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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

深刻にラッパを吹く人。

カンタブリア・ロマネスク、その6

さて、前回の村では、とうとうロマネスクに出会うことなく終わってしまったのですが、次は、絶対に訪ねなければいけない場所です。カルテスから30分足らずの距離にあるジェルモYermo。

これが、小さな丘の天辺にある村で、本来のわたし的には避けるべき、細くて急な坂。でも、そんなことは知らないので、いったん登りだしたら、途中で止まることも引き返すことも出来ない運命です。村にたどり着いて、ちょっとした平地を発見するなり駐車して、対向車のなかったことを感謝しました。




サンタ・マリア教会Iglesia de Santa Maria。
実に小さな村が、周囲の緑と交わる境界の辺りに、村の規模から考えると、かなり立派な教会が建っています。西側に、つましい鐘楼にアクセスするためなのか、階段が取り付けられた変則建築(このタイプ、他でも見られますから、普及していた時代があったのでしょう)で、ファサードは南側となります。




いろいろな石が使われて、全体に赤っぽい印象となっていますが、後代の修復も相当されているので、このグラデーションの石がオリジナルかどうかは不明です。階段の部分は、普通にグレーの石なんで、本体とそこの時代が違うのか、本堂の方が高価な石を使っているとかの理由なのか、興味あります。

わたしが訪ねたのは、月曜日だったために、残念ながらクローズ。急坂を思うと、本当に残念でしたが、でも、外観だけでも相当楽しいので、たどり着けただけでもよし、とします。
ちなみに、他の日は、午前と午後ちゃんとオープンするようで、扉に時間が明記されていました(到着したのが、普段なら午後のオープン時間である16時直前だっただけに、悔しさが倍増しましたが)。

どこから見たらいいのか、一見して装飾があちこちにある場合、例によって、あわあわと舞い上がってしまいます。まずはやはり扉口でしょうか。




この教会の紹介には、まずこのタンパン浮き彫りの写真が使われることが多いようです。
真ん中の部分がかけた変則タンパンに描かれているのは、騎士と巨大ドラゴンの戦い。善と悪の対比を表す図像ということです。

扉口脇の側柱の柱頭には、ライオンがたくさんいます。これも善悪つながりなんでしょうか。




ちょっと狛犬系。ここのライオンも、腰に尻尾がまきついてほっそりになっていますね。
顔は、相当狛犬系です。あまり愛嬌とかなくて、デザイン的な風もあります。




左側にも、ライオン風とキメラ風の戦いの図がありました。あと、相当傷んでいるけど、騎士と何か。やっぱり善悪系みたい。

アーキボルトと、その上部に水平にある軒送りは、ほとんど地味になっています。軒送り部分は、オリジナルには、いろいろとフィギュアがあったのではないかと想像しますが。

最初の写真だと、ちょっと小さくて見えにくいかもしれませんが、扉の上の方、屋根にも近い部分に、左右二つ、浮き彫りの石版がくっついています。これはちょっと不思議。どこかにあったのを、あとからつけたのか、もともとサンティジャーナのようなスタイルなのか。
左が、聖マリーナ、とあります。




そして、右は聖母子。




こう言っちゃなんですが、聖マリーナ(どういう聖人なのか、残念ながら調べないと分からないわたしですが)は、楚々とした美人な感じで表されているんですが、聖母は、ちょっとどっしりした田舎の素朴なオバサン風じゃないですか?なんか、普通にいそうな感じっていうか。

で、やっぱり一番面白いのは、軒送り浮き彫りです。様々なタイプのが、たくさんあります。




後陣の方にもぐるりとありますが、なんといっても、この南壁部分のが面白いですね。

まずは割りと普通のタイプ。




ホルンみたいのを吹いてて、傍らに動物がいます。図像学的な意味があるのか、または農民の日常なのか。

こちらも、楽器演奏中。




でも、全然楽しそうじゃないのが、特徴的。やはり、これは図像学的な意味はないですよね?
こちらは、マント風衣で、聖職者でしょうか。




または切石運びの肉体労働者?いや、違うだろうけど、やっぱり深刻な顔してますねぇ。
宙返りの人。




エロチック系二つ。もっとありますけど。






何でしょうねぇ。エロチック系テーマは欠かせないって感じ。アストゥリアスでもそうでしたが、きっと原始宗教的なものが、色濃く残っていたんだろう、と思っています。マリア信仰が強いというのも、もしかすると、そういうことがあるのかもしれない、と最近思ったりします。

不思議な動物フィギュアもありました。




楽しい…。いや、浮き彫りされている皆さんは、あまり楽しそうに見えないんだけど、こういうものがあると、わたしは楽しくなっちゃう。中に入れなかったけど、もう満足。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
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  1. 2015/08/21(金) 02:58:20|
  2. カンタブリア・ロマネスク
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<まさか、プレロマネスクの影響が?なーんちゃって。 | ホーム | グリンピース、四人前、とは。>>

コメント

No title

いいないいな、好きだな!よく調べておいでです、ありがとさんです。私のココロが共に旅してます。
スペインでも辺境、しかもイスラム支配を受けなかったからこその建築物なのかなぁ。
  1. 2015/08/20(木) 23:49:00 |
  2. URL |
  3. otebox #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> oteboxさん
見ていただいて、有難うございます。もう全然ちゃんと調べてなくて、資料本を斜め読みして書き飛ばしちゃっていますから、かなり嘘も混じっていると思いますので、どうぞ、適当な感じで、見てやってくださいね。
あらためて写真を見ていると、いろいろ考えてしまい、それはそれで面白いのですが、知りたいことがたくさん出てきてしまって困ります。小さな教会に関しては、ネットでもなかなか情報集まりませんしね。
イスラムの影響は、いろんなところで出てきますが、この辺りは、西ゴートもあるし、スペインの歴史も複雑ですから、本来は、いろいろ調べないと、本当のところがなかなか分かりませんね。
  1. 2015/08/21(金) 17:29:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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