アストゥリアス・ロマネスク10
ロマネスク修行旅の前には、移動の計画を立てます。
ロマネスクは、不便な場所にあることも多いし、一人旅で、行き当たりばったりにホテルを決めるのは、逆に時間のロスになるので、連泊を基本に、事前にホテルの予約をします。合わせて、おおよその目的地をピックアップして、移動の流れを決めることにしています。
すべての教会について、事前に多くの情報を得られるわけではないので、あくまで流れにとどめますが、それでも、町村の名前と教会の名前はチェックして、自分なりの虎の巻を作っていきます。
今回の旅は、アストゥリアスにしても、カンタブリアにしても、調べれば調べるほど、ロマネスクやプレ・ロマネスクの教会が出てきて、途中で調べるのをやめざるを得ないほど、収拾がつかない数見つかってしまいました。そうやって調べた星の数ほどの教会を、インターネットで情報を収集して、絶対に行くべき場所、時間や体力に余裕があれば行くべき場所、などと、さらに絞っていくのです。
それにしても、いつもの旅同様、いや、訪ねたい場所の数や、いつもより若干余裕のある時間を考えると、最低限訪れる場所については、いつも以上に厳選、多くの場所を切り捨てました。
最後に残ったのは、地域で著名な場所中心になってしまいました。特にアストゥリアスのプレ・ロマネスクについては、情報も少ない上に、やはり、まず見るべき場所は見ておかねば、ということで、調べた割には、結局、そんなに一生懸命調べなくても分かったよね、というような普通なラインナップになってしまいました。
とは言え、オープン時間や行き方等は未知の場所も多く、訪ね当てるのに、結構苦労しました。
この、サンタ・マリア・デ・ベンドネス教会Iglesia de Santa Maria de Bandonesも、まさにそういう場所のひとつです。
オヴィエドから、東南方向で、地図で見る限りでは、たいした距離ではないし(5キロほど)、そんなに難しい様子はありません。ところがどっこい!
もう冷や汗の連続でした。途中からいきなり、すごい狭くて、それもかなりの下り坂の連続になります。そもそもそういう土地だという事前知識がなく、先がどうなるのかも分からないだけに、さらに怖かったのですが、引き返すこともならないような細道ですから、先に進むしかありません。
最後は、さらにがくんと谷底に降りていく感じで下り、たどり着いたのは、民家が数軒建つ集落。その真ん中の丘上になっている場所に、教会がありました。
人がいる気配もないどん詰まりの村。その上、空が俄かに掻き曇ってきて、強風が吹き出し、今にも嵐になりそうな不吉な様相です。帰り道を考えて憂鬱になっているのに、その不安をさらに掻き立てるような…。
そうは言っても、とにかく来てしまったので、見学開始です。
外観は、いかにもプレ・ロマネスク。角ばっていて、遊びがないって言うか、古いなぁ、と思わせる素朴なたたずまいです。
方向がまったく分からないのですが、入り口があるのが南で、手前側は本来のファサード、西側になるのでしょうか。だとすると、東西が同じような作りになっていて、南に入り口で、北側が後陣めいたつくりになっています。ということは、上の写真の手前側が、北側で、入り口が西にあって、東側(トップの写真)が後陣、と考えた方がしっくりしますかね。
入り口部分はポルティコになっています。
確実に再建も混ざっているでしょうが、ナランコでも、ロス・プラドスでも見られた、窓の装飾が特徴的で、美しいです。ここは特に、どの開口部もそれぞれ異なる装飾となっていて、興味深かったです。
脇に、本堂とは離れて建つ塔。
一応鐘楼となっていますが、もしかすると、これはもともと教会の塔というよりは、物見の塔だったかもしれません。または遠距離連絡用の狼煙用の可能性も考えられます。この教会の建つ丘の先は谷となっていて、近隣の山並みがずっと見晴るかせるようになっているロケーションなので、そういう気もします。上部は削られたようになっています。建築資材として流用されたのか、本来はもうちょっと背が高かったのでしょうね。
とにかく地味ですが、なんともいえない上品なたたずまいなんです。
窓装飾に加えて、唯一装飾らしい、情報にある三連窓。よく見ると、ここにも縄目モチーフがありましたよ。
縄目、よほどはやりだったんですね、この時代。ちなみに、これまで見てきたプレ・ロマネスクは、みな、ほぼ同時代です。
残念なことに、扉は固く閉ざされていて、張り紙を見ると、ミサのある日曜11時にしか開かないらしいし、どうやらオヴィエドの町の管轄になっている様子。でも、こんな小さな集落なんだし、絶対鍵があるはず、と思い、裏にある家の扉をたたいてみました。
しばらく待っても、誰も出てくる様子はないし、今にも嵐状態のお天気はひどくなる一方だし、あきらめて車に乗り込もうとしたときに、おじいさんがよろよろと出てきてくれました。「教会の鍵」というのは、どうやら通じたのですが、オヴィエドの教区で管理していて、この集落では預かっていない、ということのようでしたので、残念ではありましたが、あっさりあきらめました。とにかくお天気がひどいし。
二度と来ることはなさそうなベンドネスの集落をちょっと眺めて、車に乗り込みました。
しかし、なんと言うことか、車の鍵が回りません。
何度も何度もトライするのですが、鍵が回らず、エンジンがかからず。強風、曇り空、谷の底、ああああ!と泣きそうになりました。
半狂乱の体で、何度もトライした挙句、ふっと冷静になり、いったん車を降り、乗りなおして、いつものように、と落ち着いてやり直したところ、ぶるるん、あああ、やれ嬉や、でした。
実は、自分の車にはイモビライザーがついていて、鍵の電池が切れるとエンジンがかからなくなるんです。電池を交換していずに使っていたある日突然、何度鍵を回しても、エンジンがかからないことがあり、もしかして?と予備の鍵を使ったらオウケイだった記憶があったので、このとき、すぐ、鍵の電池切れ?と思い込んでしまったんです。
よく考えたら、エンジンがかからなかったのではなく、鍵が回らなかったのに。
この谷底から這い出して、同じことが起こったら怖いので、ガソリンスタンドとかありそうな道を選んでさらに田舎に向かいましたが、スタンドって探していると絶対にないんですよね。相当進んで、ここも訪ねたいと思っていたな、という教会を通り越して、結局そのまま、オヴィエドの町にいったん戻り、さらに結局ホテルに戻る羽目になりました。
ホテルの人に窮状を訴え、電池の買える店を探してもらいましたが、土曜の午後は、普通お店が半ドンということで、せっかく見つけてもらったホテルの近所の店はお休み。道端で呆然としましたが、すぐに気を取り直し、道端で一服していた作業員風のおじさんたちに尋ねたところ、あの店なら開いているだろうし、あると思うよ、とさらに近くのお店情報をゲット。行ってみると、中国人の雑貨屋さんがあり、そして、目的の電池、ゲット~!
このときほど、普通は半ドンなのに、堂々とお店を空けている中国人に感謝したことはなかったほど、ありがたく思いました。
そして、これまたホテルの人に頼んで電池交換してもらった次第。
なんとたくさんの人にお世話になったことか。
余計な時間がとられてしまったものの、何とかきちんと問題が解決できたし、その上お日様まで出てきたので、時間ぎりぎりだけど、もうひとつ何かみよう、と闘志が湧いてきて、改めてオヴィエドの町から田舎方面へ。
しかし、その途上、特に探していないときにはいくらでも見つかるガソリン・スタンドにて、給油した際に、やっぱり鍵が回らなかったんです!
呆然として、スタンドの人に訴えたところ、「鍵は、まずこのメモリまでまわして、それから、次のメモリまでまわすんだよ」と哀れむように教えられたのでした…。
あ、そういえば、自分の車だって、なんかそういう感じだったかも知れない…、とそのとき気付いたのでした。いやはや。なんというか、すごく無駄な空騒ぎをして、1時間半くらい無駄にした上に、無駄走りでガソリン消費して、大汗かいて。
気持ち的には、穴があったら入りたい、でした。
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- 2014/09/18(木) 05:34:05|
- アストゥリアス中世
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山下さん、いつも、タイトルでだましているようで、すみませんね~笑。
わたしの場合は、およそ、走り回っている、という状態でもないんですが、結果としては走り回ってしまう、みたいな。
本日も、久しぶりにミラノ近郊の中世サイトまで、ドライブしてきました。楽しかったし、1時間足らずのドライブで、中世にトリップできるというのは、なかなかすごい土地に暮らしているものだよ、とあらためて、感心しました。
- 2014/09/20(土) 22:19:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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良い環境ですね!
羨ましい。
私も折角、東京に住んでいるので・・・・・
もう少し、江戸時代を掘り下げて見てみたいと「考察中!」です。
先日も少し触れていましたが・・・・・
ミラノ万博!
日本のニュースでも見ましたよ。
都市計画と建物の関係を語っていました。
- 2014/09/21(日) 05:56:00 |
- URL |
- 古代遺跡めぐり<山下亭> #79D/WHSg
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山下さん
江戸を歩くのも楽しそうですよね。姉が下町にすんでいるので、一時帰国の際は、一度は下町散歩をするのですが、今でも江戸のたたずまいってあるから、面白いです。
- 2014/09/21(日) 19:11:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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