カントゥCantu'郊外にある、サン・ヴィンチェンツォ教会Basilica di San Vincenzo、そして、サン・ジョバンニ洗礼堂Battistero di San Giovanni、続きです。
前回の記事、または、ロマネスクのおとの記事を見ている方は気付いたと思いますが、この教会、フレスコ画が充実しています。
それも、すごく古いものが残っているんです。
初めて訪ねた頃は、ロマネスク探訪超初期で、ロマネスクも初期キリスト教も、ロンゴバルドもカロリングも、あまり、というか、ほとんどわかっていなかったんで、ここのフレスコの重要性というのも、全然理解していなかったのです。
フレスコ画の多くが、10世紀の超初期、1007年のもの。北イタリア地方における、神聖ローマ帝国オットー1世時代の壁画として、最も重要なもののひとつとされています。
なんとなく想起したのは、フェレンティッロのサン・ピエトロのフレスコとか、ミュスタイアのフレスコ。色の感じとか、表現が、何か。
とは言え、色彩は、かなり後退しているわけで、オリジナルは、相当しっかりした派手な色使いだったように思えますので、今見る感じとは、おそらく、全然違うものだったんでしょうねぇ。
とはいっても、ずいぶんとよく残っているものだと思います。
中央に、祝福するキリスト。これは、残念なことに、顔部分が完全に剥落してしまっています。
足元両脇にいるのは、預言者のエレミアとエゼキエルらしいです。それから大天使。
ここ、誰もいなければ、手前にある階段を登って、近くに寄ることは出来るんです。ただ、階段の途中に置いてある、「内陣には入らないでください」という注意書きに気付かない、またはわからない振りをすれば…。
しかし、訪ねたとき、ちょうど、愛想のないおじさんが、ミサの準備に余念なく、内陣を行ったり来たりウロウロされていて、とても知らん振りして足を踏み入れる勇気がありませんでした。残念!
この、勝利の門の内側のフレスコは、幾何学模様の中に、小鳥がちりばめられています。
モチーフとしては、ラベンナのモザイクを彷彿とさせrもの。そういえば、絵も、ビザンチン風だったりしますので、そういう影響もあるんですね、きっと。
キリストたちのいる下側の帯には、横長に、この教会が捧げられた聖ヴィンチェンツォの生涯が描かれています。
こちらは、その帯の最後の部分に描かれた、教会の寄進者であるアリベルトさんが、バジリカをキリストに差し出している図。
側壁の部分も、隙間なくフレスコで覆われていたようです。
こっち側は、薄れ方が激しくて、これ以上修復も無理だったんでしょうが、残念な状態です。それでも、ところどころ、物語的な場面を読み取れる場所があります。
ちょっとした冊子を入手できたので、ロマネスクのおとのを、きちんとアップデートしたいものです。先述したように、右も左もわからないときに作ったページで、かなり内容が薄いと思いますので。
そろそろミサの時間も迫ってきて、信者の方々が三々五々、教会に入ってきましたので、洗礼堂に移動します。
味のある建物ですよねぇ。
そして、ここ、すごいんです。
入るとすぐ、両側に、壁をくりぬいた階段があって、今でもちゃんと、二階に登ることができるんです。
こういう構造にしている洗礼堂は多いですが、今でも、ちゃんとアクセスできる場所は、限りなく少ないと思います。勿論ここも、近年の修復の賜物だとは思いますが、そもそも基礎がきちんとしていないと、無理なので、状態が、相当よかったんだと思います。
とっても、わくわくする階段です。
ちょっと登って下を見ると、こんな感じ。
二階到着。
あつーい手すりから身を乗り出して、下を見下ろしてみます。
真ん中にある洗礼盤は、全身が浸かれる深いもの。でも、階段もなくて、どうやって入ったのだろう、というつくりです。床面よりも、洗礼槽の床の方が深かったような気がします。
あれ?
でも、ここも11世紀初頭とすると、もう全身水に浸かる洗礼はなくなっていたはずだから、ということは、オリジナルの構造ではないのかな。洗礼槽そのものは、確かに新しい感じですけれど、場所や構造は、オリジナルを再現しているのか、と自動的に考えていたのですが。
下は、表面を漆喰で覆ってしまっていますが、二階は、石むき出しになっています。
でも、もともとは、こちらもフレスコが施されていたのだと思われます。
一部に、ちょっとだけ痕跡があります。
教会のクリプタにあった星と同じ模様、わかりますか。
洗礼槽のレベルから、トップを見た図。
個人的には、これは漆喰塗りよりも、石むき出しの方が好みですけどね。でも、この上に、きっとフレスコ画が施されて、絢爛とした内装だったのか、と思うと、こっちの方が、想像の一助にはなるのかも。
いい洗礼堂です。
うっとりした気分で、周囲を一回り。
ファサード側は、広々とした草原を確保しているので、素晴らしい眺めですが、後ろは、家々が迫っていて、余裕のない状態になっています。すぐ後ろに、高級マンションが建っているのは、ちょっとびっくりしました。10年前も、ここまで迫って、住宅があったかしらん?と過去の写真を漁ってみましたが、不明。何もなかった、ということはないはずですが…。
それにしても、11世紀の建物を見ながら生活できるなんて、素敵ですねぇ。一方通行の、石畳の細い道しか侵入路がなくて、実際はとても不便なことも多いと思うのですが、それでも、この美しい眺めをいつも見られるなんて、ちょっと夢みたい。
次回からは、スペインとイタリア、迷いましたが、久しぶりにイタリアに集中しようと思います。お楽しみに。
最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
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- 2016/02/26(金) 07:05:22|
- ロンバルディア・ロマネスク
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