ミラノ・フオリサローネ2016その11(最終回)
最後に訪ねたのは、近所のハンガー・ビコッカHangar Bicocca、おなじみ、ご近所美術館。
エントランスに堂々と建っているメタルの作品周りが、なんだか草刈直後状態に、すっきりしているので、びっくり。その周囲に並べられた大きい植木も、実は作品です。
Garden Ground - Michel Desvigne Paysagiste
307ほんの若木が、きっちりと計算されたスペースに、計算された等間隔で並べられているもの。このデザイナーさんは、Landscape architectという肩書きの方なのだそうです。そういうお仕事があるんですね。公園などの公共建築とかをやる仕事みたいです。
前回訪ねたときから、ちょっと時間がたっているので、ちょうど、新しい展覧会も始まったばかりという、ナイスなタイミングですが、まずは、目的であるフオリサローネの展示を見学です。
XXI Triennale di Milano International Exhibition Architecture as Art concept and direction Pierluigi Nicolin curated by Nina Bassoli with Patrizia Rossi Pirelli Hangar Bicocca
元工場というだだっ広いスペースを十分に生かす展示で、大型の作品が、10個超、適度な感覚で並んでいます。「芸術のような建築」または「芸術としての建築」というタイトルぴったりの展示だと思います。 いつも、ベネチアの建築ビエンナーレで、建築や工業デザインと、芸術の境界や交わりに思いをいたす身としては、大変なじみのある世界っていうか。
スペースの真ん中に置かれた展示。
Sidewalk by El Equipo di Mazzanti 薄く、すけるような白い壁に囲まれた細い通路です。 例によって、訪問者も少ないので、らくらく体験可能。
人一人がやっとの幅ですから、一方口。 体験型は、やはり体験しないとだめよね~、と、体験して改めて思いました。 中に入ると、床に、英語で指示が書いてある。
最初の、「壁をけれ」で、なんだろう、と思いつつ壁をけって、驚いた!壁って、見た目から、壁だと思い込んでいるわけですよ。それが、けると、足の形にへこむ!つまり、固い素材だと思い込んでいた壁は、実は布をきっちり張り巡らしたものなんです。
しかし!「壁にキスしろ」と描いてあるからって、キスするかな。
お隣にあった、寺の鐘状態の作品。
Meeting by Joao Luis Carrilho da Graca ポルトガルのデザイナーさんの作品。 絶対に日本の寺の鐘にインスピレーションを得たに違いない!とか、外観からは思っちゃいました。 なぜミーティングかというと、中にもぐりこむと、穴が二つ開いていて、そこから鏡張りの内部で、二人、顔を突き合わせることになるからです。あ、二人で入れば、ということですが。訳の分からない世界が広がりますが、あまり驚きもなく、新鮮さはなし。
その先にあるレンガ壁を越えます。
Bricolage by Amateur Architecture Studio さらりと通過するくらいしか見てないし、説明版も読んでないのですが、いずれも、大型で、家サイズですから、ヘタな美術展よりも迫力あります。
そういう意味で、最も迫力あったのは、こちら。
Sharing by Rural Studio これ、ほとんどお家状態の建造物ですが、マテリアルは、紙です。ダンボールとか、事務所の廃棄紙、あらゆる廃棄される紙なんです。ダンボール・ハウスも真っ青の量と丈夫さです。
でも、やっぱり紙。 内部は、さらに圧倒的な印象です。
下段は、白い紙になっていて、三段作りで、上まで登れるようになっています。 体験大好きですから、勿論、恐る恐る登りました。紙の床は、ふかふかしていて、頼りなくて、キシキシして、なんともいえない踏み心地でした。
表面部分だけではなく、内部までぎっしり紙なのですから、一帯どれだけの量の紙、ひいては、紙の素材であるパルプ、樹木の墓場となっているのか、と気が遠くなるようでした。
日本では、ペーパーレスが、会社ベースでは結構進んでいると思うのですが、イタリアなどではまだまだで、無駄な印刷物が、毎日山のようにプリントアウトされてきます。 一部で済む書類を、二部も三部も印刷する人がたくさんいます。社内郵便に使う封筒も、毎回新しい封筒を使って、受領した人はそのまま廃棄しています。 わたしは、そういう現実を見るたびに、めまいがしそうな気持ちになるのですが、多くの人は、いまだに、そういうことが当たり前の世界に生きています。
ペーパーレスどころか、連日無駄紙生産中の現場から見れば、この程度の廃棄紙って、実はたいした労力もなく集まるものなのかもしれない、とこの展示を見て思ってしまって、背筋がぞっとしました。展示の意図が、どこにあるのかはわからないのですが。
もうひとつ、好きだった展示。
Entrance by Maria Giuseppina Grasso Cannizzo これはもう、意図などどうでもよく、楽しめる超体験型! 展示スペースに入ったときから、カランカラン、とメタルな、正直言って、かなりうるさい音がずっと響いていて、気になっていたのですが、音の出所がこの展示でした。
長いメタルのパイプ(1152本)が、ひたすら等間隔に並んで、すだれ状態で、ぶら下げられているだけ。
それが、4/5メートルの正方形状スペースにびっしり。そして、そのパイプのすだれをかき分けて中に入ると、中心に、小さな円形のスペースがあります。作りは、迷路状ですが、勿論、かき分けさえすれば、誰でも、その中央部にアクセスできます。
何が面白いかというと、パイプそれぞれ、太さが違ったりするからだと思うのですが、お互いにあたって、音が出るわけです。自分がかき分けて歩くと、自分のまわりすべてが、メタルの奏でるうるさい音になるんです。 うるさい!でも歩くごとに音色が変わって面白い! それも、メタルなんですが、自分が中心にいるときの音は、決して気に障る音じゃないんですよ、不思議なことに。外にいて、人が鳴らしている音は、かなりうるさい感が強いんですが。 人が少ないこともあって、何度も出たり入ったりして、仕舞いには、耳がおかしくなりました。子供か!
外に出たら、もうひとつ。 休憩所かと思ったのですが、これも展示でした。
Sustainability by Studio Albori いや、これはやっぱり休憩所みたいです。ベンチで、展示を反芻しました。
ということで、今年のフオリサローネは、こちらで打ち止め。 思わず、例年になくまじめに見学してしまいましたが、見れば見るほど、さらに見たくなる麻薬的な魅力があるイベントなんですね、これ。自宅近所も含めて、あちこちに多様な内容の展示が、基本、無料でされている、ということが、アクセスしたくなる大きな要因だと思います。そして、本来、家具や工業デザインをフューチャーした見本市であるにもかかわらず、アートを前面に押し出した内容が多いというのも。 堪能いたしました。また、来年が楽しみになります。
長々とお付き合い有難うございました。
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2016/05/05(木) 06:03:43 |
ミラノ・フオリサローネ
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