2016.08.オーヴェルニュの旅 その40
寂しい気持ちでショリアを後にして、向かったのは、ほぼ隣町といっていい距離にあるポン・ドゥ・シャトーPont du Chateauです。 この町には、目的としている教会もあるのですが、まずは腹ごしらえが目的でした。 修行旅では、常日頃、教会訪問を優先して、ランチ抜きなどは日常茶飯事なんですが、このときは雨につかれて、教会にすげなくふられて、なんだか寒さが身に染みて、飢餓感といってもいいような空腹感がありました。 スマホで検索したこともあったのですが、確か在フランスの友人に、この町には結構レストランがあるとか聞いていたんだったと思います。
まずは、橋を渡って、町に入ります。
この橋の向こう側から町に入ったのですが、調べた中で、良さそうだった店が、町に入ってすぐの橋のたもとにあるようで、そこを目指したのですが、一見してクローズとわかる有様で、またふられるのかよ~!と思いきや、すぐお隣にLogisチェーンのホテルがあるではないですか!Logisホテルには必ずレストランがありますから、もう取るものもとりあえず、駐車場に車を入れて、駆け込みました。
Hotel L'Estredelle 24 Rue du Pont, Pont du Chateau
お食事は、特筆するほどのものではないとはいえ、笑顔で明るいサービス、英語ができるウェイター、河を見下ろす眺めなど、なかなかよかったです。
どうせ雨だし、と川を眺めながらゆったりと食べていたのですが、デザートを注文したころに、いきなり、がーっと青空が広がってきたんです。 デザート、早くお願いします、と催促したうえに、ほぼ2分で食べて、大急ぎでお勘定して、大急ぎで車に戻りました。
ここから、若干迷走します。毎度のことですが、笑。 あとから気付きましたが、常になくゆっくりレストランで過ごしたので、出た時はもう15時近くでした。
ホテル前の道から、塔が見えるほど、教会はすぐ近くでした。 町の真ん中が丘になっていて、そこにあるので、こうやって塔が見えやすくなっているのですね。ですから、レストランの駐車場から車を出しただけで、その辺の路肩にほったらかして、歩いてアクセスしました。
ところが、たどり着いた時は昼休みで、扉は固く閉ざされていたのです。
ありがたいことに、扉口に時間が記されていました。1時間近く待たないといけないため、一旦、近くの外の町に行き、オープンしている時間に間に合うように戻ることにしたのです。 だから、写真は、ランチ直後のものと、夕方、戻ってきた時のものが混じっています。
ファサードは、かなり新しくなっていて、面白みもないものです。そして、入って愕然とします。
これは、強烈でした。事前に、ある程度知っていれば、あ、これね、と思うのでしょうが、こんなところまでは調べてなくて、ただ、あんぐりでした。
場所によって、柱頭の彩色はされていませんでした。植物系の、ハイ・テクニックな柱頭たちです。 下のタイプなど、彩色されていても、それなりの可愛さはあるかもしれませんが(色にもよりますが)、でもやはり、この石色だからこその愛らしさ、これは譲れませんよねぇ。
こういうのは、まぁ、アリといえばありなんでしょうけれど…。かわいいと言えばかわいいんでしょうけれど…。顔の表情とかに、おおいに現代の手を感じます。そういう意味では、ちょっと、ナシかとも思います。
とにかくツートンカラーで行きたいというんですね。 おなじみの二股人魚も、なんというのか、困惑感が先に立つ。
これが、薄暗くで見えにくい、というなら、大いにありなんですけれど、ここがまた採光よくて、明るいことといったら。
後陣など、装飾キラキラの上に、採光はよし、その上人口の明かりまでばっちりで、どこまでもハデハデ路線突き進んでいます。 柱とか、もう丹塗りの世界ですよ。
なんか困った~! ある意味かわいかったりするけど、これはもうロマネスクとか超越しちゃってるわ~! ある意味、デ・キリコが一時やっていた彫刻的な現代性も感じちゃうっていうか。
極めつけ~!
ちょっとグロい感じのゆるキャラでしょう、これは。 彩色がなかったら、かなりイケテルと思うんです、ロマネスク的に。うううん。
これはね、ゆるキャラではなくて、二次元媒体のキャラだと思います。この子は動かしたくないでしょう、不気味すぎ、笑。
たまらん~。 今改めて、どんだけ面白かったんだ、と感心します。
実は、戻ってわざわざ見たわけですが、先をすごく急いでいたんです。教会守のおじさんがいて、大変親切だったし、このように、柱頭も面白かったんですが、現場では、とにかく本堂内を駆けずり回って撮影しまくったような状況で、今思うと、とても残念な見学をしたことです。 そのために、ぶれちゃっている面白柱頭も多くて、それももったいなかったです。
こういう中を見てしまうと、外の姿とのギャップを感じます。
ゴシック時代の手が感じられますが、いずれにしても、相当シンプルな建物です。軒持ち送りも、例によって鉋屑一辺倒で、奇をてらった様子は一切ありません。
柱頭とも通じるようなお顔がついてる鉋屑もありましたけれど。
相当お茶目な石工さんがいたんですね、この辺りに。 勿論彩色のせいもあるのは間違いないですが、でも素朴で変に愛らしいフィギュアなのは、間違いなし。彩色系のチャーミング柱頭に興味ある向きには、必見です。 や、かなりニッチな方向性ですけども。
実用情報 ・教会のオープンは、7月8月の、16時から18時半。結婚式のときは、9時から16時とありました。コンタクトとして、Mr.et Mme Labrune(ラブルンご夫妻) tel 0473832729とありましたので、おそらくご近所にお住まいの方なんじゃないでしょうか。 ・橋近くに数軒の飲食店があるので、ランチによい町と思います。周囲にはあまりないので。 ・駐車は路肩にし放題。
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2018/09/28(金) 05:14:17 |
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2016.08.オーヴェルニュの旅 その39
クレルモン・フェランの南にあるボーモンから、ほぼ真東に20キロ強走ってたどり着いたのが、ショリアChauriatです。 旧市街は、もともと壁に取り囲まれた様子のある、とても小さな村。今は、その壁の周りに、それなりに住宅街などが広がっていますが、壁のままに村を取り巻く道があります。 ほとんどの道沿いは、駐車できるようになっているのですが、走りながら、調度都合のいい場所にひょい、と駐車するのが、一人だとなかなか難しくて、ちょっとぐるぐるした挙句に、村から離れるように、ちょっと住宅街に入って、人の家の軒先、といった様子の駐車場に停めることができました。
いやはや、グーグルマップ、便利、というかすごいですね。 あれはどこだったんだろう、と今、ストリートビューで、見ていたんですが、Place Pasteurという道でした。そういえば、帰りに間違いないように、道の名前を見て、パスツール、覚えやすい道でよかった、と思いながら、村を目指して歩いたのを思い出しました。 記憶のよすがになりますねぇ、本当に。
このときも雨が降っていましたし、寒いし、カメラを出す余裕もなくて、そのあたりの風景は全然撮影してなかったんですが、ストリートビューを見て、かなり鮮明に思い出すことができました。
車から出た時、買い物帰りのお母さん、といった感じの人が近所の家に帰ってきたんです。会釈しつつ、駐車して大丈夫かを確認して、教会は開いてますかね、と聞いたところ、「もう閉まっているかも知れないわよ」と…。さらに「教会のために来たの?それは、お気の毒に…」とかなり痛ましそうに気を使ってくださったので、私、相当悲しそうなリアクションをしたんでしょうか。 調度お昼の時間で、いやな予感はしていたんです。もともとカギは、市庁舎に頼む、という情報も持っていたし、とすると、昼休みは必至…。 取り急ぎ行ってみます、と小走りに村に向かいます。
シャリアChauriatの、サン・ジュリアン修道院付属教会Prieure Saint Julien。 美しい姿ですが、ここに到着したとき、雨脚マックスという状況でした。
なのに、悲しい予想通り、教会の扉は固く閉ざされています。 はす向かいの市庁舎は、残念ながら、すでにクローズとなっており、取り付く島もなし、という悲しい状況でした。
上の写真を撮影したのは、おそらく普段は、青空市場などの中心地になるのかな、といったような、キオスクのような、屋根だけがある構造物。幸い、雨傘なしで撮影できたので、この姿だけは、レンズがぬれる心配もなく撮影できたのです。
市庁舎にカギを借りる必要があることがわかっていて、昼休みの時間にたどり着いてしまった、自分の計画力のなさに嫌気がさし、しばし、そこで茫然と過ごしました。だって、外から見た様子がとても良い感じで、これなら中もさぞや、という気持ちにならざるを得ないじゃないですか。
その上、もう13時だから、空腹で、でも、見られない悔しさから、この村に長居はしたくない気持ちでいっぱい。で、スマホで、レストランの検索をして、この後の行動を決めることに没頭しました。合理化的な行動ですね、笑。
で、レストランがたくさんありそうな近所の町に行くことに決めて、そうしたら、少し元気が出てきて、せめて外側だけでも、と傘を差しなおして、ぐるりと。
オーヴェルニュおなじみの装飾満載ですが、ここのは、全体がくすんでいて、とても良い感じです。教会の大きさ的にも、私の許容範囲っていうのが、いいのかも。
石のはめ込み細工的なモザイク装飾、そして、執拗な鉋屑軒持ち送り。
こんなところに、結構新しいサッカーボールが。生きている村の生きている教会って感じがします。古い建物なのに、きっと地元の子供はそんなこと構っちゃいなくて、壁にどんどんサッカーボールをけり込んだりしてるんだと想像します。 大人も、あまり何も言わなかったりするんだろうなぁ。 教会に被害を与えたら困るけど、でも、なんかそういうおおらかな様子っていうのは、怒れないものもあります。実際、教会の周囲は広場になっていることが多いので、田舎ではよく見る風景なんですよね。
後ろの方は、ゴシックになっちゃっているようです。
クリュニーの傘下にある修道院だったようです。もともとは門前町、という性質の成り立ちの町なのでしょうね。この壁の中にある土地は、全体が修道院だったのでは。とすると、丹念に歩くと、何らかの発見があったりするのかもね。 そういう細かい成り立ちとか、事前に調べることもしないし、現地に行っても、あまり説明版とか読まないんで、どうもそういうフォローアップができなくて、若干情けないです。
一部は、もはや普通の住宅建物に取り込まれてしまっています。 とはいえ、こういう美しいアーチ装飾も残っています。
とてもプリミティブな彫り物があったりして、楽しくなります。
何とも素朴なグリーンマン。愛らしいです。
最後まで、激しい雨でした。下の写真、縦に入っている線は、雨です。真夏だというのに、本当に寒かった。
とか言いながら、実は、今年のオーベルニュ再訪で、ここのリベンジ、できたのです! 今回は、午前中に訪ねたところ、カギを借りるまでもなく開いておりました。 でも、実はいまだに写真の整理ができていないし、それにここで今年分をアップしたらしたで、混乱してしまうので、それは、今後のお楽しみということで、ご勘弁を。 2年越しで、リベンジして訪ねる甲斐のある中身でしたよ。
さて、例によって、実用情報です。 ・駐車は、村を取り囲む道沿い(Boulevard de la Republique、Boulevard Marx Dormoy)、または、壁の中の旧市街まで入り込んでも大丈夫。例えばRue du Commerce通りの駐車場など。 ・教会扉にも記してありますが、教会が閉まっている際は、カギは教会正面はす向かいの市庁舎で借りることができるはず。以下、市庁舎の受付時間ですが、7月及び8月の時期は、午前中12時まで、ということらしいです。また、日曜は、当然クローズとなります。
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2018/09/27(木) 05:43:06 |
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2016.08.オーヴェルニュの旅 その38
なんとなく寂しい気持ちでロワイヤを後にして、ほぼ隣町的な近さの町に移動しました。
旧市街は、かなり狭く、なだらかな丘の斜面に張り付いているような作りでした。あまりよくわかっていなかったのですが、その旧市街に入り込む前に、うまい具合に車を停めることができて、ここも徒歩でアクセスです。
なだらかな坂道続きの小路をたどり、住宅がぎっしりと並ぶ住宅街を進むと、ちょっとしたスペースが開け、ファサードに出会うこととなります。
ボーモンBeaumontのセント・ピエール教会Eglise de Saint Pierre。 住宅街の中、でも位置的には、最も高い場所になるのかな。往時は、教会を中心に町が発展したのですかね。
外観は、一部を残して、かなり新しくなってしまっていて、面白みはほとんどありません。でも、ファサードに残る素材は、オーベルニュの石という様子です。また、側壁に残るアーチ装飾は、かなり新しくなってはいるものの、一部古いものを基盤に再建や修復をしたものだと思います。全体に、オーベルニュ風を感じますが、ロマネスク的なインパクトには欠けますから、あーあ、またこんなか、という印象でした。
後陣側などは、もうすっかり新しくなってしまっているんですが、それでも、鉋屑の軒送りが、忘れ形見のような様子で、並んで残されているのが、何ともオーベルニュ。 上から下がった場所に、点々と並んでいるのがそれですが、もともとの後陣の高さは、そこだったのでしょうね。
扉口には、わざわざアーキボルト構造を断ち切って、聖ピエールさんのお像がはめ込まれています。立派なカギを手に持っていますよ。
内部は、ロワイヤとも似たような様子ですが、少なくともぬりぬり感が控えめで、ちょっとましでした、笑。 後陣が、明るく灯が灯されていますが、これは、お掃除真っ最中の方が、私のために、灯してくださったのです。
後陣側からファサード側を向いた一枚。この方が雰囲気がありますね。いずれにしても、石をそのままにしているのは、好感度高し、です。
ロワイヤは、内装ピカピカで、大切にされているのはわかりましたが、なんというか、冷たい雰囲気だったのですが、こちらも、構造も、あり方も似ているのですが、そこはかとなしの暖かみを感じました。 お掃除中の女性が、わざわざこんなところまで我らが教会を見に来てくれたのね、と言った喜びをあふれさせて、かつて翼廊があった後を、奥の祭具室の様子などから説明してくれるなどの親切心全開だったからなんだと思います。 そういう気が、教会にもこもるんじゃないんでしょうかねぇ。
いろんなものが飾られた後陣にも、そういう気が感じられませんか?
ロマネスク的には、柱頭です。細かい植物系の彫り、なかなか立派です。それに、かなりデザイン的ですね。植物モチーフに、なんか図像が色々はめ込まれていて。
つる草に組紐合わせたりして、面白いです。こういうぐちゃぐちゃしたものが大好きな石工さんだったのかな。
石工さんの信条みたいなものを感じます。すごく組み合わせとか全体の見た目とかを考えて、矯めつ眇めつして仕上げたんじゃないのかなぁ。
で、こんな中に、いきなりこんなのが。
これは、建物にくっついている柱頭ではなく、棚代わりに使っているような柱頭でした。下の写真の、左下のものです。
この教会の古い柱頭なのか、またはほかの教会にあったものなのか、わかりませんが、モチーフとしてはよくあるので、ロマネスク時代の教会のものであることは、間違いありません。でも、この教会本体の柱頭を担当した石工さんとは、明らかに違う人でしょうね。
身廊の方の柱頭も、植物モチーフです。
残念ながら、上の方は遠いし、薄暗いので、ほとんどの写真、ぶれてしまいました。傾向は、ぐちゃぐちゃした植物モチーフだったので、同じ石工さんの系統だと思います。ヤギのやつだけ、浮いています。
オルシヴァルで、見るべき聖母子を見逃してしまった情けないわたくしですが、ここでは、別の聖母子に出会いました。
14世紀のものとありましたが、なんかこうやって素朴系だと、一応チェックしてしまいます。金ぴかは、目が避けてしまうんですが…。
この教会は、とても気持ちよく見学をして、なんとなく気持ちも上向きに。 雨もほぼ上がり、楽しい気持ちで、車までの短いお散歩を楽しみました。そして 嬉しいお見送りまでいただいてしまいました。
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2018/09/24(月) 05:04:47 |
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2016.08.オーヴェルニュの旅 その37
あたらしい一日が始まりましたが、早朝はかなり激しい雨だったので、当初考えた予定変更で、プランBとなりました。
ロワイヤRoyatのサン・レジェ教会Saint-Leger。
ここは、ちょっと参りました。 雨だし、山道は避けようと思ってプランBとしたのに、実はこのあたり、かなりアップダウンが激しい上に、ナビがいつもの気まぐれを起こして、とんでもない坂道に入り込もうとするものだから、行ったり来たりした挙句に、通行人にすがりました。 その人選が大成功で、多分フランス語、もしかしたら英語交じりだったんでしょうか、中年の女性でしたが、大変的確な道をすっきりと指示してくれて、無事、目的の町に入ることはできたんです。
本当に町の中心の広場にスーッと入り込み、観光局を左に見たものの、駐車する場所のあるはずもなく…。そのまま道なりに進み、何とか路肩の駐車場に止めて、歩きで、観光客まで戻りました。 その時も結構雨で、真夏だというのに、ひどく寒くて、辛かったです。 その上、やっとたどり着いた観光局の愛想のないことといったら。
ロワイヤは温泉地なのです。そのため、観光局は温泉地を目指してくる旅行者のためだけに存在している様子で、「教会?どの教会のことですか?この近くにあるのは閉まっているけれど。ロマネスク様式?さてね。わかりませんけど、ちがうんじゃないですか」といった対応でした。まれにみるひどい観光局でした…。
ただ、地図をもらえて、町の地形も説明してもらえたので、行った甲斐は大いにありました。というのも、山がちな温泉地で、旧市街は温泉地として繁栄している新市街を見下ろす場所にあるんです。うろうろしていても、きっとわからなかったはず。
私が車を一時的に止めた場所の先に、大きな駐車場があり、その駐車場から旧市街まではエレベーターがあるということがわかったので、本当にこれは助かりました。
記事の最後に、具体的な住所情報などまとめますので、どうぞご参照くださいね。
ちなみに、雨も激しかったせいか、このあたり、一切写真を撮っていませんでした。
余計な情報が長くなってしまいましたが、件のエレベーターで、一気に旧市街に上ります。そして、エレベーターが着く目と鼻の先に、教会があるのには、助かりました。
一見、教会なんだか普通の家なんだか、という様子ですよね。全体に新しくなっている様子で、はるばる来たのになぁ、と思いながら近づきます。
新しくしても、オーベルニュ特有のこのモザイク装飾、そして鉋屑の軒送りは、どうしても手放せないんですね。非常なこだわりを感じます。
あまり期待せずに入ったら、これです。
あーあ、やっぱり。ぬりぬりじゃないか、と思うでしょ?確かにそうなんですが、ちゃんと残ってるんです。
ね、かわいい。 ヴォルトの付け根に置かれた柱頭は、石色もそのままに、素晴らしい彫りの状態で残っているのですが、いかんせん遠いんです。そして、薄暗い。この日は雨だったから、普段よりさらに条件が悪かったのです。
ほとんどぶれてしまいました。
こんなに新しくされちゃっていますが、クリプトもちゃんと残されていて、しっかりとぬりぬりされています、笑。
灯りもあって、すっきりくっきり。素晴らしい柱頭の彫りがよく見えますが、しかし、この修復はないだろう?と、どうしても思ってしまいます。
すべて植物系のモチーフですが、背が低い場所にあるから、なかなかの迫力で、愛でることができるんです。
正統的なモチーフに、しっかりした彫りで、正しい職人さんの作品だな、と思います。 丸みを帯びた柔らかいイメージで、大変好みなんですが、こうなると柱頭だけを取り出して眺めることは難しくて、どうにもなじめませんでした。
でも、こうやってきれいに保たれて、現役教会の役目を果たしているというのは、修復に必要なお金も集めることができるような熱心な信者さんがついているということですから、教会としては幸せなはず。 現にこの朝も、信者さんがお掃除をしていらっしゃいました。 一方で、温泉街として生きている今の町からは、若干見捨てられているような旧市街全体の寂しさのようなものも感じられました。
実は、度々出る尾籠な話で恐縮ですが、ひどくトイレの必要があり、教会近くにあったカフェに飛び込んだのです。朝も早いというのに、数人のおやじがカウンターにたむろして、ワイングラスを前に、女主人とおしゃべりをしているような店でした。 カフェを頼むと、「ありませんよ」と。 え~っ、もうなんなんだ、この町は! 通じなかったんだろうと思って注文を繰り返すと、迷惑そうな女主人に代わって、お客の一人が、「カフェは、今マシンが壊れているから、できないんだよ」と説明してくれました。指さされたエスプレッソ・マシンは、どう見ても、昨日や今日壊れたとは思えない有様で、ほぼ物置と化していました…。 結局トイレだけ借りて、逃げるように出てきましたが、誰も何も気にしていないようでした。そんな雰囲気からも、なんとなく、見捨てられた旧市街、というイメージが強かったです。
実用情報: 観光局=新市街の中心広場にあります1 Avenue Auguste Rouzaud 観光局に行くために、とりあえず駐車した道はPlace Jean Cohendyで、道脇が公園になっているせいか、路肩が駐車場になっています。 旧市街へのエレベーターがある大きな駐車場は、その道をさらに登った先で、Avenue de la Valleの30番前後と思います。
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2018/09/22(土) 02:31:56 |
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2016.08.オーヴェルニュの旅 その36
前回の記事で、長い一日がやっと終わった、としましたが、実はそうじゃなかったのを、写真を見て思い出しました。 宿泊した町にも、重要性は低いけれども、一応ロマネスクの教会があったのです。
クールノン・ドーヴェルニュCournon d'Auvergneのサン・マルタン教会Eglise Saint Martin。
疲れ果ててホテルに入って、すぐに夕食に出たのですが、思いの外、早く食べ終わったので、ホテルに戻る前に、ぶらぶらと散歩しながら、訪ねてみました。 勿論、すでに21時半を回った時刻ですから、開いているわけもなく。
建物は、思いの外立派ですが、かなり修復や再建工事が施されているようで、ロマネスクの様式は保っているものの、ディテールを含む全体は新しく、修行観点からの見どころは、ミニマムといったところでしょうか。
写真では、きれいな夕暮れです。
ただ実際は、これよりはもっと薄暗くなっていて、上の方のディテールなどはあまりよく見えませんでした。なので、翌朝、ホテルをチェックアウトして、車に荷物を積んでから、もう一度だけ、行ってみました。
もしかして、開いているかな、という期待もあったのですが、残念ながらクローズ。通りすがりの地元民らしき人に尋ねると、「普段は閉まっているけど、今日は午後に結婚式があるはずだから、開くんじゃない」ということでした。村よりは町と呼べる規模なのですが、そういうことは誰もが知っていたりする規模、ということは、やはり村なんでしょうかね。
後陣の構造はそのままですが、そこから本堂への一部は、こんなに新しくなってしまっています。
ブラインドアーチ構造は残しながらも、漆喰ぬりぬり。ということは、おそらく中も真っ白になっていることでしょう。
アーチ部分も、きれいになりすぎて風情はありませんが、オーベルニュ様式を守ったままです。軒持ち送りの、執拗な鉋屑も含めて。
でも、こういう柱頭を見ると、中にも何かしら、残されているような気もします。なんせ創建が11世紀と古いようなので、シンプルな彫り物、あっても不思議ではないですね。こういうプリミティブなモチーフ、好きですし、残念。
ここでも、全体に残念感じを払しょくする出会いがありましたよ。
夕食後の散歩で出会ったやつ。 そして、早朝に、出会った、かまってちゃん。
フランスでは、どこの猫にも結構好かれます。そういうにおいがしてるのかな、笑。
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2018/09/20(木) 05:26:40 |
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2016.08.オーヴェルニュの旅 その35
サン・サトゥルナンSaint Saturnin、ノートルダム教会Eglise de Notre Dame、続きです。
こちら、クリプタもありまして、こんな様子です。
構造は、おそらくかなり古い時代のものと思われますが、全体にお化粧直しが激しく施されている様子で、どうも、私が期待するインパクトには欠けておりました。 というわけで、あっという間に見学終了して、また本堂に戻ります。
この様式にはつきものの、十字架構造の真ん中に当たる場所、となるのでしょうか。高く持ち上げられたクーポラをしたから眺めた図。
これは、なんだかいいですね。幾何学的な複雑な構造って感じで、シンプルな石積みが際立ちます。こういう場所に、色付き柱頭はいらないですね。でも、創建当時は、やはり彩色されていたのでしょうかね。石積みの様子も見えないように、上塗りがされていたのかな。 フランスは、今でも、漆喰で内部の壁を真っ白に塗りたくっている教会も多いので、ここは、好感度高いです。
この、極狭な側廊も、よく見るスタイルですが、ちょっと迷路っぽいというのか、謎めいていて、結構好きなんです。
建築技術的に難しい高さを実現するための工法なんでしょうか。いっそ、ない方がいいくらいの狭さの側廊なのですが、明らかに補強にはなりますよね。
そして、かわいらしい柱頭。
シャンボンと同じ図像ですね。一見すると鳥ですが、全身見るとグリフィンなのか、キメラなのかというフィギュア。この辺りで人気だったのですね。でも、教会内部にあった説明書きには、鳥とありました。ありゃりゃ、考えすぎか。
前回も書いたように、とにかく暗いので、数は撮影したのですが、ほとんど失敗です。
グリーンマン・バリエ、とでも言ったような図像です。葉っぱから男の顔がのぞいています。こちらも同様。
葉っぱの彫りは、結構バラエティに富んでいて、大胆な様子なのに、人や動物のフィギュアに関しては、ちょっと控えめな表現です。葉っぱは、かなり技能の高い葉っぱ専門石工さんがいたけれど、それ以外は、ちょっと手が落ちるような、そういう感じ? 例によって、勝手なことを想像して、楽しくなってきます。
こうやって、写真を見直して、意外と好みの教会だったのではないか、などと考えるにつけ、できれば再訪してみたいし、その時に、意外と好きじゃん、と思うのか、やはり最初の感覚が正しかったと思うのか、そんなことを想像するのも、楽しかったり。 ロマネスク、何度でもおいしいかもね。
最後に実用情報です。
オープン時間=4月から11月の夏時間は9/19、11月から4月の冬時間は9.30/17.30、いずれもノンストップ(ただし2016年情報)。 駐車場(下の絵図の、赤い点) 町の入り口にあるので、躊躇なく停めて、旧市街にある教会へのアクセスが徒歩。
私が訪ねた時は、教会へ向かう小路が大工事中で、閉口しましたけれど、今はきっときれいになっていることでしょう。
アスファルトの道の真ん中が石畳になっているのですが、この部分を作っていたようです。全体に坂道の町で、この石畳が、水の流れる道になっているようでした。両脇をアスファルトにしちゃうのは、風情がないですが、車にも歩行者にも、優しかったりはしますね。石畳の道は、疲れますから。
小さな旧市街ですが、もう一つ中世サイトがありました。
セント・マドレーヌ礼拝堂Chapelle Sainte Madeleine。 ノートルダム教会と道を隔てて、ひっそりとたたずむ小さな礼拝堂。 今は、教会昨日は持たず、展覧会場になっていましたが、全体の古びの様子が、とても雰囲気あります。
鉋屑も、このくらい古びた方が、風情があると思います。すでに朽ちかけているかも、ですが、これはこのままで置いといてほしいもんですね。
フランスでは、よく猫を見ます。ほとんどは飼い猫と思うのですが、田舎では、放し飼いになっているようで、どの子もとってもフレンドリー。私、犬は苦手なんですが、猫は大好きなので、すぐ遊びたくなってしまいます。そして、バカみたいにたくさん写真を撮ったりして。でも、そういう猫たちが、結構記憶のよすがになったりもするんですよね。
長い一日が、これで終了しました。
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2018/09/17(月) 05:18:53 |
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2016.08.オーヴェルニュの旅 その34
次々と有名どころが続きますが、この辺りは、もう一日の終わり。もう身も心もクタクタで、一気にホテルに向かいたいところだったのですが、ここをこの日に見ると見ないでは、あとあとのスケジュールが変わってきますので、身体にムチ打って、この日最後の目的地に向かいました。
サン・サトゥルナンSaint Saturnin、ノートルダム教会Eglise de Notre Dame。
フランス・ロマネスク好きな方には怒られるかもしれませんが、旧市街の細いのぼり道をせっせと歩いてたどり着いた時の第一印象は、「あ、またこれか」でした、笑。 この手のオーベルニュ・スタイルの大型教会、どこもここもそっくりで、正直、写真を並べられたら、どこがどこやら、というのが本音です。すみません。
実際、そういう遊びもやってみたいんですよね。建造物を横並びで見てみたり、同じテーマの柱頭を並べて検証してみたり。でも、旅の記録をたどるだけで精いっぱいの年月が続いていて、そういう暇がないのが、時々とっても残念です。とか言いながら、ワインを片手に、だらだらテレビを見ていたりするので、本当はそういう時間すべてをロマネスクに捧げれば…。 いやいや、無理ですね。現場を体験することだけに注力するミーハーなロマネスク病ですからね。
さて、受ける感覚的に同じ、とはいえ、それなりに観察はします。
オルシヴァルでは、軒持ち送り、モディリオンは、見事に鉋屑一本やりでしたが、ここも、一見そういう様子ですね。 しかし、よく見ると、結構楽しいんです。わたし的には、このモディリオンが、サン・サトゥルナンの魅力かも。
基本は、やはり鉋屑なんですが、時々、鉋屑を背負った変なものがあります。これは、かなり間抜け面のドラゴン的生き物でしょうか。フンって鼻息はかれてる感じしません? 上部の市松模様も、再三書いているように、大好きな意匠です。
こんな人、愛らしくていいですね~。
鉋屑とか、市松帯は、勿論修復や再建も施されているとは思いますが、全体にすごく正確で、きちんとした作品となっているのに、鉋屑背負いの不思議な人たちは、どれも、妙にプリミティブな感じで、それが正確な作品と一体化しているのが、何とも不思議な魅力を醸し出しています。
ほらね、変ですよね。 面白い石工さんがいたんですね。
さて、入り口は、ここも脇です。
実に立派な堂々とした建造物。この一帯のロマネスク、大規模というのもすごいです。 この教会は、もともとベネディクトは修道院付属の教会のようです。オーベルニュのこの手の教会は、もしかすると、出自が修道院というものが多いような気もします。それにしても、そんなに広くない地域に修道院がひしめくように作られて、それぞれ、しっかりと運営されていたというのはすごいことですよね。よほど敏腕のマネージャー的修道院長がいたんでしょうか。
オーヴェルニュは、フランスの中で最も貧しい州であると聞きました。際立った産業もなく、ワインも、ブドウの病気が発生して以来ダメになってしまったとか、どうも、あまりうまくいかない土地のようなんですが、中世は、どうやら今とは全く違う位置づけだったのかと思われますね。
内部も、オルシヴァルそっくりです。柱頭に葉のバリエが多いところも同じ。これはもう区別つきませんよ、私には。 疲れ切った状態で、オルシヴァルとサン・サトゥルナンのふたつを見るのは、まったくもって見学の仕方として、間違っていると思います。「同じじゃん」というところで、ほとんど投げやりになってしまって。 なんとなく、これは再訪するべきじゃないか、と今思っています。
葉っぱのバリエでは、私は、こういう単純化されたものが好みです。
細かい彫りのタイプは、ギリシャやローマの模倣っぽくて、ロマネスク的な面白さも感じられないのです。実際、ローマ時代のものを再利用しているケースも多いわけですが。
半端なところで切って申し訳ないですが、続きます。
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2016.08.オーヴェルニュの旅 その33
オルシヴァル(オクシヴァルではなく、笑)、続きです。
入場すると、ここも高い天井で、壮大な雰囲気があり、どうしようか、と思ってしまうのですが、ここは、彩色がなくて、細部が見られると楽しい柱頭がたくさんあるんです。
これは、副柱頭部分に、Foldivesと書かれていますが、意味が分かりませんし、表されている内容も、私にはわかりません。 いずれにしても、現地では、前回の記事でも触れましたが、外光が届かない場所は、闇に沈んでいる感じで、その上にとても高いところにありますから、オペラグラス程度では、判別不可能でした。ところどころ、小さなライトが灯されているので、かろうじて撮影できるという感じなんです。
細かい彫りの技術を持っている職人さんですよね。 鳥の翼模様もすごいし、また、角っこにいる人が何しているのかわかりませんが、大きな葉っぱを抱えているようです。姿勢的には、道路工事の人にしか見えませんけれど、笑。
この細かい彫りを見ていたら、技術の進歩、そして、同時に道具の進歩ということも考えました。 それまでの建築がロマネスクというくくりにされる建築になったのは、技術と道具の両輪が必要だったわけで、その後現在に至るまで、適切な道具なしに技術の進歩はありえないですね。レオナルドの時代、彼のアイディアを実現できる道具があれば、どれだけのアイディアを形にすることができたか、ということにも思いが至ります。
石工の世界でも、日進月歩で道具のレベルが上がったんではないでしょうかね。よい職人は、金に飽かせて、よい道具を手に入れて、それによってまた素晴らしい仕事ができるというような。一方で、田舎の職人さんは、最先端の道具なんか入手できないですから、古い道具でコツコツとやるしかなくて、みたいな。おお!何か、ドラマです。
ここで、最も目に留まったのが、アカンサスのバリエの豊富さです。
いや、現場で、しっかりと人物や動物フィギュアの細かい部分まで見ることができていれば、もっとそっちに肩入れしたのでしょうが、本当に暗くて、上部の柱頭などは、写真で初めて雰囲気がわかったような次第ですからね。
アカンサス・バリエ、周歩廊に円形に並ぶ柱頭にずらり。
ちょっと春菊入ってますか。すき焼きのにおいがしそうなアカンサス。 一個一個違うのが横並びって、なんか和食器的で楽しいです。
細かくて、こういうひたすら同じものをしこしこやるのが好きな職人さんの仕事なんだろうな、と感心します。実は、自分も、正確さは全くないのですが、そういう仕事が好きなので、共感するっていうか。
これでもか、というくらい、たくさんの葉っぱバリエ。
これらは、サン・ジャン門のすぐ近くなので、見やすかったんですよ。 一方で、本来の私の好みの楽しいフィギュア満載系は。
暗闇に沈んで、ひっそりと怪しく過ごしているんです。こうなると、一眼レフとか高性能なカメラじゃないと、ちょっと無理です。 なめるように石を見ていると、多くの石に、印が入っていました。
確か、業者さんの印でしたよね。 これは、イタリアでは、ほとんど見られないと思うんですよ、どうでしょうか。仕事のシステムが違ったということなのかな。 それにしても、最終に引き渡すものにこの堂々とした印を残す感覚って、なんなんでしょうか?今となっては、味のあるアクセント、とも言えますが、ちょっと謎なんですけれど。
ロンゴバルド系というか、ゴート系というか、こんなきもかわいいやつも隠れています。
クリプタに降りることもできます。
かなり古い建造だと思いますが、相当新しくされてしまっているので、ちょっと雰囲気が、ピカピカしていて、好みのクリプタではありませんでした。 クリプタの天井も高いですね。
クリプタ、ピカピカにしたのに、上物の方、よく、この古びた様子で残したものだと思います。
創建当時は、朝日が上から差し込むとき以外は、おそらくほとんど暗闇だったのでしょうね。巡礼者は、ろうそくとか持たないと、周歩廊を歩けなかったのではないかと思ってしまいます。 下の方にある、美しいステンドグラスのはまった窓は、ゴシック時代以降に拡張されたのではないかと思いますが、どうでしょうか。
写真を見て、改めて、なかなかすごい教会であったことよ、と感心している次第。 再訪すると、きっと受ける印象もずいぶん違うのではないかと思います。いつか、再訪したいですね。
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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2018/09/15(土) 02:23:51 |
オーベルニュ 03-63-15-43
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2016.08.オーヴェルニュの旅 その32
人気のないシャンボン・シュル・ラックを後にして、向かったのは、これまた著名なロマネスク・サイトです。 結構、山に分け入るルートで、素晴らしい風景が展開しましたが、一人の寂しさで、撮影ができません。また、山道なので、ゆるゆると景色をチラ見しながら走るような余裕もなく、これは、かなり素晴らしい景色だな、と漠然と思いながらのドライブです。
オルシヴァルのノートルダム教会Basilique Notre Dame d'Orcival。
追記:よくあることですが、間抜けなわたくし、オルシヴァルOrcivalをオクシヴァル Occivalと記載しておりました。現地まで乗り込んだくせに恥ずかしいことですが、なんだか、ずーっと、オクシヴァルと思い込んでいた節があります。いつも見てくださる方に、親切なご指摘をいただき、唖然と致しました。フランスの地名はいつまでたっても覚えられないうえに、間違って思い込んでいたり、どうも、フランス語とはフィーリングが合わないっていうか、ダメですね~。今後気を付けますが、どうぞ、間違いに気付いたら、躊躇なくご指摘いただけると助かります。
山の中のリゾート村にある立派な聖堂、という感じです。村に比して、本当に立派な建造物。 道路側に、堂々とした後陣があり、扉は南側の側面側にあります。この辺りでは、ファサードがないがしろにされているのが、割と普通なスタイルって様子ですね。これまで見てきた教会も、ファサードはほとんど特筆すべきものがなかったり、後代の建造物だったり。一方で、後陣には、細かい意匠が施されているなど、大変力が入っています。これだけ大規模な建造物なのに、そういうアンバランスっていうのか、面白いですね。
扉口にしても、木製の扉の鋳鉄装飾は、なかなか印象的なんですが、扉周りは地味だったりしますね。
ちょっとわかりにくいかも、ですが、これが入り口となっているサン・ジャンの扉。そして、その奥の方が、ファサードとなるのですが、もうね、高くなっている町の段差と一体化してしまっていて、本当に存在しないんですね。
一枚の板があるだけ、という状態です。
ここは、山を切り開いたような土地なので、こういう風に作らざるを得なかったという状況はわからないでもないのですが、なんか、あるだけの土地で、作るとしたら、ファサードをこれだけないがしろにするよりは、全体をもうちょっとこじんまりとしたものを作るっていう発想がなかったのかな。または、徐々にでかくなったとかそういう経緯があるのかなぁ。
そして、扉の鋳鉄装飾。
この鋳鉄装飾は、とてもフランスらしいと思います。感じとしては、オリジナルなのでは。立派なでかさですよね。そして、素敵な技術。 この鋳鉄、装飾でもあるし、木製扉の補強的な意味も、おそらくありますよね。木製扉だけなら、もっとボロボロになってしまっていても不思議なないような気がします。全体新しくされている教会でも、よく古い扉が残されてありますが、何百年も前のものとは思えないケースがたくさんあります。鋳鉄装飾は使いまわしで、木製部分を交換していたり、するのかもしれませんけれど。
もうちょっと後陣に近い方に、通用門のような小さな入り口があり、今は閉まっていますが、そちらもしっかり装飾されていました。
入場は、サン・ジャン門からお願いします、と張り紙がありましたし、割と人の出入りがあったので、間違えることがありませんでしたが、焦ってたどり着いたりして、人のいない時期だったりしたら、とりあえず、この扉をガンガンと開けようとしたかもしれないです…。そして、閉まっているので絶望したかもしれません…、笑。
ちなみに、この小さい方の扉も、かなりオリジナルっぽくて、古びた様子が、大変魅力的でした。内側から、カギがかかっている様子をパチリ。
鍵のシステムの一部には、新しくされている部分もありましたが、個人的には、鉄のパイプでがっちゃんと閉めるタイプの、このシステム、結構萌えます。自分で鍵穴にカギを差し込んで開けるのも、非常にワクワクしますが、このがっちゃんとか、足元にねじ込まれた鉄パイプを持ち上げたりして、重い扉を開けるのもまた、かなりワクワクもの。まぁ、そういうのは、田舎の小さい教会で、非常にまれに出会うことができるだけですけれど…。
いよいよ入場。
ここも、背がかなり高いです! そして、相当暗いです。 写真だと、結構明るい感じに見えますが、これISOをかなり上げて撮影しているからで、実際は、相当薄暗いです。サン・ジャン門の近くとか、後陣など、開口部のあるところ以外は、柱頭を観察するのも厳しい暗さでした。
続きます。
以下、実用情報です。 イースターから11月1日の万聖節までが夏時間で、8時半から19時半、そして、万聖節からイースターまでの冬時間が8時半から18時までのオープン。冬時間だって、一日中開いているとは、なんと太っ腹な。やはり観光地的な位置づけなんですね。毎日、というのが、信じがたい素晴らしさです。 また、教会の周辺に、駐車場がたくさんあるので、駐車も便利。駐車場の隅っこに、公衆トイレがあるのも、ありがたいサイトです。
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2018/09/14(金) 05:25:31 |
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2016.08.オーヴェルニュの旅 その31
シャンボン・シュル・ラックChambon sur Lac続きです。 道を挟んだ反対側、かなりなだらかな丘の斜面に、墓地があり、そちらに本来の目的の教会があります。
教会の建物は、墓地の敷地の、一番高いところにあります。
墓地の円形礼拝堂Chapelle Circulaire du Cimitiere / セポルクロ礼拝堂Chapelle Sepulcrale / 墓地のろどんどRotonde円形建物、または洗礼堂 du Cimietiere ou Batistere
あちこち場所によって異なる様々な呼称が見つかりました。10世紀ごろがオリジナルということで、創建は相当古く、建っている場所から何から、その目的はかなり謎というところなのでしょうか。でも、いくらなんでも、この場所で洗礼堂、ということはなさそうですけれども。 円形ということから、やはり聖地のサン・セポルクロ教会を模倣した礼拝堂というところでしょうか。
左手の遠方に、前回記事で紹介した、村の教会のとんがり屋根が見えます。 実は、教会前に掲げられた説明版を、改めて見直したところ、記事で、これはどうも、意外と新しいのではないか、と勝手な見解を述べてしまった、今はナルテックスの上部にはめ込まれた浅浮彫ですが、12世紀に、サンテティエンヌSaint'Etienneに捧げられたもの、とありました。 つまり、教会は、「村の教会」となっていましたが、一応サンテティエンヌに捧げられたもの、ということになりそうです。しかし、あの浮彫は、12世紀には見えないような気がするんですけどもね~。
さて、墓地の方ですが、こちらは、残念ながら、クローズでした。 でも、周りの装飾が楽しくて、足場の悪い坂の立地に苦労しながら、ぐるぐると回るのが、結構楽しかったんです。
仲良く水を飲むカップルの鳥は、古い図像学に基づくと、魂の永遠を表すとかなんとかだと思います。が、よく見たら、どうもこれは鳥ではなくて、グリフィンだったみたいです。なんと、下の方で、手まで取り合っちゃっていますが、後ろにも足があるから、手を取り合っても安定してます、笑。
正面に回り込んでびっくりな姿。
もともとは単純な円形だったのだろうに、このファサードは、12世紀以降のものでしょうね。オーベルニュ特有の石のはめ込み装飾、どうしてもつけたかったんでしょうかね。
土地は全体としては緩やかな丘なんだけど、この教会の立地、結構激しい高低差があるのがわかると思います。内部はどうなってるのか、ちょっと興味が沸きますね。 円形部分の中央に、窓が開いているような様子がわかるでしょうか。
ブラインドアーチならぬ、なんていうんだろう、まぁ、ニッチ、となりますかね。そこに柱が並べられていて、珍しい装飾だと思います。後代のファサードで変えられちゃったけど、このスタイルがぐるりとあったんではないでしょうか。ここの柱頭も、それぞれ面白いんです。
この二股人魚は、ひどく変わっています。
なんとお隣あっている方の尾っぽが、ぐるぐる巻き巻き状態になっているのです。こんなの初めて見た!こんがらがっちゃって困惑しているような様子の、バストがどっちかというとムキムキの男性の筋肉にしか見えない人魚さん、チャーミングです。
この、ぜんまい的な植物モチーフも独特。
間に置かれたものは、いくらパイナップルや松かさに見えても、図像的にはブドウで決まりのはずですが、とすると、ぜんまいや蕨のバリエではなくて、単にブドウつるなのかなぁ。独創的だ~!
極め付きはこの人!
なんかわかりませんが、「ほっほ、そらみたことか」とか何とか、そういうセリフがピッタリなキャラです。いたずらして、陰から結果を観察して喜んでいる、そういう図ですよね、間違いなく!
お隣にいるわしすら、崇高性ではなくて、なんかお茶目な表情満載。
やっぱり、中、見てみたかったですね。情報によれば、中にもかわいい柱頭満載、とありますが、さて、どうなんでしょうか。 いずれにしても、こんなに小さな建物なのに、その外側だけでも、満足出来ちゃいました。
それにしても、午後半ばのおやつ頃の時間帯で、これだけの墓地があるそれなりの村だというのに、人っ子一人おらず、なんだか不思議な気持ちになりましたとさ。
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2018/09/12(水) 04:46:52 |
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