フィギュア・スケート世界選手権(ミラノ)
前回書いたように、試合観戦は、トリノで開催された世界選手権以来。もっと前かと思っていましたが、2010年、8年前のことなんですね。 当時は、フィギュアスケートをライブで観戦する、という発想がなくて、滑り込みでチケットを買ったため、リンクからは果てしなく遠いアルプス席のような端っこでの観戦でした。 でも、今思うと、滑り込みでも席が買えたし、今ほど、日本からのお客さんもいなくて、もっとずっとアットホームな感じでした。
それが今や、世界中のどの大会でも、日本人や日本企業のスポンサーなしでは語れなくなっているので、フィギュアの世界では、この8年、いや、おそらくもっと前から熱くフォローしているフィギュアファンにとっては、隔世の感があることでしょう。
女子フリーで、最初に登場した日本人は、樋口新葉選手。 いきなり繰り広げられた日の丸の羅列に、一瞬絶句しました。
リンクに一番近い最前列のほとんどが、日本人のファンに占拠されていて、リンクをぐるりと取り巻く日の丸。そして、リンクに面しては、日本人向けに日本語で書かれたスポンサーのロゴ。 すでに、この世界では当たり前の光景なのでしょうが、なんせライブ観戦8年ぶりの私には目新しく、たまげました。周囲のイタリア人の多くも、ざわついていました。 テレビだと、選手がリンクに登場すると、選手にカメラが行きますから、こういう風景って、見えないんですよね。
この、かぶりつきの席は、会期中通しで全試合観戦できるパッケージ・チケットでしか買えないことになっています。もちろん、地元で買う人もいるのでしょうが、普通に生活している以上、1週間通しで観戦できる人は限られますから、ほとんどが、海外発の観戦パッケージ旅行のために、買い占められるのでしょう。海外初と言っても、ほとんどは日本でしょうね。 シングル・チケットの発売は11月に入ってからで、発売開始当日に購入しても、最前列で9列目でした。 三つの試合を見ましたが、同じような顔が周囲に散見されたので、多くの人が、同じようなタイミングで買っていたのでしょう。
それにしても、日本人の排他的な様子は、ちょっと気になりました。 男子フリーは、朝10時からでしたが、9時過ぎに入場すると、最後の組の練習時間でした。 最前列の日本人の多くは、見事にずらりと席についています。それ以外の場所は、ガラガラですけどね。 そして、黙々と練習風景を動画に撮影している人がほとんど。 他の観客に混じって、最前列まで降りて、宇野昌磨選手を撮影しようとしたら、最前列に座って、撮影している日本人の女性に、まるで犬猫を追い出すような動作をされてしまいました。それも、マジ、怒り顔。 怖かったですね~! その時、その場所にいることは、禁止されていることではないはずなのに、「VIP席の私の撮影を邪魔するとは許せん!」という無言の圧力。 みんな、楽しく応援に来ているのに、何を殺伐と…。怖いので、黙って引き下がりましたけれど、なんですかね~。
なんかもっとこう、楽しく、選手も頑張ってるんだから、みんなで頑張って応援しよう!みたいなムードになれないもんでしょうかね。観客がすさんでどうする?と思うんですけれど。
日本人以外にも、在住、旅行者を問わず、多国籍な観客でしたが、誰もがもっと応援を楽しむ的な様子だったと思うんですけど。
フランスのかわいいベレーのおばさんとか、下の写真の人たちなんて、英語をしゃべっていたのでイタリア人ではなかったのですが、いろんな国の旗を持っていて、どの旗を広げる時も、応援を楽しんでいる様子でした。どっちも毎回ご近所さんでした。
男子フリーのときのお隣さんは、スペイン人だったのですが、なんとミーシャの大ファンで、巨大垂れ幕を広げて、私の視界を遮ってくれたんですが、笑、そのためにカメラが来て、なんと全世界放映のテレビ出演しちゃいました!
ミーシャの演技中の動画にも、ばっちり写ってしまいましたよ。いい記念になります。
こういう熱い応援ならいいんですけれど、自分が独占的な熱さは、ちょっと苦手です。
わたしなんて、本当にミーハーなんで、選手よりも、こっちにキャー、なんて言っちゃう口なんで…。
ランビ様。王子様タイプのデニス君とのキス・アンド・クライ。さすがランビ・コーチ、躍らせますよね。
なんて、ミーハーぶりなんですが、今回、フィギュアスケートの観戦における志向、とでも言ったことを考えてしまいました。 というのは、女子フリーのとき、お隣にいたイタリア人が、おそらく何らかの形でフィギュアにかかわっている男性だったんです。あの衣装はほしいわね、なんて話している、知り合いらしい若い女の子たちも近くにいたので、ちょっとしたスケート教室のコーチとか、そういう人ではないかと思われました。
彼、演技観戦中、真剣そのもので、素人目にはうまく降りたようにしか見えないジャンプでも、「残念」とか、逆に、「完璧だ」とかつぶやき続けていました。カロの演技のあとに話して、彼がエキスパートであることがわかったんですが(最初のジャンプは回転不足で、その次は云々、と、流れるように解説してくれた)、やっている人とか、競技をよく知っている人は、もしかして、そういう目で見てしまうのか!ということに気付いたんです。
そんなの当たり前だろう?と言われてしまいますかね。
でも、たとえ、回転不足でも、美しいものは美しい。演技全体を通した振り付け、表現力が素晴らしければ、満足できるときもあると思うんです。もちろん、回転不足では、点が伸びないわけですが。 でも、彼の観戦態度、というのか、志向というのか、それはもう審査員的な見方なんですね。そうなっちゃうんだったら、ちょっと寂しい。
どうせ、回転数どころか、ジャンプの見分けすら、一生できないと思うし、負け惜しみになっちゃうかもだけど、審査は審査員に任せて、私はやっぱりミーハー志向でいいな、って思いました。
ただ同時に、フィギュアスケートという「スポーツ」の特異さ、というのは、改めて感じました。 ジャンプは、四回転以上は行かないと思うし、行ってほしくないと思うし、美しさの観点から行くと、三回転の方が絶対に美しいし、個人的には、フリー中の四回転は2個まで、とか、そういう制限をしてほしいくらいです。 スポーツとしての競い合いがなくなるのはつまらないけれど、今回のネーサン・チェンのように、四回転が決まれば、とんでもない点が出る、というルールは、なんか、納得しかねます。フィギュアスケートの本質的な部分が、抜け落ちているような。 それだったら、ジャンプだけの部門を作ればいいのでは、と思ってしまいます。昔、コンパルソリーがあったように。
今回、女子で優勝したオズモンド選手。ご近所さんのエキスパートによれば、想像通りでしたが、すべてのエレメントが完璧であると。だけれども、全体としての面白みはなくて、わたし的には、女版パトリック・チャン、と思いました。 彼らのようなタイプが、点を伸ばすのは、今回、よくわかりましたが、みんながチャンやオズモンドになったら、きっとこのスポーツはつまらなくなります。
そういった意味で、フィギュアスケートの本質を唯一守っているのが、アイスダンスだと思うのですが、そこにも、カナダ系技術完璧志向が入り込みつつあり…。アイスダンスまで、技術中心になってしまったら、おしまいです。 やっぱり、北米系が、そういう志向が強いんですかねぇ。日本人は、絶対そうはならないし、欧州系も、やはりしっとりプログラムで見せる志向が強いですよね。
というようなことを、つらつらと考えていました。 とにかく、生はいい。 ライブで見たからこそ分かったことが、たくさんあるように思います。 例えば、衣装の色にしても、テレビ写りって、結構違うようです。 それに何より、静かな音楽の時に聞こえるエッジの音って、ゾクゾクします。選手がノリノリのときは、身体から何かが発散しているのが目に見えるようだし、逆に疲れてきた時の重力も、視覚化される感じ。 下位選手とトップ選手の差が、そんなところに見え隠れするんですね。
多くの選手について、今後の進退がはっきりしないですが、まだまだライブで見てみたい人たち、たくさんいますから、どうぞ、また次の機会がありますように、と祈るばかりです。
では、次回からは、通常のロマネスク営業に戻ります。お付き合い、ありがとうございました。
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2018/03/27(火) 05:45:58 |
ミラノ徒然
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またまた寄り道で恐縮です。 再開したばかりで停滞していたのは、ミラノで開催された、フィギュア・スケートの、世界選手権観戦のためでした。
ジャンプの区別もつかないレベルなものですから、恥ずかしい限りですが、フィギュア、好きなんですよね。このブログでも時々思い出したように、「実は好きなんです」レベルの記事を書いていますけれど、そういう、かなりミーハーなレベルで、細く長く、見ています。だから、ミラノで、世界選手権となると、やはり押さえとかないと、っていうレベルのミーハー度はあるんですよ。
仕事的にも年度末なので、お休みを取ってまで、というのはなかったのですが、お休みを取らなくても観戦できる、金曜日の午後から土曜日、どっぷりとつかってきました。
今年は冬季オリンピックがありましたから、チケットを手配するときは、実際に誰が来てくれるのかは賭け、みたいなところがありました。それでも、羽生結弦選手やハビエル・フェルナンデス選手を期待して男子フリー、応援するカロリーナ・コストナーの女子フリー、そして、アンナ・カッペリーニとルカ・ラ・ノッテのアイスダンスのフリーのチケットを、シングル・チケット発売と同時にゲット。 ところが、オリンピックを終えて、期待していたゆづ、さらにはハビエルまでも来ないことになり、若干テンションが下がったり。
でも、カロリーナはいるし、アンナはいるし、やっぱり、当日が近づくにつれ、徐々に気持ちは盛り上がってきました。そんな中、カロリーナが、ショート・プログラムでトップ発進、なんていう現実にも後押しされて、徐々に気持ちは盛り上がりました。
でね、結果から言えば、号泣状態ですよ~!
泣けたのは、まずは、カロリーナ。 やっぱりこの人は、アートだ~!
今回、ショートが神演技だったと思うのですが、フリーは、ジャンプのほとんどで回転不足を取られたり、点が伸びなかったのです。それでも、フリーのプログラム、「牧神の午後」の芸術的な美しさは、まさに、フィギュアスケートのアーティスティックな側面を体現する、素晴らしいものだったと思います。
この世界選手権で引退か、と取りざたされている現状で、彼女をトリノの惨敗時代から見ている人の誰もが、ここに至るまでの彼女の道筋に思いを馳せないわけにはいかず、それだけで、もう涙目になっちゃうんですよねぇ。 トリノの頃の彼女は、「強化費とか使って海外で練習とかしているくせに、この程度しかできないのか」的なバッシングされて、でも、それにひるまず、「今に見ていろ、私は負けない」的な激しい発言をしたんですよね、まだ、下手だったイタリア語で!すっごく印象的で、この人はすごい!絶対有言実行タイプだろうな、と、すごく楽しみに思ったんですよ。きっと、他の多く人も、そうだったんじゃないかと思います。
そして、本当に、その通りになりました。カロは、今は国民的なレジェンド。世界に誇るアイスリンクの女王となりました。
ショートで神演技をしたわけですが、フリーでは、残念ながら、回転不足など、テクニカル部分の完成度が足りずに、点を伸ばせませんでした。 それでも、ライブで見る彼女の美しさは、常に半端なく、ただ、そこで滑っている彼女を見ているだけの喜び、幸せ。これは、この稀有なスポーツをフォローしている人だけが知る感覚かもしれません。
もう、この時点で、お点はどうでもよくなります。 彼女が、現役を終えた時、どうするのかは知りませんが、できることなら、ずっとカロ本人を支えたローリー・ニコルズのような、カロ本人が目指している美を追求するような、振付家になってほしい、というのが、個人的な望みですねぇ。 フィギュアスケートの場合の振付が難しいのは、自分が目指す世界観を共有できる選手に出会わないと、振り付けが生きないであろう、ということですね。ということは、スケートのコーチもしないとダメかもねぇ。
今回、自分でもちょっとびっくりしたのが、アイスダンスで、もしかして今回引退かも、というイタリアのカップル、アンナ・カッペリーニとルカ・ラ・ノッテの演技に、カロのとき以上に、泣けてしまったことです。
彼らのストーリーは長くて、すでに、過去に、世界選手権金メダルを取っていたりもするのですが、とにかく氷上にドラマを作り出す表現力はピカいちだと思うんです。
そういう二人が、今シーズン選んだのが、ロベルト・ベニーニの映画、La Vita e' Bella (Life is beautiful)。映画の世界観を、このフリー演技の短い時間に凝縮して、見事なまでに表した振り付けだったと思います。 オリンピックでは、技術的なミスがあり、点が伸びなかったのですが、今回は、とにかく完璧な演技で、テクニカル的にも、おそらく文句なし。その上に、この確固たる世界観を表した演技力…。 映画の美しい音楽にも誘われて、観戦後、涙がこぼれてしょうがなかったです。 だけど、残念ながら、4位に終わりました。
3位との差は、なんと、0.27。テクニカルの詳細がわからない私には、何も言えませんが、正直、納得できない結果ではありました。
でも、彼女らの気持ちは、演技にしっかりと出ていて、観客の多くにもしっかりと伝わって、もうそれでいいんだ、という選手本人たちの気持ち。それでいいんですね。
もひとつ見たのは、男子フリーですが、ここまで転倒の嵐という大会もないですね。 日本人的には、ピンチヒッターで出場した友野選手の検討に、ただただ、嬉しく感動いたしました。
大健闘ですよね。 今後が、大いに期待されます。
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2018/03/26(月) 06:33:47 |
ミラノ徒然
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2017.04.プーリアの洞窟教会巡り、その8
モットラで、想定を軽く上回る充実の洞窟教会ツアーを、無事コンプリートして、向かったのは、マテラです。 マテラは、いわずと知れた世界遺産の町。比較的最近、ハリウッド歴史大作が、この町を舞台に撮影されたりして、その知名度は世界レベルで上昇するばかり。 実は、過去に一度だけ訪れた時は、イタリアレベルの観光地としての知名度は、すでに十分あったものの、それでも、観光地化はさほどしておらず、到着してからホテルを探したように記憶しています。もう二十数年前のことですから、イタリア、特に南部では、観光地と言っても、その程度でした。 当時は、教会なども、まったく整備されておらず、荒れるままの教会が、あちこちにあって、廃墟を訪ねるような状態で訪ねた記憶があります。
しかし今回は、一泊目をマテラ泊としたため、ホテル探しの段階で、これはすごいことになっているらしい、という予想がつきました。というのも、ホテルの数が半端なく多い。そして、イースター時期でもあることから、相当早くに予約をしたのですが、手ごろなホテルのほとんどは、すでに満杯状態だったからです。
結局、シングルとしては若干高めだったのですが、旧市街のすぐ外にある宿を押さえましたが、これが、到着時、ちょっとしたトラブルになりました。 行って始めてわかったのですが、そこ、ホテルではなくて貸し部屋だったんですよねぇ。
今や、エアB&Bをはじめとして、民泊的な宿がたくさんあり、予約システムもどんどん良くなってきていますが、そういう宿は、カギの受け渡しの問題などがあるので、一泊だけなどの短期に関しては、私はいまだにホテル派なんです。でも、始末の悪いことに、ホテルと思い込んで予約すると、そういう民泊的な宿、ということが、往々にしてあります。今は、最初から分かるようにしている宿も多いのですが、このときの宿は、Booking.com上では、あたかもホテルのようなプレゼンテーションだったので、完全にホテルだと思い込んでいました。
モットラでのガイドツアーが、予定よりもかなり遅くなり、ホテルに到着したのは、確か19時前後。まずは、宿の場所がわからずに、同じ道を何回もぐるぐるしてしまいました。 なんせホテルと思い込んでいますから、それらしい看板を探していたわけで、見つかるわけもありません。 で、これはもしや、と思い、番地のところをよく見て、貸し部屋であることがわかった次第です。
予定が予定通りに進めば、こういう問題もないのですが、修行旅の場合、必ずしもそういうわけにいかないことも多く、だから、ホテルを好むのです。到着時間がはっきりしないと、お互い困ったことになります。
オーナーさんに電話すると、開口一番、「今日は朝から何度も電話しているのに、なぜ出なかったんだ?」と文句を言われる始末。疲れていたこともあり、正直若干切れました、私。こうなると、イタリア人より始末が悪い自己主張人間になるのは、さすがイタリア在住二十数年の賜物です。 確かに、ガイドツアーの最中も、電話が鳴っているな、と気付いたこともあったのですが、真剣に修行中に、電話に出るなど、私には決してできませんから、何度か無視したのは、その通りなんですが、しかし、予約からこの日まで、二か月くらいあったんだからよ、その間にメールでも何でもよこせよ?と、思いませんか?
そうは言いながら、今すぐカギを持った人を送る、ということで決着しましたが、最初の電話からは、30分くらい待たされたように思います。 カギを持ってきた女性も、開口一番、「ほらほら、電話の履歴、見て、ちゃんと電話してるでしょ」とかいうんで、やっと落ち着いた気持ちがまた切れそうになりながらも、なんとか、部屋に収まった、という顛末でした。
そもそも、最初の時点から、ホテルではない、という事実を明確にしてさえくれれば、問題はなかったんですが、どうも、ホテルではない、ということを隠そうとするオーナーさんもいるようなんですよね。なんでだろう。サービスが劣ると思われるのが嫌なのかな。
このお部屋、ロケーションもいいし、部屋は生活で美しいし、小さなキッチン突き出し、朝食はないものの、部屋に、ビスケットや電気ポットが備え付けてあって、自分で軽い朝食が取れるようになっているし、カップルだったらお値段も安くて、お勧めと言えます。だから、「ホテルじゃないけどいい部屋である」、と自信をもって、売ればいいだけのことなんだけどなぁ。 ただ、シングル料金はなかったし、シングルだとわかってもディスカウントもしてくれないので、シングルにとっては、高めです(一部屋65ユーロ、駐車場無料)。
Gattini 33 Via Gattini 33, Matera tel +39-3483252175
大騒ぎしましたが、部屋に収まってから、レストランを尋ねると、すっごくよい店を紹介してくれましたので、やっぱりいい人たちじゃん、と思いましたよ。 いい店と言っても、ホテルの並びなんですけれどね。
Gianni's Braceria Via Gattini 33, Matera
まだお店が開いていても不思議ではない時間ではあったので、外から見えた中の様子は、完全なお肉屋さん。そうしたら、奥が炭火焼きのレストランになっているから、というんです。 ろくなお昼を食べないまま、密度の濃いガイドツアーをしてきた我々は、かなり飢餓感を感じており、まさに渡りに船、という状況で、迷うこともなく、このお店に決めました。
内部は、ざっかけない食堂、というイメージで、およそ世界的観光地のレストランというイメージは、かけらもない店です。でも、観光地には縁のない我らロマネスク病の人間にとっては、そんなことは全く気にならず、この陳列された肉を見れば、おいしいことは保証されているも同然だったので、大喜びでした。
南イタリアの太陽を浴びたミニトマトのブルスケッタ。
プーリアは、パンもおいしい土地です。それを炭火焼きして、にんにくをすり込んでオリーブオイルたらし。それだけでごちそうです。 野菜たちも、ただ焼いて、それだけで幸せ。
お供のワインは、カラフで供された、冷たい赤。これまたお肉にピッタリで、がぶがぶやるのにぴったりの軽い赤で、完璧。 そして、メインのお肉は、お任せで。
同行者とは、久しぶりの再会だったにも関わらず、ブリンディジの空港で会って以来、修行に突入してしまったので、ここで爆発的におしゃべりとなり、すごく楽しい夕べとなりました。 地元食堂という感じで、入ってくるお客さんも、独り者の労働者風ばかりで、本当に気の置けないよい店でした。自分たちが、本当に世界遺産の観光地にいるのか、ということをすっかり忘れるようなひと時。
食事後に、旧市街までは10分足らずということだったので、腹ごなしに散歩に向かいました。
旧市街に近づくにつれ、すごい人混みで、街中は、もはやお祭りか?というような人出で、そこで、おお、世界遺産の観光地にいるのだ、と改めて実感いたしました、笑。
気持ちの良い春先の宵ですから、地元の人も多数。同時に、観光客も多数で、とにかく原宿の竹下通りに匹敵する人混みでしたよ。
とはいえ、一歩裏道をのぞくと、ひっそりとした道が、続いています。
昔は、こんな道を見たら、どこまでも進みたくなっちゃいましたけれど…。 そして、建物の隙間からのぞくと、サッシがちらりと見えたり。
なかなかに美しく。 以前訪ねた時は、こんな風な美しいライトアップなんかはなかったよな、と思います。もちろん、夜、これほどの人があふれていることなどはありませんでした。 まぁ、二十年以上もたてば、変わりますよね。良くも悪くも。
というわけで、再開の足慣らしに、世界遺産でもあることから、観光地の紹介となりました。世界遺産化、観光地化のおかげで、発掘整備された洞窟教会の見学が、この町に来た最大の目的ですから、観光地化も、決して悪いことではないですね。 マテラは、町中にも洞窟教会がたくさんあり、そのほとんどが、今は見学可能に整備されており、これも、観光地化の恩恵ですから。
次回から修行に戻ります。
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2018/03/21(水) 06:30:42 |
プーリア・ロマネスク
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モットラ、最後の洞窟教会(モットラ5) 2017.04.プーリアの洞窟教会巡り、その7
大変なご無沙汰となってしまいました。 東京からは、とっくの昔に戻っているのですが、短期間に一時帰国が二回も続いたせいで、生活のリズムがなかなか元に戻らない状態のまま、すっかりさぼり癖がついてしまったようです。 一度長くさぼると、復帰がさらに億劫になってしまう上に、最近アップしていたプーリア編は、結構書きたいことがたくさんあるもので、億劫感が半端なし、笑。 でも、是非ここで紹介したい場所がたくさんあるので、何とか頑張ってみようと思います。
とは言いながら、次の週末は、フィギュアスケートの世界大会、そして次の週末はイースター、その先はすぐフオリサローネの時期となりますし、三月末は仕事も激務となりますので、どうなりますことやら。
前回まで触りを紹介したプーリアの洞窟教会、その一日目、モットラのガイドツアー最後の教会からの再開となります。 素晴らしい現地ガイド、マリアさん先導のモットラ洞窟教会ツアー、最後に訪れたのは、サン・グレゴリオ教会Chiesa rupestre di San Gregorioです。
実は、この前に訪ねたサン・ニコラで、すでに17時ごろでした。15時に始まって、ちょっとした移動はあるとはいえ、ほとんどが至近距離の教会三つを見て、すでに2時間が経過していたこととなります。当初のお約束が、大体2時間くらいで、ということでした。この後、マテラまで移動する必要があったので、仲間と、最後の教会は端折ろうか、という話になり、マリアさんにその旨伝えたのです。 でも、サン・グレゴリオはすぐそこだし、見学の時間もさほどかからないから、せっかくだから見ていってほしい、と懇願され、結局見学することになったのです。 ガイドさんの料金は変わらないわけですから、職業としてやっていれば、拘束時間が短い方がいいに決まっていますが、彼女はそうではなく、心からこの場所を見てほしい、という気持ちでガイドをやっていらっしゃるんですね。ちょっと感動してしまいました。
さて、サン・ニコラからサン・グレゴリオまでは、ほんの15分程度。幹線道路沿いに、遺跡状態のたたずまいで広がっています。
道路から地面までは、結構な高低差がありますが、この2メートルほどの高低差が、千年の時間の視覚化ということですね。
教会の地面は、表に出ている岩の部分から、さらに下に降りた場所となります。
岩を彫りだした構造なので、当時からこういう半地下状態だったと思われます。
それにしても、この教会は、この日見た、他のどの教会とも違うたたずまいで、入ってすぐに目に入る石のたたずまいの迫力に、息をのみました。
このスケールを表すような写真は撮影できずです。 その場に立つと、天井がかなり高いので、圧倒的な迫力があります。扉からの光しかないため、暗闇がまた、イメージを重々しいものにしているということもありますが、いっそ神秘的な雰囲気というのか、これまでの教会とは、まったく違うコンセプトを感じました。
そういう教会ですが、ここにもフレスコ画があります。
教会の右側身廊に当たる部分に描かれた聖母子。14世紀ごろの作品ということで、図像的には、ビザンチン風味は少ないようです。 右側にいるのは、聖バルトロメオらしいです。 そして、中央後陣には、祝福のキリスト。
キリストのお顔にライトがあてられているので、光っていますが、これ、サポートの明かりがなければ、かなりの暗闇状態です。この時点で、外に日も、相当傾いていますからね。 このフレスコ画は、12世紀のものとされているようですが、すごく明瞭で漫画的で、個人的には後代の手がかなり入っちゃってるんじゃないの?と感じてしまうのですが、どうでしょうか。 図像的には、モンレアーレの金ぴかキラキラのカテドラルにある金色モザイクのキリストとの相似性から、ギリシャ出身の職人さんによる作品とも言われているそうです。 図像学的に注目すべきは、この中央後陣部分は、デイシスが描かれるケースがほとんどなので、全能者としてのキリストの図像が描かれることはまれで、実際に、その例としては、ここを含めて二例しかないということらしいです。
後代の手が入っているとはいっても、保存状態は比較的良好ですね。とすると、他の場所には、フレスコがなかったのかな、とか、ちょっと不思議な気もします。 なによりも、この教会では、数少なくて、その上、自然光ではほとんど見ることのできないフレスコ画より、石彫りへの注目が圧倒的でありました。
この、全能のキリストよりも、その手前の天井にある、こういう彫りこみの方が、興味を誘われました。
こういった彫りこみは、全体を掘り出して作られた構造物だからこそで、以前の記事で、エトルリアなどの古代文明との関連に言及しましたが、ここでは、掘りだしの様子が、この日見学したどこよりも激しく感じられる遺構であっただけに、ますます、強く感じられました。
やっぱり、建築として、無から建てられる建築構造物とは違うんですよね、この石のむき出しの構造物は。 でも、古代構造物には、同様の装飾がほどこされていたわけですから、それを真似したとしても、まったく不思議ではないと思います。 これなどは、エトルリア遺跡が多く見られるラツィオ州で目にした、エトルリアの古代墳墓の天井装飾にそっくりです。
もちろん、岩を掘り出して作り出す装飾に、さほどのバラエティがあったとは思えませんけれども、でも、これをパッと見たら、中世というよりは古代、というイメージではないでしょうか。
それにしても、これだけの建物構造を、掘りだして作ってしまうとは。この時代の人々の熱意にはただ感心してしまうのみ。 そして、辞退したにも関わらず、かなり強硬にガイドを主張したマリアさんには感謝のみです。というのも、旅の最後で、ここと似た意向を見学するチャンスがあり、ここを見ていると見ていないでは、受け取り方に大いに違いがあったろうと思ったからです。
この旅の最初のどでかいイベント、これにて終了。 実に素晴らしいガイド・ツアーでした。ご興味のある向きには、是非。マリアさんは、英語も大丈夫です。ここ、ガイドがあるとないとでは、面白さがまったく違います。
というわけで、まったくの無関係者ではありますが、今一度、ガイドさんの件、記しておきますね。
Ms.Maria Grottola
関連サイト
モットラ洞窟教会紹介のサイト 関連メール・アドレス info@visitmottola.com
サイトは、ビデオも含め、大変良くできた内容なので、ご興味があれば是非、訪問してみてください。
次は、マテラに移動します。
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2018/03/20(火) 06:08:58 |
プーリア・ロマネスク
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