モデナ南部1
朝っぱらから赤ワインを1本あけて景気をつけて、いよいよロマネスク訪問です。 まずは、ちょっと立ち寄った町から。 カステルヌオヴォ・ランゴーネCastelnuovo Rangone
いたって普通の町だったのですが、何とはなしに感じがよくて、活気があって、よい雰囲気でした。特に町の中心の広場に置かれた、このブロンズのぶーちゃんが、なんとも愛嬌です。妙にすっきりほっそりしたあんよでお洒落に歩いている様子がねぇ。
後ろにあるのは、今は町役場になっていますが、中世にはお城だったらしい建物で、様式的にも13世紀くらいを起源とするものでしょう。このぶーちゃんのいる辺りの床面に、10世紀にはここを川が流れていた、というようなことがラテン語で記されたプレートがはめ込まれていました。 お城の周りは、自然の川を利用した濠になっていたのだろうと想像されます。どういう町だったのかまったく知らないのですが、中世当時、このあたりはお城がひしめいていました。つまり、小さな領主がたくさんいる群雄割拠の土地だったんですよね。歴史をしのばせるたたずまいに、しばしトリップ気分でした。見た目がすごく中世だらけ、というわけではなくても、確実に何かが残ってしまう、石の文化ですよねぇ。 あ、なぜぶーちゃんかといえば、やはり生ハムだからじゃないでしょうか、このあたりの産物の代表として。
さて、まずは、この近所の村にある礼拝堂を目指します。 レヴィッツァーノ・ランゴーネLevizzano Rangone。 ずいぶんと小さな町ですが、やはりお城があり、観光的にはそちらが有名らしいようです。 そして町の真ん中には、大きくて新しい立派な教会が建っていて、ちょうど結婚式の準備らしく、花やレースの飾り付けがされているところでした。わたしが探しているのは、どうやら小さな礼拝堂なので、間違いなく町の外にあるはず。 ちょっと停まって、掃除をしていたおじいさんに尋ねました。
こういう時って、さくっと「知らない」と言われるか、またはすごく詳しく教えてくれるかのどっちで、このおじいさんは幸いにも後者でした。それも、すっごく詳しくてびっくりしました。 「ここを500メートルくらい行ったら、左に曲がる道があるので、左、そしてすぐに右、そこを1キロくらい行くと左に入る道があるので左で、1キロくらい行くと左側に見えるよ、小さな古い教会で、ロマネスクのものだよ。」と言った具合。 わたしは、道を聞いたときって、すぐに頭に中で日本語変換しないとわからなくなってしまうのです。生来の方向音痴のせいで、空間把握が苦手だからじゃないかと思うのですけれど。このときも、おじいさんが余りに詳しすぎたので、言葉を反復しながら脳内翻訳していたところ、わかってないと思われたらしく、紙と書くもの!と言われ、差し出したのでした。ちゃんと地図を書いてくれるかと思いきや、おじいさん絵心とか一切ないみたいで、ひょろひょろと線を書いて、改めて説明してくれましたが、自分でも、地図が書けないことにすぐに気付いたようで、結局また口頭で説明を繰り返していました。 いい人だったなぁ。まぁ、地元で大切にしている古いものを訪ねてくれたのが嬉しかったとか、若干はそういうことも会ったのかもしれません。
大切にしているんだろうと思ったのは、おじいさんの説明にしたがって走り出したところ、道を曲がるたびに、教会の道しるべが建っていたんです。それほどの建造物のはずもないのに。 そして無事到着。 サン・ミケーレ・アルカンジェロ礼拝堂Oratorio di San Michele Arcangelo(大天使ミカエルの礼拝堂)。
お隣には住宅もあり、おそらく建てられた当時のような孤高のロケーションではありませんが、周囲は緑に囲まれて、高台なので眺めもよく、美しいたたずまいです。 目的は、ファサードと、側面扉の装飾。
ファサード。
とても地味ながら、おなじみの盲アーチがかわいらしく、ずいぶんと修復を施されているのによく残ったものだ、という遺構です。クローズしていたのは残念でした。ここまできれいにされているから、中は漆喰の真っ白で何もないだろう、と勝手に思ってしまったのですが、後から資料を見たら、13世紀のフレスコ画があるとあったので、ちょっと残念でした。もしかして、お隣のお家に尋ねれば鍵を持っていたかも。
不思議だったのは、でこぼこになっている下の方。
こういう田舎の小さい礼拝堂だと、この下部がちょっと出っ張って、ベンチのようになっていたりすることがよくあります。ここもそんな雰囲気なのですが、削られたようなそういう感じにでこぼこになっていて。傷んで摩滅するには大きすぎる塊なので、マテリアルとして再利用するために、剥ぎ取られてしまったのかもしれません。 上部や側面のレンガ部分は、後代に使われた素材で、元は、このファサードの凝灰岩風の石ではなかったかと思います。
そしてもうひとつ。
脇扉のアーキボルト装飾。植物浮き彫りが、一部ながらきれいに残っています。ファサード扉周りにも、同じような浮き彫りがあるのですが、そちらは傷みが激しくて、修復も施しようがなかった感じ。
わざわざ訪ねるには、がっかりの内容かもしれませんが、ここだけを訪ねたわけでもないし、全体のたたずまいがとてもよかったので、意外に満足しました。 なんせ眺めがいいんです。
ランブルスコになる葡萄がびっしり。季節的にも緑が美しいです。 ちょっと大きめに。
既に収穫された麦の名残と、葡萄の緑と、空の青と。 礼拝堂のファサード側に広がる眺めです。建設当時とも、さして変わらないのではないかと思われるのですが、どうでしょうね。
スポンサーサイト
2013/06/27(木) 05:40:49 |
エミリア・ロマーニャ・ロマネスク
| トラックバック:0
| コメント:0