モンモリヨン(で、合ってるかな)Montmorillon、ノートル・ダム教会Eglise Notre-Dame、 サン・カテリン・クリプタCrypte-Sainte-Catherine その2
続きです。
観光局の午後のオープン時間14時に余すところ5分、という、まさに計った通りの時間に到着。もちろん早めにあいているわけもなく、建物前の階段に腰掛けてオープンを待ちます。
14時00分。開く気配なし。ガラス越しにのぞいても、人の気配がありませんから、外にランチに出かけているんでしょう。
14時05分。誰一人近づいてくる人なし。段々いらいらとしてきます。たった5分、ラテンの国だったら当たり前なんだけどもねぇ。でも、次の予定もあるんだよ~!と心の中で悪態をつきまくり。近づいてくる人すべてに期待するものの、みな通りすぎていきます。
14時07分。こちらに向かってくる中年女性二人。あれだ、きっとあれに違いない…、いや、あれであってほしい、とすがるような目で見つめていると、時々立ち止りながら夢中でしゃべっていた二人が、不穏な気配を感じたのか、こっちを見て、ふっと口をつぐみ、鍵をかばんから取り出しながら、足早に近づいてきました!
よかった!
ここでイタリアだったら、ごまかすように愛想の一言もあるんでしょうが、このフランス人たちは、何事もなかったかのように鍵を開けて、こっちを思いっきり無視して、普通に午後のオープン、となりました。うううむ。ま、いいんだけど。
職員の一人にくっつくように押し入ったわたしは、対抗するわけじゃないけれども、愛想なく「クリプタの鍵ください!」職員は、ビジネスライクに、「はいはい、どうぞ」とすぐに出してくれたのですが、ギャランティーのためにパスポートのデポジットを求められたのには、少々ひるみました。教会の鍵とパスポート引き換えとは、不穏です。一瞬考えたけれども、ここまで来たら仕方ない、と腹をくくって、デポジットしました(もちろん、結果的に何も問題なかったです)。
さぁ、喜び勇んで教会に引き返しました。
坂道も何のその。
と思いたいところですが、本当に急坂なので、すぐにばてばて気分。入り口がもうすぐ目と鼻の先だというのに、この高さですもん。考えたら、この坂道の脇が、教会の地下、クリプタの場所になるわけですね。
教会には、三々五々と観光客らしき人々が訪れているのですが、皆さん、特にクリプタを気にされていないようで、地下への階段を見ても、そのまま通り過ぎていってしまいます。
というわけで、一人で階段を降りました。
遠隔で電気をつけることができるのかどうか知りませんが、ランチ前は真っ暗だった階段に、明かりがともっています。
古いタイプの鍵で、あけるのにちょっとてこずり、また、扉が重いので、これは開けられないのではないか、もしかして助けを求めるためにまたあの坂道往復?と汗をかきながら一人で奮闘。無事、オープン~!
さらに数段下に下りる階段があり、後陣部分だけ照明がつけられた薄暗い、柱も何もない四角いだけのクリプタ。さえぎるもののない後陣に浮かび上がるフレスコ画の美しさに、一瞬にして目が釘付けです。
近づきます。
傷んではいますが、風化したため、より淡くて繊細な色合いになっている感じもあります。
中央部には、なんとキリストではなく聖母子です。
12世紀終り頃、時代的にはロマネスクとゴシックの境目くらいの作品ということで、確かに全体のところどころに、わたし好みでない風が見られるのですが、聖母子は、とても好きでした。
小さなキリストもかわいいし、マリアの顔がとても女性的で、繊細で美しいのに聖母の包容力があるって言うか、そして愛らしい。色彩もあいまって、実に魅力的なんです。
後陣前の、いわゆる勝利のアーチの天辺にあるのが、プロポーションが変に大きい神の子羊。
これ、馬だと思っていました。どうして白馬なんだろう、と。説明読んだら子羊で、それは腑に落ちたんですが、それにしても、どう見ても馬ですよね、これ。馬と鹿を取り違えるのはあっても、馬と羊はねえ。
この羊の周りには、かつては黙示録の長老たちが描かれていたそうですが、今ではほとんど失われてしまっています。
聖母子の両脇は、このクリプタが捧げられている聖カテリンのエピソードということです。
どういうお話なのかはわかりませんが、この女性たちも、お雛様みたいにかわいらしいのです。傷んでいるのが残念。おそらくもともとはこのクリプタ全部フレスコ画で覆われていたのではないでしょうか。
いつまでも誰一人来ないし、去りがたい気持ちでしたが、いつか帰らなければいけないわけで、仕方なく腰を上げました。
この後、また坂道を降りて観光局に行き、鍵とパスポートを交換して、また教会前に停めてる車まで、坂道を登って戻りました。今思えば、なぜ車で観光局に行かなかったんだろう、って感じです。確かにクリプタにやられて、相当ボーっとしてましたけれども。本当に暑かったのに、われながら、今更ながら、ご苦労さん、と思います。まさに修行ではあり。
しかし、こんなに素晴らしいクリプタ、なぜ、誰一人として訪ねてこなかったのか、不思議でなりません。
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- 2013/05/23(木) 05:16:52|
- ポワトー・シャランテ・ロマネスク
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| コメント:4
なんと優美な!マリア様とイエス様、 なんだかダンスをしているみたいですね。本当は来るべきわが子の運命から目をそらせて悲しんでいるのかもしれないのですけれど。下左の女性もすてきです。
薄暗がりの中に浮かび上がるフレスコ画、きっと夢を見ているようなお気持ちだったでしょうね。
- 2013/05/23(木) 01:05:00 |
- URL |
- yk #79D/WHSg
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ykさん
おっしゃるとおり、夢見る気分でした。ただ、前後、坂道を何度も上って降りてでしたから、体力的には厳しかったですけれど!笑
それにしてもここは、この地域では若干知名度が劣ると思うのですが、皆さんに訪ねてほしいフレスコ画と思います。
- 2013/05/24(金) 21:28:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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一日で去るのはもったいないですね。
しばらく滞在して毎日通えるとよいですね。(ノンビリもしていられないですよね..)
- 2013/05/25(土) 06:55:00 |
- URL |
- - #79D/WHSg
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cjさん
本当に、しばらく滞在して、毎日でもいってみたい、みたいな場所ってありますけれど、ここもちょっとそういう感じかも。いつも駆け足の自分、ちょっと情けないですよ。のんびりしろよ、と思うんですけどね。
- 2013/05/25(土) 21:27:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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