ピエモンテ・グラッパ合宿、その4
今回、昨年に比べてちょっとだけ遅い時期にしたのは、蒸留している時期に合わせたからで、特に、有名な天使のグラッパ、レヴィさんとこの火入れを意識していました。前回は、訪ねた1週間または2週間後に火入れが予定されていて、ちょっと残念な気がしたのです。
今回の日程は、ちょうど火入れの儀式のある週末だったので、買うかどうかは置いといて、火入れはのぞきに行く予定にしていました。
というわけで、ベルタのあとは、レヴィさん蒸留所方面に向かいながらランチを頂き、火入れ儀式に参加する、という計画でしたが、途中でまたひとつ、予定外の蒸留所に足を止めてしまいました。
Distilleria di Balestrino Pietro
Corso Acqui 176, Nizza Monferrato (AT)
敷地への鉄扉は広々と開いておりましたが、人は見当たりません。事務所らしい建物をのぞくも、誰もいません。でも、倉庫の扉も開けっ放しだし、人はいるはず、とうろうろしていると、どこかにセンサーがあるらしく、時折ピンポーンとベルが鳴ります。いい加減ベルが鳴っても反応がないので、引き上げようか、としたところに、ランチ中なのに、という風情のおじさんが出てきました。
考えたら、13時近くだったので、われわれもずいぶん失礼な時間に訪ねて、しつこく粘ったものです。
あまりに食事中というのが明らかだったので、謝ったところ、いいんだいいんだ、と販売所を開けてくれました。
雑然としたお店ですが、グラッパにくわえて、各種リキュールの類が多種。そしてお値段がお安い。ここで、キノChinoというリキュールを初めて味わいました。
いわゆるキニーネ、マラリアに効く薬として、本で目にしたことのある名称です。こういうもんだったんですねぇ。
また、コーヒーのリキュールも試飲させていただきました。どれもおいしくて、発見でした。おじさん、というか、かなりおじいさんでしたが、バレストリノさん、熱が入ってきて、あれもこれも、飲ませたがり、説明をしてくださいます。
わたしは、甘いお酒は飲まないので、結局普通のグラッパを1本お買い上げ。11.50ユーロという非常に庶民的なお値段。
レトロなラベルが、時代に追いついた感がありますね。ずっと変わってないんでしょう。キャップもスクリューで、庶民的~。
そして、バレストリーノじいさんの話は、ここで終わりません。ランチを中断してしまった以上、さっさとお暇するつもりでいるのに、是非わたしのコレクションを見ていってくれたまえ、とガイド・ツアーが始まってしまいました。
工場部分で、普通だったら製造の話などをするべき場所でしょうが、バレストリーノさんは、「壁の絵を見てくれ!」「身代つぶして食い詰めたぼくの友人が、助けてくれ、というので面倒を見たんだ。何かやらないとおかしくなりそうだったから、昔とった杵柄で絵を描かせたところ、何とか立ち直って(云々かんぬん)…」とめどなくエピソードが。ずらりと並んだ絵の、もうなんというか、ダサさというか、下手さというか、この時点で困ったな、と内心思うわたし。
次に、敷地内にある他の倉庫。
もうね、ほとんどグラッパ関係ないです。ほとんど、中古品または骨董品のお店。要はこの方、溜め込み癖のある方なんですね。そして多分、びっくりするほどの資産家。最初は、たとえば蒸留関係の古いものなど、自分の関係するものを集めていた程度と思うのですが、おそらく、何かでものがあると人が持ってくる、金があるから買っちゃう、みたいな事で、こういう、言っちゃなんですが、ガラクタ博物館のようなものが出来ちゃったのでは。
とにかく、古い家具から、家庭用品、アフリカの民芸品から、昔の消防車まで、なんでもありです。そして、どれひとつも疎かにしない、バレストリーノさんの熱心な説明が…。
いつ解放されるか分からない困った感も、若干ありましたが、面白かったですよ。グラッパの移動蒸留車なんか、初めて見たし。
荷台に蒸留器械を置いたトラックで、かつては葡萄粕を求めて、村々を回ったんだそうです。かなり巨大なものですが、館内に二台、外にももっと大型のが一台ありました…。買っちゃったんですね、きっと頼まれて。
さらに、精算会社を引き取ったから、と名残の品々の数々とか、各種ポスターやら政治的集会のお知らせやら、有名人の写真とか、いろいろ。
アル・バーノとか有名歌手のポスターがあるかと思えば(交流があるらしい)、ん?ムッソリーニ?
思いっきりファシスト~!?
なんかムッソリーノの息子で、ジャズ・ピアノをやっていた人を、戦後、かなり面倒をみていたとか何とか。嬉しそうに話してくれました。
あとから検索したら、「バレストリーノさん、80過ぎて、地元の右翼団体に参加!」という前年度の記事がたくさんヒットしました。ひゃ~、やっぱり。
80過ぎてあの元気。たいしたもんです。なんつーか、信念もありそうだし。
「これは息子のお下がりなんじゃ」というだぶだぶのセーター着て、食べこぼしのしみつけて、でも、やっぱり普通の80過ぎのおじいさんではなかった。これだけの資産は、遺産なのか、何か事業の結果なのか。只者ではありません。
思想はともかくとして、いやはや、面白かったです。グラッパ、ほぼ関係ないけど。結局1時間ぐらい”バレストリーノ節”拝聴のため、ランチの時間がなくなってしまいました。
しかし、まったく知らなかったな、こんな生産者さん。今回、そんなのばっかり。でも面白い~。
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- 2014/11/25(火) 02:41:33|
- グラッパ
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| コメント:4
素晴らしい!私ね、高見沢さんも内田裕也さんも素晴らしいと思うんです。他人がなんて言おうと我が美学を決して譲らない。
ジジィになるのか伝説になるのかはその方の意志の強さなんじゃないだろかと思うんです。高見沢さんなんか60ですよ!あんな60、世界中探してもいない。
ファシストって悪く言われがちだけど、ここまで来たら立派なもんじゃい。
販売品も愛がある!
私、息子には将来迷惑かけたくないもんで、スープが冷めない距離じゃなくてスープが固形に戻る距離にいつか一人暮らしするのが夢なんですけどね、こういう古い馬車の車輪で回転するテーブル作って、もう一つでベランダ飾ってポニーとニワトリ飼ってモーニングできるカフェ作りたいな~(≧∇≦)!
いいな~バレストリーノさん、あと30年生きていてもらおう!
素敵な人だ!
- 2014/11/25(火) 05:21:00 |
- URL |
- はなさん #79D/WHSg
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洋吉ちゃん
もしかしてじいさん好き~?わたしも~。って、ちょっと違うかな。わたしの場合は、なんかじいさんの方が、きちんとしていてしっかりしていて、特にイタリアだと顕著なんだけど、世間知らずの若者よりも話が合っちゃったりするんですよねぇ。割と若い頃から…。
まぁこのバレストリーノじいさんは、かなり特異ですから、話が合うとか、もうそういう次元で語れないんですが。
でも、ともかく、本当に幸せな人よと思いました。好きなように生きてる。そうするだけの財産にも恵まれているらしい。でも、息子さん、あと大変だろうなぁ、と思ったりもしましたが(笑)。
いつか、そういう距離で一人暮らし、素敵だと思います。好きなものに囲まれてカフェ。
うん、やっぱりバレストリーノじいさん、幸せすぎ。
- 2014/11/26(水) 23:12:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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お金持ち!
と、言う所が決定的に違うのですが・・・・・
古い物を好きで「集めて居る!」と言う処が似ていると思います。
この様な写真を見ているだけで楽しいんですよ!
- 2014/11/27(木) 05:01:00 |
- URL |
- 古代遺跡めぐり<山下亭> #79D/WHSg
- [ 編集 ]
> 山下亭さん
いつも、お宝記事を楽しく拝見しています!
確かに、この倉庫は、面白かったんです。これだけめちゃくちゃに物を集めまくっている人って、なかなかいないしね。なんとなく、また行って見たいのか、わたし?みたいな気持ち。笑
- 2014/11/27(木) 21:15:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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