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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

笛吹き三人組の正体

ルシヨン・ロマネスクその3

いよいよ、カベスタニー博物館Centre de Sculpture Romane - Le Maitre de Cabestany、訪問です。正確には、「ロマネスク彫刻センター、カベスタニーの巨匠たち」みたいな名称になるのですね。




10時開館ですが、5分ほど前に着いてしまったので、のんびりと開館を待っていたら、10時ちょうどに女性がやってきて、10時2分、扉を開けてくれました。英語での会話がぎりぎり成り立ち、パスポートをくれたり、簡単に館内の説明をしてくれたり。とても親切な方でした。
早速見学開始。




とは言え、実はここがどういった博物館であるのか、事前にはよくわからないまま、スタートしてしまって、いきなりずらずらと並ぶ展示品にたまげてしまいました。

もうご存知の方が多いと思いますが、カベスタニーとは、ロマネスク時代に、フランスのピレネー東部、オード、スペインはカタルーニャとナヴァッラ、そしてイタリアはトスカーナの各地域に、比類ない彫刻を残した巨匠のこと。ただこの巨匠は、名前が一切残っていない無名の方。イタリアだと、ロマネスクの彫り物の巨匠の多くは、北部コモ地方出身者であり、全員が名を残しているわけではないにしろ、サインを残している人もいたり、その後輩出した有名人を系統的に辿ることが、ある程度できていることに比べると、このカベスタニーの人は、本当のところ、というのが、おそらくほとんどわかっていないのです。そのミステリアスなところがまた、魅力となっている部分もあるのかもしれません。

この博物館には、そのミステリアスなカベスタニーの巨匠が、ヨーロッパ各地に残した作品のレプリカが、一堂に会しているのです。
ということは、行って初めて知ったわけで、最初は本物と思って、たまげてしまったわけです。

いきなり、サンタンティモのダニエルさんで、なるほど、と思いました。




低い位置に大きいサイズで置いてありますから、細部を観察するには最高です。実物大なのかな。オリジナルは相当高い位置にあってなおでかい、と思わせるものだから、目線近くにあれば、大きいに決まっていますね。
目が、このカベスタニーの教会の彫り物と一緒だ。普段わたしが好む、ヘタウマとかかわいらしい彫り物とは、ずいぶん異なるタイプの作品です。




ラングドックで最初に訪ねたサン・パプール修道院のもの。そうだっけ、と確認してみたら、ああ、本当だ(下)。そういえばあそこは、カベスタニーのすごい柱頭が、後陣外側についているという豪華な教会でした。




説明書きがフランス語オンリーというのが、泣けました。まぁ、少しは分かるんですが、読むには根気が要るもんで。
サン・パプールは、カベスタニーの巨匠が働いた場所としては最西端だそうです。この南仏のカタルーニャ、スペイン側では、ちょっと北上したのに、フランス側ではずいぶんと狭い範囲だけしか移動していない割りに、トスカーナにいきなり行ったり。海路で移動したということなのでしょうねぇ。トスカーナで、あのかわいらしい不思議ヘタウマ系を持って返ってきたのか、職人間交流があったのか。
なぜ、もっと西や北に行かずに海に出たのか。またはイタリアからやってきた職人さんが、カベスタニー風を学んで帰ったのか。なぞが広がり、楽しくなってきます。

こちらは、今見ると、ちょっと残念な作品。




博物館で見た時点では、もともとチェックも入っていない教会の名前だったので、どこにあるものかもわかっていなかったんですが、実は、この柱頭のあるはずの教会こそが、出発の朝に、宿泊ホテルのすぐ近くにあるものだと分かったものの、時間が合わず、訪ねることがかなわなかった場所なんです。カンプ修道院教会Prieure' du Monastir del Campで、確か私有のため、常に見学はできないとなっていた場所でしたが、実はちゃんと見学できたんです。ちっ!
トランペットを吹く変な人。これは見たいです。リョーミネルヴォアで、わたしが好きだった、笛吹き三人フィギュアに、ちょっとテーマが似ていますよね。

レプリカのみならず、様々な形での説明文、そして、職人さんたちの働きぶりを紹介する工夫を凝らした展示がありました。教会建設や、柱頭彫刻の様子を時差的にネオン点灯で
追える展示。




また一角はギャラリーにもなっていて、訪問時はアフリカ美術展をやっていました。




近現代の作品ですが、なんともいえない味があります。これらのツボなどは、去年ベネチア・ビエンナーレに出品されていた、日本のアウトサイダー・アーティストの作品にも通じるものがあります。ロマネスクにも通じる表現があったり、プリミティブ・アートの世界は、何か、好きですねぇ。

というわけで、ルシヨンの最初には非常にふさわしい場所でした。わたしのロマネスク世界も、徐々にではありますが、広がりを持ち始め、思うこと考えること気付くことが増えていくばかりで、記憶容量から激しくはみ出し、収拾つかなくなる一方です。

おなじみのロマネスクは、以下でどうぞ。
ロマネスクのおと

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  1. 2014/03/28(金) 06:30:36|
  2. ラングドック・ルシヨン
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