夏休み旅その5、ラベンナ3
アリアーニ洗礼堂の係員に、是非と勧められて、訪ねたのが、こちら、テオドリコの宮殿、Palazzo detto di Teodoricoと言われている建物です。
わたしのいい加減な記憶なんて、まったくあてにはならないものの、ここは来たこともないし、存在すら気づいてなかったような気もします。そもそも、以前ラベンナに来たときは、どのときも、中世にはまっていたからではなく、ただ、モザイクが見たかったのが理由ですから。
テオドリコは、西ゴートの王様で、ラベンナを5世紀終わりに支配した人ですが、その時代、ラベンナはローマ帝国首都だったわけですよね。今はただの地方都市である現実を考えると、歴史って、面白いなぁ、と、しみじみ考えさせられる町でもあります、ここは。
さて、この建物、テオドリコの宮殿、と言われてはいますが、本当は、そんなことはなく、8世紀から9世紀頃に建てられた教会サン・サルバトーレのナルテックス部分だったと、研究者には考えられているようです。
ただ、その教会の壁が、実際にテオドリコの宮殿と接していたのでは、ということらしい。
同じ通りの並びに、このあと訪ねるサンタッポリナーレ・ヌオボ教会があるのですが、その教会の起源はテオドリコの宮殿の礼拝所ということらしいので、どうやら、この辺り一帯に、宮殿があったものということらしいのです。で、その宮殿の床面が、モザイクで覆われていたらしい。考古学の発掘で、その多くが発見されて、今、この建物に展示されているというわけです。
時代や成り行きを考えると、ビザンチンよりはローマ系統のモザイクということになるのでしょうか。いずれにしても、白黒のシンプルなモザイク、大好きです。
こういうデザイン性の高い白黒床モザイクは、ローマ遺跡で目にすることが多いので、やはりローマ系ですね。中世になると、色石系が増えるし、床モザイクは、これほど細かくないですね。
それにしても、素敵。こんな床で生活していたなんて、うらやましい。
色が入っても、デザイン性は健在。
オレンジが、もっとずっと鮮やかだったのかもしれないです。上の方のは、波っぽくて、海に近い土地を感じさせるモチーフ(ラベンナは海からすぐですよ)。
食堂だったり、寝室だったり、書斎だったり、きっと部屋の目的によって、モチーフもそれぞれ考えられていたのではないかと。
人の顔や動物を描くより、こういうデザイン系のものは、より職人さんのセンスが問われます。当時、具象の人と、抽象の人が別れていたのか、優れた職人さんは何でも出来たのか。興味深い点です。
この建物、その後、ロンゴバルドの時代まで、現役で使われたということなので、長生きしたようです。これだけのモザイクで飾られていたら、やはり簡単に壊せないし、使いたくなりますよね。無駄がないです。
展示は、こんな感じ。
発掘で一部が出てきているだけなので、さすがに床面において、踏みしめることが出来るようにはなっていません。
そういえば、以前は、多くの遺跡や教会で、床面モザイクは平気で踏みしめられるところがほとんどでしたが、近年は、立ち入り禁止にしている場所も多くなりました。
踏めば磨り減るのは確かですが、踏みしめたいところですよね、本音は。踏みしめるように作られたものなんだし。
建物は、石積みが美しいですが、ほぼ無装飾。道に面した部分に、わずか彫り物が見られます。
中世ラバーとしては、ところどころ開けられている二連窓の、こんな繊細な小円柱にうっとりしていました。
町の中心部のモザイクには、観光客が群がっていますが、ここに来る人は非常に少ないので、人ごみに疲れた方にお勧めの場所かも。
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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- 2015/09/19(土) 20:33:56|
- エミリア・ロマーニャ・ロマネスク
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