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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

カタリ派、積読しておくもんです。

ラングドック・ロマネスクその11

ベジエBeziers続きです。
前回の記事で、この町がカタリ派に関係した場所であることに触れました。実は、以前買ったまま、積読してあるままの本の中に、カタリ派の本があり、今夜斜め読みで紐解いてみました。
買ったときは、中世関係だし、とりあえず知識として持っておくのも悪くない、という程度で買ったものですが、積読、しとくもんですね。カタリ派の歴史、ひいては中世後期のヨーロッパ辺境の歴史を学ぶ最適の教科書になりそうな内容で、学術書的なタイトルとお値段の割りには、とても読みやすい文章。もう一冊、こちらも内容は知らずに、作者名で買った本とあわせて、カタリ派をざっくりと知りたい向きにはお勧めと思いますので、ここに記しておきます。現在も、現役の本かどうかは分かりませんけれど。

「異端カタリ派と転生」原田 武(人文書院)
「路上の人」堀田善衛(出版社、忘れました)

前者は、カタリ派の歴史、時代、そしてカタリ派の思想的なものが、平易な文章で非常に分かりやすく記されています。キリスト教の異端とされていたカタリ派が、仏教思想に通じる内容を持っていたり、禁欲や菜食などに対する異常なまでの厳しい戒律など、かなりユニークで面白いものだったことが分かります。
後者は、小説なので、カタリ派の具体的な思想などの説明ではないのですが、フランスのこの地域を舞台としたロードムービーとでもいった趣で、風景や人のあり方が浮かび上がってくるような、そういう内容になっています。

さて、カタリ派に思いを馳せながら、前回パノラマで目にしたカテドラル・サン・ナザレCathedrale Saint Nazaireに向かいます。




近づいてみると、これはもう、ロマネスクからはかけ離れた建物になっている、ということが分かります。




でもこの建物、実はかなり長い間かけて増改築が繰り返されていますので、一部12世紀および13世紀の部分も残っていて、それが、今入り口となっている北側面の一部と、そこから入ってすぐのあたりとなります。




図でいえば、茶色の部分がそれで、オレンジは13世紀後期となります。




その時代の後陣は、壮大なゴシック。背も高く、光がふんだんに入る明るい構造です。




古い時代の場所には、相当高い位置ですが、怪しい柱頭が見えます。
初期キリスト教時代かしら、と思われる、こんな素敵な石棺がさりげなく置いてあるのも手伝い、これは、とよく目を凝らしたところ、やっぱり。




マギらしい三人組とか、ドラゴンに囲まれた人物フィギュアとか。




ゴシック以降らしいものが多かったので、本来はもっとロマネスク時代のものがあったのではないかと考えられます。
そして、入り口からすぐ、筒状になっている場所に、螺旋階段発見。




これをがんばって登ると、ヴォルトの付け根にある面白柱頭を、間近に見ることができるのです。





なんか、かわいらしいですよね。時代はよくわからないんだけど。
筒状の部分が終わったところで、ちょうどこれらの彫り物が観察しやすい場所が踊り場みたいになっていますが、さらに、奥の方に、上に向かう階段があります。既に太ももが疲れていましたが、ここまできたら登らないわけには行かない。で、がんばって進みますと、なんと屋上に出たのでした。




こういう仕掛けってことを全然知らなかったんで、結構驚き、嬉しくなってしまいました。こんな仕掛けを無料で提供するって、ベジエ、太っ腹です。それにしても螺旋の続き具合は激しく、太っている人は相当困難ではと思われる狭さ。気持ち悪くなるくらいというか、気が遠くなるくらいというか。ぜえぜえ登りながら、それにしても螺旋階段を考えた人はすごいなぁ、と感心しました。自立の塔だと、限界がありますが、建物の内部であれば、建物がある限り、最小のスペースで、どこまでも登れるという事になるような。重量の問題とか出てくるから、そんな簡単じゃないのかもしれませんが。それにしても、構造が超単純な割には、すごいです。

下りで、足、パンパンになり、そのあとの運転が心配になるくらいでした。

で、今夜。見学中に考えていたのはそんなことばかりだったんだぁ、と先述の書籍でカタリ派の歴史を垣間見て、自分にあきれる気持ちです。
まさにこのカテドラルが、ベジエにおけるカタリ派大虐殺の舞台だったわけで。
1209年、ラングドック各地で巻き起こった異端狩りの際、ここベジエの町では、カタリ派の人々がいるというだけで、無関係の人も含めた老若男女、15000人余りが虐殺されたのだそうです。今も残るかわいらしい柱頭たちは、そのときも現場にあって、上から血の風景を見下ろしていたのです。
町の造りが、なんとなくちぐはぐなのも、おそらくそういう歴史を物語る痕跡なのです。

おなじみのロマネスクは、以下でどうぞ。
ロマネスクのおと

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  1. 2014/03/20(木) 06:21:52|
  2. ラングドック・ルシヨン
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

No title

歴史的にベジェ、この町好きですね。ロマネスクとは別に行きたい場所です。むしろ家内がイタリアに嵌っちゃったから、当面フランスはないだろうけれど。カタリ派の跡は訪ねてみたい場所のひとつですね。
  1. 2014/03/23(日) 07:20:00 |
  2. URL |
  3. クリス #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

クリスさん
なんとなく取りとめはないんだけど、面白い町と思います。カタリ派に関しては、必至の町でしょうね。是非いつかいらして、感想を聞かせてほしいものです。
奥様、イタリアにはまっちゃいましたか。ということは、今後も、当分イタリア行脚が続きますか?楽しみですね。
  1. 2014/03/23(日) 22:23:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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