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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

たまにははずれもあり(エル・ブルゴ・デ・オズマ)

カスティーリャ・エ・レオン、その9

夏休み第二弾が入ったりして、間が開いてしまいましたが、例によって、何事もなかったかのように、カスティーリャ・エ・レオン地域、今年の夏休み第一弾の修行旅記事、続けます。

人口5人のアンダルスの町で、ロサマリさんのお世話になった後は、暑さと空腹で倒れそうになっていたので、興味は薄かったけれども、地図で見る限りは、その近辺では最もランチにありつけそうな規模の町と考えられた、エル・ブルゴ・デ・オズマEl Burgo de Osmaへと向かいました。
ここにも、一応中世の教会があるはずだけど、事前の調査でも、おそらく、あまり好みではないだろう、ということはわかっていました。




カテドラルです。やっぱり~!
起源は12世紀とありますが、もうどっからどう見ても、その後の改築や付け足しやなんかの方が圧倒的で、こうやって見ると、ゴシック以降の壮大なカテドラル、というようにしか見えません。

ただし、さして大きくない町の中だというのに、かなりのスペースを周囲に持つたたずまいは、堂々として、気持ちの良い建物です。

長い時代にわたって、常に建築が繰り返されてきた建物の常で、全体の形など、まったく把握しかねる複雑な状況になっていて、周囲をぐるりと回るだけでも、大変なことです。

今や、そのように壮大なカテドラルですが、オリジナルの建物は、1101年に、ロマネスク様式で創建されたもの。でも、ゴシックの到来とともに、すぐゴシック様式にされたということらしいので、要はそのころ、この町はお金があったのでしょうね。その後も、新しい様式ができるたびに採用してきたところを見ると、そして、今でも、地域では規模が大きいところを見ると、どういった産業があるのかは知らないのですが、ずっとずーっと、この町はお金持ちであり続けたということなのでしょう。

全体が、新しい様式になっているものの、半円等のスタイルは保っている後陣の一つには、こんな立派な紋章がつけられていました。




15時前後、最も暑い時間だったせいもあり、あまり歩き回る気力もなくて、離れて全体を眺める、という余裕もなかったので、全体をとらえたよい写真がないのですが、後陣、こんな感じになっています。




お昼休みで、中に入ることはできなかったのですが、悔しい気持ちは、みじんもありませんでした。
実際、ランチのために来た町に過ぎないとはいえ、いつもの癖で、なにかあるかも、と、宝探し気分で、食後の腹ごなしも兼ねて、周囲を上から下まで、眺めた倒すことだけは、しました。
と、やはりかすかな名残はあるもんなんですねぇ。

側壁の、すごく上の方、日差しの強さもあって、肉眼ではほとんど細部が見えない場所に。




すべて、ロマネスクよりは後の時代っぽいテイストですが、この位置にこういう装飾彫り物を置くのは、明らかにロマネスクのスタイルです。
思わず、持参の双眼鏡で眺めると、あら、これなんかはちょいとロマネスクです。




隣には、もっと愛らしいやつらも~!




私が、ひたすら上を見上げて宝探しをしていた広場には、にぎわったカフェがありましたが、地元の人ばかりだし、たぶん、変な東洋人が何を見てるんだろう、くらいに思われたでしょう。せっかくのライオンちゃんたちも、注目されることはめったにないんだろうねぇ。




正面わきの小さな扉も、そこはかとなく、テイストだけは残っていると思いました。




いかにも牛然としたリアルな頭部が、こんな場所に置かれるのは、珍しいですね。リアルさが、やはり時代の下がっているのを感じさせます。

そんなわけで、ま、こんなもんか、と車を駐車した住宅街の路肩に戻ると、停めた先に、こんなシルエットが。




初期キリスト教的な、相当古い教会のスタイルと思い、ファサード側に回ってみたところ、すっきり超新しいものとなっていたうえに、結婚式たけなわだったので、もう極めることもなく、そそくさと失礼しました。

小休止的に立ち止まった町で、やはり予想通りに、教会は得るものがなかったのですが、修行にはこういうこともつきもの。そして、7日間の旅で、朝昼晩と、内容はともかくとしてきちんと三食いただいたのは、とうとう、この到着翌日、つまり修行初日だけとなりました。
どういうこと、って?それ以外の日は、ほとんどランチ抜き、またはディナー抜きの一日二食だったんです。だから、4キロもやせたんですね。あきれますね~。

さて、この地味な土地の後は、一気に、県を移動して、超有名重要サイトに向かいます。

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  1. 2016/08/31(水) 05:37:21|
  2. カスティーリャ・エ・レオン
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オーヴェルニュ、初上陸してきました

夏休み第二弾は、久しぶりのフランス、そして、初めてのオーヴェルニュに行ってきました。10日ほどの旅でしたが、例によっての修行状態のスケジュール、そして、世界的な異常気象の一端なのか、異常な暑さに見舞われて、最後はヘロヘロでした。




オーヴェルニュ地方は、ロマネスクを趣味としている以上、フランスの中でも、必ず行かねばならない土地です。そのため、私の中では、ブルゴーニュ地方と同程度の重要度があり、そういうレベルの観光地と勝手に思い込んでいたのですが、実は、一般的な観光地としては、売りが少ない。
基本的に、丘や山が続く土地で、その中に、小さな町村が散在しています。そして、そういった町村の多くに、ロマネスク教会があるという土地。




比較的大きな町でも、旧市街は、のんびりと歩いて回れる規模に過ぎません。想像以上の田舎でした。




そのため、7月のスペイン同様に、店が一切ないために、ランチが取れなかったり、ということが簡単に発生します。私の場合は、ランチ抜きの理由は、時間節約のケースがほとんどでしたけれど。




小さな町村の教会ばかりですから、普段は、閉まっていることも多いようなのですが、観光客が多い7月8月は、一日中オープンしている場所も多いのです。そうすると、ランチを抜くことで、二つくらい余計に訪ねることができたりするもので、もうノン・ストップにならざるを得ない、というわけです。




結果として、毎日、9時前後から19時ごろまでぶっ続けでうろうろ、というスケジュール。それが熱波の中ですから、疲れは半端なかったです。
が!
今回は、実はブログのおかげで知遇を得た、同じロマネスク病の方のお宅に、旅の最後の数日寄せていただいたので、そのシャカリキ病気旅の疲れを、癒していただく機会を得ました。

言葉の不自由な旅の後、思いっきり日本語で話せる喜び。同じ趣味(病気)を分かち合える喜び。本当に嬉しかったです。




先週金曜日の夜に帰宅し、やっと写真だけは、きちんとフォルダに収めましたので、いくつか、アップしています。改めて、実に多彩なディテールに会ったものだ、と感心しています。さて、これらの写真を見て、どこだかわかりますか。わかったらすごいです!おそらく私以上の病気です!




ちなみに、ざっと整理しただけですが、回った町村が78、町によって複数の目的地があるケースを考えると、教会の数としては、80を超えていることになります。正味9日間という感じなので、毎日9か所ほど回っていたということになりますね。
リストアップした全部を回ることは絶対に無理、と旅の当初は思っていたのですが、結果的には、ほとんど回ることとなりました。疲れるわけですね。




とりあえず、おそらく間違いなく三日坊主で終わるとは思っていますが、フランス語独習、再開の予感だけはあります。やはりあまりに言葉に不自由で、辛いし、残念なことも多かったので、せめて、スペイン語程度にはできるようになりたい、と切実に思いました。
フランスでは、相変わらず、英語の通じなさが、半端ないし。

というわけで、お休みがずいぶんと長くなってしまいましたが、これからしばらくは、長期の旅もないので、頑張ってアップしていきたいと思います。なんせ、たった今終わったばかりの旅でも、これだけの数回ると、にわかに思い出せなかったりもしますので、写真を見ることで、記憶を改めていかないと。

7月のスペインも、去年のスペインも、またサルデーニャやモンテピサーノなど、アップしたい写真がたまっていますので、いつ、これらがアップできるのかわかりませんが、長い目で、お楽しみにしてくださるよう、お願いします。

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  1. 2016/08/30(火) 06:23:16|
  2. フランス・ロマネスク
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お盆でも活気のある町(リヴォルタ・ダッダ)

昨日のヴァプリオに続き、ご近所再訪シリーズで、今日は、ヴァプリオから、アッダ川を南に下った場所にあるリヴォルタ・ダッダRivolta d'Addaです。

ヴァプリオは6年ぶりの訪問でしたが、こちらは、ちょうど10年ぶりになるようです。10年前というのは、まだロマネスク探訪を初めて間もないころで、どこに行けばいいのかもよくわからない中、手探りで教会を探しては、訪ねてみるというような状態でした。
当時はナビもなく、紙の地図と教会の名前だけが頼りだったので、迷子になることも多く、一度でたどり着けないことも多々ありました。
この、アッダ川沿いにある二つの町は、そういう中では、比較的アクセスしやすく、教会の場所もわかりやすかったのですが、だからと言ってすいすい行けたわけではなく、また、まだ数を見ていない時期であったこともあり、どちらも印象深かったのです。
なので、10年が過ぎたとは思えないほどに、記憶が鮮明(わたしにしては、ですけれど)。

町に入り、このあたりに駐車したらいいんだったな、ということまで、しっかり覚えておりました。そして、目的の教会は、町の真ん中にあることは、もちろん。




サン・シジスモンド教会Basilica di San Sigismondo。
素晴らしいたたずまいです。こういう、町の中心広場に、生活建物に取り囲まれた形で建つ教会というのは、昔からあった町村の姿そのまま、という感じがして、私はとても好きです。




日本でいうお盆週間で、イタリアの都市からイタリア人が最も少なくなる、そんな時期の日曜日にも関わらず、この町の活気には、びっくりしました。
教会のある広場には、カフェがいくつもあるのですが、どのカフェにも人がびっしりで、それぞれ、新聞を読んだり、仲間や家族で談笑したり、普段の週末に繰り広げられるだろう風景が、当たり前のようにありました。
こういう町村の人たちは、バカンス時期でも、特にどこに行くわけでもなく、ただ、仕事がお休み、というだけで、普通の生活をする人が多いのかもしれません。せいぜい、近所のアッダ川に泳ぎに行ったり?もしかすると、川があるから、子供や孫が遊びに来たり、ということもあるのかもしれません。決して、リゾート地ではないですけれどね。

到着したとき、ちょうどミサが始まったばかりで、中には入れなかったのですが、ちょいとのぞくと、ミサも、かなり盛況でした。




さて、この教会、ファサードの姿を見れば、明らかですが、かなりの部分、再建されているようです。ただし、再建が、いやらしくなくて、実にうまくやったな、という感じっていうか。
オリジナルもあるようなのですが、再建と混じって、うまく共存しているんです。

この、脇扉の装飾彫り物は、ほとんど再建、つまり近代の作だと思うんですが、しっくりなじんでいます。




わざとヘタウマにしたり、変に近代的だったり、そういういやらしさがないんです。
そして、細かいレンガが、実に美しい。




これは、側壁の上の方ですが、アーチ部分も含めて、異なる色合いのレンガをうまく配分して、それだけで素晴らしい装飾になっていると思います。これは、新旧、修復や再建も含めて、いろんな時代のものが混じっていると思うんです。石も、一部混じっているようです。

後陣。




美しい姿です。全体のたたずまいが、ベネチアのムラノ島の教会を髣髴とさせます。こういう凝った後陣を持ち、凝った装飾までしっかりと保たれている教会というのは、意外と少ないせいでしょうか。後陣のギャラリー構造は、いずれにしても、少ないですね。

とっても繊細な柱。小さな柱頭への彫り物は、最低限のシンプルなものですが、レンガの遊びや、重ねたアーチ、軒送りの帯浮彫など、多様な装飾があるので、それで十分ですね。




実際に円柱で支えられたアーチと、その上に置かれたブラインド・アーチ、非常に印象的です。
そして、レンガの効果が、何とも好き。
レンガ装飾は、ポンポーザや、ボローニャの教会に見られますが、ロンバルディアでも、レンガ積みは結構多いですね。そういえば、南の方では、見ないように思います。

外をしばらくうろうろしているうちに、ミサが終わったので、早速入場です。

柱頭が、かなり低い位置にあり、でかいので、迫力です。




内部の彫り物も、多く再建が混ざっていますが、やはりかわいいです。そして、ロンゴバルド系の文様が多用されていますので、そういうオリジンがあったのだろうと考えられますね。
10年前の訪問時に、サイト(ロマネスクのおと)でまとめてますが、当時は、知識も浅薄で、調べるものも限られていたので、非常に薄っぺらな内容のことしか書けてないんですよね。初期キリスト教やロンゴバルドなどの知識も、ないも同然だったし。やはり、もっとちゃんと調べてみたいと思います。いつか…。

内陣近くの壁付け柱に彫られたこの子たち。




完全にロンゴバルド・モチーフ。それにしても、これ、唐突です。石工さんの修作かしら?




神の子羊のはずが、子犬にしか見えないんですけど、いずれにしても、めっちゃかわいい!

男の子みたいな二股人魚のぷっくりさが、これまた異常にかわいい。




二股の下に、蛇が向かい合っているのも、独創的~!全部まとめて誘惑かね。

どこをとっても、背景に、くっきりと壁フレスコ画写ってしまいます。どれも、近代に描かれたもので、こういうのって、ちょっと苦手だったりするんですが、この教会、町の雰囲気とか、人々に大切にされている空気とかと相まって、このキラキラの壁画すら、愛らしく感じられるんだから、不思議なものです。

いいなぁ、とため息をつきながら柱頭を眺めていたら、もう閉めるから、と追い出されてしまいました。12時。まさかミサの後、そんなにすぐ閉めるものとは思わず、あまり撮影していませんでした~!14時から、また開けるから、と言われても、もちろん、そんなにここにとどまるつもりもなく…。

まぁ、ミラノからは40分程度の場所なので、またいつでも戻ってくればいいんですけどね。

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  1. 2016/08/16(火) 00:37:08|
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10年ぶりに再会の、角っこの子(ヴァプリオ・ダッダ)

本格的な、夏休み修行を前にして、ミラノでだらだらとテレビオリンピック観戦の日々。これじゃいかん、っていうか、実はこのところ、ほとんど自分の車に乗っていないことが気になっていて、このままでは、バッテリーやばいんじゃないか、と、車を走らせるためだけに、ちょいと出かけてきました。

というわけで、お得意の寄り道記事となります。




訪ねたのは、おひざ元ロンバルディアのロマネスク、二つ。最初は、ヴァプリオ・ダッダVaprio d'Addaのサン・コロンバーノ教会Basilica di San Colombanoです。

ミラノから2、30キロで、暇な半日に、ちょっと訪ねるに最適な教会なので、今回、三回目。ここは、自分の記録としても、土地の記憶としても、重ねて訪ねたことが、結果として、ちょっと面白いものになったと思います。
一番最初に訪ねたのは、ちょうど10年前らしいんです(この辺は、自分でもちゃんと覚えてなかったりするので、ブログの記録が、役立っています)。つまり、2006年。

当時は、ブログはやってなかったのですが、その代わり、かなりマメに、同時的にサイトにアップしていましたので、下のリンクから、「ロマネスクのおと」に行っていただくと、つたないページにアクセスできると思います。
その次に訪ねたのが、その四年後。それについては、ブログ記事があります。


二度目の訪問の際、周囲の変貌ぶりに、すでに目を見張ったのが、上の記事でわかるのですが、今回さらに目を見張りました!
最初の訪問で、草ぼうぼうの野原だった場所が、2010年、ブログで記事にしているときには、立派に整地されて、駐車場と新しいアパートになっていました。
今回、さらに、その駐車場が有料化して、さらに、教会の裏手(当時、どうなっていたかは記憶なし)に、新しく無料駐車場ができているとともに、教会周囲の草ぼうぼうが一切なくなって、すべて整地されていました!




幹線から、ちょっと入ったところにあるのですが、以前は簡単にアクセスできたところが、ちょっと戸惑いました。そのあたりからも、きっと変わってしまったんだと思います。
この教会前の風景も、かなり違う。でも、帰宅して、以前の写真を確認するまで、どう変わったのか、正確にはわかりませんでした。
2010年には、教会前に木があったりして、自然の草ぼうぼうだったんですよね。
整備された、と言えば、その通りだし、アクセスしやすいのも確かですが、正直、一抹の寂しさはありました。整備されすぎ、というような。

とは言いながら、この教会は、いつ行っても、必ず開いていて、素敵なものを見せてくれますから、もうそれだけは本当に満足度の高い教会です。




全体は、かなり修復されちゃってますけれど、ポイントはしっかりと残されています。




ダニエルさんに、あまり興味なさげなライオンのスタイルが、なかなかに興味深い柱頭。

あ、ここで、初めてビスケット文様って言葉を使ったかも、と思った、後陣に開けられた不思議な窓。




今回初めて気づいたと思うんですが、柱頭、一部、色彩が残っているみたい。




光の関係か、ありえないと思っていたせいか、今まで、まったく気づいてなかったですけれど、確かに、緑や赤のかすかな色がありますね?
細部が、以前以上に、気になりました。本当に面白いし、よく残っています。

さて、この教会、実は後陣側に出ないといけません。ファサード側は、扉口から本堂に入る以外、脇は、鉄柵となっていて、直接アクセスできないので、本堂内部の扉から、後陣に、アクセスする必要があります。

本堂にある扉は、南と北に一つずつ。北側は、どうしても飽きませんので、南側、何度もトライしました。




外から開かないことはあっても、中から開かないはずはない!と強く思わないと、ちょっと開けにくい扉です。気持ちの片隅で、アラームとかしかけられてないよね?という恐れもわずかにあり、ためらいながら、昔のカギ外しにトライ。

上から。一個目。




丸いところを下に引っ張り、上部の引っ掛かりを除きます。
二つ目。




上のは、左にずらせばいいだけだし、下のは、最後に引っ張るもの。

三つ目。




これも、左にずらして。
四つ目。




地面に刺さっている某を上に抜いて、それでも動かないのを、力任せに引っ張ったところ、無事、開門~!
嬉しかった!
でも、過去に来ていて、ここは開けられるはず、と思ってないと、なかなかここまではできないかも!

でも、ここは、絶対に出ないと!
だって、こういうものがあります。

出たところの扉口。




ひや~、懐かしい。お目にかかるの、10年ぶり!
なんせ前回は草ぼうぼうに阻まれて、ゆっくり見てない!

そして、北側扉の上には。




ね。ね。多少扉おかしくしても、出てくるべきって、そういうものがありますでしょ。

それにしても、かつて、草ぼうぼうだった場所が、これこの通り。
10年の時間は、やはりバカにならない。




後陣も、虫に悩まされることなく、じっくりゆっくり、眺めることができます。
だってね、こんなん。
中からは、ちょっとかわいいビスケット文様だけど、外には、人の顔が中心にあったりして、ちょいと不気味なものとなってたり。




上部のアーチの間に、変なフィギュアがいたり。




アーチの下に、こんな小さいスペースに、普通、やらんよね?というようなフィギュアがあったり。




この教会、本当に好きだなぁ。

いったん本堂に戻ってから、あれ?なんか忘れたよね?なんだったっけ?と、再び、かつての草ぼうぼうに戻り、再発見。




そうそう、この子に挨拶してなかったんだよぉ、10年ぶりなのに!
え?どの子って?
角っこのこの子。




なんかいいよ~、この教会、本当に。
あんまり印象的だったから、10年たっても、ちゃんと覚えてた~!

ファサードは、一部、きれいになっていたような気もしますが、前回訪問時と大きな変化はないので、そちらで、確認くださいね。

おそらく、かつてよりは資料も見つけやすそうだし、もっとちゃんと情報詰め込んで、サイトを作り直したいと思います。

それにしても、この周囲の変わりようはすごい、と思い、今回は周囲の写真もしっかりと撮影してきました。マメに行こうと思っても、結局数年単位になっちゃうから、また、次回、とんでもない変化がないとは言えないし、怖いような、楽しみなような。

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  1. 2016/08/15(月) 07:07:25|
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なんと、人口5人の村だった(アンダルス2)

カスティーリャ・エ・レオン、その8

アンダルスAndaluzのサン・ミゲル・アルカンヘル教会Iglesia de San Miguel Arcangel、続きです。教会扉口の指示に従い、カギを求めて躊躇なく電話したところ、本当にあっという間に、ロサマリさんが、やってきました。




これは、教会本堂の方の扉を開けているロサマリさん。
カンカン照りなのに傘を持っていますが、これは杖替わりのようでした。来てくださったお礼を言うと、「この教会については、説明もしたいし、中を見てもらいたいから、嬉しいのよ。でも、ちょっと前に手術をして、ほら、この傷ね、歩くのもつらくてね…。」と、いきなり友達状態です。説明したい、なんて言われちゃうと嬉しいです。

最初に向かったのは、この本堂の扉の左側にある小さな扉です。
扉を開けようとして、相当手こずりました。鍵の調子が良くないとかなんとか。でも、鍵の滑りが悪いということは、きっと、毎日見学者が来るわけでもないのだろうし、張り紙までするということは、やはり説明するのも楽しみなのかなと思いました。

それにしても、このまま鍵が回らなかったら…、と心配になるほどの苦戦でした。




まず、上の図を見てもらうといいと思うのですが、この教会、本来は、本堂を取り巻くように、回廊があったようです。
今は、南側の扉口前だけに、ポルティカーダとして一部が残っているわけですが。もともとは、本堂全体を取り囲むような形、L字プラスアルファ的に、回廊みたいになっていたようなんです。珍しいスタイルだと思います。

で、苦戦の挙句入場した、その扉の中に、往時の雰囲気を残すような展示があったのです。




これは、サプライズでした。そんなことは知らずに行っているし、扉の中は本堂だとばかり思っていましたから。
回廊の件は、中に入ってから、ロサマリさんが説明してくれました。




今残っている柱頭同様に、大きくて立派な柱頭がずらり。壊れてしまったのを拾い集めて再建したということでしょうし、当然のことながら、傷みは激しいのですが、部分的には彫り物も、かなり美しく残っています。




わざわざ、こういう形に再建したのが、素晴らしいと思いました。




ケンタウロスのモチーフは、今回あちこちの柱頭や軒持ち送り、ずいぶんたくさん目にしました。この地域では、人気のモチーフだったんでしょうね。

わかりやすい建築過程。
一番最初の教会は、12世紀初頭に建てられた、一身廊のとてもシンプルなスタイルだったようです。




その後、13世紀にかけて、まず、いま残っているのとは反対側に、ポルティカーダができたようです。そちら側に扉があったのですね。




それが、ずいぶんと後の時代になって、反対側に移築されたようです。




町のあり方にもよるのでしょうか。今の様子だと、今ある姿が自然なんですが、昔は、北側に扉がある必然があったということなんでしょう。

ちなみに、ポルティカーダ構造となっていた位置は、壁になってしまっています。




しっかりと見学した後、今度は本堂を開けてくださいました。ここまでで、結構お話ししたので、私がロマネスクのために訪れていることも理解してくださり、本堂は、残念ながら、ほとんど残ってないので、がっかりしないでね、と念押ししてくださいました。
この方、本当によくわかっていて、いろいろ説明してくださったので、言葉が不自由なことが辛かったです。

というわけで、こういう内装にも、驚いたりがっかりする必要もありませんでした。




ロサマリさんは、あれやこれや、かすかなロマネスクの名残を、しっかりと指さし指示してくださいました。




立派な洗礼盤。シンプルですが、いかにも、のブツです。これだけ内装をキラキラにしても、ちゃんと残してくれて、ありがたい気持ちになります。

そして、新しく開けられた窓のお隣に残された、古い窓。




新しい窓も、飾りがかわいいけれど、そして、この窓のおかげで自然光が入り込むけれど、やはり古い窓の周囲に漂う暗闇や、そこから差し込む、わずかな光に、いかにもロマネスクの空気を感じますね。

そして、鐘楼へ続く、小さな扉。




今ある鐘楼は、ルネサンス期以降、14/15世紀のもののようですが、ここに扉があるということは、ロマネスク時代にも、同じ場所に鐘楼があったのか、または祭具室などがあったということでしょうねぇ。




往時の扉は、サイズが小さいことが多くて、その愛らしさが好き。

スペイン続きというだけで思いつきましたが、ダリの小さいもの好き、もしかして、何か影響受けたことあるのかしら。ポール・リガや、ポブレット(だったか?)のお城に行くと、小さいもの好きが、際立ってますよね。

ロサマリさん。ご自身の病気話も多かったですが、歴史蘊蓄とか(アンダルスという村名の由来は、誰でも想像すると思うのですが、アンダルシア地方。レコンキスタのころ、アンダルシアから兵隊が来て、定住したとかなんとか)、村の現状とか(現住者は彼女と40過ぎの同居息子を含めて5人しかいないが、夏は、マドリッドなどから人が来て、数十名になる。気候が朝晩涼しくてしのぎやすいため、とか。自分も70を超えて、今後どうなるのかしらねぇ、云々)、本当に面白かった。全部はとても理解できなかったし、残念なのは、気の利いたことが言えないということでした。
それにしても、5人とは、驚きました。数十名いる時期だからこそ、若干の活気があるということだったのでしょうが。

というわけなので、ロサマリさんが、傘の杖程度で歩けるうちに、ぜひ皆さん、訪ねてみてください。

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  1. 2016/08/14(日) 00:47:54|
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待ってました!ロサマリおばさん(アンダルス)

カスティーリャ・エ・レオン、その7

このあたり一帯、驚くほどにロマネスク教会が集中していますので、行き先を選ぶのに困惑するほどですが、初めて訪れる場所での鉄則は、有名著名な場所を優先する、ということ。
走りながら、ここにもあったようなぁ、と思いながらも、断腸の思いで、先に進むということが、数多くありました。時間には限りがありますし、特にこの日は、結構距離を進まないといけないこと、その先に、見たいものが複数あったことから、初日にも関わらず、相当端折らざるを得ませんでした。

そういう状態で、次にどうしても行きたかったのが、ここです。




アンダルスAndaluzのサン・ミゲル・アルカンヘル教会Iglesia de San Miguel Arcangel。

小さな村の、ちょっとした高台にあり、駐車場所に一瞬迷いましたが、低地にある農道の端っこに止めて、100メートルほど歩いてアクセスしました。歩いてアクセスする良さは、こういうアプローチの美しさを堪能できるところですね。

ここも、ポルティカーダが有名な教会です。

実に美しいたたずまいです。




ちょっとずんぐりと背の低い円柱、その上に、その円柱とプロポーションのとれた、かなりでかい柱頭がどっかりと載っています。




これは、かなりの迫力です。
扉口のある東側、正面になりますが、ずらりと並んだ植物モチーフ大迫力。残念ながら、傷みは結構激しいのですが、それでも、風雨にさらされていたことを思えば、ずいぶんとよく残っているとも言えましょう。




植物モチーフ、単純だけど、どれも異なり、どれもオリジナリティあふれるデザインです。




脇の方に、私好みのフィギュア系もありましたよ。




デザイン性の高い植物モチーフに比べると、子供のお絵かき状態のフィギュア。




手が違うのか、または植物系は得意だけど、フィギュア系は…、という石工さんだったのかな。いずれにしても、こういうのは、大好物。ウキウキします。

扉口にも、愛らしい彫り物がありますよ。




何重にもなったアーキボルト。それでいて、装飾はシンプルなので、しつこさのない美しさですね。ここも、若干背が低いです。教会が小さいわけではないので、ちょっと不思議なプロポーションだな~。
側柱の柱頭と、扉口の上部に、私の好物がおります。

上部左側に、マルコらしいライオンと、その下に碑文。




そして、右の方は、ルカでしょうか。




この、アーキボルトを装飾するチェッカー市松模様が、私の好物の一つであること、もうご存知の方も多いですよね。

側柱柱頭は、ロマネスクらしいデザインフィギュアもの。




こちらは、それなりにフィギュア彫技術を持った石工さんですね。足も、それなりにカベスタニー的に、凝ったスタイルになっていたように思われます。




ただ、残念ながら、傷みがかなり激しいです。

さて、建物には、もう一つ小さな扉がありまして、そこに、堂々と張り紙がありました。




教会を訪ねたい方は、ロサマリに電話して、聞いてみて、とあります。ここまで堂々と掲げられていると、電話しないわけにはいかない。
ためらうことなく、電話しました。
なんと、待ってました、というようなタイミングで対応があり、「今どこ?教会にいるの?ちょっと待っててよ」。びっくりでした。
そして、本当に5分もしないうちに、当のロサマリさん、登場したんです!

続きます。

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  1. 2016/08/11(木) 04:32:57|
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感動に目がくらむ体験(サン・バウデリオ)

カスティーリャ・エ・レオン、その6

この日、いろんなところを、若干端折り気味にしたのは、どうしても午前中、訪ねたい場所があったからです。地味な場所は、こうやって、現実に行く日が来るまで、アウト・オブ・サイトで、知らない以上、存在しないと同然だったりするんですが、今回、いろいろと調べている中で、最も気持ちが惹かれていた場所。




カントハールからの一本道を、そのまま北西方向に進むと、左に分け入る道があります。とにかく何もない荒涼とした土地を、進むこと5分。やはり何もない場所に、ポツン、と地味な建物があります。




サン・バウデリオ礼拝所Ermita de San Baudelio。
11世紀に建てられた、モサラベ様式の、小さな礼拝堂です。

オープンしている時間に行っているものの、こんな荒涼とした場所で、本当にちゃんと開いているのか、やはり不安になりますので、他の車があったことで、ほっとしました。

馬蹄形の扉口が、しっかり開いているのがわかり、全身ドキドキしながら、近づきました。




そして、一歩建物に入ったら、息が止まるような、そういう状態になってしまって、夢遊病者状態っていうんですかね。何か、導かれるように、後陣部分に向かってふらふらと…。
そこで、係員の方が、そっと寄ってきて、フレスコ画の説明を始めた時に、ふと気づいて、最初の撮影が、これです。




身も心も、完全に上ずっていました。そして、びっくりすることに、涙があふれてきたんです。
係員の方は、あの精霊が云々、と説明を続けられていたのですが、いきなり感極まっている私を見て、一瞬沈黙。自分自身でも戸惑って、あ、なんか、なんだろう?とアワアワしてしまいました。心底驚きました。ここ、絶対何かいます。
係員の方も、「そういう感じ、あなただけじゃないのよ。何か、空気があるんだろうね。」みたいなことをおっしゃっていました。

気を取り直して。




と言っても、そういう状態でしたので、実は、あまり良い写真、撮れていませんでした。
この、小さな礼拝堂、内部の壁すべてが、当時のフレスコ画で覆われているんです。




そして、乾いている土地だけに、保存状態も良好。




なのに、大変残念なことに、下の方の一部は、はがされて、マドリッドのプラド美術館で展示されています。プラド、過去に何回か行っていますが、ロマネスクを始めてからは行ってないので、残念ながら、気付いたことはありませんでした。ボイ谷の一連のフレスコ画と同様、文化財保護の名目で、ひたすらはがしまくっていた、おそらく同じような時期の話ではないかと思われます。
美術館入りにする気持ちもわかるし、放置されていたらどうなっていたかは、もちろんわからないのですが、はがすことのできなかった部分の保存状態を考えると、ここに置いておいたからといって、劣化することはなかったのだと思います。
もちろん、劣化よりなにより、バンダリズムなどで、永遠に失われてしまうリスクを優先したのでしょうけれど、しかし、そのままの状態で残されていたら、どれだけ美しい姿だったろう、と思わずにはいられません。

ボイ谷のケースと違い、ここでは、はがした後の、壁にしみ込んだ部分をそのまま残してありますので、もちろんオリジナルではあるのですが。

フレスコ画とともに、この礼拝堂は、その建築スタイルもとても面白いものです。小さな建物の中央部に、ヤシの木のようになっている柱が屹立しています。




これが、構造上、天井を支えるものとなっているのか、または装飾的なものなのかは、不明。現地で詳細な本を購入したので、今後、じっくりと読んでみたいと思っています。
この、ヤシの木状の部分のフレスコ画も、とても素敵。




構造上形態上、これははがせなかったんでしょうねぇ。幸いです。




そして、柱を中心にした反対側は、クリプタの、円柱の林のようになっています。これはメスキータ状、というべきなのかな。




このメスキータの上は、二階構造となり、壁にへばりつくようにして作られた、幅の狭い階段で、アクセスすることができます。




と言っても、通常は、アクセス禁止。でも、実は、ちょっとだけ、登らせていただきました。上部は、普通の教会でいう合唱席みたいな構造になっています。ヤシの木状の柱の上部がくりぬかれて、そこがまた、内陣的な、礼拝堂の中の礼拝堂とでもいったような構造になっていて、その小さな部分のフレスコ画も、しっかりと残されていました。

階段を登るのも秘密だったので、撮影は勘弁してね、ということで、自粛。
下からは、この構造の陰になってしまって見えない部分も、びっしりとフレスコ画だったので、普通に見られないのは残念なことです。

最初にアクセスした、内陣部分は、モサラベ風の扉口で、礼拝堂のメイン・スペースとはしっかりと区切られています。




この扉口から、メスキータの方を見ると、その左奥に、穴が開いていて、その先は洞窟になっています。




建物から洞窟、というのも不思議なんですが、トップの写真で立地を見ていただくと、理解できるかな。建物が、丘の斜面に建っているのですね。洞窟は、この丘の地価ということになるようです。

入りたい人は、懐中電灯を借りて、中に入ることができますが、何もありません。




結構奥深く、三つくらいのスペースになっていたと思います。説明は、あまりよくわからなかったのですが、ガイド本をざっと見ると、もともとこの洞窟が隠遁所みたいな感じで使われていて、後から礼拝所ができたような、そういう感じみたいです。確かに、Ermitaって隠遁所というような意味だと思うので、そういう求道者がいた土地なのだと思います。
建物のわきには、ネクロポリの跡が発見されているので、おそらくちゃんと宗教施設ができるずっと前から、神聖な場所だったと想像されます。周囲を歩いてみたところ、湧き水の流れもありましたので、修道院ができても不思議じゃないような、たぶん、そういう土地なんです。




こんな小さな建物の見学に、半時間以上、費やしたと思います。それでも去りがたく、炎天下の中、湧き水まで発見してしまったというわけです。
係員の女性も、びっくりするくらい熱心で、訪問者一人ずつに、きちんと説明をしていらっしゃって、それもまた好感度高い施設です。
多くの訪問者が訪れて、いつまでもこの美しい姿を保ってほしいものだと思う半面、自分が訪ねる時には、静謐の中で見学したいなぁ、などと、不遜なことも考えてしまう私でした。

この日は、午後に、やはり長年のあこがれの場所を訪ねたのですが、ここでのインパクトがすごすぎて、感動を使い果たしちゃったような、脱力感がありました。それは、また先の記事で。

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石工さんの技術力のありやなしや(カルトハール2)

カスティーリャ・エ・レオン、その5

カルトハールCaltojal、サン・ミゲル・アルカンヘル教会Iglesia de San Miguel Arcangel、続きです。
教会のカギを求めて、教会の扉からすぐのところにあるバールをのぞいてみました。おやじ二人ばかりが、バールの人と談笑しておりました。ランチ前のひと時、きっといつもの習慣なんでしょうね。




鍵のありかを訪ねると、バールのおやじは、にっこりして、カウンターから出てきたので、てっきり彼が管理していると思いました。しかし、お客さんに何か言うと、バールを出ていきます。
わざわざ、開けに行ってくれるんだな、悪いな、と慌てて追いかけると、教会の前の階段下で立ち止まり、「あそこの家が、カギを持っているから、訪ねなさい」と、教会に向かって左側の家を指示したんです。
びっくりの親切さです。

今後行かれる方の情報として、きちんと記しますと、上の写真の場所から、左方面へ。




突き当りにあるこげ茶色の扉の家です。扉と、教会ファサードが、ちょうど向かい合っている位置関係となります。

扉、と言っても、すだれが下がっているだけだったので、声をかけると、すぐおばあさんが出てきました。鍵をお願いすると、見学は、一人1ユーロだと言います。何人か尋ねられたので、一人なんだけど、と遠慮がちに答えると、彼女は、さらに遠慮がちに、じゃぁ1ユーロいいかしら、と言うのです。
時として、たった一人じゃ開けられない、ということもあるため、もしかしてそういうことかしら、と勘繰って、つたない言葉で、もし一人じゃダメだったら、最低限の人数分払うというようなことを言ったつもりでしたが、彼女の遠慮深さは、1ユーロ求めることに対して、悪いわね、というような気持だったようでした。

1ユーロ払うと、チケットの半券をくれました。
そういえば、今回ほかの場所でも、有料無料はいろいろですが、チケットで管理している場所がいくつかありました。訪問者の把握をするには、よいシステムですね。でも、それを、扉などに書いといてほしいですよねぇ。

すぐ行くから、先に行ってて、ということで、扉口で待っていると、鍵を持ってきてくださいました。




ワクワクする瞬間です。
それにしても、立派な扉です。

内部は、かなり美しく修復されております。祭壇は、スペインお得意の、黄金に輝くレタブロ。




ほとんどの教会がこれで、がっくりしちゃいますね。近世になって、中世の姿を取り戻すため、内陣のレタブロを別に移すなどした教会もありますが、ほとんどは、そのままなので、せっかくの窓装飾など、見ることができないのは、大変残念です。しかし、多くの町村では、このレタブロこそが、自慢の品、とされることも多いので、これまた辛かったりします。

全体の雰囲気は、ちょっとフランス風というか、修復やりすぎちゃったんじゃない、という感じも無きにしも非ずではあるのですが、柱頭はしっかりと残されているし、なかなかよかったです。




しかし、困惑したことが一つ。入ってすぐに、撮影禁止の張り紙に気付いちゃったんですよね。でも、気付かぬふりをして、撮影をしても、カギのおばあさんは気にする風もなし。とはいっても、そういう状況で、人として、どうもバチバチ撮影する気にはなれず、かなり遠慮がちになってしまいました。だから、あまりいい写真は撮れてません。

まずはこれを見なさい、とおばあさんが示してくれた洗礼盤。




ブレブレです。笑。

そして、柱頭は、幾何学的、デザイン的。




これは興味深かったです。




フィギュアがうまくデザイン的にまとめられているっていう感じ。




単純に、ここを担当した石工さんが、人物像などを彫る技術がなかったためかもしれないんですが、でも、今の目で見ると、これはこれでとても面白いし、珍しいようにも感じられてしまいます。

そして、気になっていた説教壇。




おばあさんとお話しながら、遠慮しつつ撮影しているので、どうも、わかりにくい絵になってしまいましたが、面白いものでした。
柱の一つに巻き付くように作られたものですが、大きな一つの岩から彫りだされたものだというようなことを、彼女は言っておりました。
そのためか、高さは、あまりありません。




ここでも、モチーフは連続的なデザイン系。それも、彩色されていたのが明らかです。オリジナルは、プレロマネスクの教会的な派手な色だったのでしょうか。興味深いですよ。




他とのバランスを考えても、色付きだと、その装飾性は相当派手だったはず。うーん、どういう感じだったのか、想像つきにくいものです。

トータルすると、内部の見学は15分程度でした。ありがたかった。
クルマに戻りながら、改めて後陣を見上げて。




軒送りのスタイルは、ロマネスクじゃないなぁ、と思いながら、次の目的地へ出発です。もう昼も回って、じりじりと暑かったです。

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  1. 2016/08/06(土) 23:14:49|
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冬の寒さに負けた中世の扉の巻(カルトハール)

カスティーリャ・エ・レオン、その4

未舗装の道を避けたために、3倍くらいの時間、約40分ほどかけて、たどり着いたのは、カルトハールCaltojalの村。
一見普通に平地にある感じだったのですが、村に入ると、結構な小路続きの上、アップダウンが激しく、立ち往生すること数回。
風景の中に見え隠れする鐘楼を目指して、何とかたどり着きました。




サン・ミゲル・アルカンヘル教会Iglesia de San Miguel Arcangel。時代的には、ロマネスク後期の建造となる教会です。
クルマでたどり着いた後陣側が、村の広場となっています。というわけで、まずはその堂々とした大きな後陣干渉となりました。全体に、教会に向かって緩やかな坂となっていて、教会そのものは、さらに高台にあるので、大きさ以上に堂々とそびえたっている感じです。

ここにはポルティカーダはありませんが、教会のスタイルとしては、ポルティカーダのある教会同様に、南側の側壁に扉が設けられているスタイルで、本来のファサード側には、入り口がありません。




そして、一番の目的は、その扉です。これ!




アーキボルトのギザギザ装飾が、とっても好きです。
わたしは、後陣の方にあった階段を上って、回り込んでアクセスしてしまいましたが、扉へのアプローチも、なかなか素敵。




いまある塀は、後代のものだと思いますが、段差を考えると、階段は必至ですから、このアプローチ構造は、オリジナルもこうだったと思います。それにしても、ポルティカーダのケース同様、階段と扉を結ぶ線は、微妙に斜めっていますね。

扉に戻ります。

中央部に掲げられたフィギュアは、やはり、教会が捧げられている大天使ミカエルでしょうね。




とってもデザイン的で、まるで現代彫刻のようでもあります。でも、スペースにピッタリだし、やはり当時の作品なんでしょうね。こういうのを見ると、本当にびっくりします。

ギザギザを見上げます。




装飾的なリピート帯モチーフとして、最も好きなのはチェッカー市松模様なのですが、こういう大胆なギザギザは、かなり好み。ピサ様式が好きなのは、きっと、幾何学模様っていうのが好物なんですよね。

全体に地味ではありますが、とてもスタイリッシュでおしゃれな、もしかすると都会的な?そういうテイストの石工さんがかかわっていたような。




側柱の間の部分には、かなり浅い彫り物が施され、柱頭はどれも同じ植物モチーフで統一です。左右ともに。ちょっとアップにしてみます。




ファサード、上述したように、扉もないただの壁状態です。




バラ窓も、パッと見、かなり地味なんですが、実は、よく見ると、円のところにぐるりと浅浮彫が施されているんですよ。扉口は、後代の再建とかありえますけれど、このバラ窓は、それはないと思うので、当時の石工さん作のはず。
やっぱりおしゃれな石工さんだよ~。




そして、反対側の壁にも回り込んてみると、なんと、扉の跡が。




実は、後からわかるんですが、この扉、比較的最近、閉ざされたらしいんですよ。スタイル的には、こちらの扉口の方が、時代が古いように思われますが、「ここは、冬になると寒いからね」という理由で、閉ざされたという説明を受けました。うーん。




事前の情報では、内部の柱頭もいいこと、説教壇があることなど得ていましたので、ちょっと入りたいと思っていました。
教会には、何の張り紙もないけれど、すぐ近くにバールがあることに気付いていたので、ちょっと聞いてみることにしました。

びっくりするくらい、親切な村でしたよ。
続きます。

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2016年6月および7月に読んだ本、備忘録

7月に夏休み第一弾、その準備及び旅の関係で、この時期は、あまり読めませんでした~。

「なでしこ御用帖」宇江佐真理(集英社文庫)
「リアルワールド」桐野夏生(集英社文庫)
「楽園のカンヴァス」原田マハ(新潮文庫)
「極北ラプソディー」海堂尊(朝日文庫)
「九月が永遠に続けば」沼田まほかる(新潮文庫)
「村野」坂田靖子(白泉社文庫):漫画
「三月は深き紅の淵を」恩田陸(講談社文庫)
「愛しすぎた男」パトリシア・ハイスミス(扶桑社ミステリー)
「憑神」浅田次郎(新潮文庫)
「トラヴェルズ-旅、心の軌跡、上下」マイクル・クライトン(早川書房)

ちょっとミーハーに過ぎるリストになってますね。
一押しは、恩田陸。この方の本、たいてい好きですが、これは、タイトルからして、一気に世界に引き込まれる話でした。特に前半部のミステリアスぶりは、すごいです。この作家さん、たぶん、本がすごく好きなんだろうなぁ、と思います。本好きの方には、強力におすすめ。

久しぶりに読んだ坂田靖子の短編集も、何とも味わい深くて、よかった~。この人の漫画って、独特の空気感があって、好きだったことを思い出しました。絵、下手なんだけど。

パトリシア・ハイスミスも久しぶりでした。かつてはまって、イタリア語でも買ってしまったほどですが、まだ未読の本があったんです。いやらしい人物を書かせたら天下一品って感じ。今読むと、割と普通に受け止めることのできるストーカーものなんですが、まだストーカーという概念がなかった時代に書いていることを考えると、すごいと思います。

楽園のカンヴァスは、芸術家ものだし、ちょっと引かれつつも、なんかなぁっていう感じ。ルソーについては、以前読んだ評論の方が、圧倒的に面白かったから、この程度の小説では事実に勝てないっていうか。

そんなこんなで、8月も、旅の計画及び実施で忙しく、読書量は、さらに減りそうです。

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  1. 2016/08/04(木) 06:35:13|
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