fc2ブログ

イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

ギニア高地的な地形(大げさ)に感嘆(シャントージュ1)

2016.08.オーヴェルニュの旅 その11

前回のサン・クリストフ・シュル・ドレソンSaint-Christophe-sur-Dolaisonから、いよいよ北上開始です。




サン・クリストフが、右下になります。アリエ側につかず離れず、というような道を北に進み、目指すは、シャントージュChanteugeです。

この先、ロマネスク病であれば、絶対に訪ねなければならない有名どころを多く紹介していくのですが、この旅では、どちらかと言えば、地味な教会の方が、よく記憶に残っているというのか、印象的だったというのか、そういう感じなんですけれど、このシャントージュは、そういう中でも、さらに印象的で、忘れることのなさそうな村でした。

今は、割と慣れてきて、かなりの坂道も臆せず車で入り込むようになってきましたが、たったの一年前は、まだかなり慎重で、この村に到着したときも、ナビの指示はまだ続いていたのですが、幹線道路から入ってすぐ、村の入り口のようなスペースに駐車して、徒歩でアクセスすることにしました。
教会にたどり着いたら、車でアクセスする道があったのがわかったのですが、結果的には、村の中を通り抜けることができたのは、とてもよかったと思います。




というのも、駐車したスペースから一歩村に入ると、もうそこは、トトロの世界というのか、石畳だったり、土の道だったり、ほとんど農道のような道となり、それも、かなりの急斜面に家がびっしりと立て込んでいるので、誰かのお宅の軒先をすり抜けるような道が続く世界なんです。




段々にして家を建てるならともかく、斜面の猫額状態の土地に建てているから、立て込むし、道もぎりぎりのところに、やっと歩ける程度のギリギリの幅でしか作れなかったんでしょうね。迷路のようで、本当に面白いです。これは、車道を行ってしまえば、絶対に味わえない楽しさです。

で、天辺に着くと、いきなり平地が広がります。
そして、こんな門、というか建物に迎えられます。




これは、どうやらかつては孤高の修道院だったのですね。




サン・マルスラン修道院Abbaye Saint-Marcellin全景。
後代の改築などが一部激しく見られるのですが、上の地図で、門から一番遠くにある、多く当時の姿をとどめているサン・マルスラン教会Eglise-Saint-Marcellinが、目的となります。

さて、この門をくぐって出会った風景への驚きは、今も鮮やかに蘇ってくるほどに、強烈でした。




ギニア高地かよ~!とつぶやいたのを覚えています。バカみたいですけれど、あの猫額にびっしりの斜面を通ってきたからこそ、この天辺に広がる平地の広さとの落差に、心底驚いたんです。

まず、手前にある回廊から。
上の写真の左側に、アーチの入り口が見えますが、そこからアクセスします。




ずいぶんと手が入っているのが明らかで、面白みはありません。
今は、教会とは直接行き来が出来なくなっていますが、かつては、下の写真の左下にある門で、つながっていたのかな。




教会の建物を形作るのは、ここでもやはり火山岩系の石ですね。ということは、やはりこの土地も、火山にょきにょきの天辺であるはず。とすると、これだけの平地は、自然にはありえないので、整地した、ということなんでしょうか。
修道院だから、頑張っちゃった可能性はありますけれど、それにしても、かなりの大工事ですね~。

回廊の一部からは、ファサードと反対側、東側の風景が見えます。




つまらない景色ではありますが、掲載するのは、つまり、この土地の周囲は、すべて崖状態ということなんですよ。村のへばりついている斜面も、ほとんど崖みたいな斜面ですが、それ以外は、すべてすごい崖。

ファサード側を回り込んで、後陣に行くと、そちらはテラスのように遮られていて、その向こうは崖なので、後陣の近くには寄れません。




遠くに、お隣の村が緑に埋もれているのが見えるくらい、山なんですよね。




大げさでなく(いや、大げさですかね)、かなりギニア高地的な雰囲気がありますでしょ?

写真が増えすぎそうなので、一旦切ります。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2017/09/14(木) 05:41:52|
  2. オーベルニュ 03-63-15-43
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

彫りがなくても美しい、火山岩の多色ぶりにびっくり。(サン・クリストフ・シュル・ドレソン)

2016.08.オーヴェルニュの旅 その10

北上を始める前に、ル・ピュイ・アン・ヴレ近くで、もう一つ寄り道。前回のサン・ジュリアンからル・ピュイ・アン・ヴレに戻り、町を通り抜けて西に抜ける、という無駄走りで、やってきたのは、前回掲載した地図の、左下の方にある、サン・クリストフ・シュル・ドレソンSaint-Christophe-sur-Dolaisonという村。




からん、と空が広がるゆったりとした村で、中心部にある教会は、迷いようがありません。車は停め放題、そして、なぜか、教会裏のスペースでは、ピクニック中の若人が…。

まだ、土地に慣れていないので、なんだろう、と疑問符が湧いたのですが、つまり、ここ、思いっきりサンチャゴの巡礼路なんです。で、ル・ピュイあたりから旅立った人たちが、最初に立ち寄る土地の一つなんだと思います。この辺りは、美しい町村も多いため、お試しの人も含めて、巡礼が多いようです。




12時過ぎで、ちょうどランチの時間だったのですね。
あまり楽しそうにピクニックしているので、フランス語もできないくせに、ちょっと声をかけてみました。
そしたら、ベルギーからの人二人、パリからの人二人、地元民一人、と、ばらばらで、たまたまここで出会って、たまたま一緒にランチを広げている、というようなことらしかったです。
1週間くらいお試しの人もいれば、本格的にサンチャゴまで、と考えている人など、いろいろ。私も、いつか、ほんの一部でもいいから、ロマネスクを訪ねながら、サンチャゴ巡礼の道って歩いてみたいと思っているので、興味深かったです。

みんなで楽しそう、いいなぁ、ランチ、と思いつつ、私はまた修行旅へ。なんか、こっちの方が、真剣に巡礼してるんじゃないか(それも、ランチも取れない日が多数という過酷な…)、などと、ちらりと思いつつ。
この日もまさに、ランチを取るチャンスなく、一日中走り回っていました。

さて、肝心の教会は、こちら。




サン・クリストフ教会Eglise-Saint-Christophe。
今年カンタルを訪ねたからわかりますが、これは、カンタル地方でよく見られる様式のバリエですねぇ。このあたり、確かにカンタルも近いから、様式が重なる地域ということになるのかな。
ファサードのこういう四角張った感じや、脇にある円筒形の塔がね、特徴的。

入り口に近づいて、あれっと思ったのは、扉の所にある、木製の柵。




この後、複数の教会で見たのですが、ここでの出会いがお初。最初は、入ってはいけない柵なのかと思ったのですが、どうやら、扉開けっぱなしにしておく場合に、動物などの侵入を防ぐ目的で置かれた柵のようで、人間は、柵を動かして入ってもよいみたいなんですよ。こういうのは、イタリアでもスペインでも見たことないように思います。

とはいえ、ちょっと恐る恐る、という感じで入場しました。




典型的な田舎の教会風の内装です。
装飾的要素も、ミニマム。でも、ファサードも、扉周りも、この内部の後陣も、独立した装飾性はないけれど、気付かれたかと思いますが、建築資材である石そのものの装飾性がすごいですね、ここ。それが、一番の特徴なのでは。

基本は、やはり火山岩系の石のようですが、この地域で産する多色の石が多数使われています。赤や緑や、すごいバラエティー。説明版にも、ことさらに、その多色の石について、書かれていましたが、当然ですね。




レンガのように、マットな質感の石だから、色がさらに強調される感じ。楽しいですよ、色遊びみたいで。




モザイク的な。
こういうのって、すごくセンスが問われると思います。石と石とつなげる漆喰の白も強調されていますが、これも、オリジナルから、きっとこういう風にやっていたんだと考えます。彫り物をする石工さんがいなかったのか。俺たちは俺たちの持っているもんで作る!という矜持でこうしたのか。

内部は、もうちょっと淡い色合いの石を使っていて、暗くなりすぎないようにしているんですかね。それにしても、美しい色の石がたくさん。




これはこれで、楽しい教会でした。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2017/09/12(火) 04:59:10|
  2. オーベルニュ 03-63-15-43
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6

ギャラリーに招かれて閉口(サン・ジュリアン・シャトゥイユ)

2016.08.オーヴェルニュの旅 その9

ル・ピュイ・アン・ヴレからは、北上の予定だったのですが、見学予定にしていた美術館がクローズで、時間に余裕ができたため、北上の前に、近場にある町にも足を延ばしてみることにしました。




まずは、東にあるサン・ジュリアン・シャトゥイユSaint-Julien-Chapteuilに向かいました。
町に入ると、結構な坂ばかり。あまり深入りしたくなかったので、適当な路肩に駐車して、って、さらりと書いていますが、この適当な場所に駐車するというのが、私には結構難しいことなんですけどね。特に坂の町だと、縦列でも横向きに入るのでも、結構大変なことですが、このときは、そろそろやばいぞ、と思ったあたりで、首尾よく駐車できたので、幸先のよさを感じました。ちょっと大げさですが、そんなもんです。

実際、本当の旧市街、つまり教会のある場所は、駐車した新市街的なアスファルトの道から、ほんの僅か入ったところから始まっている、ナイス・ロケーションだったんです。




歩きにくい石畳の急坂を、一所懸命上ると、まだ坂が続く斜めの土地に、いきなりこんな立派な教会。




サン・ジュリアン教会Eglise-Saint-Julien。
こうやって見た感じは、巨大教会という感じで、あまり食指が湧かないタイプなんですが、入ってびっくりしますよ。

右わき、つまり南側の扉から入ります。




後陣部分。あれ、意外と小さな教会だな、と親しみが湧くサイズ。
というのも、あとから納得しましたが、坂に建てられているので、ファサード側と後陣側では、縦方向のサイズが全然違うんですよね。
外から後陣を見ると、よくわかります。




ね。田舎の小さな教会サイズで、ファサードとのイメージの違いにびっくりします。
そして、内部の彫り物装飾は、とってもプリミティブで、好みのモチーフがたくさんあるのも、嬉しい落差でした。




すっきりした二股人魚。全然色気ないと思います。一部残っている赤や緑の彩色からは、結構派手な柱頭だったことがしのばれます。




素朴で、ごちゃごちゃ彫りこまない明快なモチーフが持ち味かな。柔らかい線が、愛らしいです。
植物モチーフも同様に、とてもすっきり。これ、好きだなぁ。




聖水盤として使われていたか、ちょっと覚えてないんですけれど、こんなものも。




これも柱頭だったような感じですが、印象的ですよね。これは、ごちゃごちゃしてるし、手が違うのか、傷みが激しいことから、違う場所のものだったのか。

適当に地味で、あまりはまり込む必要もなく見学できて、強烈なル・ピュイの後に見るには、適切な教会だったかな。




ル・ピュイと言えば、ここでも、高台となっている後陣側から、同じような風景に出会うことができます。




レンズマメ…、とか連想したのを、変に覚えています。

ところで帰り際に、再びファサード側を通ったんですが。




この、地階のところ、気になりませんか。
もしかしてクリプタのようになっているのかしら、とのぞき込んだら、ギャラリーになっていて、中の人に手招きされてしまいました。
遠目に見ても、作品には興味が沸きませんでしたが、会場スペースに、何か見るべきものがあるかも、という色気で、入ったのですが、いたって普通の漆喰白塗りのスペースで、建築的に見るものは何もないことは一瞬にしてわかったものの、私を招き入れた女性が、フランス語で話し続けるので、大変困惑しました。
彼女が作家さんだったのですが、作品の写真集まで広げだして、すごい売り込み。もしかして金持ちの中国人とかが買ってくれた過去があるとか、そういうことかもしれませんが…。幸い、本当に私の好みではなかったので、へらへらしながら退出しましたが、疲れてしまいました。ふぅ。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2017/09/10(日) 20:06:52|
  2. オーベルニュ 03-63-15-43
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

虫が這うチーズなんて、仏人はおかしいと思ったけど、おいしかったからびっくりだよ(ポリニャック)

2016.08.オーヴェルニュの旅 その8

ポリニャックは、ル・ピュイ・アン・ヴレの北部にある隣村です。
ロマネスク的には、わざわざ訪ねることもない場所なのですが、実は、このとき、ル・ピュイ・アン・ヴレに、どうしても適切な宿が見当たらず、苦肉の策として周辺を探して、この村のシャンブルドットに出会ったのでした。

でも、土地に詳しい知人に、「ポリニャックって大変な高低差のある村よ。場所をちゃんと確かめないと、えらいことになるわよ」と、いわれて、真っ青になりました。




行ってわかりましたが、ポリニャックって、こういうところ。常々坂道が苦手な私には、鬼門もいいところの地形じゃないですか。
ここも、火山のにょきにょきが村の中心になっていて、天辺にはお城があります。その周辺にへばりつくようにして、村が発展していったようで、全体が坂の村です。




天辺へと続くのは、目の前に斜面があるような、激しい坂道です。幸い、宿泊するシャンブルドットは、斜面が激しくなる手前だったので、よかったですが、道は狭いし、変なとこに入り込むとえらいことになりそうなので、ちゃんと到着するまでドキドキでした。

ル・ピュイ・アン・ヴレで、ゆっくりしてしまったので、到着が遅れ、着いたらすぐに夕食の時間となってしまいました。夕食後に散歩に出たのですが、雨は降ってくるし寒いし、真っ暗なので、ほんの10分ほどで退散する羽目になりました。

でも、翌日、早起きをして、お散歩リベンジをして、地形がよくわかった次第。

その名も「ドンジョン通り」からのお城の姿。




村の高台の多くの部分は、お城の敷地となっており、かなり手前に鉄柵が設けられていて、オープン時間以外は、アクセスできません。お城には興味がありませんが、この地形には興味が沸くだけに残念でした。
11世紀ごろに建設され、17世紀までポリニャック家の居城だったそうです。

この、ドンジョン通りのレベルから、居住地が始まるのですが、狭い土地にびっしり、という感じで、こんなところによく住んでいるよなぁ、と感心するような。
周囲を見回すと、緑の中のあちこちににょきにょきと、噴火の跡が。




ル・ピュイ・アン・ヴレの地形が、決して特別じゃないことがわかります。
とはいえ、あれだけの広い村ができる、なだらかで大きな溶岩山は、なかなか珍しいのかもしれないですが。

そういう、普段とまったく違う風景を見ながらの早朝散歩。昨日と今日で、全然変わる環境を味わえるのは、欧州の面白いところですね。




この村にも、一応ロマネスク起源の教会があります。上の写真で写っている鐘楼が、それです。




サン・マルティン教会Eglise de Saint Martin de Polignac。
火山の岩を使った、ル・ピュイの教会とも共通する切石積みの教会です。内部には、古いフレスコ画や柱頭もあるようですが、外観的には、かなり後代の修復などが目立って、残念ながら、わざわざ見に来なくてもいいかな、というたたずまいですね。

せっかくなので、シャンブルドットの紹介でも。




La Gourmantine
Chemin de Ridet, Polignac

夕食も提供してくれるタブルドットなので、私は夕食もいただきました。しかし、ホストの英語力はほんのわずかだし、その時の同宿者は、フランス人ご夫婦二組で、かなり修行でした。おひとりが、イタリア出身ということで、ほんのわずかのイタリア語を解されましたが、私のフランス語とどっこいで、会話にはなりがたく…。

グルマンティンなんていう名前なので、さぞやおいしいご飯が頂けるのかと期待していたのですが、夕食は、かなり家庭料理でした。




でも、前菜で出されたこのレンズマメのサラダは、大変気に入って、今でも時々作っています。火山の土地が、レンズマメの栽培に適しており、そのために、レンズマメは地域特産なんだそうです。
イタリアでは、肉と煮込んだりの暖かい料理に使うことが多いと思いますので、サラダにするという発想がなく、新鮮でした。紫玉ねぎと、マスの燻製を刻んだものが入っており、フランボワーズのお酢がポイントと思います。イタリアにはフランボワーズのお酢はありませんので、リンゴ酢やバルサミコで代用していますが、それでもおいしいです。




ちょっと苦手なビーツのサラダも、ゴマが入っていて、面白い風味になっていました。いろいろ工夫するんだろうなぁ。
メインは、お魚でした。なにも、こんな内陸で、お魚じゃなくてもいいのに、とちょっと思いましたけど。




私がいちいち写真を撮るのを、他の方は面白そうに眺めていました。ホストご夫婦も、ちょっと嬉しそうでした。
この、民宿的な宿はたくさんあって、今でもフランス人の多くはこういうところに泊まるのだと思います。特にタブルドットだと、夕食は宿泊者が一つのテーブルを囲むというのが、基本になっているみたいです。
フランスを旅する度に、フランス人の貧しいコミュニケーション能力にはびっくりすることが多いのですが、こういう宿を好むのだとすると、コミュニケーションしたくないわけではないんですよね。他人同士が、楽しいそうに語らうんですよ。
まぁ、あくまで基本はフランス語ですけれどもね。

お料理は、割と軽めだったのですが、最後は、チーズが。




この日が洗礼でしたけれど、オーベルニュのチーズ好きには、本当にびっくりしました。これまで、フランス各地を歩いてきましたが、この地域ほど、チーズがマストな土地はなかったです。どんなメニューでも、チーズ付きとチーズなしとがあるし、チーズ無くしては食事を終えられない、というカルチャーみたいですねぇ。
そして、熟成した辛いタイプや、アオカビが苦手な私でも、おいしくいただけるチーズが多いのも、嬉しい発見でした。
このときも、白カビ系は大丈夫と思いましたが、外を虫が這っているようなタイプはダメだと思いつつ、好奇心からちょっといただいたら、おいしくて。いや、びっくり。虫が這っているのを、お、これはおいしいんじゃないか、と嬉しそうに言っているフランス人の感覚もびっくりでしたけど。

チーズの後は確かアイスクリームで締めだったと思います。
全体にバランスが取れているし、お値段もリーズナブルでありがたいのですが、ここはワインに問題ありでした。おそらくホストさんたち、飲まないんじゃないのかな。フランスでこのワインはなかろう、というもので、さすがの私も…。

夕食よりも、朝ごはんが素敵だったかも。残念ながら写真はないんですけれど、奥様のセンス全開、という感じの素晴らしいセッティングでした。内容はたいしたことないんだけど、盛り付けや並べ方が完璧で、そのまま雑誌に掲載できるような代物でした。

というわけで、あえて観光地っぽいル・ピュイ・アン・ヴレを外れて泊まって、面白かったかもね。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2017/09/09(土) 23:38:06|
  2. オーベルニュ 03-63-15-43
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

にゃんこと遊んだ記憶が鮮明でびっくり(ル・ピュイ・アン・ヴレその7)

2016.08.オーヴェルニュの旅 その7

ル・ピュイ・アン・ヴレLe Puy en Velay、巡礼的な階段を登って、サン・ミッシェル・デギユ礼拝堂Chapelle Saint Michel d'Aguilheを見たら、もう終わりだろうと思ったのに、降りたら、ふもとにもう一つ…。
これは、事前にチェックもしてなかったので、あらら、でした。




サン・クレア礼拝堂Chapelle Saint Clair。
サン・ミッシェル・ダギレ礼拝堂のふもとに佇んでいる、小さな礼拝堂。もともとは、巡礼救護所に併設する礼拝堂だったそうで、12世紀終わりごろの建築で、サン・クレアに捧げられたのは、17世紀も終わり。おそらく救護所としての役割も終わっていて、礼拝堂として独立したということなのでしょうね。

入り口のアーキトレーブに、月の満ち欠け図があらわされているために、ディアナの神殿とも呼ばれていたとか。




実は、現場でちゃんと説明を読んでなかったので、今更、ほぉほぉ、と感心している次第です。
小さいながら、八角形の特徴的な建築で、印象的。




内部の天井。形からは、まるで洗礼堂のようです。
正確な石積みの様子から、確かに時代が下る感じがわかりますよね。このグレーの石は、想像していましたが、この地域の火山岩です。いかにもそういう色合いです。

地味ながら、ちょっと愛らしい柱頭もありました。




やっぱり小さいと落ち着くし、全体の雰囲気が好ましい空間です。

外壁の装飾は、サン・ミシェルと同様のつくり。赤がない分、さらに落ち着いたたたずまいになっているのかもね。




こっち側の壁はかなりの部分、新しくなっているようだけど、背景にサン・ミッシェルを背負うこの眺めは、なかなか印象的です。




こっち側からだと、より、往時の雰囲気なのかな。




この正面の建物、今は普通に住居となっているようだけど、もしかすると、救護所の一部だった建物かもしれません。
サン・ミッシェルに参拝しようと、やっとたどり着いた巡礼が、病に倒れて、ここで、岩上の礼拝堂を見ながら、むなしく、ふもとの礼拝堂で悶々としていた、なんてドラマもあったかもしれませんねぇ。

この礼拝堂のある場所は、ちょっとこぎれいな住宅地という感じで、たたずまいが大変かわいかったです。なんか、異常に人懐こい猫がいて、つい遊んでしまったりしたので、ますます印象がいいんです(猫好き)。




こういう、マージナルでどうでもいいようなエピソードが、結構教会の記憶とも結びつきます。にゃんこの写真のおかげで、あの時の風景が、かなり鮮明に湧き上がってきました。

ちなみに、町の方には、中世ものも充実しているらしい美術館Musee Crozatierというのがあります。駐車した駐車場からも近い場所だったので、もちろん訪ねたのですが、なんと、修復中で、近くにアクセスすらできませんでした。あれから一年もたっているので、もう修復も終わったかも、ですね。
今、思い出した次第。そうか、ということは、ここも、いつか再訪しないといけない町の一つだったんだ。

ということで、やっと次に移動できます。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2017/09/08(金) 05:36:43|
  2. オーベルニュ 03-63-15-43
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

みっちりぎっしりフィギュアとすごむ牛(ル・ピュイ・アン・ヴレその6)

2016.08.オーヴェルニュの旅 その6




ル・ピュイ・アン・ヴレLe Puy en Velayの、とんでもない場所に建っている礼拝堂サン・ミッシェル・デギユChapelle Saint Michel d'Aguilhe、続きです。
前回は、興奮しつつ、内部をご案内しましたが、外側も。

上の写真を見ても、このロケーションの特異さがよくわかりますよね。
こんな場所に、小さいとはいえこれほどの建築をしてしまう、信仰の力、恐るべしです。

外側の装飾は、やはりファサード部分となります。




こてこてだけどかわいいのは、小さいからかと思いましたが、それもあるとはいえ、この、一部激しく装飾的な割には、この一部を除くと、あとは灰色の切り石積み、という地味さが、嫌味を消しているんですね、多分。同じような装飾が、外壁前部にあったとしたら、やはり、好きになれないような気がします。

それにしても、愛らしいのは、この、クローバー型のおかげもありそう。




そして、どの隙間も、みっちりと彫り物が詰め込まれていて、一所懸命見てしまう。

クローバーの左側。




そして右側。同じ構図ですね。マギかと思いましたが、両方あるので違いますね。




真ん中には子羊がいます。両脇にいるのは、福音書家でしょうか。




子羊の背景には、素敵なパステルグリーンが残っているので、全体、彩色されていた可能性が考えられます。過酷な坂を上ってきて、出会うというシチュエーションだけでも、天上のイメージにピッタリな上に、キラキラとしたファサードが待っているわけですから、往時訪ねた人々は、恍惚としたのではなかろうか、と想像します。

それにしても、これだけぎっしりなのですから、人魚の上の、今は漆喰塗りつぶし状態の部分も、本来は何か彫り物があったと考える方が自然ですよね。どこかに持ち去られてしまったのでしょうか。




オリジナルでは、何が彫られていたのでしょうか。アーモンドのキリスト?
しかし、神の子羊の真下で、誘惑のシンボルであるはずの人魚が、それも二人も、お風呂中(?)という構図も、大変不思議です。

最上部には、人物フィギュアがずらり。




いつだって、わかりやすい鍵番のピエトロさんには、どうしても親近感を覚えてしまいます。このピエトロさんは、なんとなくイメージにしっくりするお顔をしています。
その左にいるのは、大天使ミカエルみたいですね。
ここでも彩色のあとが、わずかに残っています。




割と普通の人っぽいキリスト像は、手の大きさが半端ないです。そして、すでにして胸像状態というのが、珍しい表現に感じます。
背景のアーチの赤、相当鮮やかにぬられていたのでしょうね。

もう一回クローバー部分、全体を見ると、気になる穴があります。




装飾も施されているし、後付けで開けられたようにも見えないのですが、シンメトリーの真ん中でもなく、微妙にずれた位置にあるので、不思議なんです。
春分に、ここからの光が、内部のどこかを照らすとか、そういう目的があったりするのか、単に明り取りなのか。

再びプランを取り出して、この穴の場所を考えて見ました。以下で、赤で印をつけた場所が、穴になると思います。




今は、10世紀の部分の、上の図で言えば、右側が祭壇となっていますが、もしかして、その上部がオリジナルの祭壇とすると、この穴からの光が、祭壇に届く可能性大かも。

現場では、そんなことまで考えもしなかったんですが、今年の春訪ねたプーリアの洞窟教会で、そういった穴を見たことから、今更、思いを馳せる次第です。現場で気付いたら、もうちょっと検証できたのに、残念です。
色々と忘却も激しいですが、多くの異なる場所を回ることで手に入る注目ポイント、というのはあるかもしれないですね。

でも、今撮影した写真を見ていると、どうやら、前回の記事で紹介した、ステンドグラスのはまった丸い穴が、これなのかもしれません。とすると、どうやっても祭壇には届きそうにない。単なる明り取りかな。

あ、ファサードでは、これも特異。




何でしょうか、このリアルティ。怖いよ。完全にすごんでますよね。牛のくせに。
この妙な史実性、他の彫り物に比べると、唐突感、ぬぐえません。

去りがたい場所でしたが、いつまでもいるわけにもいきません。
一段下がった場所をぐるりと回って、意外とつまらない後陣側もしっかりと見て。




転げ落ちそうな階段を、慎重に降りました。




私が見学を終えたころから、登ってくる人が増えて、狭い階段を譲り合い。前夜同宿だったフランス人とも再会してしまいました。やっぱり一番に来て正解でした。

そろそろ次の町に移動したいところですが、もうちょっと続きます。ル・ピュイ、盛りだくさんだったなぁ、と今更驚いています。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2017/09/07(木) 05:54:27|
  2. オーベルニュ 03-63-15-43
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

2017年7月8月に読んだ本、備忘録

夏休みも入り、読書量は相変わらず限定的です。とにかく読むのが遅くなってしまって、どうしようもありません。
去年の秋からこっち、通勤時間をフランス語の独習に当てたために、貴重な読書時間が減ってしまっていたのですが、実はこの8月のフランス旅行では、その成果がちょっぴりあり、大満足です。
机に向かってまでの勉強は、なかなかできないのですが、限られた時間にCD聞き流しだけなら、何とかなります。いい加減ながらも、数年前にやっていた時に比べると、少しは、聞き取ろう、覚えよう、としていたのが、わずかながら身についた要因かと思います。
来年も、フランス行きはほぼ決めているので、ちょっと欲が出てきました。今後は、机に向かって、書きながら覚えるなどの学習も加えたいものです。が、たぶん、無理…。
いずれにしても、読書時間が増えることはなさそうです。

「愛がなんだ」角田光代(角川文庫)
「花の鎖」湊かなえ(文春文庫)友人から返却された中にあって、再読でした。
「ムツゴロウのため息」畑正憲(文春文庫)
「山の音」川端康成(岩波文庫)
「松風の門」山本周五郎(新潮文庫)
「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キイス(早川書房)
「長英逃亡 上下」吉村昭(新潮文庫)
「ロスノフスキ家の娘 上下」ジェフリー・アーチャー(新潮文庫)
「漂う殺人鬼―ダイヤモンド警視シリーズ」ピーター・ラヴゼイ(早川書房)
「明治の人物誌」星真一(新潮文庫)

漫画
「うせもの宿 1-3」穂積(小学館)
「マージナル 1-5」萩尾望都(小学館)

今回、最も面白く読んだのは、「長英逃亡」です。久しぶりに、やめられないタイプの面白さでした。吉村昭さんは、これまで、ちゃんと読んだことのない作家さん。というか、確か以前、読みかけでやめてしまった本があるくらい、苦手意識があったのですが、なんででしょう?
たまたま同じ時に購入したのか、もう一冊彼の本を発見して、先日読み始めたところですが、やはり面白いし読みやすい。うーん、以前読めなかった理由がわからないです。
高野長英という人についても、こういう事実を知らなかったんで、かなりびっくりした次第。歴史は、小説に限りますね。

その他、アルジャーノンは、ちょっと前のバザーで美本を発見したので、つい買ってしまった懐かしい一冊。キイス、流行りましたよねぇ。ジェフリーアーチャーも、懐かし系。こういう通俗的な大河小説は、結構好きなんです。ピーター・ラヴゼイ系の推理小説は最近めったに読みませんが、読めばやはり面白い。
マージナルは友人からの借り物。昔読んだと思うけれど、すっかり忘れていた漫画。萩尾望都の天才性は、時代を超えますね。いやはや。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2017/09/06(水) 05:53:28|
  2. 読書、備忘録
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4

天上の礼拝堂に息をのむ(ル・ピュイ・アン・ヴレその5)

2016.08.オーヴェルニュの旅 その5

ル・ピュイ・アン・ヴレLe Puy en Velay、見るべきは、カテドラルだけじゃないんです。立て込んだ旧市街を離れた場所に、とんでもないものがあります。絵的には、こっちの方が有名なのかも。




サン・ミッシェル・デギユ礼拝堂Chapelle Saint Michel d'Aguilhe。
発音、いい加減です。

もこもことした岩山の上に、ポツンと見えるのが、それです。ネット検索すると、すっごくスペクタクルな写真がたくさん出てくるので、是非参照してみてください。
私の写真は、ベタに、駐車場から入り口へと向かう道からの眺め。
これでも、かなり驚きました。まずは、どうやってあそこまでたどり着くのか、ということ。そして、どうやってあんな場所に建てたのか、と。

この辺りは、火山がたくさんあったようですね。と言っても、すっごく昔々のことで、今では火口や、火山岩や溶岩などが作る凸凹の地形だけが、その名残を残しているだけなんです。オーヴェルニュのかなり広い地域に渡りますが、特に、このオート・ロワールやカンタルに、そういった地形が多く残っているようです。
ル・ピュイでは、噴火のあと的な、不思議な奇岩がにょきにょきして、それで、こういう不思議な地形となっている上に、わざわざ、そういった奇岩に教会を建てたりしたので、世界遺産になっちゃったりしているんですね。

実際に訪ねる前は、いったいどういう町なんだろう、と想像もつきませんでした。




この礼拝堂が建っている場所から、カテドラルの旧市街の方を眺めると、こういう風景となります。
この礼拝堂は、郊外となるので、足元には、比較的新しい街並みが広がっています。礼拝堂が建ったころは、おそらく、何もない谷が広がっていたのではないでしょうか。
そして谷を挟んで、天辺に長谷観音のような巨大なマリア像(新しい)が建っている、こんもりと緑の高台があり、その向こうが旧市街となり、その中心にあるカテドラルが見えます。
巨大マリア像の建っているのも、よく見ると岩山ですね。場所によっては、火口が何十キロにも及ぶものもあるようなので、ここも、そういった場所の縁とか、そういう地形なのかな。

さて、礼拝堂に戻って。
入り口は、にょきにょきのふもとにあります。




駐車場からここまででも、すでにかなりの高低差で、坂道を登ってきていますが、ここに来ると、今度は急階段。急過ぎて、坂道では無理なんでしょう。

結構大変な階段です。ぜえぜえします。
最後の数段にたどり着いた時、小さなファサードとご対面です。




とってもちゃんとした、むしろ装飾型的なところは、カテドラル同様の建物があるので、感動します。だって、これだけの急坂の岩山の上に、建てているんですから。岩を彫っているわけでなく、石を積み上げているんです。切り石を、一つ一つ運んだんですよね?岩山から削った?

もともとは、ガロローマ時代の人々が、岩山の天辺に神殿を建てることで、少しでも神に近づこうとしたことから、そこにマーキュリーに捧げる神殿を建てたそうです。10世紀に、カテドラルの参事会会長が、大天使ミカエルに捧げる礼拝堂の建設を許可され、961年に奉納されました。その当時は、今ある建物の一部が礼拝堂として使われていましたが、巡礼が増えてきたことにより、12世紀に、今ある姿まで建て増しされたということです。




こういうプランになっています。黒いところが10世紀、かなり初期の時代の建物で、斜め線のところが12世紀に拡張された部分となります。
プラン通り、小さいけれど、中に入ると、複雑な入り組んだ形になっています。

こってこてに装飾が施されたファサード。最近、ブログのトップにも使っています。




カテドラルと同じような外壁装飾なんですが、ここでわかったのは、建物がこじんまりしていると、受け入れやすい、という私の性癖。この礼拝堂における装飾型は、決して嫌じゃなかったんですよね。全体のバランス化と思うのですが、単純に規模の問題なのかもしれないし、フランス・ロマネスクに対しての、自分の好みは、まだ、よくわかりません。

それにしても、このアーキトレーブに置かれた人魚は、なかよく銭湯堪能中の図って感じで、おかしいですね。

まずは、中に入ります。
実際このとき、この装飾を心行くまで見たい、という誘惑を振り切るのは大変でした。後からいくらでも見られるけれど、やっぱり気持ちを切り替えるのは大変。

ここを訪ねたのは早朝。スケジュールの都合でもあり、人の少ない時間を狙ったためでもあります。やはり、人が少ない時の見学の方が気持ちよいし、特にここのように小さい場所ではなおさらですよね。




さらに数段上がる構造です。奥の方に見える柱やアーチに、心臓バクバクの一瞬です。
そして…。




息をのむ、って、とても陳腐な表現ですが、まさにこういう時のためにあるんですよね。ここは、事前にほとんど写真も見ていませんし、出来上がったイメージもない上に、別に大きな期待もなかったんで、この眺めが広がった時、立ち尽くしました。
こういうのが、修行の喜びなのです。




ここでの空気感。撮影した写真一枚一枚、その一瞬を、今でも感じられるくらい、強烈でした。
場所の特異さや美しさに加えて、早朝にも関わらず、すでに多くのろうそくが灯されていて、温室のようなムッとした暖かさだったのも印象的だったんです。多くの早立ちの巡礼の方々が、すでに参拝を済ませていったのでしょうねぇ。




ディテールも楽しいのですが、ここは、とにかく全体の空気感がすべてな気がします。




これらは、12世紀に拡張された部分ですが、下が、10世紀の部分です。




この部分は、天井も低くて、狭い場所にごたごたとした感じですが、ディテールも含めた古びた様子を、まさに手に取るように見ることができます。そりゃ、やっぱりディテールも面白いんです。




一部フレスコ画が残っていますが、ステンドグラスは、現代もの。
明快な色彩に明快な幾何学モチーフのステンドグラスは、窓の面積が小さいせいもあって、とても素敵なアクセントになっていました。

激しく古い時代の柱頭に、モダンなステンドグラスを合わせる妙。フランスのセンスが全開って感じですねぇ。




フレスコ画は、傷みが激しい上に暗いので、あまりよく見えません。




オリジナルは、色彩がもっとビビッドだったんでしょうが、薄暗いので、イメージとしてはきっとこんな感じだったかもね。




重厚な伝統的植物文様の柱頭が、目の前に迫ってくるのが、好みでした。

外側装飾は、次回。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2017/09/06(水) 05:12:50|
  2. オーベルニュ 03-63-15-43
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4

知らずに誘われたけれど、もしかすると、すごくラッキーだったのかも(ル・ピュイ・アン・ヴレその4)

2016.08.オーヴェルニュの旅 その4

訪ねた教会の数から単純計算して、ひぇ~、こんなにのろのろ書いてたら、今年中に終わらんじゃん!と焦りつつ、友人に貸さないと、と古い漫画を引っ張り出したら、つい読みふけってしまって、一日飛んじゃうし、まったくなにやってるんだか~、とあきれつつ、ル・ピュイ・アン・ヴレLe Puy en Velayのカテドラル、続きです。

本堂へ。




中に入った時、音楽の練習中でした。




観光地なので、うろつきまわるのに、問題はないようでしたが、さすがに、練習している祭壇の方はいけないですよね。でも、このキラキラの内装なら、別にディテールを確認することもないかな、というところです。

ステンドグラスが、とっても美しい。




フランスは、ステンドグラスが美しい教会が多いです。現代作家の作品をはめ込んでいる教会も多いので、面白みもあります。ステンドグラス・マニアという世界もありそうですね。

それにしても、メモとか取っとかないと、もうどこの何を撮影したのか、よくわからなくなってしまいますね。




前後の撮影内容から考えて、塔のあるあたりと思うのですけれど、どうも、全体構造、よく把握できてなくて。




おそらく、ナルテックスに当たる部分、鐘楼のところと思うのですけれど、どうやら、古い構造物の名残があるのですね。




説明版には、「カテドラル後陣11/19世紀:11世紀につくられた後陣は、19世紀にレストアされている。今あるものは、異なる時代のものが混じっており、下段にある浮彫には、狩りのシーンが彫られている。その上部は、メロヴィング時代のものとなる。ラテン語の碑文は、12世紀で、近場にある癒し効果のある湧き水について言及されている。」というようなことが書かれていました。
そうか、修道院だからね、水は大切。しかし、この一帯って、火山で隆起した土地が基本なんだけど、そういう土地でも湧き水ってあるのかな。ないと困るし、大体修道院は水のあるところにできるけど。




要は、鐘楼の基部部分は、かなり古い時代のものということです。
だから、そこにある入り口周辺も、そういう時代のものが、残っているんですね。




力強い二股人魚!誘惑のモチーフだと思うけれど、誘惑よりも何よりも、この方、力強くて、色っぽさとは無縁だな~。




この人も、なんだか好き。
辛い姿勢で、何を表しているんだろう。重そうだよね、背負っているもの。腕を膝で支えて、頑張って突っ張ってる。




よく見ると、面白いもの、たくさんあります。

でも、今思うと、このときは完全に浮ついていて、現場では、そういう認識が欠けてた感じがあります。なんせ初めてのオーヴェルニュ、初めての町。その上、時間は押せ押せ。
じっくり見よう、という余裕が一切なかった。見逃さないように、でもなにを?っていう感じ。次々と気持ちがふわふわと先走って。だから、ディテール、ちゃんと見てないと思います。

今年の夏の旅は、それを反省材料にして、「数よりも、一つ一つをじっくり」ということを第一に回って、去年のそういう自分を、今更反省しました。気持ちを落ち着けないと、見えないことがたくさんあります。
というわけで、この旅で訪ねた多くの教会は、いつかまた再訪したいと、すでにして思っているんですよね。




では、本堂とちょっと離れて建っている洗礼堂。
ここは、入り口が閉まっていたら、気付かなかったかもしれない。たとえ、見るべきものの一つとして、リストアップしていたとしても。というのも、普通に歩いていると気づくだろう脇の入り口は、閉ざされているらしいので。




サン・ジャン礼拝堂Baptistere Saint Jean。

南側の側壁にあるもんだけど、ライオンさんが並んでいるし、これはなに、と気付きますよねぇ。でも、今の入り口はこっちじゃない。西側なんです。

確か回廊を見学した後、そちらの扉が開いていて、中で人が作業中だったので、え、なんだろう、と入ったんです。洗礼堂が、本堂と完全に離れて建っていると、わかってなかったので、別の教会と思って入りました。




こういうのが見えたので、え、誘われるように入ったんです。そしたら、すごく雰囲気がいいんです。




これって、ロマネスク病者、特に初期キリスト教時代よりの人が期待する、後陣の眺めじゃないですか。思わず、できもしないフランス語で、作業中の人に、いろいろ尋ねて、洗礼堂であることが分かったんですよねぇ。間抜けなことです。
それでも、ほんのわずかでも言葉ができることは重要だわ、と感動したんですけれど。

柱頭などは、5世紀のものの使いまわしのようだし、建物の一部も、ローマ時代のものだったりするようですね、説明版拾い読みによると。
で、今更、その説明版を見て、驚いたのですが、最後の方に、「2007年より、発掘を行っていて、安全性のため、すべての作業が終わるまでは、閉鎖」と書いてあるんですよ、たぶん(フランス語のため)。だから、本来の扉は、長く閉まっている雰囲気満載だったのですね。
で、私が入った時は、作業員しかおらず、その方、何かのイベントの片づけをしていたんです。もしかすると、すごくラッキーだったのかも。




つまりこの建物部分、歴史の集積地みたいになっていて、彫ればいろいろ出てきちゃうらしいんです。おそらく修復絡みの作業で何か出てきちゃって、それで発掘、となったのでは。




今ある壁の裏側にある壁が見えています。




面白いですね。ここは、カテドラル本堂よりも、ずっと好きでした。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2017/09/03(日) 22:57:32|
  2. オーベルニュ 03-63-15-43
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4

想像を絶する色彩の嵐(ル・ピュイ・アン・ヴレその3)

2016.08.オーヴェルニュの旅 その3

ル・ピュイ・アン・ヴレLe Puy en Velayのカテドラル、続きとなります。
建物がごたごたと立て込んでいて、一体全体、どうやって見学したのやら、と途方に暮れつつ、最初に見学したのは、こちらです。




回廊。おそらく、ここのアイテムでは、最も有名なのではないでしょうか。
入ってすぐ、この光景で、絵、こんなにすんなり、この有名な眺め風景なんだ!と茫然とした記憶があります。




今、改めて見ると、ほぉほぉ、と思うのですが、実は、現場での感想は、「あまり好みじゃない」でした。ここだけの入場で5.50ユーロも取られたし、なんとなく納得できない気分で入ったところ、雨は降ってくるし、薄暗いしで、どうも、テンションの低い見学となってしまったんです。
全体は、ちょっと装飾過多な印象なんですが、でも、ディテールは面白いんですよね。なぜ、あれほどテンションが低かったのか。しょっぱなの見学で、まだフランス・ロマネスク・モードになってなかったのかもしれません。

こういう素材でのデザインって、本来結構好みなのですが、オーベルニュに関しては、どうも、最後までなじめないままでした。




どんな細かいすき間にも、様々な彫り物が施されていて、すごいんですけど。




柱頭は、この「イエーイ」スタイルの人物フィギュアが、面白いですね。




手がでかい!衣装のひだひだが大げさで面白い!
でも、面白いなんて言えないくらい、皆さん、泣きそうなくらいに真剣な表情なんです。




いわゆるグリーンマン系も多数。




派生形も豊富です。
これは緑の部分とは離れて顔フィギュア。四隅にハト笛のような鳥フィギュア。




彩色の名残がありますね。フランスの柱頭は、今でも彩色している場所も多いし、当時の姿をより、想像しやすいものが多いです。しかし、この植物モチーフは、赤だったのですかね。こういう薄暗がりでも、彩色がばっちりあれば、相当はっきりとモチーフも見えたことでしょう。それにしても、派手だったでしょうねぇ。外壁の装飾と相まって、ギラギラするような色彩の洪水だったのか…。
回廊は、修道士が黙想する場所であったはず、と思うと、不思議な気がします。




こんなのも。
先日訪ねたコンクでも、アーカンサスをこういう風に彩色したものがあったので、こういう感じだったのか、と思いますが、すごい大胆ですよね。柱は、やはりだんだらに彩色されていたのかしら。うへ~。
今の雰囲気とのあまりに違いに、想像もつかないですね。当時に生きていたら、これは好きになれなかったような…。

全体がデフォルメされたケンタウロス。




これは、妙に愛らしいです。

この後、雨が結構激しく降ってきたのもあり、回廊の内側、つまり屋根のない側からの撮影は、断念しました。

現在は、回廊だけが有料の美術館状態になっていますが、もちろん、教会とはつながっています(行き来はできません)。




教会とつながっている階段。これは、教会側から回廊を見たところ。
つまり、教会のレベルは、回廊よりも、かなり下にあるんですね。山の地形なので、地形に合わせた結果でしょうか。
全体像は、このような巨大なものです。




白い部分が回廊ですが、回廊は、教会の北側になるようですね。そして、回廊の左側に、離れて、洗礼堂があります。これは、まったくわかっていなかったので、危うく見学し損ねるところでした。洗礼堂が、離れて建っているケースは、ままありますが、ここでは、洗礼堂が、他の建物に埋もれている状態なので、気付きにくいのです。

洗礼堂は、後にして、教会本体に移動です。

回廊の見学を得て、本堂に行こうとすると、曲がり角のところに、おや?と目を引く扉があります。




相当朽ちているし、これまた建物の影となっていて薄暗い中にあるので、回廊への行き際には、完全に見逃していました。
よく見ると、かなり立派な装飾が施されていたことがわかります。なにより、説明版が立っているんだから、なにか、に決まっています。

これは、サン・ヨハネの門Porche Saint Jaenとよばれ、本堂北翼の扉。




かなり残念な状態です。彫り物の台部分しか残っていないのですね。一部でも残っていれば、それだけでも立派な門だったでしょうに。場所的には、今も昔も薄暗い陰で、悪さをしやすい場所だったんですかね。早いうちから、使用されなくなってしまった門なのかもしれません。

続きます。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
  1. 2017/09/02(土) 22:29:05|
  2. オーベルニュ 03-63-15-43
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
前のページ