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イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

まさか、プレロマネスクの影響が?なーんちゃって。

カンタブリア・ロマネスク、その7

急坂にぜえぜえしながらも、中に入れなかったので、さっさと見学を終えたジェルモの後に向かったのは、モリェードMolledoという村です。
この辺りは、比較的狭い地域に、小さなロマネスクが点在しているのですが、地形にアップダウンがあるために、細くて、時として行き止まり、などという道も多く、土地勘がないと、効率よく回るのはとても難しい土地だと思います。

モリェードを目指して走っていて、ナビでは、もう少し先となっているときに、右側に、かなりの細い道があり、そのすぐ先の木立の中に教会の姿が見え隠れしていましたので、わたしにしては珍しく機敏に道に入ることが出来ました。

しかし、どうみても、ロマネスクよりあとの時代の教会です。ちょうど、近くのベンチで読書している女性がいたので、目的のサン・ロレンツォ・デ・プヤジョ教会San Lorenzo de Pujayoを尋ねると、あっさり、知らない、と言われてしまいました。

あとから、資料や地図を見直すと、そこから、ずいぶん山の方に入った、まさに行き止まりの小道の先に、Pujayoという村がありましたので、おそらく管轄はMolledoながら、実際に教会があるのはそちらの村だったんだと思います。教会の名前にも村の名前が付いているし。でも、土地勘がないと、なかなかそういう当たり前のことが思いつかないんですよね。

結局、モリェードの村も分からないまま走っていると、「ロマネスク教会」の表示が道端にあったので、山道だったらどうしようと一瞬迷いつつも、街道を逸れてみました。何のことはない、そこも、目的地としていた村、シリオSilio'でした。そして、幸い、道も村も、ちゃんと平地でした(ここ、わたし的にはとても重要です)。




平地だけに、全体がだらだらと広がった村で、適当に駐車して、教会の所在も分からないままに歩き出すと、町外れに、それらしい姿が見えてきました。
聖ファクンド・イ・プリミティーヴォ教会Iglesia de Santos Facundo y Primitivo。




地味ですが、このたたずまい、わたしは好きです。
ここも、後陣は東向きですが、メインの入り口は、南側にあります。
扉回りは、アーキボルトも側柱も、ほとんど装飾がないに均しいほどシンプル。アーキボルトは五重になっていますが、一番外側の輪が、市松模様になっているだけ。側柱には、植物モチーフの簡単な彫り物があるだけです。




ちょっと気になったのが、側柱の角の部分に施された筋彫りみたいな装飾。




ここのは側柱というより、建物の角を削った程度のつくりだから、少しでも装飾的にするための工夫でしょうか。上の方だけ、くりん、としているので、装飾的彫り物であることは確かだと思うんです。
そういえば、アストゥリアスのプレロマネスクの教会に、同じような彫り物があったかも?そういえば、プレロマネスクでは、浮き彫りというよりも筋彫りみたいな、超浅い彫り物、多かったですね。影響あり?
本格的な彫り物はできないし、という中で、オヴィエドに行ったことのある職人さんが思いついた、苦肉の策だったのかもね。等と考えるのも楽しいもんですね。

これらに比べると、後陣の装飾は、びっくりするくらい充実しています。




ということは、ほとんどのっぺらぼうの北壁とか、西側ファサードなどは、後の時代のものかもしれません。
後陣には、窓が三つ開けられていますが、そのどれもに、柱頭装飾が見られ、なかなか面白いのです。

向かって右側の窓の右側柱頭。




猿みたいだけど、多分人のフィギュアで、上にいるのは、意地悪な猫科の動物みたいだけど、悪魔なのではないかと思いました。分からないけれど。
よく見ると、ちょっと色があります。
ロマネスクの時代に、多くの場所で、オリジナルでは石に彩色されていたことは、既に知っていますが、もちろん、何でもかんでも彩色されていたわけではないと思うんですよね。でも、その違いはなんなんでしょう。彩色が本来の姿だけども、当然余計なコストや手間がかかるから、お金の問題でやる、やらないがあったのか、それとも、伝播の問題で、どこでもベースが彩色、ということではなかったのか。
ちょっとだけ彩色のあとが残っているものは多く目にするので、そこのところは、結構気になっています。現代のわたしの感覚から言えば、もちろん石のままの方が、圧倒的にいいと思うのではありますが。

左側。




こっちでも人が襲われちゃってます。ライオンのモチーフは、かなり普通ですけど、下にかかっている爪先が、リアルに鋭そうで、怖いです。
真ん中の窓。こちらは、趣向が違います。






果物、ですよね?ザクロ系?図像学入ってきますかね。左の方は、イチゴとか、一部パイナップルに見えるので、やはり葡萄のデザイン化でしょうか。

そして、左側の窓は、また全然違います。






聖職者っぽい衣の人々。左側では、働く農民風もいますね。
それぞれの窓ごとに、テーマがあるので、これはストーリーというか、トータルで何かを言わんとしているのかな、という気もしますが、さて、どうなのでしょうか。

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  1. 2015/08/22(土) 01:26:24|
  2. カンタブリア・ロマネスク
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

No title

興味深く読ませて戴きましたよ!

ストリー性が見て取れますね。
  1. 2015/08/21(金) 23:28:00 |
  2. URL |
  3. 古代遺跡めぐり<山下亭> #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

> 山下亭さん
どういうストーリーだと思います?
聖書やら聖人のエピソードに疎いので、解読は本当に難しいです。
  1. 2015/08/23(日) 09:41:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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