カスティーリャ・エ・レオン、その25
川の方向に向かい、どんどん高度が下がります。
もう旧市街を出てしまって、結構大きな道路沿いに建っているのが、こちら。
サン・ペドロ大聖堂Concatedral de San Pedro。
道に面した今ある建物の姿は、まったくそそられるものではなかったために、この一枚しか撮影していませんでしたが、比較的新しい建築の中にあっても、相当大きなものです。
12世紀創建の教会ですが、もともとの建物は12世紀に崩壊してしまい、16世紀に、ゴシック様式で再建されたものが、今ある建物のようです。その際に、カテドラルと並ぶ教会という位置づけで、Co-Cathedralと呼ばれているようです。
しかし、ここには、ロマネスク時代の回廊が残されているので、ソリアのロマネスクの中では、一二を争う重要度を持っているのです。が、私がソリアの町をうろうろしていた日曜日の午後はクローズで、様子が全くわかりませんでした。
時間の余裕もあるし、なんだか悔しくて、どこかから、その様子がわからないものか、と、後ろの方まで回り込んでみました。
教会を挟んで、大きな道路の反対側は、私が宿泊したホテルへと続く谷になっています。
下は、ホテル側からの写真ですが、右下の方に見える建物群の一つが、この教会の、一部だと思います。
この建物部分が、臭いな、と思いました。上の方の三連窓が、ロマネスクなんですよね。それに、全体に、古そうで、今の本堂とは、作りが違うんです。
なぜ、こんなにこだわったかと言うと、翌日は月曜でクローズだし、いつ開いているかよくわからなかったので、たぶん、件の回廊を訪ねることはできないだろう、とほぼあきらめていたからなんです。
しかし、実は、思わぬ幸運に恵まれました。
翌日月曜日は、このあと記事にしていきますが、周辺の町村を回りました。例によって、時間に追い立てられるようにすごい勢いで回ったために、疲れ切って、普段よりは若干早めの時間、確か18時半過ぎごろに、ホテルに戻ったんです。
ホテルのフロントには、ソリアの町の主要観光地のオープン時間をまとめたものが置かれていたのですが、もともといい加減な性格なので、そして、いつもアワアワしているので、到着時に落ち着いて、ちゃんと見てなかったんですね。それに、ラバネラ教会が、19時のミサのときにしか開かない、というのとも、どうも混同してしまったらしく、よく認識してなかったのですが、なんと、このサン・ペドロも、19時のミサのときにだけ、回廊が公開される、ということだったんです。それを、早めに帰った月曜日の夕方に、なぜかこのときは、きちんと目についたんです。
きっと、他の教会を、すでに見学してしまったために、無意識に、見ていなかったところに注目したということなんでしょうが。
で、すっごくへとへとに疲れていて、とにかくお風呂に入りたい(ここのホテル、ジャグジーがあって、身体に優しい)、そして、ゆっくりとワインをやりたい、と思い詰めているような状態だったのですが、修行ですから、そんなことは言ってられません。修行道具一式(と言うのも変ですが、地図とか双眼鏡とかもろもろです)を担ぎなおして、フロントから、そのまま車に引き返して、サン・ペドロに向かいました。
歩くと結構な距離ですが、幸い車なら、旧市街に入らずに、外側の道を通って、5分程度で到着です。首尾よく入場したときには、19時5分前くらいという、計ってもここまで正確には来られなかっただろう、というようなタイミングでした。
おお!なんだか荘厳な、大げさな内装です。
それにしても、19時からミサ、という割に、信者は誰もいないのが、不思議でした。鐘もなってなかったし、ここ、すでに檀家はいないのか?
ちょっとうろうろっとしましたが、私の他にも回廊を見学に来ていたカップルがいたので、入り口はすぐわかりました。
入場料2ユーロと有料のため、係の方がいらっしゃいました。
この薄暗い本堂の、入り口と反対側にある扉をくぐると、そこに回廊が広がっていました。
思ったよりも、ずっと大きな回廊です。今の本堂の規模に釣り合うくらい。ということは、12世紀の教会も、きっと大規模なものだったのでしょうね。回廊があるということは、修道院だったのですから、前日に裏山の方から見た建物は、その修道院当時の建物の一部ということになりましょうか。
より古いところと、比較的新しいところが入り混じっているようでした。とにかく立派で、全体に保存状態は良いです。
このあたりが、ちょっと古そうな柱頭。
受胎告知らしいです。
背景のあみあみ装飾が、摩耗しています。もっとシャープだったんじゃないのかな。
これも、私には古いものと思われるのですが、サン・ペドロとサン・パブロとありました。
本くらい、売っててほしい場所だよね。あれば絶対買ったのに。
ここにも、ケンタウロスがいました。鹿を狩っている場面。鹿の堂々ぶりが目立ちます。
これなんて、すっごい摩耗ぶり。
なんか、川を何千キロも旅して、角の取れた石状態ですよね。ものによってこうなるということは、石の種類が違うのだろうか。
回廊の一片の内側の壁に、こういう構造が並んでいました。
係の方によれば、修道士のお墓とか。12世紀ごろのものと言っていましたが、どうなんでしょうか。アーチとんがってるし、修道院繁栄時代のものだろうし、感覚的には13世紀以降のものではないかという気もするのですが。
でも、素朴な石積みの様子は、魅力的です。
こういうテイストって、すでにゴシックの感じがしてしまいます。グリフィンの羽根というか、毛というか、すじすじがシロス石工系ですね。
洗練された連続アーチ。
ソリアには、おそらく優れた石工や優れた建築家がたくさんいたのだとは思います。ただ、この後の旅、フランス、オーベルニュで、多く目にした、素朴で古い回廊の様子と比較すると、やはり時代は下るのではないかと思います。11世紀と12世紀の差って、相当激しい。そして、12世紀でも、前半と後半ではずいぶん違うし、終わりごろになると、技術の進歩が著しくなりますよね。古いものは、連続アーチが、形がずれていたり、径が違っていたりします。
係の人が、わざわざ教えてくれた柱頭。
女性の乳房に噛みついている動物。痛そう…。誘惑を戒めるというやつですかね。
摩耗の激しい柱頭も多いですが、数がたくさんあるし、内容は多様なので、結構楽しめます。結局、見学者は私と、もう一組のカップルだけだったので、のんびりじっくりと見ることができました。フロントの情報に気が付いて、本当によかったです。
返す返すも悔しいのは、ソリアで本屋を見つけられなかったことですね。周辺も含めて、ロマネスクの宝庫なのに、とうとう何もゲットできなかったのは、痛恨。
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- 2016/09/28(水) 06:18:41|
- カスティーリャ・エ・レオン
-
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-
| コメント:8
修行旅のあくなき探求心に一票!神様はいるね。
なるたけプリミティブなロマネスクに愛を感じてしまうcorsaさんに二票目!原初的で無垢な信仰心が沈殿しているような祈りの場が御好みでしょ?だからファンなんです。
立て続けのupありがとうございます。
- 2016/09/28(水) 01:09:00 |
- URL |
- otebox #79D/WHSg
- [ 編集 ]
> oteboxさん
このときは、ちょっと神様いるな、って思いました、ハイ、笑。
最近、ちょっぴり頑張っていますが、どうしても、停滞しがち。とにかくアップしたいのがたくさんあるんですけれど、時間がないというより、やる気の問題で。でも、今月は、いつになくアップできたと思います。この調子で頑張れば、年内にはこのスペイン編が終わって、去年のスペイン編にも行けるかも。さてね。
- 2016/09/28(水) 22:13:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
- [ 編集 ]
奇跡ですね~(≧∇≦)!
これは中を見ないと倒れるほど後悔します。
素朴な疑問ですが、乳首に噛み付いたり蛇に飲み込まれたりという発想ってこの時代にどうしてあったんでしょうね。まるでホラーみたいな話で、でもこの時代、映画があるわけでもないしでも日本でも大蛇がどうのみたいな話もあるし、背景に残酷な歴史の題材があったりするのかなあ。
面白いし作ったご本人に聞いてみたいですね。
- 2016/09/28(水) 22:37:00 |
- URL |
- まーたん #79D/WHSg
- [ 編集 ]
> まーたんさん
コメントありがとう。
ふふ、ホラー。確かにそうですね。おそらく、こういう時代のこういう発想が、今まで連綿とつながってきたんだと思います。残酷な歴史というよりも、ここではキリスト教の戒め的な教えがベースになっているようです。乳首噛みつきは、淫乱戒め的な。蛇は、邪悪なんですよね。
アダムとイブにリンゴを勧めるのもやつだし。今、ふと思いましたが、ニュートンのリンゴも、別にリンゴでなくてもいいけれど、リンゴ、というのは、何かシンボリズム的なものがあるのかも。西洋世界は、キリスト教に相当縛られています。
ロマネスク時代は、そういう中で、石工さん各人の腕や想像力が垣間見えるのが、楽しいんですけどね。
- 2016/09/29(木) 22:28:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
- [ 編集 ]
おはようございます
出かけるまでしばし・・・と思ったらこんなところまで来ました、ほんとうに、積読の私・・・です。
この回廊はモンさんミッシェルそっくりで天井も此処まで素敵じゃないけど似ている場所がありました、建築も時代で流行があるのでしょうが、整理して拝読すると面白いかなぁ・・・と思いました
この記事は以前読みました、では次へ
もうトランプさん当選で日本人はじわっと黒雲気分、子分の位置に慣れちゃっているんですね
- 2016/11/10(木) 00:51:00 |
- URL |
- poetryfish9 #79D/WHSg
- [ 編集 ]
> poetryfish9さん
モンサンミッシェル、実はまだ行ったことがないんです。あまりに観光地だし、全体あまり好みではないので、一生行かないかも、と思っていましたが、こんな回廊があるなら、やはり行かないと、と。
建築は流行もそうですが、関係者が移動することで、彫り物のモチーフが普及したりとか、中世ものでは、そういう見方も面白いです。キーになる建築には、キーになる人物がかかわっていたりとかね。イタリアのトスカーナに、フランスのルシヨン地方の石工技術があったりね。
トランプ…。世界はどうなってしまうんだろう、と思いつつ、もう目の前を見つめていくしかないんだろうなと。
- 2016/11/13(日) 18:19:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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少しずつ遡って、昨年あたりの記事を拝見しています。これはいいものを見せていただきました。実は私が訪ねたときは大工事中でして、門番に「日本からわざわざ来たので、回廊をひと目だけ。。。」と必死で頼んでもだめでした。門番が石頭なのか、ソリア人は融通がきかないのか、ふつうは「はるばる海をこえてきた」なんて言えば、「じゃ、ちょっとだけ」と見て見ぬふりをしたりするものなんですが。しかし、ずいぶん訪ね歩いておられますね。
- 2017/07/30(日) 02:26:00 |
- URL |
- Surdepirineos #79D/WHSg
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> Surdepirineosさん
訪問+コメント、ありがとうございます。
大工事していたんですね。それは残念でしたね。
そういえば、最近は昔と違って、いろんな場所で、そういう対応が減ったなぁ、と思います。教会のカギも、個人で預かることが減ったり、探し当てても、開けてもらえないこともありますね。
なんか寂しい時代になったのかもしれません。
- 2017/07/30(日) 12:56:00 |
- URL |
- corsa #79D/WHSg
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