フオリサローネ2018 その4
今回初めて訪ねた地区が、Venturaです。ランブラーテ地域を拠点にしたプロジェクトを、10年ほど前からやっているようですが、勤務先からも自宅からも、アクセスがあまりよくない上に、それほど魅力を感じることがなかったため、なんとなく行きそびれていました。 今回は、中央駅から伸びるガード下のスペースに進出してきたこと、毎年、比較的大規模で印象的な展示を行うメーカーさんの展示があったことから、行ってみる気になりました。
中央駅の北側に、ずっと伸びるガード下。この反対側の先の方に、10年近く住んでいたので、この地域は、結構おなじみです。 ガード下は、お店やパブになっている場所もあるのですが、多くは廃屋のようになっているスペース。そこが、今や展示スペースとして活用されるようになったのですね。こういう大規模なイベントがあると、放置された場所の再開発も進んで、町としては大変良いことです。 実際、かつては汚い塀に目隠しされていたり、工事中なのか廃屋なのか不明だったりという、あまり近寄りたくない雰囲気の場所でしたが、ずいぶんきれいになっていたので、驚きました。
展示会場に近づきつつ、変なものに気付きました。
Salvami (=Save me), Andata-Ritorno Installation by Franco Mazzucchelli, Followed by Sabino Maria Frassa' in collaboration with Museo del Novecento
風景にしっくりしているので、常設の何かと思ったら、これも、フオリサローネの協賛企画でした。 ガード下のトンネルの中にも、線路の反対側にも置かれていました。純粋にアート作品だそうです。だから、20世紀美術館とのコラボ作品なんですね。
さて、今回遠征したのは、この展示が目的でした。
Soundscape by AGC Asahi Glass Space Design by Motosuke Mandai
写真を見た時に、これはかっこよさそう~、と思って、行きたくなってしまったのです。実際は、もっとスペースも小ぶりな感じで、もうちょっと薄暗くて、この写真とは、イメージがちょっと異なり、インパクトは思ったよりもなかったのですが、説明を聞いたら面白くて、結構技術的なことに食いついてしまいました。
ただ、ガラス片がぶら下がっているだけと思いきや、なんとこれ、スピーカーだったんですよ。ガラスのスピーカーって、あたしのバカな頭では、理解不能。 展示会場が、小さい島に分かれていて、それぞれのスピーカーから、様々な音が聞こえてくる仕掛けです。鳥のさえずりとか水のせせらぎ、虫の声、霧や光をイメージした音楽。そういうのが、近づくとかすかに。
ガラスだけに、音の増幅効果がなく、面が向いている方向だけにまっすぐしか音が出ないため、それを逆利用して、必要な方向にだけ音を出す、というような利用方法が考えられるとか、そういう説明を日本人のコンパニオンさんが熱心にしてくださいました。 商品化はこれからだそうですが、発想が面白いですね。 オーディオマニア系からはどうかと思われそうですが、インテリアとしては、かなりオシャレ度が高いし、新しもの好きは飛びつきそうです。
目的をクリアしたものの、他にも展示がありましたので、一通り、見てきました。
_Paper & Light by Denis Guidone, Tomoko Fuse
紙を加工したランプシェード。発想はちょっと新しさがないかな。イタリア人のアーティストが、折り紙を見て、はまっちゃって、というありがちな経緯から創作された作品のようです。きれいですけれど、今更日本的な形というのは、ちょっとダサい気がしました。 いっそ、全然日本臭のないものにしてほしい。
こちらもまた、明かりがテーマになっていました。
TRANSITIONS III presented by BAAS & BROEMHOFF
照明は蛍光灯のピンク。妙にかわいいんですが、置かれているインテリアは、どうも今一つで、全体として統一感のないスペース。本当の売りは何だったのか、まったく不明でした。
ちょっと発見だったのが、こちら。
Haru Stuck-on design: Bring Color into Your Life Nitto Design
これ、事前にチェックしたうちの一つですが、なんとなく「春」という名前のデザイナーさんをフューチャーしたとか、そういう展示だと思い込んでいたんです。で、たずねたら、マスキングテープの展示だったんですが、その時点でも「春」の感じが頭から離れず、なんで、春なんだろうなあ、と思いながら見学したり、会社のお話を伺ったりしていました。思い込み、恐るべしですよね。 帰り道、あ、「貼る」のHaruなんだ!と、目から鱗でした。
これね、お掃除のコロコロの会社のマステでした。粘着には自信があるんです!と胸を張っていらっしゃいましたが、それはそうでしょうね。でも、マステ販売としては後発で、結構厳しい、とも。 今回はインテリア向けの無地物を持ってきていましたが、イタリア人には結構受けていました。 前回のカモ井さんとは、かなり方向性を別にした展示で、質実剛健的な。やはり実用品コロコロの会社的な、笑。
このガード下展示会場で、一番面白かったのは、これかも!
Giants with Dwarf by Stephan Hurlemann for Horgenglarus
椅子などを製造している、スイスの木工会社の展示らしかったですけれど、ノーチェックだったので、結構な驚きがありました。 それぞれが、多くのパーツから作られた、動物や虫のフィギュアをしていて、その一部が操り人形のような仕組みで、動くようになっているんです。
吊り輪を引っ張ると、腕が上がるタイプ。 非常に単純な動きなんですけれど、フィギュアが怪しい雰囲気になっていて、程よい暗闇で、結構やばい感じの空気感を醸し出すんです。
7つのフィギュアがありましたが、自分で動かしたり、人のやっているのを見たりして、一つ一つの動きを観察して、楽しみました。とっても木工で、楽しい作品。きっとこの会社の椅子はいいものだろうと思います。
今回、アトリエ・オイというトップ企業に出会ったり、これもまたスイス。スイスっていうと、金融や時計しかイメージがなかったけれど、考えたら山国。木工技術、すごかったんですね。新しいイメージです。
あまり面白くないものもありましたけれど(割愛しています)、地味な場所の割には、それなりのものが集まっていたように思います。不便な場所であるにも関わらず、そして、平日の夕方であるにも関わらず、結構な見学者が来ていたのも、驚きでした。
帰り道、あ、どうせならあそこに寄ってみるか、と思いつきました。
Dgusto Martesana I Editione Dgusto c/o Pasticceria Martesana
家の近所のお菓子屋さんなんですが、ミラノでも5本の指に入るくらい、おいしいと有名な店らしいです。数年前に改装して、ちょっとモダンなイートインもできて、常に流行っている店です。が、私は、甘いものは特に興味もないので、めったに来ません。 しかし、今回フオリサローネに参加していることは、チェック済み。
しかし、店に入っても、普通にお客さんがアペリティフを楽しんでいて、お店も普通で、フオリサローネの雰囲気ゼロ。 きょろきょろしている私を不審げにみている店員さんに、「あのう、フオリサローネのイベントって…」と恐る恐る聞くと、あ、なぁんだ、って様子で、「ほら、そこに、あそこにもここにも、特別なお菓子が展示してあります」と。
本物の食べられるお菓子だけど、販売はしていません、ということでした。もちろん買う気ありませんし。 20名のデザイナーさんによる20個の特別なお菓子が展示されておりましたが、何とも落ち着かない会場でした。誰一人、フオリサローネに興味のある人がいない、フオリサローネの会場。さすが、俺の暮らす地域、田舎だわ~。
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2018/04/30(月) 05:23:03 |
ミラノ・フオリサローネ
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フオリサローネ2018 その3
ブレラ地区、大学以外にも、ちょろっと徘徊しています。 今回、特に気になっていたのが、こちら。
Sprout by Koji Iyama, Mt Masking tape, Kamoi Kakoshi Co.,Ltd.
日本の文具好きなら、知らない人はいないだろうカモ井のマステ。 なかなかにすごいことになっていました。
ブレラの、雰囲気のある会場を使って、印象的な展示になっていたと思います。また、フオリサローネ限定のマステを作り、それを使った展示、同時に、訪問者へのお土産を用意するという、非常に日本的なおもてなしもあって、好感度は高いかも?
私は、友人にマステのヘビーユーザーがいることから、マステに関しての知識が、普通以上にある方だと思いますので、問題ないのですが、しかし、イタリア全般について言えば、いや、おそらく日本以外のマーケットでは、日本のようなレベルでの「文具好き」というベースがないので、マステに関しては、かなりの説明が必要と思います。 そういう意味でも、こちらでは、文具というよりは、家のデコレーション素材としての商品押し、だったのだと思いますが、それにしても、こういう最終消費者に対する商品である以上、もっともっと、セールストークに力を入れてほしかったですね~。
現場で、販売までしているのだから、なおのこと。 コンパニオン兼販売員は、頑張っていましたけれど、やはり雇われですし、雇われ以上の力は入りません。会社の人自ら、もうちょっと頑張れよ、と思いました。
これは、多くの企業で常に感じることですが、せっかくこのような機会を得ながら、会社の内輪の関係にとどまっている関係者が多いんですよねぇ。ここでも、続々と見学者が来るにも関わらず、会社関係者と思われる数人が、内輪でこそこそおしゃべりするにとどまり、接客はコンパニオン頼み。 お土産のサンプル・マステを配る若手もいましたが、接客のレベルからは程遠く。
この後、世界的なブランド企業等回り、やはり世界レベルって、こういうところからだよな、と思うこともあり、まだ世界に打って出る段階で、セールストークの大切さすら見いだせない企業は、どうよ?と思わされました。
やってること、持ってるものの可能性が大きいだけに、もったいないことです。 もうちょっとコミュニケーションしようよねぇ、日本企業も、日本人も。
しかし、日本企業は、ブレラ好きだよね。
Karimoku, Kunst Debut exhibition
Miyazaki Chair Factory Timeless Pieces for Precious Moments
宮崎県の椅子なのかなぁ。すごく素敵で、資料用にも、たくさん写真を撮らせてもらいました。ここでも、日本からわざわざ来ている人がいたと思いますが、ひっそりとたたずんでいるだけで、うーん、それでは世界には打って出れないですよ、と思いながら…。
ここ、興味ありました。
Misoka, Water Pixie
いつぞや、日経新聞で広告を読んだことがあり、それ以来気になっている歯ブラシのメーカーさん。私、歯医者にはびっくりするくらいお金を使っているので、歯のケア用品に関しては、結構興味があるんですよ。ここの歯ブラシは、確か一本数千円するとかそういうものだけど、そういうものは、それなりの効果があるはずなので、気になっていたんです。
だから、お話を聞きたいと思っていたし、可能ならば、買ってもいいくらいに思っていたのですが、招待客とか関係なしに、アペリティフ提供していたので、おそらくほとんどはフリの客だったと思いますが、すごい人で(イタリア人は、ただ酒とか大好きですから)、 コンパニオンに近寄ることもできなかったんです。残念!
ただ、日本では信じられないくらいに、「きれいな白い歯」が、外見上重要な国ですから、多くの人にとって、歯のケア商品は、日本以上に一般レベルで求められているものであるかもしれません。こっちの人の、白さへのこだわりは、日本の肌への美白以上のものがあるんですよ。もしかすると、このメーカーさんも、食いつきにびっくりしたかも、です。
ブレラというには、ちょっと離れているけれど、ガリバルディ通りの小さなスペースでの展示も、後日、わざわざ訪ねました。
Casa Gifu III Olfactory ceramics by atelier Oi
他の展示で目にしたスイスのデザイン集団アトリエ・オイに惹かれて、行ってみました。 展示会場に、ヒノキの香が漂っていて、大変いいスペースでした。 岐阜県から来たという方に、いろいろお話を伺うことができて、面白かったです。
アトリエ・オイとのコラボは、すでに3年目ということでしたが、どうやら私は、今回まで、展示を見る機会を得なかったようで、残念でした。 岐阜県は、美濃焼や美濃紙など、非常にレベルの高い地産産業、また、高山や白川郷など超有名観光地までも抱えている県なのに、どれもが個別に知名度を持っていて、「岐阜」というブランドが弱いということで、県として、力を入れているということが背景にあるようです。
確かに私にとっても、個別のブランドに対しての知識や興味はありましたが、それらが岐阜県だった、というのは、結構驚きでした。
上の、水車のような木製のものが載っている白磁は、シーソーのように、ぎっこんばったんとしながら、白磁に入れた香水野香りを、水車のようなものが回って、部屋にそこはかとなく香りを拡散させるもの。これは、かなりほしかったです。ぎっこんばったんが、かわいい。 今はまだ、商品化はされていないということでした。
一方で、他の作家さんとのコラボであるこちらは、今回売るために、いくつか用意していたという作品。
独特の土を使った陶器で、これも香りがテーマです。釉のかかっていない部分に、香りをしみ込ませることで、ほのかな香りの漂いを楽しめるという、大変奥ゆかしい日本的なお香感。素敵でした。 結構大きい三つ組の陶器で、600ユーロだったかな。作家もので、ナンバリングされていて、ヒノキの素敵な箱に収められた逸品で、お安いものだと思いました。もうちょっと小ぶりで、もうちょっとお安ければ、買いたかったかもなぁ。
いずれにしても、岐阜県から来た人たちが、コラボ企業のアトリエ・オイさんと協力して、頑張って説明していて、県としてのやる気をひしひしと感じられて、大変好感度高かったです。せっかくミラノまで来るなら、そういうやる気出してほしいもんです。 来年もまた来るなら、是非行かないと!個人的に応援したくなる出展でした!
ブレラ地区、最後は、すっかり日も暮れたから訪ねた、こちら。
Bulgari, Reinventing Rvles c/o Bulgari Hotel
ブルガリのホテルがあるのは知っていましたが、あまりに自分に関係ない世界なもので、どこにあるのか、どんなものなのかもしれず、その興味から、訪ねてみました。
ホテルはブレラ大学のすぐ近く、ここってなんでこんなに警備が厳しいんだろう、といつも不思議に思っていた場所の奥まったところにありました。建物は、70年代とかそういう時代のレトロ感満載で、たいしたことはありませんが、このサローネ時期は、おそらく一泊1000ユーロでも聞かないんだろうと思うと、おお~っていう気分はあります。
ブルガリの展示は、店舗や他の場所でもされていたようですが、ここでは、ホテルの庭に、銀色のキューブを置いて、中に、360度、カメラが並んでいます。 キューブに入って、数秒、そのカメラで映像を撮ってくれて、後日、メールで送ってくれるというもの。
この日は遅かったこともあると思いますが、すいていたので、友人と二人で、試してみましたが、バカみたいな映像が送られてきました。
二人で踊ったり、ラブラブカップルは情熱的なキスをしたり、そういう映像なら、それなりに思い出にもなりましょうが、中年女子二人で、何をすればよかったのか…。 ま、ある意味、歩き回った記録かな。
というわけで、ブレラ、一気に終わりです。
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2018/04/29(日) 06:38:44 |
ミラノ・フオリサローネ
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フオリサローネ2018 その2
正式にオープンした初日に訪ねたのは、ブレラ地区です。
お洒落なファッション地域も満載のこの地域、最近は、フオリサローネのイベントも充実するばかりです。 今回、一発目に選んだのは、訪問者が増えすぎないうちに、どうしても訪ねたい展示があったからです。
Transitions by Panasonic Design Special collaboration with Pinacoteca di Brera
ミラノの美術大学であるブレラ大学の中庭にしつらえられた会場のインパクト! 得体のしれないドームがどーん!下からはシューシューと蒸気が噴き出している不思議!これはもう、すぐに、「よっしゃ~」と思いました。
裏に回ると、すでにかなりの行列で、並んだ時点で1時間近くが予想される状態でした。幸いにも、途中から入場者の数を少し増やしたようで、40分強で入ることができました。 私の前で、一回切られそうだったのですが、一人だったことから、ギリギリ入れてくれたおかげで、15分、得しました。たまにはボッチで得することもあります。
これね、素晴らしかったです。
規模のミクロな光と音のショーっていう感じ。 音楽をバックに、暗闇に光がさして、映像と音とに取り囲まれます。技術的な説明とかは一切なし。
ミストも漂ってきて、どんどん幽玄な雰囲気になってきます。 ボッシュの絵とか、体外離脱体験のイメージ的な。
結構な人がひと固まりになっているのですが、どんどん人がいなくなってきて、トリップ感覚です。
実は、私も、途中から動画を撮影したのですよ。でも、大失敗で撮れてなかった…。それなら、ずっとたゆたっていればよかったのに、と大後悔しました。二度は体験できないですからね~。ほんと、大失敗。 でもね、スマホを掲げながらも、かなり本気でトリップしてました。
最後には、ミストがどんどん濃くなってきて、実際にすぐそこにいる人の姿が飲み込まれて見えなくなって、空間にのまれるような気持ちになっていました。
あ、あ、孤立する、どうしよう、的な。すごいですよ、これは。
でも、これは、ミラノの霧の風景の追体験をするイベントではなくて、技術の披露なんですよね。ざっと説明を読んでも、実はよくわからないのですが、空間の雰囲気を幻想的にしたミストは、おそらくナノ・テクノロジーを使った技術。そしてそのミストを通して、効果的な映像や光を実現したのも、解像度の高いプロジェクターとかレンズの技術らしいですよ。つまり、技術なしには実現しないアートっていうんですか。それが、インダストリアルなんですけど、いやはや、結果としては、アートだから、すごいと思うんです。
なぜ、パナソニックを目指したかというと、昨年もやはりブレラ大学を会場にして、大規模な展示を行っていたのですが、その見せ方と、あるものが、非常に面白かったから、期待していたんです。
今年、イースターに、日本から遊びに来た友人が、今更だけど、と新居引っ越し祝いを持ってきてくれたんですが、それが、昨年、このパナソニックの展示で目にした、京都開化堂さんの茶筒だったんです。
パナソニックの展示でも、説明を受けていたので、これがいかに優れモノであるか、ということはわかっていたのですが、実際に使うと、本当にすごいです。密閉度がすごいんですよ。それに、蓋が、勝手に閉まるんですよ、スーッと。職人技~!
友人の心づくしの品物を、知っていたことで、さらに嬉しくいただくことができたっていうのかな。すごさを知っていてよかった、と思いました。だって、すごくうれしいじゃないですか、そういうすごいものをいただくなんて。そして、それを最大にリスペクトできるなんて。 だから、なんでも見とくもんだ、としみじみ思った次第。
話がそれました。
私の中では、昨年から、パナソニックのイメージ、上がりっぱなし。今後、どうなるのかな。とりあえず、来年も期待したいと思います。
さて、ブレラ大学に来たら、植物園には寄って行かないと。
MCA-MARIO CUCINELLA ARCHITECTS with SOS-SCHOOL OF SUSTAINABILITY Smart Town with ENI GAS E LUCE in partnership with HIVE
大学で見かけた、お家型ライトが、植物園全体にずらりと並んで、とってもかわいいことになっていました。
このとき、すでに20時近かったですが、まだ夕暮れというには早くて、明かりの効果が限定的でした。後日、夜間に訪ねることができました。
そしたら、想像以上に明るいランプでした。 可愛さが際立ちますね。でも、夜は、ギャラリーもすごくて、ちょっと興覚めの風景も広がります。
比較的人の少ない初日、それも日中(20時ではありましたが)に訪ねて、よかったと思います。それに、この植物園では、日中に会いたいものがあるんです。
趣のある大学の古い建物に映える、見事な藤の花。
この時期、いつも満開で、濃厚な香りも漂わせています。そしてもう一方。
こちらはショックでした!モッコウバラというのかな。黄色の小薔薇が、いつも満開なのに、上の方にちょこっとあるだけで、下は、葉もなし。長い目で、あえて剪定したとかだったらいいのですが、ちょっと寂しかったです。木はかなり古そうですから、ある日突然、ということもあるわけで。 フジの方も、そういえば葉が少なかったので、大胆に選定したのでしょうかね。
というわけで、ブレラ、続きます。
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2018/04/27(金) 05:26:41 |
ミラノ・フオリサローネ
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フオリサローネ2018 その1
先週、またブログの更新が止まってしまったのは、おなじみさんにはもしかして恒例の、サローネ週間だったからです。 毎年、誰に頼まれているわけでも期待されているわけでもないのに、ひたすら町を歩き回る一週間も、もはや数年にわたる恒例となってしまって、今回は軽く流そうと思っても、それができない体質になってしまった感があります。
今年は、年初早々から二回の一時帰国に続き、フィギュアスケートの世界大会に興奮し、仕事の年度末(3/31)に悲鳴を上げ、年度末と同時に訪れたイースター休暇では、日本から訪ねてきた友人のアテンドで動き回り、彼女が帰った直後にサローネ週間となりましたが、同時に、会社の引っ越しがどんぴしゃりで…。 もうびっくりするくらいの怒涛の日々で、気付いたら、もう今年も三分の一が終わろうとしている事実に、愕然とする今日この頃です。
ブログに記録するのも、かなりどうでもよい気持ちもあるのですが、でも、自分のいい加減な記憶のためには、やはり何か残しておきたい気持ちがあるので、誰のためでもなく、というより、こちらにいらしてくださる方のほとんどは、ロマネスクを期待されているのを知っているので、またまたの寄り道、申し訳なくも思うのですが、ま、いいかということで、しばらくは、フオリサローネの記事となります。
定石通り、今回も大学からです。インテルニのパンフレットを入手して、興味のある展示だけを効率よく回るため。
今回のインテルニの展示のテーマは、House in Motion。でも、大学の展示は、どうも一つとして引っ掛かるものがなくて、うーん。今回はどうだろうな、と暗雲気分でいっぱいになりました。
Future Space by Peter Pichler Architecture with DOMUSGAIA
大学入ってすぐのメインスペースの、ど真ん中に組まれた木の館。 列があったので、すかさず並んだものの、中に何があるでもなく、組んだ木の隙間からの景色が面白いとかあるのかと思ったけれど、特にそういうこともなく。
これはこれで、すごい技術を使っていたりするんだろうけれども、エキスポでの日本館の木組み建築を考えると、木の文化で育った人には、インパクトがあまりない。
行列と言えば、こちらも。
Alla Scoperta dell'infinito by Lorenzo Damiani with IKEA
入場が入れ替え制で、行列が出来てきたので、慌てて並んでみました。壁に取り付けられた棚に並んでいる赤いものは、手回し電力で使う懐中電灯。
突起をぐるぐる回すと発電して、明かりがつきます。一人一人に渡されるので、お、中は暗いのか、とちょっと期待するじゃないですか。 ところが中入ってびっくり。というか、がっかり。
イケアですからね。おなじみ感のある組み立て家具のパーツが、上下左右縦横無関係に、びっしり壁に並べられているだけの展示で、ちょっと暗くしたり、なんか効果のない演出をしておりました。 この、家そのものを、そのまま持ち運べる、というコンセプトのものらしいですが、そんな説明、されていたかな。面白くなくて、早く出たくて、真面目に聞いてなかった…笑。
実は、本当のオープンの火曜日の一日前、プレオープンの日に訪ねたので、まだ準備中の展示も多数でした。
Colors on the move by Aldo Cibic with ABET LAMINATI, SAIB
おそらく各パーツが移動可能とか、そういうコンセプトのものなんじゃないですかねぇ。赤い上物は、机のイメージだそうですわ。まぁ、そういわれたら、そうですが、だからなに?入っても、特に発見はなさそうな展示です。
ほぼ唯一いいと思ったのは、このおなじみのウサ子たちと、去年初登場のゴリラかもなぁ。
ウサ子たち、守られてますよ。座れないし。
Visionair by Labics with ELICA
ここは、この日インヴィテーションオンリーで、中にはアクセスできなかったんですが、内外とも三角のガラス、というより鏡面張りで、残像が楽しめる的な構造です。こういうのって、もう古くないんですかね?今更?と思いましたが…。
My Dream Home by Lissoni Associati with Elisabetta Illy and Stefano Guindani, with DMECO ENGINEERING DIVISIONE LIVING
コンテナハウス。上階もアクセスできれば、何か面白いことが出来そうな構造ですが、アクセスは、地上階だけで、中には、ハイチの子供たちの絵が絵とか飾られていたようです。そういうのって、正直よくわからないな~。こういう壮大な無駄みたいな産業見本市で、ハイチの写真展とか、なんかな~。
これは、かわいいです。
このおうち型ランプは、別の会場で再会しますし、そちらの方がずっと雰囲気があります。
これ、かなり印象的だった。
On the Road by Marc Sadler with FPM – FABBRICA PELLETTERIE MILANO
これ、カバンとか皮ものを作っている会社の提案だと思うんですが、大型のカバンを開けると、キッチン家具、オーブンだったりコンロだったりテーブルだったりが出てくるんです。外見は、かなり高級そうな、昔、貴族が船旅に使ったようなカバンのイメージです。
こんなに地味なのに印象的だったのは、なぜかというと、隣にいた、成金的なおやじが、そのベッドはいくらなんだ、と聞いていたんです(地面に置かれている布がそれです)。確か7000ユーロとか言っていた気がします。ひえ~、の値段だけど、そのやり取りで、おお、これは確かに見本市なんだな、できれば出展者は、引き合いがほしいのだよな、という基本に思い至ったのです。 私をはじめとして、ただイベントとして見学している人なんか、本来はお呼びじゃないんだな、という現実です。もちろん、それだけじゃなくて、イメージを売るために出店してきている会社は、買う気なんてはなからない見学者も大歓迎ですけどね。
しかしあの鎖じゃらじゃら系のおやじ、本当に興味があったのかなぁ。
House Emotion by Tabanlioglu Architects with NURUS
これは、夜間だと、意味もなくきれいかもしれません。というのは、一本一本の棒に、電気が埋め込まれているから。
でも、面白いかというと、どうだろうな。
二階へ向かう階段の扉口。 一方は、本物の花が飾る垂直ガーデン。
Modular Giardino by Luca Baronchelli with ITALMESH
もう一つは、明るい黄色が印象的だったこれ。
Mesh and Colour
でも、二階部分は、これだけで、ちょっと寂しい展示でした。
Limbo by Jacopo Foggini with FERRAGAMO PARFUMUS
樹脂みたいな素材で作ったスパゲッティ状のものを絡めて、板状にしたものを、並べたもの。遠くからだと、こういう感じになります。
きれいな桜色で、遠目にはきれいなんですが、近寄ると安っぽい素材だし、建材としては絶対に使いたくないやつだなぁと思ってしまいますね。
奥の方の回廊では、これまた地味な展示。
Home Co-Thinking by Massimo Iosa Ghini with ITALCER GROUP
すべてがオープンの共同スペースみたいなコンセプトのものらしいです。巨大テーブルも、一部ある壁も、落書きスペースになっていて、皆が熱心に落書きしていました。 なら私も、と日本語で感想を記してきました、笑。
もう一度メインの回廊に戻ると、パフォーマンスが。
Baldacchino by Stanton Williams Architects with FOCCHI GROUP
無機質な素材で作られた居間スペース。絶対にくつろげないよね、笑。 そこで、これまた無機質感満載の、白っぽい人が、無言でダンスを始めました。ダンスってエモーショナルなイメージだけど、こういう無機質なダンスもまた不思議に面白いところはあるな、と思いましたが、なんだか、売りたいものは、まったくわかりませんでした。
というところで、一日目終了。 今回は期待できそうもないと思いつつ、火曜日から本格的に歩きだしたら、そんなことまったくなくて、結果的には、いつに増して歩いた1週間となってしまいました。 続きます。
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2018/04/26(木) 00:21:25 |
ミラノ・フオリサローネ
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2017.04.プーリアの洞窟教会巡り、その14
サン・ジョバンニ・バッティスタ教会Chiesa di San Giovanni Battista続きです。
到着した夜、夕食の後で、もう21時を過ぎていたと思うのですが、なんと、この教会、オープンしていました。イースター期間だったので、イースター関係のミサがあったのかもしれません。 というわけで、昼間の写真と夜の写真が混ざっています。 外観は、前回ご紹介しましたが、このファサード、オリジナルは一部ではありますが、夜間のライトアップの効果、なかなかでした。
浮彫の陰影がくっきり、印象的ですよね。 この扉口は、カテドラルと違って、かなりオリジナルに近い、朽ちた状態で残されているので、昼間だと朽ちた感が強いのですが、こうやってライトアップされると、朽ちた様子も含めて、浮彫の仕事の細かさが、際立ちます。 いずれにしても、非常によく研究された照明だと思います。
前回も書きましたが、全体が、後代に変えられてしまっているのですが、内部には、往時を髣髴とさせるアイテムがちゃんとあるんです。
植物モチーフへのこだわりがある石工さんがいたように、感じられます。アーカンサスのバリエが、動物とも混ざって、たくさん。
これなんて、ちょっとおいしそうです。
でも、ライオン君は、やっぱり鳥に行きますよね。
わかめのようなやつも。
それにしても、上からにょっきり、「どうもすいません」みたいな人たちは何だろう。
こちらは、ダニエルさんバリエに見えないこともない。
なんか、動物的な植物。
暗い色で、重厚感半端ない天井。こういう中なんで、全体に重たい雰囲気です。
時代が下るせいか、ちょっとフランスの教会的な雰囲気です。
ビザンチンテイストの強い洞窟教会ばかり巡ってきた後で、本来おなじみの中世的な教会。まぁ、ゴシック入っているわけですが、それでもおなじみ感強いです。
この後は、そういうおなじみ的な教会に立ち寄りながら南下して、またビザンチン世界へも戻ります。 というわけで、やっとこさ、マテラ終了です。
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2018/04/23(月) 05:14:38 |
プーリア・ロマネスク
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2017.04.プーリアの洞窟教会巡り、その13
マテラ、続きです。 カテドラルと洞窟教会以外にも、いわゆる普通の教会も、たくさんある町です。
多くの人々が、近年に至るまで、サッシという洞窟住居に暮らしていたことから、貧しい土地、という印象ですが、本当のところはどうなんでしょうか。洞窟住居は、家を建てるより簡易だし、季節に対応して、一定の温度を保ってくれるなどの利点がありそうですし、必ずしも、貧しいからだけということもないような気がしてきましたが、本当のところは、例によって、まったく勉強しておりません、笑。
洞窟教会も含めて、これだけの数の教会がひしめく旧市街を歩くと、信心深い土地だから、 というだけではなくて、それなりに富が集まったという側面もあったのだろうと思わざるを得ないからです。貧富の差は激しかったのでしょうけれども…。
今町で最も人が集まる広場に、中世起源の教会が、二つあります。
広場の隅っこに面して、四角いファサードを持つサン・ドメニコ教会と、その後ろ側に建つサン・ジョバンニ・バッティスタ教会です。
この広場、到着した日の夜に、ちょっと散歩に出たのですが、本当にびっくりする人混みでした。
イタリアを知らないで、いきなりこういう風景に出くわしたら、いったい何が起こっているんだ?と思いそうな人出です。イースターのお休みでしたから、勿論観光客も多かったとは思いますが、地元の人比率も高いはず。
この広場の地下には、やはり古い建造物があり、観光地となっているようでした。詳細は知らないのですが、長い時間をかけて掘られた、地下都市、とでも言ったスペースのようです。墳墓という名称がついていますが、必ずしも、墳墓だけではないようで、時間的に余裕があれば、ちょっとそそられる施設ではありました。
が、例によって時間もありませんし、一般的な観光地には見向きもせず、教会を目指す修行旅です。
まずは、サン・ドメニコ教会Chiesa di San Domenicoです。
時の流れに乗っかって、建物全体の姿すら、おそらくオリジナルからは大きく変容してしまったものと想像しますが、辛うじて、ファサードの一部が残されているのです。 この、アーチと、小さいけれど、プーリアっぽいバラ窓は、注目です(ここは、バジリカータですが、この辺りについては、プーリア文化圏と思います)。
バラ窓を支えるフィギュアがとても面白いです。 テイストとしては、ちょっと時代が下る感じもあるのですが、無理のあるスペースに、ぎちぎちに無理な姿勢で置かれたフィギュアのあり方は、どうしてもロマネスク的なものですね。
バラ窓のつくりや、その周囲の浅浮彫は、素朴で、何とも言えない味があります。
残念ながら、教会は閉まっていて、開く様子もありませんでした。
その先に進むと、今度は、サン・ジョバンニ・バッティスタ教会、つまり洗礼者ヨハネ教会があります。
なんだか、ずいぶんいろんな様式が混ざっちゃった感じのファサードですが、まず注目すべきは、正面の扉装飾です。
繊細な透かし彫りのような、ちょっとアラブテイストもあり、みたいな、ごてごて感、半端ないですね。さて、気付かれるでしょうか。
これ!カテドラルの扉にあるものと、まったく同じなんです。同時代のものらしく、どっちがどっちを真似したとかではなく、あえて同じ装飾をしたような様子ですが、本当にところはわかりません。 私は、こっちを最初に見てからカテドラルに行ったので、結構驚きました。そして、カテドラルの方は、修復でピカピカつるつるで、まるで再建のような様子だったので、それにもびっくりした次第です。
外観では、もう一つ気になるものがありました。
ちょっと離れないと見えないんですが、後代にいろいろ付け足しされてしまったという現実がわかるようなものが、奥の方も、もともとの本体だったであろう建物の側壁の上の方に、かすかに見えるんです。
涅槃図のようなスタイル?または、アトムのように、こぶし握って飛んでいる姿?いずれにしても、何とも愛らしい様子で、ちゃんと見たいものでした。 あ、もう一つ、忘れていはいけないのが、脇の方の建物から入った、表からは見えない場所にある、12世紀、創建当時のファサードにあったらしい扉跡です。
これが、1200年代最初の教会の扉で、今あるファサードは、カテドラルと同じで、13世紀も後半以降のものなのだと思います。 こちら、地味ですが、好みとしては、こっちですねぇ。
愛嬌のある動物の顔や、大振りの組紐装飾柱。繊細さがみじんもない花浮彫。こういうのは、やはり好き。
デザイン的には、今は側壁となっている、オリジナルでは、ファサードと反対側につけられた窓の装飾と、共通するものがあるようです。こちらは、修復が激しく施されているので、一見、より装飾的に見えますけれど。
一気に行きたかったのですが、中も、ちょっといいんで、次回。
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2018/04/16(月) 05:07:05 |
プーリア・ロマネスク
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2017.04.プーリアの洞窟教会巡り、その12
マテラの旧市街にも、たくさんの洞窟教会がありますので、そのいくつかを回ってみました。最初に訪ねたカテドラルで、共通入場チケットを販売しており、もともと訪ねようと思っていた教会も含まれていたので、それを購入してしまったのです。 つまり、カテドラル以外の、主な教会は、有料ということです。
すでに過去の記事でも触れていますが、私が以前訪ねたころは、すでに観光地ではあったものの、まだ、実質的な観光地としての体裁は整っていなくて、旧市街の洞窟教会などは、ほとんどが放置されていたものと記憶しています。 勝手に教会守やっています、といったような、よくわからない人に案内されて、入った教会もあります。わざわざ高台の教会に案内してくださったので、志しを渡したら、「この石は、壁から落ちたもので、ほら、色がついているだろう。お土産に持って行け」などと、本当かどうかはわかりませんが、フレスコ画のかけらかもしれない石を押し付けられたことが、強烈な記憶として残っています(石など自然のものを、あるべき場所から動かすのはよくない、と昔誰かに聞いたことがあるので、それは、そっとその場に置いてきましたけど、今思うと、もらっとけば、お宝だったかも?)。
それが、この、不思議な教会。
サンタ・マリア・デ・イドリス洞窟教会Chiesa Rupestri Santa Maria de Idris。
家々の情報に、にょきりムクムクしている岩の中にあります。
昔は、岩がゴロゴロした廃墟状態だった場所が、高台の展望台のように整備されて、今は立派な観光地です。マリオおやじ、どうしたのかなぁ。
残念なことに、旧市街の有料教会は、すべてにおいて、固く撮影禁止です。これは、今どき、まったく納得できない措置ですねぇ。フレスコ画を盗むことは難しいし、写真撮影禁止の意味は、不明ですねぇ。 ただ、絵の時代は、結構下るし、絵的には、好みではないので、すごく悔しい思いはないんですが、でも、なんか納得できないものはあります。 教会の建物の回り、というか、教会を含む岩をぐるりとすることができて、ちょっと地球外的な、スターウォーズ的な、不思議な岩の風景を楽しむことができるのは、マテラらしいかもしれないです。
ボコボコした砂岩風。やはり、火山岩ということなんでしょうねぇ。掘るのが、比較的簡単だから、切り石で建築するより、岩を掘る、ということになったということなのかな。
回った順番とは、異なりますが、次はこちら。
サン・ピエトロ・バリサーノ洞窟教会Chiesa Rupestri San Pietro Barisano。
塔の右側に、かなり新しくファサードがついているのが、教会です。外からは、全然オリジナルな面影なしですね。 この旧市街にある洞窟教会は、できたのが、早くて11世紀で、ほとんどは12世紀以降。そして、14/15世紀ごろに、拡張などされたところが多く、内部にあるフレスコ画も、大体はそのころの作品となるようです。 ですから、ロマネスクのイメージを求めると、ちょっと違うな、ということとなり、フレスコ画に対しては、あまり感動がありません。 ただ、掘りだしているだけに、建築的というか、その構造や、ちょっとして装飾が、プリミティブだったりして、その面白さがあるのです。
ここも、まさにそういう歴史をたどっており、フレスコ画は見るべきものはないのですが、小さなスペースに入り組んだ構造。ところどころにある装飾的なものが、なんだか洞窟探検的ではありました。
そして、サンタ・ルチア・アッレ・マルヴェ洞窟教会Chiesa Rupestri Santa Lucia alle Malve。
ファサードは、サン・ピエトロ同様、面白くないのですが、ここは、旧市街を取り巻く外周の道沿いにあったはず。教会の前は、グラヴィーナが広がり、素晴らしい眺めでした。
ここも、フレスコ画よりも何よりも、掘り出された構造物のあり方が印象的。
岩に水がしみだしていて、苔が元気に育っています。そのせいで、フレスコ画も相当やられちゃったようです。 よく見ると、こうやって、一部は残っているのですが、ほんのわずかです。
ここは、結構広いスペースで、構造を見られるので、どこよりも面白さがありました。
天井に、小さな円の掘り出しがありますね。とっても小さい円です。それに、他と比べると、傾斜もなく、平らな面に比率的には極小円。どこも微妙に違うのが面白いものです。
祭壇のような場所、苔でびっしり。
上部に、円がありますが、キリスト像でも描かれていたのでしょうかね。 続きます。
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2018/04/15(日) 02:47:15 |
プーリア・ロマネスク
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今年は、2月にも日本に帰国したのですが、日本滞在中は読書時間もなく、ただ、ひたすらアニメを見ておりました。ずっと気になっていた「進撃の巨人」などの話題作を、大人買い状態で、一気に見たりして、日本のアニメの多彩さと面白さを再確認いたしました。 「進撃の巨人」は、若干尻つぼみ感があったのですが、今後に期待したいのは、「ヴァイオレット・エバーガーデン」とか、「メード・イン・アビス」など。
「ライオンハート」恩田陸(新潮文庫) 「虚ろ船 泣きの銀二 参之章」宇江佐真理(講談社文庫) 「晩鐘 続・泣きの銀二」宇江佐真理(講談社文庫) 「泣きの銀二」宇江佐真理(講談社文庫) 「未練」乃南アサ(新潮文庫) 「九月が永遠に続けば」沼田まほかる(新潮文庫) 「慟哭」貫井徳郎(創元推理文庫) 「ひそやかな花園」角田光代(講談社文庫) 「ヨーロッパの中世美術 大聖堂から写本まで」浅野和生(中公新書) 「アンのゆりかご」村岡恵理(新潮文庫)
宇江佐真理さんは、手練れだなぁ、と改めて思いました。この人の作る人物像は愛らしいんですよね。 赤毛のアンを訳した村岡花子さんの生涯を描いた「アンのゆりかご」は、市井レベルの近代史っていう感じで、自分の祖母の時代を感じながら、歴史とはこうやってできていくのだなぁ、という時代に対する実感のようなものを感じさせられました。 今、ブログにつづっている南イタリアの中世教会の理解のために、読み返したヨーロッパの中世美術は、ビザンチン専門の先生が書いている本なので、非常にイメージが深まり、再読ですが、最初に読んだ時とは比べ物にならないほど、面白く読めました。 再読と言えば、まほかるも、確実にそうなんですが、読んだことは端々に覚えているのに、内容を忘れているという、いつもの恐ろしいパターンで、最後まで、読んだな、と思いつつも、展開が出てこず、それなりに面白く読んでしまいました。困ったものです。 昨年後半から、フランス語学習を放棄していて、通勤時に読むようになったので、少し読む量は増えたのですが、どうも読み散らかしてしまって、通読が苦手になっているような。そのため、時間があっても、絶対的読書量は増えていません。情けないなぁ。
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2018/04/12(木) 04:55:32 |
読書、備忘録
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2017.04.プーリアの洞窟教会巡り、その11
マテラのカテドラルDuomo di Matera、続きです。 今回は、中に入ります。
外観のスタイルからもわかる通り、後代の手が入ってしまっているとはいえ、オリジナルは、結構古い聖堂ですが、中もすっかりピカピカです。
入場していきなりこういうスタイルだと、もう気持ち的には、しゅーん、としちゃうんですが、少なくともスタイルは古い時代のままだから、絶対に何かあるに違いない、と気を取り直して。
気持ちが伝わったのか、なんといきなり。
ファサード内側の右脇にある柱だったと思います。上も下も、ピッカピカなのに、柱頭だけ、オリジナルに近い様子に戻されています。 おそらく、バロック時代には、この柱頭の人たちも、ピカピカ真っ白にぬられていたのだと思います。そのせいで、彩色も結構残されているのではないでしょうか。
みんなが、一所懸命考えている様子っていうのか、夢見る感じもあって、なんだかいいフィギュアです。
残念ながら、これ以外は、漆喰ぬりぬりのまま。
これも、漆喰をはがしたら、素朴テイストで、うっとりするようなフィギュアかもしれません。これも。
背景の金ぴかを見ていただくと、こういうぼよーんとした人々が取り巻く柱頭が、いかに浮いているか、わかると思います。 これら以外は、植物モチーフで、漆喰ぬったら、時代がわからなくなるようなものばかりでした。
うえ~、となりながらも、丹念に歩いていくと、内陣方向左側に、驚きの発見。
なんか古そうなものが、掘りだされています。ガラスで遮られているので、近寄ることはできないのですが、これは、今ある建物以前の教会のものだと思われます。どうも、資料が手元にないので、詳しくはわからないのですけれど。
フレスコ画が、ほんの一部だけど、残っているんです。
衣装の様子や、光背の様子から、ビザンチンテイストのフレスコ画っぽいんです。 ほら、なんか光背の縁取りが、真珠状でキラキラしてて、これはビザンチンですよね~。
なかなかいい感じなのに、どこにも、説明一つないんです。一応ロマネスク・スタイルの教会、とうたいながらも、そこに重きを置いていないのが明らかな説明版ばかりで、確かに、このピカピカの中を見たら、ロマネスクのために目指すこともないかって様子ではあるんですけれどもね。 でも、なんか納得できないような。
まぁでも、何かはあってよかったです。 ということで、マテラの旧市街散歩、続きます。
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2018/04/10(火) 04:42:59 |
プーリア・ロマネスク
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2017.04.プーリアの洞窟教会巡り、その10
早朝からの「原罪の洞窟」見学で、度肝を抜かれたというか、マテラの洞窟もなかなかやるな、というテンションで、旧市街に戻り、洞窟教会巡り、兼観光の開始です。
マテラには、ずっと昔に来たことがあるということは、以前も書きましたが、当時も町は観光地でしたが、洞窟教会については、ほぼ完全に整備されていなかったと思います。 そんな中カテドラルは、ごちゃごちゃとカオスな感じの旧市街の中で、どこからでも認知しやすい高台に建っていて、存在感があります。 ギザギザの稜線ばかりのアルプスの中で、一人にょっきりと角を突き出している、マッターホルン的な?
しかし、姿は見えども、結構な高台にあるため、近づくためには、かなりの坂道や階段のアップダウンを覚悟しなければなりません。
マテラ大聖堂Duomo di Matera。 それにしても、かなり最近お掃除したばかりなんでしょうね。あまりにわざとらしい白さに、若干興ざめしました。そういう白い石なのだから、できた時もこういう様子だったのだろうとは思いますが、中世ファンとは勝手なものです。 しかし、春先だというのに、この強烈な日差しの下では、あまりにまぶしくて、まともに細部を見ることさえままならない感じでした。南の太陽、恐るべし。
それにしても美しいプーリア様式のロマネスク。時代は若干下るので、ゴシック的な完成度が強くて、私の好みではありませんが、ロケーションと言い、スタイルと言い、色彩的なコントラストと言い、印象的であることは間違いありません。
とにかくまぶしさで、現地では、細かいところまで見切れなかったのですが、改めて写真で見直すと、とってもプーリア。
美しい装飾がほどこされたバラ窓、周囲を四つのフィギュアに支えられています。バラ窓に比して、妙に小人的なフィギュアで、愛らしいというか、アンバランスというか。
傾斜屋根のトップの装飾、独特です。
どう見ても、これは洗いすぎとしか思えない白さ、かつのっぺり感で、写真で見ても、ちょっとがっかりですが、それはともかく、縁取りが小さなアーチになっているのがかわいらしくて、その上、普通だとアーチのところにちょっと柱頭半分くらいのスペースを設けて彫り物をする感じなのに、なんとアーチの下に、ちゃんとミクロな円柱、それもねじりん棒円柱という凝りよう。 これは、他では見た記憶がありません。
扉周りの透かし彫りもすごいんだけど、ちょっと新し感が強すぎて、あまり魅力は感じませんでした。
それよりも、現在入り口となっている、南側の扉口の方が、面白いかも。
二つありますが、面白いのは、奥の方、つまり後陣に近い方の扉、ライオンの扉と呼ばれている方です。手前のは、これもファサード側同様、修復された感が強すぎて、ちょっとこれはいいわ、と思ってしまうタイプです。
ああ、でもこうしてみると、きれいですね。そろいすぎているのが、ロマネスク的には、ダメでしょう、と思ってしまいますけれど。その辺が病気ですね。 タンパン部分にはめ込まれているのは、預言者アブラハムということです。信仰を広めるために神に選ばれたもの。それにしても、置かれた場所全体での大きさのバランスが、不思議すぎます。これは、あとからはめ込まれた疑惑もありですね?
奥の方の扉も、同じように整いすぎてはいるんですが、アーキトレーブ、いわゆるまぐさ石のところの彫り物が、面白いんですよ。
ん?モンブラン(ケーキの)?と思うような絞り出しのうにゅうにゅした髪の毛の人が、ずらりと。これは変わっていますよね。下に置かれた、こっちは和菓子的な花のモチーフも、独特です。 解説によれば、上に並んでいるのは松かさ、そして天使のお顔とお花。いずれも、教会の純潔性とか清純とか、そういったもののシンボルということらしいですが、天使っていうのは、若干とうがたってるイメージっていうか~!あ、雷に打たれちゃうかな。
ライオンの扉と呼ばれるのは、入り口両脇に、二頭のライオン君がいるからですが、それが、見事に溶けています。
このライオン君も、扉や教会に比すと、細部がちょっと小ぶりで、アンバランス。なんか、いろんなところでアンバランス感を感じさせる教会ですね。
この扉にほっとしたのは、オリジナルの浮彫を、半分溶けてしまった状態で、置いてあったからでしょうね。ちょっと残念だけと、このくらいの状態だと、時間が感じられて、ロマネスク感がドカンと来ます。他の場所は、もしかすると、完全再建なのか、保存状態がよかったのをさらによくしちゃったのか、そういうことなんでしょう。
その感覚は、二つの扉の間に置かれた、この立派な窓装飾でも、わかっていただけるかと。
ここも、周辺部はかなり再建臭い整い方なんですが、窓枠の一番内側の装飾の素朴さが、魅力だと思います。
ついでに、写真で気付きましたが、この、北海道土産、「鮭を加えた熊」みたいなライオン像も、めちゃくちゃかわいいですね。 右側の子も、どう見てもヒトを食ってるんですが、ちょっと気になるだらけ顔です。
素朴と言えば、これ、翼廊に当たる部分なのかな。
建物を縁取っているお花モチーフの浮彫が素朴でかわいくて、小さくてシンプルなバラ窓を取り囲むフィギュアが、現代アートっぽい雰囲気もあって、かわいいんですけれど、詳細見えないんですよね。残念。
次回、内部をご案内します。
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2018/04/09(月) 01:48:10 |
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