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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

開かずの扉に隠れたお宝

ルシヨン・ロマネスクその9

サンタンドレ・ド・ソレドSaint-Andre'-de-Soredeの教会、続きです。
前回は、美しく愛らしいアーキトレーブを細かく紹介しましたが、地味なファサードの割りに、それ以外にも、小さいながら魅力的な装飾がちりばめられています。




たとえば、扉上部、ファサードの真ん中くらいの高さのところに、左右つけられている獣の彫刻。左と右。







遠目ではかわいい感じなんですが、アップにすると結構怖い。鋭い歯が妙に写実的なライオン。これは、扉口脇によく置かれる図像ですし、もともとは、ここではない場所にあったものを、後付でつけたという感じかな。入場する信者へたいして意図的に置かれるわけだから、こんな高い場所では、あまり意味がなさそうです。こういう置き方、ベサルーのファサードを思い出します。

そして、上部に開けられた窓周りの装飾。




本来は上部にも、何かはめ込まれていたと想像します。
両脇のトップと、下側のメダリオンみたいになっている円形の中には、四福音書家のシンボル有翼の動物の姿があり、間には、植物モチーフと幾何学モチーフの装飾、狭い場所にはめ込むように人の顔が掘り込まれていて、大変細かい浮き彫りです。そして、とてもかわいい~。唐草をつかんでいる両手なんか、愛らしくてたまりません。って言っても、現場では、とてもそこまで観察はできなくて、今改めて写真で詳細を見て、改めて愛らしさに打たれています。

窓が、木製の装飾的なブラインドのようなもので覆われているのも、気になります。石でこういう装飾があった方が自然なので、木製のブラインドは、後付のものかもしれません。上部のアーチも、シンプルですが、とっても好き。

さて、いよいよ入場!と思ったものの、扉が開きません。実際、わたしの前に入ろうとした旅行者たちも、開かないので首をひねったまま、去っていったのです。簡単にあきらめるので、びっくり。
わたしはもちろん、お隣にあるインフォメーションに行って、相談してみました。なんせ、扉前にはオープン時間が記されていて、そのときはちゃんとオープンしているはずの時間でしたから。
何のことはない。押したり弾いたりしてもだめで、輪っか状で重い取っ手を強く回して押すんですよ、ということで、試したら、無事、開きました。




シンプルそのものの石どっかり、という本堂です。土台は10世紀ですもんね。それにしても幅が狭い!
側廊があってもよさそうなつくりですが、本堂脇、柱の左右は、こんな感じ。




側廊とはいえない隙間構造になっていました。高さを保つためには、外壁に加えて、この柱が必要だったのかな。そういえば、ファサードの説明で、12世紀に上に高くされたファサードは、ヴォルト構造のため、とありました。とすると、天井のトンネル・ヴォルトは、12世紀に作られたということで、それ以前は、もっと低い位置の木製屋根だったかも、です。

さて、内部も、ファサード同様に、地味ながら、ちょっとした宝探しができます。





小ぶりな洗礼盤、または聖水盤。どちらも古くてよい感じ。もし我が家にお庭があったら、是非ひとつ置きたいようなものです。

何の変哲もなさそうな祭壇。




実はとっても素敵な浮き彫りの板でした。石棺の蓋でしょうか。




もともとどこにあったものなんでしょう、と不思議な小さい円柱と、立派な柱頭。




扉が開きにくかったせいか、誰も入ってこなくて、独り占めで宝探し。想像以上に楽しい教会でした。

おなじみのロマネスクは、以下でどうぞ。
ロマネスクのおと

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  1. 2014/05/23(金) 05:15:09|
  2. ラングドック・ルシヨン
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

No title

こんなにも隅々まで鑑賞なさるとは…やっぱり普通じゃないのぉ…おぬし。というか、私めも初めてのときは「よそ者返し」のこの扉に阻まれて退散したのでした。二度目の挑戦で入れましたが、とてもこんなに細部まで目がいきませんでした。落ち着け落ち着けと言い聞かせていなければ舞い上がってしまうに決まってます。軽い人ですから。
  1. 2014/05/22(木) 23:24:00 |
  2. URL |
  3. otebox #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

「よそ者返し」とは、よい命名です!すっごく共感できるコメント、有難うございます。
わたしも浮かれて、アワアワすることが多いのですが、フランスは、やっぱりある程度落ち着けるようになってから行くようにして、正解だったかもしれないですよね。フランスはゴシックの影響も強く、宝探し状態のサイトが多いですから、舞い上がりまくりだと、見逃しまくりになりかねません。
といいながら、実はたくさん見逃していますけれども。
でも、扉が簡単に開かないから、というのは、フランスらしいよそ者返し。これはブルゴーニュで体験しといてよかったです、ハイ。
そういや、oteboxさんちには、置こうと思えば、こんな洗礼盤のようなものまでが置けるお庭がありますねぇ。なんかうらやましいです。
  1. 2014/05/23(金) 22:17:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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