サルデーニャ、ミニミニ修行旅、その3
早朝のオルビアから向かったのは、オスキリOschiriです。
いつものことではありますが、目的地を細かく調べる時間がないままに、見切りで出発している旅ですので、教会の所在地はおぼろげにしかわかっていません。この、オスキリの場合も、実はオスキリの町ではなくて、郊外にある教会が目的だったので、事前に購入した25万分の1の紙の地図でも、町とはかなり違う場所にあることがわかってはいたのですが、とりあえずは、町に向かいました。
ナビに従っていたら、なんとなく町には到着。ただ、そこからどういったらよいのかわからないままに、うろうろっとしていると、なんとなくそれらしい表示に遭遇しました。
そういえば、もうひとつ教会があった、と自分作成の虎の巻メモを確認してみると、どうやら、まさにそこ。
町外れ、丘の上にある墓地の中の教会、サン・デメトリオChiesa di San Demetorioです。探していたわけでもないのに、出会ってしまうというのは、何かしら縁があるのでしょう。とりあえず、その辺の道端に車を停めて、墓地を目指して、坂を徒歩で登って行きました。
墓地を回りこむようにして登っていく坂の右手には、サルデーニャらしい風景が広がります。
到着早々の朝、こういう、いかにもイメージしている通りのサルデーニャに出会えて、実はこれだけで、結構嬉しい気持ちになりました。
サルデーニャは、美しい海、ひいては、海の幸が一番有名なんですが、内陸の羊、羊飼い、ひいては羊肉料理も有名なんですよねぇ。
羊たちも、朝ごはんの時間。まだ寒いから、みんな寄り添っているんでしょうねぇ。牧羊犬が、まじめに仕事している感じ。なんとも美しい風景でした。
さて、目的地へ。
塀で取り囲まれた墓地ですが、規模はかなり小さく、門をくぐった途端に、小さな建物が目に入りました。ちょうど中央部分に位置する、とても小さなかわいらしい礼拝堂です。
サン・デメトリオ教会Chiesetta di San Demetrio。
小さいですが、創建は11世紀前半と相当古いもの。かつては、オスキリを見下ろす丘の上に建つ、地域の重要な聖地だったようです。墓地となったのは、それほど古くない時代以降のことと思いますが、こういう場所なので、古代からネクロポリ的な聖地だった可能性大。生活の場所から、ちょっと離れているという立地からも、そういう感じします。
このあとに訪ねることとなる、この地域では、最も重要かつ著名なカストロの教会と同時期またはちょっと前の創建となるので、同じ人々がかかわって作られた教会と考えられています。
こんな田舎の、こんな小さな礼拝堂ですし、墓地ですし、早朝から訪れる外人が、そうそういる場所でもないからでしょうか。墓地に入るなり、教会守の方が気にしてくださっていたようで(もしくは、警戒?)、写真を取りまくりながら教会に近寄るわたしに、「教会は、あいてますから、どうぞ、入ってくださいね」と、親切に声をかけてくださいました。
中は、なーんにもない、非常にシンプルなものでした。修復が相当されているようで、壁石等も洗われすぎ感が若干なかったといえば嘘になるんですが、それにしても、木製傾斜天井といい、無装飾な壁や後陣のスタイルといい、実に、往時の雰囲気をよく伝える状態だと思います。
外観もそうなのですが、一度または複数度、洗われた状態がよく残っている内壁で、特に目を引くのが、石色の多様性です。
このあたりでは、赤っぽい石が多く見られるのですが、それにしても、ピンクや茶系、緑系、灰色のバリエーション等、この石色は多様性は、とても美しくて、それだけで装飾オウケイっていう感じ。
すべて、この土地の石なんでしょうかねぇ。ここは、きちんと知りたいポイントです。
外観。
ちょうど入り口を出たところにいるのが、教会守のおじさん。
後陣。かわいらしい一後陣スタイル。無装飾ですが、石の色使いで遊んでいますよね。
南側の外壁。
ちょっとした光の加減で、同じカメラ、同じ設定でも、色は微妙に変わります。いずれにしても、違う種類の石、または同種でも色目の違う位置を、わざと積んだんだろうと思います。彫り物などの装飾には興味ないけど、石積みは興味あるって言う職人さんだったのかな。実は、カストロでも、傾向は一緒なんですよねぇ。
こういう地味な視点って、やはり現場を回らないと、なかなか目に付かない点かも知れないな~、って改めて思ったりしています。
こんな小さな礼拝堂で、特に見るものもないかと思ったのに、今となっては、行っといてよかったって思うのはそういう点。
実のところは、カストロ(次の、というより本来の目的地)に向かいながら、迷っていて、たまたま遭遇しただけの場所だったわけですけれども。
次回、そのカストロになります。
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- 2016/03/05(土) 07:14:55|
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サルデーニャ、ミニミニ修行旅、その2
オルビアOlbia、サン・シンプリーチョ教会Basilica di San Simplicio、続きです。
この教会、事前情報では7時半から開いているということだったので、それを信じて、朝ごはんの前、ほぼ起きぬけ状態で訪ねました。ホテルからは歩いて5分足らず。到着は、ちょうど8時。
ライトアップされた姿とは、また違う石のイメージ。曇り空なので、ちょっと重たいくらい感じですね。
嬉しいことに、扉が開いています。
何はともあれ入場!
さすがに暗い~!曇り空だし、12月の朝8時ですからね~。
ほぼ暗闇の中、遠くに、高い位置にある明り取りが見えます。すっごく遠い感じ。
ここまで暗いこともあまりないので、かえって往時の雰囲気が感じられて、味わい深かったです。
中央扉口からの光を求めて、中央身廊側に寄ってみると、ちょっとだけ視界がはっきりします。
ん?ほぼ無装飾って感じなのに、柱頭彫り物があるようですね。通常、フラッシュなしで撮影しますが、こうなると、無理なので、ちょっとだけフラッシュしてみました。幸い、他に誰もいませんでしたし。
羊っぽいです。
こっちは、人の顔。
暗闇だと、モチーフすらよくわからないので、記録するにはフラッシュは必要なんですが、こういう激しい光が当たると、なんだか別物になるような気がします。多分、高い場所に置かれる彫り物は、特に柱頭は、端から高い場所に置かれることが約束ですから、下から眺められることも想定して彫られていると思います。
建物全体をうっすらと明るくするための光であれば、それはまたその面白さがあると思うのですが、そのものを照射するような明かりは、想定されていないはずなので、なんかこう、違和感。ぺったりしちゃうし。
なんてことを考えながら、一人、暗闇に沈んで、朝飯前に中世を徘徊するってのは、おつな気分でした。
再び外へ。
シンプルだけど、美しいファサード。扉上のタンパン部分は、レンガがはめ込まれていますが、元は何かあったとしても、不思議ではない感じ。素朴な石積みのアーチが、うっとりするくらい好みです。
扉の真上に開けられたアーチ開口部もいいですねぇ。
アーチの上部、穴が開いていますね。ピサ地域でよく見られる教会のように、アラブ世界からもたらされた彩色陶器の水盤が、装飾としてはめ込まれていたのでしょう。
地味な石色の中で、きっとイスラム的な派手な色彩が、ポイントになっていたんでしょうねぇ。
この、小さな円柱にも、こんなものがくっついていました。
ぱっと見は無装飾なのに、隠されていますねぇ、思わぬところに。石工さんの遊び心、感じてしまいます。
両側の身廊にあたる部分、ここでは扉は開けられていませんが、アーチと付け柱装飾になっていて、そのアーチの下に、それぞれかわいらしい彫り物がはめ込まれています。左側。
狩人的なフィギュアと、動物。意味は分かってないようです。大きな手が印象的だし、かなり稚拙で、ヘタウマ系。わたしの好みとするところですねぇ。
右側は、はめ込み細工系。
こういう、石の超浅彫りの装飾は、他でも目にしました。
はめ込み細工まで行かない、ただ浅彫りで幾何学モチーフ。ピサ様式の、すっごく初歩的なというか初期的なものなのか、ただ技術の問題で、石をはめ込むまでは出来なかったのか、そういう、ちょっと半端な感じ。かわいくて好きですけれど。
後陣方向では、上部がレンガ積みになっていました。夜のライトアップでは、よくわからなかったもの。
きれいですが、レンガは修復している感じが強いです。
同じ帯状レンガが、後陣の方まで続いています。
やっぱりこの後陣、きれいですねぇ。
朝も、夜同様、周囲をぐるぐる、すっかり堪能してからホテルに戻り、いよいよ、ドライブ開始となります。
12月という完全なシーズンオフだから、ほとんど、開いていないであろう、と期待ゼロの気持ちだったのですが、幸先は大変よかったです。実際、この日は、意外にも、の連続でした。そういう日もあるですね。
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- 2016/03/03(木) 06:51:51|
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