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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

いやはやな豪邸見学(ボスキ・ディ・ステファノ邸宅博物館)

2021フオリサローネ その6

今回は、これまでも、フオリサローネで使われていたのかわかりませんが、私は今回初めて訪ねた会場です。

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ボスキ・ディ・ステファノ邸宅博物館Casa Museo Boschi Di Stefano

いわゆるお家博物館Casa Museoというカテゴリーにある博物館で、それは、かつて実際に誰かが暮らしていたお家が、博物館に転用されているもので、東京だと庭園美術館とかがそれにあたるのかな。

そういえば、庭園美術館って、素敵ですよねぇ。もう気が遠くなるくらい長らく訪ねていませんが、まだ東京暮らしだったころ、イベントなどで何回かお邪魔して、うっとりしたこと、今懐かしく思い出しました。

ミラノでは、今回のフオリサローネでも、この後回るBagatti Valsecchi邸宅博物館や、Poldi Pezzoli邸宅博物館がありますが、それらは、建物がもっと古い時代のもので、お住まいだった方々も、貴族とかそういう特殊な身分の方で、歴史的な豪邸って様子で、調度なども、前近代的なものが置かれています。でも、このボスキさんちは、上の写真でみるとおり、結構普通の集合住宅で、豪邸というイメージではないんですね。

それもそのはずで、この建物は、それなりに由緒があるようではありますが、1929年から1931年にかけて建てられた、結構新しいものなんです。我が家が1937年築ですから、さほど変わらないわけですね、笑。

このお家の住人が、どういう人たちだったのか、興味がありましたので、さらりと調べてみました。こういう時のインターネットは、本当にありがたいですね。

博物館の名称にもなっているBoschi Di Stefanoは、十人だったご夫妻の名字を並べたもので、夫がAntonio Boschi、妻がMarieda di Stefanoという名前でした。
ちなみにイタリアは夫婦別姓です。欧州の中でも、昔から完全に夫婦別姓というのは意外と少ないと感じますが、イタリアは実質的に、今も昔も別姓で、それが当たり前なので、夫婦同姓の国の外国人夫婦が同姓なのを、たまたま同姓の人が結婚したのか、と思ったりということが昔はありました。今は、もっと外国人が増えていますから、夫婦同姓の国が沢山あることを、多くの人は認識していると思いますけれど。

Antonioは学校を出た後、ブダペストで鉄道関係の仕事に従事して、その後ミラノに戻ってタイヤで有名なピレリ社に採用されます。そこで年金生活まで過ごしたようです。
え?普通の会社員で、アートのコレクションする金がなんで?と思いますよね。この方、すごい技術者だったようで、生涯で100くらい特許を取っているそうなんです。その一つ、車の部品であるジョイントが、Giunto Boschiという商標登録で、フランクフルトの自動車の見本市で発表されて、どうやらそれが多くの収入を生んだようです。

一方、Mariedaは金持ちのお嬢さんだったようで、その父親がこの建物のスポンサーだったようです。美術品の収集もすごかったですが、御自分でも、陶器にはまって、建物の一階部分をアトリエとして使っていました。そのアーティストとしての評価は高かったようで、活躍中は定期的に展示会を開催していたり、また、今でも作品の一つが、陶器で有名なファエンツァという町の陶器博物館に展示されているんだそうです。
この建物でも、焼き物教室を開催していたということで、今でも継続しています。

で、今回のフオリサローネの協賛は、その焼き物教室での焼き物展示でした。

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Sono tazza di te!100 Smashing women designers - Dcome Design

様々な分野でクリエーティブな仕事をされている女性による、様々なカップが、100近く展示されていました。
ありがちな陳腐なものもありましたが、ちょっとほしくなるような作品もあって、こういう身近なアートは、身近であることの楽しさもありますね。

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しかし、訪ねた眼目は、この博物館を見たい!という方だったです。でも、見学可能がどうかは分からずに行ったわけなんですが、同じ建物の三階部分の博物館、無事、無料でアクセスできました。

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まずね、建物が素敵なんです。これはアールデコですかね?モボモガのいたおしゃれな大正センスみたいな、レトロ感満載で、個人的にかなり好きなテイストです。

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我が家が1937年築だと書きましたが、ほんのわずかですけどね、こういう雰囲気があるのが、一目ぼれの要因だったんです。こちらの足元にも及びませんが、私レベルでは、うっとりする階段の手すりだったんですよね。こちらには、レトロなエレベーターまで完備です。さすが。

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さて、お宅に入って、まず感動したのが、この扉にはめられているガラスのおしゃれさ。

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韓国の布をつなげていくパッチワーク、ポジャギでしたか?あれを彷彿させる繊細なアイテムです。
我が家のことばかり恐縮ですが、うちも古いので、扉はガラスが入っているタイプなんですよ。もちろんただのすりガラス。そのレトロ感がとても好きで、どの扉も全然ちゃんと閉まらなかったりするし、バスルームは閉まるけれど鍵がかからなかったりするんですが、結局変えませんでした。今では、そんな扉、ないんですよね。わたしは、この辺りの時代が好きなんだなぁ、テイスト的に。

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順路の最初がバスルームで、絵が展示されていたので、びっくりしちゃいました。お住まい当時もそうだったのかと勝手に勘違いして。
お住まい当時も、おそらく家中に、美術品を飾っていたことと思いますが、もちろんバスルームに油絵は無理ですよねぇ、笑。

お部屋に入ったら、壁にびっしりコレクションが飾られています。

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シャンデリアは、ほとんど、もしかすると全部がベネチアのベニーニのものだったと思います。クラシックなベネチアングラスから、モダンデザインのものまであって、インテリアも楽しめますから、まさにサローネの協賛としてうってつけな邸宅博物館です。

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こちらの部屋の照明は、かなりモダン系です。
家具は、今が今の見本市に出されていても、全然納得しちゃうようなレトロモダン系で、すっごく素敵。もうね、私みたいな素人から見ても、どんだけ良い木を使っているんだってわかるような代物です。いいなぁ、こんな大きなテーブルだけがある部屋があるなんて。書斎も作業部屋もいくつも使える感じの広いお家。素敵な家具。うっとり。

あ、うっかりしていました。
コレクションですけれど、ご夫妻が、1920年代から50年代にかけて、主にイタリアの同時代のアートをコレクションしたのが始まり。古くはフトゥリズモから始まり50年代終わりのInformaleまで、フォンターナ、シローに、モランディ、デ・ピシスなどの作品。またパリを起点に活躍したデ・キリコ、カンピリ、サヴィニオなども網羅(Arte Informaleというのは、日本語だとどういうのでしょうか。不勉強で、これまで知らなかった概念というか時代というかカテゴリーです)。

この、モダン照明の部屋には、シローニのコレクションがどっさりでした。

あ、窓もおそろいのポジャギ…。

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小品が多いとはいえ、すごい数の絵画。近代イタリアは、あまりよく知らないんですけれど、それでも長年いると、知り合う画家もいるからねぇ。あ、しりあうって、絵画でね。

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この人など、その典型。特に求めてなくても、イタリアで美術館行くと、かなりの確率で会っちゃって、かなりの確率で好きなんで、覚えちゃったカンピリCampigliさん。美術史上どの程度の知名度があるのか、日本では知られているのか知りませんが、日本人好みの絵だと思います。パステル調で、なんかかわいい。

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絵を見ながらも、お部屋の素敵さにも都度感動してしまいます。こんな角部屋の応接セット、夢だなあ。普通のお家だったら、膨れまくりのソファ、このお家なら、いくらでももってこい!ですよ。いいなぁ。

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で、壁を見ると、おお、これはデキリコですなぁ。

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なんか、よく知った人にあった安心感があったりしてね、笑。
次は、そういう意味でもっと安心した。

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フォンタナがあっちにもこっちにも。この、石がはまっているタイプは、見た記憶がないけど、それでもフォンタナさんだなぁってわかるのはすごいなぁ。
あ、でもやっぱり、シンプルな切り裂き系がしっくりくるかなぁ。

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ということで、贅沢なお家でした。本当に堪能して、朝から頑張って出掛けた甲斐が大いにありました。やはりフオリサローネはいいなぁ。

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  1. 2021/09/16(木) 22:00:54|
  2. ミラノ・フオリサローネ
  3. | コメント:0

隈さんは、毎回好きです(ミラノ大学)

2021フオリサローネ その5

フオリサローネを主宰するInterniの本拠地となる大学です。

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普段、中世関係で見ていただいたいる人には、ちょっと混乱するかも、というような、中世的なファサードになるわけなんで、ちょっと注意しとくと、これ、間違いなく、ミラノ大学の入り口となります。欧州では大学の歴史も妙に長かったりして、多くのケースで、古い建物をそのまま使いまわしていたりもするんで、こんな建物だったりして、現役の大学生だと、いい加減にしてよ~というところもあるかとは思うんですけどね、ま、せっかくあるんだし、使おうよ、というエコな考え方でもあったりしてね。ま、本来なら、外側はともかくとして、中はバリバリ現代にするとか、そういうことになるんでしょうが、えーっと、そのあたりは、あまり触れん様にしとこうかな。と言って、別にトイレがないとか、そういうことはないですけどね、笑。

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Mad Architects - Freedom with Eurostands, Ledvance (夜間は、鳥の形を作っている部分が証明になっているーみたいで、線が暗闇に浮かび上がる感じになっているようです)

普段なら、情報欲しさに、まず最初、多くの場合、フオリサローネの公式開催日の前日4に立ちよるのがこの大学となりますが、今年は、日程も普段とまったく異なるので、開催後の訪問となりまして、当然、人出が多いのは想定内のことでしたが、それにしても、かなりの混雑です。

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High Intensity Design Training - Naba, Cladio Larcher, Sara Ricciardi (いわゆる、あれです。立つんだジョー!ボクシング・ジムとかにある、なんていうんですかね、サンドバッグ。きらきらしているからそうは見えませんが、サンドバッグです。ちょっと押してみましたが、かなり軽い柔いもんなんで、本物のジョーが右ストレートとか言ったら、簡単に崩壊しそうなやつです、笑)

やっぱり、自分、マスク信じているくらいで、あまり周囲に人がいない時だけ、つけないまたは自作布マスク、という自分ルールで生きている以上、ちょっとね、不織布マスクに変えたとはいえ、いやだな、と思うくらいの人込みなんですよねぇ。
というわけで、普段だと、中庭その1二ある、こういう展示。

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Falso Autentico - Marco Nereo Rotelli with GLO

素直に行列並んで、中に入るんですが、一人で見に行っている以上、なんか他の人と同時に狭い場所に入るのは嫌だし、と言って、一人で時間使うのも嫌だし、ということで、入場は基本諦めました。
といっても、別に、大きな驚きがあるとは思えなかった、という印象もあり、あきらめやすかったです、正直言って。

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なんかさ、こういうのって、まず陳腐なチープな印象なんですが、結構映えスポットになっている様子が激しかったです。
なんだろう。映えって、とっくの昔に世界征服したトレンドだと思うんですけど、フオリサローネで、積極的に感じたのは、今回は初めてかもしれませんね。
こういう、ポーズを取って撮影に向きそうな場所で、多くの人が自分フューチャーで撮影していて、あ、映え写真ね、とあきれながら、脇を通過、っていうのが大変多かったです。
イタリアでは、また、この程度。
つまり、インスタ静止画自分フューチャーどまり、みたいな。動画自分フューチャーおしゃれ動画、までは行ってないっていうか。いや、どうなんだろうね?やってみようかな、オレ?

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Condivisione-Connesione-Convivialita: with Whirpool by AMDL Circle and Michele De Lucchi

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Pura - with Gig;oe;,o bu Aessandro Zambelli

これなんかも、夜間日が暮れると、内部に明りがついて、印象的なたたずまいになるみたいですが、日中は、別に箱に穴が開いていて、内部にいる人とコミュニケーションできるっていうのが売りみたいな、もうね、なんだかわけが分からない世界です。デザインなんだか、どこがインダストリアルなんだか、どっからアートなんだか、笑。

中庭その2も、まったく面白くなくて、びっくり。

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Il Mondo di Ernesto with Artemite by MX A Mario Cucinella Architects

アルテミデって嫌いなメーカーじゃないけど、いくら、時間がなかったとか理由があっても、これはどうよ?メーカーとしての思い入れはあって、それはうまく表してもらえたのかどうか知らないけど、第三者への訴求力は限りなくゼロに近いね。一刀両断。
ライトアップの写真も見たけど、さらにひどし。情けないわ~。

すごい急ぎ足で見てますが、こうなると、最後の中庭、絶対行きたいし、期待したい、ということで、その中庭へのプレリュードで、これも、最近ほとんどブラジル系の展示になっていると思われるゾーンに。

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いっそ、すごく正統派の展示に、胸がすっと安心する感じ。
その上、最近ではモノをもらえるチャンスもほとんどなくなっているのになぜか、布の最も使いやすいタイプのエコバッグを唐突にもらえて、嬉しかったというか、そういういろんな意味を込めて、とても評価高、のブラジル家具展示。
で、そっから、最後の中庭にアクセス。

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Bamboo ring;Weaving a Symphony of いghtねss案dForm with Oppo by Kengo Kuma

安定の隈さんです!
これまで、彼の作品は、こおフオリサローネでいくつか見てきましたけれど、私はいずれも好きで、今回も、他が納得感薄い中で、安定鉄壁でした。
竹の作品というと、中国っぽくもあるんですが、これは、音が一緒になっているんですね。

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バイオリンだったかの楽曲が、流されているんですが、それが竹のヴィヴラートと合わさって、不思議な音色になっていたりして、かなり繊細な作品なんです。実は、この中庭3までは、誰もが来る場所じゃないと思うんですよね。だから、他のスペースに比べると、訪問者の数は少ないし、会場全体からすると、静けさが勝つスペースでもあると思うんですけど、だからこその良さがあります。隈さんの作品は、以前もここで、ここならではの良さが勝ってましたねぇ。
今回、大学の展示で、最も気に入りました。

見学にも締約が多くて、最大中庭を取り囲む二階部分に上がるのも、順番待ちで、かなり面倒でした。

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わざわざ順番待ちしても、別に大したものがあるわけではなし。

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なんか、この黄金のモザイクでおおわれている感じのお洋風アイテムみたいのも、他の人のインスタ写真を見て、結構映えなんだ?と気付いたくらいで、実際は、全然大したことありません。映えマジック的なやつですね。

二階から見たかったのは、大好きなマスコット大集合でした。

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メインの中庭の中央に、ウサギちゃんとかゴリラとか、キリンとか、夜になると発光するタイプのおなじみの動物が大集合していて、これは上から見たらかわいいだろうなと思ったんですが、上から、というよりは、発光している夜間を見に行った方がよかったかもね。

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というわけで、家を出てから10キロ超歩いて、健康には良い週末の一日となりました。

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  1. 2021/09/13(月) 21:37:47|
  2. ミラノ・フオリサローネ
  3. | コメント:2

ナポレオンがかくれんぼしてた(サンタ・サビーナその1)

2017年12月の週末旅行、ローマの古代から現代まで、その21

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ちょっと道を戻り、こんな眺めを右手に、比較的おなじみの場所へ向かいます。ビットリオ・エマヌエーレ、の記念堂、真っ白なので、デコレーションケーキともいわれているローマのランドマークの一つですね。裏側がフォロロマーノになります。

たどり着いてびっくりでした。

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車もすごく多くて、ちょっと嫌な予感がしたんですが、やっぱりでした。結婚式です。
前日が祝日の金曜日の土曜日だからか、冬だというのに結婚式ラッシュみたいで、最初にあきらめて、そのあたりうろうろしたんですが、戻ってきたら、また次の結婚式が始まる様子だったので、もう人の目を気にせず、人をかき分けて、見学に突進しましたよ。すでに来たことのある教会ではありますが、めったに来られるわけでもないので、好きなアイテムには、再会したいですからね。

まずは、人込みをかき分けて、本来の正面入り口になる方に回り込みました。上の写真でいうと、左側の方になります。

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サンタ・サビーナ教会Basilica di Santa Sabina

びっくり、目を疑いました。
ここ、前回訪ねたときは、もうごみごみしていて、薄暗くて、なんでこんなに貴重なものがあるのにこんな扱いなの?と情けなくなった場所なんですよね。
この場所に、教会創建と同時代、つまり5世紀に作られたとされる木製の扉があるのですよ。

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糸杉を材質とする木の彫り物。それ自体が、非常に珍しいものです。それが、かなり良い状態で残されています。もともとは、28枚のパネルがあったそうですが、今残されているのはうち18枚。内容は、旧約新約聖書のエピソードとなります。

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四コマ漫画のように、一枚の中にストーリーが彫りこまれているタイプと、一つの場面からなる小さいパネルが組み合わされてます。

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これはマギですね。聖書に疎い私でも、一瞬にしてわかる図像はありがたいです。
でも、ん?ちょっと待てよ、と思いませんか。5世紀の図像に見えますか?

以前見たときも、後付で知ったかも知りませんが、見たときは、まさかそんな古いものだとは思わなかったはず。前回は、特に放置されてる状態が明らかでしたから、ますますそんな貴重なものだとは思えなかったし。

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古いのは古いはずなんですけどね、19世紀早々、1836年に、結構大規模に修復されているようなんです。で、その際、かなり職人さんが手を入れたりしてるみたいなんですよね。木彫りだから、石よりおもっとずっと簡単に変更できちゃうですよね、おそらく。
その際ね、分かっている余計な変更は、罪人でおぼれているフィギュアのひとりの顔を、かのナポレオン・ボナパルトに変えちゃったというのが分かってるらしいんです。その修復の10数年前に当人はなくなっているのだけど、イタリアでは憎まれていたので、恨みつらみ的なものがあったのだろうということですが…。

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そんなことしてたんなら、当時の保存状態がどうだったのかわかりませんが、顔がはっきりしないフィギュアとか、どんどん手を入れちゃっていた可能性も大ですよねぇ。

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そうはいっても、残されているものは、そったり割れたりしていないし、相当良い状態の木を使っているということですよね。木彫りの文化が、ローマにあったとは考えにくいので、北方の職人さんとかがいたということになるのか、そのあたりのことはちょっと分からないんですけれど、とにかく貴重な扉です。

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  1. 2021/09/12(日) 21:46:35|
  2. ローマの中世
  3. | コメント:0

金のコンパス(Monumentale地区)

2021フオリサローネ その4

今回は、いつもと違って時間の余裕もないし、事前調査もできず、だったので、基本的に、こういう時じゃないといけない場所、行きにくい場所をピックアップしつつ、自宅から徒歩でアクセスする利便性も考慮して、トルトーナ地区などは、早々に切り捨てました。
実際は切り捨てるも何も、案内を見ても、そそられるような展示が目につかなかったというのもあります。サローネ本体の見本市は、当の昔に決定していたと思うのですが、町で開催されるフオリサローネについては、メーカーさんたちも、若干用心して、いつに増してぎりぎりまで決定できなかったとか、そういう事情も多少はあるように感じました。普段なら、展示担当のデザイナーさんの名前が必ずキャプションされるので、それも見学先決定の大きな要因になるのですが、今回は案内の内容がすごく希薄で、ピックアップしようもなかった感が強いのです。

そんなわけで、この日は、地味な内容になってしまいました。
まずは、前日、街角で目にした巨大看板に触発された場所。

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この、ポスター的な看板、すごくかわいくないですか。
これを見て、このMuseum、少し前にニュースで取り上げられていたんですが、そういえば、このサローネに合わせてオープンしたばかりではないか、と思い出したんです。
というわけで、歩いていきやすい場所でもあるし、オープン時間に合わせて、行ってみました。

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ADIデザイン博物館-コンパッソ・ドーロ(金のコンパス)ADI Design Museum - Compasso D’Oro

行ってみて、なるほど、でした。この博物館の周辺は、よく会社帰りとかに歩いていた道で、ずいぶん大掛かりな工事を、結構長い間やっていたんです。それが、コロナの中でも継続して、やっと完成したということだったんですね。

すごく広いスペースを使っています。入り口は、このように、普通の幅の車道に面しているので、それほどの規模のものとも見えないんですが、この建物をくぐると、大きなオープンスペースに出ます。

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こういう場所も含めて、すべて再開発工事がされていたんですよ。
ここは、もともとは、トラムの車庫及びその運行用の電気供給施設があったみたいです。そこが、博物館及びそこに付随する飲食店などの商業施設やブックショップ、その他会社向けのビルに生まれ変わったということです。

本来の入り口は、この新設の広場、その名もコンパッソ・ドーロという広場からとなるようですが、私が訪問した時は、まだこちらは開けていない様子でした。一応この広場は、誰でも入れる場所みたいです。

ちなみに、繰り返し出てくるコンパッソ・ドーロですが、御存じでしょうか。これは、ミラノで生まれた、世界で最も古い(らしいです)インダストリアル・デザインの賞の名称なんです。日本には、グッド・デザイン賞というのがありますが、あれと同じようなものです。
ミラノに住んで、しばらくしてから知りましたが、自分でも知っている有名な商品が、この賞を受けていることも多くて、すごいことなんだな、と思いましたし、何よりコンパッソ・ドーロという名称が、かっこいいな、と思ったものです。

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そういえば、インダストリアル・デザインに特化した博物館って、もしかしてないのかも、と今更気付いた感じですが、ここには、コンパッソ・ドーロ受賞した歴代の商品が展示され、また多くの関連書籍が並ぶブックショックもあり、そういう分野を勉強する人には、大変良い環境になっているようです。
今回、フオリサローネ協賛はしていましたが、正規の入場券を買わない人は、真ん中の通路だけしか歩けません、みたいな非常にわかりにくい案内で、そこはいやらしかったです。入場料を払うなら、何もこの、サローネ目当ての人が多い時期じゃない時に、ゆっくり来た方がよいですから、私は素直に、許された通路だけを歩いて、なんだか馬鹿にされたような気持ちになって、さっさと見学を終えました。

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唯一歩ける通路に、形ばかり的に、過去の有名な椅子の逸品が展示されているのが、なんか、さらにいやらしいっていうか。それなら協賛とかしなければ、いっそ潔いのにさ。

そのあと、すぐご近所のファッブリカ・デル・ヴァポーレFabbrica del Vaporeへ移動しました。

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ここは、現在もワクチン接種会場となっているので、今回使用されたのは、最も小さいスペースだけで、若手アーティストの作品展示でした。イベントとして、フオリサローネ協賛みたいになっていたけど、はっきり言って、無関係でしたね、笑。
でも、協賛みたいにすることで、このイベントだけやるよりは人が集まるし、作品は販売していたので、若手アーティストには、有難い企画だったと思います。

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しかし、考えちゃいましたね。
どの作品も、かなり陳腐で、値付けは一様に1000ユーロ程度をつけていて、これは「売れない」に決まってる前提なのか、主催者が最低金額を決めたのか知りませんが、それじゃ売れんだろう、とあきれました。

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でも、こういうの見てると、現代のアーチストって、何を作ったらいいのか、って考えちゃいますね。どの方向性も、すでに誰かやってるよね、と思わされてしまうようなことが多いし、それでも、見て好きだな、と思えればいいんですけれど、あまりに陳腐で、ほとんどそういうのもなくて。
これなら、インダストリアルデザインとかで、商業ベースの制約を受けながら作品を作り、それでのし上がっている、みたいな形をとる方が、確実にアーティストになりやすそうな気がします。そうやって、もはやアーティストだよね、となったデザイナーさんもたくさんいますよね。

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粘土アニメがあって、ちょっと見ちゃったんですけれど、椅子同士が恋愛して、関係を持つというストーリーで、あんまり直接的な感じだったので、この小学生高学年女子と並んでみているのが辛くなってきて、離れました、笑。

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絵画作品一点だけ、売約済みの印がついていたと思います。他にも売れたらよかったですけどね、どうでしょうか。

ちなみに、先述したように、ここはワクチンの大規模接種会場の一つ。ミラノでは、最も大きい会場の一つだと思います。

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わたしも、二回ともここで接種しました。
このテントが、受付及び指定時間まで待機する最初の待合室。自分の指定時間になると、先に進み、予約の確認及び受付をして、次の待合室で、自分の受付番号が表示されるのを待ちます。問診のブースが表示されたら、そこで医師と話して、そのまますぐ接種という流れ。
これが、書いたかどうか忘れましたが、驚くほどスムーズなシステムで、イタリア中がたまげたんですよ。どの会場でも、びっくりするくらいスムーズなうえ、関係者が皆笑顔。
コロナに関しては、イタリアも結構やるね、と思ったことが多々ありましたが、このワクチン接種に関しては、その多々の中でも最高峰の「イタリアやるじゃん」でした。町も会場も違う場所で接種している誰と話しても、同意見だったのがすごいです。
多分、日本の多くの人は知らないと思いますが、デジタル化進んでいますからね~。

というわけで、話がそれましたが、この後は恒例の大学に移動します。

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  1. 2021/09/12(日) 17:52:34|
  2. ミラノ・フオリサローネ
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色々あり過ぎて、焦点ボケボケ(サン・サバ)

2017年12月の週末旅行、ローマの古代から現代まで、その20

ミトラの後は、これまで訪ねる機会のなかった教会を目指します。アップダウンの激しいローマの中でも、この辺りはさらに、という土地で、体力勝負になりますね。

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サン・サバ教会Chiesa di San Sabaです。
坂道を登った先、最後もまた階段です。
扉をくぐると、いきなりこんな。

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なんだか時代も何もわからん、みたいな状態で、こんなにゼエゼエしながら来る価値あったんだっけ?と思わず自問自答するような…。

実はこの教会、起原はかなり古いみたいです。文書に残されている最も古い言及は7世紀半ばに遡るようです。もともとオリエントからやってきた修道士が、修道院を立てたということになっているようで、その修道院の礼拝堂が、ロマネスク期までは、そのまま残っていたそうなんです。
あまり詳しいことは分からないまでも、パレスチナでよくみられるタイプの墳墓なのかな、埋葬状態なのかな、なんかそんなのが出てきたりしたことから、オリエント起源とされているみたいですね。
それが、12世紀に、クリュニー傘下になって、それで、それまでの一身廊のこじんまりとした礼拝堂が、初期キリスト教様式の、三身廊バジリカ様式に変えられたんだそうです。
創建後から、その変容に至るまでの間に、フレスコ画が施された、ということで、私が長年訪ねたいと思っていたのは、それらフレスコ画が残っているらしい、と思っていたからなんです。

上の写真のポルティコは、おそらく結構新しいものなんでしょうけれど、そこには、こういう長い歴史を物語るような、色々な発掘品が並べられています。

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正面扉上には、かなりダメになっちゃっている絵画装飾なんかもあって、ぱっと見とはかなり様子の違う、古色蒼然感を醸し出しています。

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あ、コスマーティは、おそらく13世紀以降で、あちこちに見られます。

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内部はこういう感じで、実際の初期キリスト教の巨大な教会に比べれば、かなりこじんまりとはしていますけれど、でも場所的には、ちょっとでかすぎ過ぎる感じもあります。特に、壁が真っ白になっちゃってると、その壁、必要?って聞きたくなってしまいますね。

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後陣のフレスコ画は、さほど古いものではないでした、あれ?でした。チボリオももともと興味のないアイテムだし、さらにあれ?なんのために来たんだっけか?
ん?

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後陣向かって左側、後陣が素直に東向きなら北側となりますが、ローマは方向がめちゃくちゃだったりすること多いので、どちらかは分かりませんが、そちらの奥に、さらに身廊が見えますね?

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これが、古い礼拝堂の一部だったりするんかな?確かに古そうなたたずまいだけど。

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フレスコ画は、どうだろう?7/8世紀のものには見えません。後陣のよりは、ちょっと古い?いやいや、どうだろうか。場の雰囲気は本体よりはあるけれど、でも、絵は、やはりそんなに古くなさそうでした。

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なんか、あっちこっちにいろんな時代のものが置いてあって、何をちゃんと見ていけばいいのかわからなかった、というのが正直なところ。

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下の碑文などは、かなり古いものだと思うんだけど、その右側に移っている石版みたいなやつ、今解説を読むと、どうやら10世紀のものなのかな。現場では、ほとんど注目してなくて、フューチャーした写真も一枚もなしで、詳細不明。

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訪問前に、あまり調べすぎたくはないけれど、せめて見所、自分が好きだろう時代の遺物だけでも調べておこうよ、自分、と今、見学から四年たって公開するオレ…。
というか、四年前は、多分、調べても、あまり詳細が出てこなかったんだよ、間違いなく。ミトラ教もそうだけど、インターネット情報の進歩って、近年すごいものがあるってこと。

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これは、コズマのモザイクのために撮影したものですが、石版みたいなやつは、やはり鮮明に取れてなくて、よくわからない。残念ですが、再訪すればよいことですよね。
コズマモザイクでも、このネジリン棒モザイクは、大好きなアイテムなんで、クローズアップでばっちり。

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金色も入っているけど、全体に抑えた色で、渋みっていうか、ちょっと和のテイストも感じるような落ち着きじゃなくないですか?

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モザイクがなかったら、すごく地味な司教座。
最近、このモザイクをモチーフにミニハンコを作っているんですが、全体の模様を分割して、最小単位の一つのパターンをハンコにして、それを連続押しすると、分割した模様が復活して、おおお!となります。
数学の頭がないもんだから、自分で分割して作っているのに、感動してしまうのが、あきれますが、面白いもんですよ。

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最後に、裏に回りたかったのですが、残念ながら、高い塀に邪魔されて、全体を見渡せるようにはなっておらず。

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いずれにしても、修復も激しいし、構造以外はかなり新しくなってしまっているので、外見にはロマネスク的な魅力は薄いですね。
なんか、宝探し的な教会で、最終的にどう評価したものか。いや、別に評価する必要ないんですが、なんというんですか、なんで行ったんだっけ、というその目的がよく分からないまま終わった感が強くて、写真を見ていても、改めてそういう感じで、その半端さにびっくりしています、変ですが。

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  1. 2021/09/11(土) 15:45:54|
  2. ローマの中世
  3. | コメント:0

地球温暖化とかサステナビリティとか…(ブレラ地区)

2021フオリサローネ その3

さて、今年のフオリサローネは、昨日閉幕しました。最後の夕方に、一つ予約もできたことだし、と駆け足で見に行きましたが、こんなにちょっとしか見なかったのは、この数年なかったことです。また、直前まで開催の事実にすら気付かなかったので、情報収集できておらず、興味のあるはずのイベントや展示なども、スルーしてしまっていた可能性も高く、それはちょっと残念。

それでも、よくぞ開催できたよね、と色々な意味で感慨深く思いました。ということは、最後にまとめることにしますか、笑。

さて、見学を続けます。毎回、ほぼ必ず立ち寄る植物園にも行きました。

2021salone 023

一見閑散としていますが、ここはミラノの中心地にも至近で、デザインウィークに注力しているブレラ地区にありますから、集客力はかなりのものがあり、植物園といっても、猫額規模のスペースですから、人があふれていました。

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Natural Capital-ENI

ENIというエネルギー会社主催みたいで、一見矛盾しているような気がしました。というのは、自分の中では、ENIのロゴを見ると、ガソリンスタンドのイメージしかないもんで…、笑。でも、今はガスや電気販売が主体の会社になっているらしいですな。
で、展示は、植物園のあちこちに、透明バルーンが置かれていて、それぞれ数字が入っています。それは、そこにある植物がクリーンにできるCO2の量だということでした。
最近トレンドな、地球温暖化やばいから、飛行機使うな的な流れのやつですね、コンセプト的には。クリーンエネルギー、オール電化みたいな。

どうなんですかね。2030年には、ガソリン車なくすとか言ってるみたいですが、電気でガソリン並みに走れるとか、スピード充電とかが充実しなかったら、車の楽しさはなくなるんでしょうな。格安飛行機とかなくなって、時間に余裕のない貧乏人は、遠距離旅行ができなくなったりするのかもな。
でも、電気を作るのはどうするんかな。原発はOKなんかな。

個人的には、今更温暖化止めようったって無理でしょ、と思っているので、こういうコンセプトの展示って、あまり興味なしなんです。なにより、アート的な面白さも薄い。おそらく日が暮れると、このバルーンに明りが入って、ぼんぼり効果で幻想的な雰囲気が醸し出されるとは思うのですが、いずれにしても、斬新さとか面白さは薄いですよね。

「現代アートに、必ずしもメッセージ性はなくともよかろう」派です。あってもいいけど。

というわけで、あっという間に見学を終えて、次に移動する途中、立ち寄ったのがこちら。

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Missoni Home - Vital energy and lightness/Energia ¥vitale e Lggerezza

フオリサローネは、インテリア関連企業の多くは、その展示を自社ショールームや店舗で行うんですけど、規模が小さかったり、展示としながらも、通常の販売体制とあまり変わらない感じで面白みは薄いので、基本的に行かないんですが、このミッソーニのショールームは、ロケーションが好きなんで、つい入ってみたくなります。

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別に奇をてらった展示ではなく、普段よりはちょっとコンセプト強めな感じで置かれている普通の家具たちでしたが、ミッソーニのファブリックがいいんですよね。
この、二人掛け用のこじんまりしたソファは、すごく好きでした。

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めちゃくちゃかわいいです。このくらいこじんまりしたソファって、あまりないサイズです。ソファって、自宅に来ると巨大化するのって、ソファを買ったことがある人にはあるあるだと思いますが(店で感じるよりも大きく感じてしまう)、これは、そういうことがなさそうなタイプのやつだと思いました。

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同じシリーズの一人掛けようと合わせて、我が家の居間に、ちょうどよさそうな感じ。ほすぃ~。でも、絶対買えないから、お値段はきかず、試し座りだけしてきました、笑。

ミッソーニはたまたま立ち寄ったのですが、本来の移動の目的は、その先にある小さなショールームでした。

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Green Wise - Hakoniwa

なんか箱庭っていう言葉にすごい郷愁というか魅力を感じて、行ってみたんですが、ショールームは小さいし、普通の店みたいなスペースに直に土がまかれていて無理やり緑が植えられていて、みたいな感じで、もう全く意図も何も不明で、何より、この状態に植物置くのって、ひどくない?みたいな状態なのが、いやでした。

スロー・グリーン・デザイン・スタジオという主催者で、1905年から活動している、とあるので、植木屋さん起源の会社なんですかねぇ。今こそ世界に打って出る、という方向性は分からなくもないですが、なんかなぁ。

ということでした。
続きます。

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  1. 2021/09/11(土) 11:42:30|
  2. ミラノ・フオリサローネ
  3. | コメント:0

草月の系譜っていうのがあるのかなぁ(ブルガリ-GAM その2)

2021フオリサローネ その2

ブルガリの展示、続きとなります。
今回会場となっているGAM(市立近代美術館)へと、展示スペースが写りまして、その移動の、ちょっとした時間、ガイドなしで見学者三人だけだったんですが、たまたまご一緒となったお一方のおばさんが、「私はね、実はつい先日、この美術館に来たのよ、そしたら、準備していて、それで興味がわいたから、今日、わざわざ来たんだわ」という方でした。正直、黙っていた欲しかった~。

前回の記事の最後に、アンティークの蛇系腕時計を紹介しましたけれど、個人的にはイベント系の展示を待ちに待っていたわけで、でもおばさんのインプットがあったもんだから、若干の予想があったわけで…。

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来た~!
この時のインパクトが、おばさんの前知識によって、若干そがれたわけですわ。花、待ってたからね…。

それでもね、これはすごかった!
古い建物ですから、そもそも天井高いから、この、なんというの?花束?このでかさ、分かりにくいけど、どうですか、おっきさ、分かるかなぁ。人を入れると、こういう縮尺です。

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見た目のインパクトもすごかったんだけど、におい、というか香り?それが強烈に来た!
見た目では分からないんだけど、香りから、これが生花だって直観でわかるような、そういう強烈な生きてる花の香りが、来るんです!
だってさぁ、生花だけでもすごいのに、果物まで入ってるんです。

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レモンとか、ブドウ。そいから、リンゴとかパイナップルとか。

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花だって、ラン系だけでもすごい数。わたしには、水色がみずみずしいアジサイが、一番印象的でしたけれど、およそ自然とは思えないくらいの鮮やかに色彩の集合体で、おろおろしちゃう感じです。
足元は、乾燥した観葉植物の地面になっていて、これはこれで、抑制された緑が印象的っていうか。

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これ、東信(あずままこと)さんという日本のフラワーアーティストの作品でした。検索したら、金髪のチャラ男みたいなのが出てきたんだけど、いや、すごいな、と。やはり生け花の系譜?草月の系譜?とか思っちゃいました。
日本の伝統芸術的な、お茶とかお花って、まったくかかわりもなく、大きな興味を持ったこともないんですが、でもそれぞれがそれぞれで、日本の文化史というか芸術史の中で、かなりアバンギャルドな時代を経てきた芸術だという認識はあって。

お花の方でいえば、友人の母親がやっていた関係で、草月の展覧会を見たことがあって、それはね、正直びっくりしたことがあったわけです。あまりに現代アート的なぶっ飛び感があったもんだからね。
生け花とは違うとはいえ、ブーケとかそういうくくりでのフラワーアートって、西洋の世界にもあるけど、おそらく草月的なぶっ飛び現代芸術みたいな方向に行くことはなかったと思うんですよね。だから、生花でこういうことをするっていう発想が、おそらくこっちにはないっていうか。

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ちなみに、この展示のテーマがMetamorphosis、メタモルフォーゼなんですよ。
この東さんの展示は、会期直線にインスタレーションして、会期中に、花や果実がしおれたり、かびたり、においが変わって行ったりすることも含めた展示で、まさにテーマにぴったり。たった1週間の展示だし、花の方には水も補給されているということで、大きくダメになることはないとは思いますが、例えば、果実などは、さらに爛熟の香りを醸し出すことでしょう。

でね、次の部屋でも、またびっくり。これは面白くてね。

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こちらは、Lotus Oculusという作品で、Daan Roosegaardeという方の作品。名前から、オランダ人かな?
太陽の光に敏感で、花を開くハスをイメージしたうえに、ローマのパンテオンの自然を受け入れる天井の穴かな?多分そんなところにインスパイアされたものらしいです。
作品そのものは、非常にテクノロジーに根差しつつ、そういうインスパイアの源を尊重しているっていうか。

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薄い銅板みたいな素材が張られた衝立なんですが、裏側から強い光を当てられると、その熱量で、まるでお花が開くように、ふーっと開くんです。お花っぽくもあり、折り紙っぽくもあり。
そして、光を、衝立のこっち側に通過させますが、この衝立の真ん中の円だけ、そういう仕組みになっているのが、パンテオンのてっぺんに開いている丸い穴を想起させます。

考えたら、私は雨の日のパンテオンを見たことがないんですが、パンテオンの丸穴はオープンなので、お日様が照っていれば、お日様の丸い光がさすように、雨ならば、あの穴から雨が降ってくるのですよね。それは、一度見たい光景なんですけれども…。

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これもまた、面白い作品でしたし、印象的でした。室内なのに、そして暑いから別に求めてもいないのに、太陽の光の重要性とか、それがもたらす何かとかを考えざるを得ないというか、無意識に感じるような。
そういうところに感覚を持っていけるアートって、すごいですよね?

というわけで、この二つは印象が強かったので、後半二つはちょっと地味。

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GAM GAM GAMと題された作品で、AンVeronica Janssensという方の作品。ベルギーのアーティストらしいです。
これね、なんか光とかを乱反射するような液体が満たされているキューブで、見る角度で、色が見えたり、素通しで向こうが見えたり見えなかったり、という遊びチックなものなんです。なんでなんで、っていう面白さがあるんだけど、どうもガイドさんの説明が悪くて、個人的にはかなり面白かったんですが、面白さを伝えきれない説明だったのが残念だったな。

最後は、鏡を使ったタイプ。

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会場は美術館なので、それなりに有名なイタリアの近代絵画が展示されているわけなんですけどね、この部屋には、そういう意味ではそれなりに有名な絵画があったりするんです。で、その部屋の中央部に、ほぼ部屋のすべてを覆うようなキューブで、それがシマシマの鏡面になっています。
で、本来の壁にかけられている著名な絵画を、細切れに鏡面に映し出すというやつ。
メタモルフォーゼというテーマに根差した発想は悪くないけど、まぁ、正直、ちょっと陳腐かも?というイメージはぬぐえなかったかな。
勿論好き好きですからね。わたし的には、前の二作に比べると、という感じが正直なところ。

いずれにしても、なんだろな、現代美術に接するのが久しぶりだったこともあるのかな。あと、新たにフラワーアーティストっていう新しい世界を知ったこともあるかな。やっぱり色々考えてしまいました。ゲージツってさ、金が、パトロンが必要だよね?!という当たり前的な大前提。
わたしがメインでのめり込んでいる中世美術は、教会美術だから、パトロンはキリスト教。それまでも、それからも、長い時代、芸術のパトロンは宗教だったわけです。
近現代になると、パロトンは色々あるわけですけどね、現代だと、このフオリサローネのみならず、イタリアなんかだと、今成功しているファッションブランドとかがパトロンってすごくありがち。そこで、どれだけパトロンの期待に沿うかっていうか、提示されたテーマに沿った作品を作れるか、というのが、大きな一歩になるわけですわね。

このサローネに関していえば、自分らの求めるものを表現してくれるアーティストを探すメーカーだったりブランドだったりの発信力、選択眼というのも、またすごいものがあるな、と感心もします。ファッションなどは感性だから、やはりそういう繊細なことに優れた人を、ちゃんと採用しているということになるんでしょうねぇ。

今回は、展示も少ないし、私自身多くを回れない中で、それでも、見ていくことで知らなかったアーティストとの出会いがあり、思索があり、やはり、好きなことというのは突き詰めてなんぼ、っていうとこありますよね。

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  1. 2021/09/06(月) 21:34:04|
  2. ミラノ・フオリサローネ
  3. | コメント:1

まさか蛇に魅せられるとは(ブルガリ-GAMA)

2021フオリサローネ その1

まさかまさか、フオリサローネ、開催されるとは思いませんでした!
サローネが、秋に延期して開催されるのは、ずいぶん前に知りましたが、フオリサローネは難しかろうと思い、勝手にないものと思い込んでいたのですが、金曜の夜に、ほとんど無視して捨ててしまう自動配信メールでの市のニュースレターでお知らせがあり、え?え?まじ?どうしよう、何も準備してないじゃん!と焦った次第。

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準備っていうのもおかしいですが、フオリサローネはほとんど平日主体だし、時間もビジネス時間だったりするので、結構事前に色々計画しておかないと、見学が難しかったりするんですよ。上の、INTERNI社の冊子を、できるだけ早い段階で入手して、面白そうなイベントをピックアップしたり、行きやすい場所ごとにまとめたりね。

今回は変則的なんで、とりあえず、お知らせと、サローネのサイトでお勧めなどをちらりと見て、土曜日の朝から出かけました。
まずは、このところ毎回楽しませてもらっている会社の展示。

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ブルガリBvlgariです。
今回は、GAM(市立近代美術館Galleria d’Arte Moderna)の中庭に、鏡面張りのスペースを作り、同時に、美術館のスペースも借りての展示。朝一番に行ったら、ほとんどだれもおらず、二番目か三番目に入れた感じでした。

ちなみに、昨今イタリアでは、屋内への入場、こういった博物館系や、列車などについては、ワクチン接種証明であるグリーンパスの提示が必至となっています。スマホなどに保存の電子タイプでも、印刷したものでも、QRコード読み取りでOKとなりますので、チェックは意外とスムーズです。
フランスほどの激しさではないとはいえ、イタリアでも各地で、このグリーンパス提示義務反対という動きがありますが、個人的には仕方ない措置ではないかと納得しています。反対する人は、テレビでデモの様子など見ても、一般的にマスクもつけていなかったりする傾向が強いと感じられ、正直そういう人たちの近くには寄りたくないと思います。また、ワクチン接種済みであっても、感染する可能性はあるわけですから、自分自身もマスクをしていますし、周囲にもしてほしいと思うんですよね。
でも、このサローネのためもあると思いますが、町にはかなりの外国人がおり、多くがマスクなし。迷惑…。

というのもあって、なるべく人の集まりそうにない地域中心の見学も意識してしまいました。

で、ブルガリ。
ガイド付きの見学となりますが、私の時は、友人とその他一人の見学者、合計三名だったので、非常に和やかかつ見学しやすいツアーで、ラッキーでした。
中庭に設けられたこの鏡面張りのスペースには、一体いかほどのものなんか、想像もつかないブルガリの宝飾品が展示されています。

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ここで、ブルガリの伝統テーマである蛇についての説明があります。展示されているすべての宝飾品が、蛇をモチーフにしたものなんですけど、その職人技には、ただ感心し、そして、その材料の、想像もできない高価さに、ため息しか出ないっていうか。

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目がつぶれんばかりのキラキラ。ホワイトゴールド、どんだけつかってるんか。
それはそれとして、このカーブっていうか、肌に微妙にフィットするための仕組みっていうか、もうその仕事に感嘆しました。

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こういう形を一つ一つ作って、ダイヤをはめ込んでいくっていうわけです。いわゆる蛇腹?
職人仕事って、技術も材料も道具も、色々が結びついてやっと、その時代最高のものができるわけですが、今のご時世、道具も材料も出尽くしているから、残るのは職人の技となるわけで、そういうのはなくなってほしくないから、こういう宝飾品の世界のためにも富裕層とか、王族とか、そういう存在、重要ですねぇ。

個人的には、肌に優しいから、金のピアスはいいような気がするし、メガネは軽いからチタンが離せないとか、宝飾品レベルの素材に対して、すっごく実用レベルの興味しかないんですけど、ちょっとねぇ、この時計は欲しかった!

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先日、この数年使っていた安い腕時計が壊れまして、もう手持ちの安い時計は全部どっかがダメになってるもんばっかり。スマホより時計派なんで、時計は欲しいんですが…。どっかに似たようなやつ、ないかなぁ。すっごく好きなんだけど、これ。文字盤の周りの宝石はいらんから、といっても、きっとそれでも数千ユーロはするんだろうなぁ。

とまぁ、そんなことを考えながら、ここの見学を終えて、今度は美術館スペースに移動します。

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近代美術館なんだけど建物は、もともと誰かのお屋敷とかで、すっごい豪華なシャンデリアとか、調度品とかある、非常にイタリアチックな入れ物なんですよ。だから、ブルガリもしっくり映えますねぇ。

ガイドの人も変わって、今度は、あんちょこ見ながら必至、という男性でした。初日だしね、緊張もすごかった。

最初は、またもやブルガリ製品、それもアンティークというか、歴史的モデルで、さらに価値が高いやつ。で、ここでも~。

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アンティークだから、さらにかわいい…。特に右側のやつ、欲すぃ~。

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こっちもいいよねぇ。文字盤の小ささが、さらにアンティーク感醸し出してるし、ゴールドとホワイトゴールドの互い違いっていうのも、なんかいいわぁ。欲すぃ~。

自分の物欲は置いといて、ちょっと蛇も、クローズアップ。

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蛇系って、好き嫌いあると思うけど、結構ファッションな時代もあるし、パワー志向の人にははまりそう。ちなみに、エリザベス・テイラーなんかは大好きだったそうです。すっごくわかる感じ。

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ゴージャスな人が付けたら、さらにゴージャスっていうような一品ですよねぇ。とにかく金とダイヤ、ちょっとエメラルドとかそういう世界だもんなぁ。
そんでもって、この蛇ちゃんたち、お口がぱかっと開くらしいです。そこに何を入れるのか、知りませんが、パクって、なんか楽しいし、職人の技を見せつけるようなことやりよる、と思います。

ブルガリの展示に行ったのは、この後に続くアートのためなんですが、ちょっと長くなってしまったので、一旦切りますね。
いやはや、それにしても、職人系のブランドはすごいな。

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  1. 2021/09/05(日) 16:35:30|
  2. ミラノ・フオリサローネ
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ペトロン、やるなぁ~(サンタ・プリスカ、ミトレオ)

2017年12月の週末旅行、ローマの古代から現代まで、その19

先週末に引き続き、この週末でも、一気にローマを進めるつもりでしたが、まさかのフオリサローネ開催で、そちらに全力注入。別記事アップしますので、現代美術ファンの方は、お見逃しなく~。

さて、というわけでローマです。

2009年に旅した時、ある教会にクリプタがあるということで訪ねたのですが、訪問は予約のみの受付である旨張り紙に記されており、その時は訪問がかないませんでした。
今回は事前にネットで予約をして、ガイドツアーに参加することとなっていて、この旅の一つの大きな目的でした。

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サンタ・プリスカ教会地下のミトレオ(ミトラ教神殿跡)Mitreo di Santa Prisca(毎月第二及び第四土曜日、予約にてオープン。個人は10時から、団体は11時及び12時からの見学。予約電話番号06-39967700、月曜から金曜の9時から18時、土曜の9時から14時受付)です。

教会は、すっかり新しくて、内部も、古い遺構は一切ないので、最初に訪れたときは、狐につままれたような気持ちになりました。

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アポは10時からだったのですが、ずいぶんと早くついてしまって、20分は待つ羽目になりました。集まってきたのは、私の他に二組のカップルで、総勢5人のツアー。ファサードのわきの方にある小さな鉄の扉から、いざ入場です。

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地下に降りて、最初のスペースで、いきなり各自にヘルメットが渡されたのは、びっくりしました。

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そこで、ざっとした説明を受けます。
ミトラ教、御存じでしょうか。
わたしは、前回見られなかったことから、ちょっと情報を求めたのですが、たった10年弱前のことですが、当時はネットで検索しても、ほとんど何もヒットせず、大型書店に行っても、ミトラ関連の書籍は見つからず、ほとんど何も分からないまま、この時のツアーになってしまって、いきなり現場で説明を聞くこととなったのですが、見学しつつ解説を聞くというのはなかなか大変で、すべてキャッチはできませんし、撮影もしたいとなると、メモもおろそかになりがち。
それが、あなた!
今回検索してみると、ザクザクと情報を出てくるんですね。これにはびっくりしました。ロマネスクに関しても、この何年かで、出てくる情報の多さが激増したという感触はありましたけれど、間違いないですね。イタリア語情報が、激増しています。ミトラについては、本当に何一つ出てこない、という状態だったのをよく記憶しているだけに、インターネットの普及を痛感した次第です。

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このサンタ・プリスカ教会の地下ですが、遺跡が見つかったのは1934年。
その際は深堀されることがなく、その後1652年及び1966年、オランダの調査団による発掘活動により、遺跡の内容が解明されたそうです。
その多くの部分は、紀元前4世紀から紀元後に至るまでに使われた住居、つまりローマのドムスってやつですね。一時期は、皇帝トライアーノの友人でもある軍人Lucio Licinio Suraの家であったことまでも、解明されているんだそうです。
この辺りは、そのドムスの遺構ではないかと。

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遺跡としては、いろんな時代が混ざっているので、どの写真がどう、というのが、非常にわかりにくく、すっごく的外れなことを書くかもしれませんこと、ご了承くださいね。

ドムスがなぜ神殿に?というのは、発掘調査の際、住居建物の一角に、オリエント起源のミトラ教に関連する礼拝堂が認知されたということなんです。

ミトラ教は、当時、大規模な成功を収めていた信仰で、帝国にも非常に普及していたようです。解説によれば、以下です。

「聖地は、長方形の形をした主室からなり、聖餐の儀式が執り行われる場所で、そこに、神との聖体拝領のために信者が集まった。そこには、核となる二人CautesとCautopatesが表された、二つのニッチが続いており、それらは、それぞれが、夜明けと、日没のシンボルとされた。今では、Cautesの大理石の彫刻が残っているだけ。
祭壇は、人々と動物を前にして、ミトラによって宇宙のシンボル的な雄牛が殺される場面をもって装飾されている。

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一連の彫刻は、黄金で塗られたストゥッコで、古代世界においては、非常に洗練され、またまれな技術である。

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側壁には、一連のフレスコ画があり、儀式に向かう信者たちの行列が描かれている。上部の帯には、碑文の跡が残り、行列にいる人々を記している。

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(現場で見せていただいた説明書。相当うっすらとしていて、肉眼で普通に認知できないもの多数。おそらく、発掘当初は、より鮮明だったのではないでしょうか。)

中央部の大きなニッチの外側に、起原212.11.20という日付が見られるが、新月から18日目で、おそらく、聖所が作られた日付と考えられる。これ以外に、それぞれつながった三つのスペースが見られる。おそらく儀式本番前の準備に使われていた場所。

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中央スペースの部屋の奥の壁には、七つの円で装飾されているが、天球を表しているものとされる。今でも認識できる穴は、宇宙を表す星座に関連しているのではないか。」
ということです。

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先述したように、遺跡は、色々混じっているし、修復の手も入っているし、フレスコ画などの傷みは進んでいますので、なかなか印象的とは言い難い保存状態で、当然写真をご覧になっても、つまらない内容だと思います。
実際、見学していても、地下迷路探検的なワクワクはあるのですが、残されているブツが少ないので、普通以上に想像力がないと、なかなか楽しみのは難しいかも。ただ、キリスト教以前の、いわゆる異教とされた信仰の神殿であること、この、いわゆる太陽神信仰、つまり原始宗教をキリスト教という体系的な権力に結び付けやすい信仰にうまく世間を移行させたという事実を考えると、どうにも面白く、興味深い何かに感じたことは確かなんです。
おそらく、キリストその人以上に、ピエトロさんやパオロさんって、すごい人たちだったんですよね、戦略家というか、政治家というか。ツアーの際に、ガイドさんが説明してくださった際、ミトラ教から、無理なくキリスト教に改宗してもらうため、キリストの誕生日をミトラの誕生日に合わせたり、処女から生まれたという伝説もコピーしたりと、ミトラとキリストを混同させるような刷り込みを行ったという話が、大変興味深く、うさん臭く、笑、個人的に受けました。

自分のメモとして、以下、ミトラ教のこと記しておこうと思います。

「ミトラ信仰は、紀元前1世紀から起源5世紀ごろまで、すでにキリスト教が広く普及しつつある中でも、4世紀まで、特に男性中心とした信者を持ち続けた。
ローマには、少なくとも700のミトレオがあったとされている。
キリスト教の時代に、多くのミトレオは、その上に教会建設することで破壊されたために、今では見ることができなくなってしまったのだが、いくつかは、今でも教会の地下に保たれている。」

「先述で言及されたCautesとCautopatesは、ミトラ神の使徒のような存在。多くのフレスコ画や浮彫で、ミトラの誕生時からその脇にいる存在だ。ミトラは、太陽伝説に結び付いた信仰のため、この二人についても、Cautesが夜明け、Cautopatesは日没、または春分と秋分などに結び付けられている。
今でも、その名前の意味や解釈は明確にされていない。」

「ローマの伝説によれば、ミトラは、ある洞窟の岩から、12月25日の夜に、処女から生まれたことになっている。ミトラ信仰は、地中海東部地域に、紀元前2世紀ごろから普及した神秘的な宗教で、ローマ帝国でも紀元前1世紀から、普及し、3世紀から4世紀にかけて、主にローマ軍の兵士に広まった。
ミトラ信仰は、キリスト教と同時に普及し、初期は水兵や商人による信仰が強かった。カタコンベのような地下が使われ、ミトラ神のイメージは常に雄牛と戦っている姿だった。
オスティア・アンティカには18もの聖所があり、ローマには12。どのミトレオも、20/30人の信者を受け入れていた。
仮定の話となるが、ローマの港オスティアでは、50000人の住人のところ、1200人は熱狂的なミトラ信者だった。一方ローマでは、おそらく50000人規模の信者がいたとされる。
ミトラ教とキリスト教は、大きな内容として、似たものととらえられていたが、コンスタンティヌス時代には、ミトラ教は神秘性が高いため、キリスト教の方が、大衆にはより理解しやすいと判断され、それにより、ミトラ教は4世紀後半に勅令で消滅した。」

今後もチャンスがあれば、ローマやその近郊の地下遺跡というものには、アクセスしていきたいものだと思います。

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  1. 2021/09/05(日) 15:33:05|
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