エミリア食い倒れ6
もう一度、食い倒れ方向に戻りまして、今回初めて経験したバルサミコ醸造所見学です。
友人と出かけるとき、行き先と観光の企画を立てるのは、大抵わたしの役目となっています。というのは、中世やロマネスクをキーワードにすれば、いつでも行きたい場所があるものですから、そこから一般の人向け観光も考える、という方法をとると、結構それらしい企画ができやすいんです。 と言っても、緻密な計画をするわけではなく、今回も、せっかくエミリアなんだから、と思い、地域のワイン醸造所、チーズおよびバルサミコ・メーカーの名前と住所一覧だけ、印刷して持参した次第。
で、ランチまで半端な時間があるために、まさにこの地域ならでは、のバルサミコ醸造所を訪ねることにしたのです。そう決めた場所が、さくらんぼで有名なヴィニョーラという町の近くでした。印刷していたリストで探すと、比較的近くに醸造所は二つ。 たどり着いたのがこちら。
Ca' dal Nonという、由緒正しそうな醸造所。土曜日の午前中でしたが、門扉は固く閉ざされています。醸造所が、ワインと同じで、こういう不意の訪問者を受け入れてくれるかどうかも分からないものの、こういうとき観光気分のグループ(たった3名とは言え)だと、強気になれます。とりあえず呼び鈴を鳴らしてみたら、ちゃんと応答があり、受け入れてくれました。
すっかりくつろいでいた様子の当主が出てきて、まずはレクチャー。 わたしは、ワイン酢が苦手で、酢を使う際は、和食系なら米酢かりんご酢、イタリア系ならバルサミコかりんご酢を使っていますから、バルサミコはデイリーユーザー。でも、もちろん、スーパーで一瓶300円程度の安物ユーザーで、それが、いわゆる本物のバルサミコとは似て非なるもの、ということは知っております。
こうして改めて作り方の説明を聞くと、まぁなんて気の長い作業なんでしょう、と感心してしまいました。そういう伝統的なやり方で作るメーカーさんは、今ではとても限られていること、品質検査がとても厳しいこと、本物のバルサミコは、ジウジャーロ・デザインのこの瓶に入っているものだけ、などなど、はぁ、なんだか大変だ。
しかし説明は非常に面白く、友人共々、質問攻め。後当主の説明も、熱を帯びてきました。工場の方も見てく?というので、是非に、とガイド・ツアーが始まりました。
今は作っている時期ではないのですが、建物の中はバルサミコの香りでいっぱい。 いよいよ、貯蔵庫へ。靴にビニール・カバーをかぶせます。雑菌防止なんでしょうね。それほど厳しくなかったけれど。でも、ワインでは、こんなことしたことないですね。
結構せまぜましいスペースに、様々な大きさ、形状の樽が、ぎっしり並んでいて、壮観です。
生ハムがそうであるように、きっと自然の気候が適しているんですね。建物は、空調していません。ただ風通しがいいようにはなっていたようです。そして、明かりは基本つけず、つけても、薄暗い感じ。
狭い螺旋階段で、3階ほどあり、上に行くほど熟成が進んだ小樽が増えていきます。
どの樽の上にも白いハンカチがかかっていますが、そこには穴が開いているからなんです。ハンカチの上に蓋(文鎮みたいなの)が置いてあります。その穴から、目視で様子を確認するようです。ちょっと見せてもらったけれど、あ、入っている、というくらいしか分かりません、素人には。香りはすごいですけどね。
奥の方に数個だけ並んでいた、このおにぎりのような樽。これは、今ではもう作れる人がいなくなってしまったフォルムなんだそうです。もう何十年とたつけれど、まだ使えると。ただ、遅かれ早かれだめにはなるし、修理はできないだろうと。 そもそも、樽も、イタリアではほぼないそうです。ワインの小樽も、ほとんどはフランス製だし、バルサミコの世界でも、いまやほとんどフランス製とか。イタリア、だめじゃん。多くの世界で必要とされている樽を、自分とこで作らんでどうする?と思いますが、世の中、そういう風になっちゃってるんですねぇ。職人の技がどんどん細っていくのは、もうどうしようもない流れなんですね。だからと言って、今から樽作り修行は無理だし、残念なことです。
まぁそんなわけで、熱の入ったツアーが約1時間ほどもかかってしまい、最後は当然直販…。高いのは分かっていましたが、最も安いバルサミコで45ユーロ。 「わたし無理。っていうか、味見もしたしおいしいけれど、私の場合、バルサミコはサラダにジャブジャブとかけるのが好きな方で、こういうこってりした年代ものを一滴、という使い方はしないんで、買っても絶対使わない…。でも1時間もツアーしてくれたのは、この販売の儲けを期待しているからだし…。」 一瞬悶々と考えましたが、なんと同行者二人がそろって購入してくれたので、わたしは、バルサミコ派生のSabaという甘味料と、そのサバで作られたイチジクのジャムを購入して、お茶を濁しました。
ヴィニョーラなんて、バルサミコ的には辺境じゃないの、とちょっと思って(見下して?)いましたが、このメーカーさんのこのサバ、ミラノの高級食料品店で発見。先日のアメリゴの瓶詰めも発見したし、このメーカーさんも、結構流通しているらしく、びっくりでした。今回、予想外に、”イケテル”企画続きだったかも(ここも行き当たりばったりだったけど…)。
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2014/08/17(日) 00:34:08 |
イタリアめし
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