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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

修行は、やはり孤独なもの…

アルメンノのロマネスク その1

ある秋の一日、たまたま見つけたガイド・ツアーに参加して、久しぶりにアルメンノのロマネスクを訪ねました。




サン・トメ教会Chiesa di San Tome'です。
ここは、ずいぶん昔に訪ねて以来。当時はカーナビもなく、相当迷いながら、ヘロヘロになってたどり着いた記憶があります。町外れで、目印は教会そのもののみ。今回カーナビでもかなり複雑な道だったので、当時、よくもたどり着けたものだと感心しました。

ここの管理は、Antenna Europea del Romanicoという有志団体が行っていて、昔訪ねたときも、その団体の方がガイドをやっていました。今回も、同じ団体の方がガイドさん。一番乗りしたわたしを、お隣にある団体管理棟のバールに誘ってくれて、エスプレッソをご馳走してくださいました。
こういうところ、イタリアってとても気さくです。

それにしても、どういうところでガイド・ツアーのお知らせをしていたのか知りませんが、ずいぶんと人が集まったので、びっくりしました。例によって、ほとんど年配の人ばかりで、一部歴史オタク系、多くは、なんとなく観光気分で来ました、というグループです。

ツアー開始前に、勝手に入って見学。さりげなく撮影したところ、監視員の方が、「撮影禁止だけど、少しならいいや。」と許可してくださるのみならず、いろいろとガイドをしてくださいました。
ガイドのおじさんが中をのぞき、「ぼくの仕事を取らないでよ~。それにしても、いつの間にか、あんたそんなに覚えたんだよ~」と冗談を言うくらい、ほんの数分ながら、面白い話をしてくださいました。

昔も撮影禁止だったので、そういう次第で、今回初めてちょっと写真が撮れて、嬉しかったです。だって、素敵な柱頭があるんです。





ガイドの方のお話は、歴史中心で、この土地における中世全般の流れや、教会の成り立ちみたいなことをさらりと。中世のガイド・ツアーとか講演会って、大体そういうパターンで、美術に特化したお話というのは、まずないんですよね。ここはいろいろ面白いものがあるだけに、ちょっと不満でしたけれど、仕方ないです。




構造が興味深いです。円形の建物は、もちろんどこも似通ってはいるんですけれど。ここは、二階部分があり、マトロネオとされているようです。最近は、二回部分にはイベント以外は、上がらせてくれないようです。昔はどんどん上がれたのですけれど、残念でした。

祭壇。




上部に、十字架状の開口部が見えますが、反対側、つまり入り口の方にも、同じように十字架状開口部があります。でも、微妙に位置がずれています。春分のときに、そこから光が入り、まっすぐに祭壇の部分に届くような位置になっているという話です。

建築的には、アーチのサイズとか、この円形部分の対角線の長さとかに様々な幾何学的な意味がこめられているようなお話もされていて、下世話な面白さもあったのですが、一番感銘を受けたのは、人工的な明かりを落としてくださったとき。
扉も閉めて、本来かなりの闇になりそうな状態なのに、天井部に開けられた非常にわずかな開口部の明かりだけで、内部は薄ぼんやりとした、闇とは程遠い明るさがあるんです。すごく、考えられているということですね。

ここでも、逆さの柱がありました。




こういう柱や柱頭は、異教のものの再利用と決まっていますね。入り口部分にあるので、魔よけのように置かれたとか、そういう解釈も、大体同じ。

外観についての美術的考察は一切なかったので、結局、他の教会の見学を終えたあとで、一人戻り、改めて外部の撮影をしました。
正面入り口。




とてもシンプルで、両脇に、浅浮き彫りの施された柱頭、というより、帯状の装飾があります。





どちらも傷みがかなり激しいのですが、石が違うのが気になります。もしかすると、再建なのかも知れません。というのも、南側の扉装飾が、再建だからです。




こちら、かわいくて大好きな浮き彫りですが、今回立派な解説本を購入して初めて、再建ということを知りました。19世紀のものだそうです。もちろん、こういう浮き彫りを施すからには、元になる何かが若干はあったのだと思いますけれど。
ちなみに、中央に置かれた人物は、サン・トメ(=サン・トマソ)。かつては蝋燭を抱えた修道士、と考えられていたそうですが、これはトマソの印となっているらしい槍なのだそうですね。どうも、槍で突かれて殉教したようですね。棕櫚の木も、トマソを象徴するものとか。どうも、キリスト教については、知らないことが多すぎて。

そんなわけで、久しぶりの対面、とても充実しました。
いつまでも、美しい姿を保ってほしいものです。




この全景を撮影していると、やはり撮影をしているご夫婦がいました。なんとなく話始めると、午後のガイド・ツアーに参加しようと、様子を見に来ていた方でした。失礼ですが、両者とも、中世史とか美術に造形があるようにも見えず…。実際お話していると、だんなはバイク乗り、奥さんは民族舞踏に入れ込んでいらっしゃって、それもまた見た目とあまり結びつかず、ひどく面白かったです。
お互いの趣味を求めて、田舎へのタンデム・ツーリングをされる中で、中世の教会に出会うことがあり、興味が出てきたというようなお話でした。

わたしが、最近はロマネスクのために、フランスやスペインまで足を伸ばしているんです、というお話をしたところ、奥さんが、「あなた、そういう時って、一人?誰かと行くの?」と質問をされました。「たまには友人とも行きますが、本気の旅(=修行)では、一人の方が充実するんですよ。」と正直に答えると、わが意を得たり、という感じで、「分かるわ~。私もね、そうなのよ~。」と言われたのには、びっくりしました。イタリア人でそういう人って、周りにいないものですから。
やっぱり、はまると修行になるし、ひとりで追求したいっていう気持ちになるのは、ありなんだ~。

昔まとめたサン・トメ、以下ロマネスクのおとにあります。今回の写真と資料を基に、きちんとアップデートしないといけないです。


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  1. 2014/12/29(月) 02:02:10|
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コメント

No title

槍(剣の場合も)は殉教者の印として使われます。また棕櫚も殉教者の印として使われるようです。元来棕櫚は戦勝の象徴だったものが初期キリスト教時代にはキリストの死に対する勝利の象徴としてとりいれられたことに由来するようです。『西洋美術解読事典』河出書房新社、は便利です。
  1. 2014/12/29(月) 01:45:00 |
  2. URL |
  3. yk #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> ykさん
本当によく勉強なさっていますよね!おかげさまで、調べずに、おお!って感じで、ありがたく思っています。と言っても、勿論、将来的には、キチンと調べつくして、ちゃんとまとめる予定はしていますよ!
槍も、勝利の象徴ということなんでしょうかね。殉教者は、死因が描かれたりすることも多いので、完全に串刺し系かと思ってしまいました。失礼しました~!
わたしもシンボリズムの本とか持っているんですが、やはり日本語に限るかも。
  1. 2014/12/29(月) 23:02:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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