fc2ブログ

イタリア徒然

イタリアに暮らしながら、各地のロマネスクを訪ねた記録

クリスト~!夢のような一日!イン・イセオ湖

まさか、こんな日が来るとは!
というのも、ちょっと大げさ?いや、でも実際、そういう気持ちなんですよねぇ。

今まで、一度たりともライブ参加のできなかったクリストとジャンヌ・クロードのインスタレーションが、イタリアに来るっていうだけでも、信じられない喜びなのに、それが、自宅から日帰りで行ける場所だなんて、こんな素敵なことが起こるとは、正直、夢にも思っていなかったことです。




知ったのは、ほんの数か月前。それなりに、アート的な話題にはアンテナを張っているし、展覧会情報についても、フォローしている私にしてその程度ですから、当初、相当地味な取り扱いだったのだと思うんです。
それが、会期が近づくにつれて、徐々にメディアへの露出が増え、会期直前には、全開状態で、毎日、設営の進捗状態がニュースで流されるというありさま。
いや、これにはびっくりしました。
さすが、いつだってぎりぎりで帳尻を合わせるイタリア、面目躍如というところでしょうか。

おそらく、クリストを知らない人もいっぱいいたと思うんです。現代アートは、好きな人はめちゃくちゃ好きだけど、結構その数が限られるところがありますし、ビエンナーレにしても、リピーター中心っていう感じが強いんで。でも、この、ほんの数週間で、今のイタリア、特に北部イタリアで、クリストの名前を知らない人は激減したのでは、と思われるほどの普及ぶり。恐るべし、です。




Christo and Jenne-Claude
The Floating Piers
Sulzano - Monte Isola, Lago di Iseo
18/06/2016-03/07/2016 24/24

この、非常に限られた期間、イセオ湖に浮橋がかけられて、歩いて、島の中にある小島にわたることができるイベントです。
トップの写真の、手前左側にあるのが、アクセスのあるスルツァーノという村。そこから、中の島であるモンテ・イソラへかけられた浮橋は、島の道を経由して、さらに小さな島、サン・パオロ(写真、左上部)へと、続いています。
全長3キロほどの浮橋。みかん色と黄色の混じった美しい色の布で、全体が包まれています。




わたしは、いつ頃なのかよく覚えていませんが、パリのポンヌフをくるんだ作品で、クリストを知ったように思います。もちろん、後付けで写真を見たものだと思うのですが。
気になってはいても、作品を求めて移動するというアイディアがなかったのですが、いま思えば、ベルリンなどは、行くべきだった、と、まさに、この浮橋を体験した今だからこそ、今更ながら感じております。

想像はしていたのですが、彼らの作品は、姿を見るだけでは、絶対に伝わらないものです。もちろん、本物を実際に見る、ということの重要性は、どのような作品であっても、間違いなく大切な、そして、作品の理解には欠かせないことであろうと思いますが、普通に、個として存在する作品に比べると、このクリストとジャンヌ・クロードの作品は、現場に身を置く、感じる、触れる、ということが、さらなる重要性を持っているように思うのです。
というのは、彼らの作品は、それがおかれる土地と一体化しており、設置された土地なくしては、作品自体が成り立たないという性質のものだからです。その土地の凸凹や、風の通り方や、日のさし方、漂う香り、そういったすべてが作品の一部になっているから。

写真や映像で、作品そのものの姿はわかっても、そういうマージナルな要素は、やはりその場に身を置かなければ、決してわかりえないものです。




そういう風に考えると、なんという壮大なぜいたくな作品であることでしょう。だからこそ、そこに立つことができたということで、本当に幸せな気持ちになることができました。




浮橋なんて、大丈夫なんだろうか、これだけの人が押し寄せて、安全性は?と一瞬思ったりしたのですが、実際は、杞憂に過ぎず、構造物は相当しっかりとしています。幅も、16メートルもあり、端っこによるのは禁止されていますが、これだけの人出でも、かなりゆったりとしたスペースがありました。
ただ、揺れるんです。湖ですから、かなり穏やかな湖面なのですが、ちょっとしたさざ波でも、浮橋はすぐに反応しますから、船に乗っているような感覚になります。船酔いしやすい人は、結構やばいかも、というくらい。

そのために、風が強くなると、すぐにアクセス禁止となります。




私が訪ねた19日も、お天気が悪いこともあり、絶えず風があり、結局サン・パオロ周辺部は、アクセスが禁止されていました。
そのおかげで、このように素敵なバージン・サン・パオロを撮影できたので、よし、です。




クリストが推奨していたように、はだしで歩いていました。
橋そのものは、発泡スチロールのような素材のキューブを組み合わせてあるため、組み合わせた部分が凸凹しています。布も、あえて、よりが出るようにかぶせてあるのではないかと思うのですが、だから、ちょっと注意して歩く必要があり、はだし、または、運動靴が推奨されています。




布は、吸水性に優れていて、雨でぬれても、あっという間に乾くのは、驚異的でした。尼にぬれると、オレンジが強くなり、乾くと黄色が強くなる。そして、乾きにくい重なり部分にオレンジが残り、他は黄色になるという面白さ。




そしてまた、単純に、本来あるはずのない道があるはずのない場所にあり、当たり前のように歩いている人がいるというその姿のミスマッチが、自然の中で、意外にも自然に見えてしまうこと。
曇り空であっても、わずかにある日を、美しく反射する水の美しさ。




すべてが計算されて、その通りに実現された作品。驚異的です。
本当に満足しました。

しかし!
オーガナイズがひどすぎました。
電車は動かない。インフォメーションはない。
ちゃんと見学できて、日のある時間に帰宅できたことが奇跡的に思えるような、そういうひどいありさまで、ここは、腹立たしいというよりも、あきれるレベルでした。
それでも、帰り道、友人との話は、作品の素晴らしさにつき、愚痴や文句が出てこなかったことは、自分でも驚きでしたが。

その、ひどかった話、また予期せぬ面白い出会いなど、続きで。
ニュースなどで、週末を避けろ、お天気に注意せよ、など、いろいろと行く気を押しとどめるような発言が多くなっていますが、会期も短く、今しかないのですから、とにかく、行くべし!です。クリストの次の作品が、いつどこであるか、またあるかどうかも、わからないのですから。

おなじみのロマネスクは、こちらへどうぞ。
ロマネスクのおと

ブログ・ランキングに参加してます。よろしかったら、ポチッとお願いします。


にほんブログ村 美術ブログへ(文字をクリック)
ブログ村美術ブログ


にほんブログ村 海外生活ブログへ(文字をクリック)

最近はまっている写真サイト。ロマネスク写真を徐々にアップしています。
インスタグラム
スポンサーサイト



  1. 2016/06/21(火) 05:53:08|
  2. アートの旅
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<夢の一日を彩る、イタリア的不具合の数々(クリスト、イセオ湖) | ホーム | お食事と、サウンド・オブ・ミュージックごっこ>>

コメント

No title

文面から感動が伝わって来ましたよ!

素敵なひと時が過ごせましたね。

ポン・ヌフを包む?
其の発想に驚きました。

若き頃、ポン・ヌフを渡りましたよ!

今回の様に海に道を作ると言う、発想が凄いですね?

古代人が沼を渡るのに、小枝を敷き詰めて渡り、此れが橋の最古の原型だとか?
  1. 2016/06/21(火) 00:29:00 |
  2. URL |
  3. 古代遺跡めぐり<山下亭> #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

No title

山下さん
古代人の橋の話、面白いですね~!
アートは、いろんなイメージを喚起するのが、好きで、大型作品は、癖になります。
  1. 2016/06/21(火) 22:23:00 |
  2. URL |
  3. corsa #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
https://notaromanica.blog.fc2.com/tb.php/1594-e02211a8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)