マルケ・ロマネスク、その9
サンタ・マリア・ア・ピエ・ディ・キエンティ修道院Abbazia di Santa Maria a Pie' di Chienti、続きです。中に入ります。
息を呑みました。
薄暗い中でも、石の質感がすごく、どっしりしていて、基本が古い古い建物であることが分かります。
そんな雰囲気に浸って、内部をうろうろしていたら、徐々に人が集まってきて、ミサが始まりそうな様子が濃厚になってきたので、焦りました。
側廊から、上への階段があったので、追い出される前に、と思い、慌てて、上がってみました。
構造としては、内陣部分が二層になっているので、上部から、ファサード方向に、下の中央身廊を見下ろす形になります。
両側廊の上部は、いわゆるマトロネオ様式で、全体に二階になっています。外光がほとんど入らないので、ほとんど真っ暗。
そこへ、おじさん登場。
変な人だったら嫌だな、と一瞬ひるんだのですが、なんと、明かりをつけてくださいました。
おそらく教会守の人で、ミサのために、明かりをつけようとしていたのだと思います。そして、私たちを発見して、なんか嬉しかったようで、ミサをそっちのけで、ガイドを始めてくれたのです。
上は、二階部分にもある周回廊のようなスペース。
屋根は新しく葺かれたもののようですが、壁のところどころに、古い彫り物がはめ込まれていました。おじさん、歴史にも美術にも、さほど詳しくはなさそうでしたけれど、ほら、あれをごらん、こっちにおいで、ととにかく親切。
彼が一番自慢だったのは、この二階部分の後陣に大きく描かれたフレスコ画。
絵は、かなり後代のもので(14世紀以降と思います)、まったくわたしの好みではなかったとは言え、明かりがなかったら、絵のあることすらわからない状態でしたから、見られたことが嬉しかったです。
上の写真の右の方に、窓が見えますが、アラバスター板がはめられていますね。これでは、暗いわけです。不便だけど、このアラバスターの窓に出会うと、当時の雰囲気が感じられて、とても嬉しくなります。
そうそう、写真の撮影も、かえっておじさんを喜ばせたようでした。撮るなという代わりに、あれは?ここは?と、勧められまくり。後から分かったのですが、実は明かりも、ちゃんと有料でつけられるようになっていたものでした。
フレスコ画自慢のおじさんには悪いけれど、わたしは、アラバスターの窓や、絵の下に見られる古い壁やブラインド・アーチの方に関心を奪われていました。
二階の正面には、パイプオルガン。
壁は、付け柱が美しいですが、上部は、相当修復や再建の部分が多そうですね。
パイプオルガン側まで、歩いていきました。おじさんが、正面からフレスコ画を見せたかったんです。
美しいです!フレスコ画ではなく、身廊と、仕切りの柱と壁とアーチとが、素晴らしいのです。照明で、全体がくっきりして、祝祭のような空気感に、さらに興奮しました。
このとき、既にミサが始まっています。
下に下りて、出て行こうとしたら、おじさんが、こっちは見たの?見て行きなさいよ、大丈夫だから、と小声で、内陣にいざなってくれます。
こちらが、下の後陣、周回廊の部分となります。
クリプタのような雰囲気があります。柱が太くて、石むき出し。ミサをやっているだけに、ゆっくりと静かに歩きました。回廊を隔てている柱が太いので、向こう側(つまり、ミサが行われている側)が、意外と見えなかったりするのが、不思議な感じでした。
これなんて、森、ですよね。柱頭の林を歩いている感じです。素敵~。
で、うっとりしながら、本堂に出てきました。
いつの間にこんなに集まったんだろう、という数の信者さんがいらっしゃる脇の方で、ちょっとお説教を立ち聞きしていました。どうも、興奮しちゃったし、教会の雰囲気にどっぷりとしてしまって、そのまま出て行こうという気持ちになれなかったんです。
そうしたら、いつの間にか信者席に座っていらした先ほどのおじさんが、ささっと出てきて、聖書を渡してくださいました。
Vespriのミサ、唱和のところでした。ここだから、って教えてくれた箇所を、つっかえながらも、皆さんと一緒に唱えて、とても安らいだ気持ちになりました。こうやって積極的にミサに参加したのは、小学校低学年の頃に、近所の教会に通っていた以来じゃないのかなぁ。
南チロルで、ヴェスプリのミサに参加しないと天井が見られない修道院教会で、ミサに参加しましたが、それよりもずっと嬉しい気持ちになれたミサでした。本来の信仰ってこういうもんじゃないの、とか思っちゃいました。
みんなとっても寛容で、観光客に決まっているわれわれを気にもせず、あまつさえ、自分たちの教会をちゃんと見てね、よかったらミサにも参加してね、という空気が充満しているから、こっちも、真剣に見るし、参加する。
唱和タイムが終わった頃、ミサは続行中でしたが、家路(ホテルまで、ですが)が遠いこともあり、失礼してきました。
最後にもう一度、後陣外観を。
下の回廊、上の回廊、そして天辺が、上のフレスコ画のある後陣となるわけですね。二階部分の背が、結構高いことが分かります。やっぱりイタリア的構造だったら、これはクリプタだな~。
素敵な教会、絶対お勧めです。
そういえば、この近所には靴のトッズの工場アウトレットがあったようなので、靴に興味がある人も、ついでに寄れますよ。わたしは、結局時間切れで行けませんでしたが。
いきなり下世話な話題ですが…。靴だけは好きなので、行けなかったのが、結構残念だったんですよね~。あれ、普通に買うと、すごく高いし。
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- 2014/01/31(金) 06:39:13|
- マルケ・ロマネスク
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| コメント:8
よかったですね~~!
私は、フレスコ画に気を取られ
この黒いマントのご像はどなた?なんておもいましたよ。
- 2014/01/31(金) 07:51:00 |
- URL |
- ガビィ #79D/WHSg
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お久しぶりです。
いいですねえ。この教会。 柱のどっしり具合が実にいい。
壁に ランゴバルドの彫刻がはめこまれているのもいい。
いい出会いも あって すてきな教会巡りでしたね
- 2014/02/01(土) 03:43:00 |
- URL |
- yk #79D/WHSg
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ガヴィさん
さっすが~、見所がちがいますね。黒いマントの方、どなたなんでしょう。男性ですよ。教会はサンタ・マリアだから違うし、地元の聖人?とっても若くて、かわいらしいお顔なんですよねぇ。
- 2014/02/01(土) 22:24:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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YKさん
ご無沙汰しております。
素敵な出会いがあると、その場のイメージがグーンとアップするし、何より多くが記憶に残ります。マルケでも、すべてがそうではないのですけれど、田舎で観光的に地味な分、素朴な人々が多くて、記憶の残り方がよいのですよ。
それにしても、この柱の重量感、写真であらためてわたしも感動している次第です。
- 2014/02/01(土) 22:26:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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ガイド付きになったとは、ここ、地域住民と密着してる感じの良い教会なんですよね。
良かったです。
特に気に止めなかったので、しっかり見てないのですが、黒マントの聖人は、ここがベネディクト会に属する事から聖ベネディクトか、その会派の聖人だと思われます。と私は解釈してました。違っていたらごめんなさい。
- 2014/02/01(土) 23:11:00 |
- URL |
- クリス #79D/WHSg
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クリスさん
いつもおじさんがガイドしているということはないと思いますけれど、運がよければ、楽しくミサにも参加できるということですね。
ベネディクトさんかな。こういう像だと、よくあるのがフランチェスコさんですが、これは、そうは見えないしね。誰でしょうね。
- 2014/02/02(日) 23:12:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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corsaさん
若くてかわいらしい!うわ~~ん アップでみたかったわ。
聖ベネデクトだったらとってもいかめしくっておじいさま
でも、若い時もあったのよね。
聖人のご像やご絵は
そのポーズや持っているものなどでだいたい表現されています。
レデンプトール会の聖ジェラルド
ご受難会の聖ガブリエル
さまたちも 若くてかわいらしいのです。
だれでしょうね。
- 2014/02/05(水) 03:38:00 |
- URL |
- ガビィ #79D/WHSg
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ガヴィさん
分かりました!
では、次回から、若くてかわいらしいご像を見かけた暁には、必ず、アップで撮影させていただくことにします!期待していてくださいね。そういわれれば、時々とても愛らしい方、いらっしゃいますね。
そっかー、あらたな視点だな~。
- 2014/02/05(水) 22:31:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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