲をさせていただくことにしました。




ガイドをしてくださった女性は、大変感じよかったし、説明もよかったのですが、残念だったのは、試飲の量…。
上の写真の一番手前に置かれた、プラスチックの小さいカップが試飲用なんですけどね、これがそもそも、既に寂しい。
普通の蒸留所は、ちゃんとガラスの試飲用グラスを出してくれます。勿論、試飲のシステムがないよりはあった方がいいので、団体客なども対応するだろう大手では、使い捨てのプラスチック・カップも仕方ないことと納得はします。
でも、なんといっても量が…。

我々倶楽部は3名なのですが、蒸留所さんにも悪いので、遠慮して、一種類につきグラスひとつでいいです、と申し出ます。蒸留所さんによっては、遠慮することない、と3人分グラスを用意しようとしてくださるところもありますし、さらに辞退すると、せめてなみなみと注いでくれるものです。

それが、こちらでは、この、風邪薬シロップをなめるような小さなカップに、信じられないくらいぽっちりしか注いでくれなくて、なんだかみみっちい気分満載になりました。身体にはいいかもしれないけど、なんか。

それぞれ、それなりにおいしかったのですが、とにかく金額が高い。量産で儲けているなら、手をかけて作っているラインにしても、もう少し勉強できると思うのだけど、そういう文化はまったくないようです。他と値段が変わらないなら、何もここで買うことはないだろう、と思ってしまいました。ドイツから来る人たちなどは、量産ラインの存在など知らないだろうから、そういう見方はしないのでしょうけれども。

結局、わたしは、お買い得値段になっていたマロン・グラッセを購入したのみ。少なくとも買えるものがあって、よかった!
実はあまり時間がなかったのですが、ガイドさんは、熟成の部屋だけはどうしても見ていってほしい、と言うので、そこまで言われるなら、と見せていただくことにしました。




確かに印象的な、素敵なスペースでした。大小さまざまな樽が、これでもか、という圧倒的な量で、並んでいます。




でも、これだけ作ってるなら、もうちょっとお値段考えてもいいんじゃないか、とつい思ってしまいました。
素敵なスペースですが、床が興ざめ。勿論見た目を重視しているわけじゃないでしょうが、なんか熟成スペースには、こんなタイル敷きは似合わないような。というより、温度管理など考えると、石面とかの方がよさそうな気がするんですけれど、どうなんでしょうねぇ。

ちなみにこのアルタヴィッラ・ディ・モンフェッラートという村には、蒸留所が三つほどひしめいている蒸留所銀座的な村です。他二つは、以前訪ねています。

時間がなかったのは、実はこのあと、今回の目玉、と考えていた蒸留所訪問に、アポを取っていたからです。これまで二回ふられている、超有名蒸留所。




ドメニコ・シボーナ蒸留所
Antica Distilleria Domenico Sibona S.p.A.
Via Castellero 5, Piobesi d'Alba (CN)

最初に訪ねたのは日曜日だったので、クローズも納得。
二度目は確か土曜日で、人はいたのですが、門扉は固く閉ざされており、インタフォンで尋ねたところ、事前のアポでのみ見学受付、とにべもない返答だったんです。
なんてタカビなんだ!と若干憤ったのですが、でも、上記マッツェッティ同様、大手も無視してはいけない、という信念の下、今回は、同行者が事前にアポを取ってくれた次第。

ちなみに、週末は閉める蒸留所さんも多いのですが、10月以降、仕込が始まると、どうせ常に誰かがいますから、あけているところが多いのです。それなのにここは土日とも、一般の人には、完全に門扉を閉ざしています。うーん。

ともかく、今回はアポがあります。時間ぴったりに到着して、3回目にして、扉が開きました。
他にも人がいるのかと思っていたら、意外にも我々だけで、ツアー出発です。

まさに作業中の蒸留所に、お邪魔します。




ここでも、葡萄とアルコール臭が漂っています。
赤は、納品前に発酵しているけれど、白は、納品されてから発酵する必要があるということで、こちら、白の発酵中。




さすが大手、すべてが整然と清潔で、狂いのない感じ。
蒸留所内部も、整然。スペースにも余裕がある工場で、淡々と製造されている感じ。何だろう、やっぱり家内制手工業的な蒸留所とは、何か空気が違います。




で、いよいよ試飲。
意外にも、近所の酒屋さん的な、こじんまりした試飲スペースでした(ベルタ的な大規模スペースを想像していたので、え?でした)。




ガイドのお嬢さん、いろいろな説明が通り一片なんだけど、試飲については半端なく、各種満遍なく、それもたっぷりと飲ませてくれました。




ビアンコ三種。




リゼルバ三種。あ~、説明を既に忘れちゃってます。XOは、ブランデー並みに熟成させたものだけにつけられる名称とかそういうのじゃなかったかな~。手前二つは、熟成の時に、ポルト酒の樽、マデイラ酒の樽を使ったので、それぞれの香りがついているというタイプ。この、熟成に他のお酒の樽を使うって言うのは、以前にも聞いたことがありましたが、今回やけに流行っていたようです。香りが独特で、ちょっと面白いんですよ。




さらに熟成の進んだタイプ三種。真剣に注いでいますが、注ぎすぎって言うか、飲ませてくれすぎ。笑。
びっくりしたのは、リゼルバ系がいまひとつ、ぴんと来なかったこと。ビアンコはおいしいし、コスパがいいんです。意外と安い。リゼルバも、高くないんだけど、普通にバリックしたものは、固くて、リゼルバのよさがあまりないって言うか、飲んだときに期待する驚きがないって言うか、そういう感じ。

というわけで、わたしは、昨年他の蒸留所で購入して気に入ったアルネイスのビアンコと、マデイラ酒の樽で熟成させたリゼルバを購入。




そういえば、この、シボーナ独特のボトルの形状の理由を訪ねたのですが、お嬢さんはちゃんとこたえてくれなかったな。いや、どうだったかな?試飲でかなり酔っ払いになっていますので、実はこの辺りから記憶があやふや。笑。

試飲の後に、熟成室に案内してくれました。蒸留作業所や事務棟と離れた独立した倉庫があります。




かなり広いスペースに、多くの樽がびっしりで、これまたびっくりでした。生産量多いよ!だから日本にも輸出しているわけだよ!




わたしが購入したマデイラ樽とか、その他ポルト樽、スコッチ樽などがずらりと並んでいました。




でもなぁ、リゼルバがいまひとつって言うのは、寂しい驚きでした。シボーナ、3年越しで来たけど、リピートするかというと、微妙な感じです。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2015/11/14(土) 07:13:42|
  2. グラッパ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3

丘上の美しい村を眺めながら、至福のピエモンテ・ランチ(生肉)

グラッパ合宿、2015年秋、ピエモンテ編、その1

またまた寄り道となってしまいますが、秋の合宿レポート開始です。

今回も、前回同様、カステッジョという町の駐車場で、ボローニャからやってきたグラッパ倶楽部の仲間と合流。そこから、彼らの車に同乗して、ピエモンテ方面を目指します。

昨年は、荷物の入れ替えの際に、自分の車のトランクに鍵をさしたまま(わたしの車のトランクは、鍵をささないと開かないようになっています)、すっかり忘れて出発して、1時間近くも走ったところで気付いて、引き返すというハプニングがあったので、今回は、慎重に、何度も指差し確認をした上で、出発しました。

最初に目指す蒸留所は、途上でネット検索して場所を確認。検索で最初に出てきたのは、なんと瓶のフタの製造所。それは違うだろう、と改めて検索すると、一応蒸留所の情報も出てきました。
目指す住所にたどり着くも、看板も何もない地味な倉庫のような建物があるだけ。疑問に思いながら敷地内に乗り入れると、おお。




ガラス張りの建物なので、写真ではよく見えませんが、中には巨大な蒸留器械が見えるんです。
Distilleria San Tommaso S.r.l. - San Salvatore Monferrato (AL)

倉庫のような建物に入ると、事務所があり、その前はタンクがずらり。同時に、コルクやプラスチックのフタを作るラインもありました。検索で最初に出てきたフタ工場も、やっぱりここだったんです!




お忙しそうだったのに、上品な女性が対応してくれて、工場を案内してくれました。
最初に見たガラス張りの建物が、やはり蒸留所。
中に入ると、工場そのもの。




いろいろなタイプの蒸留器が並んでいて、壮観です。
工場萌えの人の気持ち、よくわかります。工業系の器械や建物って、実用第一のはずなのに、その無機質なはずの実用の単純さが美を生むんですよねぇ。

器械に見られる製造元のラベルも、レトロでオサレ~!




ミラノに工場があったんですね。多分、今はもうないんじゃないのかな。
こっちはパリの工場製。




オサレさ的には、ミラノの勝ち。

案内の女性は、オーナーさんだったことがあとでわかりましたが、「わたしはグラッパそのものについては、あまり詳しくないので」と、日本酒で言えば杜氏のおじさんが登場。

最初に蒸留したアルコール度70度くらいという原酒のようなものを、ラインから直接注いで、試飲させてくれました。こっちの反応を楽しみにしているような様子で、嬉しそうに、グラスになみなみと注いでくれちゃって。このとき、午前中11時半。そして、なんといっても原酒ですからね、がぶがぶ飲めるものでも飲むもんでもないんですけどね。




なめただけですが、でも、実際、70度もあるとは思えないさらり感でした。意外とそんなもんです。量は飲めなくても、味は。




非連続法の器械類。
製造過程のお話を聞いて、せめて単語をちゃんと覚えないと、連続法や非連続法、湯煎法など、いろいろな過程についても、ちゃんと整理しないと、と、いつも同様、反省。同じ話を、半年に少なくとも一回は聞くのに、覚えないって、どういうことでしょうねぇ。情けない我が海馬です。

一通り見せていただいた後、倉庫の方に移動します。
その裏側に、葡萄かす処理の現場がありました。




発酵した葡萄かすをジュワーッと絞ったあとの、更なるかすが、器械から吐き出されます。湯気がもうもうとして、一帯は葡萄とアルコールの香りで一杯。お酒に弱い人だと、これだけで酔っちゃうかも。

この時期に訪ねる楽しさは、現場の人には申し訳ないところもあるのですが、まさに作業中なので、こういう香りを味わえること、作業の様子を見ることが出来ること。

こちらは器械投入前のマスカット葡萄かす。




軸もなんもかも一緒くたですが、マスカットは、これで大丈夫なんだそうです。
ちなみに、マスカット(モスカート)のグラッパ、ピエモンテの特産で、特にバリックしたタイプは、万人受けする飲みやすさ、おいしさですよ。

そして、お楽しみの試飲。




実はこちらの蒸留所、ほとんどのグラッパは、液体のまま、他の業者さんに売ってしまうということで、自社で瓶詰めして販売している量は、かなり少ないとのことでした。特にベネト方面に出荷しているということなので、どっかの製造業者の名前で売られているグラッパの中身が、実はこちらのグラッパかも知れないということです。

主力ということで試飲させていただいた三種類は、マルヴァジアMalvasiaのビアンコ、ガヴィGaviのビアンコとリゼルバ。
これは発見でした。マルヴァジアもガヴィも、ワインとして好きな葡萄種ですが、これまで出会ったことがなかったのです。
というのも、この蒸留所、ピエモンテでは東の端っこ、ロンバルディアとも近い位置となり、ガヴィの町にも近いし、おそらくピエモンテでは多く作られることのないマルヴァジアが作られている地域なんだと思います。
これまでの経験から、わたしの味覚は、ワインが好みでない葡萄種の方が、グラッパとしては好き、ということが多かったのですが、マルヴァジアとガヴィに関しては、当てはまりませんでした。
「ワイン苦手グラッパ好み」の方式は、赤に限る?いや、アルネイスは白だしな。
何はともあれ、おいしいというのは嬉しい。それも、お値段、超お得。
で、今回こそ購入を控える、という目標が、一軒目にして崩れ、早くも3本お持ち帰りとなりました。つまり、試飲したものを、そのまま購入してしまいました。トホホ。

この蒸留所、かつては、コンクールで賞なども獲得しているクオリティの高いグラッパを製造しているのですが、製造に情熱を注いでいたオーナーさん、今のオーナーさんの旦那さんですが、その彼が数年前に亡くなってしまって、それでコンクール参加も、今はしていないということでした。おそらくおしどり夫婦というようなカップルだったんだと思うんですけれど、後を継いだ奥さんは、なんだか今でもちょっと辛そうな様子で旦那さんのお話をされていました。
おそらく息子さんではないか、というような方もいらっしゃったので、おそらく後継も問題ないと見受けられました。せっかくのクオリティ、是非絶やさずに、将来はまたコンクールにも参加されればいいなぁ、と思いました。だって、本当においしいんですよ。

さて、ちょっと早いけれど、ランチの時間も近いので、レストラン情報を尋ねたところ、お隣がお勧めということなので、迷いなく、直行。樹木の塀の向こうで、ほとんど地続きのようなホテル・レストランです。




Locanda dell'Arzente
Reg.Guatrasone 100 (Squarzolo), San Salvatore Monferrato (AL)
www.locanda-arzente.it




とても大きな窓が切られていて、遠くの丘に、おそらくサン・サルバトーレ・モンフェッラートの町が見張らせる、素晴らしいロケーション。実に気持ちのよいレストランです。
しばらくすると、先ほどお世話になった蒸留所の方々も、ランチに来ていました。まるで昔からの知り合いのように挨拶してくださって、こういうのって嬉しいですよね。

合宿最初のランチは、大抵充実するのですが、ここのお皿もよかったです。
前菜の盛り合わせ。




大好きな生肉!今ではピエモンテに来たときしか、いただかないです。だって、ここでいただくのが、圧倒的においしいんです。
これもおいしかったです。さっぱりしていて、それでいてお肉の生臭さをすっかりとそぎ落とす絶妙な味付けなんですよね。
右側のアイスクリームみたいなのは、ヤギ系のフレッシュチーズを数種類あわせたクリームです。ヤギのチーズは、熟成してないやつなら大好きなんで、これもおいしかった。胡桃と蜂蜜が載っています。
こういうお皿をいただくと、ピエモンテに来た~!と実感します。

前菜もうひとつ、暖かいのが来ました。




これもチーズで、とろりと溶けます。でもこういうのは重いんで、この半分を、同じお皿に盛ってくれたらよかったなという感じでした。
メインは、パスタで。




トマトソースのタヤリン。手打ちの細麺。おいちかった~!かなりのボリュームでしたが、完食。
ということは、最初は調子よく、量もしっかりいただけます。あ、だからいつも最初のご飯は充実するのかな。段々、胃腸が疲れてきて(グラッパでただれてきて?)、後半は、量がいけなくなります…。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2015/11/13(金) 07:14:16|
  2. グラッパ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

子供の旗振りにまで遭遇、中世三昧な一日

ミラノ近郊のロマネスク、もう一発行きますよ。
ここも、10年ほど前に、一度訪ねたことのある町です。
サン・サルバトーレ教会La Canonica di San Salvatore、バルツァノBarzano' (Lecco)。




夏休みに、ロンバルディア・ロマネスクの写真集をぱらぱら見ていたところ、ふと目に留まったフレスコ画がありました。教会のある町の名前には覚えがあります。
昔訪ねたときには、オープンしていなかったけれど、こんな素敵なフレスコ画があるんだ、とびっくりして、ネット検索をして、またびっくり。
なんと5月から10月の月初の日曜日に、ガイドツアーをしているということだったんです。早速ネットで予約をして、9月早々の日曜日に訪ねた次第。

前回紹介したオッジョーノもそうですが、今はネットがあるので、まめに検索しないとだめですね。せっかくこういうガイド・ツアーがあるなら、利用しない手はありません。
でも、黙っていても誰も教えてくれないので、せいぜいまめに調べないと、知りようもありません。

さて、そういうわけで、こんな場所、昔はナビもなくてよくたどり着けたものだ、と感心するような道をたどり、町に到着。教会の場所は、車が入れない道でした。それにしても、こんなに整備された場所だったかなぁ、と首をひねりました。
もしかすると、似たようなほかの教会の記憶と混ざっているかもしれないのですが、何かごたごた建物が立て込んだ場所だったような。記憶って本当にあてになりません。

外観は、かなりつまらない感じになっちゃってますが、ほんのわずか、ちょっとした装飾が残されています。




ふふ、なんだか愛らしいフィギュア。こういうの今の外観とまったくマッチしていないと思うのですが、なぜ残してくれたんでしょうね。
下の大理石版には、古そうな図像が引っかき傷みたいに残っていますね。これは、後付ではめ込んだものかもしれない。
ヘタウマを通り越して、ただの子供のいたずら書きみたいなもの。

アーキボルト根元の柱頭には、顔が並んでいます。




ちょっとモアイ風な?
特徴的な顔です。そのせいか、これは、よく記憶に残っているんです。砂岩らしいんですが、よくこんなに保存されてきたものですね。砂岩って言うと、すぐ崩れるような印象を抱きますが、実は花崗岩より、強いのかしら?

外観で、もうひとつ気になったのは、上方に開いた小さな三つの窓が、全体にアシンメトリーで変なんです。




後付の開口部でしょうから、工事とかの理由があったんでしょうけれどね、それにしても、こういうのって不安定で気持ち悪いです。

さて、見学の目的は、勿論、内部です。




びっくり。修復は激しくされているとは言え、フレスコがたくさん。
写真集で見たのは、これ。




どうやら、かなり最近、修復が終わったばかりみたいでした。だから、こういうガイド・ツアーも企画されたということらしい。
実際に見ると、それほど古いフレスコではないらしい、とわかります。わざと古びた感じの技術や表現、様式を使っているところが見られる、と、ガイドさんも言ってましたが、細かい技術はわからないけれど、12世紀後半とか13世紀とか、ぱっと見、そういう感じかなぁ。写真だと、そういうニュアンスが伝わりにくいんですよね。




この、キリストなんか、いろいろ考えて描いちゃってる感じあり。




ビザンチンのバリエーションみたいな。
彩色の色が、パステル系の淡さで、どれもすごくやさしいのが、印象的。元は、ハデハデにマットな色合いだったのかなぁ。あまりそういう感じがしないんだけども。

教会の起源は古くて、ロンゴバルド時代、8世紀半ばらしいです。地域のロンゴバルド王が、個人の礼拝堂として建てたのが最初。その建物は、今置かれている洗礼桶と、奥の上に上げられている場所の手前、要は、このキリストを囲むフレスコ画の描かれたクーポラの部分だけの大きさの、大変こじんまりした建物でした。そして、今も構造的には残っているクリプタがありました。




クリプタは今もありますが、すっかり整備されていて、倉庫とか、集会所として使われているようです。

その後、後陣が付け足され、前部も、オリジナルと同じ広さ分くらい、前の方に伸ばされる形で、広げられたもの。
その工事が、本当にとってつけたように実施されていて、跡がくっきりなのが、建築的には面白さがあり、そこもポイントかも。

この、キリストのいるクーポラ部分も、実は後付。




奥の壁との間に、しっかり境目があります。そして、下の壁には、別のフレスコ画が描かれています。この、南側壁の部分のフレスコ画は、一番古いものということでしたが、保存状態が悪く、絵はほとんどわかりません。




下の方では、かろうじて受胎告知らしい様子が、わかります。




手前側がアーチになっていますが、そこが、古い部分と、新しい部分、アーチが重なっているんです。よく見ると、こういう感じ。くっつけた場所の筋がそのまま、地面までそのまま残されていて、いかにも無理やりくっつけた構造。というか、くっついてないし。




というような話を、熱心にしてくれたガイドさん。イタリア人は薀蓄好きガイド好きなので、とっても熱心に聴いています。




時として、実物を見るより、説明に集中しちゃう人たちなんですよねぇ。意外でしょ。それが、すごくうるさくてうざったいことも多いです。すぐくだらない冗談とか言いたがるし。これは、どんぴしゃ、イタリア人イメージ通りですね。

北側壁の方には、明らかに14世紀以降のフレスコ画。苦手~!




どうやら、もっと古いフレスコ画の上に、重ねるようにして描いてしまっています。奥の方のは、もうちょっと古い時代風で、天井画も、同じ頃なのかな。わたし的には、やっぱり13世紀説が濃厚。説明では、古い部分は12世紀半ばということなんですけれども。

皆さんの質問も出尽くして、解散となりました。

その日は、町のお祭りだったということで、教会前で、旗振りに遭遇。




素敵なビロードの衣装に身を包むと、この人たち、一瞬にして中世人になっちゃうのがすごいですね。日本の場合は、すべてが変わりすぎちゃって、こうは行かないからな~。




りりしいよ、なんか。普段は、仕事の要領も悪い、ただのサッカー馬鹿だったりするかも知れないけど、そいでもってシャツにジーンズとかで過ごしてるんだろうけど、こういうカッコすると、やけに理知的に見えちゃったりするよね~。いや、本当に理知的な人かもしれないけどさ~。

子供たちの、ヘタな旗振りも、ご愛嬌でした。




というわけで、いろいろと中世を楽しむことの出来た、初秋の一日でした。

次回は、どこへ行こうか、思案中です。お楽しみに。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2015/11/12(木) 07:12:33|
  2. ロンバルディア・ロマネスク
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

レオナルドの弟子と出会ってしまった。

最近再開した、ロンバルディアのマイナー・ロマネスクめぐり、お次は、オッジョーノOggionoです。




サン・ジョバンニ・バッティスタ(洗礼者ヨハネ)洗礼堂Battistero di S.Giovanni Battista。

この町、かなり昔に一度訪ねたことがあります。ロマネスク探訪を始めたばかりの頃、ナビもないから相当苦労して訪ねて、そして、情報も集めにくいから、クローズだったらそれで終わり、という頃。
それでも、この、すっかり新しくなってしまった教会の隣で、ちんまりと中世のたたずまいを保っている洗礼堂は、とても印象的で、強く記憶に残っていました。




近所めぐり再開にあたって、今回は、各月の第一日曜には、オープンするという情報を得ておりました。先月は、お天気がいまひとつだったのであきらめて、今月はどうかなぁ、と特に予定することもなく、適当に起きたところ、何もしないのはもったいないような快晴だったので、時間的には厳しかったのですが、とるものもとりあえず、朝ご飯後、すぐ出発しました。
おりしも、紅葉が色づいた時期でもあり、紅葉狩り的ドライブを楽しむことが出来たのですが、ちょっとよそ見しすぎたかも。

というのも、ナビに従って、ついつい町に入り込んでしまったんですが、他に走っている車はいないし、旧市街に入る前に、信号が赤になっていたような…。
車を停めて、通りすがりの住人に尋ねたところ、「この一帯は、日曜日は進入禁止よ。入り口にビデオカメラがあったでしょう?罰金が来ちゃうわね、ご愁傷様…!」ということで、がっくり。
いまだ罰金は受け取っていませんが、おそらく車人生初の罰金…。
以前来た時は、教会広場まで、問題なく進入できたので、その記憶に引きずられてしまったんですね。あーあ。

まぁ13年間のっていて、これまで駐車違反もスピード違反も、奇跡的に免れてきて、人生初ですから、仕方ないでしょう。

というわけで、洗礼堂。
期待通り、扉が開いているので、飛び込みました。なんといっても、午前中のオープン時間は12時までのところ、既に11時50分でしたから(現場でもらったパンフレットには、12時半までとあるので、ネット情報が間違っていたようですが)。




その雰囲気に、まずは感動しました。
修復が相当されているとはいっても、洗礼の浴槽の雰囲気が、かなりよく残されているんです。そして、構造も。
お年を召した男性と女性が話していて、どちらかが係りの人だと思うんだけど、お二方とも挨拶以外は、小声でしゃべり続けていて、完全無視。おしゃべりしてるだけなら、外でしてくれないかなぁ、と頭の片隅で思いながら、なめるように見学しました。

ちょっと不思議な構造ですよね。




真ん中にあるのが、当然洗礼の浴槽の場所。その周りに、階段状の段差があったようなんです。本来の床面は、今、気の床になっている面から、さらに15センチくらい下がったところ。その上に、大きな円形の段差があり、その中央に全身で浸かれるタイプの浴槽が置かれていたようです。
全身で浸かるタイプということは、起源は相当古いはずで、5世紀頃のものとされています。ということは、洗礼堂そのものも、オリジナルはそのあたりのもので、全体に、今とは様子が違っていたということですね。

わたしがあまりに熱心に見ていたせいなのか、とうとう、おじいさんの方が声をかけてくれて、いろいろ説明を始めてくれました。
なぜこれほど変容してしまったかというと、20世紀前半に、修復で今の姿が取り戻されるまで、ずいぶんと長い間、お隣の教会の祭具室として使われていたそうなんです。
上の写真の奥に見える扉が、教会本堂との連絡口として、使用されていたもの。

扉は、オリジナルにもあったんだと思うんです。今新しくなってしまった教会も、下は古い教会だったはずなので。
びっくりしたのは、1932年、修復前の写真。




1731年似、祭具室に転用すべく、本来の正面扉を閉ざして、バロック様式の窓を開けてしまったようです。うひゃあ。教会とも、完全にくっつけられてしまったようですし、まったく派手な改装をするもんです。
同時に、元に戻すというのも、思い切った対応ですよね。

本来の床面は、現在の外の地面からは、相当さがっていますので、祭具室への改装時は、中央部の浴槽をつぶして、全体を平らにして、上から床で覆ってしまっていたのだと思います。つまり、外の床面と同じような高さにまで、土を盛ったりしたのでしょう。




浴槽地下には、排水設備などのための空間もあり、今はそこも掘り返されて、一部見られるようになっています。




また、本来の床面の一部も、観察できるようになっています(右側の、ガラスで覆われている床面です)。修復、がんばったよね。




修復の自慢の一つは、壁面のフレスコ画だと思うのですが、見てわかるとおり、これらは15世紀以降のもので、修復できれいな色が取り戻されたのはわかっても、わたしの興味の対象外。ただ、後陣の半円部分にわずかに残っているフレスコ画は別です。




本当にわずかしか見えなくなってしまっていますが、こちらは、色彩や絵から、ロマネスク時代のフレスコ画だとわかるんです。




こちらが、もうちょっとよい状態で残っていれば、観光資源的にも、もっと評価されているんだけど、惜しいです。実際のフレスコ画のレベルも、近くのガッリアーノなどのフレスコ画を考えると、相当よいものだったのでは、と想像できますし。

ガッリアーノといえば、立派な洗礼堂があり、構造全体の保存状態もかなりよいのですが、実はこの洗礼堂も、構造は似ています。
入ってすぐに気付いたのですが、入り口両脇に、階段があるんです。




後陣側から見ると、入り口扉脇の小さな入り口は、どちらも階段なんです。
大変残念なことに、この位置から見て、向かって左側は、覗き込んだすぐの場所で階段が終わって、構造がつぶれちゃっています。一方右側は、ずっと上まで階段は残っているの物、実は二階建ての二階部分は、もうないんです。




12世紀にあった地震で、この洗礼堂の上部内側は、ほとんど崩れ落ちちゃったそうなんですよ。だから、階段があっても、二階はないということ。
残っていたら、ガッリアーノのような構造になっていたのでしょう。これは本当に残念だな~。
ちなみに、ガッリアーノの教会と洗礼堂は、ロマネスクのおとにアップしていますので、ご興味があったら、見てみてください。

おじいさん、熱心ついでなのか、突然、「マルコ・ドッジョーノの絵を見るかい?」と、誘ってくれました。ルネサンスの絵だけど、興味があったら、ちょっと来なさい、と。
ルネサンスか~、興味ないけど、まぁ時間あるし~、でもマルコって誰だろ~と思いながらも、着いていきました。

洗礼堂をはさんで、教会の反対側にある、教会の施設らしい建物に、鍵を開けて入ります。




で、中にあったのが、レオナルドの最後の晩餐の模写でした。




マルコ・ドッジョーノMarco d'Oggionoという画家は、レオナルドの工房で、彼の片腕として働いていた人だというので、美術史などやっている人だったら、きっと知っている名前なのかもしれません。ミラノのスカラ座前の広場には、レオナルドの銅像がありますが、それを取り囲むように立つ四人の一人がマルコだということです。どひゃぁ、知らなかった。今度名前を確認してみよう。

ここにあるのは、オリジナルを撮影したもので、このおじいさん、やはり教会の人らしくて、撮影にも同行したんだそうです。だから自慢だったんだと思う。
現在はルーブルの所有で、パリ近郊のお城に保管されているそうです。Chateau Ecouenという場所だそうですよ。
この模写は、1506/1509になされ、数多くの模写の中でも最もオリジナルに忠実な絵とされているそうです。オリジナルが、1494/1498に描かれたものなので、完成直後の模写と考えると、色彩にしても、おそらくオリジナル通りなのでしょうね。




ウワ~、似てるし。オリジナルではわからなくなっている細部もくっきりですよ。模写、しとくもんですよねぇ。もしかして、オリジナルのフレスコの修復の際も、参考にされているのかもしれないですねぇ。
おじいさんが、自慢するだけのものはありました。ルネサンスなんて新しいもの、と、つい思ってしまいますが、500年昔なんですよね。それに、写真も、このオッジョーノの写真屋さんが撮影したようなのですが、全部町の自慢的な、そういうのも、いいなぁ、と思いました。自然光で、これだけの大きさのものを撮影するのが、どんなに大変だったか、撮影時の苦労なんかも語ってくれました。

月にたった一度の開放日だから、結構訪問者もいるのかと思っていたのに、もしかして、ぎりぎりの時間に到着したのが、かえって幸いだったかもしれないです。

教会の先は、登りになっていて、見晴台があるから、是非パノラマを鑑賞していきなさい、という勧めにしたがって、階段を上りました。紅葉も美しく、わくわくするような田舎道。




そして、パノラマ。レッコ湖。




素晴らしかったです。
山の名前が記されている説明版と、実際の山を見比べていて、驚いた!なんと、湖をはさんで、チヴァーテが見えるんです!




高額最大限20倍ズームで、こんな。すっごい!まさに山の中にあるのが、よくわかります。引いたらこんな様子だもん。




いやはや、ガッリアーノは思い出すわ、チヴァーテは見えるわ、なんて、ロマネスクな場所だったことでしょう。ますます、あちこち再訪したくなってしまいました。
最後に、外観をチェックして、お別れ。




外部も相当修復しているはずですが、うまいですね。違和感がない。こういう仕事、イタリアはうまいと感心します。

というわけで、罰金のことも忘れる、大満足な遠足でした。
まだまだ、本当にたくさんあります。近場だからこそ、気軽に行けるし、今はインターネットで、情報が入手しやすいので、こういう不規則なオープンにも駆けつけることが出来ますね。
今後もお楽しみに。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2015/11/10(火) 07:16:06|
  2. ロンバルディア・ロマネスク
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
次のページ