ルシヨン・ロマネスクその19
本当に盛りだくさんな計画。と言っても、結構狭い土地に、かなりハイレベルなロマネスクがぎっしりという土地ですから、修行を前面にしているわたしでなくとも、中世ラバーであれば、どうしても盛りだくさんな移動になってしまうのは、仕方のないことと思います。
でも、実に素晴らしいお宝ばかりですから、欲を言えば、1ヶ月くらい滞在して、毎日ひとつずつ、いとおしむようにして拝観したい教会ばかりです。
と言いながら短期修行旅のわたしが、次に向かったのは、サン・ミチェル・ド・キュサ修道院Abbaye Saint-Michele-de-Cuxa。
ユネスコの世界遺産になっているようで、だだっ広い駐車場も完備で、一大観光地らしい様子です。それなのに、入り口にある案内は、フランス語のみ。カタランといえども、このあたりの意識は、しっかりフランスのそれですなぁ。まったくフランス人てねぇ。
ま、何はともあれ、入場します。
ここでみるべきは、回廊とクリプタ、とだけ事前にチェックしていたものの、実は、詳細は不明なままで訪ねてしまっています。
それなのに、受付で入場料を払う段階で、既にしてフランス語しか通じないのを認識。説明も何も期待できない中で、のっけからクリプタの表示がありますので、いきなりかよ!とびっくり。
で、遮光カーテンで閉ざされた真っ暗な入り口に、なぜ?とびっくり。
さらにまた、カーテンをくぐって入って、呆然、絶句…。
こ、こりは…。
一瞬、自分がベネチアのビエンナーレにでも来ているのかと錯覚してしまいましたよ。
実は、このあたりの古い建造物を舞台にして、現代アートの展示をする、というイベント会場のひとつだったのでした。
わたしが現代アート好きで、この数年は、ベネチア・ビエンナーレ皆勤賞であることを、いつもこちらにいらっしゃってくださる方はご存知と思います。そしてまた、古い舞台での現代アートの展示って言う発想も、普段はなかなか好きなんですけれどもね、実際。
過去にも、ローマの遺跡での現代アート展などで、面白さに感動したことあります。
しかし、初めての訪問である、この世界遺産で、個人的にもかなり期待大の、どこでも見られるわけでもなく、どこにでもあるわけでもない11世紀のクリプタが、このような電飾で、あまりにありきたりなアートっぽい空間にされてしまっているというのは、なんといったらよろしいのか、愕然でした。
そう、この作品のレベル、あくまでわたしにとっての、という意味ですが、それがあまりに陳腐だっただけに、がっかり感がひどく大きかったんだと思います。作品として、自分の感性にもはまり、おお!と思えるものだったら、これは面白いものを見たな、と納得できたと思えるんですが、これではね。どう考えても、本来ある、それだけの姿の方が、圧倒的にインパクトがあるであろうことが、想像できましたからね。
ちなみにアーティストは韓国人のMoon Pil Shimさんとおっしゃる方。他のスペースにも光のアートがあり、いつもとは違う感じの照明になっていたのかもしれません。とにかく、自分的には、余計なことしてるんじゃないよ、とぷりぷり状態で歩いておりました。
そして、もうひとつのポイント、12世紀の回廊に出ました。
ちょうど雨が落ちてきちゃったんですが、なんだか緑がどんどん鮮やかになって、決して迷惑ではありませんでした。ただこの回廊は、多くの部分が損壊してしまっているので、離れて残っている部分の見学には、屋根のない部分を行かねばならない不都合はありましたけれども。
残っている部分は、素敵な保存状態。楽しい柱頭タイムです。
よいしょっと座っている人のフィギュアと、同じくうんしょって座っている四隅の獣。
同じモチーフでバージョン違いがありました。この、ヨイショっていう中腰状態の意味は何でしょうねぇ。
一方でこちらは、四隅の中腰ヨイショの獣は同じモチーフながら、人物は、胸を隠しているおじさん。ブルマー状パンツ。なぞ。
こちらは四隅が獣を超えて物の怪状になっています。そして、人物は力士上で、うなりながら(多分)、獣を支えているんです。
物の怪がより抽象化して、図案化進行。
このあたり、リョーミネルヴォワでしたか、怪物上の不思議なフィギュアを彷彿とします。どれもこれも面白いので、かなりじっくりと見学してしまいました。
その間も、雨が静かに、しかし結構激しく降っておりました。
続きます。
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- 2014/06/15(日) 06:08:11|
- ラングドック・ルシヨン
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