ラツィオ北部のロマネスク その13
サンタ・クリスティーナ教会、または、サンティ・ジョルジョ・エ・クリスティーナ教会 Basilica di Santa Cristina di Bolsena / Basilica dei Santi Giorgio e Cristina続きです。
片隅に置かれたパンフレットをいただいて、いい加減に読んでいると、左身廊の方に、キリストの礼拝堂Cappella del corpo di Cristoというのがあり、そこに古いものがあるようなので、早速行ってみることに。10時オープンを待っているのは、その奥で鉄扉に閉ざされているクリプタにあるサンタ・クリスティーナの洞窟Grotta di Santa Cristinaだったので、手前には気付かなかったのです。
まず、そのスペースに続く入り口の周りの装飾に注目。
はやる気持ちで、危うく見逃すところでした!かわいいんです!全然宣伝されていないのに、すごくきれいに修復されていて、えらいチャーミングなロマネスク時代の浮き彫りがぎっしり。
特にアーキトレーブ部分。真ん中に神の子羊がいて、右側はマギですね。まるまるっちいフィギュアで、全体にゆるゆるしている感じが、とても好きです。あんまりきれいだから、完全にレプリカと思っちゃいました。 神の子羊の左側は、意味がよくわかっていないようです。ただ、そこに表された女性は、おそらくこの教会が捧げられている聖クリスティーナではないかと考えられています。
冠を被っているフィギュアが、多分クリスティーナちゃん。この子は、幼くしてキリスト信仰に目覚めたものの、時はキリスト教迫害時代で、幼いにもかかわらずとんでもない迫害にさらされたのだそうです。それでも決して信仰を捨てることなく殉教し、後に聖人に序せられたというお話で、ローマのサンタ・アニェーゼを髣髴とさせる物語です。この浮き彫りの女性が、幼くしてなくなった割には大人っぽく表されていることからも、サンタ・アニェーゼのモザイク画が思い出されました。
アーキトレーブの支えの部分には、福音書家之シンボルが表されていますが、このライオン・マルコも、なんだか愛嬌があります。右側の牛さんルカも、鼻面をなでなでしたくなるかわいさ。
びっくりです。こういうものへの期待は、ほとんどなかったんですから。いざ、怪しいスペースに入ります。
この一角、最初鉄扉部分の確認に入ったときは、薄暗くて、鉄扉以外はよく見てなかったんですが、ちょうどこのとき、誰かが有料の明かりをつけてくれていたせいで、あ、これか~!とすぐ目的のものに気付きました。照明を、もう少しわかりやすい場所に置いてくれたらいいのに。
比較的新しい囲いの中に、チボリオがあります。赤い四本の柱は、いかにもローマやそれ以前に遡るであろう柱の再利用だし、屋根部分に、わたしの大好きなロンゴバルド風の浮き彫りがぎっしりでした。感動。
このチボリオの中に大事そうに収められている不思議な黒い物体は、サンタ・クリスティーナの足拓…。というと変ですけれどもね、足跡。これは彼女の起こした奇跡に由来する品物で、拷問や虐待の中で、湖に重石をつけられて投げ込まれるという恐ろしい仕打ちがあったのですが、クリスティーナちゃんは、沈むどこ路が水面をすいすいと歩いてしまったという。奇跡としては、空を飛ぶとか水面歩行とかは割りとありがちのような気がします。わかりやすいですもんね。もちろんこの足跡は、ずいぶんと後の時代に作られたものでしょう。 湖とは、もちろんこの町のすぐそばにあるボルセーナ湖。クリスティーナちゃんは、この地域の出身だったんです。散々な目にあって、若くして死んで、死後聖人にされるわ、教会が捧げられるわ、あちこちの教会のフレスコ画やモザイクで勝手な姿を描かれるわ、挙句巡礼が退去して押し寄せて、迫害された町ボルセーナを有名にしたっていうんだから、なんだか哀れって言うか、浮かばれたんでしょうかねぇ。
ま、それはともかく、チボリオの浮き彫り装飾。
かなり浅い彫り物で、よくこんなきれいに残っているもんだ、と感心する保存状態です。つる草模様の間に馬か羊かよくわからない動物フィギュアが対照的に描かれていて、稚拙な感じの幾何学モチーフも愛らしさがにじみます。
あちこちの壁に、傷みが激しいフレスコ画が見られます。最も古いものは、これ。
剥落もひどいし、ちょうどチボリオに隠れる位置関係でもあり、残念ながら、ちゃんと見ていませんでしたが、おそらくちゃんと見てもこの程度だったでしょうね。アーモンドの中で祝福するキリスト像で、おなじみの図像です。10/11世紀の作品。
ということで、最近は細かに報告しすぎですね。でも忘れないためですんで、お許しください。っていうか、多分こういう部分に興味を持つ人は、ほとんどいないだろうな~。自分の(ロマネスク)病の重さを感じます。
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2013/06/18(火) 05:16:05 |
ラツィオ・ロマネスク
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| コメント:8
corsaさん、いいですよぉ。それを楽しんでる約1名がここにおります。パワー全開でメモってくださいマセ。
2013/06/18(火) 00:30:00 |
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otebox #79D/WHSg
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oteboxさん
ありがたいお言葉です。メモ代わりですが、それが楽しんでいただけるなら、本当に励みになります。なんか時々、なにやってるんだろ、と思っちゃいます。
本来はサイトにまとめていくのが使命(常に修行の気持ちが入るのも、これもまたににやってんだろ、状態ですが、笑)と思いつつ、今はブログ書くのがやっとこなので。
2013/06/18(火) 21:54:00 |
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corsa #79D/WHSg
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たかしさん、ここの浮き彫り、かわいいでしょ。ヘタウマっていうより、若干ウマが勝つんですけれど、下の方にある動物フィギュアは、ヘタが勝つわたし好みでした!
2013/06/18(火) 21:55:00 |
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corsa #79D/WHSg
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わたしも隅々まで読んでおります!
なんというか、一緒に行って説明されているみたいな気分にらなります(^ ^)
チボリオの赤い柱は、ローマの色がそのままなんでしょうか、その上にランゴバルド風の装飾、歴史の重みがすごいですね。
聖人のお話は怖いものばかりですね。。。
2013/06/19(水) 00:57:00 |
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- #79D/WHSg
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お写真、何枚あっても多すぎということはありません。いつも大までしてみせていただいていますから。
今日の入り口彫刻もチボリオの彫刻も素晴らしい。チボリオ右側面や柱頭も拡大して(少しぼやけるのですが)拝見しましたよ。
2013/06/19(水) 01:28:00 |
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yk #79D/WHSg
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CJさん~、ありがとうございます。
ちゃんと説明できなくてすみません。ガイドの話も上の空ですからね~笑、ちゃんと説明できるわけがないですけど。
赤い柱って、なんか印象的ですよね。これは石の色が赤いんだと思います。
2013/06/19(水) 21:52:00 |
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corsa #79D/WHSg
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ykサン、励みになります。
写真は、もっと大きいのを乗せたらいいんでしょうけれど、重くなると自分も面倒なもんで、すみません。ただ、サイトにまとめるときは、余り写真掲載もできないので、より多くの写真を掲載するのも、このブログの目的ではあります。
そういう意味では、もっと周辺の風景も撮影しとけばいいのに、といつも後悔先に立たず状態です。全般撮影した方が、記憶もたどりやすいんですよね。
それにしてもこのあたり、フランチジェーナ街道なので、当然とはいえ、これまで余りチェックしていなかったので、今回びっくりしました。次々、驚きの連続です。
2013/06/19(水) 21:55:00 |
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corsa #79D/WHSg
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