2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その16(ベリー)
ブールジュBourges、続きです。と言っても、カテドラルではなくて、別のロマネスクです。
サン・ウルサンの扉Portail Saint Ursinです。
ここ、こうやって普通の何でもない道に、扉部分だけが残っているやつで、それも本当に地味な様子なんで、うっかりすると、探していても見逃したりしそうなやつです。
カテドラルの、南扉すぐ近くに、ツーリスト・インフォメーションがあったので、ちょっと立ち寄ったんですよ。一般の旅とは違って、基本的に、ツーリスト・インフォメーションを探して訪ねることはないのですが、目につけば、何らかの資料などがもらえる可能性がゼロではないので、立ち寄ることにしています。
この町では、特に聞くこともなかったので、一応、この扉の位置を聞いてみたところ、「なにそれ?」みたいな対応で、笑、慌ててネット検索しておりました。
で、「あ、これね、その教会は、扉しか残ってなくて、見るものはありませんよ」と断言されました~!
いや、あなた、私はその扉目的で来てますのよ、とは言いませんでしたが、この町は大聖堂自慢で、大聖堂サイトでも一応中世推しみたいな部分があるにも関わらず、ちょっと情けないっていうか、寂しいものでした。
昨今、ツーリスト・インフォメーションのレベルが、どこでも下がりまくりな気がします。経費削減なのか、紙資料は激減だし、誰もがネット検索でかなりの情報をゲットできてしまう中での、彼らの役割ってものが、全然確率できてないっていうか。特におフランスは、そもそも感じ悪い人が多いので、笑、さらに、何のためにいるんですか?と言いたくなること多し…。
というわけで、やってきました。
それなりに交通量のある道沿いなので、黒いのは、主に排気ガスによる汚れと思われます。洗えばきれいになるでしょうし、カテドラル同様に、白っぽい石色でしょうよね。邪険にされてるなぁ。
ここは、現場に置かれていた説明版の解説を簡単にまとめてみます。非常に完結かつ必要十分な説明が書かれていて、こういうのどこでも置いてくれると、実に助かるんですけどね。
「元々は、Bourbonnouxとよばれた地域にあった参事会教会サン・ウルサンSaint-Ursinの遺構。教会は18世紀に消失。」
解説に沿って、まずは、側柱部分の装飾から。
「ブドウ蔓模様と子熊Oursons(おそらく、教会創設者であるサン・ウルサンの名前を彷彿させる意図)」
子熊の発音は、ウルソンとなるみたいなので、言葉遊びみたいな発想なんですね。これは、解説なかったら分からないことで、こういうのは他にもありそうだけど、これまで気付いたことはなかった気がします。
それにしても、これ、子熊?確かにブドウ食ってるが、どう見ても肉食系動物…。
いろんな動物がいる中に、子熊もいたのかもしれません。
どうも、一日の終わりだったので、撮影枚数が全体に少なく、気合が薄れている様子がうかがわれます…シュン。
次は、タンパンの一番下の真ん中部分です。やけに大胆な植物文様の上の部分になります。
「彫刻家のサインGirauldus fecit istas portas(Giraudが作った)」
すごい俺様系だったんですね、ジローさんたら。その割に、字がいまいちなんだよな。確かに浮彫いいんだけども。
タンパンは、三段に分割されていて、その一番下の部分。
これは、農業暦とでもいうんですかね、各月の仕事を、表したもので、中世にはよく扉口装飾に使われた図像となります。イタリアだと、中部に多いとされていますが、フランスでも、そういった地域性があるのか、または中世当時から、フランスは全土的に農業やってた感じで、特定地域に特有ということもないのかな。
「左側の二月から始まる。農民が、火の前で温まっている。」
なぜ二月から? 三月は、鎌でも研いでますかね?
五月、六月、いかにも仕事してる様子で、七月、収穫してるみたいで、ここは、アーチ二つ分を使って表されているので、見ろよ!ここだぜ!みたいな感じなんですかね。
8月も頑張って働いて、9月はなりものを収穫している様子です。
10月11月辺りは家畜ですね。そして、右端に一月がありました。オーブンで料理をしているようで、つまり収穫のあとをここに置きたかったから、ということなんですかね。
上から二段目。
「シカとイノシシの狩。おそらく、古い時代の石棺に彫られた図像から着想を得たもの。」
確かに、こういうごちゃごちゃした浮彫って、ローマの石棺とかによくありますよね。石工が、オレうまいんだぜ!とやるのに、ある意味ピッタリはモチーフなのかもね。これだけの人やら何やらを奥行きも含めて彫るのは、確かに骨の折れる仕事だと思います。だけど、面白みや新鮮さないし、なんでって思っちゃうけども。すまん、ジローよ。
仕事暦図はスタンダードだけど、こういった唐突な狩だったり、また一番上の図像は動物フューチャーの寓話で、これらは珍しいとあります。
何が珍しいって、こういう異なる内容の図像を、三段にしちゃったのが珍しいように感じます。
やっぱり、俺様発想ですかね、笑。
「ロバの先生、狐ののどにくちばしを突っ込んでいるツル、クマと鶏に付き添われた、狐の嘘っこ葬式。」
捕食者と非捕食者の逆転みたいな図は、初期キリスト教から中世にはよく見られますね。初期キリスト教も含めて思うのは、結構床モザイクに、そういった図像が使われているように思い出されるからです。ベネチアとか、アクイレイアとか。
ツルが、マジ怖い…。キツネ、完全にビビってますよね、しっぽまいてるし、笑。
日頃馬鹿にされているうっぷんを晴らそう的な様子で、ヒールに徹しているロバと、つぶらな瞳でその先生を見つめるワンコ、これかなり好きです。
というわけで、ここは現場も、そして四年後も、しっかり楽しみました。いつか再訪したら、白くきれいになっていることを楽しみにします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
日々の生活をつづる別ブログです。フオリサローネ2023の見学レポート、連載中です。
イタリアぼっち日記 ブログランキングに参加しています。よろしかったら、ポチっとお願いします。
にほんブログ村 にほんブログ村 インスタグラムに、これまでのロマネスク写真を徐々にアップしています。
Instagram, Notaromanica
スポンサーサイト
テーマ:art・芸術・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術
2023/05/29(月) 18:37:44 |
サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
| コメント:2
2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その16(ベリー)
周辺に立ち寄りたい場所はいくつもあったのですが、そろそろ宿泊地に向かうこととして、初日最後は、この地域の大都会ブールジュとなります(駐車場はいくつかありますが、私が利用したのは、9 Rue de Seraucourtの無料駐車場)。
サンテティエンヌ大聖堂Cathedrale Saint-Etienne(9:30-12:30 / 14-18)。見た目立派な割に、笑、情報量が少ないサイト:
https://www.bourges-cathedrale.fr/decouvrir/la-cathedrale-de-bourges
ゴシックというのは知ってたけど、もうさ、びっくりしちゃうレベルだよね、こうなると。おろおろしちゃうっていうかね。
これ、世界遺産ということで、そのプレートが誇らしげに飾られていました。ということは、ゴシック建築を代表するもの、という位置付けになるんでしょうかね。
その、ゴシックの隙間みたいな感じで、ちょっとだけ、ロマネスクの遺構があるんです。私が目的としたのは、南側にある扉口の彫り物装飾です。
おそらく、ファサード側も回りましたが、ほとんど通過するだけ状態で、ほぼ直行で目的地へ。
ロマネスクとゴシックって、歴史的にはつながっている時代なのに、なぜゴシックがこれほど苦手なんだろうか、と自分でも不思議に思います。
ゴシック様式のポルティコの奥に、あるのが、その目的の扉です。
前回の記事で紹介した教会でも、よくもこんな一部分だけを残したよね、というような遺構でしたけれど、ここでも似たような様子です。
ロマネスクの遺構としては、この南側扉、内部にあるステンドグラスの一部、そしてクリプトとなるようです。ステンドグラスは、サイズの小さいロマネスク時代のものを、ゴシック時代の、より大きい開口部のために、再利用したということらしいので、分かるのですが、クリプタなどは、もっと大きなものを作りながらロマネスク時代のものを残したり、この南扉も、ポルティコまで手をかけて作りながら、扉周りは残したり。
そういう過去の遺構の残し方は、教会毎に異なるわけですが、全体の建築をここまで変えている、こういった巨大建築においては、その基準が、さらに不思議に思えるような気がします。
まぁこの扉の場合は、全体のイメージとして、かなりゴシック・テイストが入っている様子もあるので、違和感がなかったというのはあるのかもしれないです。
つまり、あまり私の好みではないかと。
タンパンの中央には、アーモンドの中のキリストが、四人の福音書家のシンボルに囲まれている図像。
かなり写実が強くて、福音書家の誰もが、まったくかわいくないです、笑。いや、基準はかわいいとかかわいくないとかであるわけではないのですが、こうやってクローズアップで見ると、やはりゴシックっぽいですよね?
手とかも、デフォルメがなくてきれいすぎで…。
アーキボルトは、内側に天使、そして外側は預言者ですかね、びっしりと並んで置かれていて、保存状態もすごく良いのですが、やはり一つもかわいくないんです…。
でも、預言者は結構扉をくぐる人を見てる様子が、すごいわ。
下の二人、アーキトボルトのトップで、完全にこっちに訴える様子だよね。こっち見ろよって様子がビンビンに…。
彩色の跡が明らかなので、往時は極彩色だったのかな。きっとそうですよね。そしたらさらに派手派手な力強さで、目力に負けて、入りたくない人もいたかもしれない…。ちょっと、やばっ、みたいなことしちゃった人とかね、怖いよ。
アーキトレーブには、十二使徒が、一人ずつ区切られて、お行儀よく並んでいて、これまた大変良く残っています。
どなたかの訪問記を見たんですが、北側にも扉があり、そちらはマリア・フューチャーの彫り物があったものの、1562年、宗教戦争の起こった際、プロテスタントによって、破壊された、とありました。その当時、この南側の扉は、近付くことが出来なかったために守られたということなんですが、閉ざされていたんですかね、ポルティコで。
北側、見てません…。ちゃんと調べていかないから、いつでも見逃し見残し多数です。
十二使徒の浮彫、背景や、区切りの柱などもすごく細かくて、びっくりします。
でも、すごいけど、でも…っていうやつ。
脇柱には預言者像がずらり。こうなると、完全に私の好みからは逸脱。
ヘレニズム的な、なんか仏教の木彫りのお像との共通性も感じるような。
それにしても、ここにも彩色の跡がうっすらとあるんで、ちょっとびっくりしました。全体が彩色されていたんだろうけど、なんかこのサイズのお像もすべて色付きとなると、想像が難しいっていうか、現代だったら、東南アジアの仏教寺院とか、そういうところにしかない文化ですよねぇ。
中世は、一般的に色彩が氾濫してなかっただろうし、衣服にしても、庶民の服は自然の素材で染めていたんだろうから、派手な色に対するあこがれだったり、特別感があって、ということなんだろうけど、日常に色が氾濫している現代では、やはり想像しにくいですね。
預言者たちの頭の上の方の柱頭にも、細やかな浮彫が施された柱頭があります。
装飾過多、っていうのも、どうしても引けてしまう点かもね。
どうでもよいことですが、ここで撮影していると、いきなり「どいてください」と言われて、びっくりしました。三脚を立てて撮影しているおばさんが、苦々しげにこっちを見てるんです。
ここは公共の場で、彼女にそんなことを言う権利はないのに、プンプン。何人だったかは記憶にないのですが、東洋人蔑視的な態度も含めて、フランス人に違いない、笑。なにも言わずににらみつけ、しばらく撮影を続行しました、もちろん。でも、彼女のイライラが、後ろで色を付けて立ち上っているほどの殺気みたいのを感じたので、早々に立ち退きはしましたが…。
ちなみに、ファサード側はこういう感じ。卒倒しそうに執拗な装飾です。
入場します。
壮大なゴチック建築。
この抜け感、外光、やはり衝撃だったろうな、と思います。好きじゃないけど、こういう方に技術が進んだのは、そりゃ当たり前だよね。暗闇だったんだからね。
ステンドグラスに関しては、確かに美しかったのですが、まさかロマネスク時代の古いものがあるなど知らなかったし、いずれにしても不勉強で、どういった違いがあるのかもよく分からないですから、たとえそうだと知っていたとしても、おそらく見分けがつかなかったのではないかと思います。
実は、クリプタ見学は、ガイドツアーとなっています。8ユーロで、宝物館とか色々回るようで、たずねた時間に丁度良いツアーがあったのですが、見学する内容を検討して、やめました。
この教会は、どう考えてもゴシック推しなわけですから、ツアーのほとんどを占めるのはゴシック、その上フランス語ときたら、相当の苦痛で、僅かな時間のロマネスク・クリプトのために我慢するのは、長い一日の終わりにはあまりにも辛い苦行だと思いました。
上に張った聖堂のサイトには、ロマネスクのクリプトの写真も掲載されていますので、ご興味があればどうぞ。
ブルージュの見所は、もう一つあり、実は私はそちらの方が楽しかったです。
続きます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
日々の生活をつづる別ブログです。フオリサローネ2023の見学レポート、連載中です。
イタリアぼっち日記 ブログランキングに参加しています。よろしかったら、ポチっとお願いします。
にほんブログ村 にほんブログ村 インスタグラムに、これまでのロマネスク写真を徐々にアップしています。
Instagram, Notaromanica
テーマ:フランス - ジャンル:海外情報
2023/05/28(日) 18:03:50 |
サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
| コメント:0
2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その15(ベリー)
ドゥン・シュローロンDun-sur-Auronのサンテティエンヌ参事会教会Eglise Collegiale Saint-Etienne(毎日9-12/14-17)。
写真では分かりにくいかもしれないのですが、結構大きな教会でして、それも一見してゴシックテイスト全開なので、簡単にアクセスできたはいいけど、いまいち気持ちが上がらないのでした。
それなのに、何でしょうね、この開放的な様子なのかな、妙に印象的で、このたたずまい、やけに記憶に残っていたりするのが不思議です。
中に入っても、やはり…。壮大なゴシックで、その上、というかそのくせ、相当暗かったです。カメラは、ちょっとした外光があると、意外と明るく撮影できてしまいますが、現場はこんなものではなく、薄暗がり状態です。
自分のメモにあるのは、「中はがらんどう感がすごく、全体にくすんですすけて汚れたイメージ」。真夏だけど寒々としてましたねぇ。
歴史としては、創建は1019年と古いものの、今ある建物の基礎は12世紀の建築で、その後16世紀そして現在まで、火事という事故も含めて、再建や修復や改築が結構激しく行われてきた結果、ということになるようです。
ただ、有難いことに、内陣部分には、往時の遺構が結構残されています。
教会は、内陣部分に周歩廊があり、そこに三つの礼拝堂がある構造で、内二つの礼拝堂が今も残されています。そして、この部分に、12世紀の柱頭が残されているのです。
今回はウィキを参照したのですが、以下の解説がありました。
「後陣は、その両脇の小後陣をもって、円柱の支えを持つが、ポワトーの影響があり、柱頭彫刻や、またその図像も同様である。軒持ち送りは、人や動物の頭部からなる。開口部のアーキボルトは。装飾帯で囲まれ、ねじれた円柱によって支えられている。円柱の柱頭は、多くの図像で豊かに装飾されている。」
「内陣は、大きな周歩廊を持つが、これはベリー地域には珍しいスタイル。とはいえ、Saint-Blaise de La Celleにも見られるのである。
周歩廊を取り巻く礼拝堂のスタイルは、ポワトーのスタイル。
ここの角柱は、装飾的な柱頭が置かれ、怪物や植物のモチーフなど、ベリー以外の地域の影響を感じさせるもの。例えばその図像は。ショーヴィニーChauvignyのサン・ピエールを彷彿とさせる。」
教会の、あちこちのオリジナル装飾に、ポワトーやサントンジュの影響がみられる、という記述が複数あり、興味を持ちました。
実は、もしもコロナがなかったら、この旅に翌年に、まさにその地域に行こうと考えていたんですよね。位置的には、ここらから遠くないというか、続いている地域っていうか、そういうことに気付いて、前に駆け足で回ってからずいぶんと時間もたっているので、と考えていたのです。
結果として、もちろん行けなくなってしまいましたが、こんな解説を見たら、やはり行かねば、という気持ちになります。
以前はかなりの駆け足だったのですが、一般的に装飾的なイメージの強い地域だけど、実はそれだけじゃなくデザイン的な要素も強いみたいな、イタリアでいえばピサ様式に通じるようなものがあるような気もして、個人的には好きなスタイルなんだと思うんですよね。まぁ、数年内には再訪できると思います。
話がそれてしまいましたが、解説の面白さに比して、先にも書いたように、本当に暗かったのもあり、撮影枚数がすごく少ないのです。柱頭も、手振れがひどくて、ろくに撮れていませんし、開口部の装飾など、気付きもしませんで…。
現場では認識できなかったですが、これはダニエルさんですね。
これなんかが、解説でショーヴィニーに言及しているタイプかな。
これは竪琴とロバなのかな。
「これはロマネスクの動物彫刻ではよく見られるテーマ。Aulnayのサン・ピエールのものが有名。無知や怠惰な精神などを表すもので、ベリー地域でも、他の教会でも見られる図像」とあります。Aulnayは行けてないですが、確かに私でも知ってるくらい有名ですね。
装飾的な帯なども含めて、かなり細かい彫りのものと、ざっくりとプリミティブなものが混ざっている感じ。
それにしても、もう少し明りがあれば…。
解説によれば、象があるみたいなんだけど、分からなかったのが残念です。闇雲に撮影はしているけれど、よく見えてないのがネックですよね。
さて、外側ですが、入り口付近のゴシック全開部分は見なかったことにして、後陣の方へ。
といっても、ゴシック様式の付け足し部分が多くて、構造がすごく分かりにくいことになっていて、自分の撮影したもので全体が分かるものがないので、ストリートビューをお借りしました。
丁度、トップの写真と対角でのびゅーとなりますが、鉄さび色の部分が、見るべき場所となります。
この建材について、以下の解説がありました。
「鉄の酸化によって赤っぽく染まった石灰岩が印象的。これは、ベリー地域、特にDun周辺では多く見られる石である。ここ以外でも、Charost(旅の後半で立ち寄ります) やVornayといった教会が、同じ石で作られている。
この石、鉄分を含む湖水地域の石灰岩は、彫刻には向かないため、柱頭はCharlyの石になされている。」
鉄分が多く含まれる石は、時々お目にかかりますね。イタリアでもスペインでもあって、そういう色の石があると、こうやってそうではない色の石と合わせて使うことで装飾性を出すのは、どこも同じですね。
大きなテッセラを使った抽象的なモザイクという様子で、好きですし、角ばった土台に置かれた丸い石積みのつけ柱が、何とも言えず良いです。ここまで赤いと、ほとんどレンガの色ですよね。
ちなみに、ゴシック様式の部分には、この石はほとんど使われていないようです。ほんのわずか、アクセント的にはめ込まれているのが、トップの写真で分かりますよね。供給がなくなったのか、好みが変わったのか、どういうことなのでしょうか。
そしてその事実に気付くと、なぜこの部分だけ、取り壊すことなく残したのか、ということについても、不思議になります。ただありがたいですが。
浮彫の保存状態は良く、細かい彫りが、中よりも明るい分分かりやすかったです。
左の手は…。珍しいですよね。
細かいアーチ装飾。なかなかのテクニックですよね。
左側の柱頭のフィギュアは、柱を飲み込む様子になっている食いしん坊だそうで、これまた「ポワトー及びサントンジュ地域に散見されるものだ」ということ。
これって、フィギュアがかわいかったことが記憶になくて、テーマとしては好きじゃないんですけども、12世紀なんですかね。
こちらは全身像ですが、やはりかなり力入れて、植物を握りしめている聖職者たち。手だけのやつと、モチーフは同じですよね。何だろう。
寸胴な割に、おっぱいはやけに細かく、顔の彫りも繊細な人魚もいました。
というわけで、現地ではあまりそそられなかった教会ですが、意外と四年後に楽しめましたね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
日々の生活をつづる別ブログです。フオリサローネ2023の見学レポート、連載中です。
イタリアぼっち日記 ブログランキングに参加しています。よろしかったら、ポチっとお願いします。
にほんブログ村 にほんブログ村 インスタグラムに、これまでのロマネスク写真を徐々にアップしています。
Instagram, Notaromanica
テーマ:art・芸術・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術
2023/05/27(土) 11:19:01 |
サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
| コメント:0
2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その14(ベリー)
シャリヴォイ・ミロンChalivoy-Milonのサン・エロワ教会Eglise Saint-Eloi、続きです。
ここ、フレスコに加えて、浮彫装飾も沢山あるんです。
上の写真で、ちらと見えている、内陣の入り口部分にある柱頭、ここは、結構上の方にありまして、現地では細かいところまで確認できないのは毎度のことでして、今、僅かな解説を見つけて、実際の旅から4年もたって、面白がっているところです。ふふ、なんだか長生きしそうな気がしますわ。
本堂に向いた側には、猫がネズミをガジガジしている図像。そして、角にそれぞれ顔が置かれて、内側に向いた部分とその先は、ブドウの収穫にかかわる一連の作業場面なんだって。刈り取りとか運んだりとか。
ランタンみたいにずらりと上にならんでいるのが、どうやらブドウの房ということなんでしょうが、言われなければ、まったく分からないわ。
それにしても、にゃんこは?
スコットランドのウィスキーキャットのように、猫も農民の生活を守り助ける重要な役割を担っていたということを表したのかな。初めて見たと思います。残念なのは、猫もネズミもかわいくないっていうことかな、笑。
そして、右側は、ワンコ。
犬たちが、人の頭をガジガジ図だって。
ワンコが植物の乗っかっているようになっているのが面白いデザインだし、にゃんこやワンコをフューチャーするって、思い切ったことやったよね、石工さん。
歴史を紐解くと、8世紀ごろ創建された修道院の修道士たちによって、地域の土地が開墾された、ということがあったようで、そして、この教会についても、そういった修道士の働きで得たものがつぎ込まれて装飾も行われたそうなので、開墾を担った修道士の気持ちが表れているのかもしれないですねぇ。
当時は、にゃんこやワンコにもフレンドリーな、まさに「猫の手も借りたい」状況だったのかもねぇ。
歴史にかかわってついでに記しておくと、この教会が現在のEloiさんに捧げられたのは、比較的最近で、もともとはSaint-Sylvainという、310年に殉教して、この地の守護聖人とされた人に捧げられていたようです。そのためか、グーグル検索すると、今でもSylvainの名前で出て来ました。Eloiさん、認知薄い…。
内陣の奥へずずいと進むと、フレスコのある壁部分、かなり装飾的になっていることが分かると思います。
後陣の壁部分が、なんと上下二段のアーチになっているの、すごいですよね。
窓の枠部分が、まるでセラブロ、だったかな、スペインのアラゴンの一地域にあるスタイルだけど、セラブロの装飾様式みたいになってたり、小円柱がネジリン棒になっていたり。フレスコも相まって、ごちゃごちゃしています。
ネジリン棒も、ただ、ねじってるだけじゃないのが、びっくりします。
スジスジが、つるりとしたものじゃなくて、数種類のモチーフが入っているんです。これまた初めて見たなぁ。
イタリアだと、ネジリン棒にモザイク装飾を施すというのはあるけど、これは無色モザイクみたいな発想の装飾ですよね。すごいわ。
柱頭のモチーフは、割とスタンダードなものですが、時々こういうのがあったり。
これは、実はワンコの上にあります。なんだろね。
足元の三人は、やけに写実が勝った彫りだけど、上の人は、ワンパンマン的な一筆書きで、困っている様子も見えたり。下の人も含めて、全員で、何か訴えてる感じかなぁ。
これは、後付けでねじ込まれた鐘楼構造の部分にあるから、もしかするとワンコの柱頭より、1世紀くらい後に、つけられたものかもしれないですね。
では、外に出て、外観見学します。
まず、残念なのは、どうやら入り口扉のタンパンを見逃したことです。なぜ、入場口の上を見ないのか。まぁ、あまり魅力を感じないものだったのかもしれませんが、ロマネスク当時の彫り物があるようなので、どうぞ、お見逃しなきよう…。
見るべきは、やはり後陣側で、沢山の軒持ち送りが並んでいます。
外側も、ブラインドアーチが沢山で、実に装飾的ですよね。
修道士さんたち、すっごく装飾したかったんですねぇ。総本山だったブールジュへの対抗意識みたいなものもあったのかなぁ。
軒持ち送り、サイズは小さめですが、モチーフのバリエがすごいです。
こういう、怪しい様子のは、とても惹かれます。
研究所で突然生まれてしまった新生物的な様子が、何とも不気味…、笑。
後陣つけ柱の柱頭。
解説に、突然「二頭のカワウソ」と出てきて、へっ?と思ったんですが、これ、カワウソなんですね。こういうタイプの動物って、割と遭遇していると思うんだけど、単純に肉食獣的なものと認識していて、カワウソなんて、夢にも考えたことがなかったし、そういった動物が彫られるって頭になかったんですよねぇ。これ、葉っぱを食べている図だそうです。
地図で確認すると、この辺りは小さな川が多いようですから、身近な動物だったのかしら。今後、水の多い土地で動物に出会ったら、もしかして、と考えるようにしたいと思います。
普通にかわいいヤギさんと、ヘタウマデザイン系の不気味系。
とっちゃん坊や系二連発。右の人は、ちょっとしんちゃん入ってるぽい。
下のは、かなりおどろきます。
すごくないですか。現代彫刻でも通るような、なんていうのか、写実も入ってるけど、石工さんの気持ち入ってるよね?みたいな…。要は職人仕事というよりアートだなっていう。髪型が聖職者っぽいんだけど、このいじけた体育座り…。いやはや。
というわけで、楽しい教会でした。
そして、近所の方がマメにケアしている様子も好ましい教会です。
私が一人で見学を開始した途端、入ってこられた女性がいて、管理をされている方のようで、開口一番、「イタリア語でよろしいかしら?」と言われて驚きました。私の車のナンバーを見たのだろう、ということは、しばらくして分かったんですけども、びっくりしました。
そういうのって、ストーカーみたいで、笑、監視しすぎでいやじゃん、と思う人もいるかもしれないけど、まぁ田舎だから、それほど見学者が来るはずもなく、見慣れない車には気付いちゃうという程度のことだと思うし、やはり、大切にしているんですよね。
その女性は、すぐにイタリア語の説明を持ってきてくれました。頼めばガイドもしてくださったと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
日々の生活をつづる別ブログです。フオリサローネ2023の見学レポート、連載中です。
イタリアぼっち日記 ブログランキングに参加しています。よろしかったら、ポチっとお願いします。
にほんブログ村 にほんブログ村 インスタグラムに、これまでのロマネスク写真を徐々にアップしています。
Instagram, Notaromanica
テーマ:art・芸術・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術
2023/05/21(日) 11:49:41 |
サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
| コメント:0
2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その13(ベリー)
ベリーという地域は、沢山のフレスコ画があることで有名で、この時の旅では主な目的をそこに置いていましたが、ここまで、おお、これが…という出会いはありませんでした。といっても、まだ初日ですが…。
しかし、ここへきて、とうとう、「おお」ということになりました。
シャリヴォイ・ミロンChalivoy-Milonのサン・エロワ教会Eglise Saint-Eloiです(通常オープンしているが、管理している方がおり、どうやらご近所にお住いの様子で、電話番号も掲げられいます。駐車は、教会脇に可能)。
この後陣側はかなり装飾的ですから、これが目に入れば、期待マックスになると思うんですが、最初にアクセスする道路側の、特にファサード寄りは、かなり地味なんですよ。なので、事前メモで、注目ポイントの一つとして、フレスコ、と記してはいましたが、特に気に留めるでもなく、さらりと入場して、ガツン!でした。
遠いんですけれど、遠目にも、フレスコ画が認められますし、すごさが分かるんです。というか、現場では、もっと天井も低くて、かなり間近に見たような印象があって、今、写真を見返していて、こんなに天井の高いことに驚愕しています。
低く思えたということは、それだけ絵画が迫ってきたということになるんでしょうかね。
外側を見ると、後陣側と、ファサード側、ちょうど二分されている様子で、後陣側は古いけれど、ファサード側半分は、後付けの構造かとも見えます。
トップの写真が南側、こちらが北側となるんですが、奥の方、つまりファサード側には、装飾もないし、後陣とは全く違いますよね。
でも、図面を見ると、全体が12世紀となっていました。
黒に白線が12世紀です。ということは、ファサード側も、ところどころに後代の手が入ってはいるとはいえ、基本構造は12世紀なんですね。でも、表面的に、色々手が入って、当時とは様相が変わっているのかもしれないけれども。
中央の右側にある丸い構造は鐘楼で、これは13世紀にねじ込まれたようです。
見たとおり、非常にシンプルな一身廊で、唯一の身廊の幅が結構狭めな上に、内陣部分はさらに狭いというのが特徴的です。そのため、外から見ても、なんだか前と後ろで分断されているようなイメージにもなっているんでしょうね。
で、図面で言うと、内陣と後陣部分にびっしりとフレスコ画があるわけなんですが、これは19世紀に発見されたばかりなんだそうです。
そういうのって、その事実だけでもうれしくなってしまいますが、実は、ここにはフレスコ画があるはずだけど、工事費用がないから何もできない、という教会は、今でも結構あるのですよね。
そういえば、つい先日も、ポンペイで、何かが発掘されたのどうの、ということがあったようですが、2000年前のものの発掘もいまだにあるわけですから、1000年前のものの発見も、まだこれからあるのでしょうし、未来のお楽しみというのがあってもよいんだろうと思います。
おっと、いつもの脱線、失礼しました。
フレスコは、12世紀の第二四半期のものとされ、聖書の22のエピソードで、キリストの生涯が描かれているとか。
イメージとして、茶というかベージュ系なんですが、これは絵画職人さんの好みによる色合いとされているようで、現地の解説によれば、「画家は、土を好んだようで、黄土や暗褐色の黄土が、金属製の酸化物と混ぜられ、青や緑が作られた」ということで、ベースに黄土が使われていることで、全体にそういった色合いになっているのかと。そこから作られた他の色も、優しい風合いになっているんですかね。
優しい色合いのタイツを履いた、美脚、笑。
傷みありますけど、フレスコ画の範囲がすごいので、全体の迫力はすごいです。
キリストの奇跡ですかね。
絵画には、ビザンチン要素が感じられるとありますが、確かに、顔の表情とか、ビザンチンぽいです。
ビザンチンは、イタリアではあって当然ですが、フランスやスペインへの影響って、やはり職人さんの行き来の賜物ということになるんでしょうか。
教会だけを点として見ているとうっかりしちゃうのですが、歴史観点から行くと、イタリアの教会とフランスの教会の立場が同じなわけがなく、ビザンチンから遠い地での影響って、ふと気になります。
といって、何をもってビザンチンの影響と言えるのか、確として分かっているわけではないいい加減な私ですが、こういった隈取系の顔とか、執拗に装飾的な図像を見ると、そうかな、と思ってしまいます。
後陣には、アーモンドの中のキリストです。
黄土がメインと言うことで、新品当初も、決してどぎつい色合いではなかったこともうかがわれ、好感度の高いフレスコ画。デザインというか、全体の配置や装飾的な帯の様子も好みだなぁ。
後陣部分は、色が比較的よく残っていて、内容も認識しやすいですね。青のバリエも素晴らしい。
天井の絵よりも、動きのあるような、臨場感のあるような。エピソードと、図像学的な静的な内容との違いですかね。でも、もしかすると、職人さんも異なり、使った絵の具も違うのかもしれないですよね。
リンゴのほっぺだったり、ほっそりと長い指だったり、何より装飾的な衣装は、やはりビザンチンぽい気がしてしまいます。
開口部にある絵は、特にそういった要素強めだったような。天国を象徴する赤いお花が咲き乱れていたりして、私の乏しい経験から、とてもビザンチン的なイメージでした。
続きます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
日々の生活をつづる別ブログです。フオリサローネ2023の見学レポート、連載中です。
イタリアぼっち日記 ブログランキングに参加しています。よろしかったら、ポチっとお願いします。
にほんブログ村 にほんブログ村 インスタグラムに、これまでのロマネスク写真を徐々にアップしています。
Instagram, Notaromanica
テーマ:art・芸術・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術
2023/05/20(土) 10:47:22 |
サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
| コメント:0
2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その12(ベリー)
ブレBletのサン・ジェルマン教会Eglise Saint-Germain、続きです。
今回は、極彩色に塗りたくられた内陣です。
の前に、前回の記事で、最後の晩餐に触れたのですが、私の勘違いで、多分これがそうなのではないかと。
頭がぴょこんと飛び出ているのがキリストで、ヨハネがもたれているようです。
それにしても、前回載せた彫り物と比べると、ちょっと違いますよね。
粘土人形を並べたような様子で、とても地味だし稚拙といってもよいような雰囲気なので、うっかり見逃しちゃったんです。
下の、植物につながる部分も、粘土細工ぽいし、一体どうなっちゃってるんだろう。
というわけで、今回の本題、色とりどりの内陣です。
彩色もあるため、装飾的な柱頭が多い中、これだけ異質な様子。なんとなく、聖書とかキリストの一生とか書かれていた解説に引きずられてしまうと、キリスト降架の後かしら?とか思ってしまうんですが、どうなんでしょうか。
というのも、こっち側に、役人風に推しとどめられている人が彫られているからなんですけども。それにしても、ちょっと変なんだけどさ、置かれ方。
後はもう、装飾的な様子となります。
やはり彩色があるとないでは、見た様子が、まったく異なりますよね。単純な葉っぱモチーフですら、なんだか全然違うものになっちゃって。好き嫌いでいえば、私は無彩色の石色が好きですが、分かりやすいのは彩色ありだし、昔は分かりやすさ優先のはずだから、やはり彩色がベストだったろうということは理解できます。
彫りの部分への彩色に加えて、平面部分にも絵が描かれること多いですが、この部分も実際にそうだったんだろうか。
暗闇でも、浮かび上がりますよね、彩色あると。
彩色があろうとなかろうと、やはり石工さん、ただものではない。変な形、多すぎでしょう。
これなどは、若干時代が下るとかあるのかな。
明らかに色があるとないじゃ、相当違うものになってると思うよね。
これは、ちょっとデ・キリコとかのテイスト感じちゃう。
これも似たようなテイストだけど、四隅にいるサルらしいフィギュアに相当写実が入っている様子だし、時代が下るのではないか、に一票。
激しいガジガジ系。色もあって、なんだかおどろおどろしい。こういうのがゴシックにつながるのではないか、という印象です。
色付き内陣は、こういう様子となります。
外に出ます。
薄暗がりから陽光輝く広場へ。ホッとするような、クルマうるせーよ、みたいな。
前回トップに載せた後陣部分、よく見ると、かなり装飾的です。ブラインドアーチも凝っていますよね。柱頭も、窓の外枠の帯も、細かい彫り物満載。時代が混じっているかもしれませんが、いずれにしても、技術のある石工さんを使っていることは間違いなさそうです。
脇を通る道は、おそらく中世にすでに道だったと思われるし、その幹線道脇にあるという立地からしても、それなりに栄えた教会だったということが想像できますね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
日々の生活をつづる別ブログです。フオリサローネ2023の見学レポート、連載中です。
イタリアぼっち日記 ブログランキングに参加しています。よろしかったら、ポチっとお願いします。
にほんブログ村 にほんブログ村 インスタグラムに、これまでのロマネスク写真を徐々にアップしています。
Instagram, Notaromanica
テーマ:art・芸術・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術
2023/05/16(火) 18:18:56 |
サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
| コメント:0
2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その11(ベリー)
次に訪ねたのは、前回のシャルリから西方面すぐ近くの町。
ここは、住所とかなくても、村の名前だけで、行けば迷うことなく教会に出くわすことが出来て、探す必要が一切ないのは、ある意味助かるわけですが、トンデモないロケーションだと思います。
村の中心部にあることは間違いないんだけど、街道沿いに村が出来ちゃってて、その名も「教会広場」が、広場というより街道と一体化しちゃってるというのか。
教会のすぐ下を走っているRoute de Bourgesは、この地域の幹線道路となり、私もこの道で、地図で右の方になるシャルリからやってきたんですが、ちょっとびっくりしました。
この道、通行量も多いし、結構車も飛ばしているのか、音もうるさいんですよ。だから、教会には何の罪もないのに、笑、なんかうさん臭いんじゃん、とか思ってしまいました。
改めて。
ブレBletのサン・ジェルマン教会Eglise Saint-Germainです(5月から9月まで、毎日オープン(2019年)、後陣裏に公衆トイレあり)。
シャルリ方面から来ると、この眺めですから、見逃すことはありません。
この教会、なんといっても柱頭が面白くて、クルマの交通量と騒音に辟易として入場したのですが、その途端、のめり込みました。
というわけで、何はともあれ、内部から。
構造はこういう様子で、図の黒い部分が、建築当時のオリジナルを示しているのではないかと思います。
ファサード側、つまり図面では下の部分は、全体に白々とした、フランスらしい様子になっていて、あ、また…と思わされるのですが…。
内陣は、極彩色状態で、つながっているスペースにも関わらず、落差が激しいです。
竣工当時は、全体がこういう極彩色状態だったということなんでしょうかねぇ。内陣部分だけ、いまだに彩色を残している教会、フランスには数多く見られますけれど、実際にどうだったか、というのは、私は分かってないんです。
柱頭は彩色されていたはず、というのが定説ではありますが、本当に、教会全体、信者席の方までなされていたんだろうか。
薄暗い中では、彩色がある方が、図像が分かりやすいため、彩色の意味は今以上にあるとは思うのだけど、内陣よりはるかに広いスペース、はるかに多くの柱頭や柱があるわけで、それ前部に手をかけるということは、コストも相当かかることになるしねぇ。
さて、というわけで、この教会では、手前の方の白い世界と、彩色のある内陣スペースでは、彫り物のイメージもずいぶんと異なっています。まずは白い世界から。
面白いんです。
ちょっと、トスカーナのヴァルダルノ地域にある柱頭にも通じる、シンプルな線の一筆書きみたいなすっきりとした図像で、浮かび上がるヘタウマといってもよいような、ある意味デザイン的なフィギュアの数々。
この、角の人は、グリーンマン的なものなんだろうか?
お隣に、殻を割って出てきたようなマントの人?エニグマティックな様子も、大好物。
かと思うと、聖書のエピソード的なものがあったり。
残念ながら、教会に置かれていた解説が、達筆すぎて読めないし、例によって検索しても、細かい解説が出てこないんですよねぇ、涙。
「怪物やら獣がデフォルメされた柱頭に混じり、キリストの一生を描いた浮彫もあり、中でも最後の晩餐が興味深い」とあったので、これがそうかと思うんですが、この柱頭一つで、一生を凝縮してるってことかしら?だとしたら、どんな媒体のどういったスタイルのダイジェスト版よりもすごいよね。これを超えるダイジェストはあり得ない!
これは、どうだろう?
アトラスとダニエルが一体化した図像とか?
例によっての勝手な妄想、大全開、笑。
これもまた、ハイブリッドな様子の柱頭で、左側はどう見てもケンタウロスで、神話っぽい世界。
これが、右側の方に回ると、右端は、こういう図像って、エリザベスご訪問に見えちゃうんだけど、とすると、ケンタウロスとの間は、受胎告知の示唆だったりする?端折り過ぎだし、なんでケンタウロス?となっちゃうから、とすると、エリザベスは無関係かぁ。
どうしても、聖書というところに引っ張られちゃうけど、とすると、これなどは幼児虐殺にしか見えないよね。
それにしてもばらばらととりとめのない配置の彫り物なのが、何か言いたいのかしらん。
これはあれだな、おっぱいに蛇がかみついてるってやつ。割とよく見る図像だよね。あ、ここでは蛇じゃなくてキメラみたいな動物だね。右の角には、冒頭にもあった変形グリーンマンみたいな顔があって、何か変なものを加えているのか吐き出しているのか、という彫りです。
ここ、副柱頭の部分に、ゼムクリップ帯があるのが、目新しいです。これは、他で見た記憶ないけど、すっきりしてよいですね。
これもオリジナリティ高い~。
こんな横90度曲げ人魚、初めて見たよ。髪の毛は重力に素直だけど、おっぱいは抵抗してるのが受けます、笑。
人魚の反対側には、射手がいます。
間に置かれた植物モチーフもすごくかわいいんだけど、それにしても図像の意味が、全然分からな過ぎて…。
分からないけど面白くて、何か石工さんの世界観みたいなものを感じてしまうレベル。で、興味の赴くままにふらふらしちゃって、意外と撮影枚数が少ないのが残念です。
続きます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
日々の生活をつづる別ブログです。フオリサローネ2023の見学レポート、連載中です。
イタリアぼっち日記 ブログランキングに参加しています。よろしかったら、ポチっとお願いします。
にほんブログ村 にほんブログ村 インスタグラムに、これまでのロマネスク写真を徐々にアップしています。
Instagram, Notaromanica
テーマ:art・芸術・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術
2023/05/15(月) 18:19:13 |
サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
| コメント:0
2019年8月夏休み、フランス中部の旅、その10(ベリー)
次に訪ねたところも、本来毎日開いていることになっていたのに、そしてすでにお昼休みは過ぎている15時近い時間だったにも関わらず、開いていませんでした。
シャルリCharlyのサン・シンフォリアン教会Eglise Saint-Symphorienです。
漆喰でぬりぬりのこういう後陣、こうやって写真で見ると、周囲の風景と意外と溶け込んでいる印象も受けるのですが、実際に訪ねていてこればっかりだと、なんか食傷するとこあるんですよね。
石積みの教会でも、漆喰ぬりぬりだったところはあるんだと思いますけれど、私は「石むき出し」派です、笑。
すっきりとしたファサード。再建部分も多そうです。
扉口、鍵は閉まっていましたが、扉の隙間から、内部を見ることが出来ました。
どうやら、信者席部分はほぼ白塗りで、奥の方は逆に極彩色系。重なった開口部の小円柱をじっくり見たいところですが、遠すぎます。
最大限ズームで頑張っても、この程度です。
ちょっと面白いモチーフもありそうですが、彩色が激しすぎて、好みから外れるかもね。キラキラ系も含めてすごいですよね。鮮やか度がすごいので、割と近年修復とかお掃除がされたのかもしれませんね。
柵に阻まれた狭い視界をずらしながら見ていると、柱頭もお掃除したて感、満載ですね。
ちょっとやりすぎちゃうか?のレベルですね。結構な数の柱頭、見える範囲ではどれもがこの作り立て状態だったから、再建ではなくお掃除ですよね?
副柱頭のあみだくじ文様、面白いです。これは、始めてみるパターン・モチーフなような気もしますが、オリジナルでしょうか。
とまぁ、このくらい見えてしまったので、鍵にはこだわらないこととしました。
外部の装飾は、軒持ち送りです。
鉋屑バリエ、何か加えた動物など、外側もきれいにしていますね。
屋根直下の帯装飾、絞り出しクリームの逆ハート型、これも、ありそうだけどそうでもないやつ。ハート型が、微妙につながってなくて、絞り出し練習中とか、またはこれからオーブンで焼くためのスペース考慮、みたいな様子になっているのも楽しいです。
そして、連続三角の帯も、地味に好きです。
後陣、動物君一人以外は、執拗に鉋屑。
窓のあたりのすっきりさ、ミニマリズムというかシトー派的な。
でも、側壁の方は、もうちょっとバリエも豊富だし、窓レベルの帯も、市松バリエみたいになっています。
地味な浅浮彫系の軒持ち送り、結構よい感じですよ。
初めてイメージしましたわ、箸置き、笑い。
こういう幾何学的なモチーフの箸置き、よくないですか?
多分、軒持ち送りで、ここまで浅浮彫っぽい装飾は珍しい。普通は、もっと凹凸があるから、箸置きなんて絶対思い浮かばないもんね。
地上から肉眼では細部が見えない鐘楼は、結構装飾的。
ここの棟梁は、いぶし銀的な玄人目線の教会装飾を目指していたのかと思っちゃうような…。見えやすいところはミニマル、見えない部分に贅を凝らす。
鐘楼とか特に屋根の部分は後代かもしれないけど、いずれにしても、凝った装飾になっていてびっくりです。
三角屋根の四つの角にある小さな三角帽子、その下のブラインドアーチが、ギザギザなんだよ。やりすぎちゃうか?
ということで、教会の解説が見つからないのをいいことに、勝手な感想でした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
日々の生活をつづる別ブログです。フオリサローネ2023の見学レポート、連載中です。
イタリアぼっち日記 ブログランキングに参加しています。よろしかったら、ポチっとお願いします。
にほんブログ村 にほんブログ村 インスタグラムに、これまでのロマネスク写真を徐々にアップしています。
Instagram, Notaromanica
テーマ:art・芸術・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術
2023/05/14(日) 16:25:47 |
サントル・ロマネスク 18-36-37-41-45
| コメント:0