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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

ビールを求めつつ、修行は続いた…(ハカ2)

2015.07.スペインの旅、アラゴン編、その17

ハカJacaのカテドラル・サン・ペドロCattedral de San Pedro、続きです。
まずは、博物館の見学を終えて、安堵。教会本体の見学にうつります。
まずは、側壁側にある扉周辺から。




木製の屋根、これは、後付けのものなんでしょうかね。それにしても、かなり古い感じがしますけれど。石に木が継がれているのって、古い教会の天井なんかではそうなわけですが、こういうのは珍しいですね。

まず目に留まるのは、博物館でお目にかかったばかりのこの柱頭。




ダビデ王と楽師たちです。博物館に置かれていると、かなり巨大感がありますが、こうして、あるべき場所に置かれていると、普通の柱頭なんですね。柱頭って、ちょっと高いだけでも、実際の大きさを把握できてないってことなんだな~。それだけ大きいから、細かい彫も可能なんですね。
それにしても、レプリカ、よくできています。人物フィギュアの部分だけなら、わたしなんてちょろいから、すぐ騙されちゃいそう。ただ、周辺のディテールが、再建なんですよね、明らかに。そうでやるなら、そういうところも手を抜かずに再現してほしいけど~。

タンパン。




なるテックス全体のみならず、扉上部も新しくなっていますので、この部分は、相当壊れていたということか、または後代に変なものが付けられちゃって、どうしようもなくなっていたのか、というところかな。
スペインお得意の軒送り彫り物がなくなってしまったのは、残念です。
タンパンの意匠も、新しそうですね。

扉周りの柱頭。




最近気づいたんですが、私、柱頭の下の部分にまで細工が施されていると、ちょっと嬉しくなったりするんです。




した部分って、縁取り的に出っ張りがあるパターンのとき、そこに足がかかって彫られていたり、モチーフとつながっていると、柱頭の部分だけが浮き上がらなくて、ますます建物と一体化している感じが、なんか好きみたいです。
そういう細かいところまできちんと彫りこむ職人さん気質が好き、みたいな。

正面扉の方にまわります。




上を見上げると、ちゃんとお得意の軒持ち送り、あります。




ぼよーんとしたお化け風と、危ない子の取り合わせ。意表を突きますねぇ。
ここにも、鉋屑がありますね。




どうやら、時代がいろいろ混じっているようです。

軒持ち送りの彫刻は、建物全体にあるのですが、かなり傷みが激しく、修復も施されていない部分がほとんどで、溶けてしまっている状態。




修復したのは、正面扉の上部だけのようです。

扉のアップ。




複数のアーチがメインの、大変シンプルな作りで、石の白さと相まって、すがすがしい感じ。これ、きっとつい最近洗ったんでしょうね。
タンパンには、ライオンが支えるクリスモン。




ライオンは、かなり写実的でデフォルメめいたものが一切ないし、前足で獲物を抱えているのもとてもトラディショナルな表現。クリスモンの中にお花が並べられているのが、かわいらしいし、ちょと珍しいように思いますが、全体には、あまり面白みのない、至極真面目なタンパンですね。

あれ?と気付かれる方がいるかも、ですが、お花のクリスモンにしても、タンパンの意匠にしても、ちょっと前に記事にしたサンタ・クルス・デ・ラ・セロスのサンタ・マリア教会と同じなんです。

お花のクリスモンは、こちらの記事に。
サンタ・クルス・デ・ラ・セロス

そして、ライオンのタンパンは、こちら。
サンタ・クルス・デ・ラ・セロス

タンパンは、私はサンタ・クルスの方が好き。ちょっと遊び心を感じます。ハカの石工さんは、まじめすぎる~!
ちょっとね、洗いすぎじゃないの、という疑惑もありますけど。

柱頭なんかも、真っ白すぎて、味がなくて~。




なんかこういう洗い立て状態の柱頭見ると、特にこういう白っぽい石だと、出来立ては、やっぱりこうだったのかと思いますけれど、こうなると、彩色してあっても不思議じゃないような気がします。彩色するために彫っているような感じがするっていうか…。いや、ここが彩色されていたという話はどこにも出てこないし、名残もないと思いますけれど、この状態見ると、ちょっと物足りないような気になりませんか。




入場しましたが、中はこんなです。




いくつか柱頭がありますけれど、全体としては面白くなくて、ちょっとがっかりしちゃうような。
なんせ、高くて暗くて、ろくに写真は撮れませんでした。たぶん、ディテールが見られたら、面白いものがあるんでしょうけれど。




博物館は、必見ではありますが、教会は、サン・ファン・ラ・ペーニャとかサンタ・クルス・デ・ラ・セロスを見た足で見ると、ちょっとな、という感じかな。

セラブロの勢いで、ハカにやってきて、ビールへの渇望を我慢して、何とか休むこともなく見学して、1時間ほどで終了。
やっとです、やっと!




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  1. 2017/02/28(火) 06:58:14|
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なぜここまで引っぺがすのか…(ハカ1)

2015.07.スペインの旅、アラゴン編、その16

多分、前の訪問からは、10年以上経つのではないかしら。前に来たときは、まだ、それほどロマネスク一辺倒じゃなかったので、この訪問は、結構楽しみにしていました。ハカJacaのカテドラル・サン・ペドロCattedral de San Pedro。




かなり疲れていたので、前回記事にした小さな教会に出会っていなければ、まずは、このカテドラルの横にあるバールに座って、ビール、と行くところですが、あのちびっこのおかげで、再びエネルギー充填!ホテルに荷物を放り込んで、すぐに出陣です。なんせスペインは、夏の日が異常に長いこともあるのか、昼休みが長い分、このカテドラルなどは、20時半まで開いているのですから、修行旅においては、ビールに酔いしれている場合ではなく、身体にムチ打って、この日のうちに見ておくべきものなのです。




工事現場の覆いにまでロマネスク。こうなると、テンション上がってきますよね。

時間が気になりますので、まずは、カテドラル内部に作られたハカ司教区博物館Museo Diocesano de Jacaの見学からです。本堂に入り、中からアクセスするようになっています。




カテドラルの姿とは裏腹に、内部はもちろん新しい内装の博物館となっています。
以前ここに来たときは、訪ねておらず、でも、まったく記憶にもなかったので、なぜだろうと思っていたら、どうやら改装で閉まっていたようです。開館は1970年と古いものの、2003年からクローズして、2010年2月に再オープンしたということ。なるほど、見逃していたわけではなかった、ということで、ちょっとほっとしました。
ほっとする、というのも変ですが、過去に見逃したと思うと、なんか悔しいんで~。




この博物館には、ハカのカテドラルの柱頭オリジナルが置かれていたり、地域の小さな教会から持ってきたフレスコ画や彫刻が飾られており、ロマネスク的には、一度は訪ねなければいけないマスト・プレース。

トップに掲げた回廊は、一時かなり荒廃してしまったのを、近年に整備したものということです。その回廊にあった柱頭のオリジナルなどが、展示されているというわけです。すでに、かなり傷んでいる柱頭も多く、痛々しいです。ただ、傷んでいるものは、現地に置いといてもいいんじゃないか、とちょっと思いましたけれど。




こちらは、側壁外側の入り口部分にある柱頭のオリジナルと思います。ダビデ王とその音楽家たち。楽器を弾いている姿が、ちょっと見、首切りに見えちゃって、幼児虐殺かと思っちゃいました、俺ときたら。笑。




外にある柱頭は、保護するのが難しいですから、こういう形で保存していくのもむべなるかな、とは思うのですが、でも、勝手な個人的思い入れでは、現場でいいんじゃないか、と思いがち。

特に、話が、内部のフレスコ画となると、絶対現場においてほしい派です、私は。
実は、ここにもこれほどたくさん、フレスコ画があるとは知らず、びっくりしたし、同時に、現場においてほしい派としては、正直がっかりしました。




サラゴサ県ルエスタRuestaにあるサン・ファン・バウティスタ教会Iglesia de San Juan Bautistaの後陣フレスコ画。
こういう、田舎の小さな教会らしい。




確かに、保護するの大変だし、ここに置いてあったら、見ることができないかもね。でも、こんな教会に、こういうフレスコ画があったら、どれだけすごいかと思ってしまいます。フレスコ画引っぺがしちゃったら、おそらく教会は放置されて、今は草に埋もれちゃっているとか、そういうことなんじゃないでしょうか。教会の建物だって貴重なのにな~。

ぎゃ~、これまた素敵なフレスコ。マットな色といい、表現法といい、かすかだけど、ベアトゥス写本髣髴です。




教会は、ウエスカ県HuescaナヴァサNavasaのラ・アスンシオン・デ・マリア教会Iglesia de la Asuncion de Maria。




こちらも、よく残っていますよね。若干、時代が下る感じがありますが。
ウエスカ県HuescaオシアOsiaにあるヌエストラ・セニョーラ・デ・ロザリオ礼拝堂Ermita de Nuestra Senora del Rosarioにあったもの。




結構修復してるんですけど。これなら、ここに置いておく選択肢はなかったのかなぁ。




で、驚いたのが、これ。




キリスト降架の図像のようなのですが、これは、ここに来る前に立ち寄ったコンシリオの教会のフレスコ画でした。確かに、その教会で出会ったおじさんに、フレスコ画のオリジナルがハカの博物館にあるよ、と言われていました。
コンシリオの教会は、早朝に、近所のおじさんが丁寧に掃除をしているような、そういう今でも生きて、大切に使われている教会です。フレスコ画がそのまま置かれても、絶対に大丈夫だし、地域の人にとっては、オリジナルがあることが、重要だと思うんですけどね~。スペインの、たぶん70年代の文化財保護政策、本当に残念。

フレスコ画引っぺがしは、しかしこれらは序の口。




総ざらえ!
サラゴサ県ZaragozaバゲスBaguesのサントス・フリアン・イ・バジリサ教区教会Iglesia Parroquial de los Santos Julian y Basilisa。
これは、古いもので、11世紀後半のフレスコのようです。ボイ谷と同じくらいの時期なのかな。




すっごいですよ、色も、表現力も。イタリアのヴァッレダオスタのノヴァレーゼのフレスコ画を、ちょっと思い出しました。あれと、同じような時代になるのかもしれません。




ウンブリアのフェレンティッロも、思い出します。
いろいろと髣髴としながら、どうしても、引っぺがされてしまったことに気持ちが向いてしまって、残念に思う気持ちを払しょくできなくて、素晴らしい芸術品に対して、薄ら寂しいような、そういう気持ちでした。
フレスコ画の博物館展示は、難しいです。この素晴らしい絵に、現地で出会えたら、ただただ興奮するはずですけれども…。

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  1. 2017/02/26(日) 03:38:41|
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もしや、ル・コルビジェのやつ…?(サン・ファン・デ・ラ・ブーサ)

2015.07.スペインの旅、アラゴン編、その15

大満足でラッレーデLarredeの見学を終え、この日の宿泊地であるハカJacaに向かいました。まだ日も高く、時間的な余裕はあったのですが、この日は本当に暑くて、早朝から動き回っていたためにもうガス欠状態。
その上、ラッレーデを出発したときに、車の温度計は、なんと40度を示していたのですよ。これでは倒れる、と思い、早いところハカに行き、まずはビールだ!という誘惑に勝てませんでした。

ところが、ハカに向かう道をのんびりとドライブしていると、右側の草原にぽつりと一人佇む建物が目に入りました。家畜小屋?それにしては立派な、と思いつつ、目の端で見つつ、後続車も対向車もいない田舎道のこと、スピードを緩めると、なんと、馬蹄形の開口部が認められたのです。




驚きつつ、路肩に急停車。
この辺りは、おそらく時間的に行けないだろうと思いつつも、一応主な教会はピックアップしてあったのですが、これはない。でもあの馬蹄形は…。
こうなったら、やはり見過ごせませんので、なるべく道にはみ出ないように駐車しなおして、草原に入り込みました。

道路と草原の間は溝になっていて、草木がうっそうとしていたので、結構回り込む必要がありましたが、無事、入り口を見つけました。
遠く、側壁にある扉の様子は、やはり教会のようです。




この辺り、相当興奮して、近づいていきました。
そして!




サン・ファン・デ・ラ・ブーサ教会Iglesia de San Juan de la Busa。

一人だったし、自覚もあまりなかったですが、絶叫的な悲鳴を上げたように思います。これは心底驚きました。すごい!今見たばかりのセラブロが、こんなところに、こんな形で一人、佇んでいるとは、だれが期待したことでしょう。




それも、このオリジナリティ!
これを見て、すぐに髣髴としたのが、ル・コルビジェのロンシャン礼拝堂です。やつ、ここに来たな、と思ってしまいました、笑。いや、ロンシャンは行ったことないんですが、写真で見るイメージが、そっくりっていうか。

道の方から見たたたずまい。




この、馬蹄形の窓のおかげです。これがなかったら、たぶん、停まらなかったと思います。

現地に置いてあった説明によれば、教会は、10世紀ごろのものですが、用途の起源、つまり修道院が関連していたとかそういう歴史的な経緯はわかっていないそうです。しかしながら、地域に点在するセラブロ様式の中では、ほぼ唯一といってよいほど、オリジナルの姿そのままで、千年からずっとここにあった模様。

ル・コルビジェが真似した(勝手に決めつけてますが)屋根のスタイルは、クーポラなしに円筒系の後陣を覆うためのスタイルらしく(この辺、あやふやなスペイン語理解なので、確信なし)、そういう様式が当時あったようです。ということは、ここだけじゃないんですね、きっと。

他の説明版には、モサラベ、と記載されていました。
この辺りは、前回の記事に書いたように、いろいろな説があるようで、決定的な説はまだないようですが、たまたま最近テレビでやっていた中世を巡る番組では、「ゴートが好んだ馬蹄形が、イスラムに伝わった、その代表が、コルドバのメスキータ」であるようなことを堂々と言っておりました。馬蹄形というのは、半円のアーチより、さらに高度な技術力がいるようなことも、語られていました。ここは、スペイン・ロマネスクには欠かせないポイントなので、ちょっと調べてみたいところです。

側壁にある扉も、馬蹄形。




アーキボルトには、あたかもイスラムの文字のような朝浮彫がありますね。これまた不思議な。木製の扉は、新しいものになっています。
この環境、このようなたたずまいの教会ですから、当然閉まっているものと思ったものの、これまでの経験から、忘れずに試してみました。

そしたら、あっさりと開いたので、またまた驚愕、雄たけびです。




すがすがしいシンプルさ。天井は新しくされていますが、石積みが当時のままと思うと、また、じわじわと興奮が沸き起こってくるような、そういう雰囲気です。
でも、建築的には相当素朴で、武骨です。




つけ柱的な柱が、天井を支えていたようです。前回のラッレーデと同様のトンネルヴォルトの天井だったと考えられますね。




こういう素朴さ、そして、大事にされているのが明らかな様子って、やられます。いつまでもいたくなるような空気が漂っているんですよね。
本当に名残惜しくて、何度も振り返りながら、帰路につきました。





セラブロ様式は、いつかまた、きちんと回りたいものです。

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  1. 2017/02/24(金) 06:30:01|
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わたしはゴート派ですが(ラッレーデ)

2015.07.スペインの旅、アラゴン編、その14

次に目指したのは、セラブロ様式と言われる建築の密集する地域。
この、セラブロというのは、実は全然未知の様式だったのですが、前夜泊まったホテルの人に教えてもらい、言葉の問題もあって詳しいことはわからなかったものの、一定の様式が見られる地域だということで、事前に、その地域の教会もいくつかピックアップしてあったことでもあり、向かったという次第。
毎度のことながら、結構きっちり計画を立てている割には、実際にはかなり行き当たりばったりです。

サンチャゴの巡礼路に沿って、一連の教会があるんですが、この地域だけに見られる建築様式があるということで、それがセラブロと呼ばれているようなんです。詳しいことはよくわからないのですが、ホテルの人の受け売りだと、モサラベの影響ではないか、という説と、ゴートの名残ではないか、という説と、起源にはいろいろな説があり、いまだに定説はない、というようなことだったと思います。




ラッレーデLarredeのサン・ペドロ教会Iglesia de San Pedro。
いかにも農道、というような道の傍らにすっくと佇んでいる素敵な教会です。
なるほど、これがセラブロってやつか、と思わず思ったのは、後塵のアーチの上部に縦に並べられた石の帯。

ずんぐりした感じなんだけど、あにはからんや、実際見ると、かなり優美なイメージなんですよ。




これ、この後陣の、立石の装飾、すごいです。これは覚えといてください。




他で見たことないよねぇ。かなり独特。石色も、ベージュで、とっても美しいです。

事前に、いろいろなサイトで、お隣の畑の人がカギを預かっている、という情報を得ておりましたので、きょろきょろしたところ、まさに、畑に農作業中の人を発見。




明らかにお仕事中なので、気が引けましたが、でも、なかなか次はないので、意を決して声をかけました。
喜んで、という様子でもなく、どっちかというと、しゃないなぁ、といういやいや感が見て取れたので、一生懸命話をして、愛想ふりまいて。
なんか、昔、よくヒッチハイクで旅していたイタリア人が、載せてもらったら、とにかく楽しいおしゃべりするのが義務だから、と言っていたのを思い出したりしましたね~。何かをしていただく以上、こちらも何かを提供しなければいけない、ギブアンドテーク。
もともとそういうキャラではないので、結構疲れるんですが、でも、向こうには見返りがあるわけでもないので、つたないスペイン語駆使して、何とか会話に持っていこうと努力はさせていただきました。

暑いよね~、いつもこんなん?あ、やっぱりいつもより暑いんだ、それじゃ野菜も大変だよね~、とかなんとか。
無理やりでも、そうやって会話をつなごうとしていると、やっぱり、「鍵!」と言って無言でいるよりは、相手も和んでくるんじゃないですかね。
じゃぁ、カギ持って行くから、扉の前で待ってろ、と、いやいや感が若干薄れました。




いよいよ入場です。




うわ~!石!この石の量感はすごい!




きれいにされていますが、おそらく地域の石だろうから、修復しても、きっと昔と同じようにできちゃうんだろうなぁ。構造も単純な一身廊トンネルヴォルトだから、シンプルだし。
内部にあった簡単なガイドでは、この教会が、一連のセラブロ様式の教会の中では最大のものであること、セラブロ教会の友の会みたいなグループの存在が記されていました。きっとそういう人たちの努力のおかげで、こうして美しい姿を保っているのでしょうし、カギもきちんと管理されているのだと思います。

単純なだけに、飽きのこない美しさっていうんでしょうか。
こういう場所に来ると、柱頭がどうのレリーフがどうの、ということはすっかり消え去って、とにかく石組みの美しさにうっとりします。




名残惜しいですが、お仕事中のおじさんを、長く引き留めておくわけにはいかないので、かなり短時間の内部滞在となりました。
お礼を言って、改めて、外観を見ることにします。




そこここのディテールに、馬蹄形が認められます。これが、モサラベなのか、ゴートなのか。個人的には後者と思っていますけれどね。ほとんど直感的な。笑。




だって、馬蹄形以外には、モサラベっぽい装飾、ないですもんね。
でも、馬蹄形だけはたっぷり。




扉はどれも。




想像以上に、よい教会でしたので、今後チャンスがあれば、この地域はじっくりと回ってみたいものです。




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  1. 2017/02/21(火) 06:57:05|
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村中ディテール装飾にこだわってる!(サンタ・クルス・デ・ラ・セロス3)

2015.07.スペインの旅、アラゴン編、その13




こんな山の中にあるサンタ・クルス・デ・ラ・セロスSanta Cruz de la Seros、続きです。

前回うっかりと間違えてしまいましたが、大きい方の教会の名前は、サンタ・マリアIglesia de Santa Mariaでした。




前回までも書いたように、構造は、大変シンプルだし、長い歴史の中でたびたび変容させられてきた結果として、ロマネスク的な面白みはほとんどないのですが、ディテールは、ちゃんと往時のものが残っていて、楽しいものになっています。なので、外観をもう少し。

軒持ち送りは、ちょっと遠いのですが、側壁、そして後陣にも、楽しいモチーフがたくさんあります。
厳選して、ずらずらと並べてみますね。

これは、彫りのある部分、とっても黒くて固そうな石です。
台の石とは材質が違うようにも見えますが、別に彫ったものをくっつけるのは、無理ですよね?




こちらは一体化していますね。それにしても、悪魔くん…、ぷぷっ。




右の人は、不思議な笛を吹いているようなんですが、足指が変なことになっています。
左は、フランスでおなじみの鉋屑っぽいモチーフですね。ここは、フランスからの巡礼路ともつながっていると思うので、フランスから伝わったと考えられますね。




これは、脇の方だったと思うのですが、赤い石が使われていて、独特です。




なんか壮観なディテールではないでしょうか。塔の窓を分ける小円柱がねじりんぼうなんて、初めて見た気がします。




小さな開口部の上に置かれたタンパン的な装飾。




かなり摩耗しちゃっているんですが、車輪のようなモチーフは、線画でびっしり飾られていたようです。お花も、もっとシャープだったはず。背景も、薄い石がきれいに並べられていたようですね。

すごくおなじみな感じのモチーフ。




鉋屑、バリエ豊富ですね。
お、モジリアニ風、発見。




なんせこんな。




あらゆる軒に貼り付けました!というところです。じっくり見たくなりますよね。
もちろん、ここは中にも入りました。入ると受付があって、人がいるのですが、入場料をとるわけではありません。見学者をカウントして、今後の運営に役立てる的なこと、スペインは結構やっていますね。




中も超すっきり。もしかしたら、後代のごたごたしたものが取り払われた結果なのかもね。石も、相当新しくなっている感じだし。

素敵な柱頭。




モチーフは不明なんですが、縁にかかった足と、もみじ饅頭のような手がすっごくかわいいです。右端の人は、裸にも見えて、非常に謎な感じ。意味わかる方、いらっしゃるでしょうか。




すっきりな中にも、装飾的なものが散見されたと記憶しておりますが、確かここ、撮影禁止だったと思うんです。受付の人は、特に注意してないし、撮影禁止と言いながら、堂々と撮影を許される場所も多いのですが、一応遠慮して、このくらいしか撮っていません(撮るなよ!ということなんですが…)。

というわけで、ディテールに注目のサンタ・マリアでした。
最後に、村を散歩したときに、お、と思ったのが、やはりディテール。




煙突ですが、なんてかわいらしい!




各家、微妙に異なる形で、装飾的。なんか細部にこだわる文化、今に生きてる感じで、楽しい発見でした。

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  1. 2017/02/19(日) 21:04:29|
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やっぱ脱帽、ゴムで苦労しているわたしとしては(サンタ・クルス・デ・ラ・セロス2)

2015.07.スペインの旅、アラゴン編、その12

例によって、どうしてもサクサク行かないので、我ながらあきれてしまいますが、サンタ・クルス・デ・ラ・セロスSanta Cruz de la Seros続きです。
この村の中世の遺構としては、前回の小さな聖堂よりも、こちらの教会が圧倒的な存在感です。




サンタ・クルス・デ・ラ・セロス教会Iglesia de Santa Cruz de la Seros。

もともとは、10世紀の終わり頃に建てられた修道院の付属教会だったものです。その修道院は、おそらく地元の名士とでも言った人なのだと思いますが、サンチョ・ガルセスと、その妻であるウラサ・フェルナンデスによるものだそうです。アラゴンでは最も古い女子修道院だったそうですが、16世紀のトレント公会議の決議により、修道院機能はハカに移され、ここには教会と鐘楼だけが残されたということです。
でも、創建者の名前がしっかりと残っていたりするところを見ると、相当由緒正しく、きちんと守られてきた教会なのだと思います。

しかし、ここから山を分け入ったところにはサン・ファン・ラ・ペーニャがあり、さして遠くない都市ハカにも修道院があったのですから、ちょっとびっくりの修道院密集地ですね。10世紀から12世紀、多くの善男善女が、修道僧になりたくて、この土地を目指したのでしょうか。

ただ、流石にそういう立地だけあって、ここの修道院の規模は、比較的小さかったものと思えます。外観ではわかりにくいですが、教会は、一身廊なんです。




だから、後陣も一つ。でも、鐘楼はやたらでかいですね。




全体には、目立つ装飾性はなく地味なんですが、それでも宗教施設密集地域ですから、地域には常に石工さんがいたことでしょうし、いくつか注目すべき装飾は施されています。




特に、正面の扉周り。




あまり、多くの石工さんを雇える予算はなかったのかも。お団子でごまかしていますが、複数のアーキボルトは、それだけで重厚な雰囲気を醸し出します。そして個人的には、このお団子、好きです。
真ん中にはお団子の代わりにお顔が置かれています。




定石でいえば、ジェズの場所ということで、ジェズなのかもしれませんが、ただのいたずらっ子にしか見えませんね。

タンパンには、二頭のライオンに支えられたクリスモンが置かれています。




クリスモンにも、タンパンの下部にも、文字がびっしりですが、残念ながら、かなり傷んでいて、まったく読めません。
ライオンは、どちらも葉をむき出しにしていて、ちょっと独特な描き方と思います。
特に左の子は、舌をだらんとして、クリスモンなめてるっていうか、犬が怖い人には、すっごく怖い図像~!





脇の側柱にある柱頭も、ライオン図像です。




やっぱり、歯むき出してる。

ちなみに、扉の左側は、こういうフィギュアものだけど、右側は、これ。




これは、壊れちゃってたのを、後付けではめ込んだものでしょうねぇ。ちょっと面白いものがあったんじゃないかと思うと、残念ですが、きれいにされているのは、嬉しい。

スペインに多い、扉上部の廂に並べられた軒持ち送り。




これはまた結構な大きさで、ちゃんと残っていて、嬉しいですね。




ふふ、例によってわけのわからないものたち。上の方に、摩滅しながらも存在感ある市松帯が、またいい感じです。




最近、消しゴムハンコに凝っていて、取りつかれたように彫っているのですけれど、しかし柔らかいゴムですら、細かい線を彫りこんだり、自分のイメージを形にするのには苦労しているのに、固い石でこの表現力。
自分と比べるのもなんですが、それも消しゴムハンコと比べるのは何ですが、しかし、実感として、石工さんの凄みを感じてしまいます。

長くなりすぎるので、思わず、こちらまで笑いが漏れてしまう子を見ながら、一旦切ります。




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ロンバルディアそのもの~!それも大好物の11世紀(サンタ・クルス・デ・ラ・セロス1)

2015.07.スペインの旅、アラゴン編、その11

次に向かったのは、というより、来た道を戻ったところにあるのが、次の目的地。サン・ファン・ラ・ペーニャへ向かうとき、一度通った村なので、迷いようがありません。




ここまでたどり着いて、この看板を見た時は、サン・ファン・ラ・ペーニャがかなり近いと小躍りしたのですが、ここからサン・ファン・ラ・ペーニャまでは、距離は8キロとはいえ、つづら折りの山道だったし、行はどこまで行けばたどり着くのかわからなかったために、ずいぶんと遠く感じたものです。
でも、同じ道を帰る時は、びっくりするくらい近いものです。もちろん、下り坂という気楽さもありますけれど。

というわけで、サンタ・クルス・デ・ラ・セロスSanta Cruz de la Serosに到着です。

ここは、村というにふさわしい規模の集落ですが、小さいのに、ロマネスク当時の教会が、二つも建っています。




サン・ファン・ラ・ペーニャの修道院が栄えているときは、おそらく寺町的な位置づけで、一般の巡礼もいたでしょうし、修道院関連の聖職者もいたでしょうし、人が通過すれば通商もあったでしょうし、宗教で栄えた土地だったのかな、と思います。
今や昔ですが、でも、美しく整備されて、今では手ごろな山間のリゾート地といった風情で、観光地として、それなりの集客ができているように見えました。




ホテルやレストランもあったようですし、こんな、いかにもお土産屋さん風の焼き物の店もありました。




修行旅では、ほとんど、一般的な観光地に行けないため、できる時にお土産はあさるようにしています。このときも、お店をのぞいて、小さくて軽くて持ち運びが容易な焼き物の小物を、お土産にいただいたはず。小物はすっごく安かったし、感じのよいお店でした。
お店の人と少しおしゃべりをしましたが、最近は不景気続きで、観光客も減って、とこぼしていました。

さて、そんなちょっとさびれた観光地の教会。まずは、ちょっとマイナーな、小さい教会から。




サン・カプラシオ教会Iglesia de San Caprario
小さいけれど、このたたずまい、とっても好きでした。周囲が、広い空き地になっているのも、とてもいい雰囲気です。
なんと言っても、この、私の大好きなつけ柱が、本当にたまりません。

この教会、20世紀になって大幅な修復を施されて、その時に、後代になされた改変がかなり戻されたり、とか、あったようなんです。後代の、というのは、内部が二身廊になっていたり、鐘楼も上に付け足しがあったらしいんですよ。
その修復で、11世紀創建当時の姿が、ほぼ取り戻されて、今では、え?ここはロンバルディア?またはカタルーニャ?みたいな、典型的な初期ロンバルディア様式の聖堂がよみがえった、ということなんです。




後代に、それだけの変容がなされた、ということは、しかし、常に現役教会として使われ続けてきたということなのでしょう。確かに村の中心で、使われやすい教会だったのだと思われます。




ファサード側。
扉が、なぜ右にずれているのかは、よくわかりませんが、修復前に、二身廊になっていたということで、それに合わせて扉が作られたのか、もしかすると、もともと二身廊で、扉もこの位置にあったんでしょうか。スペイン語なので、ちょっと読むのが大変で、わかりません!




いずれにしても、再建に近い修復がされているということなのだと思います。

後陣。




グラードの教会をふと思い出します。なんだろう、つけ柱のせいでしょうか。この、つぶれたような後陣のたたずまいと、本体とのプロポーションでしょうか。
なんにせよ、つけ柱とアーチが、ゾクゾクするほど美しくて、私好み。




彫刻も何もないけれど、本当に素敵。うっとりです。

扉は閉まっていましたが、ありがたいことに鉄柵。




それも、カメラを突っ込める幅!やさしい!
クローズでも、中が見えるようになっている配慮だけでありがたいとは思いますが、柵が金網だったりして、撮影はできないし、中もよく見えなかったりすると、実際、親切なのかどうか、わからなくなることもあります。内陣まで距離のある教会だったりすると、暗くて何も見えなかったり、かえってイライラが募ったりね。
えっと、ラツィオの北、サンテリアで、そういうのありましたね。

ここは、小さいのでそんな心配もなし。




そもそも中も無装飾で、近づいてみるべきようなものもありません。すっきりして、いい教会です。

では次回、歩いて1分とかからない、本命のサンタ・マリアに移動です。




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恐るべし目力(サン・ファン・ラ・ペーニャ3)

2015.07.スペインの旅、アラゴン編、その10

サン・ファン・ラ・ペーニャSan Juan de la Penaの修道院Monasterio、続きです。
あちこちでどひゃぁ、などと、心の叫びをあげつつ、やっとたどり着いた回廊。




しかし、すさまじい発想です。岩山が覆いかぶさって、天然の屋根になっていますが、下の方は、それでも少しは掘ったんでしょうねぇ。異常なロケーションでも、セオリーに従って、とにかくきっちりと回廊を作っているところが、なんというか、執念的な思いを感じる場所です。
それでいて、やっつけ仕事ではなく、いや、それどころか、ここの仕事のレベルはすごいんですから。




この時代、教会建築を束ねる棟梁、つまり建築家は、おそらく聖職者が兼ねていたケースが多く、同時に石工もやっていたりしたわけですが、ただ、石工さんについては、必ずしもそうではなく、純粋に職人さんだったケースもあると思うんです。




こんな、今にも岩が崩れてきそうな場所で、働くなんて、いやだった人もいたんじゃないか、とふと思ってしまいます。閉所恐怖症の気があったら、たとえ空が見えたとしても、すごくいやだと思います。
柱頭は、工房で彫って運んだでしょうが、アーチのチェッカー帯などは、現地で彫るしかないものですよね。

では、柱頭を、アップでご紹介します。




ひじょーにおっさん臭いアダムさんですね。顔は超おっさんだけど、身体は妙にぷよっとしてなまめかしい肉付き?
相方のイブさんは、角の向こう側にいて、やはりぷよぷよ。

これは受胎告知みたいです。




両者がそれぞれ、角からはみ出さんばかりのポーズをとっているのが、珍しいっていうか。ダイナミックというのか、こせこせまとまってないのが、全体に共通するかも。飛び出す絵本的な、深浮彫。

同じ柱頭を右側に回り込むと、エリザベスご訪問。




天使の翼が、もっさりと重厚で、ひどく重そうですねぇ。

ぐっすりと眠っているヨゼフに、天使がそっと手を置いて、お誕生のお告げをしています。
人間のパパ、ヨゼフ、かなりハンサムじゃないですか?
全体に表情はかなりしっかりとあらわされている感じ。




天使ったら、目が飛び出ていて、すごいですね。目力、半端ないですが、怖いです。
そのお隣にあるのは、この頭かちわりシーン。




並びから言えば、ヘロデの幼児虐殺という解釈が正しそうですが、カインとアベルのエピソードだという解釈もあるとか。確かに、頭かちわられているのは、どう見ても大人だしね、でも、いきなり旧約置くのも変ですしね。

いきなり話飛びますが、これは、水をワインに変えたという、カナの結婚の奇跡っぽいです。このエピソードがこんなにはっきりわかりやすく彫られたのって、初めて見たかも。他にあるのかな。




湖でお魚をとっているとこ。




ね、こういうの、表情がすごいです。
キリストのエルサレム入場。




ロバとキリストだけ、石色が赤い。たまたま、ここだけ赤かったのかなぁ。色付けしてる?
後ろに従う子ロバ。かわゆい。




そして最後の晩餐。




どうやら、ところどころ、赤い系の石なのですね。
それにしても、一部は破損、摩耗、摩滅しているとはいえ、残されたものは、修復の賜物もあるのでしょうが、素晴らしいです。この辺り、各地で見られる似たようなタイプの作品は、共通する表現力がありますので、カベスタニーみたいに、技術というよりも、独特の表現方法を持っている石工さんたちがいたのですね。場面やエピソードよりも、それぞれの人物が浮かび上がってくるような、そういう意志を感じる柱頭です。




見飽きることがなく、何度も行ったりきたり。また、無残にもなくなってしまった柱には、いったいどういった彫り物があったものやら、思いをはせてみたり。




実に素晴らしい場所です。やはり、昔訪ねてなくてよかった~。

去りがたいものの、いつまでもいるわけにもいきませんので、帰路に着くこととしました。私にしては珍しく、1時間以上も過ごしていたので、びっくりです。
帰りももちろんバスに乗ればいいのですが、途中、家族3人(男女と子供)で騎乗して、羊や犬などを従えて、坂道を降りてくる巡礼風の人たちに出くわして、びっくりしました。せっかく面白いシーンだったのに、私ときたら、写真を撮るのも忘れ、茫然と見送ってしまいました。
それにしても、こういう巡礼がいるんですね。他の場所で会えば、路上生活者としか思えない人たちでしたが、貝を下げていましたし、やはり巡礼なのでしょう。

やはり観光地にまでなっている著名な場所というのは、すごいものです。想像以上。

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素人でも思わず瞑想しそうになる究極の回廊!(サン・ファン・ラ・ペーニャ2)

2015.07.スペインの旅、アラゴン編、その9

サン・ファン・ラ・ペーニャSan Juan de la Penaの修道院Monasterio、続きです。




細いのぼりの車道からも、かすかに垣間見える回廊へ、いざ、というところですが、それにしても、改めて見ると、この修道院の立地、異常ですよねぇ。
写真だと、よくわからないようにも思うのですが、後ろの茶色いのは、岩山です。その下側を、一部くりぬいた感じで、無理やり修道院の建物を押し込んでいるんですよね。
なにも、ここに無理やり作らなくても、もう少し登れば、今新しい修道院の建っている平地も広がるのに、なぜ、無理やりここにしたのか。
伝説とかはあるにしても(ミラノ近郊のチヴァーテCivateなどもそうですが、権力者が狩の最中にけがをして云々、なんていうお話はつきものです)、でも、きっと確かな理由はあるはずですよね。こんな不便で、建設も大変な場所なんですから。ここに限って、水が出たとか、そういう話かしらね?

まぁそういうことは置いといて、教会を通り抜けて、回廊に出た時は、やはり、なんというか、想像以上の感慨はありました。




写真ではたくさん目にしていた風景が、そこに広がっているわけで、それも、半端なく異常な風景なわけで、ぐっとくるものがあります。




やはり最初は、覆いかぶさるような岩と、弱弱しい中世の人口建造物である回廊との対比というか、スケールに気持ちが行ってしまいます。
自然を前にしたときの、人造の建造物のあり方というのか。やはり小さいですよね。繊細だし、存在として、まったく自然に対峙できていないイメージ。
ところが、場になじんでくると、その視覚が変わってくるとでもいうのか。




卑小で弱弱しいけど、でも頑張ってるじゃん、みたいな。本当にそういう状態なので、応援したくなるっていうか。




あれ?もしかして、ここにこういう場所を作ったのって、そういうのもあるのかな。
考えちゃうよ、どうしても自分の卑小さを。
岩に押しつぶされそうな回廊を回る。ふと、目を上げると、こんな風景が広がる。




そしてまた、瞑想しながら、回廊を歩く。
いや、これは深い!




私は別に信者でもなく、現地でそれほど深く瞑想したわけでもないですが、それでも、実際に現場に身を置くってそういうことですね。考えるよ。

実際は、柱頭をいかにうまく撮れるか、なんていうことに注力して、結構煩悩の塊時間の方が長かったですけどね。
というわけで、柱頭は次回ドバっと。

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坂道にめげて、よかったこともある!(サン・ファン・ラ・ペーニャ1)

2015.07.スペインの旅、アラゴン編、その8

地味で、どちらかと言えばマイナーな場所が続きましたが、今回は、いよいよ感がある、サン・ファン・ラ・ペーニャSan Juan de la Penaの修道院Monasterioです。

ずいぶん昔に、やはりドライブ旅行をした際、近くを通ったのですが、いかにも山の中、という地図の様子を見てビビッて、訪ねるのをあきらめた経験があります。
当時は、今ほどロマネスクにはまっていませんでしたが、それでもこの辺りでは、訪ねるべき観光地的な扱いでもあったので、結構迷ったんですが、おそらく、結果的には、やめてよかったかな、と思います。あの時訪ねていたら、再訪の機会はいずれにしてもあったとしても、今回どうしても行かねばならない場所にはしていなかったと思うし、それに、当時は、本当の意味では、その価値と重要性が理解できなかったと思うのです。

このサイトに来てくださる方々には、すでに同地を訪ねている方も多いと思いますので、あまりくだくだと経路などについて記すのもどうかと思いつつ、簡単に。

幹線から山の中に入っていくと、木々の茂った山間に、唐突に表れるのですね。




ここは、もともと観光地的な場所だし、ちゃんとインターネットのサイトもあるし、事前に結構調べていったんですが、それでも、どうやって拝観するのか、具体的にはよくわからないままでした(正直、サイトはわかりにくい)。それが、くねっとしたカーブののぼり道を曲がった途端、路肩に、岩山にへばりつくようにして不思議なことになっているので、ひどくびっくりしてしまいました。
思わず、どこで駐車するの?と、坂道でもあることだし、結構アワアワして、ゆるゆる運転になったら、係員的な装束の若者が寄ってきて、駐車はずっと先にあるから、と指示してくれたので、事なきを得ました。

山道くさい場所を訪ねるには、下りの車に出会う確率が少ない朝一番、と決めています。この日はハカ泊まりだったので、翌日早朝、という可能性も検討したのですが、朝が遅い!オープンが10時なんですよ。
10時にここに来るスケジュールにすると、ここだけで午前中が終わってしまうため、却下。だからびくびくで来ていました。

でも、異様な姿を見た時点で、興奮してアドレナリン出まくったようで、後から気づいたら、相当の坂道だったのに、一気に登り切りました。対向車がなかったのも幸いでした。

目的地に到着して、びっくり。




そういえば、新しい教会が上にあり、そこでチケット購入とか何とか、サイトにありましたっけ。昔は、あの坂道の路肩に適当に駐車して、というシステムだったんでしょうけれど、今は相当システマチックになっています。
でも、駐車場は、自然の木々を境界に利用したもの。




これも、あと何年かしたら、木々がばっさりと切られて、広大な近代的駐車場に生まれ変わったりするんでしょうね。
ここから、ハイキング・コースもあるような、山岳公園になっているみたいでした。
そういえば、このあたり、奥の方にも、Botayaという中世の教会があるはず。怖くて、行こうとも思いませんでしたけど。




新しい教会の一角にあるチケット売り場でチケットを購入して、ここからマイクロバスで、先ほどの古い教会に運ばれるシステム。バスは、15分毎くらいに出ていたと思います。

到着。




バスに乗り合わせたのは、10人から15人くらいだったか?みんな一緒に入場するので、どやどやしますが、それでも、スペースに比べたら少なくて、勝手に歩いてしまえば、独り占めも可能。
例によって、興奮状態で、何をどこから見たらいいのか、と気がせくばかりです。

皆が、順路的に進む道を外れ、一人地下の方に。




説明版を片手に、一人うろうろ。え、いきなりすごいのに、なんで誰も来ないんだろう、と思いながら。
奥の方には、12世紀のフレスコ画だってあるのに。




相当痛んでいるし、13世紀に近いころかな、という印象も受けるのですが、でも、建物は全体に修復もかなりされている中、よく残ったな、というレベルではあります。




上に戻り、待望の回廊を目指します。

興奮しつつも、しかし脇にあるものには、どうしても目が留まってしまいます。




大好きなチェッカー市松の帯にうっとりしてしまった浮彫の壁。




うわ~、かわいい!溶けてるのが、またかわいい!
パンテオン・レアルPanteon real、つまり王族の霊廟とでもいうのかな、その中庭パンテオン・デ・ノブレスPanteon de Nobles、これは貴族の霊廟ですね、と呼ばれる場所にあるもので、要は貴族の墓碑なのかと思うんですけれども。




持っている本が、スペイン語なので、にわかには詳細が読めないんですけども~。でも、とにかくかわいい。ここは回廊ばっかりが有名で、写真と言えば回廊の写真しか見当たらないけれど、それ以外にも、見どころがたくさんあった、ということに驚きました。

教会だって、一部しか残ってないけど、すっごく印象的な後陣なんです。




全体がすごい遺構なので、感動が薄まりますけれど、目的は回廊だしね。でも、この後陣のたたずまい、素敵です。




訪ねた教会で、見るべきものがこれだけだったとしたら、もっとすごく感激できるレベルの良さなんですよ。朽ちちゃっているし、傷んでいるんだけど、それでも、味があります。
細部だって、好みのものが、たくさん隠れています。




回廊を見ずとも、ここが、現役当時、どれだけすごい手をかけて作られた場所か、ということが、あちこちに垣間見られますよね。いやはや、想像以上です。
続きます。

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  1. 2017/02/09(木) 07:42:02|
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