ルシヨン・ロマネスクその30
毎度のことですが、駆けずり回っています。 アルル・シュル・テックの後は、また海の方に戻り、時間の制約のある教会を目指しました。 ヴィルロング・デルス・モンVillelongue-dels-Montsにある、サント・マリー・デル・ヴィラール修道院Prieure Sainte Maria del Vilar。 オープンは午後15/18時だけで、それもガイドツアーのみ、と事前情報を得ていましたが、アルル・シュル・テックの見学を終えたのが、15時過ぎ。時間的には間に合いそうとは言え、ガイドツアーは1時間毎とあったので、できれば16時のツアーに参加したいと思いました。 というわけで、気持ちもはやり、かなり飛ばして村までは、順調に到着しました。16時前だったので、これなら余裕~、と思ったのは一瞬。修道院なら絶対にすぐありかが分かるはず、と思ったのに、大いに甘くて、全然分かりません。村も、小さい丘の斜面に張り付いているような立地で、見通しもききません。 とりあえず、街中に入り、それらしい建物の先にあった駐車場に車を乗り入れ、急ぎ足で、目に付いた建物に戻りました。
家の建てこんだ街中にぽっかりある立地そのものが、既に修道院じゃない、という予感。でも、丸い後陣には軒送りもあり、再建らしいとは言え、ロマネスクの雰囲気があります。でも!何の看板すらないのは、どう考えても怪しいし、長年、開いた様子もないんです。
途方に暮れて、通りがかりのおじいさんに尋ねてみました。何とか意思の疎通ができた結果分かったのは、修道院は、村を通り抜けて、細い山道をずっと登っていった先らしい、ということでした。 今から思えば、余裕を持って17時の回に参加する、という選択肢もあったのに、なぜあんなに大慌てに慌てて駆けずり回っていたんだか不明ですが、やはり現場にいると、少しでも多くの場所を訪ねたい、という強迫観念のようなものに取り付かれてしまって、16時、に執着していたのでしょう。
その興奮状態の中、普通だったらしり込みするような、先の分からない細い登り道を、何のためらいもなくぐいぐいと進み、行き止まりが、修道院でした。16時5分過ぎ。
路肩に車をいい加減に停めて、とにかく受付に飛び込みました。文字通り、ぜえぜえ状態で、受付にいた上品な修道女さんが、不思議そうな表情で、わたしを見つめていたのを覚えています。
それも当然。 確かに午後しか開いていないようでしたが、別にガイド・ツアーの時間が決まっているようでもなく、訪問者が来たらそれにあわせて流動的にツアーを組む、というスタイルだったんです。大汗で息が上がっている状態で、このような静謐な場所にばたばた飛び込んで、一人雰囲気を壊しまくりの自分、恥ずかしかったですね~。
そのときは、フランス語のツアー中で、それが終わり次第、わたしのために英語ツアーを組むので、しばらく待っていてくださいね、ということだったので、幸い、呼吸を整え、平静に戻ることができました。
待っている間に、ちょっと観察したところ、多くの部分が再建されている建物でした。上の写真の手前のアーチなど、各所に古い時代のものが残っているという状態。
15分ほどしてきてくださった修道女さんは、英語が堪能な方で、ちょうどその頃にやってきたお父さんと子供の二人連れもジョインして、3人のツアーとなりました。考えたら、あの父子も、こんな場所に観光に来るには、ちょっと不思議な組み合わせでした。
最初に、この場所についての、簡単な歴史のレクチャーがありました。 再建と思ったのは間違いではなく、この修道院、今ある建物の元は、11世紀と古いのですが、16世紀前半には住み人もなくなり、荒れ果ててしまって、19世紀初頭以降は、地域の農民が農作業に使っていたそうです。1993年に、篤志家の女性が、全域を買い上げ、サント・マリー修道院再建協会と行った組織を結成し、今ある姿にまで再建したということなんです。 1993年と言ったら、さほど昔のことではないんですから、驚いてしまいました。再建工事が完了したのは2004年。ついこの間のことですよね。 今ここにいらっしゃる修道会は、国境をはさんだスペイン側のカタルーニャはフィゲーラス郊外にある、Vilabertranという村の修道院の会派(アルメニア系)ということで、びっくりしました。もう何年も前になりますが、ロマネスク探訪を始めた頃、わざわざタクシーで訪ねた場所です。向こうは、既に美術館化してしまっていて、寂しいたたずまいでした。 でも、かつて訪ねたことを修道女さんに告げたら、大変嬉しそうでした。もしかして、わたしのことをすごく信者と勘違いされたのかもしれません。
これが、このあたりの教会のある地図。点線が国境で、3番がこの修道院で、下の方に見える5番が、ヴィラベルトランになります。スペイン側のカタルーニャのこのあたりも、今後再訪しないといけないなぁ、と思います。
さて、展示されていた古い写真で、再建前の、びっくりするような姿。
これを再建しようなんて思った人は、お告げでも受けたのでしょうか。 ただ、確かにこの場所は、ずっと古代より神聖な場所であり続けたことから、自分が守らなければ、という使命感に捉われる人がいたのも、わからないではありません。 実際、今の修道院の敷地内には、プレロマネスクや、ローマ時代の建物の礎石が、形のまま残されています。
7世紀の西ゴートの石棺。さすが、スペイン領に近いだけのことがありますね。
8世紀、プレロマネスク時代の教会の礎石。
これは、忘れちゃったんですが、多分、紀元前1世紀頃の、泉のあとじゃなかったかと。
もちろん、わたしが訪ねたロマネスク的なものもちょっとあるんです。続きます。
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2014/07/08(火) 05:58:40 |
ラングドック・ルシヨン
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