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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

アックアペンデンテ2 待望のクリプタ!

ラツィオ北部のロマネスク その16
Acquapendente サン・セポルクロ教会とそのクリプタChiesa e Cripta di San Sepolcro、続きです。




この教会、今ある入れ物は、すっかり新しい時代のものとなってしまって、わたしを始め、中世に興味のある人にとっては、見る影もない姿なんですが、7/8世紀の遺構がクリプタに残されています。そもそも、サン・セポルクロというのは、聖地エルサレムのサン・セポルクロを模した教会だからこその命名。同時代における複数のサン・セポルクロの中でも、このアクアペンデンテのものは、構造的な相似性から最も重要であるとされているものらしいです。
というようなお話は、例の親切極まりない観光局のお兄さんに聞いたのですけれど。ガイドブック的なものがないか尋ねた際、2年ほど前に、ここでサン・セポルクロのコンファレンスが開催され、その関連書籍が出版される予定だけれども、まだ出ていないということで、教会はもちろんとして観光局にも、何一つまともな資料がなかったのでした。これはまったく持って残念なことです。

そもそも、どうしてもここを訪ねたいと思ったのは、愛用しているツーリング・クラブの緑ガイドブックに掲載されていた小さな写真。小さいのにとても印象的なクリプタの姿に、どうしてもここだけは行かねば、と思ったのです。

で、散々じらされた挙句、いよいよアクセスです。
と思ったら、真っ暗…。




祭壇の左側に階段があり、扉は思いっきり開いておりますが、真っ暗です。扉が開けられているのだから、明かりの設備があるはず、としばらくきょろきょろとして、正面の柱の脇に小さい看板を見つけました。
「クリプタの明かり」と、ご丁寧にも、イタリア語、フランス語、ドイツ語、英語で書いてあって、左をさす矢印。でも、その看板の左側には何もないのです。鍵を開けた人は、祭具室の奥の方で、大声で携帯電話中。すみません、と声をかけても聞こえないようです。周辺を相当うろうろとした挙句、まさにその祭具室の入り口脇に、扉に隠れるようにして、有料の明かり設備がありましたとさ。確かに矢印の方向は間違ってないけど、矢印から5メートルとか離れているとこにあっても…。
親切なんだかそうじゃないのかわからない…。
いざいざ。










どうでしょうか。
わたしは息を飲みました。気持ちがわなわなして、あああ、来てよかった、しつこくがんばって待ってよかった、と涙が出そうになりました。写真で見た印象は間違ってなくて、それどころか、想像以上に素晴らしい柱の森。
広いです。24本の円柱が重なり合うようにして、立ち並んでいる姿は壮観です。
そしてどの柱も素晴らしい浮き彫りの施された柱頭を頂いています。










雄羊や、鷲や、植物モチーフ。どれも彫りがしっかりとしていて個性的です。全体に柱の背が低くて、柱頭も低い割には、かなりでかいので、迫力があります。聖書のエピソードなどはなく細かい内容はありませんので、技術的にはそれほどの石工の作品ではないのかもしれませんが、とにかく力強いです。

おなじみの二股人魚や牛の頭部など、稚拙といってもいいような作品。







多数の作品が、ヘタウマというより、ただヘタっていう感じでもあるんですが、でもかわいくって楽しい。
調子に乗って、写真たくさん載っけて見ました。感動がちょっとはわかってもらえるかな~。
あんまり嬉しかったんで、通常に比べるとずいぶんと長い間、しけこんでいました。たまに、他の人たちも入ってきたりしましたが、皆さん割とあっさりと出てしまうので、ほとんど独り占めで、だからますますうっとりして、立ち去るのがもったいなくて。

一度出て、本堂内をちょっとうろついたら、面白味のない建物の中にも、高い位置にある柱頭に昔の彫り物が残っているのを発見したり。でもおそらく、一時期バロックでぴかぴかにされちゃっていたんではないかな、と思います。
最後にもう一度、クリプタ入り口に戻ると、やはり明かりの位置がわからずうろうろしている人がいましたので、あそこだよ、と教えてあげて、その人の1ユーロを利用して、また見学。もしかして人のお金で明かりをつけさせるすごいずうずうしいやつ、と思われたかも!

クリプタ好きな方には、絶対にお勧め。
この旅では、当初でも述べたように数多くのクリプタに出会えましたが、やはりここがぴか一でしょう。

ロマネスクは、以下でどうぞ。
ロマネスクのおと

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  1. 2013/06/21(金) 05:39:25|
  2. ラツィオ・ロマネスク
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

No title

わたしも写真をみて息を飲みました!
まさに中世の厳かな空間ですね素晴らしいですね。。。
  1. 2013/06/21(金) 00:57:00 |
  2. URL |
  3. - #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

外観からはまったく期待の持てないような教会なんですが、このクリプタ。この造形ならば、待たされたかいがあったという物ですね。
素晴らしいです。
  1. 2013/06/21(金) 13:34:00 |
  2. URL |
  3. クリス #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

すごいですね、このクリプタ。柱列も壮観なら 天井のリブの太さ、この武骨さにも圧倒されました。写真でさえ感じるのですから実際にここにたったときの感じは さぞや、と思われます。彫刻がなくてもいいくらい。この羊がまたインパクトがあります。二股人魚もいいですねえ。
  1. 2013/06/24(月) 00:44:00 |
  2. URL |
  3. yk #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

CJさん
ここは、写真のイメージだけで出かけたのですが、やはりひきつけられるものがあったのでしょうね。本当に素晴らしかったです。まぁ、異常に待たされたせいもあったかも、ですが。笑
  1. 2013/06/24(月) 22:25:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

くりすさんもいかれましたか。トスカーナ南部を回られたときでしょうか。今回、ソヴァーナのほうまで行こうかと思いつつ、いろいろ考えて断念しましたが、このあたりはまさにフランチジェーナ街道沿いでずっと続いているので、やはりこのような行程で、いつか行きたいと思いましたです。
  1. 2013/06/24(月) 22:27:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

ykさん
おっしゃるとおり、ここは彫刻がなくても同様にインパクトがあったでしょう。クリプタはよく林にたとえられますが、ここでほど、そう感じた場所はなかったように思います。ラツィオ北部、クリプタの宝庫です。
  1. 2013/06/24(月) 22:28:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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