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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

ミラノ、フオリサローネ2013その4

ブレラ地区をぶらぶらとしました。
ブレラ美術館からすぐそばに、かつて貴族の立派な邸宅だったであろう建物があり、そこ全体が、イベント会場になっていて、にぎわっていました。




素敵な邸宅調度の中に、現代風インテリアが並べられているミスマッチ感はあるものの、なんていうこともない普通のインテリアだったり、上の写真の、最新技術かなんかを使って製作した地下足袋みたいな靴が展示されていたり、それでいきなり商売の話をしていたり、サローネって本来そういうものなんだとは思いながらも、アート的面白さを求めている目からは、余りに商業的…。
実際、中庭はお洒落なバールになっていて、無料でもないアペリティフに、なぜこんなに、というほどの人が押し寄せていて、それをみるだけでも疲れてしまう風景でした。

そういえば今回は、去年に比べると、無料の振る舞い酒が結構あって、もしかして、ほんのわずかでも景気回復?と期待させるものはありました。去年は、本当に振る舞い酒が少なかった!
ふふふ、フオリサローネの楽しさは、実は無料の振る舞い酒とか、各種ガジェットとか、そういうものにもあったりするんですよ。

なんかな~、と思いながらブレラの細道を歩いていたら、着物が目に付きました。




これは、打ちかけ?なぜ、パッチワーク状に?
と疑問を感じて近寄ると、ガラス張りのショウルームの中に着物姿の日本人の姿が見えたので、思わず立ち寄ってみました。
そして、その着物姿の方が、この作品の作者で、面白いお話をうかがう事ができました。

作者は、白石末子さんとおっしゃる富山は氷見の方でいらっしゃいます。
もともと着物のお仕立てをなさる会社をされていて、どうしても出てくる余り着物地を何かにできないか、と思って始めたのが、この着物地を使ったタペストリーなんだそうです。
もともとは、着物文化がやせ細ってきて、いまや着物の仕立てもほとんどがコストの安いアジア各国にいってしまって、日本国内では、縫製技術が失われそうな状態を危惧して、何とか日本で仕立てを継続できないか、という発想から、手仕事しかできなかった着物仕立ての技術を組み込んだミシンを作ったりするところから、彼女の仕事が始まったのだそうです。
そもそも論として、着物の仕立てが、洋服やその他のもの同様に日本以外のアジアの国に行っていた、という事実に、わたしはびっくりしました。着物って、大量生産する認識がなかったんですよね。でも考えたら、現代では、浴衣でも何でも、反物から仕立てるわけではなく、おそらくお安い着物は、仕立てあがったものをあがなうことが普通でしょうから、当然、洋服の既製服と同じことになっているのですね。
そういうことを背景に、お値段の張るものでも、国内で縫製できるルートがどんどん細っている、技術の継承が危うい、ということになっていると。そりゃそうですよねぇ。
聞けば当然のことですが、日々の生活に直結することではないと、考えもしないことです。そういうお話をうかがって、本当に面白かったです。

そして、今回もってきているタペストリー作品は、白石さんが、そういう現実も考慮して、着物の美しさを啓蒙する意味もこめて、作っているということなんでした。
でも、いくらきれいでも、インテリアとしてどうなのかなぁ、と現代物が好きなわたしとしては思わないでもないのですが、実はこの作品、置いてあるだけで空気清浄を行う、なんとかって技術が吹き込まれていて、このタペストリーをかけているだけで、十年くらい、お部屋の空気を清浄化できるんだそうですよ。技術の名前とかすっかり忘れてしまって申し訳ないんですが、さすが女性社長、見た目の美しさだけではだめ、という発想がお見事。

実際、オリエンタルで、豪華で、イタリアの、東洋趣味のあるような、ちょっとインテリでお金持ち、みたいな層には、結構受けるような気がしたし、その上、空気清浄機能付、なんていったら、かなりいいのではないかと思いました。内掛けの5分の1くらいの作品で2千ユーロくらいらしいですから、庶民には購入は難しいですけどね~。

それにしても、製作者の白石さんは、着物を見事に着こなす素晴らしい日本女性で、同じ日本人として応援したいと思いました。残念ながら金持ちの友人がいないもので、具体的には何もできないんですけれど、さて、何かよい結果を持って、日本に帰られていたらよいのですが。




こういうような、製作者さんとの交流があると、ますます楽しくなります。日本人を見かけると、どうしても声をかけたくなって、その後がどうなったかも気になります。皆さんが長く活躍してくださると、わがことのように嬉しくなるし。これもまた、素人でも製作者の世界にアクセスできるフオリサローネの楽しみ、と言えるのでしょうね。

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  1. 2013/04/21(日) 05:47:37|
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