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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

湖エリア・リゾートっぽいのに寒村(シャンボン・シュル・ラック1)

2016.08.オーヴェルニュの旅 その30

前回の記事をアップした後、なんで私は、いつもいつも、坂道恐怖とか駐車下手とか、かわいいとか好きだの嫌いだのとか、トイレ情報とか、なんだって、そんなことばかり書いているんだろう、と、いつになく落ち込みました。なんでだかわからないんですけれど。
でも、つらつら考えてみるに、訪ねた場所についてキチンと勉強して、サイト「ロマネスクのおと」に、まとめるのが本来の目的なのだけど、自分の怠惰のせいで、なかなかまとめることができないから、記憶をとどめるよすがとして、また、サイトには客観的な情報を掲載したいから、封印せざるを得ない自分の感覚を記すよすがとして、ブログは始めたわけで、そういう意味では、非常に自己中な目的のブログなわけで、それはそれでいいんじゃん、という当初の目的を思い出して、なんとなく落ち着いた、というところです。

というわけで、それなりに写真など掲載しつつも、妙に偏った内容の記事ではあるかと思いますが、それこそがこのブログの成り立ちということで、どうぞ、ご容赦願います。

言わんでもいい言い訳ですが、あまりにも激しく動揺してしまったので、ついつい。

さて、前回も言及したように、オーベルニュの有名どころが続きます。サン・ネクテールの後は、道なりに、シャンボン・シュル・ラックに向かいます。

とってもリゾートっぽい湖エリアを超えると、いきなり寒村っぽい雰囲気のエリアに入り、そこにあるのが、この目的地シャンボン・シュル・ラックです。湖沿いのシャンボン、という町名だから、ずっと湖沿いにある町なのでしょうが、なんだか、寒村的イメージが強いです。というのも、幹線道路沿いの町で、幹線沿いに、いきなり町っていう作りで、なんか、なじみにくい作りなんです。

ここには、見るべき場所が二つ。
まずは、町中から。




シャンボン・シュル・ラックの教会Eglise de Chambon‐Sur-Lac。
なんかフランスの田舎の教会って、「何々村の教会」というだけで、本来の教会の名前、要は、教会が捧げられているはずの聖人の名前が明確でないことが多くて、それは、イタリアの感覚から言えば、ありえないことで、いまだに不思議なのですが、この村の教会も、教会の説明の掲示などもありましたが、Chambon村の教会、という記述にとどまりました。教会って、誰それに捧げられるのが基本、と思っているんですが、そういうわけでもないんですかね。または、フランスでは、特に中世期に、すっごく聖遺物にこだわった経緯があると思うので、聖遺物がない限りは、捧げられないとか、そういった経緯があったりするのでしょうかね。

ま、そういう事情はともかく、シャンボンの教会です。教会全体の大きさからすると、鐘楼が異常にでかい、プロポーション無視の縮尺タイプですね。

ファサード側から見ても、やはり塔がドカン、というイメージ。




ただし、とんがり屋根がなければ、それほど存在を主張してないかもしれないですね。フランスの教会は、やはり後代の手が入ることで、全体のイメージ、たたずまいそのものが、相当オリジナルとかけ離れているという例は多々ありますが、ここもそうかもね。
三角とんがり屋根は、教会のありかを探すには、大変便利ですが、これによって、本当に全体のイメージが変わるし、プロポーションまで変わってしまって、複雑な気持ち。

ファサード側には、ナルテックスと言うか、突き出した構造物があり、そこには、こんな浮彫が。




これは結構最近の作品でしょうね。なんか、中世っぽくしているのが、いやな感じ。かつて好きじゃなかったシャガールの宗教画的なにおいがします。なんか、イメージ、似ていませんか?

あ、でももしかして中世の作品だったら、笑っちゃいますね、自分のいい加減な感覚に。

内部は、ちょっとキラキラ感のある状態です。




でも、ちょっと面白い柱頭はあるんです。




こういう素朴な浅浮彫は、いかにも地元の石工さん作、という感じがして、嫌いじゃないです。モチーフはよくわからないし、なんかサリーちゃんの足的な、超下手な足の様子といい、思わず微笑んでしまうタイプの浮彫。




完全にお地蔵さんですよね。にっこり。
それでいて、こういうスタイリッシュなアカンサス・モチーフのバリエがきちんとあります。





後陣部分だけは、しっかり色付き。




この手間は、かけなくていいよ、と言ってあげたくなりますが、大きく開けられた開口部にあるステンドグラスの立派な様子を見れば、きっとずっと現役でやってきて、ある意味、この彩色は、今でも大切にされているあかしでもあるのだろうな、と思います。

次回、街道を挟んだ反対側の、本来の目的を訪ねます。

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歩けばいいってもんでもない例(サン・ネクテール)

2016.08.オーヴェルニュの旅 その29

さて、どんどんと有名どころが続きます。次に訪ねたのは、サン・ネクテールSaint Nectaire。道をたどっていけば、自動的についてしまう感じで、この辺りは、迷うことなし、という状態でした。
ここも、道沿いにたどり着いたのですが、実は、着いたところが、こんな感じでした。




町、ないし。
この、ゆったりした路肩の駐車場にたどり着く手前に、確か、左に入るのぼり道があったのですが、例によっての山道恐怖症でしたから、ついつい曲がれずに、ここまで来てしまった、という経緯です。サン・ネクテールは、山の上とわかりながらも、結局、ここに車を置いた、気の弱い私です。

でも、こんな表示を見つけました。要は、古い町なんかにありがちですが、旧市街が丘の上にあり、丘のふもとに新市街が広がっている、という土地らしいです。サン・ネクテール上町Saint-Nectaire-le-Hautまではたったの200メートル。いいんじゃないかな。




というわけで、結構な坂道を、てくてくと登ります。




これが、しかし結構大変でした。たった200メートルと言えども、山道なんですよね。階段交じりで結構急坂の連続。途中車道と交差しながら、最後は汗だく。せっかく徒歩なのに、道は全く面白くなくて、大後悔でした…。その上、車道は、坂道とはいえ対抗二車線で、とってもゆったりしているし、教会周りの駐車場は、いくらでも駐車の余裕があるし…。
何はともあれ、無事、天辺に到着。




サン・ネクテールのノートルダム教会Eglise Notre Dame。
巨大だろうが何だろうが、とりあえずは、達成感満足感でいっぱいの、汗だくの私でした。

ここね、旧市街と言っても、教会周りは住宅があるくらいで、あまり町でも何でもないのが、ちょっとびっくりでした。
せっかく、教会周りに土地があるのに、カフェの一つもないって、ちょっと寂しいっていうか。どうやら、有名な水源とか洞窟とか、教会よりも、そういう自然系の売りが勝っているようで、家族連れがピクニックに来る場所、という様子でした。
下の町も、ほぼそういう様子だったな。
ピクニックに来た人たちが、お、なんか、立派な教会もあるんだ、ちう程度で観光していく、みたいな。




オーベルニュっぽい、石のはめ込み細工のような模様が、確かにきれいで、石色も柔らかくて、たたずまいはよいです。
でも、この巨大さの前には、どうしても気持ちが萎えてきてしまいます。




入場しても、やはり背が高くて、そして、フランスお得意の漆喰ぬりぬり状態で、さらに萎えてしまいます。




これは、慣れの問題なんですよね。
今年のフランスでは、こんなに打ちのめされることはなく、あ、そうね、こういう感じよね、と、大きいところでもさらりと受け止めることができたし。段々慣れてきたんです、多分。でもこのときの旅では、まだどうしても気持ちがついて行けなかったんですよねぇ。ディテールは、本当に魅力的なんだけど、全体について行けないっていうのか。

ディテールは、実にすごいんですよね。




今だったら、教会の建物の巨大さや漆喰ぬりぬりに惑わされることなく、柱頭を独立した鑑賞対象として、もっとじっくりゆっくり、見ることができると確信できますが、2年前は、大きな教会に来ると、細部に素晴らしいものがあるのがわかっても、なんだかもういいや、という気持ちが先にたってしまったことを覚えています。
やはり、再訪するしかないかもな~。

ここは、でも、漆喰ぬりぬりの割には、柱頭の彩色は、落ちるがまま、という状態になっていて、それは気持ちがついていきやすかったかな。




でも、こう半端な彩色残りだと、やはり、彫りの細部はわかりにくい。
完全に色がとれてしまっている方が、よい感じです。




目の玉はくりぬかれているので、石がはめ込まれて、きらりとしていたのかしら。
柱頭のスペースに合わせて、みんな無理な姿勢になっているのが、愛らしい。こういう無理やりはめ込む、制約の逆活用みたいな造形、ロマネスクらしくて、好きなんです。




やっぱり、彩色はない方が好ましいなぁ。




ほら、絶対こっちの方が、印象的。イメージも膨らみます。




でも、この教会も、創建当時は、きっともっとずっと暗かったでしょうね。後陣の窓は、かなり拡大されていると思います。そして、壁色も、きっとこんな真っ白な漆喰ぬりぬりではなかったはずなので、このような複雑な浅浮彫では、彩色がなかったら、なかなか細部まで見ることは叶わなかったことでしょう。




結構な数の撮影をしたのですが、それにしても触れ気味で質が悪いです、我ながら。
もういいよぉ、お家に帰ろうよぉ、と、お買い物に夢中なお母さんにぐずる子供のように、さっさと帰ろうよぉ、と思っていた自分のせいです…。




馬、かわいいんですが、でもなんか、もういいよ、だったな~。
それなりに腕のある石工さんだと思いますが、多分、自分の好みではなかったんだと思います。




これはちょいと牧歌的でよいですね。




あと、再建が確実に混じっていると思いますが、このシンプルな植物モチーフが、かなり好きでした。すっきりしていて、逆に味わいがあります。




最後に、重要なトイレ情報。教会からちょっと離れたところに公衆トイレありで、使用可能なレベルでした。

今年の旅では、なんだかトイレばかり探していた日々で、自分の今後のためにも、これからはこの情報を入れて行きたいと思っている下世話な私です、私。

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外見と中身のこのギャップ、何とかしてほしい~!(ベッス・エ・サンタナステーズ)

2016.08.オーヴェルニュの旅 その28

この夏、オーベルニュやブルゴーニュを再訪したことは、ちょっと触れましたが、どちらの地域も、すでに一度訪ねて、超有名どころは見ているため、今回は、見残し中心という感じで、小さい場所を訪ねることが多くて、教会の名前どころか土地の名前すら、現地にいてすら頭に入ってこないという苦しみがありました。それに比べると、この2016年のオーベルニュは、やはり知名度の高い場所が多いこともあり、教会の姿と町の名前を一致して、視覚的ちゃんと覚えているので、今更びっくりしています。
まぁ、最初の訪問は、どうしても、より記憶に残りやすいというのはあるとは思うのですが。

さて、そんなわけで、イソワールのハデハデ彩色教会の後も、比較的大規模な、知名度の高い教会が続きます。次に訪ねたのは、こちら。




ベス・エ・サンタナステーズBesse-et-Sainte-Anastaiseのサンタンドレ教会Eglise Saint-Andreです。
ここは、大変でした。
まず、町へのアクセスは非常に簡単だったのですが、教会近辺の路上駐車のスペースがなくて、教会と道を隔てた反対側にあった駐車場のマークに従うしかなかろうと思ったのですが、なんだかいきなり激しい坂道だったのです。




これは駐車場から、徒歩で旧市街に戻るところですが、これでも、かなりの急坂なのがわかりますよね。2年前は、まだよほど怖かったんですよね、坂道が。この2年ほどの経験で、新車ばかりのレンタカーなら、坂道発進も楽々、とわかってきたので、これほど怖がらないのですが…。
で、まずは駐車場でおろおろして、時間を使いました。

やっと決心して駐車して、徒歩で旧市街に戻ったのですが、次に、おろおろしたのが、教会の姿です。トップの写真ですが、どう見ても、バリバリゴシック。それも、教会全体が再建のように新しい感満載です。
これは違うだろう、と思い込んでしまったんです。
その上、町の入り口に掲げられている地図に気付いてしまいました。




なんか、Besseだけは同じだけど…。これは、違う町にいるらしい!と思い、慌てて車に戻り、地図で、このBesse-en-Chandesseという町を探したんです。わざわざ坂道を下って、ですよ。
しかし、地図にはこんな町は出ていないし、Besse-et-Sainte-Anastaiseとスマホに入れると、「徒歩3分」と出てきます。なんかこのとき、軽くパニック状態でした、笑。
途方に暮れて、たまたま通りかかったおやじに尋ねると、「いや、僕、パリから来た旅行者で~」と、それでも片言の英語を解する人だったので、事情を訴えると、「え~、そんなこと言われても~。でも、インフォメーションセンターがあったから、聞いてみたらいいんじゃないの、教会の近くにあったよ」と、なぜか先導してくれるので、一緒に、戻ることに。

教会の近くに行き、「教会の名前は知ってる?」というので、サンタンドレだというと、じゃぁ、これで正しいみたいだよ、と指さしているところに。




いやもう、自分の間抜けぶりに、ただ茫然として、暇そうなおやじにお礼だけ言って、あまりの恥ずかしさに、逃げるように教会に入りましたとさ。汗。

外観が完全ゴシック、というのは、フランスではままあることなのに、ここまでそういうことがなかったせいか、うっかりしていたというか、それにしても、あまりに違うじゃないのっていうか。
っていうか、違うと思ったところで、目の前まで来たなら、とりあえず入ってみろよ、ですよねぇ。




一歩入ってびっくりですよ。この雰囲気!外からは想像もできません。
植物モチーフと、そして人物フィギュアの柱頭が満載。ほぼ、この部分だけ、創建当時12世紀のものが残されているのです。




なんかとっても味わいのある石工さんじゃないですか。私は好きです。




線が固くてぎこちない様子なんですが、それが味わいを醸し出しているというか。




こちらは、若干手が違うような感じもします。同じ工房の、違う石工さん作品、みたいな。




こんなこと言うと怒られそうですが、俳優の高橋克美さんでしたかねえ、ハゲ系の、笑、あの方にも似たしかめっ面のケンタウロス、胸に何か書き込みがあるんですが、浅学なもので、わかりません。おしっぽを持ってるのがかわいいけど、顔が小憎らしいですねぇ。

文字は、今写真を見直して気付いたもので、勿論現地では、見えやしません。




同じ柱頭の、反対側もケンタウロスですが、そちらには、文字は見えません。
すっごく謎めいている、というわけでもないのですが、人が横並びで、手を広げている系な感じのバリエが多くあり、何か意図も感じる柱頭たちです。




結構暗くて、写真もぶれているものが多かったのが残念。
植物バリエも、ちょっと面白いものがありましたよ。




あみあみが上にかぶさって、独特のモチーフですよね。

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暗闇に浮かび上がるハデハデ彩色(イソワール2)

2016.08.オーヴェルニュの旅 その27




イソワールIssoire、サン・オーストモアン教会Eglise Saint Austemoine、続きです。
しっとりとした石色のクリプタで、目を休めた後(笑)、かなり派手な色彩あふれる本堂へ戻ります。




内陣部分は、本当に色があふれている感じです。円柱の彩色も、結構最近塗りなおしたようなピカピカぶり。どのくらいの頻度で、お化粧直しをするんでしょう。フランスでは、内部を漆喰で真っ白にぬりたがる傾向もあると思いますし、一般的に石やレンガのむき出しを嫌うんでしょうかね。ドイツとか、外壁もきれいにぬりこめちゃう文化との共通性を感じますね?




ここでは、ベースに赤が多用されている上に、これでもか、と金がちりばめられていますので、インパクトが半端ないですね。
ここまで細密に彩色されていると、表情などは、石そのものには現れないものが表現されていることとなるので、石工さんの作品ではなく、彩色した職人さんの作品ですね。




実物はかなりでかいので、色のない状態でも、結構表情は読めると思うのですが、でも、ほっぺたが赤いかどうかだけでも、ずいぶんイメージは変わるし、まったくの別物になるでしょうね。

これなど、もうほとんど現代アート的な様相を呈しています。




ニキ・ド・サンファル?みたいな、笑。




往時はどうだったか。彩色は、少なくともこの教会ではあったのだと思います。
色彩的に、どこまではっきりした色が使われていたのかは、よくわからないのですが、ロンゴバルド時代の彩色の再現映像などを見た経験から、かなり派手な、おそらく、こういう色合いに近いものであった可能性が高いのだと思います。当時は難しかった色などはあるでしょうか。

ただし、当時、この明るさはないはずなんですよね。

今回の旅で、目から鱗だったのが、ある田舎教会で、地元のおじいさんが押しつけガイドをしてくださったのですが、「建物の中で、オリジナルの窓はここだけで、あとは全部後代に拡張されている」というお話があったんです。
それで、はっとしたんです。
ロマネスク時代というのは、まだ技術の問題があるから、開口部は最低限にしか取れなかったわけですよね。だから、今でも田舎の小さい教会では、往時のまま外の光がほとんど入らなくて、内部は人工の明かりがないと、足元もおぼつかない、なんていうことがままあります。
でも、フランスのように、ロマネスク以降の発展が著しく素早く普及した国では、ロマネスクの建物をそのまま維持しているケースすら少なく、経済の発展した町村では、多くの部分を改修変容してしまっています。当然、開口部は広い方が内部が明るくなって便利ですから、窓も拡張しているんですよね。
今まで、そこに考えが至らなかったなぁ、と、気付かされた、ということです。




この教会は、外観からわかるように、ロマネスク以降の発展部分が大きく、現在ステンドグラスがはめ込まれている窓は、当然その後に拡大された窓ですから、外光も十分入り、その上に人工の照明もあるので、この派手な彩色の浮彫もクッキリすっきり鑑賞することができます。

でも、ロマネスク当時は、もしこれだけ派手な彩色があったとしても、ほとんど暗闇と言ってもいいような中、実際、石色だけでは、その浮彫の内容が識別できたかできないか、という状態だったと想像します。

この夏の旅でも、実際、ほぼ真っ暗闇、という側廊にある柱頭の浮彫が、ほとんど識別不可能、という教会を訪ねることがあり、もっと光を!と思うと同時に、せめて彩色されていれば、少しはわかったのではないか?と思ったんです。

とはいっても、これはねぇ…。




石の浮彫だったら、ちょっと面白いとか、かわいいとか思いそうなものですが、これだけクッキリ彩色されていると、なんかきもい感じもあります…。




でも、教会創建当時から、もうこういうもの、として来ているのであれば、伊勢神宮じゃないですが、技術の継承のために、何年かごとに、彩色しなおす、ということもありなんでしょうかね。そのあたりはどういう風になっているのか、まったく知らないのですが。
個人的には、このくらい、剥げた加減でちょうどいいかも、と感じますが。




柱の彩色も、せいぜいこのくらいの状態で、保ってくれたらいいのに、と思わないでもないです、笑。




ちなみに、ちょっと暗めの一角にあったもの。




当時は、さらに暗かったはずなので、色があることで、かろうじて見える。そういう様子がわかるような気がしませんか。

やっぱり、現場ですよね。行ってみて、いろいろを見て、感じて、なんとなく思うことがたくさん出てきます。




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巨大さとピカピカに弱いらしい(イソワール1)

2016.08.オーヴェルニュの旅 その26

次に訪ねるのは、オーベルニュの数あるロマネスクの中でも、超有名教会の一つです。




イソワールIssoire、サン・オーストモアン教会Eglise Saint Austemoine。
オーゾンの後、立ち寄り可能な小さな教会がいくつかあったのですが、もうキリがない、と思い、好き嫌い関係なく、オーベルニュに来たら絶対に訪ねなければならないこのイソワールを目指しました。
本当は、小さな田舎の教会が好きなので、そっちに時間を割きたい気持ちが強いのですが、経験上、「見るべきものは見ておかねばならない」のは、間違いないので。

で、事前に調べといた住所をナビに入力して走ったら、なんといきなり町に入り込み、いきなり、教会の後陣側にある駐車場にたどり着いてしまって、愕然でした。
上の絵地図の、中央下にあるのが目的の教会で、そのすぐ下のPが駐車場です。
イソワールは、決して小さな町ではなく、交通量も人も行きかっている場所ですから、本当にびっくりでした。

というわけで、車を降りた途端に、この壮大な後陣を見上げることとなりました。




ブレスルでもそうでしたが、もうこの大きさで、ひるんでしまいます。これは本能的な好き嫌いなので、どうしようもないことです。
でも、美術史上、建築史上、避けて通れないから、見ます(なんか、変に悲壮ですみません)。




連続するブラインド・アーチとつけ柱の側壁。これは、スタイルとしては、好きなものです。大きさが苦手なだけで。
翼廊に当たる壁。




上の方に、やはり小さなアーチが並んでいて、真ん中のは三つ葉でかわいいです。その下に、軒持ち送りがありますが、オーベルニュに典型的な鉋屑が、これでもか、と並んでします。この執拗さが、山の民というか、辺境の民というか、なんかそういうカルチャーを感じさせます。側壁の方も、延々と鉋屑。

でも、この多様な石色は美しいですね。
お天気が悪い日は、ちょっと気が滅入るタイプの暗い系ですが、バリエがいいです。この辺りでは、こういう石が取れるのでしょうか。

下の方に、浮彫がはめ込まれています。かなりでかいものです。




こんな場所で雨風にさらされているだけあって、相当痛んでしまっています。感じとしては、ちょっと時代が下るものでしょうか。




これでは溶けすぎで、テーマもよくわからないですね。

実はこうやってなめるように眺めて、自分が親しみやすい何かを探していました。アプローチする段階で、気持ちを入れないと、なんか辛いんで。
ぐるりと回ってたどり着いたファサード。




後ろからは塔に見えた高い部分は、こういう構造になっていたのですね。
何とも地味で、私には魅力的に感じられないファサードです。言いたい放題ですね。
入場します。




おお、これは、ポワトーの方によくあった、柱まで色付き手かけすぎタイプの内装教会です。色がなかったら、がらんとしたただの背の高い構造物という印象なのかな。構造的な面白さが感じられなそうです。
かといって、彩色が、よりよく見せているかというと…。
これも好みの問題ですが、おそらくフランス人は、こういう色合いとか彩色が、割と好きなんでしょうね。なんかちょっとプロヴァンス風な色合いというのか…。

どひゃぁ。




ちょっと、心の準備が…。
ということで、一旦地下に避難です。クリプトがあります。




今、写真で見ていても、ほっとする空間だったことがわかります。
ツルツルにきれいにしすぎていますが、太くて装飾性のない円柱の林は、味わいがあります。このクリプト部分は、相当時代が古いものなのではないでしょうか。オリジナルは、天井の石がむき出しとかそういう構造だった可能性も感じます。背も低いし、このしっかりした円柱は、やはりこれだけの支えが必要だったという時代の技術なのではないでしょうか。

このがっしり感は、魅力的です。




この質実剛健な円柱に守られて、ここには聖遺物入れが鎮座しているのです。教会が捧げられて聖人の何かがあるようです。




美しい青と水色です。

いや、ここはよかったです。
目も休まりましたので、いざ、色彩に対峙します。




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