ラツィオ北部のロマネスク その19
トゥスカニア1
ずいぶんと寄り道が激しく、すっかり離れちゃっていましたが、ラツィオ北部の旅、再開します。まずは、ラツィオ・ロマネスクの中でも、最重要な町のひとつトゥスカニアを、降ったりやんだりで鬱陶しい雨模様の中、訪ねます。
小高い丘の上に町があるんですが、周囲を取り巻くなだらかの丘の連続、その合間を縫って走るドライブ、晴天だったらさぞや気持ちよいだろうなぁ、というロケーションです。曇りでも、いや、雨でも、やっぱり美しいんですけれど、でも、緑や、ちょうど木の芽時花時だったので、そういう自然の色をめでるには、やはり晴天に限る感じがしました。
この町の起源はとても古くて、紀元前3世紀、おそらくエトルリア起源の古い道が一部、今の旧市街のすぐ外側に保存されていました。
クロディア通りVia Clodia。歴史的な道であるアウレリア街道とカッシア街道を結び、ローマとこのあたりの土地の往来に使われた道だそうです。ローマ時代は、幅が3メートルもある広い道だったそうです。
往時は、この街道沿いに、旅人のための宿泊所、救護所、レストランなどがびっしりと立ち並んでいたとか。今、この道はところどころで名残を見せているようですが、そんなに栄えている場所はなさそうなので、もしかすると、ローマや中世の時代の方が、今よりも激しく人々の往来があったのかもしれません。
この町には、ロマネスク時代の教会が、それもひどく立派な教会が、なんと二つもあります。どちらの教会も、びっくりするくらいよく保存されています。特に、この町が、近年(1970年代)、地震で大きな被害を受けたことを考えると、よくも倒れなかったものだと感心するほど。
その教会は、二つとも、町外れにぽっつりと建っています。
全体に小さくてわかりにくいかも知れませんが、ほぼ中央に建っているのがサン・ピエトロで、そのすぐ右下にあるのが、サンタ・マリア・マッジョーレという、中世期の二大教会です。左の方に見えるのは、古い城跡と城壁です。
これは、高台にある旧市街の端っこからの眺め。
なぜこういうロケーションになっているか、というと、つまり中世期まで、町は、上の写真の部分、教会や城の辺りに広がっていたということなんです。
この風景の部分が、丘になっていますけれど、今の旧市街部分も、ちょっとした谷を挟んでやはり丘で、もうちょっと全体に大きくて背も高い丘なんです。昔の町は、サン・ピエトロが最も高いポイントに建つ感じで、丘の上というよりも低地部分に広がっていたようなのですが、環境が余りよくなかったために、徐々に今の場所に映ってきたということのようです。もちろん防御の意味もあったのでしょう。
実は、教会を見学した後、旧市街に入って、すぐに目に付いた小さな本屋さんに入りました。現地でしか入手できない書籍は多いですから、こういうチャンスがあれば、必ず立ち寄ることにしています。狭い店内に親切そうなおじさんが一人。見回すと、どうも中世のものが目立つんです。声をかけられたので、中世、特にロマネスク関係の本があるかどうか尋ねたら、おじさんの目が輝いて、そこから中世談義が始まりました。
なんと、その本屋さん、中世専門だったんですよ。おじさんも、十字軍のアマチュア研究家だということでした(でも失礼なわたしは、その話をフォローせずに、ロマネスクの話にまい進してしまって、後からこそっと言っていたのを思い出し、非常に反省しました)。
古地図等を引っ張り出してきて、トゥスカニアの歴史を様々な角度から教えてくれました。
わたしの大好きなタモリ倶楽部で、タモリさんが古地図片手に江戸を歩くというような企画をよくやっていますが、イタリアでそういうのは、初めて。町の古地図もほとんど見たことがないように思います。
この本屋さんのおかげで、実に楽しくて充実した時間を過ごさせていただき、トゥスカニアが大好きになりました。残念なことに、その場で買うべき本が、確か一冊6ユーロ程度の小冊子しかなくて、大変申し訳ないことでした。そういえば、後からサイトで検索してみようと思いつつ、すっかり忘れておりました。
こうしてブログで旅を後追いすることで、当時走り書きしたメモ等から、いろんなことを思い出しています。まさにこのために、ブログを書いているようなもので、久しぶりに、意義を感じています。
薀蓄が長くなってしまいましたが、次回から教会を訪ねます。
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- 2013/09/20(金) 03:21:31|
- ラツィオ・ロマネスク
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| コメント:2
古地図大好き人間です。
古地図一枚から歴史が見えてくる事もあります。
ローマの道路建築は当時は世界一の技術水準でしたよね?
ブリテン島にも当時の古道が現存していましたよ!
- 2013/09/20(金) 00:29:00 |
- URL |
- 古代遺跡めぐり<山下亭> #79D/WHSg
- [ 編集 ]
古地図を読めると面白いですね。山下さんは古代専門とお見受けしましたが、ローマ時代の地図ってあるんですか。あれだけ土木工事好きなローマだし、当然あるのか。エトルリアとか、ローマ以前はどうなんでしょう。いずれにしても、相当すっきりしているんでしょうねぇ。
- 2013/09/21(土) 23:21:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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