ミンモ・パラディーノOverture Bresciaその8、最終回
サンタ・ジュリアの見学を終了した後、遅めのランチを取って、今度は、ブレーシャのローマ、ブリクシア考古学公園Brixia Parco Archeologico di Brescia Romaへ向かいます。
Brixiaというのは、ローマ時代のブレーシャの名称ですね。
この公園、外から見たことは何度かありますが、入場するのは初めてだと思います。
町中にあり、ブレーシャが、ローマ時代からずっと同じ場所で栄えている証拠。
トップの写真が、左側の建物となり、右の方にはローマ劇場もあり、今もかすかに跡が残っています。この右側の建物の前が、いわゆるフォーラム、ローマの政治の中心地となっていたもので、今でも、当時そのままの地形で、ちょっとした広場となって遺っているのが、興味深いです。
最初に訪ねるのは、現在地である点の左下の建物。ここは、つい最近、二年ほど前に新築でできた部分ということでした。
入場すると、まず、入り口部分で、ちょっとしたブレーシャのローマ時代からの歴史ビデオを見せられます。教育的施設ですねぇ。
このビデオは、コンパクトな内容ながら、なかなかよくできていて、ブレーシャの町の、土地の成り立ちが、よくわかるものでした。それにしても、見学者が押し寄せたら、ちょっと整理できなそうな狭さです。システムも、数人ずつ見せるような形なので、おそらく混んだら、行列して、入場を待つ必要がありそうでした。
でも、ここも、サンタ・ジュリア同様に、入ってくる人はかなり少なかったです。建物以外は、チケットなしでも入れるせいか、外にいる人は結構多いのですが、チケットを買ってまで入る人は、本当に少ない。地元の人のお散歩比率が高かったんですかねぇ。
わたしとしては、独り占めが好きなので、よかったですが。
さて、この導入ビデオの後、奥の扉が開けられ、見学開始。
いかにも、最近修復されました、という鮮やかなフレスコ画の残る遺跡に、いきなりミンモで、興奮しました。
ローマ遺跡と違和感なさすぎ~!
ここは、これでおしまいなので、本体に進みます。
茶色い部分は、たぶん修復だと思うんですが、よくわかりません。建物は、ほとんど修復ですね。これらの足元に、ずらりとミンモが並んでいます。
柱の間や、外壁に沿って並んでいる、この、修復部分の素材にも通じる茶色の素材の立像が、全部ミンモの作品なんですが、あまりにしっくりと溶け込んでいるので、なんだかもうずっとそこにあったとしか思えないたたずまいとなっています。
一つ一つが、違うスタイル、しぐさ、アイテムもいろいろです。
ロマネスク的に好きだったのが、これ。
後ろ姿に絡みついているのは、どうやら猫的な動物。前に回ると。
狐のエリマキ状態になっていました!
この立像も、わざと自然石のような加工をしているんだと思いますが、まるで自然に朽ちたかのような効果が、おそらく場にしっくりくる理由かと思われます。
本体の中に入ると、どうやらここは、神殿の跡という様子で、祭壇状のものだけが横並びに遺っています。最初の部屋のは、小さめの祭壇。そこに、ミンモの絵画作品。
全体が壮大なためか、この絵画も相当のサイズですが、こじんまりと見えてしまうのが、ちょっとすごいですね。
それにしても、この絵画も、色彩の系統が、もう溶け込んじゃってます。
真ん中にある部屋は、碑文の石板がずらり。祭壇も巨大なものが置かれています。
この祭壇の側から、この神殿前に広がるフォーラムの広場を、ずっと先まで見晴らすことができたはず。壮大な話です。
その先の部屋は、おそらく何も残っていなかったスペースで、町の模型に光を当てて、ビデオで成り立ちを説明するシステムがありました。
が、これは、今一つでした。手間暇をかけて作り出したのでしょうけれど、つまらないというのは、致命的。
神殿を出て、劇場の方へ。
残念ながら、劇場の構造は、かなりダメになっちゃってます。劇場は、ローマのあった地域のあちこちに多く残っていますが、ここのは、かなりダメの方の一つでしょうね。
ずらりと並んだ円盤状のオブジェが、ミンモの作品です。
この作品は、数年前にローマに行ったとき、コロッセオと向かう広場で、別のタイプを見ました。ミラノの美術館前の広場でも、いくつか見たな。いろんなバリエがあります。
かなりでかいので、やはりオープンエアが合いますし、もともとオープンエア用の作品なんだと思います。
もしかして、こうして外に置かれている間に、雨風にさらされて出てくる風合いが、作品の味になっていくというのもあるのかなぁ。
かすかに残された段々の観客席。
古いドゥオモ、ロトンダのところでも言及しましたが、ローマから現代までの二千年で積もるチリは半端なく、中世期からでも、1メートル以上地面のレベルが違うのは、よく見る光景です。しかしブレーシャのチリは、やはりここでもすごい。まぁ、この部分は、チリもあるし、人工的に埋めてしまった部分もあるのでしょうけれどね。
段々席の右手の方は、おそらく、住居等を建てるために、埋め立てして、地面を水平にしたあとなんだと思われます。
そういう場所に、おそらく住居をバンバン立て続けていたはず。
奥の方に見えるのも、すべて一般住宅の建物ですが、おそらく、遺跡の上に立っていると思われます。でも、今更、退去させて、建物を壊して、遺跡を掘りだすことはできないため、既得権として、住居になってしまったという、イタリア特有の事情の結果と思われるのです。
一方で、遺跡内にある、この住居は、廃墟になっていました。
違法建築ってやつですね。こんなのが、自然公園の中や、文化遺産の中、イタリア中あちこちにあるのです。
ここは、考古学公園を整備するうえで、たぶん、撤去となったものと思われます。
ま、それはともかく、全部なくなってしまったとしても、それはそれ。時の流れには逆らえませんもんね。
今でも、町中に、これだけの過去が残っている、それだけでもロマンというのか、余裕というのか、素敵なことです。
ということで、最後はもうめちゃくちゃ走りましたが、ミンモを巡るブレーシャの旅、これで終了です。
本当は、地下鉄の駅に、大きな陶器の作品があるはずだったのですが、探してもなくて、おそらく何らかの事情で、設置できなかっのだと思います。が、説明、一切なし。謎。
ま、そういう姿勢の展覧会という意味では、一貫しているかもね。
ブレーシャ、地味な町ではありますが、中世的には、一度は行くべき土地ということで、改めて、紹介する価値はあったような気がします。ミンモには、よい機会を与えていただきました。
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- 2017/11/13(月) 05:03:18|
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ミンモ・パラディーノOverture Bresciaその7
サンタ・ジュリア美術館Museo Santa Giulia、続きです。
サン・サルバトーレ教会Chiesa di San Salvatoreの、クリプタに入ります。
美しい!ここは、本堂に比べると、かなり往時の雰囲気を残しています。
それにしても、やはり近年、照明技術が向上していて、インパクトのある見せ方のクリプタが増えているように感じます。ただ、本来クリプタが持つべき暗さや陰影がなおざりにされ、若干明るすぎるきらいはあります。ただし、今回は、ミンモがいるせいもあるのかどうか、そこはわかりませんが。
いた!
小鳥に説教するサン・フランチェスコではなく、小鳥についばまれるどなたか。ちょっとチクチク痛い…。
それにしても、なんというロケーション。
クリプタそのものを見に行ったとすると、ちょっと、なにこれ~、となるかもしれませんが、なんせ、他に誰もいませんし、もしかするとこの展示のおかげで超明るいので、それはそれでありだったかな。
実際に、見学に行った教会が、現代アートの展示会場になっていたことは何度かあり、いくら現代アート好きでも、教会が主目的だと、げんなりしますよ。特に、暗闇にされていたりすると、もう泣きたくなりますね。
これは、どちらにとっても幸せな結婚状態の展示と思いました。邪魔にならず、逆に、何かアクセントになっている。ミンモが好きだからなんでしょうけどね。
それにしても、やっぱり痛そう…。
修復、やはり進行中だと思いました。端っこの方とか、以前はかなりごたごた部分があったのですが、その辺が、すっきりきれいになっていたように思います。
本来は、これで順路終了なんですが、実は、ローマ時代のドムスを見逃していました。というわけで、後戻り。
オルタリアの家々Le Domus dell'Ortaglia
ローマ時代の家のいくつかが、そのままの形で発掘展示されているスペースです。
そこに、ミンモが点在。
すごい会場です。アーティストにとっては、やはり挑戦的な企画だろうなぁ、と思いました。あるものだけですごい中に、自分の作品をはめ込んで、お互い殺しあってはいけないわけで。
ここの展示、とてもうまくいっていたと思います。
改めて、あるものを見る目ができるっていうか。
黒と。
そして、白。
男性と女性。対称。非対称。対比。
いろいろ。
この、床面モザイクのモダンさに、改めて、驚かされました。ローマですよ。2千年以上前のデザインですよ。
サンタ・ジュリア、最後は、そういうローマのモザイク。このモダンさは、ある意味、古代と現代をつなげるデザインだと思います。
次は、考古学博物館に向かいます。ちょっと飛ばしますね。
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- 2017/11/12(日) 21:15:32|
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ミンモ・パラディーノOverture Bresciaその6
サンタ・ジュリア美術館Museo Santa Giulia、続きです。
ローマやロマネスクやミンモのカオスをたどりつつ、はっとしたものがありました。
これ。見るなり、え?と思う方、多いのでは。髣髴とするのは、こちら。
ベネチアに行くと、挨拶を欠かさない、この方たち。
ま、こうやって並べると、あ、違うか、と思うんですが、一見、すごく似ていませんか。もっとも、ベネチアのは、ロンゴバルド頃の作品で、サンタ・ジュリアのは、ずっとずっと下った時代、13世紀以降のものですが。
こんな素敵なフレスコも、以前見た記憶はないなぁ、と思いながら見学。
9年もたつと忘れてしまうものも多いですが、この美術館が進化しているのは確実なので、展示の仕方や展示物も、変わっている可能性は大なんです。9年もあると、修復も結構進みますしね。
ちなみにこれは、順路の最後に登場するロンゴバルド時代の教会サン・サルバトーレを、創建後のロマネスク時代に飾っていたフレスコ画です。
で、順路に従って、そのサン・サルバトーレ教会の、まずは二階部分に登ります。
いきなり!
ここは、後代に装飾されたスペースで、全体がキラキラギラギラ装飾に満ち満ちた部屋。まったく好みではないので、スミマセンが、一切写真を撮っていませんでした。
その、装飾過多の壁や天井に見下ろされている、意外に地味な床面に、のびのびと伸びちゃっているミンモの人型。
仰向けになっているとすると、左手にシルクハット、右足に小鳥、左目の上にエスプレッソサイズのコーヒーカップ、右手には、血管のような杉の木のようなモチーフ、そして、右胸の下の方に、鼻。
何ですかねぇ。事件ですかねぇ、笑。
自分の靴を入れて撮ってみた。靴っていうか、思いっきり運動靴。
かなり大きいものってわかりますよね。
上から見ると、これがまた、おもちゃっぽかったりもするね。ヒトの身体の各部分が別々のパートになってるから、組み合わせで変なものが出来たりしそう。
でも、これも見た目は木材だけど、実際のマテリアルは鉄らしいので、動かすのも大変そうだけど。
同じ場所に、ガラス作品もありました。
これは、実際に見てもよくわからなくて、ほしいとも面白いとも思わず、要は好みではなかったです。
さて、この場所から、サン・サルバトーレ本堂全体を眺めることができます。
遺り方が微妙な教会ですが、オリジナルはロンゴバルド時代。これらの柱は、1300年以上の間、この壁を支えてきているんです。すごくないですか。床も壁も内陣も、全部新しくなっちゃっているけど、でも、雰囲気はちゃんと残っていて、すごいと思います。
あ、正面にある、ナポリの横町に干された洗濯物シーツ状態のものは、勿論ミンモ。これは、本当にシーツ的な布で、なんだかなぁ、でした。この場所では、ロンゴバルドの勝ちで、かすんだな。いや、そういうバトルじゃないけれども。
下に降り、本堂に足を踏み入れる前のスペースに、ロンゴバルドの浮彫がたくさん展示されています。
こういうのは本当に好きで、ドキドキワクワクしてしまいます。なんで筋を彫っただけなのに、こんなにかわいいんだろうか。
本堂に入ると、ここは、ミンモ展示のハイライトの一つ。
コロンと。
ほとんどの作品同様、これもタイトルなしなんですが、どうも、聖母に見えてしまいます。それがコロンと、頭部だけ。なんだろう、政治や文化や思想や、そういうすべてを含む時の流れを感じさせるみたいな…。苔やら汚れがとても自然なので、製作後、庭とかに彫っておいて、自然のまま朽ちさせたのかな、と思ったり。
そういう、いろいろと余韻を感じさせる作品です。
一方で、その向かいのスペースに置かれたこちら。
これは何だろう。余韻とは反対の場所にいるっていうか。
借景となっているスペースには、比較的新しい時代のフレスコ画があるんだけど、これも、考えておかれたように感じたな。
実は、二階部分から見下ろしたとき、目を疑ったものがありました。祭壇近くに置かれているこれ。
つい先日、パヴィアの展覧会に展示されていたはずの、このサン・サルバトーレの宝、ロンゴバルドのクジャク浮彫。ブレーシャにこれがなかったら、かなりがっかりするよな、とパヴィアで思ったのですが、さすが、レプリカを用意していたんです。
確かに、そういわれてみれば、ちょっとレジン製っぽい雰囲気もあるけど、見たことがない人が見れば、気付かないかも。よくできたレプリカです。
もうちょっと続きます。
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- 2017/11/12(日) 20:33:54|
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ミンモ・パラディーノOverture Bresciaその5
サンタ・ジュリア美術館Museo Santa Giulia、続きです。
この美術館の目玉、ローマ時代、1世紀のブロンズ製、有翼のヴィットリア像です。
とってもはかなくて美しい姿。でも、割とさりげなく展示されているから、さらりと通り過ぎちゃう感もあり。
この先、ローマのモザイクがずらりと美しく展示されています。
こういう白黒の、デザイン的な床モザイクは、大好きです。今は、趣味の消しゴムハンコの素材としても、大変興味深くて、やたらと撮影してしまいました。
消しゴムハンコについても、一度記事にしたいなぁ、と思うのですが、ロマネスクがたまりにたまってしまって、なかなかそこまではカバーできない今日この頃ですねぇ。
単純にして独創的。ローマのモザイクは、やっぱりすごいです。具象よりも、こういったタイプの方が好きかな。
これなんて、現代にもしっかり通じるデザインですよね。
これは、先日消しゴムハンコで作ってみたデザインです。
自分でデザインをうつして、ハンコを彫ると、ますます、すごいなぁ、と感心します。
さて、モザイクに夢中になって、忘れたころに、ふと目に留まるミンモさん。
小さなエスプレッソサイズのコーヒーカップも、どうやらお気に入りのアイテムらしいです。いろいろな作品に、くっついていました。
それにしても、危ない危ない、これでは、ローマに混じって、通り過ぎてしまうぞ、と注意した途端、まさに見逃しました。
この、真ん中の。友人が気付かなかったら、私は正面にある彫り物に目が行ってしまって、完全に無視状態でした。
木箱の上に、牛と、骸骨が混ざったフィギュア。やはり、お棺をイメージしているんでしょうかね。なんだかいかにも埋葬品的な雰囲気があって、展示の中に溶け込んじゃっていますよ。
だって、このあたり、なんだかどかどかと並んじゃっているんです。展示しようもないよ、こんなにあっちゃ、と言わんばかりの無造作な展示。
ローマの石棺が続きます。
それらの彫り物も、面白かったり愛らしかったりで、本当に目移りする数です。
でも、これはさすがに、目についた!
なんだろう。黒い家。でも、怪しい様子ではなく、人形の家的な、愛らしいものなんです。コーヒーカップや、金平糖のせいもあるのかしら。
きっと、内部へのイメージを喚起する、入り口のせいだと思うんです。
これ、結構大きい細部なんですが、手乗りサイズだったら、ほしい作品だなぁ。
この後は、またガラスケースに入った小物の展示が続くのですが、ロンゴバルドの金細工の十字架のケースに、ずらりと並んだこれもまた、一見は、確実に古代の品物の展示でした。
一つ一つ、デザインが違うツボ状のオブジェなんですが、どの一つをとっても、異常にかわいくて、ほしい~!
ミンモさんの作品は、これまで大物しか見たことがないのですが、こういう小物、大変惹かれます。
現代アートではありますが、ロマネスク・ファンであれば、おそらく好きだと感じる人、多いのではないかと思うんですが、どうでしょうか。
これ、どう見ても、テラコッタでしょう。でも、なんと鉄製。手に取ってみたいものです。
すぐわきに、本当のローマのものがあるから、なんだか笑えるっていうか、面白い展示です。
お、終わらないぞ、これは…。
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- 2017/11/09(木) 06:51:40|
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ミンモ・パラディーノOverture Bresciaその4
サンタ・ジュリア美術館、続きです。
サンタ・マリア・イン・ソライオ教会Chiesa di Santa Maria in Solaioを出ると、またこのような中庭があり、先に進むと、別の回廊に出ます。
ここも、回廊を取り囲むようにして、展示スペースとなっているので、焦ることはないのですが、回廊中庭の真ん中に怪しい姿が見えてしまっては、出ないわけにはいきません。
怪しい姿は、やはりミンモでした!
人が背負っているのは、木にしか見えませんが、これももちろんブロンズの造形です。
おっぱいがあったので、女性のフィギュアに違いありませんが、何とも立派な分厚い背中。どっしりと、母なる大地的な背中ですねぇ。
でも、離れてみる後ろ姿には、何かはかない頼りない空気をまとっている感もあるのが不思議です。
それにしても、借景が素晴らしいです。もうずっと、この場所に佇んでいる人にしか思えないしっくり感。
大きな手や、鳥の巣状に絡まっている枝にくっついている数字フィギュアは、ミンモらしさと言えるアイテム。たぶん。
屋内に戻り、見学を続けます。
古代のものが並んでいる廊下の柱頭にどかん。
左側に置かれている中世の兜、フルフェイスのタイプ、かなり好きなアイテムです。
古代や中世の発掘品と思えないこともない見た目だったりするのですが、よく見ると、いきなり顔が飛び出ていたり、何かしらの遊びがあるんですよね。こういうのがかわいくて、好き。
すぐわきに、エトルリアのかわいらしい発掘品が並んでいると、もう何が何やら、どれがどうやら、わからなくなってきますけれど、ミンモはやっぱりローマじゃなくて、エトルリアやロマネスクの系列にいる。
こうなると、普段はさらりと見るだけの古代のコインなんかも、妙に一所懸命見てしまいます。だって、どこに何が潜んでいるか、わからないし、見逃したくないし。
どうですか。古代のものも、まるで現代アートに見えてきませんか。
そんな展示の中に、いきなり道をふさぐように。
こんな壊れ物をなぜ、とさらりと見過ごしそうになったところで、同行の、現代アート、ほぼ興味なしの友人が、「ミンモじゃ~ん」と指摘してくれましたとさ。
あらら、確かに数字が潜んでたわ~!
その場の展示に、あまりにもしっくりと溶け込んでいたので、もう完全に発掘品かと…。
本物の発掘品たちも、すごいです。
こんなの、掘ればどんどん出てきちゃうタイプのものなんだろうなぁ。
ちなみに、ブレーシャは、規模的にはたいした町じゃないのに、数年前に地下鉄ができました。まぁ、中心部は小さいけれど、産業地帯でもあり、郊外に工場や倉庫がたくさんあるからなんでしょうが。
それにしても、おそらく、地下鉄工事は、さぞや難航したのでは、と想像します。ローマほどではないにせよ、でも、ローマ時代、かなり栄えていたはずなので、掘れば遺跡に突き当たるっていうことは、あったんじゃないかな。
テラコッタの破片シリーズ、さり気に連続展示。これなんかは、ミンモっぽいテイストが勝ってるかな。
数字でしょ。そして、これは手。
そして、また兜類。
一個くらいほしいもんだ、とつい手が伸びたりしてね。
なんか、この日、本当に見学者が少なかったんです。この前に訪ねたロトンダは、かなり混雑していたし、町には地元の人々も繰り出していたのに、なぜかサンタ・ジュリアは超閑散。私は二度目ですが、同行の友人は、複数回来たことがあるけれど、こんなに人がいないのは初めて、と驚いていました。
見学の順路の先々で、係員が、あとをつけてきたり、あからさまに監視しているのが、友人はうっとうしかったようですが、田舎ロマネスクに慣れている私は、独り占め大好きだし、警備員と二人きりとかよくあるので、まったく気にならず。何が幸いするか、わからないもんですね。
この、ガラスケースの展示が秀逸でした。っていうか、俺たち、あほか?の象徴的な。
この、長耳頭部って、ミンモの有名アイテムだと思うのですが、っていうか、そもそもこんなフィギュア、古代にないですよね。よく見たら、脇に手もあるじゃないか。
それなのに、二人して、完全に古代ものと思い込み、私など、あらま、あの長耳フィギュアは、オリジナルじゃなくて、こういうとこからインスピレーションを得たのねぇ、なんて思っちゃって。あほだ~!
わざとこういう展示にしたんでしょうが、どっぷりと遊ばれちゃいました。
こんなペースでやってると、一生終わらなそうだけど、ま、自分的には楽しいのでいいか。
ロマネスク・ファンの皆さん、申し訳ありませんが、時々何か出てくるので、辛抱強くお待ちくださいね~。
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- 2017/11/08(水) 06:36:39|
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ミンモ・パラディーノOverture Bresciaその3
ロトンダの後は、待望のサンタ・ジュリア美術館です。
Museo Santa Giulia
Via Musei 81/b, Brescia
入り口は、住宅に埋もれている感じで、大変地味ですが、この美術館、というか、博物館は、かなりすごい場所なんです。ローマから中世にかけてのお宝がごっそりあり、そういう時代が好きな人は必見。
今回、ミンモのおかげで、このMuseum再訪のチャンスができたことも、嬉しいことです。近いとは言ってもね、なかなか行かないもんです、100キロ離れた町には。
エントランスの様子などは、9年もたっているとほとんど記憶にありませんが、確実に新しくきれいに整備されているはず。もっと古びた昔の博物館的な様子だったと思います、以前来たときは。
現代美術の美術館みたいにすっきり、きれいです。
そして、いきなり、フィアット500があります。これが、もう!
めっちゃくちゃかわいいんですよ。
ただでさえかわいいチンクエチェントに、ミンモ手書きのイラストびっしり、これはたまりません。
いきなり、ワクワクしてきましたね。この展示はナイスです。
チケットを購入して、最初に出会う中庭で、いきなりミンモ!
以前来た時の主な目的は左側に見えるクーポラ状の建物。これは古い教会なんですけどね。あ、ちなみに、この博物館は、ブレーシャの町の中心地、特に古い時代の中心に当たる位置にあり、ローマ時代の邸宅跡、そのあたり及び周辺にできた中世の教会と、時代が下ってからの修道院を転用したものです。
修道院は、おそらく改築付け足しなどなどで、相当広い敷地となっており、こういった中庭も複数あり、構造も複雑。その中全部が博物館になっているので、見学も結構大変です。順路も、意外とわかりにくいんですよ。
で、これは最初に出会う中庭で、でも、いきなり外に出なくても、あとで順路上に外に出られるようになっているのですが、やはりミンモに惹かれて、あえて、早速出てみました。
なんか、すごく頑張って横になっている人でした。
パッと見ると木彫りっぽい。でも近づいてみると、これが、ブロンズなんですね。
材料がわかると、さらに、頑張りが気になります。木だと、軽々感がありますが、ブロンズだと、なんというか、重力に負けまいというプルプル感を感じてしまって。
それでいて、この涼しい顔。
身体の彩色も、なんだかつらそうな色だし、この腕の置き方の辛い感じ。その上、砂利のような突き刺さる地面ですよ。それなのに、達観した表情ですよね~。
うん、やっぱりミンモはいいな、と、やおら、普通の見学コースに戻ります。こういう変則の繰り返しなんですけれど、変則どころか、本来の展示とシンクロしてくるのが、面白さなんだと思います。
いきなり、大好きなロンゴバルド系、どかん!ときます。
これは、数あるロンゴバルドの浮彫の中でも、かなり好きなやつ。細かさはないものの、ロンゴバルドの粋が凝縮したモチーフですよね。
こちらの石碑も、字も含めて、大変好みですねぇ。
まったく記憶になかったので、ちょっと驚いたのが、この聖母子像。
ロンゴバルド時代、9世紀の、漆喰を色付けしたものということですが、図像学的には、とてもビザンチンに思われます。
柱頭や石碑など、好きなものが並んでいますが、これを紹介していると、もうまったくミンモを忘れちゃうし、また、いつまでたっても終わらなくなってしまうので、適当の端折りますね。
でも、このセクションで、もう一つだけ、気になった石碑。
本文の行間に、小さい字の書き込みがあるんですけれど、これは何ですかね?もしかして彫り忘れを後で付け足したのか、と思ったりしたんですが。
でも、結構たくさんあるんです。
碑文については、まったく詳しくないし、そんなにじっくり見たこともなくて、こういうのって、気付いたこともなかったんです。
ちなみに、単語の間のクサビ模様みたいな三角は、おそらく文章の区切りで、点に当たるみたいでした。
サンタ・マリア・イン・ソライオ教会Chiesa di Santa Maria in Solaioに入ります。トップの中庭の、左側に見えていた建物です。
ここは、壁の間に作られた、古い階段を上ると、思わず息をのむような、星が光輝く、濃紺の天井を持つ部屋に出ます。
天井や壁のフレスコ画は14世紀以降のものですが、そこに置かれていたのが、ミンモの作った玉座です。
もう、しっくりしちゃって、ほとんど見逃しそうな作品です。
玉座には、シンプルで、現代的なものですが、本当にかわいらしい椅子ですよ。
背のトップに頭部フィギュアと蛇。
影の様子も、何とも計算されていますね~!
手を置く場所の先っぽに、うにょって出ているのが、やはり蛇の頭です。
玉座として作って作品のようなので、聖書的な寓意に基づいて、あえて蛇なんだと思いますけれど、なんかいいなぁ。
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- 2017/11/07(火) 06:22:22|
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ミンモ・パラディーノOverture Bresciaその2
泊まったら、普通は朝余裕があるもんだけど、ついつい朝っぱらから同行者とおしゃべりしてしまい、豪華な朝食とも相まって、気付いたら、10時過ぎ、食堂にいる最後の客になっていました。
まずは、古いカテドラルから、ミンモ・ツアーの始まりです。
ロマネスク的には、前回来た時にじっくりと見学しているので、サラリ、とのつもりでしたが、以前訪ねたのは、すでに8年前のことなので、多くのディテールは忘れていました。
外壁にしても、こういったところまで、きちんとチェックしたかどうかというと、覚束ないんです。
2009年当時の写真を見ると、こういうのは撮影してないんで、たぶん、気にも留めてなかったんだろうと思います。やはり、8年分、あちこちを訪ね歩いてきた蓄積というのか、そういうものは、どっかであるもんかもね。
地味だけど、レンガによる装飾としては、とてもユニークですよね。好みです。
入場~!
これは覚えています。ここは、円形構造なんですが、かなり径が大きくて、中に入ると、円形感を出す撮影が、ほとんど不可能なんです。無理!という感覚をよく覚えています。
入場してすぐ右手の壁に置かれたこの方も、よく覚えていました。
13世紀のブレーシャ大司教サンタポッロニオさんの浮彫。
その先に、ミンモがいました。
Stabat Matel 2016
キャンバスにいろいろ色を乗っけたり、なんたり、という、ありがちな現代アートですね。スターバト・マーテルってクラシックの楽曲?または、悲しみの聖母という意味になるのかしらん。よくわからないけれど、何か好きな名詞…。
ここに置かれるために制作されたものではないですが、この場所に置くなら、こういう色でしょう、という感じはあります。でもこれは、今回展示された作品の中では、あまり意味を見出せなかった作品です。
というわけで、ミンモはうっちゃって、ドゥオモの見学に集中しました。
クリプタ。かなり白いクリプタです。おそらくオリジナルは、天井のヴォルト部分は、全部フレスコ画が覆われていたと思いますね。今は、一部残されているだけで、残念です。
それにしても、こんなに白くて明るかったかしら?もしかして、前回来てない?とも思った私ですが、過去写真を確認したら、しっかりと見学していました。
ただ、おそらくですが、照明が変わったものと思われますね。
近年、照明に関しては、多くのスポットで進化変革があるように感じています。日本でも、いつのころからか照明アーティストという職業が、それなりの存在感を示すようになってきたと思うのですが、もともと間接照明やライトアップなどを普通に行っていた国だからこそ、なんだろう、遅れている部分もあったように思うんです。それが、私の場合は、訪ねる場所が教会ばかりだから、教会中心のイメージですが、近年、照明に工夫がみられるケースが多いような気がするんですよ。修復に合わせて、照明設備も一新する、みたいな感じ、なのかな。
ここも、その流れで、この明るさは、ヴォルトの漆喰を塗りなおしたのもあるようですが、照明は進化したものと思います。
構造ができたのは8世紀とロンゴバルドの時代です。この柱などは、その当時の名残でしょう。ローマ時代の建造物の再利用かもしれませんが。
多くの柱頭も、同時代のもの、またはローマからの転用品とみられ、中世というよりも古代の雰囲気が漂うクリプタです。後代の改変等、ところどころに見られるのが、ますます古さを強調するような。
それにしても、漆喰白塗りしすぎなのは間違いなし。
上物も、長い時代それぞれに積み重なってきた結果としてある姿でしょう。
周回廊的な部分は、中世時代なのかな、と思いますが、ヴォルトはどうでしょうか。アーチの内側に、一瞬モザイクかと思いきや、よく見ればフレスコ画の名残がありました。
この感じは、中世っぽい、と勝手に思いますので、ここまでは中世の建造物になるのかな。でも、中央部の天井は、後代のものでしょう。オリジナルは木製だったのではないでしょうかね。
それにしても、古いだけあって、かつての地面が、現在の地面に比べると、どうでしょう、地下1.5階分くらい下がっているのには、たまげました。
この階段の上、人がいるところが、現在の町のレベル。
そして、この階段の写真を撮っているレベルが、周回廊みたいになっているレベルですが、本堂のレベルが、そこからさらに、下の階段を降りたところとなります。
やはり8世紀からとなると、これだけチリも積もるということですね。
ラベンナで、確かいくつかの洗礼堂が、同じような古い時代のものだったと思いますが、確かあそこも、かなりレベルが変わっていましたね。でも、ここまではなかったのじゃないか。
一番左端に、現在のレベルと隔てる壁がわかるでしょうか。2メートルでもきかないと思います。ブレーシャ、チリが多かった?
本堂の隅っこに、オリジナルの床モザイクがいくつか残されています。
今は実につまらない床材に覆われてしまっていますが、おそらく、救うに救えない状態の中、わずかこれだけは、ということなんでしょう。すばらしい床だったでしょうに、残念ですね。
オリジナルの入り口も、しっかりと記されていました。
今の入り口の真下の位置です。
周回廊みたいになって、この本来のレベルから一段上がっている構造物も、後代のものかもしれないと思います。どうなんだろう。
はっ、ミンモを巡る旅じゃなくなってるわ~!
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- 2017/11/06(月) 02:12:23|
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ミンモ・パラディーノOverture Bresciaその1
寄り道がひと段落して、本来なら、フランス・ロマネスクに戻るべきではあるのですが、実はこの秋は寄り道満載で、なかなか本道に戻れないことになっています。
というのも、この寄り道も、期限付きのイベント訪問なので、是非紹介しておきたいのです。大好きな現代アート作家さんのイベントだけに、一人でも多くの方が訪ねてくれれば、という気持ちもありまして。
ということで、ロマネスク待ちの方々には申し訳ないのですが、現代アート、再び。ただし、会場がブレーシャですので、ローマ及びロンゴバルド付き、という大変豪華なイベントではあるんですよ。
Mimmo Paladino - Overture, Brescia
6/5/2017-7/1/2018
at Museum of Santa Giuilia, Brixia Archaeological Park, etc.,
ミンモ・パラディーノは、大好きなイタリア出身の現代アートの巨匠で、これまでもミラノやローマでのインスタレーションや、ベネチア・ビエンナーレへの出展で、いくつかの作品は見ていますが、ブレーシャという町とコラボした、このような大規模な企画は、想像もつかないし、ワクワクしていました。
と、いいながら、気付いてからずいぶんと時間がたってしまい、長い会期も、どちらかと言えばお尻に近いこんな時期の訪問になってしまいました。
ミラノからブレーシャは、車でもローカル列車でも、約1時間強の道のりで、楽勝で日帰りできる距離なのですが、今回は諸事情あり、仕事を終えてから、夜入り、宿泊して翌日見学、という変則日程でした。
というわけで、夜景から開始です。
鉄道駅から歩いてアクセスした、最初のスポットは、ヴィットリア広場Piazza della Vittoriaです。
あ、いた~、かわいい~!
この人の作品は、なんというか、一歩間違えると陳腐な感じっていうか、具象的過ぎてダサくなるかも的な部分があるっていうか、要は、現代アートにありがちなわかりにくさがないと思うんです。わたし的には、ロマネスクにも通じるような、愛らしいアイテムや遊びがあるところが好き。変に大上段に構えていない感じも好き。
でかいヘルメット。置き場所も、作家本人がサーベイして決めたものだと思います。それも、この企画、作家さんは、無償で作品を提供して、必要経費もほとんどが寄付やスポンサーから献金で賄われて、ブレーシャ市は、数十万ユーロしか使ってないという記事を読みました。確かに、フライヤーとかも、なんかしょぼいものがあるだけで、メイン会場となっている美術館や博物館でも、協賛のパンフレットや展覧会本が置いてなかったんですよね。
コストをかけずにイベントを行うのは、間違ってはいないと思うけれど、おいおい、ちょっと節約しすぎじゃないのか?とは、思いました。
ブレーシャでは、二年ごとに、大規模なアート・イベントを実施していて、考えたら、クリストのイベントが、二年前でした。クリストで、びっくりするくらい多くの人が集まったため、味を占めて、現代アート・イベントに走り出したのか、と思ったのですが、実は以前からやっているということでした。そういえば、行きたいなと思いつつ行かなかった展覧会が、時々あったようにも思いますが、もしかすると、そういう一環にある展覧会だったのかもね。
5月のオープンから、すでに半年以上たっているせいか、完全に町のコンテクストに溶け込んでいて、完全に、常にそこにあるもの、というたたずまいとなっています。こうなると、もはや、だれ一人、これらが現代アートの作品であること、という認識はしなくなりますよね。
「現代アートって、よくわからないし抽象は苦手」という人って、かなり多いと思うんだけど、こういう形でアプローチしているこれが、実は現代アートだし、ここにもあそこにも、アートって生活に入り込んでるんだよ、という事実を、そういう人は認識してないんですよね。
これらは、テンポラリーな展示だけど、路上に、町中に、パーマネントで展示されているアートはいくらもありますよね。でも、ああいうのって、そこにあるもの、程度の認識しかされてないんだろうなぁ。
この、数学的にはなんという立体なのか知りませんが、金平糖状態の物体。下に水が張ってあって、とても美しいたたずまいとなっています。馬の背にも乗っていますが、ここに置かれたものには、ちょこんと、人の頭がくっついています。
こういう遊びが、ちょこちょこみられるんですが、この頭部なんて、実は、夢中で撮影しているときは、見てなかったです…。時間がなくて、慌ててたしな。
ところでブレーシャという町。
実は、仕事のことで通過することは大変多く、駅には何度も降り立っているのですが、実際に町を訪ねたのは、2009年に遡ります。その時は、ロマネスク目的でしたから、例によって、目的だけを目指して、最短距離を駆け抜ける状態でした。
今回、比較的ゆっくりと町を歩くことができて、初めて町の成り立ちとか、たたずまいというものがわかったような気がしました。
例えば、町の一角が丘になっていて、城砦が残っていることなど、気付いてもいなかったんです。
ローマ時代から反映し、中世にも城壁を持つ町として繁栄が続き、現在まで来ている町。ミラノやヴェローナなど、大きな都市国家がひしめいている一角で、ちゃんと生きながらえてきていて、今でも、産業的に重要な町でありながら、でも、中心部は、当時とほとんど変わらず、という規模を維持しているあたり、一貫性のある町という印象です。
ただ、そういう性質の町であるためなのか、ちょっと閉鎖的な雰囲気、というものを感じました。
ミラノでは、そういうものがないし、そういうものの少ない環境にいるため、差別や区別というものに対して、もしかすると昔より繊細になってるかもね。
駆け足で、紹介して行きます。
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- 2017/11/05(日) 21:08:06|
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ロンゴバルド・フューチャーのパヴィア散歩、その9
パヴィアに来たら、絶対に訪ねるべき教会は、前回までに記事にしたサン・ミケーレBasilica di San Micheleに加えて、もう一つ。
サン・ピエトロ・イン・チエルドーロ教会Basilica di San Pietro in Ciel d'oroです。
黄金の空に浮かぶサンピエトロ教会、という、とても詩的で美しい名前を持つ教会です。
ここもまた、起源の古い教会で、この教会にあった装飾的な彫り物の多くが、今は、市営博物館に保管されています。もちろん、ファサードの彫り物など、外せないものは、ちゃんと現場に残されています。
ファサードは、レンガを使っている点を別にすれば、構造的には、サン・ミケーレと同じスタイルとなっています。だまし回廊と、たくさん開けられた開口部、そして、三身廊を反映しない、連続山型など。
扉周りの彫り物満載状態も、サン・ミケーレと同じ傾向です。そして、同じようなモチーフが見られます。
同じ町にある同時代の教会では、同じモチーフが使われているケースが、結構あるように思います。
でも、モチーフは似ていても、やはり手は違うように思われますので、石工さんは違う人と考えられますね。時代がずれている可能性もあります。真似なのか、同じ町だから、同じように、という統一感を優先したのか。
発注者は、それぞれ違うと思いますので、発注者の感覚としては、やはり他と同じ彫り物は避けたいと思うのですが、どうなんでしょうか。
なんとなくですが、サン・ミケーレよりは、時代が下るのではないか、というゴシック臭を感じるので、もしかすると、製作年に相当の差があるのかも。とすると、単純に懐古的な感じで、トレースしたのかな。
ここも、側柱の浮彫は、かなり行っちゃってます。
溶けてるっていうのが、ピッタリですね。組紐モチーフが、溶けて土台との段差もわずかで、穴がぽつぽつ、みたいな。でも、モチーフが古いので、やはりロンゴバルド起源の彫り物のようです。
ここでうれしいのは、アーキボルトの彫り物が、よく残っていること。
石が違うのでしょうか、蔓の中の動物たちも、生き生きと元気です。
動物フィギュアの連続ガジガジは、大好きなモチーフです。ガジガジしてますよ~。
そして、実に様々なフィギュアが、取り込まれていて、宝探しの楽しみがありますね。もしかするとサムソンかもしれないけど、金太郎的な子とか、どう見てもETだろう、という子とか。
柱頭の彫り物より、ここの部分の方が、石工さんの遊び心満載という感じで、楽しいです。
内部に入ると、全体の雰囲気は、かなり新しくすっきり、明るくて、ちょっとロマネスク臭が薄いです(実際は、もうちょっと薄暗いですが、撮影すると、変わりますね)。
サン・ミケーレに比べると、天上も低く、小ぶりです。
でも、柱頭の面白さは、こちらもなかなかです。
ケンタウロスがいて、グリフォンが他の動物をガジガジしています。
こちらは悪魔くんかな。それにしても、ほんのわずかな余白も無駄にしないこの石工さんの表現力と技術、なかなかです。
こちらも、ガジガジ系。
まるでバラのような植物モチーフの連続技も、なんだかすごいです。かなり粘着質な石工さんかも。
いろんなモチーフ全体が、あとの時代のものになってしまっている内陣部分ですが、こんなもんもありました。
ほんの小さなサイズのモザイクですが、これがあるということは、この教会でも、かつてはサン・ミケーレ同様、内陣部分はモザイクで覆われていたのではないでしょうか。
右後陣に、その証拠ともいえるモザイクがあります。
保存状態はよくない上、かなり小さなサイズしか残っていないのですが、ロマネスク時代のモザイクです。いかにものヘタウマが、いかにもロマネスク時代ですねぇ。サン・ミケーレの、完成されたモチーフ、技術からは、かなり見劣りしますけれど、テッセラはかなり細かくて、頑張ったな、というのは、感じられます、笑。
なにより、間抜けな表情の動物たちが、かわいい。
カタルーニャのジローナにあるタペストリーの動物たちを髣髴とさせるフィギュアたちですね。
というわけで、若干駆け足になってしまいましたが、久しぶりにパヴィア、堪能しました。展覧会のおかげです。
実は先日、別目的でブレーシャを、これまた久しぶりに訪ねたのですが、考えたら、あそこもロンゴバルドの町で、一部、ロンゴバルドに再会してきました。そちらも、主目的が期限付きの件なので、紹介していきたいと思います。
ではどうぞ、チャンスがあったら、パヴィア、訪ねてみてくださいね。
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- 2017/11/04(土) 03:16:33|
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ロンゴバルド・フューチャーのパヴィア散歩、その8
サン・ミケーレ聖堂Basilica di San Michele、続きとなります。
ファサードをはじめとする外観装飾も、改めておさらいです。
本当に、たくさんの彫り物があるのですが、残念ながら、多くが摩耗してしまっています。オリジナルそのままに残っていたら、ごてごて感があるくらいに、すごいファサードだったかもしれません。建築スタイルも、装飾性が高いので、今、崩れてしまって、なんとなくしかわからなくなっている彫り物、それはそれで、味になっているかも。
実は、100年ほど前までは、もっとずっとたくさんのものが、残っていたようなんです。崩落や、盗難などで、どんどんすっきりしちゃったものと思われます。
それにしても、このファサード、通常のロマネスクスタイルとは、ちょっと違っていますよね。山型のトップが一つで、とても平面的な。普通は、三つの扉の両脇の部分は、ちょっと下げて作るもんですね。
そのスタイルよりも、回廊装飾の継続性を好んだのでしょうかね。
中央部に、開口部をたくさん置くのも、変わっています。これがあるから、平面性が和らぐ感じもありますね。
相当いろいろとなくなってはいますが、装飾性は健在です。中央扉の周りは、込み入った植物文様初め、びっしり彫り物。
教会が捧げられているサン・ミケーレさんも、翼にみっちりと装飾的な彫りこみがあります。若干再建臭いですが。
個人的には、その足元にあるアーキボルト装飾の摩耗ぶりが残念です。動物モチーフで、かなり楽しい彫り物だということは想像できますが、傷みが激しい。
柱頭の方は、まぁまぁです。ここも、再建は混じっているようですが、でも、オリジナルをうまく再現しているものと思います。
サムソンらしきフィギュア、ここでもかっこいいですね。
右側の扉周りも同様に、びっしりです。でも、側柱の彫りこみが、摩耗しているのが、遠目にもわかります。扉上部の壁につけられた彫り物も、100年前の写真だと、かなりはっきりとした様子なのに、今では、溶けちゃってますよね。酸性雨とか、そういった公害の影響もあるのだと想像します。
パヴィアは、ロマネスクを回りだした超初期に訪ねた土地の一つです。当時は、どこで何を見たらよいのかすら、よくわからずに、なんとなく探し当てた場所を頼りに、芋づる式で情報を得て、次に向かう、といったような回り方をしていたので、系統だった知識も何もなく、立ち向かっていました。
何をどう見るか、ということも、背景にある歴史、特に、最初に来た頃は、ロンゴバルドについての知識など、ほとんどなかったと思います。
そういう中で見た、この柱頭たちの印象は、強烈で、その後、何度も来て、何度も見ているせいもありますが、決して忘れることはありません。
一つ一つ、オリジナリティが高く、かわいらしくはないのですが、インパクトがありますね。
南側に回ります。今回発見したフレスコ画のある翼廊の方です。
こちらにも、昔は開いていたであろう扉があります。
ここはまた、ファサード側よりさらに傷みが激しいようですが、装飾性は同様です。
アーキトレーブ(ラント―/リンテル、というのですね。最近覚えました)に、アーモンドの中のキリストに寄り添うパオロとピエトロがいました。
私はここにいます!的な駆け寄り図像が、愛らしいです。
南翼廊の、このつけ柱の迫力!
以前にも記していますが、私、つけ柱好きなんで、こういうのは、ぐっと来ます。また、朽ちた半円柱というのも、よいですわ~。
つけ柱フェチだと、この後陣も絶対に外せません。
ただし、後陣にアクセスするには、南側ではなく、北側に回る必要があります。南は、ここまでは柵越しに見ることができますが、この先は家並みに遮られてしまうのです。
また、ファサードを横切って、北側に行くと、なんと、こちらにも、扉があるんですよ。
こっち側は、翼廊のところに扉がある構造となっています。
前の広場にはカフェが出ていて、ここからだと、これがファサードであってもおかしくない立派さですよね。いかに、大きくて立派な、費用も掛かったに違いない建造物かということがわかります。
この扉を通り過ぎると、左側の建物の中庭に入れるようになっていて、そこから、後陣にアクセスできますよ。本当は、個人の家で、侵入禁止なのかもしれませんが、いつも入ってしまいます。
やっぱりヒトの家っぽい。猫が二匹、まったりとしていました。
帰り際に、北翼廊の扉もチェックして。
ここもまた装飾過多的な扉ですが、他とちょっと違うのは、大胆な大きさの、きっぱりとした動物フィギュアが、ドン、と柱に置かれていることでしょうか。
こういうタイプは、割と目にするものですが、ここでは、他の装飾から完全に浮いている様子があるので、目につきます。
というわけで、ちょっと駆け足ですが、サン・ミケーレ再訪でした。まだ行かれていない方には、是非一度は行っていただいて、損のない教会です。
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- 2017/11/03(金) 03:16:32|
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