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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

郷土ビザンチン・ラブ、すごすぎ(カルピニャーノ・サレンティーノ)

2017.04.プーリアの洞窟教会巡り、その17

ドキドキの不法侵入の後、またまたクライマックス、到来です。

自分が言い出しっぺで、修行仲間まで巻き込んでしまったけれども、あまりに地味なのではないか、と、旅の直前まで、そして実際に仲間と同流するまで、くよくよしていたんですが、旅が始まった途端に、クライマックスの連続で、よくもまぁ、これだけのものが隠れているもんだ、という驚きと興奮に包まれまくり、よくぞ、これを企画した、オレ!と、今でもびっくりしてしまいます。
なんせ、ビザンチンだったり、プレロマネスクだったり、洞窟だったりするから純粋にロマネスクというカテゴリーから外れるところばかりなので、せめてイタリア語媒体にアクセスできないと、なかなか情報そのものにたどり着くことすらできない現実がありますし、情報も少ないので、本当に訪ねる価値があるのかどうかもわかりにくい。そのため、私自身も、そのあたりで、ためらいはあったんですよね。
それでいて、ロマネスク病の人だったら、そこからのつながりで、絶対に興味を持てる場所の目白押しなんですから。

というわけで、今回訪ねた場所もまた、予想を軽く上回るすごいものがありました。
でも、住所を頼りにたどり着いた場所は、こんなにしょぼいんです。




カルピニャーノ・サレンティーノの村の中心広場に建つ、サンタ・マリア・エ・クリスティーナ教会Chiesa di Santa Maria e Cristina, Carpignano Salentino。

旅の前にいろいろ調べた中に、この教会を管理しているグループの電話番号にはたどり着いて、事前に、オープン情報を聞いていたんですが、いつでも電話してくれれば、大丈夫ですよ、というように記憶していたので、たどり着いた時、閉まっているのは想定済みで、すぐに電話してみました。

そしたら、ちょっと困惑した感じで、モグモグと、「え、今ですか?」と。
考えたら、この日は、イースターの日曜日。それも、お昼前の時間でした。「事前に電話したとき、現場にたどり着いてから電話くれればいい、と言われたんですけど…」と言いながらも、もしかして私の勘違いかも、と気弱に思い至ったのは、イースターという背景があったからです。
でも、先方は、「わかりました。誰か行ける人を手配するので、しばらく待っていてくださいね」と言ってくださいました。




村の中心っぽいのに、限りなく地味な広場の日陰で待つこと、ほんの10分足らずで、おじさんが、カギを持ってやってきました。正直疑心暗鬼だったので、狂喜乱舞の気持ちでしたよ。

おじさん、大変親切で、会うなり、どの程度の説明が必要なのか、要は、我々の基本知識はどの程度あるのか、ということを聞いてきて、かなりプロな感じです。それでいて、比較的最近、日本から学生さんの団体とか、その他、二組ほど案内したけど、言葉が通じなくてね~、ほんと、困ったんだよ~、なんて、お茶目な感じもあって、すっごく好感度高かったです。

鉄扉を入り、この、新しい上物から入場します。地下に、フレスコ画があるはずなんです。




我々は、ロマネスクを中心に結構現場をあちこち回っているので、ロマネスクを中心に、そこそこの知識はあると思っています、なんて言ったんですが、あとから恥ずかしさに打ちひしがれる気持ちになりました。おじさんの説明は、本当にすごくて、特にビザンチンの知識、そして、ビザンチン芸術がここに遺された時代の、この地域の歴史や状況など知るわけもないんですから、要は、まったくの無知と変わるところがなかったわけなんです。

結構長い階段を降り、つまり、結構な地下レベルだと思うんですが、ビザンチン時代の礼拝所に足を踏み入れた途端、絶句しました。




これね、現場の方が、より鮮やかで、狭いスペースにびっしりなんで、圧倒されるような迫力なんです。
そして、おじさんの説明は、ノンストップ。イタリア語ですから、私は同行者に通訳しないといけなくて、頭も口もフル回転で、自分の気持ちもノンストップでした。




あとから、あれだけの素晴らしい説明、すべて動画に収めればよかった、と大後悔しました。とても、メモする余裕もなかったし、通訳する分、理解には務めたものの、インプットからアウトプットという感じで、結構スルーもしてしまって。あれだけの説明を現場で聞けることは、そうないと思うので、実に実に大失敗だったと思います。
説明を聞いたり理解したりする方に忙しくて、写真すら、あまり撮影していないんですから。




現場で見学するときは、割と、まっさらな気持ちで見る方が好きで、事前に知識を詰め込むよりは後付けで調べる方が好きなのですが、結局、キリスト教のこと、図像学のことを、実は全くわかっていないというか、実についていない、という事実も、わかった感じです。ビザンチンの図像学、というのもありますが、基本的に、図像の宗教的意味、聖書的意味で、深くとらえることはなかったんだろうと思いました。
表現されているその芸術性が好きで、現場を歩いているので、宗教的観点からは、結局見ていないということですね。まぁ、それはそれなんですけれど。

例えばこの聖母子像。




聖母がキリストの昇天をとどめるために、肩を抑えているんですよ、と。キリストは、もう昇天の準備万端で、ふわふわ浮かんじゃう状態だけど、まだ原罪を取り除くという契約書を手に持っているから、それをちゃんと決済するまでは昇天しちゃダメ、と。
押さえてるよ、確かに。ふーん、そういうことなんだ~。
それにしても、なんかこのマリア、しゅてき~。




光背にも背景にも、真珠が点々で、とってもビザンチンな様子です。
キリストも、宝石キラキラ。




ここは、ちゃんと五本指。

そして、キリストは聖書を、自分の言葉である聖書を見せつけるように持ち、聖職者は、言葉である聖書を、絶対に素手で持たずに、高価なストールで包むように持ちます。




殉教者は、胸に抱え込んで、自分は聖書の言葉通りに行動します、という自己主張をするそうです。

教会が捧げられている一人、クリスティーナさん。彼女も殉教した聖女なのかな。




これ、面白いです。右手に持っている十字架は、木で作られたもの。切られてしまった木は、ステイタスとしては死んでいるものですが、なんとこの十字架、芽吹いているんですね。で、復活を表しているんだそうです。わ~、芽吹いた十字架なんて、見たことない~。っていうか、たとえ見たことがあっても、きっと気付いてないです。

それにしても、豪華な衣装です。
時代が違う人を表すにも、当然この時代の衣装を着けさせるような話もありましたが、どこでどの聖人の話をした時だったか…。

他でも聞いたように思いますが、ビザンチンの場合、発注者や画工の名前が必ず記されるので、背景がよくわかるということで、ここにもしっかりといろいろな記載がありましたよ。古文書が読めると、こういうのは楽しいでしょうね。




なんか、がっかり。この百倍もお話は伺ったのに、忘れちゃうし、写真もちょっとしかないし。




デイシスの一部。

この地下スペース、このビザンチン部分と、もう少し時代が下って、ロマネスク・ゴシック時代のスペースに分かれています。
この地域一帯は、ビザンチン文化が浸透していて、時代が変わっても、キリスト教とビザンチンは共存していたんだけれど、どんどんキリスト教がのしてきて、ビザンチンは少数派となり、迫害されるようになり、それで、このビザンチン部分は、塗りこめられていたんだそうです。そのために、保存状態も良く、残された、という、今となっては結構な幸運に恵まれた、ということにもなりますが、なんだかスペインの、キリスト教とイスラムの話にも通じるような歴史だと思いました。
確かに宗教が共存できた時代があったのですよねぇ。いつから、こうやってお互いが非寛容になってしまったんだか。聖職者個人個人に追うところも大きいのだろうと想像します。キリスト教で言えば、教会の力が強大になるにつけ、という流れもありますよね。

新しい方のスペースは、やはりフレスコ画も新しくて、ビザンチン部分とはかなり違います。




ビザンチン部分の方が、圧倒的に好みでした。
でも、ガイドしてくださった方は、どの絵についても、これでもか!という説明の嵐で、本当に素晴らしかったです。

イースターのランチが待っていますから、最後の方は、おそらくご家族から電話が入って、申し訳ない状態でした。それでも、結局1時間半超にわたって、アテンドしてくださいましたよ。もう純粋にびっくりでした。だって、かなり狭いスペースなので、説明なしだったら、おそらくあっという間に見学終了で、思ったよりすごかったね、程度で終わっていたと思うんです。
それが、2時間近くが、まさに一瞬としか感じられない時間を過ごさせてもらって、おじさんは、まだまだ話したりない様子だし、こっちも、本音はまだまだお話を伺いたい気持ち一杯でした。

いつかまた、是非訪ねたい場所の一つです。いつまでも、あのグループの人たちが、しっかりと管理してくださることと思いますし、きっとチャンスがあることでしょう。でも、一人じゃ行きにくいかもね~。今回は仲間がいて、よかったです。

このイースターの日曜日、実はクライマックスの連続なんです。本当にすごい一日だったな。

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  1. 2018/05/23(水) 06:08:30|
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違法な不法侵入。そして、合法的な不法侵入(ポッジャルド)

2017.04.プーリアの洞窟教会巡り、その16

マテラから南下して、チェッラーテの修道院経由、プーリアの深奥にかなり入ってきたという感じで、なお、洞窟教会巡りは続いていて、目指すのはヴァステという村です。

多くの土地でそうなんですが、実際に訪ねるまでは、そこがどういう風になっているのか、まったく想像もつかないケース、多くあります。この、プーリアの洞窟教会巡りでは、まさに、出発前から想像もつかない、ということが前提だったので、なるべく事前に、地域の観光局に電話するなどして、情報収集に努めたのですが、それでもなおかつ、わからないことが多くて、この場所も、そういうところの一つでした。
っていうか、つまり、電話が通じなかったというだけのことなんですが。とってもイタリア的…。

でも地域一帯が、考古学的な公園になっていることは分かったので、とりあえず、そこを目指してみました。




戦場跡公園Parco dei Guerrieri、ヴァステ(ポッジャルド)Vaste (Poggiardo)

確かに、それらしい看板、それらしい建物、それらしい…。
考古学的な名称の付いた公園になっているようでしたが、でも、建物は、数日とかではなく、数か月とかそれ以上、開いた形跡も感じられない状態でした。

ちょっと途方に暮れた気持ちになってしまったのですが、なぜか、そういう、人里離れた場所なのに、人待ち顔に停車している車がいたので、目的の教会について尋ねてみると、ああ、それならこの先にあるけれど、わかりにくいから、先導するわ、と、明らかな一本道なのに、先導してくださる老夫婦。
そして、到着した広場。




この広場、妙に立派な駐車場もあるんですが、先導してくれたご夫婦の旦那の方が、ほら、その右手の方の奥に、教会があるよ、と、示してくれ、彼らはそのままあと戻りました。

残された我々は、その、示された右側を確認したのですが、見事にクローズ。取り付く島もなく、クローズ、です。
一同絶句で途方に暮れましたが、しばらくしたら、仲間の一人から、あそこからなら、入れるのではないか、という提案が。




確かに、メインの鉄扉は厳重にカギがかけられている上に、乗り超えるなど考えることもできないほどの状態でしたが、脇の方は、割と土手とか普通な感じで、いざとなれば、あれ、ここは土手だったので、乗り越えてはいけないとは思いませんでした、とか言い訳もできそうな状態でした。

というわけで、土手登りして、目的の洞窟教会にアクセスです。




なんか、異常にシンプルな建物。これかな?と疑心暗鬼で近寄ります。




サンティ・ステファニ教会Chiesa di Santi Stefani

これだった!
11世紀につくられた洞窟教会です。

なんか、換気のためかなんかわからないんですが、窓が開けられていて、そこから、一部覗き見ることができたんです。




肉眼では、ほとんど認識不可能でしたが、自分のデジカメの解像度マックスでは、結構撮影できていました。
だからと言って、実際に内部に入って、アーチを見上げるのとは、全然違いますけれどもね。




それでも、土手を上ってきて、よかったな、と満足感、達成感がありました。実際は、不法侵入以外の何物でもないのですけれど、笑。

ここね、一体の入り口に、鉄扉があって、カギがかけられていましたけれど、その中に、この洞窟教会をはじめとして、先史時代っぽい遺跡っぽいものもいろいろあるんです。




でも、説明版を読むと、先史まではいかなくて、ロンゴバルドとか、そういう時代の8世紀前後のあとがいろいろあるようでした。
なるほどなぁ、と思いながら、最初の土手をよじ登ってきた方に戻ると、なんか、知らない車が止まっています。
何もない場所ですから、我々以外に、他の人がいるわけもないので、もしかして、不法侵入が通報されて、警察でも出張ってきたのか、とにわかに緊張し、しばらく隠れるように様子をうかがっていたのですが、らちが明かないので、仕方なく、土手を降りたところ、なんと、最初にこの場所に案内してくれた夫婦のうちの、夫の方が、別の車で、戻ってきていたんです。
なぜかというと、わざわざこんなところまで、地域の教会を見学に訪ねた我々が、どうにも気になったらしいんですよ。実際は、イースターの、ご飯会の準備とかに駆り出されるのが面倒で、妻に対して、手伝わない言い訳を作っていた様子が濃厚でしたけれども。

いずれにしても、やばいなぁ、と不安になっていた我々を笑い飛ばして、いやいや、この辺りは、歴史が複層的にあるので、どうせなら、いろいろ案内したいと思って、と、またもや、車で先導して、このヴァステ地域の歴史を語ってくださいました。




この一帯が、考古学公園になっているのは、確かにそうなんです。先史時代の「兵どもが夢のあと」とでも言った、戦いの広場が、すごい範囲で広がっていて、ところどころに、墓だったり、住居跡だったり、いろんな遺跡が発掘されているようなんです。
彼にとっては、それら地元の遺産を、明らかな観光客である東洋人に、見せたかったんだと思います。わざわざ車で先導してくれて、ここはどうだ!みたいなかんじで、示してくれました。
この、果てしなく広がる草原で、そういった場所に案内された時には、有難迷惑半分、地元愛への敬意80%という感じで、楽しくお話を伺うことができました。

この後どうするんだ、と尋ねられたので、我々は、中世の洞窟教会を目的にしている、と言ったところ、それなら、是非俺の町にも来てもらわないと、と、当初の目的の一つであるポッジャルドまで、先導されてしまいました。




しかし、これは、イースターの日曜日です。このポッジャルドでも、イースターのイベントで、村の中心地は封鎖されています。それでも彼は、自分の顔で、我々の車も含めて、侵入禁止の場所にまで、アクセスしていくのには、こっちがおろおろしてしまいました。

というのも、この村にある洞窟教会は、まさに村の中心地の広場地下にあることがわかっていたので、封鎖状態では、アクセス不可能だったんで、ついていくしかなかったんです。




Poggiardo, Museo degli Affreschi della Cripta della Santa Maria degli Angeli
ポッジャルド、サンタ・マリア・デッリ・アンジェリ教会クリプタのフレスコ画博物館。

ここも、事前に電話で様子を聞こうと思ったのですが、電話は通じず、ただし、博物館となっているので、通常の開館時間にはオープンしているはず、と思っていたのですが、実際にアクセスしたところ、およそ、毎週のように開いているような様子はありませんでした。まぁ、そういう状態なので、クローズしていても、仕方ない、と簡単にあきらめがつきました。

無理やり侵入禁止の場所に入り込んでしまったので、長居するわけにもいかず、早々に退散しました。なんせ、警官が、不審な様子で、近づいてくるのが目につきましたから、アワアワしました。

それにしても、楽しかったです。
こういうことがあるから、イタリアにはまったんだよね、俺、と久しぶりに懐かしく、自分がなぜイタリアにはまったか、という原点を思い出した経験でした。この頃、こういうことは、なかなか起こらないけれど、南はやはりまだあるんだなぁ、とか。

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  1. 2018/05/21(月) 06:47:10|
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鉄パイプがんじがらめの教会の迷路にて(チェッラーテ)

2017.04.プーリアの洞窟教会巡り、その15

ずいぶんと間が開いてしまいましたが、再び、昨年のイースターに訪ねた、プーリアに戻ることとします。
マテラでの洞窟教会見学を終えてから、南下して向かったのは、こちらです。




チェッラーテの、サンタ・マリア修道院Abbazia di Santa Maria di Cerrateです。
なんと地味な入り口なことか。でも、何はともあれ、開いている様子なので、状態を気にすることなく、門に駆け込みました。
というのも、事前情報で、18時までのオープンであることがわかっていましたし、到着したのは、もう17時半過ぎだったからです。

しかし、門を入って、愕然。




ぎょへ~!
奇声が出るような大修理中でしたよ~!

それでも、あとから説明版を見て、実はすごくラッキーだったことがわかります。
この修道院、FAI(Fondo Ambiente Italiano)という文化遺産保護団体の管轄下にあります。FAIは、寄贈などを受けた文化財を多く管理する団体で、修復や、その後の公開プロジェクトや管理を業務としています。場合によって、レストランやショップを作ったり、管理する一帯をアミューズメント的な文化施設にするなんて言うことをやって、観光収入を得るなど、この団体の管理下に置かれると、非常にしっかりとした修復が施され、その後の公開についても安心できる、という仕事をしているんです。

で、ここに関しては、長年の修復が、2016年12月に、修復の第一弾が終了し、2016年早々から、第二弾が始まりました。その段階で、2017年3月25日から、修復工事中の状態で、見学者を受け入れることになったようなんです。我々が訪ねたのは4月ですから、再オープンして間もない時だったわけです。

いずれにしても、最も見るべき場所の片鱗は確認できたので、満足ではありました。
その一つが、このファサードの扉周りの装飾です。




道徳な装飾の配置です。タンパン部分にも、オリジナルは何か彫り物があったかもしれませんが、現在の状態で最も目が惹かれるのは、アーキボルトに並べられた、かなりサイズの大きい浮彫です。




これだけでかいものを、どかどかと並べているのって、珍しいように思います。
教会は、11世紀創建と古いものですが、この彫り物も同様なのかどうかは不明です。見た感じ、11世紀よりは下っているようにも感じられますが、どこのものにも似ていないような、不思議な手です。




これ、洗礼の図ですかね?一寸法師なんですけど。
こういう小さい人も、特にかわいいという様子もなく、なんだか、変に生真面目なんです。

これは、やはりマリアでしょうかね。




左の方に、小さく、牛と馬に見守られている誕生直後のジェズがいるようです。
これは、エリザベツ訪問と見えますが、傷みがひどいです。




この部分も、おそらくこれから修復に入ると思いますので、数年後訪ねたら、まったく違う様子になっている可能性もありますね。
こういったディテールも、どうなっていくのか。




いつか再訪してみたいと思います。

さて、この修道院教会、イタリアでは珍しく、ポルティカーダがある構造です。




この図、わかりやすいと思います。
もともと、マッセリア、つまりこの地域に多く作られた農園の構造を利用したものらしいんですよね。マッセリアの建物を、修道院に転用して、中に教会を作ったということなのかな。
それにしても、ポルティカーダ、それもここまで立派な構造のものは、本当にスペインを髣髴とさせるものです。
もう、エルサレムに渡る船が出る港も近い場所ですから、いろいろな職人さんの行き来も激しくあった可能性はあり、何らかの経緯で、そういう技術を持った職人さんが住み着いたのか、流れ着いたのか、または、スペインなどに行ったことのある人が戻ってきたのか。なんか、そういうのを考えるのは、とても好きです。

残念ながら、そのポルティカーダ部分は、足場が組まれていて、肝心の柱頭を見るのが大変なことになっていました。




でも、身体をひねったり折り曲げたり、無理な姿勢をしてでも、きちんと見る価値のある柱頭が並んでいるんですよ。




右の人、おっぱいですか?
なんだろう…。
それにしても、柱の傷み、すっごく激しいですよね。砂岩っぽいですが、このまま放置されたら、崩れて溶けてしまいそうな状態。修復されて、よかった、としみじみ思います。

これもなんだかおもしろい。




鳥というより怪物的なものたちです。
この鳥の羽の彫り方とか、ちょっとどこかの手を髣髴とさせるような気がするんですが、シロスでしたか?こういう彫り方してませんでしたかね?
ポルティカーダで、スペインに引きずられて、勝手に思い込んでいるかな。

柱は、つまらないものに付け替えられてしまったものもあるようですが、上のような状態で傷んでいたら、崩れるよりはその方がいいですね。




柱頭、どれも面白いですが、現場では、近寄ることもできず、日差しのコントラストもあり、詳細はわからなかったんです。今、こうやって写真で確認する方が、よくわかります。
これ、絶対修復で、よみがえりますね。

一瞬、有翼のマルコにも見えますが、どうやら、ライオンの背中に鳥が乗っているようです。




この翼の彫り方、やはりシロスっぽい。ちょっと稚拙だけど、笑。

ポルティカーダの扉から、内部に入れますが、中はさらに鉄パイプががんじがらめ状態でした。




フレスコ画は、相当時代が下る様子です。
これ、中央身廊です。西側のファサードに向かう図。この状態で、公開してくださる、というのがすごいです。




正確な時代は不明ですが、かなりビザンチンっぽいフレスコ画も一部ありました。




今後、周囲の修道院に使用されていた建物や、さらに外に広がる土地も含めて、修復プラスアミューズメント化が計画されているようでした。と言っても、結構人里離れた場所なので、どういう風に開発していくのかわかりませんが、ミラノ郊外にある古い修道院のように、レストランでも併設する可能性もありですね。
いずれにしても、ディテールが面白いので、修復が終わった暁には、是非再訪したいと思っています。

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古いミラノと新しいミラノのコントラスト

フオリサローネ2018 その11(最終回)

トリエンナーレ、続きです。
セイコーの展示で、すっかり満足したものの、一応その他も、さらりと見学しました。




イベントのタイトルとか忘れちゃったんですが、韓国の展示でした。
伝統的なマテリアルを使って、それを現代化して、時代に合わせるみたいなコンセプトは、日本の多くの伝統的な製品メーカーが目指している方向性と共通するものだと思うのですが、韓国や中国は、まだ、伝統からの踏み出しが浅くて、今一つコンテンポラリーに乗り切れてないところがあるように、多くのケースで感じます。

多くの素晴らしい伝統工芸を有する国ですから、おそらく、日本同様、これからどんどん発展する分野ではないかと思うのですが、今のところは、まだ後塵を拝している状態かもね。




この箪笥とか、とってもレトロでいい感じだけど、おそらく本物の伝統工芸に過ぎないと思われます。日本の古い箪笥のような。韓国の伝統工芸って、とっても繊細なタイプが多いかもね。私は、極薄の布を縫い合わせるパッチワークみたいなポジャギという技術?製品?それで作られた布が、とっても好きです。

意外と食いついてしまったのが、建築モデルの展示。




建築家は、コンペのときに、こういうモデルを提出するんですよね。ほとんどは実現しなかった作品なんですが、世界各地の建物が一堂に会していました。




建築家の頭の中では、具体的に建造するときのイメージがあってこそのモデルなんでしょうけれど、コンペでの決断って、本当に大変なことなんだろうな、という気がしました。イメージばかり先行しても、ダメだし、かといって、明確なコンセプトを押し出せないモデルでは、手にも取ってもらえないだろうし。
それで、東京オリンピックのザハの話などにも発展しちゃうんでしょうね。コンペの審査員って、すっごく責任重いですよね。

トリエンナーレで最後に見学して、大いにがっかりしたのが、こちら。




世界各地でデザインウイークというイベントが開催されているようで、これは、日本のイベントに連動した展示だったんでしょうけれど、もう、それはそれは驚くほどにしょぼくて、その割にスペースは結構取っていたので、しょぼさが無限大に強調されていたとさ~!
同行の友人に言わせると、日伊修交何年記念とか、この数年、日本側は結構いろいろ投資して、多くのイベントを主催して来たりしているので、そういう文化的な予算が底をついているのではないか、と。まぁ、ありそうな話です。
しかし、日本の強みを発揮できる工業デザインという世界で節約してはいけないですよねぇ。国を挙げて、とは言わんまでも、こういう情けない展示なら、お願いだからやらないでくれ、と心底思いました。恥ずかしいです。

もう疲れちゃっていたので、参加しませんでしたが、これも、ちょっと面白い展示になっていました。




エスプレッソメーカーであるイリ―Illyです。
なんかね、コーヒー売らないというのはあるけどね、コーヒーで偶然できた染みをアートにしてました。




これ、ちょっと刺激されるよね。

あと、最後の最後に、セルフサービスのカフェテリアの脇で発見した、面白いもの。




Piece of Venice

ぱっと見、なんだか絶対わからないと思いますが、ちょっとかわいい感じがしませんか。
木製の、万華鏡とか笛なんですが、原材料が、なんと、ベネチアで取れるあるものなんです。

ベネチアで木?ってすごく疑問ですよね。
なんとね、運河にたくさん刺さっている木の杭が原料!あの、水上バスやゴンドラに、水位や経路を示している杭です。
あれは、数年に一度交換する必要があり、古いものは廃材として捨てられるしかなかったものを、この、ブランドなのか、プロジェクトなのかわかりませんが、ピース・オブ・ベニスというブランド名で、複数のデザイナーが再利用で、アートっぽいオブジェクトや、木のおもちゃなどに再生する活動を始めたんだそうです。
立ち上がったばかりですが、近々、ベネチアにも、お店がオープンすると、コンパニオンのお兄ちゃんが言っていました。

万華鏡などは、販売していたら買いたいくらいの出来の品物ですが、今のところは、個別の販売はしてなくて、廃木一本を購入するシステムとか言ってました、笑。

将来、ベネチアでお店に出会えたら楽しみです。
なんか、運河に沈んでいた木を、身近に置けるというのも、夢があるというかロマンチックな気がしませんか。

へとへとになって、終了しました。
そしてもう一つ、これがまさに最後ですが、フオリサローネの会期が終わってから、たまたま通りかかったので、立ち寄ったところも、久しぶりで楽しかったので、アップしておきます。




Fondazione Sozzani – 10 Corso Como
Domus 90. Gio Ponti

コルソ・コモ10というブランドは、日本でもそこそこ有名なのではないかと思いますが、デザインに特化した、なかなかオシャレなブティック件、青山ブックセンターみたいな本屋件、カフェという総合文化センターみたいな場所なんです。
そこの中に、カルラ・ソッツァーニという写真のギャラリーがあり、無料のため、定期的に行っていたのですが、このところとんとご無沙汰していました。
で、フオリサローネ協賛の展示があったので、せっかくだから、と行ってみた次第です。

Domusというインテリアとか家関連の雑誌の、創刊90周年記念の企画だったようです。その雑誌の編集長を、40年にわたって務めたのが、このジョー・ポンティというアーティスト。建築(ミラノで最も有名な現代建築、ピレリ・ビルがこの人の設計だったと思います)からデザインから、インダストリアル系で、ありとあらゆることをしていた超多才な人物で、私はこの人の作る食器が大好きです。
とってもモダンで、品があって、食器好きだったら、絶対にほしくなるものが一つは見つかるような、そういう作品なんです。
ジノリとか、工業的大量生産多くのブランドにも、影響を与えたと思います。




やっぱりいいなぁ、と思いましたが、展示品はわずか。奥の方に行くと、これまでアクセスしたことのない屋上へのアクセスが開いていました。

そうしたら、びっくりするくらい広々としたスペースの屋上が広がっていました。




そして、古いミラノに埋もれるようにある立地なんですが、今やこんなすごいことになっていました。




ガリバルディの駅前にそびえたつウニクレディとの高層ビルを背景にして、ミラノの昔ながらの家並み。これは印象的でした。
手前には、ミラノの伝統的な住宅建築、Casa della ringhieraの見える中庭。そして反対側に高層ビル。
サローネ週間にピッタリな風景で、最後を締めることができた気がします。




ということで、実にだらだらしてしまいましたが、今年のフオリサローネも、ばっちり堪能して終わることができました。
お付き合い、ありがとうございました。
いよいよ、ロマネスクに戻りますよ~!

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  1. 2018/05/15(火) 02:52:14|
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シチズンとセイコー

フオリサローネ2018 その10




トルトーナの見学後、本当はトリエンナーレ美術館に立ち寄るつもりでしたが、あまりの疲労に、もう無理、となって、自宅に直帰してしまい、そこで今年のフオリサローネは終了のつもりでいたのですが、週末に、再びうろつく機会があり、それなら、ということで、トリエンナーレに行く機会を得ました。




美術館の前にドカン!と置かれていたのは、高級ヨット。お金持ち御用達のブランドらしいですよ。こういうヨットが日常の富裕層が、現実にそこかしこにいるのも現実のミラノです。だからおそらく、こういうメーカーさんが、一般向けの展示に投資する価値もあるんですよね。貧富の差が激しい社会って、こういうもんです。

中に入って、最初の展示もヨット関連。




Il Mare a Milano: Yachtvill
Sanlorenzo
Design by Piero Lissoni

縦長の大きなスペースの両側が、すべてスクリーンになっていて、まるでベネチアの大運河を進んでいくような映像が流れます。
ほとんど寝そべるような椅子に座って、しばしベネチアのゴンドラ気分を味わいました。こういうのは、単純だけど、トリップ効果は絶大で、結構好きなタイプのインスタレーション。

この後は、結構なスペースを使って、沢山のデザイナーさんたちの小品が並びます。




なんということもないけれど、木製の木工品的なデザインオブジェは、木の肌触りとか、そういうところだけでも、結構楽しい。
こんなありがちの、日常グッズの巨大化製品も、意外と楽しいんですよ。




お庭にも、いろいろ。
全般に、中国パワー、感じます。が、自分の好みには、あまりなじまない。




サローネ週間も終わりに近づいた土曜日の夕暮れ時の、トリエンナーレの庭。




なんとなく、多くのけだるさや満足感が漂っているっていうか、気持ちの良い夕暮れの空気満載でした。今年も、みんな楽しんだはず!
でも、実はまだ、終わりじゃないんです。




この美術館、結構協賛展示、たくさんあるんです。
例えば、これ。




Mini, inspired by origines
Don't Need a Title

ミニクーパーの展示で、結構なスペースを使って、ノスタルジックなモデルと同時に、ここでもやはり自動運転車の展示がありました。ミニと自動運転車って、とっても遠いイメージですが、今やそんなことは言ってられないんですね。
それにしても、展示されていたプロトタイプ的なモデルには、おそらく多くの人がミニに感じる魅力は、ゼロでした~!




その他いろいろ、歴史的な小品の展示なども楽しみつつ、目的地へ。




The Flow of Time
Grand Seiko
Design TAKT PROJECT, Shigo Abe and Hikaru Mori

数年前に、シチズンがすっごい展示を行っていて、一年置いて、さらにバージョンアップした展示をしていて、そういえばセイコーはどうしてるんだっけ?と思ってたんですが、ここにきて、いよいよって感じですか?

両社の関係っていうか、位置関係っていうか、本当のところはよくわからないけれど、イメージとしては、セイコーは歴史的な伝統的な高級メーカーさんで、たいしてシチズンは、割と新興で、デジタルとかにも抵抗なくて、安いラインという感じ。でも考えると、シチズンの方が、海外には攻めているような。多種のスポーツイベントなどでも、シチズンは、結構スポンサーシップを取っているけれど、セイコーって、あまり見ないような?もしかして、海外では、シチズンの方が知名度が高いかも?という気がしないでもない。

そんな中の展示ですから、ちょっと興味があったわけなんです。

で、これが期待に応えるなかなか面白い展示でした!

セイコー動画

細長いスクリーンに流れる映像をバックに、手前にはしずく型の樹脂が12個、並べられています。




ついついスクリーンの映像に目が行ってしまうのですが、並べられた樹脂も、オブジェとして、とっても美しい。




中に閉じ込められているのは、どうやら時計の部品です。




そして、入り口である、写真向かって右から左に向けて、しずく型が、少しずつ形を変えています。最後のしずくに、完成品の時計が!




それも、しっかりと時を刻んでいます。うわ~、驚いた!
これはね、よかったです。

展示が面白くて、個人的には、誰がかかわっているのかとかそういうことに興味があったのですが、残念だったのは、Grand Seikoのすっごいカタログを置いていた割に、展示にかかわる情報については、フライヤーなどが用意されていなかったことです。壁面には、説明書きがあったし、出口にいた日本人の方が、結構説明をしてくださいましたけれど。

でも、これだけ印象的で美しい展示をした以上、そこについて、もうちょっと宣伝しようよ!デザイナーさんたちが、これだけいい仕事したのに、フライヤーなしは、残念すぎ。

あとね、美しかったのは確かだけど、シチズンに比べると、インパクトが今一つ。Grand Seikoの製品押し、という感じで、Seikoのイメージ押しじゃなかったんですよね。シチズンは、とにかくイメージ押しだったのが、よかったんじゃないでしょうかね。

まぁでも、予想外に、見ることができただけでも、よかったです。これは見といて損のない展示でした。

あ、終われない。あと一回かなぁ。

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疲労の極に、おそろい伊達男八人衆

フオリサローネ2018 その9

トルトーナ、続きです。
Nendoのあとは、もう一つの目的を探して、スーペルストゥディオをうろうろします。
見つからないなぁ、と後から考えれば、全然違う場所をうろうろして、出会ったのがこれ。




Kengo Kuma and Associates
Breath/ng

なんかね、壮大な折り紙作品なんですよ。
置いてあると、ただの折り紙にインスパイアされたアート作品にも見えるんですが、これ、ナノテクとかを駆使して、空気の汚れを吸収するとかそういう素材を使って、まさに折り紙を折るようにしてハンドメードで折ったパネルで形作ったものなんだそうです。
隈さんらしい作品、と言ってよいのでしょうね。
壮大だけど、地味です…。

広い会場をうろうろして見当たらず、受付で尋ねて、やっと見つけたのが、目的のこちらです。




Kawai
Christal Rain (Takahiro Matsuo/Creation partne and light artist)

もっと大きなスペースでやっているはず、と思い込んだので、かえってわからなかったのですが、とても小さい場所を駆使して、こんな素敵な空間を作っていました。
これも、画像をのっけてみますね。


LEDの雨が、演奏の音の強弱によって、強くなったり弱まったり、また光の流れが変わったり、つまり光が音に反応するシステムだったようです。
ピアノは透明で、全体がキラキラしています。




ピアノのある場所は、水が張ってあるのが、びっくりでした。




こんな場所をアップにして、演奏者の方には悪かったかもですが、思わず、注目しちゃいましたよ。
靴がダメになりそうだし、ペダルも滑って、弾きにくそうだなぁ、と若干同情しつつ。

出る時に、Kawaiの方がいらして、ちょっとお話を聞くことができたのですが、この水は、クリスタル・レイン、というコンセプトのために、張ったものだと。そうか、コンセプトね、すっかり失念していました。
私は、演奏者が大変そうだという印象しか受けなかったのですが、実は、ピアノ製作者にひどく怒られたんです、と恐縮しておっしゃっていました。というのも、一見、すべてガラスとかプラスチックとかの透明素材で作られているように見えるピアノですが、音を鳴らすために、やはり肝心の場所は木を使っているので、水は大敵なわけです。技術者としたら、かわいいわが子を、わざわざそんな状態に置くことに納得ができない、でも展示ディレクターとしては、イメージやコンセプトを重視せざるを得ない、ということだったらしいです。
正直、LEDの雨で十分で、本来売るべき製品を品質を損なうような水までは張らなくてもよかったんではないか、と思わないでもないですが、全体美しかったので、展示を楽しむ観点からはありでした。

あとは、軽く流すように、見学。




Cappellini by Shiro Kuramata – Homage to Kuramata

これは、なんか見たことのある特徴的なインテリア。30年前のコラボ作品だそうです。Kuramataというブランド名で、非常に有名なインテリアのようです。他の場所でも、目にしました。30年前なんて、日本のインダストリアル・デザイナーの存在すら知らなかったなぁ、としみじみします。
そんな時代に、インテリアの最前線であるイタリア・マーケットで活躍している日本人デザイナーさんがいらしたんですねぇ。そして、伝説的な家具などを生み出していたんですねぇ。すごいことです。

また、自動運転車がありました。




当たり前のことではあるんですが、自動運転となると、今の車の、大きなメカニック部分がなくなって、居住性が格段に上がるんですよね。こうやって、たとえプロトタイプで、実際にどうなっていくのかはわからないにしろ、眼前に提示されると、車の未来の可能性に、何かしら期待する気持ちが出てくるのが不思議。決して、自動運転を待っているわけでもないのに。

沢山のメーカーさんのロゴがついていますから、それぞれのメーカーさんが、得意分野で協賛しているものなんでしょう。自動車は、工業製品としては、その必要とする部品数から言っても、国の基幹産業として発展してきましたが、これからはどうなのでしょうね。
方向性が変わっていも、多種目の部品が必要なことには変わりがないから、やはりそういう位置づけのまま行くのかどうか。
でも、メカニック的な部品メーカーは、不要になっていくのかもしれませんから、産業地図は、刻々と変わっていくのでしょうねぇ。これもまたデジタル化かと思うと、なんだか虚業が増えるようで、嫌なんだけどなぁ。

あ、この人は面白かった。虚業とは正反対の世界を、一人でやっていました。




小さい木のブロックを組み立てて、椅子を作るキットを開発したということでした。大きな箱にキットを詰め込んで、展示してありましたよ。上は、完成品ですけれど。




一つのブロックは、手のひらの半分もない、すべて同じ形のもので、それをひたすら組み合わせていくらしいです。ハンコを押した木のブロックをお土産にくれましたが、どうにもならない、笑。
やりだすと、やめられないくらいにはまる、とおっしゃっていましたが、形にするのは大変だと思いました。うん、意外とはまるかも、という恐怖があります。

日本の小さな展示は多数ありました。




印象としては、地方の中小のメーカーさんたちが、頑張っているな、というもの。活路を開こうと、とにかく来ている感じがします。潮流として、伝統産業の見直し的なものがあるので、うまく時流に乗れば、何かつかめる可能性もあるんですよね。
変にモダンになろうとせずに、あるものを、うまく活用してくれるようなコラボに出会えればいいなあ、と思います。実際、かつての、着物を仕立て直して何かにする、みたいなタイプの伝統産業再生とは、方向性が変わってきた気がします。
金継ぎなんて、日本人でも実際のところよくわかってない技術も、いろいろ活用できるのではないでしょうかねぇ。ベネチアビエンナーレの建築展でも、そういう技術が、出ていましたよね、確か。

その他、小さいのをいくつか眺めながら、スーパーストゥディオ、あとにしました。その時でも、多くの見学者が押し寄せていました。

ちなみに、入場は、登録制なので、入り口付近はごった返しています。社会人であることの特典は、名刺を置けば、登録なしに入場できること。
へへ、名刺は、こういうために持っているわけではありませんが、ま、いいじゃないですかね~。




ポルタ・ジェノバの駅に向かう道沿いには、小規模の展示会場が多々ありますが、もう疲れ果てていて、入る気もしないまま、ちょっと覗き込んでは出る、の繰り返し。
でも、割と入場制限することの多い会場をのぞいたら、行列はあるものの、入場できそうだったので、何があるかもよくわからないまま、並んでしまいました。




戦時中でも、物資不足のロシアでもないのに、行列があると並ぶって…。あまりにつかれていて、思考回路もかなりマヒしていたのもあるかと思います。

しかし行列の心理って不思議。私のあとにも、どんどん列ができるので、やめることもできなくなるんですよね。




この右側、不ぞろいだけど行列で、ずっと門の方まで続いてしまいました。
で、やっと入ったと思ったら、なんだかつまらなくて~。
秒殺状態で、即退場しました、ぐすん。




もういい、何が何でも帰る!と、わき目も降らずに歩き出したところ、あれま。
可愛いアペ(オート三輪)がやってきて、お揃いの制服らしきものに身を包んだ若者たちがわらわらと。




わき目をふらんでも、これは立ち止まりますわ。
整列!




きゃ~、かわいすぎ!
思わず、せかせかしている人たちの足が止まり、シャッターなりまくりです。
一体何の人たちか不明でしたが、さすがイタリア男~!お揃いだけど、靴なんかばらばらで、姿勢もピシッとしないながら、妙に色気のある伊達男ぶり!かわいい~!
と、心で叫ぶおばさん多数だったと思います、笑。

疲れた身体に最後の眼福。フオリサローネはやはり楽しい。

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今を時めくNendoでしたが…。

フオリサローネ2018 その8

一度ついてしまったさぼり癖は、なかなか治りませんで、どうもぜえぜえしながらのアップで、大変ストレスフルですよね~。実は夏休みのことなども考え始めていて、そうしたら、しばらくご無沙汰のロマネスク病もムクムクと起きだして来たようです。
というわけで、いつまでもだらだら、現代ものにかかずらわっている場合ではなかろう!という気持ちは強くなってきましたので、サクサクと進めたいと思います。

さて、フオリサローネのメッカであるトルトーナ、その中でのメッカ中のメッカ、スーペルストゥディオSuperStudioです。目的は、こちら。




Nendo
Forms of Movement

今を時めくデザイン集団ネンドが、大きなスペースを使って、大々的に展示をしていたのです。金曜日の午後に行きましたが、パナソニックにはかなわないまでも、かなりの行列が出来ていました。炎天下で半時間は並ばされ、かなり疲れました。

10社のメーカーさんの商品を独自のコンセプトで紹介する、みたいな展示でした。




こういうのがかわいくて、日本的っていうんでしょうか。そう、かわいいんですよね。
「かわいい」って日本語、流行りましたけれど、確かに、こっちには、生活全般にかわいさを盛る、という発想、ないから、新鮮なんでしょうね。
日本人は、かわいいものが大好きなんですよね。そして、それは日本人だけじゃないはずなんだけど、イタリアなどは、いわゆるかわいいものは子供向け、みたいな発想が、いまだに強くて、大の大人がかわいいものにメロメロ、というのは許されなかったり、興味を持てない人も多くいるように感じています。例えば、会社でかわいい文具を使っていても、見向きもされない、みたいな。
ま、それはともかく。

展示が面白かったりそうじゃなかったり、いろいろだったんですが、結構伝統企業比率が高くて、そういう企業も、常に新規開発に努めているのだなぁ、と感じられたのが、面白かったかな。
これは、あの企業ですね。




これまた世界に誇るファスナーのYKK以外にありませんよね、このアイコンは。
ここでまた、動画をアップしてみます。


こちらの服飾でも、YKKはよく使われていますが、そういうアクセサリーものの性能が今一つのイタリアでは、YKKのファスナーを見ると、お、安心だな、と思います。それってすごいことですよね。

これはなんだかわかるでしょうか。無理ですよね、笑。




すごく地味だったんですけれど、これも去年大規模に展示していた紙のタケオでした。紙製の筒を使った懐中電灯を展示していました。紙製と言っても、紙に、極薄の回路をプリントしたとかそういうハイテクな素材なんですけどね。




触れませんでしたが、すっごく軽いんだと思います。
懐中電灯という形にしたのは、それそのものに意味があるというより、幅広い応用可能性の視覚化の一つに過ぎなかったと思います。紙なんですもん。




その他、帝人とか、これでは全然わからないですが、ダイキンとか。




ダイキンのは、なんでダイキンなんだろうって感じのキッチン用品。なんでも、ダイキンのエアコンディショニングにシステムを、応用した便利グッズ的な。
暗闇だし、残念ながら、よく撮れた写真が、面白くないのしかなかったんですが、例えば、こういうもの。




不思議なへら的なものが入った容器。
これに液体を入れて、このへらというか、ホットドッグ型のものをグイっと。




すると、容器とへらが密着した分、押し出されるように、液体が、注ぎ口から、するすると出てきます。




あ、これはユニバーサル的な?容器を持ち上げなくても、この軽そうなへら一つで、無駄なくうまく注げます的なものだったのかしら?
どれも、こういう系統のもので、勿論、実用化しているものではなさそうでしたが、コンセプトは面白かったです。

いくつか、知らない伝統産業計の会社の展示が並んでいて、ちょっとインパクトに欠けるなぁ、と思う頃、お~、Nendoだぁ、という展示がありました。




これは美しかったです。
ガラスの置物のように見えるものは、なんと砂時計なんです。INACという会社の樹脂製の砂時計。




バッグにふわふわしているのは、映像です。クラゲのように揺蕩っていて、砂時計の時間にピッタリな演出でした。




確かに見せるのがうまいんですが、でも、全体のインパクトは少なくて、期待が大きかっただけに、正直がっかりしました。こういう企画がどういう風に作られるのかわかりませんが、せっかく大きなスペースを使って、誰もが注目するNendoなら、もっとすごいことが出来そうなのに、なんか今のあまり元気のない日本企業を象徴するかのような小粒の横並べっていうか…。
今後に期待しますかねぇ。

最後に、なぜかガチャがずらりと並んでいましたが、使用停止中とありました。これは、ただ並べるだけの演出なのか、それとも実際に稼働する日があるのかどうかは不明です。




トルトーナ、一気に行けると思いましたが、ちょっと疲れちゃったので、も少し続きます。

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いきなり、ももも、のショークッキング

フオリサローネ2018 その7

ここは、やっぱり行っとかないとね~、ということで、仕事を早々に切り上げた金曜日の午後に、行ってきました、トルトーナ。




意外と地味なのは、にぎわっているポルタ・ジェノバとは、まったく反対側からアクセスしているからです。この道を進んで、ポルタ・ジェノバに近づくとともに、人混みが増えていきます。
勤務先から向かうこの道も、おなじみになりましたが、実はつい最近、勤務先が引っ越したので、次回からは、違うアクセスになるなぁと思っています。




フオリサローネのキャラクター的なものたちにも、いつもこの辺で会えますね~。ゴリラ、そして、ウサギたち。




このウサギ、今日たまたま立ち寄ったギャラリーで展示販売していましたが、最安の白うさぎちゃんが100ユーロでした。
灯りが入っているタイプなら、ちょっとほしいですが、100ユーロは置物だけのお値段。これが、メタル系になると、ぐぐーん、と価格がアップします。それにしてもかわいんだよね~。

ここは、展示が目白押しなので、選んでおかないととんでもないことになります。というか、わざわざ脇道に入って見学しても、すごくつまらなかったりして、がっかりすることも多いわけです。

月曜日から、毎日会社帰りに歩き回って、その金曜日ですから、肉体的には相当疲れていて、開始前からへろへろ状態。でも、雰囲気のありそうな看板を見ると、ふらふらと入り込むのが人情ってもんです。




これは、Venity Fair – Green Houseという看板を見て、ついふらふらと奥まった場所まで入り込んだのですが、くつろぎスペースがあるくらいで、展示としては、商売無関係の人には全く面白くなくて、舌打ちしながら、本道のトルトーナ通りに戻りました。
で、目的以外には入り込まないこと!と心して、進んでいきます。

とか言いながら、ここは、ターゲットにはしてなかったけど、でも、ちょっとチェックしてたよなぁ、という気がしたうえに、この入り口にそそられて、つい入り込んでしまいました。




Miele c/o Padiglione Visconti
Creating New Dimensions




これは、ちょっとそそられちゃうでしょう~。
そして、入り込んだのが、実にちょうど良いタイミングだったんです。

天井も高い、大型のテレビスタジオのようなスペースで、私が入り込んだちょうどその時、中央にしつらえられたキューブから、ももももも…というような効果音とともに、何かが降りてくるところだったんです。




え~!何が起こっているの?これはイベントじゃ~ん!と周囲もざわめいています。
降りてきたのは、いかにも今どきのキッチンシステムでした。




これから何が始まるんだろう?という期待感を盛り上げる演出、すごかったです。
あ、ちなみにMieleは、白物家電とかで、こちらでは著名なブランドです。

「未知との遭遇」ばりの派手な演出で、上から降りてきたシステム、四面それぞれにシェフが登場して、なんと、いわゆるショークッキングが始まりました。
氷の器に、フレッシュなお魚を入れて、器に影響なく、中のお魚だけを調理できる、ハイテク調理器の紹介、ってことだったんだと思います。




マスターシェフ的な演出で、結構な時間を、うまく持たせて、調理済みまで持って行きました。
オーブンから出てきたお魚は見事に調理されていて、でも、氷の器は溶けることもなく、というのがショーです。




調理済みのお魚は、見学者にもふるまわれていましたが、なんだろう?氷の器の中で調理する必要もないし、新鮮な切り身、オーブンで5分も調理したらだめだろう、という気がしちゃって、苦笑いしながら、会場を後にしましたが、運よく、料理をゲットした見学者たちは、嬉しそうに食べていました。

その先にあるMudecにも、一瞬立ち寄りましたが、特段、協賛企画に面白いものがあるわけでもなく。




とはいえ、ここのアトリウムは、いつ来ても、印象的ではあります。いわゆる、インスタ映えする場所かもね。笑。

トルトーナ地域では、いくつか展示が集積している場所がありますが、これはその一つ。




Via Tortona 31

さらさらっと見ていきます。




Energy Zone by Hyundai

韓国車に、特段の興味があったわけではないですが、ここに展示されていた近未来的な車、やはりすでにAI体現した車になっていましたよ。




このスペースには、小ぶりな展示が複数ありましたが、ちょっと興味を持っていたのは、こちら。




Geidai Factory Lab & Wow! Lab
Resonance Mterials Project

東京芸大のブースです。

芸大生のアイディアを企業が形にして、というような内容だったようです。場所がいいから、それなりに人も入ってきていましたが、どうも、今一つ覇気がないというか。
私は、企業からの人と、ちょっとお話しましたけれど、学生さんの姿は少ないし、一つ一つが独立した作品で、つながりがわかりにくいし、若干唯我独尊な作品が多かったような気がしました。




昨年、同じトルトーナで展示していた慶大の展示の方が、統一感があって、展示スペース全体のコンセプトがあって、よかった気がします。
気持ちとしては、同胞の若者を応援したい!なんですが、芸大がこれじゃダメじゃん、という印象だったかな、残念ながら。

この辺りで、身も心も、ヘロヘロなんですが、トルトーナを訪ねた目的であるスーパーストゥディオ、見ないわけにはいかず。
続きます。

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マニュアル車が歴史となる日

フオリサローネ2018 その6

ルイ・ヴィトンの展示、続きです。




革の花器。
中にガラスが納められていますが、花瓶そのものが、花びらを重ねてできたようなもので、その正確な仕事には脱帽です。好みかと言えば、さほど好きだとは思えないのですが、とにかく職人技の美しさ素晴らしさには脱帽です。

そして、鏡で奥行きを演出した狭いスペースに並べられた、ボトル型のランプ。




ボトルを下げる部分が皮です。これね、結構大きいボトルで、存在感があって、かなり好きでした。この展示、すべての作品の見せ方が素晴らしいですね。

先の暗い部屋には、プリズムのような光をまき散らす装置があり、壁には、幾何学模様となった鏡が飾ってあります。




ただの装飾と思ったのですが、鏡だったんですね。それも、裏が革で作ってあって、仕掛け付き。




なんと、たためるんです!
そして、幾何学模様の作る目の錯覚的な面白さもありますね。たたんだら、びっくりするくらい小さくなってしまうの、驚きませんか。
これ、持ち運びにも、重宝しそうな品物ですよね。いや、周囲の三角は、役に立たないか。

しかし、鏡をたたんで、鏡面を隠す、というのは、すごい発想のような気がします。こちらでは、鏡は絶対に隠さないですから。ベルサイユの鏡の間の世界で、鏡は奥行きを広げるアイテムとして使われるもので、日本の鏡台のように、カバーを付けるという発想がないと思います。
この折りたたみ鏡の発想は、どこにあるんでしょうね。

そして、かなりのスペースが、家具にも割かれているのは、驚きでした。




カバンの撮っての技術を使ったような素材で作られた衝立状のもの。御簾とか几帳とか、日本だと、衝立って、邪魔にならないような、そこはかとなくイメージのような気がしますが、ヴィトンの衝立は、堂々と存在感を自己主張しています!

小型の椅子。




これは、ヴィトンの皮革技術は、最小限という感じでした。
ちなみに、家具のラインは、数年前から手掛けていて、欧州の著名メーカーやデザイナーと提携しているそうです。とにかくどの分野でも世界の一流レベルを目指すというコンセプトで、今やカバンのみならず、家具や時計や、かなり多方面にヴィトンブランドを広げているようです。

昔のブランドは、それこそトイレタリー製品にまでイニシャルを付けるだけのライセンス商売をしてぼろ儲けしていたように聞いていますが、今はそういうのは流行らないんでしょうね、きっと。安売りではなく、あくまでクオリティを保って、高額商品だけで攻めていく、というやり方。ブランドを売っていきたいなら、確かにその方が正しい方向性でしょうね。タオルやスリッパまでヴィトン、なんて、おかしいですもんね。

小型の椅子は、もう一種類並んでいて、これは面白かったです。




形が面白くて、なんだろうね、椅子か、足置きか、と同行者と話していたら、ここではイタリア人の女性コンパニオンが寄ってきて、いろいろ解説してくださいましたよ。そして、前回の銀座店の販売員さん同様に、テレビショッピング状態に…!

確かに我々食いついちゃったんですけどね。なんせ、色がいいんですよ。どれもが華やかなのに中間色っていうのか、他を邪魔しない絶妙な色合いで、その上、これ折りたたむとぺったんこになります。
例えば車に積んでいると、結構役立つのではないか、とかそういう代物。
お値段の話も出てきましたよ。確か一脚2900ユーロ。ほぉぉぉぉ。
もし、ご興味があれば、もっと明るい場所で見てもらったりもできるから、日曜日にまた来てください、と名刺までいただいちゃいました。

これはね、お金に不自由しない人だったら、革製のお花よりは、実際にほしいと思いました。でも、このお値段では、現実的ではなくて、残念~!

それにしても、ヴィトンの販売員は、皆さん素晴らしいです。お金に余裕があれば、ちょっとふらふらっと別室にいざなわれてしまいそうな、そういう接客テク、持っていらっしゃいますね。
そういう選りすぐりの販売員を送り込んだんでしょうかねぇ。それはそれですごい力の入れようです。販売数に応じて、ボーナスとかあったりするのかなぁ。ある意味、ブランドとして見直したよ。

こちらの椅子も、すごく好きでした。




可愛いですよね、ちょっとレトロで。
でも、先ほどの折り畳みがあの値段だとすると、想像はつきますから、勿論確認もしませんでしたけども。




どの家具を見ても、もうお値段の話で盛り上がっちゃって。これなど、ゼロの桁が全然違うだろうな、と。
いやはや、眼福でしたし、楽しい展示でした。
来年も期待したいですね。

さて、ヴィトンのおかげで、ベネチア通りをずいぶんと北上していましたが、再び町の方に戻り、去年も楽しんだスペースに向かいました。




Audi City Lab
Fifth Ring
Mad architects c/o House in Motion




修道院後のような中庭に、今回は水を張って、蒸気が時々噴き出す仕掛け。
動画を乗っけてみたいと思いますが、さて、うまく行きますか。


アウディですから、勿論車を展示していましたが、びっくりしました~!




去年までは、まだAIを語る段階で、自動運転につながる、AIのいろいろの展示がありましたが、今回は、あちこちで、自動運転車のプロトタイプ的な車が展示されていました。
運転席ではなくて、ただの椅子があるだけ、という中身なんですよね。ハンドルの代わりにビデオ、みたいな。
実用化には、特に欧州では、相当時間がかかると思われますが、それにしても、もうアイディアはかなり明確なようです。技術というのは恐ろしいものです。
黒電話が、もはや伝説的な存在になってしまったように、マニュアル車が、歴史上の存在になってしまう時代が、もしかして生きているうちに来るんでしょうか。電話よりも、信じがたいことですが、技術の進歩スピードを考えると、そういうことになるんでしょうね、おそらく。

そろそろ日が傾いてきたころ、ドゥオモまで戻り、気になっていた展示を訪ねようとしたら、この日は、インヴィテーションオンリーのアペリティフで、入場できませんでした。




Salone del Mobile
Living Nature. La natura dell'abitare

ずいぶん前から、大掛かりな工事をしていたので、何ができるんだろうと期待していましたが、要は温室でしたね。ま、素通しで中が見えたので、あえて中に入らなくても問題なし。準備が大げさだった割には、目新しさもなく、ちょっとがっかりかな。

この裏にある王宮博物館で、気になる展覧会がありますので、いずれにしても、通過する場所でした。




Alcantara, Nove viaggi nel tempo (Nine journeys through time)
Palazzo Reale

アルカンターラは東レの世界ブランドで、イタリアでは大手メーカーとしての存在位置を占めています。毎回、結構大掛かりな展示を行いますが、正直、素人には、あまり面白かったことがありませんでした。
でも今回は、美術館での展示だけに、非常にアート的で、なかなか楽しめました。
9名のアーティストの作品を、個別に展示しています。

印象的だったのを、いくつか。




小さな四角には、小さなモーターがついていて、モーターから伸びている細い針金状の棒が、神経質に動いて、ざわざわした音を立てています。その仕掛けが壁中にあるので、何ともイラつく(笑)イメージが、部屋中に張り巡らされている作品です。
面白くて、つい動画を撮っていたら、動画禁止です!と怒られました。




そのあと、つい作品に触っているところを、触らないでください!と、怒られ、怒られ続けながら、たどり着いたのが、これ。




塩田千春さんの作品。Reflection fo Space and time
ベネチアのビエンナーレで、この人の鍵の作品を見ましたが、とても印象的で、これを見た時、すぐに塩田さんでは?とわかりました。
この作品、勿論アルカンターラを使っていて、張り巡らされたひもは、なんと110Km と、説明にありました。

大きな箱型になっている中に、洋服が見えるのですが、どうも構造がわからず、周りをぐるぐると回って確認していたら、さんざん怒って、あきれているだろう係員が、親切にも、いろいろ解説してくださり、面白い時を過ごせました。

なんせ、かなり力の入った展示なのに、見学者、ほとんど誰もいないんです。
もったいないことでした。

アルカンターラは人工皮革で、車のシートなどによく使われている素材のようですが、幅広な用途があるものです。




手触りは柔らかい革そのもので、吸い付くような感触があり、とても気持ち良い触感です。
日本の技術、なかなかたいしたもんですね。

ということで、あともうちょっと続きます。

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まさかヴィトンがテレビショッピング状態に!

フオリサローネ2018 その5

今回は、スタートが今一つだった割には、毎日、予想外に面白い展示に出会うことで、背中を押されるように毎日歩き回ることになってしまって、ここ数年では、もっといろんな場所を回ることになったかもしれません。

で、町の中心部も、行きたい場所をチェックして、点と点を結んで、結構回りました。




Galleria d'Italia
Dandelion of Luca Trazzi – Installazioni luminose

ガッレリア・イタリアという美術館は、数年前にオープンして、当初しばらくは無料だったのです。ある日、思い立って見に行ったところ、有料になっていて、無料だと思っていたんだけどと尋ねると、「先週から有料になりました」と言われて、ひどくがっかりしたことがあります。その時は、あまりがっかりしたので、なんかお金を払う気にならず、その後、とうとう一度も訪ねていなかったのです。

今回も、特に目指したわけではなく、たまたま通りかかったので、入ってみた次第。どうも、あまり縁のない美術館らしいですね、笑。
美術館の表玄関は、スカラ座広場にありますが、今回の展示は、中庭を利用しているので、マンゾーニ通りから入ります。

入ってすぐの吹き抜けに、いきなり大好きなものが。




ポモドーロさんですね。この人の作品は、野外に置かれることが多いですが、どれも印象的です。
肝心の展示、ダンディライオンは、これです。




う、うーん。なんだろう、これ。
正直、庭のたたずまいや、点在する大型の野外彫刻の方に、惹かれました。
ミロとか、ムーアとか、有名どころのいかにも的な作品がたくさんあって、それだけで、本来とても雰囲気のいい庭です。




ここがいつもオープンだったら、ちょっと休むには最適な場所。でも、いつもは関係者以外は入れないんでしょうね。いわゆるミラノにありがちな秘密の花園的な庭です。




ダンディライオンは、なんで、タンポポ?という様子ですが、ポモドーロのある吹き抜けを見て、ちょっと、わかった。




綿毛…。光が入ると雰囲気変わるのかも、とここも別の日に、日暮れてから立ち寄ってみたのですが、たいしたことなくて、がっかりでした。

数年前、このメーカーの展示に出会ってから、フオリサローネにはまったと言っても過言ではないこちらへも、久しぶりに。




Atelier Swarovski

そう、スワロフスキーです。
ポルタ・ベネチア近くの、歴史的なビルの中庭にしつらえられた会場に、ずらりとキラキラのガラス製品が並べられていました。




スペースは、いくつかのブースに区切られて、異なるデザイナーさんごとに作品が展示されているという作りでしたが、比較的普通の製品で、度肝を抜かれるような展示のための作品ではなくて、ちょっとがっかりだったかな。




お金に不自由していない人だったら、普通に買っちゃうような製品レベルっていうんですかね。もちろん、私にはひょいっとは買えないけれど、それでも、スワロフスキーが死ぬほど好き、みたいだったら買えちゃうかもしれない、みたいな、そういうものたち。

もう少し、イベント的な展示を期待していたので、さらりと見学終了。

同じ通りの少し先に、やはり気になるファッション・ブランドの展示があり、これまできちんと見たことなかったけど、と、訪ねてみることに。




Louis Vuitton
Objets Nomades

これは、いきなりの可愛さに、かなり高揚感です。
ルイ・ヴィトンは、本拠地のパリ郊外に、フランク・ゲイリー建築の素晴らしい現代美術館を持っているくらいですから、イベント的な内容を期待していました。
ちなみに、美術館、とても行ってみたいですが、まだチャンスを得ていません。

イタリアだと、プラダが現代美術館に多大な投資をしていて、ブランド的にはともかく、現代美術好きの私には大変ありがたいことですが、ヴィトンは、製品でも現代美術家とコラボしたり、上を行っていますね。

トップの写真は、勿論ヴィトンが使っているアイコンがテーマですが、よく見るとこのお花、皮で作られていることがわかります。




私の大好きなピンク系の中間色が使われていて、ヴィトン、いいじゃん、といきなり引き込まれています。
レトロなポスターを飾った階段を上って、会場へと向かいます。




古い建物特有の高い天井を活用して、ランプが下げられています。




ランプを覆うシェードが、革製なんですよ、これ。展示会場に、床置きしてあったんですが、素晴らしい光の効果でした。




おそらく、皮をこういう形にまとめることって、すごい技術がいるんだと思われます。

そして、展示会場入り口で、まさに度肝を抜かれました!




レトロなガラスの入り口の向こうの天井を見上げた様子ですが、いったい何が起こっているのか!という感じですよね。
中に入ってもしかり!




細長いスペースのこっちから向こうまで、高い天井から無数に下げられているのは、入り口に並べられていた革製の花、ヴィトンのアイコンなんですよ。
上向きに置かれた展示で、初めてゆっくりと見ることができました。




やはりいい色ですね。触れませんが、革の肌合いと言い、うっとりします。きっとすべすべと気持ちいい感触なんでしょうね。
これ、岐阜県とコラボしていたアトリエ・オイさんAtelier Oi製作のもの。Origami Flowersとなっていました。
ここで、日本人のコンパニオンが、声をかけてきました。

銀座松屋の店舗の販売員ということでしたが、この男性、すごかったです。立て板に水の説明で、いかにヴィトンの製品が手間暇をかけて作られているか、価格がいかに妥当であるか、機関銃トークで繰り広げてきます。




ヴィトンは、今や品質も向上して、エルメスと、よい革を取り合いしているほどなんですとか、マドリッドで作っている製品は、ちゃんとMade in Madridと刻印されているんですとか、正直ヴィトンの製品に興味があるわけではないんですが、彼の話、大変面白かったです。

そして、お花の売り込みにも熱心なのには、本当に感心させられました。
正式な販売は秋以降だけど、今回の展示で、販売できる数を持ってきているので、今なら、ずいぶんお安く入手できますよ、ということでした。正直、テレビショッピングのヒトみたいでした!ヴィトン、意外と敷居が低いよ!笑。

300ユーロはしなかったので、ヴィトンのアイテムとしては、手の届く製品ではあるでしょうが、ヴィトン・ブランドに興味がない人には、無用の長物です。
こういったものは、素晴らしいお屋敷に住む人が、変わった装飾品として求めるタイプの品で、高級ブランド品が求める本来の顧客向け、ということなのかな。

花はともかく、このクッションの方は、かなりほしいと思いました。




リバーシブルにした皮を、パッチワークの要領で一片ずつつまんで縫って、つなげて…。気の遠くなるような職人仕事が、この美しさを生み出しています。とても柔らかそうな革。これだって、そういうことを無視して、このクッションを枕にできるような人しか、持ってはいけない製品のように思います、笑。

ヴィトンは、元来エルメスほどのプレステージではなかったと思いますが、そういうところに行きたいという様子が感じられました。
ちょっと長くなってしまったんで、一旦切ります。

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