2016.08.オーヴェルニュの旅 その45
早朝のエヌザに振られて、向かったのはこちらです。
キュラCulhatのサン・ヴォジー教会Eglise Saint-Vosy。 現地に行くまでは、「キュラ村の教会」としかわかりませんでしたが、わかったところで、聞いたこともない聖人の名前で、二度びっくり、という感じです。
後陣側は、かなりオリジナルに近い姿で残っており、オーベルニュの装飾もあります。
しかし、ファサード側は、かなり新しくされていて、教会建物全体は、ちょっとアンバランスな状態になっています。
右側が、ファサード側に続く部分で、ここはお得意の白塗りです。本来は、翼廊や後陣のように、石がそのままむき出していたのではないんでしょうか。もったいないことです。まぁ、漆喰を塗ることで、剥落防止とかの効果がないわけではないのでしょうけれど、でも、歴史や芸術性を取ってほしいですよねぇ、実用よりも…。
ロマネスクを求めて訪ねてきて、このファサードだけ見たら、引き返してしまいそうです。
でも、中は意外にも結構好きでした。 意外にも、というのは、やはりかなり塗られていたからです。
入場したときは、しかしびっくりしました。
木製の支えがあっちにもこっちにも。 途中にポスターなんか張って、まるで飾り棚扱いですが、これはどう見ても、崩壊防止の支えですよね? それでいて、特にアクセスを妨げるものもなく、いいのか?と、ちょっと恐る恐るの気分でした。
かなり激しいですよね。これは、三つ後陣のそれぞれをつなぐ通路部分のアーチですが、強烈。 確かに上の方に、ひびが入っていたりするので、白塗りのせいもあってそうは見えないですが、建物として、相当ガタが来ているのですね、きっと。
さて、この支えの入っているアーチ基にも見えますが、この、白塗りで、かなりそっけない様子の教会の中で、何がよかったかというと、柱頭なんです。
ほとんどが植物モチーフで、いずれもとてもシンプルなんですが、それが、かえってデザイン的で、好きでした。この、葉っぱの並んでいるだけの柱頭なんて、なんというか、石工さんのセンス、半端ない気がします。
大げさですか。でも時代も何もわからないような、そういう作品だと思いました。
技術もモチーフのアイディアもないし、人のフィギュアなんて彫れないし、という苦肉の結果ですかね。いや、でもこの究極のシンプル葉っぱはすごいです。葉っぱ、だと思うんですが、笑。
時には、お団子を入れてみたり。 こんな帯を組み合わせてみたり。工夫が感じられます。
それにしても、このお花の完成度。これは、実際、いつの時代のものなんだろうか。
この柱頭の様子には、全体の白塗りもマッチしている感じがして、それで、いやな感じがなかったのかなぁ。
これ、なんでしょうか。
なんか、祭壇とかに置いてある祭具っぽいですが、そんなもんを柱頭に彫りますかね? 全体にとっても地味でシンプルで、でもそれが独特の美しさや親しみやすさを醸し出している教会でした。
ところで、最近やっと、サクサクとアップするリズムが出てきたところで残念なんですが、2週間ほど一時帰国で不在となるため、ブログはお休みします。 紅葉でも求めての一時帰国なら、本当に楽しい季節だと思いますが、必要に応じたものなので、実は結構憂鬱。まぁ、人生色々ありますからね~。 では、また月末に。
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2018/10/09(火) 05:01:37 |
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2016.08.オーヴェルニュの旅 その44
最近の記事につき、私が勝手に師匠と慕っている方より、大変貴重なご指摘をいただきました。 彼は、もう30年以上も前から、フランス中心にロマネスクを巡られている方ですが、当時は、まだこれほど白塗りされていることはなかった、ということなんです。証拠(?)の写真も、見せていただきました。びっくりです。 フランスでは、内部が漆喰で白くされているケースが多く、そんなもんかと思っていましたが、それって、高々この30年程度の傾向らしいんです。その前は、石むき出しというケースが多かったようです。 なんででしょうね。やはり北方系の感覚で、一面に塗りこめちゃった方が好みなんでしょうか。漆喰ぬりは、古くなるとみすぼらしくなるし、カビが生えたりするし、絶え間なくケアができない以上は、石むき出しの方がよいような気がするんですけどね~。
今回ご指摘を受けたので、私も改めて、各地の写真を見直してしまいました。すべてが古い時代に訪問された際の写真ではないと思うのですが、こういう観点から眺めると、ことさら興味深く感じられました。
さて、クレルモン・フェランでは、結婚式に阻まれつつも、何とか到着日に見学することができましたので、翌日は、早朝から見学開始です。珍しく、ホテルの朝食も早くから頂けたのは、幸いでした(6時45分にいただいています。時間に追われる修行旅では、朝食が早いと、それだけでホテルの評価がぐっと上がったりします)。
向かったのは、エヌザEnnezatです。
サン・ヴィクトワール・エ・サン・クロン参事会教会Collegiale Saint-Victoir-et-Saint-Couronne。
町を目指して行けば、道沿いに堂々と立っているので、見逃しようのない、大変わかりやすい立地です。
事前に、8時から18時というオープン情報を得ていたので、勇んで出かけたのですが、8時15分を回っていたというのに、開く気配もないのでした。 しばらく外側を見学して、様子を見ましたが、らちが明かないので、他に向かい、ここへは一日の終わりに、また戻ってくる羽目となりました。 ですから、内部の写真は、夕方に撮影しております。
外は、至ってつまらないのです。 スタイルは、ほとんどゴシックになってしまっています。後陣など、目も当てられません。
ところどころに、オーベルニュ様式の装飾が残されているくらいで、見るべきものはないと言っても良さそうです。
この教会は、中に入れない限りは、行っても無駄、と言えます。断言します、笑。 そういうわけで、夕方、疲れた身体にムチ打ってでも、戻らなければならなかったわけです。
待望の内部。
ここも塗ってあるようですが、よくケアされている感が、ありますね。いやな感じはしません。円柱の石色と合っているからかな。 内陣を取り囲むような壁の高い部分に、ここでは、勝利のアーチという位置ですが、二連とか三連の開口部が設けられている構造、イタリアでも時々目にするものと思いますが、結構好き。 あんな場所の開口部って、完全に装飾的な意味しかないと思うのですけれど、なんか二連とかにしちゃって、実用的な窓みたいな様子で、妙に惹かれるんですよねぇ。
内陣から見た様子。 それにしても、主身廊の細いこと!これまた、なんだかゾクゾクします。こういう構造も、フランス的というか、イタリアでは見ないように思います。
大きな立派な教会で、側廊は二階建てで、イタリア語だとマトロネオが作られているようですね。参事会教会だから、関係者が入れたスペースかな。
フランスらしいと言えば、この構造も、そうですよね。翼廊との交差部。
どうも、適切な単語を知らず、調べもせず、いい加減に書いてしまうので、申し訳ないです。イタリア語から入っているので、イタリア語直訳とかそういう感じになっちゃって。日本でロマネスクやってると、基本単語は皆さんフランス語を使ってらっしゃるので、ギャップがありますよね~。
この構造も、印象的で好きです。壮大なんですが、でも、この部分というのは、とってもせせこましくできていたりして、それでいて背が高くて壮大だったりするのが、なんというか、ミニチュア的な面白さを感じるんですよね。
ここでの見どころは、構造のみならず、数々の保存状態の良い柱頭です。
ケンタウロス。植物にかぶさった前足の愛らしさ、そして、顔が普通のそこらの牧童的で、石工さん、自分のお子さんをモデルにしたんじゃないの?とか、想像してしまいます。
こちらは、割とおなじみな感じですね。金太郎みたいにも見える真ん中のふくよかな人は、どうやら悪徳高利貸しのようです。
「お前が高利貸しをやるなら、俺たちは俺たちの仕事をするまで」的なことが書いてあるようですが、なんか、高利貸しの顔も、純朴な農民的で、ここの石工さん、モデルに限りがあったというか、周りに普通のいい人しかいなかったんじゃないかと…。
一見、羊を背負っている羊飼いかと思ったけど、鎖帷子、着てますかね?
それにしても、左の人、鼻でかすぎです。あとから誰かがくっつけたのか、それともシラノ・ド・ヴェルジュラックみたいなモデルさんがいたのか…。
鳥も、なんだか火の鳥というのか、想像がなかなか変な方向に行ってるような感じもありますね。 ほらほら、これも、なんかどっかからパクったような感じ?
人魚も、どう見ても近所のおばさんっていうか、おじさんっていうか、いるでしょ、こういう人、っていう顔つきだと思います。
何はともあれ、聖書エピソード一切なし、ってことでしたか。 多分(細かい記憶なし、涙)。
実用情報ですが、夕方訪れたのは17時過ぎだったので、18時ごろまで開いているのは確かと思います。2年前ですが。
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2018/10/08(月) 01:51:13 |
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夏休み時期がありますので、数が読めない時期でした。 それでも、少ない時間でも、本をまったく読まない日常はありえないのですが、昨今、読書人口というのは、さらに減少しているようですね。特に、若者の読書量が驚くほどに少ないそうで、恐ろしくなります。 最近の研究では、幼い時に、読み聞かせなどで本に親しむかどうかで、成長後の読書ライフに大きな差が出てくるそうですね。幼児に本に親しんでいないと、その傾向が一生続いてしまう確率が高いのだそうです。
「ケルト美術への招待」鶴岡真弓(ちくま新書) 「浮世の画家」カズオ・イシグロ(ハヤカワ文庫) 「ヴァイオレット・アイ」スティーヴン・ウッドワース(SB文庫) 「京都西陣なごみ植物店」仲町六絵(PHP文芸文庫) 「デカメロン上・中・下」ボッカッチョ(ちくま文庫) アーサー・ランサム全集6「ツバメ号の伝書バト」(岩波書店) アーサー・ランサム全集7「海へ出るつもりじゃなかった」(岩波書店)
・ ケルト美術の本、これじゃないんですが、同じ著者の別の本を、前回の一時帰国で、同じ本を購入してしまったんです。積読しすぎて、すっかり忘れていて。それで、この新書も発掘しまして、読みだしたら、これは大変面白い招待本でした。素人にもわかりやすく、また、私のようにミーハーなロマネスク美術ファンにもうってつけな、こういうことを書いてほしかった、というような内容が多くあり、ケルト美術にちょっと興味があるけれど、という方には、強力におすすめです。 ・ デカメロンは、超有名な、イタリア中世に書かれた本です。上中下の三冊を合わせると、かなりのボリュームでもあり、ずいぶん前に求めた本ですが、これも長らく積読してありました。いざ、読みだしたら…。なんとなくそういう内容だということは知っていたのですが、それにしても、あまりの下世話ぶりに、改めてびっくりしました!おそらく2か月くらいに渡って、就寝前にベッドで少しずつ読んでいましたが、そして、苦痛ということはなかったのですが、それにしても、なんという能天気な内容の連続か。時代背景とか色々あるわけなんですが、いやはや、驚きました。 ・ アーサー・ランサム全集は、以前無料で入手したもの。いわゆる児童書に分類されるもので、子供の時分に読んだ記憶があります。でも、こういうタイプのお話は、かなり好物です。大人を「土人」と称して見下して(今ではこういう表現、まずいことになるのかもね)、子供たちだけで、未知の世界への冒険を繰り広げる話ですが、こんなに年をとっても、やっぱりワクワクしました。
うーん。いくら夏休みとはいえ、ちょっと少なかったな。 通勤時間にフランス語学習を再開したせいもありますけどね。
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2018/10/06(土) 04:27:16 |
読書、備忘録
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2016.08.オーヴェルニュの旅 その43
クレルモン・フェランClermont Ferrand、ノートルダム・ドゥ・ポルBasilique Notre Dame du Port、続きです。 結婚式の終わる気配を探りつつ、外側の見学を続け、後陣側に回り込みます。
おお、まさにオーベルニュ様式バリバリ。でも、このサイズ感はなかなか好ましいです。 例によってのはめ込み装飾、かなり派手な感じで施されているのですが、サイズ感で癒されるっていうのかなぁ。
受け入れやすかったです。身の丈を凌駕するようなでかさが、私の気持ちをブロックするのは、間違いないようです。
こちらにも、なかなか手の細かい柱頭があります。
女性と男性のフィギュア、アダムとイブのイメージですが、どうなんでしょうか。 妙に筋肉質で、がっちりした体躯…。扉上の浮彫とは、タイプが違うように思えます。あとの時代なのかな。 同じ時代だとしても、あのたおやかなフィギュアに、こういうしっかりクッキリの悪の強い顔は、絶対にしっくりこない。
楽園というよりは、南の島のたくましい人々ってイメージです。 それにしても、軒送りの市松帯、きれいですよね。
いろんなタイプのはめ込み装飾も、素朴感があって、よい感じなんです。八角スタイルも、ちょっとしたずれ感とか、悪くない感じ。これは、比較的近い場所で見てこそって感じもします。
さて、結婚式が無事終了したらしいので、改めて突入です。
しかし、この白塗りは、どうしても気持ちが萎えますよね。でも、柱頭だけは、ちゃんと元の色で、彩色もなく、すっきりと残されているのですよ。おそらく、近代になって、こういう風になったんだと思いますが、それだけでも救われます。楽しい柱頭がたくさんありますよ。
でもね、まずは、クリプタに突進しました。まだ、祭壇のあたりでは、結婚式の参加者が、盛り上がっている状態でしたけれど、構わず、ずいずい。まったく図々しいことですが、時間の制約もあり、どうしようもありません。 クリプタは、12世紀からずっと、祈りと瞑想の場所だから、お静かに願います、という張り紙がありました。わざわざ張り紙って、騒ぐ人がいるのだろうか?
しかし、これ。上物との差に愕然としますね。 クリプタとして整えられたのは12世紀なのかもしれず、また、柱や床面などは、結構きれいになっているのですが、天井のヴォルトは、石がむき出しで、11世紀ごろの構造物に見られるような状態です。
これはちょっと驚きますよね。
しかし、この時点で、すでに18時を回っていたせいか、気持ちは相当焦っていて、本当に小走り状態でした。いつ閉められるかわからないですし、柱頭もちゃんと見たいしね。 だから、現場では、流すような感じで見てしまって、メモに感想や印象すら記していないのには、我ながら驚き。実際にそこにいたはずなのに、ほとんど見ていないっていう、見すぎた時にありがちな、よくない見学でした。
上に戻って、内陣に林立する柱頭。
大物がずらりです。
この部分には、聖書や福音書に描かれるエピソードが表されているそうです。確かにどれもストーリー性があり、彫りも細かくて、大作。 上のは、天の国エルサレムを表すものらしいですが、天使がラッパを吹いています。
これは、私もわかった!
受胎告知ですよね? それにしても、マリア様も天使ガブリエルも、なんて清々しくてうれしそうな様子なんでしょう。
これは、ちょっとぶれちゃっているけど、エリザベツご訪問かな。
これはヨゼフみたいです。ヨゼフに天使が告知している図らしいですが、私には初めて見た図像かも。それにヨゼフって、おじいさんで登場することが圧倒的に多いと思うのですが、このヨゼフ、若者で、結構イケメン…。
実は、と告白するまでもないですが、あまりの数に、アワアワとしちゃって、ここの撮影の多くは失敗。ちゃんと一枚一枚を確認しながら撮影せずに、一枚を撮りながら、もう次に目が行っちゃうというありさまで…。ひどいもんです。 現場に置いてあった説明版の写真を撮ったものの方が、圧倒的に良いという、情けないあり有様です。
そして、これだけいろいろなエピソードを並べられても、ほとんど図像が理解できないと言う、情けない聖書知識の欠如を思い知らされますねぇ。
聖書とは関係ない柱頭もたくさんあります。
おなじみのグリーンマン。悪魔くん的で、かわいらしいです。 こちらもおなじみ、猿みたいですね。
なんというか、ぽっかりとした、痴呆的な表情が印象的。
あ、びっくり。写真を何度も見直してて、こんなものが。
まさか、イブですかね、これ? これはたくましいです。そして、現代彫刻っぽい。あらまー、びっくりだ。ここ、いろんな石工さんが混ざってますね?
というわけで、現場で楽しみ、写真を見直して楽しみ、一粒で二度も三度も楽しめる教会でした。見どころ、満載。直後に見た時より、二年後の今、さらに楽しんでいる気がします。寝かすといいものもあるのかな。
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2018/10/04(木) 05:51:17 |
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2016.08.オーヴェルニュの旅 その42
あちこちでアワアワしたのは、実は、この日の最終目的地の教会の、オープン時間にもよるのです。 というのも、朝のオープンが10時という情報を得ていたので、宿泊する日に見てしまって、翌日は早くから行動開始したいと思っていたのです。
それが、この町、クレルモン・フェランClermont Ferrandです。
勿論、これは違いますよ。 これは、町の中央に堂々と、本当にどうどういう言葉がこれほど似あう教会もないほどに、堂々とそびえるゴシックのカテドラル、ノートルダム・ド・ラソンプション大聖堂Cathedrale de Notre Dame de l'Assomptionです。 これについては、まったく眼中になく、レストランを探して町をうろうろした際に、横目で見ただけです。
でも、中世の町というのは、それなりにうろつくもんですね。 大聖堂近くの建物に、面白い形で残されている、中世の名残に気付きました。
もう、目的の教会も見学したし、心の余裕があったので、こういうものを目に留めることもできたのかもね。Place des Grasという広場の角っこです。 左の方からアップにしてみます。
テイスト的には、ちょっと時代が下る感じもありますが、なかなか立派な浮彫ではないですか。これについては、ちょっと検索してみたところ、フランス語情報では、写真も出てきたのですが、起源等はわかりませんでした。 大聖堂のある場所ですから、まぁ単純に教会関係の建物であったということなんだろうと思います。 それにしても、今や見事に町の姿に溶け込んで。よくぞこれだけを残したものだと思いました。
さて、私の目的は、こちらです。
同じように聖母にささげられた教会ですが、こちらは、ノートルダム・ドゥ・ポルBasilique Notre Dame du Portです。 これまた見事な、すでにおなじみのオーヴェルニュ様式です。 これだけ立派なオーベルニュ様式で、規模も大きいけれど、今や町の中心部にそびえるゴシックのカテドラルに比べると、若干街はずれにあることもあり、観光客は圧倒的に少ない感じです。でも、地元の人々には、愛されている教会ではないかという印象がありました。
そのせい、というのもなんですが、かなりじりじりと待たされたんです。
まずは、鉄道駅近くのホテルに到着して、車を駐車するところから、話が始まります(例によっての、旅の与太話なので、ご興味がない向きには、飛ばしてください、笑)。 クレルモン・フェランは、そこそこの規模の町でもあり、ホテルも一応市内という位置だったので、この日は珍しく、有料のホテルの駐車場を予約してありました(あとから、週末は近所に無料で路上駐車できたことがわかり、ちっ!と舌打ちしたのですが、そこまでは事前に調べ切れませんから、仕方ありません)。
時間的には押せ押せ状態で到着し、まずは、路上駐車して、レセプションで駐車場のことを聞きます。すぐ隣の入り口から入る屋内駐車場だったのですが、それが狭い~!変な位置に柱はあるし、他の車が停まっているし、で、かなりギリギリのスペースの中、こうやってああやって入れ、とフランス語で細かい指示をしてくれたのですが、こんなことで時間を食って、教会が見られなかったら、大後悔する!と思ったので、「悪いけれど、私は急いでいるので、カギ渡すから、何とか始末しといてくれ~!」と叫ぶように言い、カギを押し付けました。 自分の気持ちとしては、叫んでいたのですが、限りなく片言の、イタリア語交じりのフランス語では、その焦っている気持ちは全く通じなかったようで、「あ、ランデブーがあるのね?わかったわ、やっときます」と、ランデブー=デート的なニュアンスで、牧歌的に受け止めてくれました、笑。
荷物も何もいれっぱの車を放り出して、小走りでたどり着いた教会だったのですが、なんと、結婚式の真っ最中だったんです。ふぅ。
例によって、大きな本堂の、それもぬりぬりで、まずはあーあと思い、その一瞬後で、結婚式の様子に気付いて、さらに固まりました。 とてもこじんまりとした結婚式だけに、とても、お邪魔できない雰囲気でしたので、仕方なく行ったん外に出て、外部を見学です。この時点で、17時20分ごろ。教会は18時には閉まることになっていますから、早く終わってくれ~!と祈りながら。
いろんな時代の付け足しが集積してしまったファサード、というか西側面。入り口が、相当下になっていますが、当時の地面はこの高さだったのかな。だとしたら、チリも積もれば状態の町…。オリジナルの教会の建造が、相当早かった可能性もありますね。
翼廊の張り出した南側。
こちらの方が、ファサードという作りになっています。アーチの連続や、つけ柱、美しいですね。塔も、いかにもオーヴェルニュ。
石のはめ込み細工装飾も、適度に地味な感じで、ここは、これまで見てきた巨大オーベルニュ様式に比べると、私には適度な大きさというのか、受け入れやすい大きさというのか、ほっとするような印象がありました。
そして、その南側の扉。
装飾を守る張り出し屋根は、そう古い様子がありません。これが整えられたころには、すでに損傷が進んでしまっていたものと思われます。残念。 セラフィムさんたちも、おそらくキリストも、顔はなくなっちゃってるし、全体にちょっと寂しい様子です。
マギも聖母子も、無残な顔なしフィギュアに。
衣の細かい彫りなどから、結構技術のある石工さんとも考えられ、いったいどのようなお顔だったのか、興味が沸きますね。 背景に水色が使われているのも新鮮です。なんだろう、天の色だから?とっても神々しいイメージです。
右の方では、洗礼の場面です。
左にいるのは、好きなアイテム、ラクダの皮衣っぽいので、洗礼者ヨハネかなぁ。下に、シメオネと見えるんですが、左側から続いているので、この絵ではないと思います。 スペースにうまく合わせて腰をかがめる姿勢の天使。こういうところにぐっと来てしまうんですよねぇ。 手がね、きれいです。
聖母の手のアップ。縮尺的にはでかいんだけど、ただでかいというより、包み込むような優しい美しい手。小さなジェズの、契約書を握る手も、すっごく愛らしいですよね。 こんな優しい彫りのできる石工さんの彫る顔、どんどん興味が出ますよね。
翼廊の上の方にあった柱頭。
イサクの犠牲の場面のようです。こんな上の方まで、顔が破壊されているのは、どうして?
ちょっと長くなってしまったので、一旦切ります。続きます。
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2018/10/03(水) 05:44:53 |
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2016.08.オーヴェルニュの旅 その41
前回の記事に書いたように、ポン・ドゥ・シャトーの教会が開くまで、半端な時間があったので、そこを利用して訪ねたのが、ビヨムBillomです。ポン・ドゥ・シャトーからは、約20分。
しかし、ここはちょっと苦労しました。町に着いたのはわかったのですが、教会の位置がよくわからず、どこに駐車したらよいのやら、さっぱりわからないのです。 小さな旧市街を取り巻くような道があるので、そのどこかに停めればよいのですが…。 おそらく旧市街を二周くらいしたのではないでしょうか、笑。
最後は、投げやりな気持ちで、目についた路肩にある駐車場に停めました。 そして、徒歩で旧市街に向かいながら、目が合ったおじいさんに、教会の場所を尋ねました。「教会?サント・ミゼリコルドな知ってるけれど…」というので、驚いて、「サン・マルタンは?」と聞くと、「あ、サン・マルタンなら、すぐそこだよ」。
おそらく、サン・マルタンの別名が、ミゼリコルドらしいんですけれど。前にも書きましたが、フランスでは、教会の名前がかなりいい加減。っていうか、「〇〇村の教会」っていうだけで、名称が不明というの、結構あります。 ここについても、今、ネットで確認したところ、サン・マルタンのはずなのに、Saint Cerneufという名前も出てきました。うーん。謎です。
それはともかく、路地の奥に見えるあれが、そうらしい。
サン・マルタン教会Eglise de Saint Martin。
全体がもう、ゴシック化していて、本当にこれかしら、というパターンです。 正面の古い扉は、しかしちょっと愛らしくて。 フランスらしい鋳鉄の装飾があるのですが、ディテールが、何とも。
端っこが、人の顔とか蛇の頭になってるの。めちゃくちゃかわいい。鋳鉄は好きな素材だけに、うっとりしちゃいました。 しかし、ここはしっかりクローズ。
北側に回ると、新しい扉があります。パンク・ファッションに身を固めた若者が三人おしゃべりをしていて、「ここは閉まっているよ。開くとすれば、他の扉が開くよ」と、教えてくれました。かっこはとんがっているけど、かなり親切な若者でしたね。しかしどの扉が開くのだろうか。まさかあの正面? 一応、後陣の方を、回ってみることにしました。
スタイルは、もうまったく面白くないのですが、ちょっとかわいい柱頭があったり。
ちょっとした端々に、ロマネスクを垣間見ることができるようです。 そして、後陣側から、いきなり古そうな木組みの街並みがあったので、ちょっとびっくりしました。ファサード側にアクセスするために歩いた部分は、至って普通の町だったので、こういう中世っぽい街並みが残っているような土地とは、想像もできなかったんです。
何か、他にも発見があるかも、と思いながら、ぐるぐると二周くらい回ったと思います。確かに、こんなモディリアニ風の柱頭があったりはするのですが、たいした発見でもなく。
南側にも扉があったけれど、そちらも開く気配なし。 それでもなおぐずぐずしていたのは、実は、結構観光客風がやってくるんです。私がうろうろしていた間でも、数人、数組がやって来ていたんです。ということは、やはり開く可能性が高いし、それに、中を見る意味があるのでは、とつい思ってしまったんです。
それでも、さすがにあきらめて、正面側に戻ったところ、なんと、予告もなく、鋳鉄装飾の扉が開いていたのでした。これにはびっくりです。
喜び勇んで入ったら、中はこんなでした!
でも、やっと入れたのだから、がっかりしている場合じゃありません。 まず、後陣に近づいたところ、なんと11世紀のクリプタが。
超ごつい円柱の林立という、かなり地味度が高いクリプタでしたが、光効果か、妙にかっこよくて。うっとりしました。
よくぞ、残ってくれました、という構造物です。 もしかしたら、閉ざされて、誰にも知られていない時代とかもあったかも、です。無装飾なだけに、よく残ったというのもあるかもしれません。 このクリプタも、私は全然チェックしていなかったんですが、観光的にはそれなりのプレゼンスかもしれません。なぜチェックできてなかったのか、我ながら、あきれます。
さて、上に戻り、内陣、周歩廊をチェックです。
フランスに特有の、教会建築は、もう私の興味を逸脱しているけれど、装飾ディテールに、見るべきものが残っているという王道パターンです。 この内陣部分には、ロマネスク時代の柱頭があります。
とっても独特なグリーンマン。明らかに起こっていますよね。そして、表情が隈取的で面白いです。植物モチーフも、真ん中でビスケット状の葉が突き出しているって、初めて見るパターンのような気がします。
これは、ちょっと新しいテイストが入っていて、あまり好みじゃないですが、なんかとっても謎めいていて、そこはよろしい。
なんか、時代が行ったり来たりの感じだし、いろんな手が入っているし。
結構楽しい柱頭の数々。 この教会、しかし、入れなかったら、ほとんど来る価値がないっていうか、そういうタイプの教会なので、くれぐれも開いている時間を事前に確認のうえで、訪問することを勧めます。
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2018/10/01(月) 02:33:02 |
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